(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044213
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20220310BHJP
G01N 15/14 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G01N15/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149737
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】梅津 友行
(72)【発明者】
【氏名】山根 健治
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043AA06
2G043BA16
2G043CA06
2G043CA09
2G043EA01
2G043FA01
2G043HA09
2G043JA01
2G043JA02
2G043JA03
2G043JA04
2G043JA05
2G043LA02
(57)【要約】
【課題】
本技術は、蛍光色素標識抗体のより良い組合せを自動的に提案する手法を提供することを主目的とする。
【解決手段】
本技術は、サンプルの解析に用いる複数の生体分子を前記サンプルにおける発現量に基づき分類した発現量カテゴリーと、前記サンプルの解析に用いることが可能な複数の蛍光体を明るさに基づき分類した明るさカテゴリーと、前記複数の蛍光体間の相関情報と、前記複数の生体分子の発現関係情報とに基づき、生体分子に対する蛍光体の組合せリストを生成する処理部を備えており、前記処理部は、前記組合せリストにて前記生体分子に割り当てる前記蛍光体を、前記生体分子が属する発現量カテゴリーに対応付けられた明るさカテゴリーに属する蛍光体から選択する、情報処理装置を提供する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルの解析に用いる複数の生体分子を前記サンプルにおける発現量に基づき分類した発現量カテゴリーと、前記サンプルの解析に用いることが可能な複数の蛍光体を明るさに基づき分類した明るさカテゴリーと、前記複数の蛍光体間の相関情報と、前記複数の生体分子の発現関係情報とに基づき、生体分子に対する蛍光体の組合せリストを生成する処理部を備えており、
前記処理部は、前記組合せリストにて前記生体分子に割り当てる前記蛍光体を、前記生体分子が属する発現量カテゴリーに対応付けられた明るさカテゴリーに属する蛍光体から選択する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記発現関係情報を用いて、前記組合せリストに関する分離能の評価を行う、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記発現関係情報を用いて、前記分離能の評価において評価対象となる蛍光体ペアを特定する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記分離能の評価における評価指標は、蛍光体間ステインインデックスであり、
前記処理部は、前記分離能の評価において、前記特定された蛍光体ペアの蛍光体間ステインインデックスを参照する、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記発現関係情報はツリー構造を有する、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記発現関係情報は、各生体分子の発現の有無又は程度に関する情報を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記発現関係情報は、取得することが想定される測定結果データから抽出された発現関係情報を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記発現関係情報は、取得済みの測定結果データから抽出された発現関係情報を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記処理部は、取得することが想定される測定結果データの入力を受け付ける画面を出力装置に出力させる、請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記処理部は、取得済みの測定結果データから発現関係情報を抽出し、当該抽出された発現関係情報を用いて、前記組合せリストに関する分離能の評価を行う、請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記処理部は、前記分離能の評価における評価対象の特定において、出力対象とする生体分子の組合せに関する組合せ情報をさらに用いる、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記処理部は、前記発現量カテゴリー及び前記明るさカテゴリーに基づき生成されうる全ての組合せリストに対して、前記発現関係情報を用いて、分離能の評価を実行する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記処理部は、前記分離能の評価結果に基づき、前記全ての組合せリストのうちから最適な組合せリストを特定する、請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記処理部は、前記組合せリストを用いて実行した蛍光分離シミュレーションの結果を出力装置に出力させる、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記処理部は、前記蛍光分離シミュレーションを実行するために用いるシミュレーション用データとして、前記組合せリストを構成する蛍光体群のうちから1つの蛍光体が欠如した1色欠如蛍光体群によって染色された粒子に関するデータを用いる、請求項14に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記処理部は、前記蛍光分離シミュレーションの結果を次元圧縮して得られた分布図を出力装置に出力させる、請求項14に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記処理部は、前記蛍光分離シミュレーションの結果を次元圧縮することで取得された分布図中の各クラスタの分離度を数値として出力装置に出力させる、請求項14に記載の情報処理装置。
【請求項18】
サンプルの解析に用いる複数の生体分子を前記サンプルにおける発現量に基づき分類した発現量カテゴリーと、前記サンプルの解析に用いることが可能な複数の蛍光体を明るさに基づき分類した明るさカテゴリーと、前記複数の蛍光体間の相関情報と、前記複数の生体分子の発現関係情報とに基づき、生体分子に対する蛍光体の組合せリストを生成するリスト生成工程を含み、
前記リスト生成工程において、前記組合せリストにて前記生体分子に割り当てる前記蛍光体は、前記生体分子が属する発現量カテゴリーに対応付けられた明るさカテゴリーに属する蛍光体から選択される、
情報処理方法。
【請求項19】
サンプルの解析に用いる複数の生体分子を前記サンプルにおける発現量に基づき分類した発現量カテゴリーと、前記サンプルの解析に用いることが可能な複数の蛍光体を明るさに基づき分類した明るさカテゴリーと、前記複数の蛍光体間の相関情報と、前記複数の生体分子の発現関係情報とに基づき、生体分子に対する蛍光体の組合せリストを生成するリスト生成工程を情報処理装置に実行させるためのものであり、且つ、
前記リスト生成工程において、前記組合せリストにて前記生体分子に割り当てる前記蛍光体は、前記生体分子が属する発現量カテゴリーに対応付けられた明るさカテゴリーに属する蛍光体から選択される、
プログラム。
【請求項20】
サンプルの解析に用いる複数の生体分子に蛍光体が割り当てられた生体分子に対する蛍光体の組合せリストに関する分離能の評価を実行する処理部を備えており、
前記処理部は、前記複数の生体分子の発現関係情報を用いて、前記組合せリストに関する分離能の評価を行う、
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。より詳細には、本技術は、蛍光体の生体分子への割り当ての仕方を提案する情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば細胞、微生物、及びリポソームなどの粒子集団を蛍光色素によって標識し、当該粒子集団のそれぞれの粒子にレーザ光を照射して励起された蛍光色素から発生する蛍光の強度及び/又はパターンを計測することによって、粒子の特性を測定することが行われている。当該測定を行う粒子分析装置の代表的な例として、フローサイトメータを挙げることができる。
【0003】
フローサイトメータは、流路内を1列に並んで通流する粒子に特定波長のレーザ光(励起光)を照射して、各粒子から発せられた蛍光及び/又は散乱光を検出することにより、複数の粒子を1個ずつ分析する装置である。フローサイトメータは、光検出器で検出した光を電気的信号に変換して数値化し、統計解析を行うことにより、個々の粒子の特性、例えば種類、大きさ、及び構造などを判定することができる。
【0004】
フローサイトメータの分析対象である粒子集団を標識するために用いる蛍光色素の選択手法に関してこれまでにいくつかの技術が提案されている。例えば以下の特許文献1には、フローサイトメータのプローブパネルを設計する方法が記載されており、当該方法は、第1チャネルで測定されるように意図される第1標識の発光によって生じる、第2チャネルへの漏れ込み効果を定量化するひずみ係数を決定することと、前記第1標識及び第1プローブを含む、第1プローブ-標識の組み合わせの予測最大信号を入力することと、前記ひずみ係数及び前記第1プローブ-標識の組み合わせの前記予測最大信号に基づいて、前記第2チャネルにおける検出限界の増加を計算することと、前記計算した検出限界の増加に基づいて、前記プローブパネルに含まれるプローブ-標識の組み合わせを選択することと、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フローサイトメータによる分析の対象である粒子集団を標識するために、しばしば複数の蛍光色素標識抗体が用いられる。当該分析において用いられる蛍光色素標識抗体の組合せの決定プロセスはパネルデザインとも呼ばれる。当該分析において用いられる蛍光色素標識抗体の数は増加傾向にあり、この数が増加するにつれて、パネルデザインが困難になる。
【0007】
そこで、本技術は、蛍光色素標識抗体のより良い組合せを自動的に提案する手法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術は、サンプルの解析に用いる複数の生体分子を前記サンプルにおける発現量に基づき分類した発現量カテゴリーと、前記サンプルの解析に用いることが可能な複数の蛍光体を明るさに基づき分類した明るさカテゴリーと、前記複数の蛍光体間の相関情報と、前記複数の生体分子の発現関係情報とに基づき、生体分子に対する蛍光体の組合せリストを生成する処理部を備えており、
前記処理部は、前記組合せリストにて前記生体分子に割り当てる前記蛍光体を、前記生体分子が属する発現量カテゴリーに対応付けられた明るさカテゴリーに属する蛍光体から選択する、情報処理装置を提供する。
前記処理部は、前記発現関係情報を用いて、前記組合せリストに関する分離能の評価を行いうる。
前記処理部は、前記発現関係情報を用いて、前記分離能の評価において評価対象となる蛍光体ペアを特定しうる。
前記分離能の評価における評価指標は、蛍光体間ステインインデックスであってよく、
前記処理部は、前記分離能の評価において、前記特定された蛍光体ペアの蛍光体間ステインインデックスを参照しうる。
前記発現関係情報はツリー構造を有してよい。
前記発現関係情報は、各生体分子の発現の有無又は程度に関する情報を含みうる。
前記発現関係情報は、取得することが想定される測定結果データから抽出された発現関係情報を含みうる。
前記発現関係情報は、取得済みの測定結果データから抽出された発現関係情報を含みうる。
前記処理部は、取得することが想定される測定結果データの入力を受け付ける画面を出力装置に出力させうる。
前記処理部は、取得済みの測定結果データから発現関係情報を抽出し、当該抽出された発現関係情報を用いて、前記組合せリストに関する分離能の評価を行いうる。
前記処理部は、前記分離能の評価における評価対象の特定において、出力対象とする生体分子の組合せに関する組合せ情報をさらに用いてもよい。
前記処理部は、前記発現量カテゴリー及び前記明るさカテゴリーに基づき生成されうる全ての組合せリストに対して、前記発現関係情報を用いて、分離能の評価を実行しうる。
前記処理部は、前記分離能の評価結果に基づき、前記全ての組合せリストのうちから最適な組合せリストを特定しうる。
前記処理部は、前記組合せリストを用いて実行した蛍光分離シミュレーションの結果を出力装置に出力させうる。
前記処理部は、前記蛍光分離シミュレーションを実行するために用いるシミュレーション用データとして、前記組合せリストを構成する蛍光体群のうちから1つの蛍光体が欠如した1色欠如蛍光体群によって染色された粒子に関するデータを用いうる。
前記処理部は、前記蛍光分離シミュレーションの結果を次元圧縮して得られた分布図を出力装置に出力させうる。
前記処理部は、前記蛍光分離シミュレーションの結果を次元圧縮することで取得された分布図中の各クラスタの分離度を数値として出力装置に出力させうる。
【0009】
また、本技術は、サンプルの解析に用いる複数の生体分子を前記サンプルにおける発現量に基づき分類した発現量カテゴリーと、前記サンプルの解析に用いることが可能な複数の蛍光体を明るさに基づき分類した明るさカテゴリーと、前記複数の蛍光体間の相関情報と、前記複数の生体分子の発現関係情報とに基づき、生体分子に対する蛍光体の組合せリストを生成するリスト生成工程を含み、
前記リスト生成工程において、前記組合せリストにて前記生体分子に割り当てる前記蛍光体は、前記生体分子が属する発現量カテゴリーに対応付けられた明るさカテゴリーに属する蛍光体から選択される、情報処理方法も提供する。
【0010】
また、本技術は、サンプルの解析に用いる複数の生体分子を前記サンプルにおける発現量に基づき分類した発現量カテゴリーと、前記サンプルの解析に用いることが可能な複数の蛍光体を明るさに基づき分類した明るさカテゴリーと、前記複数の蛍光体間の相関情報と、前記複数の生体分子の発現関係情報とに基づき、生体分子に対する蛍光体の組合せリストを生成するリスト生成工程を情報処理装置に実行させるためのものであり、且つ、
前記リスト生成工程において、前記組合せリストにて前記生体分子に割り当てる前記蛍光体は、前記生体分子が属する発現量カテゴリーに対応付けられた明るさカテゴリーに属する蛍光体から選択される、プログラムも提供する。
【0011】
また、本技術は、サンプルの解析に用いる複数の生体分子に蛍光体が割り当てられた生体分子に対する蛍光体の組合せリストに関する分離能の評価を実行する処理部を備えており、
前記処理部は、前記複数の生体分子の発現関係情報を用いて、前記組合せリストに関する分離能の評価を行う、情報処理装置も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】フローサイトメトリーにおいて本技術を適用する場合の実験フロー例を示す図である。
【
図4】種々の血液細胞及び各血液細胞を特徴付ける表面マーカーを示す図である。
【
図5】本技術に従う情報処理装置の構成例を示す図である。
【
図6】本技術に従う情報処理装置が実行する処理のフロー図の例である。
【
図7A】本技術に従う情報処理を説明するための図である。
【
図7B】発現関係情報の入力を受け付けるためのウィンドウの例を示す図である。
【
図7C】発現関係情報に基づく生体分子ペアの特定の仕方の例を説明する図である。
【
図8】相関係数二乗値のマトリックスを示す図である。
【
図9】ステインインデックスを説明するための図である。
【
図10】蛍光体間ステインインデックスマトリックスの例を示す図である。
【
図11】組合せリストを構成する蛍光体の変更処理を説明する図である。
【
図12】最適化された組合せリストの例を示す図である。
【
図13】本技術に従う情報処理装置が実行する処理のフロー図の例である。
【
図14】蛍光体組合せの調整処理の例を示すフロー図である。
【
図15】蛍光体の生体分子への割り当ての仕方を説明する概念図である。
【
図16】蛍光体間SIのデータの例を示す図である。
【
図17】分離性能が悪い蛍光体を代替する候補蛍光体が表示されるウィンドウを例を示す図である。
【
図18A】蛍光体間SIの計算結果を示す図である。
【
図18B】蛍光体間SIの計算結果を示す図である。
【
図19】本技術に従う情報処理装置が実行する処理のフロー図の例である。
【
図20】発現関係情報及び組合せ情報に基づく評価対象の特定の仕方を説明するための図である。
【
図21】想定測定結果データを生成するための情報の入力を受け付ける画面の例を示す図である。
【
図22】想定測定結果データが入力されたウィンドウの例を示す図である。
【
図23】想定測定結果データから抽出された発現関係情報及び組合せ情報の例を示す図である。
【
図24】取得済み測定結果データの例を示す図である。
【
図25】取得済み測定結果データから抽出された発現関係情報及び組合せ情報の例を示す図である。
【
図26】単染色シミュレーション用データの構成例を示す図である。
【
図27】FMOシミュレーション用データの構成例を示す図である。
【
図28】単染色シミュレーション結果を示す図である。
【
図29】FMOシミュレーション結果を示す図である。
【
図30】分布図における分離度の数値化手法を説明するための図である。
【
図31】単染色シミュレーション結果をtSNE次元圧縮することにより得られた分布図を示す。
【
図32】FMOシミュレーション結果をtSNE次元圧縮することにより得られた分布図を示す。
【
図33】実験例1の組合せリストに関するFMOシミュレーション用データを用いて生成されたスキャッタグラムを示す図である。
【
図34】実験例2の組合せリストに関するFMOシミュレーション用データを用いて生成されたスキャッタグラムを示す図である。
【
図35】スキャッタグラム群に対してtSNE次元圧縮を行って得られた分布図及び当該分布図から算出されたDB-Indexの値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、本技術の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。なお、本技術の説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施形態(情報処理装置)
(1)発明の課題の詳細
(2)本技術を用いて行われる実験のフロー例
(3)第1の実施形態の説明
(3-1)情報処理装置の構成例
(3-2)処理部による処理の例(処理フロー)
(3-3)処理部による処理の例(蛍光体組合せの調整処理)
(3-4)処理部による処理の例(軸情報の入力)
(3-5)処理部による処理の例(予想される結果に基づく発現関係情報の入力)
(3-6)処理部による処理の例(測定結果に基づく発現関係情報の入力)
(3-7)処理部による処理の例(FMOシミュレーション)
(3-8)処理部による処理の例(次元圧縮)
(実施例1:ツリー情報を用いることによる分離性能向上)
(実施例2:FMOシミュレーション結果のtSNE次元圧縮による分離性能の可視化及び数値化)
2.第2の実施形態(情報処理システム)
3.第3の実施形態(情報処理方法)
4.第4の実施形態(プログラム)
【0014】
1.第1の実施形態(情報処理装置)
【0015】
(1)発明の課題の詳細
【0016】
フローサイトメータは、例えば蛍光計測の光学系の観点から、フィルタ型及びスペクトル型に大別されうる。フィルタ型のフローサイトメータは、目的の蛍光色素から目的の光情報のみを取り出すため、
図1の1に示されるような構成を採用しうる。具体的には、粒子への光照射により生じた光を、例えばダイクロイックミラーなどの波長分離手段DMで複数に分岐させ、異なるフィルタを通し、そして、分岐したそれぞれの光を、複数の検出器、例えば光電子増倍管PMTなどにより計測する。すなわち、フィルタ型のフローサイトメータでは、各蛍光色素に対応した波長帯域毎の蛍光検出を、各蛍光色素に対応する検出器を用いて行うことで多色の蛍光検出を行っている。その際、蛍光波長が近接した複数の蛍光色素が用いられる場合は、より正確な蛍光量を算出するために蛍光補正処理が行われうる。しかしながら、蛍光スペクトルが非常に近接している複数の蛍光色素が用いられる場合、検出されるべき検出器以外の検出器への蛍光の漏れ込みが大きくなるために、蛍光補正ができないような事象も発生しうる。
【0017】
スペクトル型フローサイトメータは、粒子への光照射により生じた光の検出により得られた蛍光データを、染色に使用した蛍光色素のスペクトル情報によりデコンボリューション(Unmixing)することで、各粒子の蛍光量を分析する。
図1の2に示されるように、スペクトル型フローサイトメータは、プリズム分光光学素子Pを使って蛍光を分光する。また、スペクトル型フローサイトメータ、当該分光された蛍光を検出するために、フィルタ型フローサイトメータが有する多数の光検出器の代わりに、アレイ型検出器、例えばアレイ型光電子増倍管PMTなどを備えている。スペクトル型フローサイトメータは、フィルタ型フローサイトメータと比べて、蛍光の漏れ込みの影響を回避しやすく、複数の蛍光色素を用いた分析により適している。
【0018】
基礎医学及び臨床分野において、網羅的解釈を進めるために、フローサイトメトリーにおいても、複数の蛍光色素を使用したマルチカラー解析が普及してきている。しかし、マルチカラー分析のように一度の測定で多数の蛍光色素を使用すると、フィルタ型フローサイトメータでは、上記のとおり、それぞれの検出器に、目的とする蛍光色素以外の蛍光色素からの蛍光が漏れ込み、分析精度が低下する。色数が多い場合には、スペクトル型フローサイトメータを用いることにより、蛍光の漏れ込みの問題を或る程度解消することができるが、より適切なマルチカラー解析を行うためには、蛍光スペクトル形状と抗体発現量と蛍光色素の明るさをそれぞれ加味した適切なパネルデザイン(蛍光色素と抗体の組み合わせ設計)が必要である。
【0019】
パネルデザインは、従来、ユーザの経験と試行錯誤による調整に依存するところの大きかった。しかし、色数が増えるに伴い、特には色数が20程度又はそれ以上になると、考慮すべき蛍光色素の組み合わせの数が急激に増えるため、十分な分解性能を持った最適な色素組み合わせを見つけることは極めて困難になる。
【0020】
フローサイトメータを販売する装置メーカー及び蛍光色素付き抗体を販売する試薬メーカーなどが、自らの製品の販売促進のための、パネルデザイン用のWebツールを公開している。しかしながら、これらのWebツールは、色数が多くなるにつれて、十分な実用性を発揮できない場合がある。
【0021】
色数が例えば10以上になると蛍光スペクトル同士に大きな重なりが生じることを回避することができず、人がスペクトルの見た目の重なりから実際に発生する蛍光漏れ込みを予想することが困難になる。1つのパラメータであれば、人による手作業でも或る程度調整可能であるが、マルチカラー解析のパネルデザインには調整するべきパラメータが独立して複数存在する。考慮すべきパラメータの主な例として、例えば、上記で述べた蛍光スペクトル形状、抗原の発現量、及び蛍光色素の明るさを挙げることができる。さらに、蛍光色素の励起特性、購入可能であるか、及びコストが考慮されることも望ましい。そのため、どの蛍光色素を優先して採用すべきかの判断や、蛍光色素の一部の組み合わせの変更による全体への影響の予想は、非常に難しい。蛍光補正に関する基本的な原理や、各蛍光色素及び抗原に関する独立した情報だけでは、適切なパネルデザインにとって十分とはいえず、手作業で最適な組み合わせを見つけることは極めて困難である。上記の複数のパラメータを考慮した場合に生成されるパネル候補の数は膨大になるので、自動的により良いパネルを提示することができれば、ユーザの大幅な負担軽減に貢献することができると考えられる。
【0022】
(2)本技術を用いて行われる実験のフロー例
【0023】
本技術は、上記で述べたとおり、フローサイトメトリーなどの粒子分析において用いられる抗体と蛍光体との組合せに関するリストを生成するために用いられてよい。フローサイトメトリーにおいて本技術を適用する場合の実験フロー例を、
図2を参照しながら説明する。
【0024】
フローサイトメータを用いた実験の流れは大きく分類すると、実験対象となる細胞と、それ検出するための方法を検討し蛍光指標付き抗体試薬を準備する実験計画工程(
図2「1:Plan」)と、実際に細胞を測定に適した状態に染色し準備するサンプル準備工程(同図「2:Preparation」)と、染色された細胞一つ一つの蛍光量をフローサイトメータで測定するFCM測定工程(同図「3:FCM」)と、FCM測定で記録されたデータから所望の分析結果が得られるよう各種データ処理を行うデータ解析工程(同図「4:Data Analysis」)により構成される。そして、これらの工程が、必要に応じて繰り返し行われうる。
【0025】
前記実験計画工程では、はじめにフローサイトメータを用いて検出したいと考えている微小粒子(主に細胞)をどの分子(例えば抗原又はサイトカインなど)の発現で判定するかを決定し、すなわち微小粒子の検出において用いるマーカーを決定する。当該決定は、例えば過去の実験結果や論文などの情報を基に行われうる。次にそのマーカーに対し、どの蛍光色素により検出するかを検討する。同時に検出したいマーカー数、使用可能なFCM装置のスペック、購入可能な蛍光標識付き試薬、蛍光色素のスペクトルや明るさ、価格、納期などの情報を統合的に判断し、実際の実験に必要な蛍光標識付き抗体試薬の組み合わせを決定する。この試薬の組合せの決定プロセスが、一般的にFCMにおけるパネルデザインと呼ばれている。ここで、パネルデザインより決定された試薬一式のうち不足している試薬については、試薬メーカーに発注し、購入することになる。しかしながら、蛍光標識付き抗体試薬は価格が高く、また比較的珍しい試薬などは発注から納入まで1か月以上掛かることもある。そのため、上記の4つの工程を何度も繰り返して試行錯誤することは現実的ではない。より少ない回数の実験計画工程で所望の結果が得られることが望ましい。
【0026】
サンプル準備工程では、まず実験対象をFCM測定に適した状態へと処理する。例えば、細胞の分離及び精製が行われうる。例えば血液由来の免疫細胞などは、血液から溶血処理及び密度勾配遠心法により赤血球を除去し、白血球を抽出する。抽出された対象の細胞群に対し、蛍光標識付き抗体を用い染色処理を行う。この際、複数の蛍光色素で同時に染色した解析対象のサンプルに加え、分析の際に基準として用いる一つの蛍光色素のみで染色した単染色サンプルと染色を全く行わない非染色サンプルも準備することが一般的に推奨されている。
【0027】
FCM測定工程において、微小粒子を光学的に分析する際は、先ず、フローサイトメータの光照射部の光源から励起光を出射し、流路内を流れる微小粒子に照射する。次に、微小粒子から発せられた蛍光をフローサイトメータの検出部により検出する。具体的には、ダイクロイックミラーやバンドパスフィルターなどを使用して、微小粒子から発せられた光から特定波長の光(目的とする蛍光)のみを分離し、それを例えば32チャンネルPMTなどの検出器で検出する。このとき、例えばプリズムや回折格子などを使用して蛍光を分光し、検出器の各チャンネルで異なる波長の光を検出するようにする。これにより、容易に検出光(蛍光)のスペクトラム情報を得ることができる。分析とする微小粒子は、特に限定されるものではないが、例えば細胞やマイクロビーズなどが挙げられる。
フローサイトメータは、FCM測定で取得された各微粒子の蛍光情報を、蛍光情報以外の散乱光情報、時間情報、及び位置情報と併せて記録する機能を有しうる。当該記録機能は、主にコンピュータのメモリ又はディスクにより実行されうる。通常の細胞解析では1つの実験条件において、数千~数百万個の微小粒子の分析を行う為、多数の情報を実験条件ごとに整理された状態で記録されることが必要である。
【0028】
データ解析工程では、コンピュータなどを用いて、FCM測定工程で検出した各波長領域の光強度データを定量化し、使用した蛍光色素ごとの蛍光量(強度)を求める。この解析には実験データから算出された基準を使用した補正方法が用いられる。基準は、一つの蛍光色素のみで染色した微小粒子の測定データと、無染色の微小粒子の測定データの2種類を用い、統計処理によって算出する。算出された蛍光量は、蛍光分子名、測定日、微小粒子の種類等の情報と共に、当該コンピュータに備えられているデータ記録部に記録されうる。データ解析で見積もられたサンプルの蛍光量(蛍光スペクトルデータ)は保存され、目的に応じてグラフで表示して微小粒子の蛍光量分布の解析が行われる。
【0029】
例えば、蛍光量分布の解析のために、しばしばゲート設定が行われ、これによりサンプル中の検出対象細胞の割合が、算出されうる。例えば
図3に示されるように、前方散乱光(FSC)及び側方散乱光(SSC)に関する二次元プロットを生成し、当該プロットのうち所定の範囲を選択することで、PBMCに含まれる血液細胞のうちの単球及びリンパ球の割合を特定することができる。さらに、所定の表面マーカーを発現しているリンパ球に対するゲート設定及び展開によって、リンパ球のうちのB細胞、T細胞、及びNK細胞の割合を算出することができる。さらに、B細胞のうちのメモリーB細胞の割合や、T細胞のうちのキラーT細胞及びヘルパーT細胞の割合、さらにはナイーブT細胞及びメモリーT細胞の割合を特定することもできる。各種類の細胞が発現している表面マーカーは、例えば
図4に示されるとおり、細胞種によって異なることが知られている。そのため、表面マーカーに結合する抗体及び各抗体を標識する蛍光色素を適切に選択し、そして、フローサイトメータによって分析することで、サンプル中の細胞を調べることができる。
【0030】
本技術は、実験計画工程におけるパネルデザインのために用いられうる。例えば、本技術に従う情報処理装置は、測定対象における生体分子及び生体分子の発現量のユーザによる入力を受け付け、入力されたデータを用いて、最適化されたFCM実験パネルを自動的に生成しうる。すなわち、本技術の情報処理装置は、当該パネル生成のための最適化アルゴリズムを有する装置であるともいえる。
【0031】
また、本技術が適用される粒子分析の他の例として、閉鎖空間内において微小粒子の分取を行う微小粒子分取装置を挙げることができる。当該装置は、例えば、微小粒子を分取するかの判定のために、微小粒子が流される流路を有し且つ内部で微小粒子の分取が行われるチップ、当該流路を流れる微小粒子に光を照射する光照射部、当該光照射により生じた光を検出する検出部、当該検出された光に関する情報に基づき微小粒子を分取するかを判定する判定部を備えていてよい。当該微小粒子分取装置の例として、例えば特開2020-041881に記載された装置を挙げることができる。
【0032】
また、本技術が適用される分析は、粒子分析に限定されない。すなわち、本技術は、生体分子への蛍光体の割り当てを行うことが求められる種々の処理において用いられてよい。例えば多色蛍光イメージングなど、細胞サンプル又は組織サンプルの顕微鏡による分析又は観察において、これらサンプルを染色するために、本技術による生体分子への蛍光体の割り当て処理が行われてよい。近年、蛍光イメージングにおいても、使用される蛍光体の数が増加傾向にあり、本技術はこのような分析又は観察においても用いられうる。
【0033】
(3)第1の実施形態の説明
【0034】
本技術の情報処理装置は、生体分子に対する蛍光体の組合せリストを生成する処理部を備えている。当該処理部は、サンプルの解析に用いる複数の生体分子を前記サンプルにおける発現量に基づき分類した発現量カテゴリーと、前記サンプルの解析に用いることが可能な複数の蛍光体を明るさに基づき分類した明るさカテゴリーと、前記複数の蛍光体間の相関情報と、前記複数の生体分子の発現関係情報とに基づき、前記組合せリストを生成する。当該生成において、当該処理部は、前記組合せリストにて前記生体分子に割り当てる前記蛍光体を、前記生体分子が属する発現量カテゴリーに対応付けられた明るさカテゴリーに属する蛍光体から選択する。
【0035】
上記のとおりに組合せリストを生成することにより、より適切な組合せリストを生成することができ、且つ、当該生成のための処理がより効率的に行われる。これにより、最適化されたパネルデザインを自動的に行うことが可能となる。例えば、前記発現関係情報を利用することによって、例えば分析対象となる生体分子の発現の分析のために、より適したパネルが自動的に生成される。例えば細胞における生体分子の発現状態を考慮したパネルを自動的に生成することができる。
【0036】
本技術により、例えばフローサイトメトリーにおいて使用したい抗体及びその予想される発現量に加え、分析対象となる細胞のマーカー発現状態を入力することによって、ユーザの分析目的に合ったFCMパネルが自動で設計される。そのため、従来必要であった準備のための時間、労力、及び費用が大幅に削減可能である。
【0037】
(3-1)情報処理装置の構成例
【0038】
本技術に従う情報処理装置の一例を、
図5を参照しながら説明する。
図5は、当該情報処理装置のブロック図である。
図5に示される情報処理装置100は、処理部101、記憶部102、入力部103、出力部104、及び通信部105を有しうる。情報処理装置100は、例えば汎用のコンピュータにより構成されてよい。
【0039】
処理部101は、生体分子に対する蛍光体の組合せリストを生成することができるように構成されている。当該組合せリストの生成処理については、以下で詳述する。処理部101は、例えば例えばCPU(Central Processing Unit)及びRAMを含みうる。CPU及びRAMは、例えばバスを介して相互に接続されていてよい。バスには、さらに入出力インタフェースが接続されていてよい。バスには、当該入出力インタフェースを介して、入力部103、出力部104、及び通信部105が接続されていてよい。
【0040】
記憶部102は、各種データを記憶する。記憶部102は、例えば、後述の処理において取得されたデータ及び/又は後述の処理において生成されたデータなどを記憶できるように構成されていてよい。例えば、これらのデータとして、例えば入力部103が受け付けた各種データ(例えば生体分子データ、発現量データ、及び発現関係情報又は発現関係情報を生成するために用いられるデータなど)、通信部105により受信した各種データ(例えば蛍光体に関するリスト)、及び処理部101により生成された各種データ(例えば発現量カテゴリー、明るさカテゴリー、相関情報、及び組合せリストなど)などを挙げることができるが、これらに限定されない。また、記憶部102には、オペレーティング・システム(例えば、WINDOWS(登録商標)、UNIX(登録商標)、又はLINUX(登録商標)など)、本技術に従う情報処理方法を情報処理装置又は情報処理システムに実行させるためのプログラム、及び他の種々のプログラムが格納されうる。
【0041】
入力部103は、各種データの入力を受け付けることができるように構成されているインタフェースを含みうる。例えば、入力部103は、後述の処理において入力される各種データを受け付けることができるように構成されていてよい。当該データとして、例えば生体分子データ及び発現量データなどが挙げられる。また、当該データとして、発現関係情報又は発現関係情報を生成するために用いられるデータも挙げられる。入力部103は、そのような操作を受けつける装置として、例えばマウス、キーボード、及びタッチパネルなどを含みうる。
【0042】
出力部104は、各種データの出力を行うことができるように構成されているインタフェースを含みうる。例えば、出力部104は、後述の処理において生成される各種データを出力できるように構成されていてよい。当該データとして、例えば処理部101により生成された各種データ(例えば発現量カテゴリー、明るさカテゴリー、相関情報、発現関係情報、及び組合せリストなど)などを挙げることができるが、これらに限定されない。出力部104は、これらデータの出力を行う装置として例えば表示装置を含みうる。
【0043】
通信部105は、情報処理装置100をネットワークに有線又は無線で接続するように構成されうる。通信部105によって、情報処理装置100は、ネットワークを介して各種データ(例えば蛍光体に関するリストなど)を取得することができる。取得したデータは、例えば記憶部102に格納されうる。通信部105の構成は当業者により適宜選択されてよい。
【0044】
情報処理装置100は、例えばドライブ(図示されていない)などを備えていてもよい。ドライブは、記録媒体に記録されているデータ(例えば上記で挙げた各種データ)又はプログラム(上記で述べたプログラムなど)を読み出して、RAMに出力することができる。記録媒体は、例えば、microSDメモリカード、SDメモリカード、又はフラッシュメモリであるが、これらに限定されない。
【0045】
(3-2)処理部による処理の例(処理フロー)
【0046】
前記処理部が実行する処理について、以下で
図6を参照しながら説明する。
図6は、当該処理のフロー図である。以下の説明は、フローサイトメトリーにおいて用いられる、抗体と蛍光色素との組合せを最適化する場合における本技術の適用例に関するものである。
【0047】
図6のステップS101において、情報処理装置100(特には入力部103)は、複数の生体分子及び当該複数の生体分子それぞれの発現量の入力を受け付ける。
【0048】
当該生体分子は、フローサイトメトリーにおける測定対象とする抗原(例えば表面抗原やサイトカインなど)であってよく、又は、測定対象とする抗原を捕捉する抗体であってもよい。前記複数の生体分子が抗原である場合、前記発現量は当該抗原の発現量であってよい。前記複数の生体分子が抗体である場合、前記発現量は、当該抗体によって捕捉される抗原の発現量であってよい。
【0049】
処理部101は、前記入力を受け付けるための入力受付ウィンドウを出力部104(特には表示装置)に表示させて、ユーザに前記入力を行うことを促しうる。当該入力受付ウィンドウは、例えば
図7Aのaに示されている「Antibody」欄及び「Expression level」欄などの、生体分子入力受付欄及び発現量受付欄を含みうる。
【0050】
前記生体分子入力受付欄は、
図7Aのaの「Antibody」欄に示されるように、例えば生体分子の選択を促す複数のリストボックスLB1であってよい。
図7Aのaでは説明の便宜上9のリストボックスが記載されているが、リストボックスの数はこれに限定されない。リストボックスの数は例えば5~300、10~200であってよい。
ユーザが、それぞれのリストボックスを、例えばクリック又はタッチなどの操作で有効にすることに応じて、処理部101は、当該リストボックスの上又は下に、生体分子の選択肢の一覧を表示させる。当該一覧の中からユーザが一つの生体分子を選択することに応じて、当該一覧が閉じて、選択された生体分子が表示される。
図7Aのaでは、ユーザによる生体分子の選択後の画面が表示されている。抗体により捕捉される抗原が選択されたことに応じて、同図に示されるように、例えば「CD27」、「CD127」などと表示される。
【0051】
また、前記発現量受付欄は、
図7Aのaの「Expression level」欄に示されるように、例えば発現量の選択を促す複数のリストボックスLB2であってよい。発現量の選択を促すリストボックスLB2の数は、生体分子の選択を促すリストボックスLB1の数と同じであってよい。
図7Aのaでは説明の便宜上9のリストボックスが記載されているが、リストボックスの数はこれに限定されない。リストボックスの数は例えば5~300、10~200であってよい。
ユーザが、それぞれのリストボックスを、例えばクリック又はタッチなどの操作で有効にすることに応じて、処理部101は、当該リストボックスの上又は下に、発現量の選択肢の一覧を表示させる。当該一覧の中からユーザが一つの生体分子を選択することに応じて、当該一覧が閉じて、選択された発現量が表示される。
図7Aのaでは、ユーザによる発現量の選択後の画面が表示されている。発現量のレベルが選択されたことに応じて、同図に示されるように、例えば「+」、「++」、及び「+++」と表示される。
図7Aのaでは、例えば生体分子「CD27」の発現量として「+」が選択されている。また、生体分子「CD5」の発現量として「++」が選択されている。記号「+」、「++」、及び「+++」は、この順に発現量がより多くなることを意味する。
本明細書内において、「発現量」は、例えば、発現量のレベルを意味してよく、又は、発現量の具体的な数値であってもよい。好ましくは、上記
図7Aのaに示されるように、発現量は、発現量のレベルを意味する。発現量のレベルは、好ましくは2段階~20段階、より好ましくは2段階~15段階、さらにより好ましくは2段階~10段階であってよく、例えば3段階~10段階に分けられていてよい。
【0052】
以上のとおりに生体分子及び発現量の選択が完了した後に、例えば、当該入力受付ウィンドウ内にある選択完了ボタン(図示されていない)がユーザによりクリックされることに応じて、処理部101は、選択された生体分子及び発現量の入力を受け付ける。
【0053】
図6のステップS102において、情報処理装置100(特には入力部103)は、前記複数の生体分子の発現関係情報の入力を受け付ける。前記複数の生体分子は、ステップS101において入力された複数の生体分子であってよい。
【0054】
前記発現関係情報は、各生体分子の「種類に関する情報」及び「発現の有無又は程度に関する情報」を含みうる。前記種類に関する情報は、例えば各生体分子の名称又は略称を含みうる。前記発現の有無又は程度に関する情報は、例えば各生体分子の発現が陽性若しくは陰性であるか、又は、各生体分子の発現量がどの程度であるかであってよい。
前記発現関係情報は、例えば、当該複数の生体分子のうちの2種類以上の生体分子が互いに関連付けられていることを示す関連付け情報を含む。
例えばデータマトリックスの1つの行又は列に存在している複数の生体分子が、互いに関連付けられているとして取り扱われてよい。この場合、これら複数の生体分子が共有する行情報又は列情報が関連付け情報として利用されてよく、又は、1つの行又は列に存在することを示す他の情報が、関連付け情報として利用されてもよい。
また、当該関連付け情報は、1つの生体粒子(例えば細胞など)が当該2種類以上の生体分子(例えば細胞表面マーカー)を発現している又は発現していないことを示す情報であってよい。また、当該関連付け情報は、当該2種類以上の生体分子のうちのいずれか2種の生体分子の対が、分析対象であることを示す情報又は分離能評価の対象であることを示す情報であってよい。
【0055】
発現関係情報の入力を受け付けるためのウィンドウの例を
図7Bの上に示す。
図7Bの下に、当該ウィンドウの構成を説明するための模式図を示す。以下では、
図7Bの下の模式図を参照しながら、当該ウィンドウについて説明する。当該ウィンドウは、生体分子選択欄2及び発現有無選択欄3のペアを含むセル1を複数含む。これらのセルは、同図に示されるように、表形式で配置されている。前記生体分子選択欄は、例えば、生体分子の選択を受け付けるリストボックスとして構成されてよい。また、前記発現有無選択欄は、選択された生体分子の発現の有無(陽性「+」又は陰性「-」)の選択を受け付けるリストボックスとして構成されてよい。なお、発現有無選択欄は、発現の程度の選択を受け付ける欄として構成されてもよい。
【0056】
当該ウィンドウの各列C1~C3は、階層を表し、例えばツリー構造における階層を表す。或る列中に生体分子及びその生体分子の発現の有無が選択されたセルが存在する場合、同列中にあり且つ当該選択されたセルよりも下に存在する他のセルは、他の生体分子が選択されない限り又は発現の有無が変更されない限り、当該選択されたセルと同じ生体分子及び発現の有無が選択されていることを意味する。
【0057】
当該ウィンドウの各行L1~L6は、例えばユーザが分析対象とする細胞における生体分子の発現の状態に対応する。すなわち、各行において選択された複数の生体分子が互いに関連付けられている。
【0058】
例えば同図の1行目L1において、生体分子としてCD45及びCD19が選択されており且つこれら2つの生体分子の発現の有無として陽性「+」が選択されている。すなわち、同図の1行目は、CD45陽性且つCD19陽性である細胞に対応している。CD45及びCD19は互いに関連付けられている。
【0059】
また、同図の2行目L2の1列目C1において他の生体分子が選択されておらず且つ発現の有無が変更されていないので、1行目と同じく、生体分子としてCD45が選択され且つCD45の発現の有無として陽性「+」が選択されている。一方で、2行目L2の2列目C2では、生体分子としてCD3が選択され且つCD3の発現の有無として陽性「+」が選択されている。また、2行目L2の3列目C3では、生体分子としてCD4が選択され且つCD4の発現の有無として陽性「+」が選択されている。以上のとおり、同図の2行目は、CD45陽性、CD3陽性、且つCD4陽性である細胞に対応している。
【0060】
また、同図の3行目L3では、1列目C1及び2列目C2で他の生体分子が選択されておらず且つ発現の有無が変更されていないので、2行目と同じく、生体分子としてCD45及びCD3が選択され且つこれら2つの生体分子の発現の有無としていずれも陽性「+」が選択されている。一方で、3行目L3の3列目C3では、2行目の3列目と異なり、生体分子CD8aが選択され且つCD8aの発現の有無として陽性「+」が選択されている。そのため、同図の3行目は、CD45陽性、CD3陽性、且つCD8a陽性である細胞に対応している。
【0061】
同図の4行目L4、5行目L5、及び6行目L6のそれぞれも、各行に示されるとおりに選択された生体分子の発現状態を有する細胞に対応している。
【0062】
以上のとおり、
図7Bでは、合計で6種類の細胞の発現状態がユーザにより特定されている。
【0063】
以上のように、本技術において、発現関係情報の入力を受け付けるための入力受付ウィンドウは、例えばツリー構造を有する発現関係情報の入力を受け付けるように構成されていてよい。前記入力受付ウィンドウは、例えば生体分子選択欄及び発現有無選択欄のペアを含む複数のセルを表形式で有しうる。
【0064】
本技術において、発現関係情報は、好ましくはツリー構造を有する。例えば、発現関係情報の入力を受けつけるウィンドウは、例えば、
図7Bを参照して説明したように、ツリー構造における階層を有する。当該階層によって、生体分子の選択作業を簡略化することができる。ツリー構造に含まれる階層の数は、
図7Bでは3つであるが、これに限定されず、適宜設定されてよい。階層の数は、例えば2~100、2~50、2~40、2~30、又は2~20であってよい。
また、入力受付ウィンドウに含まれる階層の数を増加又は減少させることができるように、当該ウィンドウは構成されていてもよい。例えば、入力受付ウィンドウは、階層の数を増加又は減少させるボタンを有しうる。当該ボタンのユーザによるクリックに応じて、階層の数が増加又は減少されてよい。
【0065】
発現関係情報の入力操作例は、例えば以下のとおりである。
【0066】
ユーザは、まず1行目且つ1列目のセル中の生体分子選択欄をクリックする。当該クリックに応じて、処理部101は、選択可能な生体分子の一覧のリストボックスを表示させる。当該一覧の中からユーザが一つの生体分子を選択することに応じて、当該リストボックスが閉じて、選択された生体分子が表示される。
図7Bの1列目では、「CD45」が選択されている。選択可能な生体分子の一覧は、例えばステップS101において選択された複数の生体分子を含んでよく、当該複数の生体分子のみが表示されてもよい。
ユーザは、次に、当該セル中の発現有無選択欄をクリックする。当該クリックに応じて、処理部101は、当該生体分子の発現の有り又は無しを選択させるリストボックスを表示させる。当該リストボックスの中からユーザが「有り」又は「無し」を選択することに応じて、当該リストボックスが閉じて、当該生体分子の発現の有無の選択結果が表示される。
図7Bの1列目では、「CD45」について、「+」が選択されており、これは「CD45」の発現が有ること、すなわち陽性であることがユーザにより選択されている。
【0067】
次に、ユーザが1行目且つ2列目のセル中の生体分子選択欄をクリックすることに応じて、処理部101は、選択可能な生体分子の一覧のリストボックスを表示させる。当該一覧の中からユーザが一つの生体分子を選択することに応じて、当該リストボックスが閉じて、選択された生体分子が表示される。当該リストボックスには、ステップS101において選択された複数の生体分子のうち、1列目において選択された生体分子以外の生体分子が表示されてよい。
例えば
図7Bの1列目で「CD45」が既に選択されているので、2列目において選択可能な生体分子の一覧は、例えばステップS101において選択された複数の生体分子のうち「CD45」以外の生体分子であってよい。
また、ユーザは、2列目についても発現有無選択欄をクリックする。当該クリックに応じて、処理部101は、1列目の場合と同様に、各生体分子の発現の有り又は無しを選択させるリストボックスを表示させる。ユーザによる選択結果に応じて、各生体分子の発現の有無の選択結果が表示される。
【0068】
3列目においても、1列目及び2列目と同様に、生体分子及び発現有無の選択が行われる。また、2行目以降の行についても、同様に、生体分子及び発現有無の選択が行われる。
【0069】
図7Bに示されるウィンドウへの入力操作によって生成された発現関係情報に基づく生体分子ペアの特定結果の例を
図7Cに示す。
図7Cに示されるマトリックスデータでは、前記ウィンドウの各行において選択された生体分子のうちのいずれか2つの生体分子に対応するセルに「TRUE」が表示されている。すなわち、互いに関連付けられた2つの生体分子であることが、「TRUE」によって示されている。なお、表示「TRUE」は、互いに関連付けられていることを示すマークの一例に過ぎず、他の表示であってもよい。
本技術において、処理部101は、このように発現関係情報に基づき、互いに関連付けられた2つの生体分子(すなわち生体分子ペア)を特定しうる。当該特定された生体分子ペアが、後述の蛍光体ペアの特定において用いられうる。
なお、発現関係情報に基づく生体分子ペアの特定は、ステップS102において行われてよく、又は、別のステップにおいて行われてもよい。例えば、処理部101は、当該特定を行う処理を、後述のステップS109及び110の分離能評価処理において行ってもよい。
【0070】
以下で、生体分子ペアの特定の詳細について説明する。
【0071】
例えば、
図7Bの1行目では、2つの生体分子CD45及びCD19が選択されている。そこで、
図7Cでは、CD45の行且つCD19の列のセル及びCD19の行且つCD45の列のセルに「TRUE」が示されている。
また、
図7Bの2行目では、3つの生体分子CD45、CD3、及びCD4が選択されている。そこで、
図7Cでは、CD45の行且つCD3の列のセル及びCD3の行且つCD45の列のセル、CD45の行且つCD4の列のセル及びCD4の行且つCD45の列のセル、並びに、CD4の行且つCD3の列のセル及びCD3の行且つCD4の列のセルに、「TRUE」が示されている。
また、
図7Bの3行目では、3つの生体分子CD45、CD3、及びCD8aが選択されている。そこで、
図7Cでは、CD45の行且つCD3の列のセル及びCD3の行且つCD45の列のセル、CD45の行且つCD8aの列のセル及びCD8aの行且つCD45の列のセル、並びに、CD8aの行且つCD3の列のセル及びCD3の行且つCD8aの列のセルに、「TRUE」が示されている。
図7Bの4~6行目で選択された生体分子に関しても、同様に、
図7C中の対応するセルに「TRUE」が示されている。
以上のとおり、処理部101は、
図7Bのウィンドウへの入力操作によって生成された発現関係情報に基づき、
図7Cに示されるように生体分子ペアを特定しうる。なお、
図7Cに示されるマトリックスデータは、生体分子ペアが特定されている状況を理解しやすくするための表示形式の一例に過ぎず、特定結果は、マトリックスデータ以外の形式で存在してもよい。
【0072】
ステップS103において、処理部101は、ステップS101において選択された複数の生体分子を、各生体分子について選択された発現量に基づき分類し、1又は複数の発現量カテゴリー、特には複数の発現量カテゴリーを生成する。発現量カテゴリーの数は、例えば発現量レベルの数に対応する値であってよく、好ましくは2以上、より好ましくは3以上でありうる。当該数は、好ましくは2~20、好ましくは3~15、さらにより好ましくは3~10でありうる。
【0073】
図7Aのaでは、複数の生体分子それぞれに、発現量レベル「+」、「++」、又は「+++」が選択されている。処理部101は、選択された発現量レベルが「+」である生体分子を、発現量カテゴリー「+」に分類する。同様に、処理部101は、選択された発現量レベルが「++」又は「+++」である生体分子をそれぞれ、発現量カテゴリー「++」又は発現量カテゴリー「+++」に分類する。このようにして、処理部101は、3つの発現量カテゴリーを生成する。各発現量カテゴリーには、対応する発現量レベルが選択された生体分子が含まれる。
図7Aのaでは、発現量レベル「+」の生体分子が3つ、発現量レベル「++」の生体分子が4つ、発現量レベル「+++」の生体分子が5つ入力されている。
【0074】
ステップS104において、処理部101は、ステップS101において入力された生体分子を標識することができる蛍光体に関するリストを取得する。当該蛍光体のリストは、例えば通信部105を介して、情報処理装置100の外部に存在するデータベースから取得されてよく、又は、情報処理装置100の内部(例えば記憶部102)に格納されているデータベースから取得されてもよい。
【0075】
前記蛍光体に関するリストは、例えば各蛍光体についての名称及び明るさを含みうる。また、前記蛍光体に関するリストは好ましくは、各蛍光体の蛍光スペクトルも含む。各蛍光体の蛍光スペクトルは、当該リストとは別のデータとしてデータベースから取得されてもよい。
【0076】
好ましくは、当該リストには、生体分子と蛍光体との組合せを使用して試料が分析される装置(例えば微小粒子分析装置)において使用可能な蛍光体を選択的に含むものであってよい。装置において使用不可能な蛍光体がリストから削除されていることによって、後述の処理(特には相関情報の算出処理)における装置への負担を軽減することができる。
【0077】
ステップS105において、処理部101は、ステップS103において取得した蛍光体に関するリストに含まれる蛍光体を、各蛍光体の明るさに基づき分類し、1又は複数の明るさカテゴリー、特には複数の明るさカテゴリーを生成する。
【0078】
ステップS105において、好ましくは、処理部101は、ステップS102において生成された発現量カテゴリーを参照して、明るさカテゴリーを生成する。これにより、生成される明るさカテゴリーと発現量カテゴリーとの対応付け、及び、生体分子と蛍光体との組合せの生成をより効率的に行うことができる。当該参照の具体的な内容を以下に説明する。
【0079】
前記明るさに基づく分類は、蛍光量又は蛍光強度に基づく分類であってよい。当該分類を行うために、例えば蛍光量又は蛍光強度の数値範囲が各明るさカテゴリーに関連付けられていてよい。そして、処理部101は、前記リストに含まれる蛍光体のそれぞれを、各蛍光体の蛍光量又は蛍光強度を参照して、当該蛍光量又は蛍光強度が含まれる数値範囲が関連付けられた明るさカテゴリーへと分類しうる。
【0080】
好ましくは、ステップS105において、処理部101は、ステップS102において生成された発現量カテゴリーの数を参照して、明るさカテゴリーを生成する。特に好ましくは、ステップS105において、処理部101は、ステップS103において生成された発現量カテゴリーの数と同じ数だけ、明るさカテゴリーを生成する。これにより、発現量カテゴリーと明るさカテゴリーとを1対1で対応付けることができる。加えて、後述の組合せリスト生成において考慮されない蛍光体の発生を防ぐことができ、より良い組合せを生成することができる。明るさカテゴリーの数は、例えば発現量カテゴリーの数に対応する値であってよく、好ましくは2以上、より好ましくは3以上でありうる。当該数は、好ましくは2~20、好ましくは3~15、さらにより好ましくは3~10でありうる。
例えば、
図7Aのbに示されるとおり、3つの明るさカテゴリー(Bright、Normal、及びDim)が生成されてよい。これら3つの明るさカテゴリーは、この順番に、明るさが小さくなっており、すなわちBrightに含まれる蛍光体はいずれも、Normalに含まれるいずれの蛍光体よりも明るく、且つ、Normalに含まれる蛍光体はいずれも、Dimに含まれるいずれの蛍光体よりも明るい。
【0081】
好ましくは、ステップS105において、処理部101は、ステップS103において生成された発現量カテゴリーのそれぞれに含まれる生体分子の数を参照して、明るさカテゴリーを生成する。特に好ましくは、ステップS105において、処理部101は、ステップS103において生成された発現量カテゴリーに含まれる生体分子の数以上の蛍光体が、対応付けられる明るさカテゴリーに含まれるように、蛍光体を各明るさカテゴリーに分類する。これにより、後述の組合せリスト生成において、蛍光体が割り当てられない生体分子が生じることを防ぐことができる。
【0082】
ステップS106において、処理部101は、ステップS103において生成された発現量カテゴリーとステップS105において生成された明るさカテゴリーとを対応付ける。好ましくは、処理部101は、1つの発現量カテゴリーに対して1つの明るさカテゴリーを対応付ける。また、発現量カテゴリーと明るさカテゴリーとが1対1で対応するように、処理部101は対応付けを行いうる。すなわち、2つ以上の発現量カテゴリーが1つの明るさカテゴリーに対応付けられないように、前記対応付けを行いうる。
【0083】
本技術の特に好ましい実施態様において、処理部101は、より発現量が少ない発現量カテゴリーが、より明るい明るさカテゴリーに対応付けられるように、前記対応付けを実行しうる。例えば、処理部101は、発現量が最も少ない発現量カテゴリーを、明るさが最も明るい明るさカテゴリーに対応付け、そして、発現量が次に少ない発現量カテゴリーを、明るさが次に明るい明るさカテゴリーに対応付け、同様に、この対応付けを、発現量カテゴリーがなくなるまで繰り返しうる。反対に、処理部101は、発現量が最も多い発現量カテゴリーを、明るさが最も暗い明るさカテゴリーに対応付け、そして、発現量が次に多い発現量カテゴリーを、明るさが次に暗い明るさカテゴリーに対応付け、同様に、この対応付けを、発現量カテゴリーがなくなるまで繰り返しうる。
この実施態様において、例えば
図7Aのa及びbの間の矢印に示されるように、処理部101は、発現量カテゴリー「+」、「++」、及び「+++」を、明るさカテゴリー「Bright」、「Normal」、及び「Dim」にそれぞれ対応付ける。
以上のとおり、本技術において生成される発現量カテゴリーに関して、好ましくは、より少ない発現量を示す生体分子を分類した発現量カテゴリーが、より明るい蛍光体を分類した明るさカテゴリーに対応するように、前記明るさカテゴリーに対応付けられていてよい。
【0084】
ステップS107において、処理部101は、蛍光体間の相関情報を用いて、最適な蛍光体組合せを特定する。当該最適な蛍光体組合せは、例えば蛍光スペクトル間の相関の観点から最適である蛍光体組合せであり、より特には蛍光スペクトル間の相関係数の観点から最適である蛍光体組合せであってよく、さらにより特には蛍光スペクトル間の相関係数の二乗の観点から最適である蛍光体組合せであってよい。当該相関係数は、例えばピアソン相関係数、スピアマン相関係数、又はケンドール相関係数のいずれかであってよく、好ましくはピアソン相関係数である。
前記蛍光体間の相関情報は、好ましくは蛍光スペクトル間の相関情報であってよい。すなわち、本技術の一つの好ましい実施態様において、処理部101は、蛍光スペクトル間の相関情報を用いて、最適な蛍光体組合せを特定する。
【0085】
例えば、ピアソン相関係数は、2つの蛍光スペクトルX及びYとの間で、以下のとおりにして算出することができる。
【0086】
まず、蛍光スペクトルX及びYは、例えば以下のとおりに表すことができる。
蛍光スペクトルX=(X1、X2、・・・、X320)、平均値=μx、標準偏差=σx
(ここで、X1~X320は、320の異なる波長における蛍光強度である。平均値μxは、これら蛍光強度の平均値である。標準偏差σxは、これら蛍光強度の標準偏差である。)
蛍光スペクトルY=(Y1、Y2、・・・、Y320)、平均値=μy、標準偏差=σy
(ここで、Y1~Y320は、320の異なる波長における蛍光強度である。平均値μyは、これら蛍光強度の平均値である。標準偏差σxは、これら蛍光強度の標準偏差である。)
なお、「320」という数値は、説明の便宜上設定された値であって、前記相関係数の算出において用いられる数値はこれに限定されない。当該数値は、例えば蛍光検出に用いられるPMT(光電子倍増管)の数など、蛍光検出器の構成に応じて適宜変更されてよい。
【0087】
これら蛍光スペクトルX及びYの間のピアソン相関係数Rは、以下数1の式により得られる。
【数1】
数1の式において、Z
Xn(nは1~320)は、標準化された蛍光強度であり、以下のとおりに表される。
Zx1=(X
1-μ
x)÷σ
x、Zx2=(X
2-μ
x)÷σ
x、・・・Zx320=(X
320-μ
x)÷σ
x
同様に、Z
Yn(nは1~320)も、以下のとおりに表される。
Zy1=(Y
1-μ
y)÷σ
y、Zy2=(Y
2-μ
y)÷σ
y、・・・Zy320=(Y
320-μ
y)÷σ
y
また、数1の式において、Nはデータ数である。
【0088】
当該最適な蛍光体組合せの特定の仕方の一例について、以下に説明する。
【0089】
処理部101は、或る明るさカテゴリーから、「当該或る明るさカテゴリーに対応付けられた発現量カテゴリーに属する生体分子の数」と同じ数だけ、蛍光体を選択する。当該蛍光体の選択を、全ての明るさカテゴリーについて実行する。これにより、「サンプルの解析に用いる複数の生体分子の数」と同じ数の蛍光体が選択され、このようにして、1つの蛍光体組合せ候補が得られる。
次に、処理部101は、当該蛍光体組合せ候補に含まれるいずれか2つの蛍光体の組合せについて、蛍光スペクトル間の相関係数(例えばピアソン相関係数)の二乗を算出する。処理部101は、当該相関係数の二乗の算出を、全ての組合せに対して行う。当該算出処理によって、処理部101は、例えば
図8に示されるような、相関係数二乗値のマトリックスを得る。そして、処理部101は、この相関係数二乗値のマトリックスのうちから、最大の相関係数二乗値を特定する。例えば
図8において、Alexa Fluor 647の蛍光スペクトルとAPCの蛍光スペクトルとの間の相関係数が0.934であり、処理部101は、この値を最大の相関係数二乗値であると特定する(同図左上において四角形で囲まれた部分)。
なお、相関係数二乗値が小さいほど、2つの蛍光体スペクトルが似ていないことを意味する。すなわち、相関係数二乗値が最大である2つの蛍光体は、当該蛍光体組合せ候補に含まれる蛍光体のうち、蛍光スペクトルが最も類似する2つの蛍光体であることを意味しうる。
以上のとおりの処理によって、処理部101は、1つの蛍光体組合せ候補に対して、最大の相関係数二乗値を特定する。
【0090】
ここで、「或る明るさカテゴリーに属する蛍光体の数」が「当該或る明るさカテゴリーに対応付けられた発現量カテゴリーに属する生体分子の数」よりも多い場合、或る明るさカテゴリーから選択される蛍光体の組合せは、複数存在する。例えば4つの蛍光体から2つの蛍光体を選択する場合の蛍光体組合せは6通り(=
4C
2)存在する。そのため、例えば、3つの明るさカテゴリーが存在し、当該3つの明るさカテゴリーのいずれにも4つの蛍光体が属し、且つ、各明るさカテゴリーから2つの蛍光体を選択する場合、6×6×6=216通りの蛍光体組合せ候補が存在する。
本技術において、処理部101は、あり得る蛍光体組合せ候補全てについて、上記で述べたとおりに、最大の相関係数二乗値を特定する。例えば、処理部101は、216の蛍光体組合せ候補が存在する場合は、216の蛍光体組合せ候補それぞれの最大の相関係数二乗値を特定する。そして、処理部101は、特定された最大の相関係数二乗値が最も小さい蛍光体組合せ候補を特定する。処理部101は、このようにして特定された蛍光体組合せ候補を、最適な蛍光体組合せとして特定する。
図7Aのcは、最適な蛍光体組合せの特定結果を示す。
図7Aのcにおいて、特定された最適な蛍光体組合せを構成する蛍光体に星印が付されている。
なお、最大の相関係数二乗値が最も小さい蛍光体組合せ候補が2つ以上存在する場合は、処理部101は、当該2つ以上の蛍光体組合せ候補について、次に大きい相関係数二乗値を比較し、当該次に大きい相関係数二乗値がより小さい蛍光体組合せ候補を、最適な蛍光体組合せとして特定しうる。当該次に大きい相関係数二乗値が同じである場合は、その次に大きい相関係数二乗値が比較されうる。
【0091】
以上では、最適な蛍光体組合せを特定するために、最大の相関係数二乗値が参照されているが、最適な蛍光体組合せを特定するために参照されるものは、これに限定されない。例えば、相関係数二乗値のうちの最も大きい値からn番目(ここでnは、任意の正数であってよく、例えば2~10、特には2~8、より特には2~5でありうる。)に大きい値までの平均値又は合計値であってよい。処理部101は、当該平均値又は当該合計値が最も小さい蛍光体組合せ候補を、最適な蛍光体組合せとして特定してもよい。
【0092】
ステップS108において、処理部101は、ステップS107において特定された最適な蛍光体組合せを構成する蛍光体を、前記複数の生体分子に割り当てる。より具体的には、処理部101は、最適な蛍光体組合せを構成する蛍光体それぞれを、当該蛍光体が属する明るさカテゴリーに対応付けられた発現量カテゴリーに属する生体分子へ、割り当てる。
処理部101は、以上の割り当て処理によって、各生体分子について、蛍光体と生体分子との組合せが生成する。処理部101は、このようにして生体分子に対する蛍光体の組合せリストを生成する。
【0093】
ここで、1つの明るさカテゴリーに2以上の蛍光体が含まれる場合は、対応付けられた発現量カテゴリーにも2以上の生体分子が含まれる。そのため、蛍光体と生体分子との組合せには自由度が存在する。例えば、対応付けられたこれらカテゴリーにそれぞれ2つの蛍光体及び生体分子が含まれる場合は、蛍光体の生体分子への割り当てパターンは2つある。また、対応付けられたこれらカテゴリーにそれぞれ3つの蛍光体及び生体分子が含まれる場合は、蛍光体の生体分子への割り当てパターンは6つある。このように、ステップS108において生成されうる組合せリストの数は複数存在しうる。
【0094】
そこで、処理部101は、組合せリストに関する分離能の評価を行う。当該評価の結果に基づき、処理部101は、当該複数の組合せリストのうちから、最適な組合せリストを特定することができる。
好ましい実施態様において、処理部101は、ステップS102において入力された発現関係情報を用いて、組合せリストに関する分離能の評価を行う。例えば、処理部101は、前記発現関係情報を用いて、前記分離能の評価において評価対象となる蛍光体ペアを特定しうる。発現関係情報を用いて分離能評価を行うことによって、分析対象となる生体分子ペアに対応する蛍光体ペアに限定した分離能評価が可能となる。
以下で、分離能評価処理の例を説明する。
【0095】
ステップS109において、処理部101は、ステップS102において入力された発現関係情報を用いて、ステップS108において生成された組合せリストに関する分離能の評価を行いうる。当該分離能の評価を行うための評価指標として、前記組合せリストに含まれる蛍光体間の分離性能指標が用いられうる。当該評価指標は、例えば蛍光体間ステインインデックスであってよい。当該評価指標は、特にはシミュレーションデータをアンミキシング処理して得られたデータから算出される指標であってよい。処理部101は、前記分離能の評価において、前記特定された蛍光体ペアの分離性能指標(例えば蛍光体間ステインインデックス)を参照しうる。
【0096】
蛍光体間ステインインデックスについて以下で説明する。まず、ステインインデックスは、当技術分野において、蛍光体(蛍光色素)自体の性能を示す指標であり、例えば
図9の左に示されるように、染色された粒子及び無染色粒子の蛍光量並びに無染色粒子データの標準偏差により定義される。この無染色粒子データを、他の蛍光体によって染色された粒子に置き換えたものが蛍光体間のステインインデックスであり、例えば
図9の右に示されるとおりである。蛍光体間のステインインデックスにより、蛍光スペクトルの重なりによる漏れ込み量、蛍光量、及びノイズを考慮した蛍光体間の分離性能を評価することができる。
本明細書内で、蛍光体間ステインインデックスを「蛍光体間SI」ともいう。また、ステインインデックスを「SI」ともいう。
【0097】
以下で、発現関係情報を用いた分離能評価処理の例を説明する。
【0098】
処理部101は、ステップS108において生成された組合せリストに含まれる蛍光体群のうちの2つの蛍光体間の分離性能指標を算出する。当該蛍光体間の分離性能指標は、当該組合せリストに含まれる蛍光体群のうちの全ての蛍光体ペアについて算出されてよい。
【0099】
処理部101は、前記算出された分離性能指標のマトリックスデータを生成しうる。当該マトリックスデータの例を
図10に示す。当該マトリックスデータには、前記組合せリストに含まれる蛍光体群のうちの全ての蛍光体ペアについての蛍光体間SIが含まれている。
【0100】
ここで、前記組合せリスト中の各蛍光体にはそれぞれ生体分子が割り当てられている。そのため、前記算出された分離性能指標は、当該分離性能指標の算出対象である蛍光体ペアに対応する生体分子ペアと関連付けることができる。
また、上記で述べたとおり、前記発現関係情報に基づき、生体分子ペアが特定されている。そのため、当該特定された生体分子ペアに対応する蛍光体ペアを特定することができ、さらに、当該蛍光体ペアに対応する分離性能指標を特定することができる。当該生体分子ペアに対応する蛍光体ペアは、例えば分析において良好な分離能が特に求められるものでありうる。
以上のとおりであるので、発現関係情報に基づき、例えば分析において良好な分離能が求められる蛍光体ペアだけを特定することができ、分離能評価において当該蛍光体ペアの分離性能指標だけを参照することができる。
【0101】
すなわち、処理部101は、発現関係情報を用いて、生体分子ペアを特定し、そして、前記組合せリストを参照して、当該生体分子ペアに対応する蛍光体ペアを特定する。そしてさらに、処理部101は、当該特定された蛍光体ペアの分離性能指標を特定する。処理部101は、当該特定された蛍光体ペアの分離性能指標に基づき、分離能評価を行いうる。
この場合において、他の蛍光体ペアの分離性能指標は、分離能評価において参照されなくてよい。代替的には、他の蛍光体ペアの分離性能指標は、前記特定された蛍光体ペアの分離性能指標と比べてより低い重みづけを付与されて、分離能評価において用いられてもよい。
このように、発現関係情報によって、処理部101は、分析対象である生体分子ペアに対応する蛍光体ペアの分離性能指標に重点を置いて(例えば当該蛍光体ペアの分離性能指標だけを参照して)、組合せリストの分離能評価を実行することができる。
【0102】
処理部101による具体的な処理の例を以下で説明する。
【0103】
例えば
図7Cにおいて、発現関係情報に基づく生体分子ペアの特定結果が、マトリックスデータとして示されている。当該マトリックスデータにおいて、「TRUE」が表示されているセルに対応する2つの生体分子が、特定された生体分子ペアを構成する2つの生体分子である。
図7Cに示される特定結果を用いて分離能評価を実行する場合において、処理部101は、「TRUE」が表示されているセルに対応する2つの生体分子(生体分子ペア)を特定する。そして、処理部101は、さらに、前記組合せリストを参照して、当該2つの生体分子に割り当てられた2つの蛍光体を特定する。そして、処理部101は、
図10に示されるSIマトリックスのうちから、当該2つの蛍光体の蛍光体間SIを特定する。
処理部101は、以上のような蛍光体間SIの特定を、「TRUE」が表示されている全てセルに対応する2つの生体分子に対して行う。
以上のとおりにして特定された蛍光体間SIが、分離能評価において用いられる。
【0104】
このようにして、処理部101は、発現関係情報を用いて、
図10に示されるすべての蛍光体間SIのうちから、分離能評価において用いられる蛍光体間SIを特定する。特定されなかった蛍光体間SIは、分離能評価において用いられなくてよく、又は、特定された蛍光体間SIと比べてより低い重みづけを付与されて分離能評価において用いられてもよい。
そして、処理部101は、例えば、特定された蛍光体間SIのうちから最小値を特定する。処理部101は、当該最小値を、ステップS108において生成された組合せリストの分離能を評価するための評価値として用いうる。
なお、評価値として用いられる値は、最小値だけに限定されない。例えば、特定された蛍光体間SIのうちの、最小値を含む、最も小さい所定数(例えば2~5など)の蛍光体SIが評価値として用いられてもよい。例えば、当該所定数の蛍光体間SIの平均値などが、評価値として用いられうる。また、例えば特定されなかった蛍光体間SIが、特定された蛍光体間SIと比べてより低い重みづけを付与されて、前記平均値などの算出において用いられてもよい。
【0105】
以上のとおり、本技術において、前記発現関係情報を用いて、前記分離能の評価において評価対象となる蛍光体ペアを特定しうる。発現関係情報を用いることで、分析対象とされた生体粒子(特には細胞)が発現する生体分子に焦点を当てた分離能評価が可能となり、より適切な組合せリストを選択することができる。さらに、分離能評価に関する処理が、ユーザが分析の対象としている生体粒子が発現する生体分子に絞って行われるので、分離能評価処理を効率化及び/又は高速化することもできる。
【0106】
本技術において用いられる分離性能指標は、上記で述べたとおり蛍光体間SIであってよい。当該分離性能指標は、例えば前記組合せリストに基づき生成されたシミュレーションデータを用いて取得されうる。前記シミュレーションデータは、例えば組合せリストに従う試薬を用いた分析が行われる装置(例えばフローサイトメータ)によって測定したかのようなデータ群であってよい。当該装置がフローサイトメータなどの微小粒子分析装置である場合は、例えば100個~1000個の微小粒子を実際に測定した場合に得られるようなデータ群でありうる。例えば、シミュレーションデータは、組合せリストに含まれる蛍光体に関する情報、生体分子の予想発現量、及び装置ノイズ情報を元に生成されうる。当該データ群の生成のために、例えば染色バラつき及び生成データ数などの条件が考慮されてもよい。
【0107】
なお、以上で説明した分離能評価処理では、まず分離性能指標が算出され、次に、発現関係情報を用いて、分離能評価において参照される分離性能指標が抽出される。本技術において、先に、発現関係情報を用いて分離能評価において参照される蛍光体ペアが特定され、そして次に、当該特定された蛍光体ペアについて蛍光体間分離性能指標が算出されてもよい。すなわち、本技術の一つの実施態様において、処理部101は、前記発現関係情報を用いて、前記分離能の評価において用いられる評価指標が算出される対象を特定しうる。
例えばフローサイトメトリーなどの分析において、通常は、前記組合せリストに含まれる複数の蛍光体のうちから選択可能な全ての蛍光体ペアのうち、一部の蛍光体ペアについてだけ前記評価指標が算出されればよい。例えば、二次元プロットなどのスキャッタグラムの生成が求められる蛍光体の組合せは、通常は、全ての蛍光体ペアのうちの一部の蛍光体ペアである。そのため、全ての蛍光体ペアについて評価指標を算出するのでなく、一部の蛍光体ペアについてだけ評価指標を算出することで、評価処理を効率化及び高速化することができる。
以上のとおり、発現関係情報を用いることで、ユーザが分析の対象としている生体粒子(特には細胞)が発現する生体分子に焦点を当てた分離能評価が可能となり、より適切な組合せリストを選択することができる。
【0108】
ステップS110において、処理部101は、他の採用可能な組合せリストについて、ステップS109と同じように、分離能評価処理を実行する。例えば、処理部101は、上記で述べたように、各組合せリストについて、評価値を取得する。
【0109】
ステップS110における処理部101による処理の例を、
図11を参照しながら説明する。
【0110】
ステップS108において、
図11Aに示されるとおりの蛍光体と生体分子との組合せリストが生成され、そして、ステップS109において、
図11Aに示されるとおりの蛍光体間SIが算出されたとする。なお、
図11に示される生体分子名は、ステップS110を説明するために便宜上付されたものであり、
図7Aに記載の生体分子名とは異なる。
ここで、Normalの明るさカテゴリーに属する蛍光体は、APC、Alexa Fluor、BV510、及びFITCの4つであり、当該明るさカテゴリーに関連付けられた発現量カテゴリーに属する生体分子もCD4~CD7の4つである。そのため、前記4つの蛍光体と前記4つの生体分子と組合せは、
図11Aに示される組合せ以外にも複数存在し、合計で24パターン存在する。Bright及びDimの明るさカテゴリー及びそれらにそれぞれ関連付けられた発現量カテゴリーに関しても、同様に、複数の割り当てパターンが存在する。そこで、ステップS108において、処理部101は、明るさカテゴリーと発現量カテゴリーとの関連付けを逸脱しないという条件を満たす他の採用可能な組合せリスト全てについて、
図11Aに示されるものと同様に、分離能評価を行いうる。
【0111】
例えば
図11Aに示される組合せリストでは、Normalの明るさカテゴリーに属する蛍光色素APCが、当該明るさカテゴリーに関連付けられた発現量カテゴリーに属する生体分子CD4に割り当てられている。前記明るさカテゴリーに属する蛍光色素Alexa Fluorが前記発現量カテゴリーに属する生体分子CD5に割り当てられている。そこで、処理部101は、他の組合せリストの一つとして、例えば、APCをCD5に割り当て且つAlexa FluorをCD4に割り当てたこと以外は
図11Aに示される組合せリストを生成する。当該組合せリストが
図11Bに示されている。このように、蛍光色素の生体分子への割り当て方を、互いに関連付けられた明るさカテゴリー及び発現量カテゴリー内において変更したすべての組合せリストについて、ステップS110において、処理部101は分離能評価を実行する。これにより、処理部101は、全ての組合せリストについてそれぞれ評価値を取得する。
以上のとおり、本技術において、処理部101は、前記発現量カテゴリー及び前記明るさカテゴリーに基づき生成されうる全ての組合せリストに対して、前記発現関係情報を用いて、分離能の評価を実行しうる。
【0112】
ステップS111において、処理部101はステップS109及び110における分離能評価の結果に基づき、最適化された組合せリストを特定する。
例えば、処理部101は、ステップS109及び110において取得された評価値のうちから最大の評価値を特定し、そして、当該最大の評価値が取得された組合せリストを特定する。処理部101は、当該最大の評価値が取得された組合せリストを、最適化された組合せリストであるとして特定する。最適化された組合せリストの例が、
図12に示されている。
【0113】
なお、本技術は、以上で説明した分離能評価を実行する処理部を含む情報処理装置も提供する。すなわち、本技術は、サンプルの解析に用いる複数の生体分子に蛍光体が割り当てられた生体分子に対する蛍光体の組合せリストに関する分離能の評価を実行する処理部を備えており、前記処理部は、前記複数の生体分子の発現関係情報を用いて、前記組合せリストに関する分離能の評価を行う情報処理装置も提供する。
【0114】
ステップS112において、処理部101は、例えば出力部104に、ステップS111において特定された最適化組合せリストを出力部に出力させうる。例えば、当該組合せリストが表示装置に表示されうる。
【0115】
ステップS112において、処理部101はさらに、抗体(又は抗原)と蛍光色素との組合せに対応する試薬情報を出力部104に表示させうる。当該試薬情報は、例えば試薬の名称、品番、製造会社名、及び価格などを含みうる。試薬情報を表示するために、処理部101は、例えば、試薬情報を、情報処理装置100の外部に存在するデータベースから取得してよく、又は、情報処理装置100の内部(例えば記憶部102)に格納されているデータベースから取得してもよい。
【0116】
図7Dに、出力結果の例が示されている。当該例では、抗体(又は抗原)名、蛍光色素名、試薬の名称、品番、製造会社名、及び価格などに加えて、シミュレーション結果も示されている。
【0117】
好ましくは、ステップS112において、処理部101はさらに、特定された最適化組合せリストを用いた場合における分離能に関するシミュレーション結果(例えば各種プロットなど)を生成し、当該シミュレーション結果を出力部に表示させうる。当該シミュレーション結果の生成において、例えば生体粒子分析装置(フローサイトメータなど)のノイズ及び/又はサンプルバラつきが考慮されてよい。処理部101はさらに、生成された組合せリストを用いた場合において予想される分離性能を表示してもよい。
【0118】
前記シミュレーション結果を生成するために、前記最適化組合せリストに含まれる蛍光体のうちの1つの蛍光体だけによって標識された単染色生体粒子に関するシミュレーション用データ(以下「単染色シミュレーション用データ」ともいう)が用いられてよく、若しくは、前記発現関係情報(特にはツリー構造を有する発現関係情報)に従い複数の蛍光体によって標識された生体粒子に関するシミュレーション用データ(以下「多重染色シミュレーション用データ」)が用いられてもよく、又は、これら両方のシミュレーション用データが用いられてもよい。
すなわち、本技術の好ましい実施態様において、ステップS112において生成されるシミュレーション結果は、前記単染色シミュレーション用データを用いて生成されたシミュレーション結果、及び、前記多重染色シミュレーション用データを用いて生成されたシミュレーション結果を含んでよく、より好ましくはこれらシミュレーション結果の両方を含む。このようなシミュレーション結果によって、特には後者のシミュレーション結果によって、実際の実験結果により近い予想分布を知ることができる。
【0119】
以上のとおりの処理によって、生体分子と蛍光体との組合せを最適化することができ、最適化された当該組合せリストをユーザに提示することができる。
【0120】
(3-3)処理部による処理の例(蛍光体組合せの調整処理)
【0121】
上記(3-2)において説明した処理では、ステップS107において、相関情報に基づき蛍光体の組合せが特定される。そして、ステップS108以降において、特定された蛍光体組合せのうちの各蛍光体が、各生体分子に割り当てられる。ステップS107において、特定された蛍光体組合せは、相関情報に基づくものであるので、例えばフローサイトメータなどの分析装置において必要となる分離性能と完全に適合しない場合もある。そのため、本技術において、処理部は、より良い蛍光体組合せを探索するための蛍光体組合せ調整処理を行ってもよい。当該探索のために、例えば蛍光体間SIを用いた分離能評価が行われうる。
【0122】
蛍光体間SIはより大きいほど好ましい。例えば
図16に示されるような蛍光体間SIの表において、蛍光体間SIの数値が小さい領域が少なくなるほど、蛍光体組合せの分離性能は良い。そこで、前記調整処理は、例えば、蛍光体間SIの数値が小さい領域を少なくするような処理であってよい。このような調整処理によって、より良い分離性能を有するパネルを設計することができる。
【0123】
当該調整処理を実行する本技術の情報処理装置による処理の例を、以下で
図13及び14を参照しながら説明する。
図13及び14は、当該処理のフロー図の例である。
【0124】
図14に示される処理フローのうち、ステップS201~S207及びS209~S215は、
図6を参照して説明したステップS101~S107及びS108~112と同じであり、これらについての説明がステップS201~S207及びS209~S213についても当てはまる。
【0125】
ステップS208において、処理部101は、ステップS207において特定された蛍光体組合せの調整処理を行う。ステップS208のより詳細な処理フローの例について、
図14を参照しながら説明する。
【0126】
図14のステップS301において、処理部101は、調整処理を開始する。
【0127】
ステップS302において、処理部101は、ステップS207において特定された最適な蛍光体組合せを構成する蛍光体を、前記複数の生体分子に割り当てる。より具体的には、処理部101は、最適な蛍光体組合せを構成する蛍光体それぞれを、当該蛍光体が属する明るさカテゴリーに対応付けられた発現量カテゴリーに属する生体分子へ、割り当てる。
1つの明るさカテゴリーに2以上の蛍光体が含まれる場合は、対応付けられた発現量カテゴリーにも2以上の生体分子が含まれうる。この場合において、より明るい明るさを有する蛍光体が、より発現量の低い(又はより発現量が低いと予想される)生体分子に割り当てられうる。
図15に、このような割当に関する概念図を示す。当該割り当て処理によって、各生体分子について、蛍光体と生体分子との組合せが生成される。処理部101は、このようにして生体分子に対する蛍光体の組合せリストを生成する。
【0128】
ステップS303において、処理部101は、蛍光体間SIを計算する。当該SIは、例えば、ステップS302において生成された組合せリストを用いてシミュレーションデータを生成し、当該シミュレーションデータに対してスペクトラルリファレンスを用いてアンミキシング処理を行って得られたデータを用いて得ることができる。当該シミュレーションデータは、上記(3-2)において述べたとおりであってよい。
【0129】
ステップS303において、処理部101は、例えば
図16に示されるような、蛍光体間SIのデータを取得しうる。当該データには、前記組合せリストを構成する蛍光体群のうちの異なる2つの蛍光体間のSI全てが含まれている。
【0130】
ステップS304において、処理部101は、計算された蛍光体間SIに基づき、分離性能が悪い1つ又は複数の蛍光体、特には分離性能が悪い1つの蛍光体を特定する。例えば、処理部101は、最も小さい蛍光体間SIが計算された2つの蛍光体のうち陽性として取り扱われた蛍光体を、前記分離性能が悪い1つの蛍光体として特定しうる。
【0131】
例えば
図16に示される蛍光体間SIデータに関して、ステップS304において、処理部101は、最も小さい蛍光体間SI「2.8」が計算された2つの蛍光体のうち、陽性(posi)として取り扱われた蛍光体「PerCP-Cy5.5」を、前記分離性能が悪い1つの蛍光体として特定する。
【0132】
ステップS305において、処理部101は、ステップS304において特定された分離性能が悪い蛍光体を代替する候補蛍光体を特定する。候補蛍光体は例えば以下のとおりに特定されうる。まず、処理部101は、前記分離性能が悪い蛍光体が属する明るさカテゴリーを参照し、当該明るさカテゴリーに属する蛍光体のうち、前記組合せリスト中に採用されていない蛍光体を、候補蛍光体として特定しうる。加えて、処理部101は、候補蛍光体を、前記分離性能が悪い蛍光体が属する明るさカテゴリーと明るさが最も近い明るさカテゴリーから選択してもよい。処理部101は、当該最も近い明るさカテゴリーに属する蛍光体のうち、前記組合せリスト中に採用されていない蛍光体を、候補蛍光体として特定しうる。
【0133】
例えば
図17では、処理部101は、前記分離性能が悪い蛍光体「PerCP-Cy5.5」を代替する候補蛍光体として「Alexa Fluor 647」など6つの蛍光体を特定している。このように、候補蛍光体は複数特定されてよく、又は1つだけ特定されてもよい。
【0134】
ステップS306において、処理部101は、ステップS305において特定された前記分離性能が悪い蛍光体を候補蛍光体へ変更した場合の蛍光体間SIを計算する。この計算は、候補蛍光体の全てについてそれぞれ行われてよい。
【0135】
当該計算結果の例が、
図18A及びBに示されている。
図18A及びBにおいて、
図17に関して言及した6つの蛍光体それぞれについて、前記分離性能が悪い蛍光体を候補蛍光体へ変更した場合の蛍光体間SIが示されている。
【0136】
ステップS307において、処理部101は、ステップS306における計算結果のうち、蛍光体間SIの最小値が最も大きい計算結果が得られた候補蛍光体を、前記分離性能が悪い蛍光体を代替する蛍光体として選択する。
【0137】
例えば
図18A及びBにおける計算結果に関しては、6つの候補蛍光体の計算結果中の蛍光体間SIの最小値のうち、「BV650」に関する蛍光体間SIの最小値が、最も大きい。そこで、処理部101は、「BV650」を「PerCP-Cy5.5」を代替する蛍光体として選択する。
【0138】
ステップS308において、処理部101は、ステップS307において選択された蛍光体によって前記分離性能が悪い蛍光体を代替した前記蛍光体組合せよりも良い蛍光体組合せが存在するかを判定する。当該判定のために、例えば、ステップS304~307が繰り返されてよい。
処理部101は、ステップS304~307を繰り返した結果、蛍光体間SIの最小値が、より大きくなる組合せが存在する場合は、より良い蛍光体組合せが存在すると判定する。このように判定した場合は、処理部101は、処理をステップS304に戻す。
処理部101は、ステップS304~307を繰り返した結果、蛍光体間SIの最小値が、より大きくなる組合せが存在しない場合は、より良い蛍光体組合せが存在しないと判定する。処理部101は、より良い蛍光体組合せが存在しないと判定した場合は、ステップS304~307を繰り返す直前の段階における蛍光体組合せを、最適化された組合せリストとして特定し、処理をステップS309に進める。
【0139】
ステップS309において、処理部101は、分離能評価処理を終了し、処理をステップS209に進める。
【0140】
以上のとおりの処理によって、より良い分離性能を発揮する蛍光体組合せを特定することができる。
【0141】
(3-4)処理部による処理の例(軸情報の入力)
【0142】
フローサイトメータで実験を行う際には、解析対象である細胞の分布比率を求めるための解析手順(例えば上記で
図3を参照して説明したようなゲーティング手順)はある程度構築されている場合が多い。そのため、解析結果(例えばスキャッタグラム)において軸として採用される生体分子もある程度想定されており、当該生体分子を標識する蛍光体の組合せにおいて良好な分離能が求められる。本技術における情報処理において、このように軸として採用されることが想定される生体分子に関する情報が用いられてよい。
【0143】
すなわち、本技術の一つの実施態様において、出力対象とする生体分子の組合せに関する組合せ情報が、生体分子に対する蛍光体の組合せリストを生成する処理において用いられてよい。例えば、本技術において、処理部が、前記分離能の評価における評価対象の特定において、出力対象とする生体分子の組合せに関する組合せ情報をさらに用いうる。
前記評価対象の特定において、発現関係情報に加えて前記組合せ情報を用いることで、ユーザにより分離性能が求められる部分に絞って最適化することが可能となる。これにより、より良いパネルが得られる。
以下でこの実施態様に関して
図19及び20を参照しながら説明する。
図19は、情報処理装置により実行される処理のフロー図である。
図20は、発現関係情報及び組合せ情報に基づく評価対象の特定の仕方を説明するための図である。
【0144】
図19に示される処理フローのうち、ステップS401、S403~S408、及びS412は、上記(3-2)において説明したステップS101、S103~S108、及びS112と同じであり、これらについての説明がステップS401、S403~S408、及びS412についても当てはまる。
【0145】
ステップS402において、処理部101は、発現関係情報及び組合せ情報の入力を受け付ける。前記発現関係情報及びその入力の受付処理に関して、上記(3-2)におけるステップS102についての説明が、ステップS402についても当てはまる。
【0146】
ステップS402において、処理部101は、出力対象とする生体分子の組合せに関する組合せ情報の入力を受け付ける。出力対象とする生体分子の組合せは、ステップS401において入力された複数の生体分子のうちのいずれか2つの生体分子の組合せであってよい。当該組合せ情報に含まれる生体分子の組合せの数はユーザにより適宜選択されてよく、例えばユーザが出力を希望するスキャッタグラムの数に応じて適宜設定されてよい。当該組合せの数は、例えば1以上、2以上、又は3以上であってよい。また、当該組合せの数は、例えば100以下、50以下、又は30以下であってよい。
【0147】
ステップS401及びS402における入力を受け付けるために表示されるウィンドウの例を
図20のA~Cに示す。
図20のAは、ステップS401において生体分子及び発現量の入力を受け付けるウィンドウの例であり、
図20のBは、ステップS402において発現関係情報の入力を受け付けるウィンドウの例である。これらウィンドウは、上記(3-2)において説明したとおりである。
【0148】
図20のCは、ステップS402において組合せ情報の入力を受け付けるウィンドウの例である。当該ウィンドウ中の各行が、前記組合せ情報に含まれる各組合せに対応する。当該ウィンドウの各列(「Axis 1」及び「Axis 2」)が、出力されるスキャッタグラムの2つの軸のそれぞれの生体分子に対応する。例えば、1つのスキャッタグラムの2つの軸をそれぞれ「CD27」及び「CD127」とするために、
図20のCの1行目に示されるように、「Axis 1」及び「Axis 2」において「CD27」及び「CD127」がそれぞれ選択される。他の行についても同様である。
【0149】
組合せ情報の入力操作は、例えば以下のとおりである。
ユーザは、各行の生体分子選択欄をクリックする。当該クリックに応じて、処理部101は、選択可能な生体分子の一覧のリストボックスを表示させる。当該一覧の中からユーザが一つの生体分子を選択することに応じて、当該リストボックスが閉じて、選択された生体分子が表示される。選択可能な生体分子の一覧は、例えばステップS401において選択された複数の生体分子を含んでよく、当該複数の生体分子のみが表示されてもよい。
【0150】
以上のとおりにして、組合せ情報に含まれる各組合せを構成する2つの生体分子が特定される。
【0151】
ステップS409では、処理部101は、ステップS402において入力された発現関係情報及び組合せ情報を用いた、ステップS408において生成された組合せリストに関する分離能の評価を行いうる。
【0152】
当該分離能評価処理において、上記(3-2)において説明したように、処理部101は、前記組合せリストに含まれる蛍光体群のうちの全ての蛍光体ペアについての蛍光体間SIを算出する。
【0153】
次に、処理部101は、前記発現関係情報及び前記組合せ情報を用いて、分離能の評価において評価対象となる蛍光体ペアを特定する。
【0154】
前記発現関係情報を用いた蛍光体ペアの特定については、上記(3-2)において説明したとおりに行われてよい。これにより、発現関係情報に含まれる生体分子ペアに対応する蛍光体ペアが特定される。
【0155】
前記組合せ情報を用いた蛍光体ペアの特定は、例えば以下の通りに行われる。上記で述べた通り、前記組合せ情報の各行は、出力対象となる2つの生体分子の組合せを特定している。そこで、処理部101は、当該組合せを構成する2つの生体分子を特定する。処理部101は、当該組合せに対応する蛍光体ペアを特定する。
【0156】
図20のDに、発現関係情報及び組合せ情報に基づく生体分子ペアの特定結果が、マトリックスデータとして示されている。当該マトリックスデータにおいて、「TRUE」が表示されているセルに対応する2つの生体分子が、発現関係情報を用いて特定された生体分子ペアを構成する2つの生体分子である。また、当該マトリックスデータにおいて、「Axis」が表示されているセルに対応する2つの生体分子が、組合せ情報を用いて特定された生体分子ペアを構成する2つの生体分子である。
【0157】
処理部101が
図20のDに示される特定結果を用いて分離能評価を実行する場合において、処理部101は、「TRUE」及び/又は「Axis」が表示されているセルに対応する2つの生体分子(生体分子ペア)を特定する。そして、処理部101は、さらに、前記組合せリストを参照して、当該2つの生体分子に割り当てられた2つの蛍光体を特定する。そして、処理部101は、例えば
図10に示されるようなSIマトリックスのうちから、当該2つの蛍光体の蛍光体間SIを特定する。
処理部101は、以上のような蛍光体間SIの特定を、「TRUE」及び/又は「Axis」が表示されている全てセルに対応する2つの生体分子に対して行う。
【0158】
以上のとおりにして特定された蛍光体間SIが、分離能評価において用いられる。
なお、分離能評価において、生体分子ペアが発現関係情報により特定されたか、組合せ情報により特定されたか、又はこれらの両方の情報により特定されたかに応じて、当該生体分子ペアに対応する蛍光体ペアの分離性能指標は、重みづけを付与されて分離能評価において用いられてよい。例えば、前記評価値の特定又は算出において、生体分子ペアがどのように特定されたかに応じて、当該生体分子ペアに対応する分離性能指標に重みづけが付与されてよい。
【0159】
これら特定された蛍光体間SIのうちの評価値の特定については、上記(3-2)において述べた通りに行われてよい。
【0160】
以上のように発現関係情報及び組合せ情報を用いることで、分析対象とされた生体粒子(特には細胞)が発現する生体分子及びユーザが出力対象とする生体分子に焦点を当てた分離能評価が可能となり、より適切な組合せリストを選択することができる。さらに、分離能評価に関する処理が、ユーザが分析の対象としている生体粒子が発現する生体分子に絞って行われるので、分離能評価処理を効率化及び/又は高速化することができる。
【0161】
ステップS410において、処理部101は、他の採用可能な組合せリストについて、ステップS409と同じように、発現関係情報及び組合せ情報を用いて、分離能評価処理を実行する。例えば、処理部101は、上記で述べたように、各組合せリストについて、評価値を取得する。
【0162】
ステップS411において、ステップS409及びS410における分離能評価結果に基づき、最適な組合せリストが特定される。そして、ステップ412において、出力が行われる。
【0163】
以上の通りの処理によって、ユーザが出力対象とする生体分子に絞ったパネル最適化が可能となる。
【0164】
(3-5)処理部による処理の例(予想される解析結果に基づく発現関係情報の入力)
【0165】
例えばフローサイトメータなどの装置を使用するユーザは、ゲーティング操作には慣れているが、上記(3-2)及び(3-4)において述べた発現関係情報及び/又は組合せ情報の入力操作には慣れていない場合がある。そのため、ゲーティング操作を行うように発現関係情報及び/又は組合せ情報を入力することができれば、ユーザにとっての利便性が向上すると考えられる。
【0166】
本技術の好ましい実施態様において、発現関係情報及び/又は組合せ情報は、取得することが想定される測定結果データから抽出されたデータを含みうる。この実施態様において、処理部101は、取得することが想定される測定結果データ(以下「想定測定結果データ」ともいう)を生成するための情報の入力を受け付ける画面を出力装置に出力させる出力工程を実行しうる。そして、処理部101は、当該画面を介して入力された想定測定結果データから、発現関係情報及び/又は組合せ情報を抽出する抽出工程を実行しうる。この実施態様において、ゲーティング操作を行っているように、ユーザは発現関係情報及び/又は組合せ情報を入力することができ、ユーザにとっての利便性が向上される。
【0167】
この実施態様において、前記想定測定結果データは、例えば前記サンプルの解析により取得されると考えられる測定結果データであってよく、当該想定測定結果データはユーザにより適宜作成されうる。前記想定測定結果データは、例えば想定される1つ又は複数のスキャッタグラムの模式図を含み、特には複数のスキャッタグラムの模式図を含む。
【0168】
各スキャッタグラムの模式図は、前記複数の生体分子のいずれか2つを軸として採用したスキャッタグラム模式図であってよい。各スキャッタグラムの模式図における生体粒子の分布は、任意の図形によって表されてよい。当該図形は、例えば円形(真円及び楕円を含む)、矩形、若しくは他の多角形であってよく、又は、これら以外の形状の領域であってもよい。
【0169】
この実施態様における前記出力工程及び前記抽出工程は、例えば上記(3-2)において説明したステップS102又は上記(3-4)において説明したステップS402において行われうる。
【0170】
前記出力工程及び前記抽出工程がステップS402において行われる場合の例を、以下で
図21を参照しながら説明する。
図21は、想定測定結果データを生成するための情報の入力を受け付ける画面の例である。
【0171】
ステップS402において、処理部101は、取得することが想定される測定結果データの入力を受け付ける画面として、例えば
図21のAに示されるようなウィンドウを出力部に出力させうる。当該ウィンドウの左側には、想定されるスキャッタグラム模式図を入力するための描画ツールバーが表示されている。
【0172】
次に、ユーザがスキャッタグラム追加ボタン(図示されていない)をクリックすることに応じて、
図21のBに示されるように、処理部101は、スキャッタグラム模式図が記入される枠10を当該ウィンドウ内に表示させる。
【0173】
次に、ユーザが例えば枠10をクリックすることに応じて、処理部101は、当該スキャッタグラム模式図の軸として採用される生体分子の選択をユーザに促すウィンドウ(図示されていない)を表示させる。当該ウィンドウにおいて、当該スキャッタグラムのX軸及びY軸として採用される生体分子をユーザが選択することに応じて、
図21のCに示されるように、生体分子名又はその略称が枠の付近(特にはX軸及びY軸付近)に表示される。
図21のCでは、X軸及びY軸の生体分子として「CD1」及び「CD2」が、選択された生体分子として表示されている。
【0174】
次に、ユーザは、選択された生体分子の発現の有無により特徴付けられる生体粒子の、当該スキャッタグラム上で想定される粒子分布を示す図形を、例えば描画ツールバーを利用して、枠10内に描く。例えば、
図21のDに示されるとおりの円1、2、及び3が描かれるように、ユーザは円形描画ツールを操作する。当該操作に応じて、処理部101は、円1、2、及び3を枠10内に表示させる。
円1は、例えばCD2陽性且つCD1陰性の細胞集団が分布することが想定されている。円2は、例えばCD2陰性且つCD1陰性の細胞集団が分布することが想定されている。円3は、例えばCD2陰性且つCD1陽性の細胞集団が分布することが想定されている。
このように、当該ウィンドウは、スキャッタグラムにおいて想定される生体粒子分布を示す図形の入力を受け付けることができるように構成されていてよい。処理部101は、想定される生体粒子分布を示す図形の入力操作に応じて、当該図形をウィンドウ内に表示させる。
【0175】
次に、ユーザは、展開されるべき細胞集団が想定された円に対して、ゲートを設定する図形を、例えば描画ツールバーを利用して、枠10内に描く。例えば、円3に属する生体粒子へのゲート設定及び展開を行うために、
図21のEに示されるとおり、円3を囲む矩形が描かれるようにユーザは矩形描画ツールを操作する。当該操作に応じて、処理部101は、円3を囲む矩形を枠10内に表示させる。
このように、当該ウィンドウは、生体粒子分布を示す図形に対するゲートの設定及び/又は展開を行うための図形の入力を受け付けることができるように構成されていてよい。処理部101は、ゲートの設定及び/又は展開を行うための図形の入力操作に応じて、当該図形をウィンドウ内に表示させる。
【0176】
次に、ユーザは、前記矩形によって設定されたゲートを選択し、そして、当該ゲートが選択された状態でスキャッタグラム追加ボタン(図示されていない)をクリックする。当該クリックに応じて、
図21のFに示されるように、処理部101は、当該ゲートが展開されたスキャッタグラム模式図の枠を当該ウィンドウ内に表示させる。
また、当該展開されたスキャッタグラム模式図において軸として採用される生体分子が、ユーザにより選択されうる。当該生体分子の選択は、
図21のCを参照して説明したように行われてよい。例えば
図21のFでは、X軸及びY軸の生体分子として「CD3」及び「CD4」が、選択された生体分子として表示されている。すなわち、前記ゲートの展開により生成されるスキャッタグラム模式図の軸として採用される生体分子として、CD3及びCD4が選択されている。
【0177】
次に、ユーザは、
図21のFに示されるとおり、円4、5、及び6が描かれるように円形描画ツールを操作する。当該操作は、上記で
図21のDを参照して説明したように行われてよい。
また、
図21のFに示されるとおり、円4に対してゲートを設定する図形が描かれる。当該図形を描くための操作は、上記で
図21のEを参照して説明したように行われてよい。
【0178】
その後、以上で述べたゲートの設定及び展開のための操作が、分析対象に応じてユーザにより適宜繰り返されうる。
【0179】
前記ウィンドウへのゲート設定及び展開が完了した後、ユーザは、発現関係情報が抽出される生体粒子集団が属する図形(例えば円など)を選択する。例えば、ユーザがいずれかの円を例えばマウスクリックなどによって選択したことに応じて、処理部101は、当該円に関連付けられた複数の生体分子及びそれらの発現の有無を抽出する。処理部101は、このように抽出された情報を、発現関係情報として取り扱う。
例えば、処理部101は、選択された円を形成するためのゲーティング操作においてに利用された全ての図形を特定し、当該全ての図形のそれぞれが形成されたスキャッタグラム模式図の軸を参照して、当該円に対応する生体粒子を特定するための生体分子の種類及び発現の有無の情報を取得する。処理部101は、当該取得された情報を発現関係情報として取り扱う。
【0180】
また、前記ウィンドウへのゲート設定及び展開が完了した後、組合せ情報を取得するために、処理部101は、生成された全てのスキャッタグラム模式図それぞれの軸として採用された2つの生体分子を、組合せ情報を構成する生体分子ペアとして取得する。
【0181】
抽出処理の例を、
図22及び23を参照して説明する。
図22は、想定測定結果データが入力されたウィンドウの例である。
図23のAは、ステップS401において入力された複数の生体分子及び当該複数の生体分子それぞれの発現量の入力結果を示す。
図23のBは、
図22に示されるウィンドウからの抽出された発現関係情報の例を示す。
図23のCは、
図22に示されるウィンドウから抽出された組合せ情報の例を示す。
図23のDは、前記発現関係情報及び前記組合せ情報に基づく生体分子ペアの特定結果の例を示す。
【0182】
図22に示される想定測定結果データにおけるゲートの設定及び展開を以下で説明する。
【0183】
図22のスキャッタグラム模式
図0は、CD45及びCD45RAを軸として採用している。スキャッタグラム模式
図0には、CD45陽性且つCD45RA陰性の細胞集団の分布を示す円と、CD45陽性且つCD45RA陽性の細胞集団を示す円が描かれている。
また、スキャッタグラム模式
図0において、CD45陽性且つCD45RA陰性の細胞集団の分布を示す円に対して、矩形ゲート1が設定されている。矩形ゲート1を展開して、スキャッタグラム模式
図1が生成されている。
【0184】
スキャッタグラム模式
図1は、CD3及びCD4を軸として採用している。スキャッタグラム模式
図1には、CD3陽性且つCD4陽性の細胞集団を示す円が描かれている。また、スキャッタグラム模式
図1には、CD3陽性且つCD4陰性の細胞集団を示す円、及び、CD3陰性且つCD4陰性の細胞集団を示す円も描かれている。
また、スキャッタグラム模式
図1中に、矩形ゲート2、3、及び5が設定されている。矩形ゲート2は、CD3陽性且つCD4陰性の細胞集団に対して設定されたゲートである。矩形ゲート3及び5はいずれも、CD3陰性且つCD4陰性の細胞に対して設定されたゲートである。矩形ゲート2、3、及び5をそれぞれ展開して、スキャッタグラム模式
図2、3、及び5が生成されている。
【0185】
スキャッタグラム模式
図2は、CD8a及びCD27を軸として採用している。スキャッタグラム模式
図2中に、CD8a陽性且つCD27陰性の細胞集団を示す円、及び、CD8a陽性且つCD27陽性の細胞集団を示す円が描かれている。
【0186】
スキャッタグラム模式
図3は、CD19及びCD27を軸として採用している。スキャッタグラム模式
図3には、CD19陽性且つCD27陰性の細胞集団を示す円、CD19陽性且つCD27陽性の細胞集団を示す円、及び、CD19陰性且つCD27陰性の細胞集団を示す円が描かれている。
また、CD19陽性且つCD27陰性の細胞集団に対して矩形ゲート4が設定されている。矩形ゲート4を展開して、スキャッタグラム模式
図4が生成されている。
【0187】
スキャッタグラム模式
図4は、CD127及びCD5を軸として採用している。スキャッタグラム模式
図4中に、CD127陽性且つCD5陰性の細胞集団を示す円、CD127陰性且つCD5陰性の細胞集団を示す円、及びCD127陰性且つCD5陽性の細胞集団を示す円が描かれている。
【0188】
スキャッタグラム模式
図5は、CD16及びCD21を軸として採用している。スキャッタグラム模式
図5中に、CD16陽性且つCD21陰性の細胞集団を示す円、CD16陰性且つCD21陰性の細胞集団を示す円、及びCD16陰性且つCD21陽性の細胞集団を示す円が描かれている。
また、スキャッタグラム模式
図5において、CD16陰性且つCD21陰性の細胞集団に対して矩形ゲート6が設定されている。矩形ゲート6を展開して、スキャッタグラム模式
図6が生成されている。
【0189】
スキャッタグラム模式
図6は、CD45RO及びCD45を軸として採用している。スキャッタグラム模式
図6中に、CD45RO陽性且つCD45陽性の細胞集団を示す円が描かれている。
【0190】
図22のスキャッタグラム模式
図0~6により表される想定測定結果データに対して、ユーザが、発現関係情報を抽出したい細胞集団を示す円を選択する。処理部101は、当該選択された円それぞれに対応する生体粒子集団の発現関係情報を抽出する。
【0191】
例えば、処理部101は、或る選択された円を形成するために用いられたスキャッタグラム模式図及びゲートを参照し、当該スキャッタグラム模式図及びゲートから、発現関係情報を抽出しうる。
【0192】
例えば、
図22において、ユーザが円1を選択したとする。この場合において、処理部101は、円1を形成するために用いられたスキャッタグラム模式図として、スキャッタグラム模式
図2、スキャッタグラム模式
図1(スキャッタグラム2の展開元である矩形ゲート2を含む)、及びスキャッタグラム模式
図0(スキャッタグラム1の展開元である矩形ゲート1を含む)を特定する。また、処理部101は、円1を形成するために用いられたゲートとして、矩形ゲート2及び矩形ゲート1を特定する。処理部101は、このように特定されたスキャッタグラム模式
図2、1、及び0の軸として採用された生体分子、円1に関するスキャッタグラム模式
図2の軸の生体分子の発現の有無、並びに、ゲート2に関するスキャッタグラム模式
図1の軸の生体分子の発現の有無、並びに、ゲート1に関するスキャッタグラム模式
図0の軸の生体分子の発現の有無を、発現関係情報として抽出しうる。
他の選択された全ての円2~10についても、同様に発現関係情報を抽出しうる。
なお、当該抽出処理において、各スキャッタグラム模式図の2つの軸のうち、いずれか一方の軸の生体分子及びその発現の有無が発現関係情報として抽出されてよく、又は、両方の軸の生体分子及びそれらの発現の有無が発現関係情報として抽出されてもよい。抽出において参照される軸及び参照されない軸は、ユーザにより適宜選択されてよい。
【0193】
図22に示される想定測定結果データから抽出された、選択された円1~10の発現関係情報の例が、
図23のBに示されている。
図23のBにおける第1行~第10行が、それぞれ円1~10に対応している。
【0194】
以上のように、処理部101は、想定測定結果データから発現関係情報を抽出しうる。
【0195】
また、処理部101は、スキャッタグラム模式
図0~6それぞれの軸として採用された2つの生体分子の組合せを、出力対象とする生体分子の組合せに関する組合せ情報として抽出しうる。例えばスキャッタグラム模式
図0からは、CD45RA及びCD45の組合せを、当該組合せ情報として抽出しうる。他のスキャッタグラム模式
図1~6からも、同様に組合せ情報を抽出しうる。
【0196】
図22に示される想定測定結果データから抽出された、スキャッタグラム模式
図0~6に関する組合せ情報の例が、
図23のCに示されている。
図23のCにおける第1行~第7行が、それぞれスキャッタグラム模式
図0~6に対応している。
【0197】
以上のとおりに抽出された発現関係情報及び/又は組合せ情報は、ステップS409における生体分子ペアの特定のために用いられる。当該特定の仕方は、上記(3-4)において説明したとおりであってよい。当該特定の結果を、
図23のDに示す。当該特定の結果を用いて、ステップS409において分離能の評価が行われてよい。
【0198】
(3-6)処理部による処理の例(測定結果に基づく発現関係情報の入力)
【0199】
上記(3-5)では、取得されることが想定される測定結果データから発現関係情報及び/又は組合せ情報が抽出された。本技術において、取得された測定結果データから発現関係情報及び/又は組合せ情報が抽出されてもよい。このような抽出によっても、ユーザにとっての利便性の向上を図ることができる。
【0200】
本技術の好ましい実施態様において、発現関係情報及び/又は組合せ情報は、取得済みの測定結果データから抽出されたデータを含みうる。この実施態様において、処理部101は、測定結果データを取得するデータ取得工程を実行しうる。この実施態様において、処理部101は、取得済みの測定結果データから、発現関係情報及び/又は組合せ情報を抽出する抽出工程を実行しうる。この実施態様において、取得済み測定結果データを利用することで、上記(3-2)及び(3-5)において述べたような入力操作を省くことができ、ユーザにとっての利便性が向上される。処理部101は、当該抽出された発現関係情報を用いて、前記組合せリストに関する分離能の評価を行いうる。
【0201】
この実施態様において、前記取得済み測定結果データとして、ユーザにより適宜選択された測定結果データが用いられてよい。前記取得済み測定結果データは、例えば1つ又は複数のスキャッタグラムを含み、特には複数のスキャッタグラムを含む。各スキャッタグラムは、前記複数の生体分子のいずれか2つを軸として採用したスキャッタグラムであってよい。各スキャッタグラムは、例えばドットプロット又は等高線プロットであってよい。
【0202】
この実施態様における前記データ取得工程及び前記抽出工程は、例えば上記(3-2)において説明したステップS102又は上記(3-4)において説明したステップS402において行われうる。
【0203】
前記データ取得工程及び前記抽出工程がステップS402において行われる場合の例を、以下で
図24及び25を参照しながら説明する。
【0204】
前記データ取得工程において、処理部101は、測定結果データを取得する。当該データが、次の抽出工程において取得済み測定結果データとして取り扱われる。取得された測定結果データの例が
図24に示されている。当該測定結果データは、
図24に示されるとおり、4つのスキャッタグラムを含む。各スキャッタグラムは、同図に示されるとおり、2つの生体分子を軸として採用している。
【0205】
前記抽出工程において、処理部101は、前記データ取得工程において取得された測定結果データ(「取得済み測定結果データ」である)から、発現関係情報及び/又は組合せ情報を抽出する。
【0206】
処理部101は、取得済み測定結果データのうちから、所定の条件を満たす領域を特定する。当該領域は、例えばイベント密度の相対強度が所定の値以上の領域でありうる。
【0207】
図24Aにおいては、CD27陽性且つCD127陽性の生体粒子によって当該領域が形成されているとする。処理部101は、
図24Aのスキャッタグラム中に当該領域が存在すると特定する。そこで、処理部101は、当該スキャッタグラムから発現関係情報を抽出する。例えば、当該スキャッタグラムの軸として採用されている生体分子であるCD27及びCD127、並びに、これら生体分子の発現の有無を、発現関係情報として抽出する。
図24B~Dからも、処理部101は、同様に発現関係情報を抽出する。
【0208】
図24A~Dのスキャッタグラムから抽出された発現関係情報の例が、
図25のBに示されている。なお、
図25のAには、ステップS401において入力された複数の生体分子及び当該複数の生体分子それぞれの発現量の入力結果が示されている。
【0209】
また、処理部101は、
図24A~Dのスキャッタグラムそれぞれの軸として採用された2つの生体分子の組合せを、出力対象とする生体分子の組合せに関する組合せ情報として抽出しうる。例えば
図24Aのスキャッタグラムから、CD27及びCD127の組合せを、当該組合せ情報として抽出しうる。
図24B~Dのスキャッタグラムからも、同様に組合せ情報を抽出しうる。
図24A~Dに示されるスキャッタグラムから抽出された組合せ情報の例が、
図25のCに示されている。
図25のCにおける第1行~第4行が、それぞれ
図24のA~Dのスキャッタグラムそれぞれに対応している。
【0210】
以上のとおりに抽出された発現関係情報及び/又は組合せ情報は、ステップS409における生体分子ペアの特定のために用いられる。当該特定の仕方は、上記(3-4)において説明したとおりであってよい。
【0211】
(3-7)処理部による処理の例(FMOシミュレーション)
【0212】
上記(3-2)において説明したステップS112では、処理部101は、蛍光分離シミュレーションを行い、そして、当該蛍光分離シミュレーションの結果を出力装置に出力させうる。本技術の一つの実施態様において、処理部101は、当該蛍光分離シミュレーションを実行するために用いるシミュレーション用データとして、前記組合せリストを構成する蛍光体群のうちから1つの蛍光体が欠如した1色欠如蛍光体群によって染色された粒子に関するデータ(以下「FMOシミュレーション用データ」ともいう)を用いてよい。すなわち、処理部101は、ステップS112において、FMOシミュレーションを実行しうる。
【0213】
単染色シミュレーション用データ及びFMOシミュレーション用データの例を
図26及び27を参照して説明する。
【0214】
図26は、単染色シミュレーション用データの構成例を示す。
図26の各行に、ステップS111において特定された最適化組合せリストに含まれる抗体(Antibody)と蛍光体(Dye)との組合せ、並びに、抗体により捕捉される抗原の発現量(Level)が示されている。同図に示されるとおり、当該最適化組合せリストには12の蛍光体が含まれる。そこで、単染色シミュレーション用データは、最適化組合せリストに含まれる各蛍光体によって染色された単染色生体粒子に関するシミュレーション用データを含む。例えば、同図に示されるData_1は、PEのみによって染色された生体粒子に関するデータである(丸印が染色に用いた色素を示し、X印は染色に用いられていない色素を示す)。Data_2~Data_12についても同様に、1つの色素によって染色された生体粒子に関するデータである。
【0215】
図27は、FMOシミュレーション用データの構成例を示す。
図27の各行にも、ステップS111において特定された最適化組合せリストに含まれる抗体(Antibody)と蛍光体(Dye)との組合せ、並びに、抗体により捕捉される抗原の発現量(Level)が示されている。同図に示されるとおり、当該最適化組合せリストには12の蛍光体が含まれる。そこで、FMOシミュレーション用データは、最適化組合せリストに含まれる全蛍光体のうちから1つを除いた蛍光体によって染色された多重染色生体粒子に関するシミュレーション用データを含む。例えば、同図に示されるData_1は、PE以外の11の蛍光体によって染色された生体粒子に関するデータであるData_2~Data_12についても同様に、1つの蛍光体を除く11の蛍光体によって染色された生体粒子に関するデータである。
【0216】
一般的に、シミュレーションでの分離能評価において或る程度許容される評価結果が得られたパネルであっても、実際に細胞を用いた実験では細胞のバラつき及び/又は染色バラつきにより分離性能が悪化する傾向にある。そのため、より分離が難しい条件下でパネルの分離能評価シミュレーションを行うことは重要である。
【0217】
単染色の場合よりも多重染色の場合のほうが、漏れ込み量の影響が大きくなるため、異なる生体粒子集団を分離することがより難しくなる。
図28及び29に、同じパネルに対する単染色シミュレーション結果及びFMOシミュレーション結果をそれぞれ示す。
図28に示される結果よりも、
図29に示される結果のほうが、異なる生体粒子集団が、より分離されていないことが分かる。FMOシミュレーションは、より分離が難しいケースについてのシミュレーションであるので、FMOシミュレーションを行うことによって、実際の実験において良好な結果が得られる可能性を高めることができる。
【0218】
(3-8)処理部による処理の例(次元圧縮)
【0219】
上記(3-2)において説明したステップS112では、処理部101は、蛍光分離シミュレーションを行い、そして、当該蛍光分離シミュレーションの結果を出力装置に出力させうる。本技術の一つの実施態様において、処理部101は、前記蛍光分離シミュレーションの結果を次元圧縮して得られた分布図を出力装置に出力させうる。これにより、パネルの最適化結果を可視化することができる。
【0220】
当該次元圧縮は、例えばtSNE(t-Distributed Stochastic Neighbor Embedding)、Umap、TriMap, FlowSOM、Phenograph、Isomap、Spectral Embedding、又はLLE(Locally Linear Embedding)であってよく、好ましくはtSNE次元圧縮である。
【0221】
好ましくは、次元圧縮の対象となる蛍光分離シミュレーション結果は、好ましくはシミュレーション用データをアンミキシング処理して得られたスキャッタグラム群を含み、例えばFMOシミュレーション用データをアンミキシング処理して得られたスキャッタグラム群及び/又は単染色シミュレーション用データをアンミキシング処理して得られたスキャッタグラム群を含む。
【0222】
特に好ましくは、処理部101は、FMOシミュレーション用データをアンミキシング処理して得られたスキャッタグラム群をtSNE次元圧縮して得られた分布図を出力装置に出力させうる。これにより、パネルの最適化結果をより分かり易く可視化することができ、さらに分布の分離度の数値化も可能となる。すなわち、本技術において、処理部101は、蛍光分離シミュレーションの結果を次元圧縮することで取得された分布図中の各クラスタの分離度を数値として出力装置に出力させてよい。
【0223】
前記分離度の数値化について、
図30を参照しながら説明する。
図30の左に、tSNE次元圧縮により生成された分布図の例が示されている。同図に示されるとおり、当該分布図には複数のクラスタが存在する。当該分布図は、各クラスタがより離れており且つ各クラスタを構成する点がより収束していることが好ましい。この観点から分布図の分離度を評価する指標として、DB-Indexを採用することができる。DB-Indexは、或るクラスタと当該或るクラスタの重心から一番重心が近いクラスタとの間の距離に基づく指標であり、
図29に記載されるとおり、以下の数式によって表される。DB-Indexは、その値が小さければ小さいほど異なる分布が異なる位置に配置されていることを意味しており、良い分離性能であることを判定することができる。
【数2】
【数3】
【0224】
前記数式2及び3において、sは、クラスタiにおける、クラスタ重心から各点の距離の平均である。ここで、クラスタ重心は中心座標である。また、dijは、クラスタiとクラスタjの重心間の距離である。kはクラスタの数である。DBが DB-Indexである。
【0225】
例えば、
図30の右に示されるとおり、3つのクラスタS1、S2、及びS3が存在する場合、クラスタS1に着目し、クラスタS2及びS3について、それぞれR
12及びR
13を計算する。そして、最も大きいRが、DBを算出するために用いられる。
【0226】
上記(3-7)において説明した
図28の単染色シミュレーション結果及び
図29のFMOシミュレーション結果をtSNE次元圧縮した分布図を、それぞれ
図31および
図32に示す。これらの分布図から、FMOシミュレーションでは各クラスタがより分離されておらず、すなわちより厳しい条件での評価となることが分かる。次元圧縮によって、多数のスキャッタグラムを比較することなく、1つの分布図によって視覚的にパネルの分離能を評価することができる。
また、単染色シミュレーション結果のtSNE次元圧縮により得られた分布図における分離度は、0.3758であり、FMOシミュレーション結果の次元圧縮により得られた分布図における分離度は、0.5481であった。これらの値からも、FMOシミュレーションでは各クラスタがより分離されておらず、すなわちより厳しい条件での評価となることが分かる。このように、tSNE次元圧縮により得られた分布図から分離度を算出することで、数値により分離の程度を判定することもできる。
【0227】
すなわち、本技術は、スキャッタグラム群に対して次元圧縮を行って得られる分布図中のクラスタ分離度を数値により評価する評価方法も提供する。当該スキャッタグラム群は、パネルに対応するシミュレーション用データをアンミキシング処理して得られうる。また、当該次元圧縮は、tSNE次元圧縮であってよい。また、当該数値は、DB-Indexであってよい。当該評価方法は、例えばパネルの評価のために行われてよい。
【0228】
(実施例1:ツリー情報を用いることによる分離性能向上)
【0229】
本技術に従い、発現量カテゴリーと明るさカテゴリーと蛍光体間相関情報と発現関係情報とに基づき、生体分子に対する蛍光体の組合せリスト(以下「実験例1の組合せリスト」という)を生成した。実験例1の組合せリストにおいて32種類の生体分子それぞれに1つの蛍光色素が割り当てられており、すなわち当該組合せリストは32種の蛍光色素を含む。また、発現関係情報を用いないこと以外は同じようにして、生体分子に対する蛍光体の組合せリスト(以下「実験例2の組合せリスト」という)も生成した。
【0230】
実験例1及び2の組合せリストそれぞれについて、FMOシミュレーション用データを生成し、当該データをアンミキシング処理して、スキャッタグラムを生成した。実験例1の組合せリストを用いて、スキャッタグラムが
図33に示されている。
図33に示されるスキャッタグラムはいずれも、発現関係情報によって特定された2つの生体分子ペアについてのものである。実験例2についても、前記生体分子ペアについてのスキャッタグラムを生成した。当該スキャッタグラムが、
図34に示されている。
図33及び34において、生体粒子集団の分離が不明瞭である部分が矢印によって示されている。
図33及び34の比較より、実験例1の組合せリストを用いて生成されたスキャッタグラムは、実験例2のスキャッタグラムと比べて、生体粒子集団の分離が不明瞭である部分が少ない。そのため、発現関係情報を用いることによって、分析対象とする生体分子ペアに関する分離性能が向上されたパネルを設計できることが分かる。
【0231】
(実施例2:FMOシミュレーション結果のtSNE次元圧縮による分離性能の可視化及び数値化)
【0232】
本技術に従い生成された生体分子に対する蛍光体の最適化組合せリストに対して、単染色シミュレーション用データを生成し、当該シミュレーション用データに対してアンミキシング処理を行ってスキャッタグラム群を得た。得られたスキャッタグラム群に対して、tSNE次元圧縮を行って分布図を得た。また、得られた分布図から、DB-Indexを算出した。当該分布図及び当該DB-Indexの値が、
図35Aに示されている。
【0233】
また、当該最適化組合せリストを構成する蛍光体の一部が同リスト中の他の生体分子に割り当てられるように割当の仕方が変更された変更版組合せリストを生成した。また、当該最適化組合せリストを構成する生体分子に対してランダムに蛍光色素が割り当てられたランダム組合せリストも生成した。前記変更版組合せリスト及び前記ランダム組合せリストのそれぞれについても、前記最適化組合せリストと同様に、単染色シミュレーション用データを生成し、当該シミュレーション用データに対してアンミキシング処理を行ってスキャッタグラム群を得た。得られたスキャッタグラム群から、tSNE次元圧縮による分布図を得、そして、当該分布図からDB-Indexを算出した。前記変更版組合せリストについての分布図及びDB-Indexの値が、
図35Bに示されている。前記ランダム組合せリストについての分布図及びDB-Indexの値が、
図35Cに示されている。
【0234】
前記最適化組合せリストに対して、FMOシミュレーション用データを生成し、当該シミュレーション用データに対してアンミキシング処理を行ってスキャッタグラム群を得た。得られたスキャッタグラム群から、tSNE次元圧縮による分布図を得、さらに、当該分布図からDB-Indexを算出した。当該分布図及び当該DB-Indexの値が、
図35Dに示されている。
【0235】
また、前記変更版組合せリスト及び前記ランダム組合せリストについても、同様に、FMOシミュレーション用データを生成し、当該シミュレーション用データに対してアンミキシング処理を行ってスキャッタグラム群を得た。得られたスキャッタグラム群から、tSNE次元圧縮による分布図を得、そして、当該分布図からDB-Indexを算出した。前記変更版組合せリストについての分布図及びDB-Indexの値が、
図34Eに示されている。前記ランダム組合せリストについての分布図及びDB-Indexの値が、
図34Fに示されている。
【0236】
単染色シミュレーションに関する
図34A及びBの分布図を比較すると、各クラスタの収束の程度やクラスタ間の分離の程度に差はほとんど見られず、DB-Indexの値もほぼ同じである。すなわち、単染色シミュレーションでは、前記最適化組合せリストと前記変更版組合せリストにおける分離能がほぼ同程度と判定されうる。
図34A及びBと
図34Cの分布図を比較すると、
図34Cでは、各クラスタがより広がっており、クラスタ間の分離ができていないものもある。また、
図34A及びBのDB-Indexよりも、
図34CのDB-Indexの値がわずかに大きい。そのため、単染色シミュレーションでは、組合せリストを構成する生体分子への蛍光体の割り当ての仕方を大幅に変更することによって、tSNE次元圧縮による分布図の違い及びDB-Indexの悪化を確認することができる。
【0237】
一方、FMOシミュレーションに関する
図34D及びEの分布図を比較すると、
図34Eでは、各クラスタがより広がっていることが一見して明らかであり、クラスタ間の分離ができていないものが増えていることも即座に視認できる。また、
図34DのDB-Indexよりも、
図34EのDB-Indexの値が大幅に大きい。そのため、FMOシミュレーションでは、組合せリストを構成する生体分子への蛍光体の割り当ての仕方をわずかに変更しただけで、tSNE次元圧縮による分布図の違い及びDB-Indexの悪化を確認することができる。
図34D、E、及びFの分布図を比較から、
図34Fでは、収束していないドットが
図34Eよりもさらに増えていることが一見して明らかであり、クラスタ間の分離ができていないものが
図34Eよりもさらに増えていることも明らかである。また、
図34FのDB-Indexは、
図34D及びEのDB-Indexよりも大幅に大きい。そのため、
図34D、E、及びFの比較によって、FMOシミュレーションでは、最適化組合せリストを構成する生体分子への蛍光体の割り当ての仕方の変更の程度が大きくなるにつれて、tSNE次元圧縮による分布図の違い及びDB-Indexの悪化を確認することができる。
【0238】
また、前記変更版組合せリストについての
図34B(単染色シミュレーション)及び
図34E(FMOシミュレーション)の比較から、FMOシミュレーションは、単染色シミュレーションと比べて、生体分子への蛍光体の割り当ての仕方のわずかな変更による分離能の変化をより明瞭に検出することができることが分かる。前記ランダム組合せリストについての
図34C(単染色シミュレーション)及び
図34F(FMOシミュレーション)の比較からも、同じことが分かる。
【0239】
以上のとおり、FMOシミュレーションを行って得られたスキャッタグラムに対してtSNE次元圧縮を行うことによって、多数のスキャッタグラムを比較することなく、1つの分布図によって視覚的に且つ明瞭に、分離能を評価することができる。また、当該分布図に関する分離能を数値化することもでき、当該数値化によって、分離能に関するより明確な判断材料が提供される。
【0240】
2.第2の実施形態(情報処理システム)
【0241】
本技術は、上記「1.第1の実施形態(情報処理装置)」において説明した処理部を含む情報処理システムも提供する。当該情報処理システムは、当該処理部に加えて、上記「1.第1の実施形態(情報処理装置)」において説明した記憶部、入力部、出力部、及び通信部を含みうる。これらの構成要素は、1つの装置に備えられていてよく、又は、複数の装置に分散して備えられていてもよい。例えば、本技術の情報処理システムは、当該処理部に加えて、サンプルの解析に用いる複数の生体分子の発現量に関するデータ入力を受け付ける入力部を含みうる。
【0242】
本技術に従う情報処理システムによっても、上記「1.第1の実施形態(情報処理装置)」において述べたとおり、より適切な組合せリストを生成することができ、且つ、当該生成のための処理がより効率的に行われる。これにより、最適化されたパネルデザインを自動的に行うことが可能となる。また、前記発現関係情報を利用することによって、例えば分析対象となる生体分子の発現の分析のために、より適したパネルが自動的に生成される。
【0243】
3.第3の実施形態(情報処理方法)
【0244】
本技術は情報処理方法にも関する。当該情報処理方法は、サンプルの解析に用いる複数の生体分子を前記サンプルにおける発現量に基づき分類した発現量カテゴリーと、前記サンプルの解析に用いることが可能な複数の蛍光体を明るさに基づき分類した明るさカテゴリーと、前記複数の蛍光体間の相関情報と、前記複数の生体分子の発現関係情報とに基づき、生体分子に対する蛍光体の組合せリストを生成するリスト生成工程を含む。前記リスト生成工程において、前記組合せリストにて前記生体分子に割り当てる前記蛍光体は、前記生体分子が属する発現量カテゴリーに対応付けられた明るさカテゴリーに属する蛍光体から選択される。
【0245】
好ましくは、前記処理部は、前記発現関係情報を用いて、前記組合せリストに関する分離能の評価を行う評価工程をさらに含む。
【0246】
生体分子に対する蛍光体の組合せリストを本技術の情報処理方法に従い生成することによって、より適切な組合せリストを生成することができ、且つ、当該生成のための処理がより効率的に行われる。これにより、最適化されたパネルデザインを自動的に行うことが可能となる。また、前記発現関係情報を利用することによって、例えば分析対象となる生体分子の発現の分析のために、より適したパネルが自動的に生成される。
【0247】
本技術の情報処理方法に含まれるリスト生成工程は、上記「1.第1の実施形態(情報処理装置)」において説明したフローのいずれかに従い実行されてよい。
【0248】
前記リスト生成工程は、例えば、サンプルの解析に用いる複数の生体分子を前記サンプルにおける発現量に基づき分類した発現量カテゴリーを生成する発現量カテゴリー生成工程、前記サンプルの解析に用いることが可能な複数の蛍光体を明るさに基づき分類した明るさカテゴリー明るさカテゴリー生成工程、及び、前記発現量カテゴリー、前記明るさカテゴリー、及び前記複数の蛍光体間の相関情報に基づき、生体分子に蛍光体を割り当てる処理を行う割当工程を含みうる。
【0249】
前記発現量カテゴリー生成工程は、例えば上記「1.第1の実施形態(情報処理装置)」において説明したステップS103を実行する工程を含みうる。当該工程は、上記「1.第1の実施形態(情報処理装置)」において説明したとおりであり、その説明が本実施形態についても当てはまる。
【0250】
前記明るさカテゴリー生成工程は、例えば上記「1.第1の実施形態(情報処理装置)」において説明したステップS105を実行する工程を含みうる。当該工程については、上記「1.第1の実施形態(情報処理装置)」において説明したとおりであり、その説明が本実施形態についても当てはまる。
【0251】
前記割当工程は、例えば上記「1.第1の実施形態(情報処理装置)」において説明したステップS108を実行する工程を含みうる。当該工程については、上記「1.第1の実施形態(情報処理装置)」において説明したとおりであり、その説明が本実施形態についても当てはまる。
【0252】
前記評価工程は、例えば上記「1.第1の実施形態(情報処理装置)」において説明したステップS109及び110を実行する工程を含んでよい。前記評価工程は、さらにステップS111を実行する工程も含みうる。当該評価工程は、上記「1.第1の実施形態(情報処理装置)」において説明したとおりであり、その説明が本実施形態についても当てはまる。
【0253】
4.第4の実施形態(プログラム)
【0254】
本技術は、上記3.において述べた情報処理方法を情報処理装置に実行させるためのプログラムも提供する。前記情報処理方法は、上記1.及び3.において説明したとおりであり、当該説明が本実施形態にも当てはまる。本技術に従うプログラムは、例えば上記で述べた記録媒体に記録されていてよく、又は、上記で述べた情報処理装置又は情報処理装置に含まれる記憶部に格納されていてもよい。
【0255】
なお、本技術は、以下のような構成をとることもできる。
〔1〕
サンプルの解析に用いる複数の生体分子を前記サンプルにおける発現量に基づき分類した発現量カテゴリーと、前記サンプルの解析に用いることが可能な複数の蛍光体を明るさに基づき分類した明るさカテゴリーと、前記複数の蛍光体間の相関情報と、前記複数の生体分子の発現関係情報とに基づき、生体分子に対する蛍光体の組合せリストを生成する処理部を備えており、
前記処理部は、前記組合せリストにて前記生体分子に割り当てる前記蛍光体を、前記生体分子が属する発現量カテゴリーに対応付けられた明るさカテゴリーに属する蛍光体から選択する、
情報処理装置。
〔2〕
前記処理部は、前記発現関係情報を用いて、前記組合せリストに関する分離能の評価を行う、〔1〕に記載の情報処理装置。
〔3〕
前記処理部は、前記発現関係情報を用いて、前記分離能の評価において評価対象となる蛍光体ペアを特定する、〔2〕に記載の情報処理装置。
〔4〕
前記分離能の評価における評価指標は、蛍光体間ステインインデックスであり、
前記処理部は、前記分離能の評価において、前記特定された蛍光体ペアの蛍光体間ステインインデックスを参照する、〔3〕に記載の情報処理装置。
〔5〕
前記発現関係情報はツリー構造を有する、〔1〕~〔4〕のいずれか一つに記載の情報処理装置。
〔6〕
前記発現関係情報は、各生体分子の発現の有無又は程度に関する情報を含む、〔1〕~〔5〕のいずれか一つに記載の情報処理装置。
〔7〕
前記発現関係情報は、取得することが想定される測定結果データから抽出された発現関係情報を含む、〔1〕~〔6〕のいずれか一つに記載の情報処理装置。
〔8〕
前記発現関係情報は、取得済みの測定結果データから抽出された発現関係情報を含む、〔1〕~〔7〕のいずれか一つに記載の情報処理装置。
〔9〕
前記処理部は、取得することが想定される測定結果データの入力を受け付ける画面を出力装置に出力させる、〔7〕に記載の情報処理装置。
〔10〕
前記処理部は、取得済みの測定結果データから発現関係情報を抽出し、当該抽出された発現関係情報を用いて、前記組合せリストに関する分離能の評価を行う、〔8〕に記載の情報処理装置。
〔11〕
前記処理部は、前記分離能の評価における評価対象の特定において、出力対象とする生体分子の組合せに関する組合せ情報をさらに用いる、〔3〕~〔10〕のいずれか一つに記載の情報処理装置。
〔12〕
前記処理部は、前記発現量カテゴリー及び前記明るさカテゴリーに基づき生成されうる全ての組合せリストに対して、前記発現関係情報を用いて、分離能の評価を実行する、〔2〕に記載の情報処理装置。
〔13〕
前記処理部は、前記分離能の評価結果に基づき、前記全ての組合せリストのうちから最適な組合せリストを特定する、〔12〕に記載の情報処理装置。
〔14〕
前記処理部は、前記組合せリストを用いて実行した蛍光分離シミュレーションの結果を出力装置に出力させる、〔1〕~〔13〕のいずれか一つに記載の情報処理装置。
〔15〕
前記処理部は、前記蛍光分離シミュレーションを実行するために用いるシミュレーション用データとして、前記組合せリストを構成する蛍光体群のうちから1つの蛍光体が欠如した1色欠如蛍光体群によって染色された粒子に関するデータを用いる、〔14〕に記載の情報処理装置。
〔16〕
前記処理部は、前記蛍光分離シミュレーションの結果を次元圧縮して得られた分布図を出力装置に出力させる、〔14〕又は〔15〕に記載の情報処理装置。
〔17〕
前記処理部は、前記蛍光分離シミュレーションの結果を次元圧縮することで取得された分布図中の各クラスタの分離度を数値として出力装置に出力させる、〔14〕~〔16〕のいずれか一つに記載の情報処理装置。
〔18〕
サンプルの解析に用いる複数の生体分子を前記サンプルにおける発現量に基づき分類した発現量カテゴリーと、前記サンプルの解析に用いることが可能な複数の蛍光体を明るさに基づき分類した明るさカテゴリーと、前記複数の蛍光体間の相関情報と、前記複数の生体分子の発現関係情報とに基づき、生体分子に対する蛍光体の組合せリストを生成するリスト生成工程を含み、
前記リスト生成工程において、前記組合せリストにて前記生体分子に割り当てる前記蛍光体は、前記生体分子が属する発現量カテゴリーに対応付けられた明るさカテゴリーに属する蛍光体から選択される、
情報処理方法。
〔19〕
サンプルの解析に用いる複数の生体分子を前記サンプルにおける発現量に基づき分類した発現量カテゴリーと、前記サンプルの解析に用いることが可能な複数の蛍光体を明るさに基づき分類した明るさカテゴリーと、前記複数の蛍光体間の相関情報と、前記複数の生体分子の発現関係情報とに基づき、生体分子に対する蛍光体の組合せリストを生成するリスト生成工程を情報処理装置に実行させるためのものであり、且つ、
前記リスト生成工程において、前記組合せリストにて前記生体分子に割り当てる前記蛍光体は、前記生体分子が属する発現量カテゴリーに対応付けられた明るさカテゴリーに属する蛍光体から選択される、
プログラム。
〔20〕
サンプルの解析に用いる複数の生体分子に蛍光体が割り当てられた生体分子に対する蛍光体の組合せリストに関する分離能の評価を実行する処理部を備えており、
前記処理部は、前記複数の生体分子の発現関係情報を用いて、前記組合せリストに関する分離能の評価を行う、
情報処理装置。
【符号の説明】
【0256】
100 情報処理装置
101 処理部
102 記憶部
103 入力部
104 出力部
105 通信部