(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044167
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】温度センサ、および、加熱器
(51)【国際特許分類】
G01K 1/143 20210101AFI20220310BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20220310BHJP
G01K 7/22 20060101ALI20220310BHJP
H05B 6/12 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
G01K1/14 A
G01K1/14 L
G01K7/22 J
H05B6/12 318
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149658
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000145242
【氏名又は名称】株式会社芝浦電子
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】虻川 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】榎本 雅一
【テーマコード(参考)】
2F056
3K151
【Fターム(参考)】
2F056CA08
2F056CA14
2F056CL02
2F056QF05
2F056QF08
2F056QF10
3K151BA93
(57)【要約】
【課題】検出温度の精度を高くできる温度センサを提供すること。
【解決手段】温度測定対象101に対向して配置され、温度測定対象の温度を検出する温度センサ30に関する。温度センサ30は、感熱体34と、感熱体34を支持する、耐熱性樹脂フィルムから構成される弾性体33Aと、弾性体33Aを支持し、電気的な絶縁材料から構成される支持体31と、を備える。支持体31は、弾性体33Aとの間に空隙Aを設けつつ弾性体33Aを支持する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度測定対象に対向して配置され、前記温度測定対象の温度を検出する温度センサであって、
前記温度測定対象の熱を感知する感熱体と、
前記感熱体を支持する弾性体と、
前記弾性体を支持し、電気的な絶縁材料から構成される支持体と、を備え、
前記支持体は、前記弾性体との間に空隙を設けつつ前記弾性体を支持する、
ことを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
前記弾性体は、耐熱性樹脂フィルムから構成される、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項3】
前記空隙は、
前記支持体の前記温度測定対象に対向する基準面から前記温度測定対象と離れる向きに窪んで形成され、
前記弾性体を収容する収容室に形成される、
請求項2に記載の温度センサ。
【請求項4】
前記弾性体は、
前記温度測定対象に対向し、前記収容室から露出する頂部を備え、
前記感熱体は、
前記頂部における、前記温度測定対象に臨むおもて面、または、前記空隙に臨むうら面に設けられる、
請求項3に記載の温度センサ。
【請求項5】
前記弾性体は、
湾曲されることにより内部応力が生じた状態で前記支持体に支持される、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項6】
前記弾性体は、
U字状に湾曲された状態で、前記収容室に収容される、
請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項7】
前記耐熱性樹脂フィルムは、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフェニレンサルファイドのいずれかの樹脂から構成される、
請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項8】
前記弾性体は、フィルム状の前記耐熱性樹脂から構成される、
請求項2から請求項7のいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項9】
前記支持体は、
前記温度測定対象に対向する第一支持部と、屈曲部を介して前記第一支持部と直交する第二支持部と、を備え、
前記第一支持部は、
前記収容室を備える、
請求項3から請求項8のいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項10】
前記弾性体は、
前記支持体と一体的に形成され、かつ、前記支持体に支持される梁からなる、
請求項1に記載の温度センサ。
【請求項11】
前記支持体は、前記梁との間に空隙を設けつつ、前記梁を支持する、
請求項10に記載の温度センサ。
【請求項12】
前記支持体は、前記温度測定対象に対向する基準面を備え、
前記梁は、前記基準面に倣って形成される、
請求項10または請求項11に記載の温度センサ。
【請求項13】
前記弾性体は、片持ち梁からなる、
請求項10から請求項12のいずれか一項に記載の温度センサ。
【請求項14】
加熱対象を載せる天板と、
前記天板の背面の側に設けられ、通電されることにより磁場を発生することで前記加熱対象を加熱するためのコイルと、
前記天板の温度を測定する、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の温度センサと、を備えることを特徴とする加熱器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鍋等の炊事具をIH(Induction Heating:誘導加熱)クッキングヒータ等の上に搭載した状態で、炊事具の底面の温度を検出できる温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
IHクッキングヒータ等の誘導加熱式の加熱器においては、加熱器の天板上に炊事具である鍋等を載せた状態で炊事具を加熱することで調理を行う。このとき、加熱器に備えられる温度センサによって鍋底の温度を検出し、その温度をコントローラで監視する。これにより、調理中に鍋の内部が調理に適当な温度状態になっているか否か、あるいは、鍋底が異常な高温になっていないか、等をモニタリングし、加熱度合いの調整や、加熱の停止等を制御することが行われている。
このような目的に用いられる温度センサは、サーミスタ式が主流となっていて、従来から、種々の形式のものが提案されている。
【0003】
ところで、ガスコンロのように鍋を載せる五徳のないIHクッキングヒータにおいて、天板を介して鍋の底の温度を測定する温度センサとして、特許文献1の温度センサが知られている。特許文献1の温度センサは、セラミックペーパからなる緩衝層と、緩衝層に支持されるサーミスタ素子と、サーミスタ素子を覆うように設けられ、例えばゴム系材料からなる感熱層と、これら緩衝層、サーミスタ素子、感熱層を覆う保護層と、が積層されることで形成されている。緩衝層は、特許文献1に記載されるように、サーミスタ素子を天板の下面に押し当てる。
特許文献1の温度センサによれば、温度の検出精度を高めることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
IHクッキングヒータにおける調理の質の向上のためにIHクッキングヒータに求められる性能も高くなる。その性能の一つとして、温度制御が掲げられ、そのためには温度の検出精度を一層高くすることが必要である。
【0006】
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、検出温度の精度を高くできる温度センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、温度測定対象対向して配置され、温度測定対象の温度を検出する温度センサに関する。本発明の温度センサは、温度測定対象の熱を感知する感熱体と、感熱体を支持する弾性体と、弾性体を支持し、電気的な絶縁材料から構成され支持体と、を備え、支持体は、弾性体との間に空隙を設けつつ弾性体を支持する。
【0008】
本発明において、好ましくは、耐熱性樹脂フィルムから構成される。
【0009】
本発明における空隙は、好ましくは、支持体の温度測定対象に対向する基準面から温度測定対象と離れる向きに窪んで形成され、弾性体を収容する収容室に形成される。
【0010】
本発明における弾性体は、好ましくは、温度測定対象に対向し、収容室から露出する頂部を備え、感熱体は、頂部における、温度測定対象に臨むおもて面、または、空隙に臨むうら面に設けられる。
【0011】
本発明における弾性体は、好ましくは、湾曲されることにより内部応力が生じた状態で支持体に支持される。
本発明における弾性体は、好ましくは、U字状に湾曲された状態で収容室に収容される。
【0012】
本発明における耐熱性樹脂フィルムは、好ましくは、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトンおよびポリフェニレンサルファイドのいずれかの樹脂から構成される。
本発明における弾性体は、好ましくは、フィルム状の耐熱性樹脂から構成される。
【0013】
本発明における支持体は、好ましくは、温度測定対象に対向する第一支持部と、屈曲部を介して第一支持部と直交する第二支持部と、を備える。第一支持部は、温度測定対象と離れる向きに窪んで形成される収容室を備える。
【0014】
本発明における弾性体は、好ましくは、支持体と一体的に形成され、かつ、支持体に支持される梁からなる。
【0015】
本発明における弾性体は、好ましくは、記梁との間に空隙を設けつつ、梁を支持する。
【0016】
本発明における支持体は、好ましくは、温度測定対象に対向する基準面を備え、梁は、基準面に倣って形成される。
本発明における弾性体は、好ましくは、片持ち梁からなる。
【0017】
さらに本発明は、好ましくは、加熱対象を載せる天板と、天板の背面の側に設けられ、通電されることにより磁場を発生することで加熱対象を加熱するための環状のコイルと、天板の温度を測定する、温度センサと、を備える加熱器として実施される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の温度センサによれば、感熱体が弾性支持される。したがって、本発明の温度センサによれば、例えばIHクッキングヒータに適用されても、適用温度域において、感熱体を測定対象に必要な圧力で押し当てることができる。したがって、本発明の温度センサによれば、検出温度の精度を高くできる
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施の形態における加熱器の構成を示す断面図である。
【
図2】
図1の加熱器に適用される、第1実施形態に係る第一センサの断面図である。
【
図3】
図1の加熱器に適用される、第1実施形態に係る第二センサの支持体を単体で示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る第二センサを示し、(a)は第二センサの平面図、(b)は背面図である。
【
図5】第1実施形態に係る第二センサを示し、(a)は第二センサの側面図、(b)は正面図である。
【
図7】複数の第二センサを接続したコネクタを示す図である。
【
図8】第二センサにおける耐熱性樹脂フィルムによる感熱体の支持構造を示す図である。
【
図9】第二センサにおける耐熱性樹脂フィルムによる感熱体の他の支持構造を示す図である。
【
図10】第2実施形態に係る第二センサを示し、(a)は第二センサの平面図、(b)は正面図である。
【
図11】第2実施形態に係る第二センサを示し、(a)は第二センサの側面図、(b)は背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に基づいてこの発明の温度センサの一実施形態を詳細に説明する。
本実施形態は、詳しくは後述するが、第二センサ30における温度検出部32の弾性体33Aの構成に特徴を有する。この特徴的な構成により、温度感知の精度を高くできる。この第二センサ30は、好適には、加熱器としてのIHクッキングヒータ100に用いられる。
【0021】
[IHクッキングヒータ100の全体構成:
図1]
図1に示すように、IHクッキングヒータ100は、その上面を形成する天板101と、天板101の下面側に配置され、天板101の下面と平行な面内に位置する環状のコイル110と、を備えている。天板101の上面には、加熱対象である鍋などの炊事具200が載せられる。コイル110は、図示を省略する電源から通電されることにより、磁場を発生し、この磁場により炊事具200が加熱される。
【0022】
[温度センサ10:
図1]
IHクッキングヒータ100は、温度センサ10を備える。温度センサ10は、コイル110の内方の中央部に設けられる第一センサ20と、第一センサ20に対して外周側であって、コイル110の内周縁部に位置する第二センサ30と、を含む。本実施形態において、例えば天板101の円周方向に均等間隔で4個の第二センサ30が設けられているが、その数はこれに限るものではない。
【0023】
[第一センサ20:
図2]
第一センサ20は、例えば、セラミックス製の保護管21と、保護管21の内部に収容される第一感熱体22と、第一感熱体22の図示が省略される一対の電極のそれぞれに接続される一対の第一デュメット線23,23と、を備えている。
第一感熱体22としては、温度変化によって電気抵抗値が変化する特性を有する金属酸化物または金属を用いることができる。そうすれば、第一感熱体22に一対の第一デュメット線23,23、第一リード線27,27を介して一定の電流を流し、測定器で第一感熱体22の図示を省略する電極間の電圧を測定し、オームの法則(E=IR)から抵抗値を求め、温度を検出する。
金属酸化物としてはサーミスタ(Thermistor:Thermally Sensitive Resistor)が好適に用いられ、典型的には負の温度係数を有するNTCサーミスタ(Negative Temperature Coefficient Thermistor)が用いられる。金属としては白金(例えば、Pt100;JIS-C1604)が好適に用いられる。後述する第二センサ30の第二感熱体34も同様である。また、デュメット線(Dumet Wire)とは、鉄・ニッケル合金を心金とし,それに銅を被覆した複合構造の電線をいう(JIS H4541)。
図2に第一感熱体22の一例が示されている、第一感熱体22は、例えば、サーミスタ22Aと、サーミスタ22Aの表裏に形成される一対の電極22B,22Cと、サーミスタ22Aおよび電極22B,22Cの周囲を覆うガラスからなる絶縁被覆22Dと、を備える。この第一感熱体22の構成は、後述する第二感熱体34も同様の構成を備えることができる。
第一感熱体22の周囲には、電気的な絶縁材料、例えば樹脂、ガラスによる充填材28が充填され、保護管21との隙間が埋められている。
第一デュメット線23,23は、絶縁チューブ24内において、接続子26、26を介して第一リード線27,27の一端に接続されている。第一リード線27,27の他端は、IHクッキングヒータ100のコントローラに接続するための図示を省略するコネクタに接続される。
第一センサ20は、保護管21が、IHクッキングヒータ100の図示が省略されるフレームにブラケット等を介して取付・固定される。
【0024】
[第二センサ30(第1実施形態):
図3~
図6]
図3、
図4、
図5および
図6に示すように、第二センサ30は、電気的な絶縁材料、例えば樹脂、セラミックスからなる支持体31と、支持体31に支持される温度検出部32と、を備える。なお、第二センサ30を、後述する第二センサ60と区別するために第1実施形態に係る第二センサと称する。
図3および
図5(a)に示すように、支持体31は、側面視をしてL字状をなしている。この支持体31は、屈曲部31Aを境にして一方の側に延びる第一支持部31Bと、屈曲部31Aを境にして他方の側に延びる第二支持部31Cと、を備える。第一支持部31Bには温度検出部32が設けられ、第二支持部31Cには配線接続部40が設けられる。
図1に示すように、この第二センサ30は、支持体31の第一支持部31Bが、コイル110の内周縁部の上方に位置してIHクッキングヒータ100の天板101側に対向し、温度検出部32が天板101の下面に押し当てられるよう配置される。支持体31の第二支持部31Cは、天板101に対して直交するように配置される。
【0025】
図3、
図4(a)および
図6に示すように、第一支持部31Bは、温度検出部32を収容する直方体状の空隙である収容室31Eを備える。収容室31Eは、支持体31がIHクッキングヒータ100に組み込まれたときに、天板101の下面に対向する基準面31Hから天板101から離れる向きに窪んで形成される。したがって、収容室31Eは、天板101に対向する上側が開放され、窪んだ底部である底床31Fと、底床31Fから立ち上がる側壁31Gと、を備える。なお、直方体状の収容室31Eは本発明の一例に過ぎず、その目的を達成する限り、その形態は限定されない。
【0026】
図3、
図4(b)および
図6に示すように、第二支持部31Cは、後述する接続端子41に対応する位置に、端子接続路42、42と、リード線接続路43、43とを備える。この端子接続路42、42には、第二デュメット線37,37の他端が挿通され、リード線接続路43、43には、第二リード線39,39の一端が挿通される。
また、第二支持部31Cは、電線収容路31D,31Dを備える。電線収容路31D,31Dは、それぞれの一端(
図3における下端)が端子接続路42、42に連なり、他端(
図3における上端)が収容室31Eに連なる。
【0027】
図4(a),(b)に示すように、温度検出部32は、サーミスタを主構成要素とする第二感熱体34と、第二感熱体34を支持する弾性体33Aと、を備える。第二感熱体34は、前述した第一感熱体22と同様の構成を備えている。
第二デュメット線37,37は、支持体31に形成された電線収容路31Dを通り、第二感熱体34が配置される第一支持部31Bから第二支持部31Cに導かれている。
【0028】
弾性体33Aは、第二センサ30をIHクッキングヒータ100に取り付けたときに、その弾性により、第二感熱体34を天板101の下面に押し当てるためのものである。
弾性体33Aは、200℃の環境下において、継続して使用してもその特性を維持できる耐熱性を有する樹脂フィルムから構成される。この耐熱性を有する樹脂としては、以下説明するポリイミド(PI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂が好適である。
【0029】
ポリイミド:熱分解する温度が500℃以上であることが知られ、超耐熱エンジニアリングプラスチックと称されることがある。引張強さが6.3(kgf・mm-2)、曲げ強さが10.5~12.0(kgf・mm-2)の機械的性質を有する。
グラスファイバが充填されるタイプにおいては、引張強さが19.0(kgf・mm-2)、曲げ強さが34.8(kgf・mm-2)にも及ぶ。
【0030】
ポリエーテルエーテルケトン:融点が334℃と高く、かつ、引張強さが100(kgf・mm-2)、曲げ強さが170(kgf・mm-2)と機械的性質に優れる。
ポリフェニレンサルファイド:融点が290℃であり、220℃~240℃前後の常用耐熱温度を有する。引張強さが7.0(kgf・mm-2)、曲げ強さが141(kgf・mm-2)の機械的性質を有する。
【0031】
以上の樹脂材料から構成されるフィルムは所期の目的を果たすことができればその厚さに制約はない。ここで、フィルムが薄すぎると第二感熱体34を天板101の下面に押し当てる力が不足する。一方、フィルムが厚すぎると第二感熱体34を天板101の下面に押し当てる力が不必要に大きくなるのに加えて、コストが嵩む。したがって、一例として5~100μmの範囲、好ましくは10~50μmの範囲、より好ましくは20~30μmの範囲から厚さが選択される。ただし、上述したように、樹脂材料の種類によって機械的性質が異なるので、樹脂フィルムの厚さは適用される樹脂材料の種類に応じて特定されるべきである。また、厚さを特定することにより、第二感熱体34を天板101に押し当てる力を調整できる。
【0032】
弾性体33Aは、例えば、フィルム状の上記樹脂材料を矩形状に切断して得られる素材から形成される。弾性体33Aは、
図6に示すように、この素材をU字状に湾曲させた状態で、一対の端部が収容室31Eの底床31Fに押し当てられる。その結果、弾性体33Aは、収容室31Eの側壁31G,31Gにより湾曲の状態が維持されながら収容室31Eに収容される。したがって、U字状に湾曲された弾性体33Aには内部応力が蓄えられており、弾性体33Aは収容室31Eに機械的に支持される。弾性体33Aは、最も背の高い頂部33Bが、収容室31Eの外部に露出し、この頂部33Bにおける天板101に臨むおもて面に第二感熱体34が支持される。その結果、第二感熱体34は、温度検出部32の中の他の部位よりも温度測定対象である炊事具200の最も近くに位置することになる。
【0033】
第二感熱体34は、頂部33Bに支持されながら、弾性体33Aが有する弾性力に応じた安定した圧力で天板101に押し当てられる。しかも、第二感熱体34を支持する頂部33Bの背後には、収容室31Eの内部を占める空隙Aが設けられる。よく知られるように、空気は、樹脂材料、ゴム系材料と比べて熱伝導率が低い。したがって、第二感熱体34に伝導した熱は、弾性体33Aを介して排出されにくい。
【0034】
[配線接続部40]
配線接続部40は、
図4(b)に示すように、接続端子41,41と、接続端子41,41が収容される端子接続路42,42と、第二リード線39,39の一端が挿通されるリード線接続路43、43と、を備える。接続端子41,41は、その一端が第二デュメット線37,37の他端が接続され、他端が第二リード線39,39の一端に接続される。リード線接続路43に挿通される第二デュメット線37,37の他端および第二リード線39,39の一端は、それぞれ、接続端子41、41に溶接される。これによって第二デュメット線37,37と第二リード線39,39が、接続端子41、41を介して電気的に接続されている。端子接続路42,42における接続端子41,41の周囲、およびリード線接続路43、43における第二リード線39,39の周囲には、樹脂材料、例えばエポキシ樹脂が充填され、接続端子41,41、第二リード線39,39などを位置決めしている。
【0035】
ここで、接続端子41,41は、導電性材料(金属)から構成されているので、IHクッキングヒータの性能を阻害しないように、コイル110に対し、コイル110で発生する磁場方向に対して平行な面内、すなわち天板101に直交する面内に位置するよう設けられる。
さらに、接続端子41、41は、コイル110に対し、その一方の側(天板101と反対側)にオフセットするよう設けられている。
【0036】
[第二センサ30の接続例:
図7]
図7に複数の第二センサ30の接続例を示す。
図7に示すように、複数、一例として四つの第二センサ30が、それぞれに対応する第二リード線39,39を介して、一つのコネクタ50に接続される。そして、このコネクタ50がIHクッキングヒータ100の図示しないコントローラ側のコネクタに接続される。このように、複数の第二センサ30の第二リード線39,39を一つのコネクタ50に予め接続しておけば、第二センサ30の組み付けが容易であるとともに誤配線を防ぐことができる。
【0037】
[効 果]
以下、本実施形態が奏する効果を説明する。
[弾性体33Aの構成による効果]
本実施形態に係る第二センサ30によれば、耐熱樹脂フィルムのみで構成される弾性体33Aにより第二感熱体34が弾性支持される。したがって、かかる第二センサ30によれば、IHクッキングヒータに適用されても、適用温度域において、第二感熱体34を測定対象である天板101に必要な圧力で押し当てることができる。
また、第二センサ30によれば、第二感熱体34の背後には、弾性体33Aを除くと空気で占められる空隙Aが設けられる。したがって、第二センサ30によれば、十分な断熱性を維持することができる。
以上より、第二センサ30によれば、検出温度の精度を向上できる。
【0038】
また、弾性体33Aは、所定寸法の耐熱性樹脂フィルムをU字状に湾曲されており、内部応力が生じている。したがって、内部応力が生じていない弾性体33Aに比べて、第二感熱体34を天板101に押し当てる圧力を大きくすることができる。したがって、第二センサ30によれば、第二感熱体34を確実に天板101に押し当てることにより、検出温度の精度向上に寄与することができる。
【0039】
さらに、弾性体33Aは、所定寸法の耐熱性樹脂フィルムをU字状に湾曲させて収容室31Eに挿入することで得られる。したがって、第二センサ30によれば、材料費および製造費の観点から温度検出部32のコスト上昇を招くことなく、検出温度の精度向上に寄与する。
【0040】
さらにまた、第二センサ30において、収容室31Eは、弾性体33AをU字状の形態を維持する機能と、空隙Aを形成する機能の二つの機能を、簡易な形態で実現する。
【0041】
[第二センサ30のL字による効果]
第二センサ30が、側面視L字状とされて、温度検出部32が設けられた第一支持部31Bが、コイル110と天板101との間に配置され、第二デュメット線37,37と第二リード線39,39とを接続する接続端子41、41が、コイル110の内周側において、コイル110で発生する磁場の方向に平行な面内に位置するよう配置された構成とされている。
これにより、コイル110上に磁場の方向に直交する面内に接続端子41、41を配した場合に比較して、磁束密度が高くなるコイル110の内周側においても、接続端子41、41を通過する磁力線を大幅に少なくすることができ、接続端子41、41の加熱を抑えることができる。
その結果、第二センサ30における温度検出精度を向上させることができる。
【0042】
[他の構成の適用可能性]
以上、好ましい実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0043】
[弾性体の形態]
例えば、弾性体33Aについては、U字状に湾曲させることで第二感熱体34を弾性支持する例を説明したが、
図8および
図9に示す変更例を採用することもできる。なお、いずれの変更例も上述した耐熱性樹脂フィルムを用いている。
【0044】
図8(a)は、円環状に耐熱性樹脂フィルムを形成して得られる弾性体33Bを示している。この弾性体33Bは、その幅方向Wの両端が収容室31Eの側壁に押し当たるように支持されている。したがって、弾性体33Bは、第二感熱体34を弾性的に支持しており、第二感熱体34は温度測定対象である天板101に押し当てられる。また、円環状の弾性体33Bに取り囲まれる内側の領域は空隙Aが形成されるため、第二感熱体34の背後への熱の移動が抑制される。
【0045】
次に、
図8(b)は、幅方向Wに蛇行するように耐熱性樹脂フィルムを形成して得られる弾性体33Cを示している。この弾性体33Cは、その高さ方向Yの末端が収容室31Eの底壁31Fに押し当たるように支持されている。したがって、弾性体33は、第二感熱体34を弾性的に支持しており、第二感熱体34は温度測定対象である天板101に押し当てられる。また、蛇行し高さ方向Yに隣接する弾性体33Bの間には熱伝導率の小さい空気で占められる空隙Aが設けられるため、第二感熱体34の背後への熱の移動が抑制される。
【0046】
次に、
図8(c)は、耐熱性樹脂フィルムにおける幅方向Wの両端部が基準面31Hに固定されることで弾性体33Dが構成される。耐熱性樹脂フィルムに幅方向Wに張力が付与された状態で固定されると、弾性体33Dに内部応力が生じ第二感熱体34を弾性的に支持できる。これにより、第二感熱体34は温度測定対象である天板101に押し当てられる。また、弾性体33Dの背後には収容室31Eがそのまま空隙Aとなって存在するため、第二感熱体34の背後への熱の移動が抑制される。
【0047】
図9(a)は、コの字状に耐熱性樹脂フィルムを形成して得られる弾性体33Eを示している。この弾性体33Eは、上片33E1が幅方向Wの両側33E2,33E2に両端支持される構造を有している。したがって、弾性体33Eは、第二感熱体34を弾性的に支持しており、第二感熱体34は天板101に押し当てられる。また、コ字状の弾性体33Eに取り囲まれる収容室31Eの内部領域は空隙Aとなるため、第二感熱体34の背後への熱の移動が抑制される。
【0048】
図9(b)は、台形状に耐熱性樹脂フィルムを形成して得られる弾性体33Fを示している。この弾性体33Fも上片33F1が両端支持される構造を有している。したがって、弾性体33Fは、第二感熱体34を弾性的に支持しており、第二感熱体34は温度測定対象である天板101に押し当てられる。また、弾性体33Fに取り囲まれる収容室31Eの内部領域は空隙Aとなるため、第二感熱体34の背後への熱の移動が抑制される。
【0049】
図9(c)は、耐熱性樹脂フィルムのU字状に湾曲する形態は
図4~
図6と同じである。しかし、
図9(c)は、第二感熱体34の配置が異なる。つまり、
図12(c)は、弾性体33Aの頂部における、空隙Aに臨むうら面に第二感熱体34が設けられている。この配置を採用すれば、耐熱性樹脂フィルムからなる弾性体33Aが電気的な絶縁体として機能でするので、保護層36を省くことができる。
【0050】
[収容室31Eの有無]
上記実施形態においては、収容室31Eの存在を前提としているが、本発明は必ずしも収容室31Eを設ける必要はない。例えば、U字状の弾性体33Aを前提として、第1支持部31Bの基準面31Hに弾性体33Aの両端部を差し込む溝を形成し、この溝により弾性体33AのU字状の形態を維持することかできる。この場合も、基準面31Hと弾性体33Aの間には空隙Aが設けられる。
【0051】
[耐熱性樹脂フィルム以外の弾性体を備える第二温度センサ60:
図10~
図12]
第二センサ30の弾性体33Aは耐熱性樹脂フィルムから構成されるが、本発明はこれに限らず、例えば支持体31の一部に弾性体(33A)の機能を持たせることができる。以下、支持体31にこの弾性体の機能を備える第二温度センサ60を、
図10~
図12を参照して説明する。なお、第二温度センサ60について、第二センサ30と同様の構成部分については、第二センサ30と同じ符号を付してその説明を省略することがある。また、第二温度センサ60は、第二温度センサ30と区別するため、第2実施形態に係る第二温度センサ60と称する。
【0052】
図10、
図11および
図12に示すように、第2実施形態に係る第二温度センサ60は、電気的な絶縁材料、例えば樹脂、セラミックスからなる支持体31と、支持体31に支持される温度検出部32と、を備える。
図10(a),(b)および
図12に示すように、支持体31は、第一支持部31Bと一体的に形成される梁31Jを備える。梁31Jが、第1実施形態に係る第二温度センサ30の弾性体33Aと同様の機能を備える。
【0053】
図10(a),(b)に示すように、梁31Jは、第一支持部31Bにおける幅方向Wに対向する側壁31G,31Gの中間に設けられる。また、梁31Jは、
図10(a),(b)および
図12に示すように、第一支持部31Bの先端部31Kから基端部31Lに向けて延出し、平面視する形状が矩形の部材である。平面視して矩形というのは本発明における一例に過ぎず、三角形など他の平面形状であっても差し支えない。
【0054】
梁31Jは、第二感熱体34を載せて支持する支持面31Mを備える。この支持面31Mは、第二温度センサ60がIHクッキングヒータ100に組み込まれたときに、天板101の下面に対向し、かつ、第2実施形態においては、基準面31Hに倣って段差のない面一な面をなす。この面一についても本発明の一例に過ぎず、第二感熱体34が天板101の下面に突き当てられることができる限り、支持面31Mが基準面31Hよりも上方に突き出ていてもよいし、その逆に、支持面31Mが基準面31Hよりも下方に窪んでいてもよい。
【0055】
梁31Jは、先端部31Kに支持される一方、基端部31Lの側は支持されずに自由端となっているから、片持ち梁を構成する。よって、梁31Jは第二温度センサ60の高さ方向Hについて、弾性を備えている。したがって、梁31Jを備える第二温度センサ60も、第二センサ30と同様に、第二感熱体34は、梁31Jに支持されながら、梁31Jが有する弾性力に応じた安定した圧力で天板101に押し当てられる。しかも、第二感熱体34を支持する弾性体としての梁31Jの背後には、空隙Aが設けられるので、第二センサ30と同様に、第二感熱体34に伝導した熱は、梁31Jを介して排出されにくい。
【0056】
また、第二温度センサ60は、梁31Jが第一支持部31Bと一体的に形成されるので、第一支持部31Bと別体として弾性体を用いる必要がない。したがって、第二温度センサ60は構成部材を少なくできる。
【0057】
なお、第2実施形態は、梁として片持ち梁を例にしたが、これは本発明における一例に過ぎない。所望する弾性が得られるのであれば、基端部31Lの側も第一支持部31Bに固定される両端固定梁とすることもできる。また、第2実施形態の片持ち梁は、第一支持部31Bの先端部31Kを固定端とし、
図10(a)における前後方向Lに延びる例を示したが、本発明はこれに限らず、
図10(a)における幅方向Wに延びる片持ち梁、両端固定梁とすることができる。
【0058】
[温度センサ10の構成]
上記実施の形態では、温度センサ10の各部の構成を詳細に説明したが、第二センサ30の数等は、適宜他の構成とすることができる。
また、先の説明では、第一センサ20と第二センサ30とで異なる構成のものを用いたが、第一センサ20についても第二センサ30と同様の構造のものを用いるようにしてもよい。
さらにまた、第二センサ30の温度検出部32や、第一センサ20における温度検出方式も、他の方式とすることも可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 温度センサ
20 第一センサ
21 保護管
22 第一感熱体
23 第一デュメット線
24 絶縁チューブ
26 接続子
27 第一リード線
30,60 第二センサ
31 支持体
31A 屈曲部
31B 第一支持部
31C 第二支持部
31D 電線収容路
31E 収容室
31F 底床
31G 側壁
31H 基準面
31J 弾性体(片持ち梁)
31K 先端部
31L 基端部
31M 支持面
32 温度検出部
33A,33B,33C,33D,33E,33F 弾性体
34 第二感熱体
36 保護層
37 第二デュメット線
39 第二リード線
40 配線接続部
41 接続端子
42 端子接続路
43 リード線接続路
50 コネクタ
100 IHクッキングヒータ
101 天板
110 コイル
200 炊事具
A 空隙