(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044182
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】内燃機関の冷却構造
(51)【国際特許分類】
F01P 7/16 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
F01P7/16 502E
F01P7/16 502B
F01P7/16 502A
F01P7/16 504A
F01P7/16 504E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149687
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(74)【代理人】
【識別番号】100183689
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 華子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 剛志
(72)【発明者】
【氏名】池谷 昌之
(72)【発明者】
【氏名】野間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】江見 崇雄
(57)【要約】
【課題】圧送装置の出力を変更することなく、サーモハウジングとラジエータとを繋ぐ通路部品が入口部分から抜けることを防止する。
【解決手段】内燃機関(ENG)の冷却構造は、内燃機関を流通した冷媒が流れる冷却通路と、冷却通路上に介装され、冷媒を冷却するラジエータ(RAD)と、冷却通路上であってラジエータよりも内燃機関側に介装され、冷媒の温度に応じて冷媒の流量を調整するサーモスタット3Dを内蔵したサーモハウジング3と、を備える。サーモハウジング3は、内燃機関からラジエータに向かって冷媒が流れる第一ハウジング通路3Aと、冷却通路20の一部を構成する通路部品に挿通されて締め付けられる通路取付部10とを有する。通路取付部10は、この通路取付部10の内径を狭めるように内側に突設されたオリフィス10aを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の冷却構造であって、
前記内燃機関を流通した冷媒が流れる冷却通路と、
前記冷却通路上に介装され、前記冷媒を冷却するラジエータと、
前記冷却通路上であって前記ラジエータよりも前記内燃機関側に介装され、前記冷媒の温度に応じて前記冷媒の流量を調整するサーモスタットを内蔵したサーモハウジングと、を備え、
前記サーモハウジングは、前記内燃機関から前記ラジエータに向かって前記冷媒が流れる第一ハウジング通路と、前記冷却通路の一部を構成する通路部品に挿通されて締め付けられる通路取付部と、を有し、
前記通路取付部は、当該通路取付部の内径を狭めるように内側に突設されたオリフィスを有する
ことを特徴とする、内燃機関の冷却構造。
【請求項2】
前記サーモハウジングは、前記内燃機関の潤滑油を冷却するオイルクーラに前記冷媒を供給する第一分岐通路の入口としての第一分岐部を有し、
前記第一分岐部は、前記第一ハウジング通路から分岐するよう形成されるとともに前記冷媒の流れ方向において前記オリフィスよりも上流側に位置する
ことを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項3】
前記オリフィスは、前記通路取付部における前記流れ方向の上流端部に位置し、
前記第一分岐部は、前記オリフィスに隣接して設けられている
ことを特徴とする、請求項2記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項4】
前記サーモハウジングは、前記内燃機関のスロットルボディに前記冷媒を供給する第二分岐通路の入口としての第二分岐部を有し、
前記第二分岐部は、前記第一ハウジング通路から分岐するよう形成されるとともに前記流れ方向において前記第一分岐部よりも上流側に位置する
ことを特徴とする、請求項2又は3記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項5】
前記第二分岐部の内径は、前記第一分岐部の内径よりも小さい
ことを特徴とする、請求項4記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項6】
前記サーモハウジングは、前記内燃機関が搭載される車両の車室内空調用のヒータに前記冷媒を供給する第三分岐通路の入口としての第三分岐部を有し、
前記第三分岐部は、前記第一ハウジング通路から分岐するよう形成されるとともに前記流れ方向において前記第二分岐部よりも上流側に位置し、
前記第三分岐部の内径は、前記第一分岐部の内径よりも大きい
ことを特徴とする、請求項4又は5記載の内燃機関の冷却構造。
【請求項7】
前記サーモハウジングは、前記第一ハウジング通路と空間を介して連通するとともに前記内燃機関から圧送装置に向かって前記冷媒が流れる第二ハウジング通路と、前記第二ハウジング通路とは別で設けられ前記内燃機関から前記ラジエータを迂回して前記圧送装置に向かって前記冷媒が流れるバイパス通路と、を有し、
前記バイパス通路は、前記第一ハウジング通路から分岐するよう形成されるとともに前記流れ方向において前記第一分岐部よりも上流側に位置する
ことを特徴とする、請求項2~6のいずれか1項に記載の内燃機関の冷却構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される内燃機関を冷却する構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、水冷式の内燃機関(以下「エンジン」という)には、冷却用の媒体(以下「冷却水」ともいう)が循環する通路と、冷却水を循環させるための圧送装置と、冷却水を冷却するためのラジエータと、ラジエータを迂回する通路とが設けられる。この迂回する通路には、冷却水の温度に応じて通路を開閉するサーモスタットが設けられ、サーモスタットにより冷却水の流路が切り替えられる(例えば特許文献1,2)。例えば、特許文献2の構造では、サーモスタットが一体に組み込まれたウォータアウトレットを介して冷却水が各所要部に分配される。なお、このウォータアウトレットには、サーモハウジングが一体に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-189421号公報
【特許文献2】特開2013-108429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サーモハウジングには、ラジエータを含む各所要部に繋がる冷却水の通路の入口部分(上流端部)が設けられ、この入口部分にホースやパイプといった通路部品が接続される。しかしながら、ラジエータに向かう冷却水の圧力が高すぎる場合、サーモハウジングとラジエータとを繋ぐ通路部品が入口部分から抜けるという不具合が生じうる。これに対し、圧送装置の出力を低減させて圧力を低くすることが考えられるが、圧送装置の出力変更は部品共用化の観点から好ましくない。
【0005】
本件の内燃機関の冷却構造は、このような課題に鑑み案出されたもので、圧送装置の出力を変更することなく、サーモハウジングとラジエータとを繋ぐ通路部品が入口部分から抜けることを防止することを目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示する内燃機関の冷却構造は、内燃機関の冷却構造であって、前記内燃機関を流通した冷媒が流通する冷却通路と、前記冷却通路上に介装され、前記冷媒を冷却するラジエータと、前記冷却通路上であって前記ラジエータよりも前記内燃機関側に介装され、前記冷媒の温度に応じて前記冷媒の流量を調整するサーモスタットを内蔵したサーモハウジングと、を備える。前記サーモハウジングは、前記内燃機関から前記ラジエータに向かって前記冷媒が流れる第一ハウジング通路と、前記冷却通路の一部を構成する通路部品に挿通されて締め付けられる通路取付部と、を有し、前記通路取付部は、当該通路取付部の内径を狭めるように内側に突設されたオリフィスを有する。
【0007】
(2)前記サーモハウジングは、前記内燃機関の潤滑油を冷却するオイルクーラに前記冷媒を供給する第一分岐通路の入口としての第一分岐部を有し、前記第一分岐部は、前記第一ハウジング通路から分岐するよう形成されるとともに前記冷媒の流れ方向において前記オリフィスよりも上流側に位置することが好ましい。
(3)前記オリフィスは、前記通路取付部における前記流れ方向の上流端部に位置し、前記第一分岐部は、前記オリフィスに隣接して設けられていることが好ましい。
【0008】
(4)前記サーモハウジングは、前記内燃機関のスロットルボディに前記冷媒を供給する第二分岐通路の入口としての第二分岐部を有し、前記第二分岐部は、前記第一ハウジング通路から分岐するよう形成されるとともに前記流れ方向において前記第一分岐部よりも上流側に位置することが好ましい。
(5)前記第二分岐部の内径は、前記第一分岐部の内径よりも小さいことが好ましい。
【0009】
(6)前記サーモハウジングは、前記内燃機関が搭載される車両の車室内空調用のヒータに前記冷媒を供給する第三分岐通路の入口としての第三分岐部を有し、前記第三分岐部は、前記第一ハウジング通路から分岐するよう形成されるとともに前記流れ方向において前記第二分岐部よりも上流側に位置し、前記第三分岐部の内径は、前記第一分岐部の内径よりも大きいことが好ましい。
【0010】
(7)前記サーモハウジングは、前記第一ハウジング通路と空間を介して連通するとともに前記内燃機関から圧送装置に向かって前記冷媒が流れる第二ハウジング通路と、前記第二ハウジング通路とは別に設けられ前記内燃機関から前記圧送装置に向かって前記冷媒が流れるバイパス通路と、を有し、前記バイパス通路は、前記第一ハウジング通路から分岐するよう形成されるとともに前記流れ方向において前記第一分岐部よりも上流側に位置することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
開示した内燃機関の冷却構造によれば、圧送装置の出力を変更することなく、サーモハウジングとラジエータとを繋ぐ通路部品が入口部分から抜けることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る内燃機関の冷却構造を説明するための全体図である。
【
図2】実施形態に係る冷却構造が備えるサーモハウジングを説明するための模式図である。
【
図3】実施形態に係る冷却構造が備えるサーモハウジングを示す側面図である。
【
図4】
図3のサーモハウジングを示す斜視図(
図3のA方向矢視図)である。
【
図5】
図3のサーモハウジングの通路接続部の断面図(
図4のB-B矢視断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、実施形態としての内燃機関の冷却構造について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0014】
[1.全体構成]
図1は、本実施形態の内燃機関1(ENG、以下「エンジン1」という)の冷却構造を説明するための全体図である。エンジン1は水冷式であり、車両(例えば自動車やトラック等)に搭載される。以下、エンジン1を冷却する冷媒を「冷却水」というが、冷媒の種類は特に限られない。車両は、エンジン車であってもよいし、エンジン1以外の駆動源を備えたハイブリッド車であってもよい。
【0015】
エンジン1には、冷却水を循環させる圧送装置2が付設される。圧送装置2は、例えばエンジン1の動力で作動する機械式のウォータポンプ(W/P)である。冷却構造は、圧送装置2に加え、エンジン1から流出した冷却水を各所に分配するサーモハウジング3(T/H)と、エンジン1を流通した冷却水が流れる冷却通路20と、冷却通路20上に介装されて冷却水を冷却するラジエータ4(RAD)とを備える。冷却水は、圧送装置2から吐出され、エンジン1のシリンダヘッド及びシリンダブロック内のウォータジャケット(いずれも図示略)内を流通したのち、サーモハウジング3を介して各所に分配され、再び圧送装置2に戻る。
【0016】
本実施形態の冷却構造では、冷却通路20として、ラジエータ4に向かうラジエータ行き通路30と、ラジエータ4を迂回して圧送装置2に向かう迂回通路35と、サーモハウジング3内で、後述する第一ハウジング通路3Aから分岐された三つの分岐通路31,32,33とが設けられる。
【0017】
図2は、本冷却構造において特徴的なサーモハウジング3の構成のみをピックアップした模式図である。サーモハウジング3は、冷却通路20上であってラジエータ4よりもエンジン1側に介装され、冷却水の温度に応じて冷却水の流量を調整するサーモスタット3Dを内蔵する。以下、サーモスタット3Dが内蔵される空間に符号3Cを付す。
図2に示すように、本実施形態のサーモハウジング3内には、空間3Cをなす壁部に形成された二つの入口3e,3f及び一つの出口3gを有する。一方の入口3eは、サーモハウジング3内を通って直接的に(なんらかの機器等を経由することなく)冷却水が流入する開口である。他方の入口3fは、ラジエータ4を通過した冷却水、及び、エンジン1の潤滑油を冷却するオイルクーラ5(O/C)を通過した冷却水の少なくとも一方が流入する開口である。なお、
図1及び
図2はいずれも、一方の入口3eがサーモスタット3Dにより閉鎖されている状態を示す。
【0018】
出口3gは、後述する流出口16を通じて迂回通路35に連通する開口である。サーモスタット3Dは、冷却水の温度が所定の下限値よりも低い場合に他方の入口3fを閉鎖して、冷却水がラジエータ4を迂回するように流路を切り替える。一方、冷却水の温度が、冷却を要する温度に達すると、サーモスタット3Dは一方の入口3eを閉鎖し又は狭めて、冷却水がラジエータ4を流通するように流路を切り替え、その流量を調整する。
【0019】
第一分岐通路31は、オイルクーラ5(O/C)に冷却水を供給するための流路である。第二分岐通路32は、エンジン1のスロットルボディ6(T/B)に冷却水を供給するための流路である。第三分岐通路33は、車両の車室内空調用のヒータ7(HTR)に冷却水を供給するための流路である。なお、本実施形態の冷却構造では、ヒータ7を冷却する第三分岐通路33上に、EGRクーラ8(E/C)及び電動ポンプ9(E/P)が設けられる。
【0020】
[2.要部構成]
次に、
図2~
図6を用いて、本冷却構造の要部構成を説明する。
図3はサーモハウジング3の側面図であり、
図4は
図3中の白抜き矢印Aの方向から見た斜視図である。
図5及び
図6はそれぞれ、
図4のB-B矢視断面図,
図3のC-C矢視断面図である。
【0021】
本実施形態のサーモハウジング3は、フランジ面23がエンジン1のシリンダヘッド又はシリンダブロックの側面に締結されることでエンジン1に固定される。
図3に示すように、フランジ面23には、冷却水がサーモハウジング3内に流入する開口15(以下「流入口15」という)が設けられる。また、サーモハウジング3には、サーモハウジング3から冷却水を排出する開口16(以下「流出口16」という)が設けられる。流出口16は、迂回通路35に接続され、ここから流出した冷却水は圧送装置2に向かう。さらに本実施形態のサーモハウジング3には、ヒータ7を流通したのちの冷却水が流入する流入部17と、ラジエータ4を流通したのちの冷却水が流入する第二流入口18(
図4参照)とが設けられる。
【0022】
図2に示すように、サーモハウジング3は、エンジン1からラジエータ4に向かって冷却水が流れる第一ハウジング通路3Aと、ラジエータホース30a(
図5中の二点鎖線、通路部品)に挿通されて締め付けられる通路取付部10とを有する。ラジエータホース30aは、冷却通路20の一部であるラジエータ行き通路30を構成する配管である。一方、通路取付部10は、サーモハウジング3に形成されている円筒状の部分であり、ラジエータホース30aの先端が当接する段差部10bを有する。
【0023】
ラジエータホース30aの先端の内部には、通路取付部10が差し込まれ、ラジエータホース30aを外側からクランプすることで、ラジエータホース30aの内周面と通路取付部10の外周面とが密着した状態で両者が固定される。本冷却構造では、圧送装置2の出力を従来のものから変更することなく、ラジエータ4に向かって流れる冷却水の圧力(流量)を下げることで、ラジエータホース30aが通路取付部10から外れることを防止する。
【0024】
具体的には、
図2,
図4及び
図5に示すように、通路取付部10は、その内径を狭めるように内側に突設されたオリフィス10aを有する。第一ハウジング通路3Aを流れる冷却水は、オリフィス10aを通過することでその圧力(流量)が低下するため、ラジエータホース30aが通路取付部10から抜けたり、両者の固定が緩んだりすることがない。
図2に示すように、オリフィス10aの内径Daは、第一ハウジング通路3Aの内径D3(以下「メイン内径D3」という)よりも小さく、例えばメイン内径D3の0.7倍程度に設定される。なお、オリフィス10aの部分では、通路取付部10の肉厚が大きくなっていることから、補強効果もある。
【0025】
図2~
図5に示すように、サーモハウジング3は、オイルクーラ5に冷却水を供給する第一分岐通路31の入口としての第一分岐部11を有する。第一分岐部11は、第一ハウジング通路3Aから分岐するよう形成されており、冷却水の流れ方向においてオリフィス10aよりも上流側に位置する。なお、以下の説明において、単に「上流」,「下流」というときは、流入口15からサーモハウジング3内に流入した冷却水がサーモハウジング3の第一ハウジング通路3A内を流れる方向(流れ方向)を基準にする。
【0026】
本冷却構造では、
図2に示すように、オリフィス10aが通路取付部10の上流端部に位置し、第一分岐部11がオリフィス10aに隣接して設けられる。第一分岐部11のボス部の肉厚W2は、オリフィス10aの厚み(流れ方向の寸法)W1よりも大きい。
図5に示す例では、オリフィス10aの上流面の位置P1と、第一分岐部11のボス部の外周面における最下流位置P2とが、流れ方向において同一の位置に設定されている。言い換えると、オリフィス10aの根元部分と第一分岐部11のボス部の根元部分とが、薄肉部分を介さずに繋がっている。これにより、補強効果がより高められている。なお、通路取付部10の壁の肉厚は、
図5では第一分岐部11よりも上流側の壁の肉厚よりも薄くなっているが、これらが互いに同一であってもよい。
【0027】
図2~
図4に示すように、サーモハウジング3は、スロットルボディ6に冷却水を供給する第二分岐通路32の入口としての第二分岐部12を有する。第二分岐部12は、第一ハウジング通路3Aから分岐するよう形成されており、第一分岐部11よりも上流側に位置する。本冷却構造では、
図2に示すように、第二分岐部12の内径D12が、第一分岐部11の内径D11よりも小さい。このような位置関係及び内径の違いによって、スロットルボディ6に向かう冷却水の流量よりも、オイルクーラ5に向かう冷却水の流量の方が多くなる。
【0028】
図2~
図4に示すように、サーモハウジング3は、ヒータ7に冷却水を供給する第三分岐通路33の入口としての第三分岐部13を有する。第三分岐部13は、第一ハウジング通路3Aから分岐するよう形成されており、第二分岐部12よりも上流側に位置する。本冷却構造では、
図2に示すように、第三分岐部13の内径D13が、第一分岐部11の内径D11よりも大きい。このため、ヒータ7に向かう冷却水の流量が十分に確保される。なお、
図2に示すように、各分岐部11~13の内径D11~D13は、通路取付部10の内径(例えばメイン内径D3と同等)や流出口16の内径D16よりも小さい。
【0029】
本冷却構造のサーモハウジング3は、第一ハウジング通路3Aと空間3Cを介して連通するとともにエンジン1から圧送装置2に向かって冷却水が流れる第二ハウジング通路3B(
図2中の二点鎖線)と、第二ハウジング通路3Bとは別で設けられエンジン1からラジエータ4を迂回して圧送装置2に向かって冷却水が流れるバイパス通路14とを有する。第二ハウジング通路3Bは、出口3gと流出口16との間の通路である。第二ハウジング通路3Bには、サーモスタット3Dによって一方の入口3eが閉鎖された状態では第二流入口18から流入した冷却水が空間3Cを介して流通し、サーモスタット3Dによって他方の入口3fが閉鎖された状態では第一ハウジング通路3Aの冷却水が空間3Cを介して流通する。
【0030】
図2,
図3及び
図6に示すように、バイパス通路14は、サーモハウジング3内に流入した冷却水を、ラジエータ4を迂回して圧送装置2に戻す通路である。バイパス通路14は、第一ハウジング通路3Aから分岐するよう形成されており、第一分岐部11よりも上流側に位置する。バイパス通路14は、サーモスタット3Dの開閉状態によらず、ラジエータ4に向かう冷却水の一部を迂回通路35に流すことでラジエータ4に流れる流量を低減させる機能と、オリフィス10aによって上昇した第一ハウジング通路3Aの水圧の一部を逃がすことによって圧送装置2への負担を減らし冷却水の総流量の低下を抑制する機能を併せ持つ。本実施形態では、バイパス通路14が、第一ハウジング通路3Aと第二ハウジング通路3Bとを直接的に繋ぐように設けられることで、空間3Cを通過することなくラジエータ4に向かう冷却水の一部を迂回通路35に流すように形成されている。
【0031】
図1及び
図2を用いて冷却水の流れを簡単に説明する。まず、エンジン1から流出した冷却水は、流入口15からサーモハウジング3内に流入する。サーモスタット3Dによって一方の入口3eが閉鎖されていれば、冷却水は第一ハウジング通路3Aを流れ、通路取付部10に固定されたラジエータホース30a(ラジエータ行き通路30)を通じてラジエータ4を流通する。ラジエータ4を通過後、サーモスタット3Dの他方の入口3fから流入して出口3gを通過し、流出口16から迂回通路35へと流れて、圧送装置2に戻る。
【0032】
また、第一ハウジング通路3Aを流れる冷却水は、サーモハウジング3内において第一分岐通路31,第二分岐通路32及び第三分岐通路33に分かれ、それぞれ、オイルクーラ5,スロットルボディ6及びヒータ7に向かって流れる。オイルクーラ5を通過した冷却水は、ラジエータ4を通過した冷却水と合流し、サーモスタット3Dの他方の入口3fに流入する。スロットルボディ6を通過した冷却水は、サーモスタット3Dを迂回して、迂回通路35に流入する。第三分岐通路33を流れる冷却水は、まずEGRクーラ8に流入し、電動ポンプ9,ヒータ7の順に流れ、サーモハウジング3に戻る。
【0033】
[3.作用,効果]
(1)上述した冷却構造によれば、エンジン1から流出した冷却水がサーモハウジング3に流入しラジエータ4に向かう途中の通路取付部10にオリフィス10aが設けられているため、ラジエータ4に向かう冷却水の圧力(流量)を低減することができる。言い換えると、圧送装置2の出力を変更することなく、ラジエータ4に向かって流れる冷却水の圧力(流量)を下げることができる。これにより、ラジエータホース30aがサーモハウジング3から外れたり緩んだりといった不具合を回避できる。さらに、オリフィス10aの部分は壁面が肉厚になるため、通路取付部10を補強することもできる。このため、通路取付部10にラジエータホース30aをクランプして取り付ける場合に、強くクランプできるようになり、これによってもラジエータホース30aの抜けや緩みを防止できる。
【0034】
(2)上記の冷却構造では、サーモハウジング3に、オイルクーラ5に繋がる第一分岐部11が設けられており、第一分岐部11がオリフィス10aの上流側に位置する。このため、オリフィス10aの下流側への冷却水の流入抵抗が増すことから、オリフィス10aよりも上流側に位置する第一分岐部11からオイルクーラ5へ流れる冷却水量を増加させることができる。これにより、仮に、部品の流用によって径の小さなオイルクーラ5を取り付けた場合でも、冷却能力が不足する事態を回避できる。言い換えると、冷却能力を低下させることなく容易に部品の流用が可能となる。
【0035】
(3)上記のサーモハウジング3では、オリフィス10aが通路取付部10の上流端部に位置するとともに、第一分岐部11がオリフィス10aに隣接して設けられていることから、通路取付部10の補強効果をより高めることができる。さらに、オリフィス10aの直上流にオイルクーラ5への分岐部11が位置するため、冷却水がオイルクーラ5に向かってより流れやすくなる。
【0036】
(4)上記の冷却構造では、サーモハウジング3に、スロットルボディ6に繋がる第二分岐部12が設けられており、この第二分岐部12は第一分岐部11の上流側に配置されている。スロットルボディ6に冷却水を流すことで、寒冷地でのスロットルバルブの凍結を防止することが可能であるが、このとき必要となる冷却水量はそれほど多くはなく、逆に冷却水を流しすぎると他の通路への冷却水が不足しうる。そこで、上述した冷却構造では、オリフィス10aの上流にオイルクーラ5に繋がる第一分岐部11を設け、さらにこの上流にスロットルボディ6に繋がる第二分岐部12を設けることで、第一分岐部11はオリフィス10aの影響を大きく受けてオイルクーラ5には冷却水が流れやすくし、第二分岐部12はオリフィス10aの影響が小さいためスロットルボディ6には冷却水が流れにくくできる。このため、冷却水が必要な箇所に適切な量の冷却水を供給することができる。
【0037】
(5)特に、上記のサーモハウジング3では、第二分岐部12の内径D12が第一分岐部11の内径D11よりも小さいことから、スロットルボディ6への冷却水の流量を絞ることができ、その分、第一分岐部11といった他の分岐通路へ冷却水がより流れやすくなる。
【0038】
(6)上記の冷却構造では、サーモハウジング3に、ヒータ7に繋がる第三分岐部13が設けられており、第三分岐部13が第二分岐部12の上流側に位置するとともに、第三分岐部13の内径D13が第一分岐部11の内径D11よりも大きくなっている。ヒータ7は多くの冷却水を必要とするため第三分岐部13(第三分岐通路33)の内径D13は大きい方が好ましいが、そうすると、オイルクーラ5やスロットルボディ6へ冷却水が流れにくくなる。そこで、第三分岐部13を、オリフィス10aに対し、第一分岐部11及び第二分岐部12よりも遠い位置に配置することでオリフィス10aの影響を受けにくくでき、各所へ適切に冷却水を供給できる。
【0039】
(7)上記の冷却構造では、サーモハウジング3に、第二ハウジング通路3Bとは別で、エンジン1からラジエータ4を迂回して圧送装置2に向かって冷却水が流れるバイパス通路14が設けられており、バイパス通路14が第一分岐部11よりも上流側に位置する。このため、第二ハウジング通路3Bが閉鎖状態であっても、冷却水の一部を、バイパス通路14を通じて迂回通路35に流すことができることから、ラジエータ4に向かう冷却水の流量を低減させることができる。また、オリフィス10aによって上昇した第一ハウジング通路3Aの水圧の一部を逃がすことで圧送装置2の負担を軽減でき、冷却水の総流量の低下を抑制することができる。なお、バイパス通路14を設けたとしてもオリフィス10aによりオイルクーラ5への冷却水の流量を十分に確保することができる。
【0040】
[4.その他]
上述した冷却構造は一例であって、上述したものに限られない。例えば、上述したバイパス通路14に代えて、冷却水を圧送装置2とサーモハウジング3との間で循環させる(すなわちエンジン1を介さない)バイパス通路を設けてもよい。バイパス通路を設ける場合には、少なくとも、エンジン1からラジエータ4を迂回して圧送装置2に向かって冷却水が流れるように形成されており、第一分岐部11よりも上流側に位置していればよい。
【0041】
また、ヒータ7の冷却において、エンジン1の冷却水とは別の冷却水を用いる場合には、上述した第三分岐部13(第三分岐通路33)は不要である。また、スロットルバルブの凍結防止用の装置を別途備える場合や、スロットルボディ6に冷却水を流す必要のない場合には、上述した第二分岐部12(第二分岐通路32)は不要である。反対に、上記の分岐部以外の分岐部をサーモハウジング3に設けてもよい。
【0042】
第一分岐部11(第一分岐通路31)を設ける場合に、その位置は上述した位置に限られない。
図5では、オリフィス10aの上流面の位置P1と、第一分岐部11のボス部の外周面における最下流位置P2とが、流れ方向において同一の位置に設定されているが、これらの位置P1,P2が流れ方向において離隔していてもよいし、オリフィス10aとボス部とがラップしていてもよい。後者の場合、補強効果を一層高めることができる。
【0043】
なお、上述した三つの分岐部11~13を設ける場合に、各部の内径D11~D13の大小関係が上記と異なるように設定されていてもよい。また、オリフィス10aの内径Daや厚みW1は一例であって、上述したものに限られない。
さらに、
図1に示す冷却通路も一例であり、各通路の繋がり方は上述したものに限られない。
【符号の説明】
【0044】
1 エンジン(内燃機関)
2 圧送装置
3 サーモハウジング
3A 第一ハウジング通路
3B 第二ハウジング通路
3C 空間
3D サーモスタット
4 ラジエータ
5 オイルクーラ
6 スロットルボディ
7 ヒータ
10 通路取付部
10a オリフィス
11 第一分岐部
12 第二分岐部
13 第三分岐部
14 バイパス通路
20 冷却通路
30 ラジエータ行き通路
30a ラジエータホース(通路部品)
31 第一分岐通路
32 第二分岐通路
33 第三分岐通路