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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044217
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】リレー制御装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/00 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
B61L23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149742
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】多和田 誠
(72)【発明者】
【氏名】竹内 政人
【テーマコード(参考)】
5H161
【Fターム(参考)】
5H161AA01
5H161MM01
5H161MM12
5H161NN01
5H161QQ03
(57)【要約】
【課題】ノイズによる誤判定を防止しつつ、リレーの故障判定に要する時間及び処理負荷を低減することのできるリレー制御装置を提供する。
【解決手段】リレー制御装置10は、CPU11と、CPU11からのリレー制御信号CSによりリレーRYをON/OFFさせるリレー駆動回路12と、リレーRYの動作状態に応じた電圧信号を複数ビットのデジタル値に変換してCPU11に出力するA/D変換器14と、を含み、CPU11は、前記リレー制御信号CSと前記複数ビットのデジタル値とに基づいてリレーRYの故障判定を行うように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部と、
前記制御部からの制御信号によりリレーをON/OFFさせるリレー駆動部と、
前記リレーの動作状態に応じた電圧信号を複数ビットのデジタル値に変換して前記制御部に出力するA/D変換部と、
を含み、
前記制御部は、前記制御信号と前記複数ビットのデジタル値とに基づいて前記リレーの故障判定を行う、
リレー制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記制御信号による前記リレーの動作状態と前記複数ビットのデジタル値が示す前記リレーの動作状態とを比較することによって前記リレーの故障判定を行う、請求項1に記載のリレー制御装置。
【請求項3】
前記リレーがON状態にあるときには前記複数ビットのデジタル値のすべてのビット値が「1」になり、前記リレーがOFF状態にあるときには前記複数ビットのデジタル値のすべてのビット値が「0」になる、請求項1又は2に記載のリレー制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記リレーをON状態とするための前記制御信号を前記リレー駆動部に出力していないときの前記複数ビットのデジタル値のすべてのビット値が「1」である場合に前記リレーが故障していると判定する、請求項3に記載のリレー制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、列車検知装置から列車走行路上の特定区間に列車が存在するか否かを示す信号が入力されるように構成されており、
前記制御部は、前記列車が前記特定区間に存在しないことを示す信号が入力された場合には前記制御信号を前記リレー駆動部に出力することによって前記リレーをON状態とする一方、前記列車が前記特定区間に存在することを示す信号が入力された場合には前記制御信号を前記リレー駆動部に出力しないことによって前記リレーをOFF状態とする、
請求項1~4のいずれか一つに記載のリレー制御装置。
【請求項6】
前記リレーは、正電位が与えられた動作接点と、接地電位が与えられた復旧接点と、共通接点とを有し、ON状態では前記動作接点と前記共通接点とが導通する一方、OFF状態では前記復旧接点と前記共通接点とが導通するように構成され、
前記リレー駆動部は、前記制御部から前記制御信号が入力されることによって前記リレーをON状態とする一方、前記制御部から前記制御信号が入力されないことによって前記リレーをOFF状態とするように構成され、
前記A/D変換部は、前記リレーの前記共通接点側から前記電圧信号を入力し、入力された前記電圧信号を前記複数ビットのデジタル値に変換して前記制御部に出力するように構成され、
前記制御部は、前記制御信号を前記リレー駆動部に出力していないときの前記複数ビットのデジタル値のすべてのビット値が「1」である場合に前記リレーが故障していると判定する、
請求項1~5のいずれか一つに記載のリレー制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道の信号保安システムなどに用いられるリレー制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のリレー制御装置の一例として特許文献1に記載されたリレー出力装置が知られている。特許文献1に記載されたリレー出力装置は、コンピュータ、リレー駆動回路及び接点照査入力回路などを有している。前記リレー駆動回路は、前記コンピュータから出力されるリレー制御信号により出力リレーをオン・オフ制御し、前記接点照査入力回路は、コンピュータから出力されるN接点照査信号とR接点照査信号を出力リレーの動作接点(N接点)と復旧接点(R接点)に送り、出力リレーの共通接点(C接点)から入力する出力リレーの動作状態を示すRY入力信号をコンピュータに出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-62483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リレー制御装置は、リレーの故障による不具合を防止するため、リレーが故障しているか否かを判定する機能を有する場合が多い。例えば、リレー制御装置は、リレー制御信号の内容と前記RY入力信号のようなリレーの動作状態を示す信号(以下「動作状態信号」という)の内容とを比較して両者が不一致である場合にリレーが故障していると判定するように構成され得る。
【0005】
ここで、動作状態信号がハイレベルの信号とローレベルの信号とからなる場合、ローレベルの信号にノイズが乗り、その結果、リレー制御信号の内容と動作状態信号の内容とが不一致になることがあり得るが、このような場合にリレーが故障していると判定するのは適切でない。これに対し、ほとんどのノイズは単発的に発生することから、動作状態信号の取得を複数回行うことにより、ノイズの影響を除去して上記のような不適切な判定を避けることは可能である。しかし、そのようにすると、リレーが故障しているか否かの判定(以下「リレーの故障判定」という)に要する時間が長くなり、また、リレーの故障判定に要する処理負荷も大きくなってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、ノイズによる誤判定を防止しつつ、リレーの故障判定に要する時間及び処理負荷を低減することのできるリレー制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によると、リレー制御装置が提供される。このリレー制御装置は、制御部と、前記制御部からの制御信号によりリレーをON/OFFさせるリレー駆動部と、前記リレーの動作状態に応じた電圧信号を複数ビットのデジタル値に変換して前記制御部に出力するA/D変換部と、を含み、前記制御部は、前記制御信号と前記複数ビットのデジタル値とに基づいて前記リレーの故障判定を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ノイズによる誤判定を防止しつつ、リレーの故障判定に要する時間及び処理負荷を低減することのできるリレー制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係るリレー制御装置の概略構成を示す図である。
図2】前記リレー制御装置の動作例を示すタイムチャートである。
図3】A/D変換器から出力される3ビットのデジタル値の例を示す図である。
図4】リレーの故障判定の一例を示すフローチャートである。
図5】参考例に係るリレー制御装置の概略構成を示す図である。
図6】実施形態に係るリレー制御装置の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るリレー制御装置の概略構成を示す図である。図1において、実施形態に係るリレー制御装置10は、列車検知装置20に接続されている。列車検知装置20は、列車21が列車走行路22上の特定区間23に存在するか否かを検知するように構成されており、リレー制御装置10は、リレーRYを介して列車検知装置20の検知結果に応じた信号を出力するように構成されている。
【0012】
本実施形態において、列車検知装置20は、列車21が特定区間23に存在しない場合にはハイレベル(正電位、例えば5V)の電圧信号(以下「非検知信号」という)DSをリレー制御装置10に出力し、及び、列車21が特定区間23に存在する場合にはローレベル(接地電位、0V)の電圧信号(以下「検知信号」という)DSをリレー制御装置10に出力するように構成されている。なお、以下では、ハイレベルを「Hレベル」と表記し、ローレベルを「Lレベル」と表記する。
【0013】
本実施形態において、リレー制御装置10は、列車検知装置20から(Hレベルの)非検知信号DSが入力された場合、すなわち、列車21が特定区間23に存在しない場合にはHレベルの電圧信号OSをリレーRYの後段に接続された図示省略の装置や回路(以下「後段回路等」という)に出力し、列車検知装置20から(Lレベルの)検知信号DSが入力された場合、すなわち、列車21が特定区間23に存在する場合にはLレベルの電圧信号OSを前記後段回路等に出力するように構成されている。
【0014】
但し、これに限られるものではない。リレー制御装置10は、前段側が列車検知装置20以外の装置や回路に接続され、前段側の当該装置や当該回路の状態などに応じてHレベルの電圧信号OS又はLレベルの電圧信号OSを前記後段回路等に出力するように構成されてもよい。
【0015】
ここで、本発明における「列車」とは、あらかじめ定められた走行路(列車走行路)上を走行する各種の車両のことをいい、レール上を鉄輪で走行する車両(鉄道車両)はもちろん、専用軌道上をゴムタイヤ等で走行する車両も含む。また、列車検知装置20は、特定区間23を軌道回路の区間とする、いわゆる軌道回路装置(の受信装置)であり得る。
【0016】
リレー制御装置10についてさらに説明する。
【0017】
図1を参照すれば、本実施形態において、リレー制御装置10は、制御部としてのCPU(中央処理装置)11と、リレー駆動部としてのリレー駆動回路12と、照査入力部としての照査入力回路13とを有している。
【0018】
CPU11は、列車検知装置20からの信号に応じてリレー制御信号CSをリレー駆動回路12に出力するように構成されている。具体的には、CPU11は、列車検知装置20からHレベルの非検知信号DSが入力されている場合(すなわち、列車21が特定区間23に存在しない場合)にリレー制御信号CSをONにすることによってリレー制御信号CS(Hレベル信号)をリレー駆動回路12に出力する。一方、CPU11は、列車検知装置20からLレベルの検知信号DSが入力されている場合(すなわち、列車21が特定区間23に存在する場合)にはリレー制御信号CSをOFFにすることによってリレー制御信号CSをリレー駆動回路12に出力しない(Lレベル信号を出力する)。
【0019】
また、CPU11は、リレーRYの故障判定を行うが、これについては後述する。
【0020】
リレー駆動回路12は、CPU11からのリレー制御信号CSによりリレーRYをON/OFFさせるように構成されている。具体的には、本実施形態において、リレー駆動回路12は、CPU11がリレー制御信号CSをONにした場合、換言すれば、CPU11からリレー制御信号CS(Hレベル信号)が入力された場合にはリレーRYのコイルに定格電圧を印加してリレーRYをONさせる。また、リレー駆動回路12は、CPU11がリレー制御信号CSをOFFにした場合、換言すれば、CPU11からリレー制御信号CSが入力されない(Lレベル信号が入力された)場合にはリレーRYの前記コイルへの定格電圧の印加を停止してリレーRYをOFFさせる。つまり、リレー制御信号CS(Hレベル信号)はリレーRYをON状態とするための制御信号である。
【0021】
本実施形態において、リレーRYは、動作接点(扛上接点)N、復旧接点(落下接点)R及び共通接点Cを有している。また、前記コイルに定格電圧が印加されていない場合、リレーRYは、復旧接点Rが閉じられた状態、すなわち、復旧接点Rと共通接点Cとが導通したOFF状態(落下状態)に保持される。そして、リレーRYは、コイルに定格電圧が印加されることによってON動作(扛上)し、動作接点Nが閉じられて動作接点Nと共通接点Cとが導通したON状態(扛上状態)となり、その後、コイルへの定格電圧の印加が停止されるとOFF動作(落下)し、復旧接点Rが閉じられて復旧接点Rと共通接点Cとが導通したOFF状態(落下状態)に戻るように構成されている。
【0022】
また、本実施形態において、リレーRYの動作接点Nは電源ラインLpに接続され、リレーRYの復旧接点Rは接地ラインLgに接続され、及び、リレーRYの共通接点Cは図示省略の前記後段回路等に接続されている。すなわち、リレーRYの動作接点Nには電源電位(正電位、ここでは5V)が与えられ、復旧接点Rには接地電位(0V)が与えられている。したがって、リレーRYがON状態(扛上状態)にあるときには共通接点Cの電位が動作接点Nに与えられている電源電位(5V)になり、リレーがOFF状態にあるときには共通接点Cの電位は復旧接点Rに与えられている接地電位(0V)になる。
【0023】
図2は、リレー制御装置10の動作例を示すタイムチャートである。図2(a)は、列車検知装置20からリレー制御装置10に入力される信号がLレベルの検知信号DSからHレベルの非検知信号DSに変化した場合のリレー制御装置10の動作例を示し、図2(b)は、列車検知装置20からリレー制御装置10に入力される信号がHレベルの非検知信号DSからLレベルの検知信号DSに変化した場合のリレー制御装置10の動作例を示している。
【0024】
図2(a)に示されるように、列車検知装置20からリレー制御装置10に入力される信号がLレベルの検知信号DSからHレベルの非検知信号DSに変化すると、CPU11は、リレー制御信号CSをONにする。すなわち、CPU11は、リレー制御信号CS(Hレベル信号)をリレー駆動回路12に出力する。これにより、リレー駆動回路12は、リレーRYの前記コイルに定格電圧を印加し、その結果、リレーRYは、ON動作(扛上)して復旧接点Rが閉じられたOFF状態から動作接点Nが閉じられたON状態に変化する。このため、リレーRYの動作接点Nと共通接点Cとが導通してリレーRYの共通接点Cの電位が正電位(5V)になり、このリレーRYの共通接点Cの電位(5V)がHレベルの信号OSとして前記後段回路等に出力される。
【0025】
一方、図2(b)に示されるように、列車検知装置20からリレー制御装置10に入力される信号がHレベルの非検知信号DSからLレベルの検知信号DSに変化すると、CPU11は、リレー制御信号CSをOFFにする。すなわち、CPU11は、リレー制御信号CSをリレー駆動回路12に出力しない(Lレベル信号をリレー駆動回路12に出力する)。これにより、リレー駆動回路12は、リレーRYの前記コイルへの定格電圧の印加を停止し、その結果、リレーRYは、OFF動作(落下)して動作接点Nが閉じられたON状態から復旧接点Rが閉じられたOFF状態に変化する。このため、リレーRYの復旧接点Rと共通接点Cとが導通してリレーRYの共通接点Cの電位が接地電位(0V)になり、このリレーRYの共通接点Cの電位(0V)がLレベルの信号OSとして前記後段回路等に出力される。
【0026】
図1に戻り、照査入力回路13は、CPU11からのストローブ信号SSによりリレーRYの動作状態を示す電圧信号(以下「動作状態信号」という)SRYを読み込むように構成されている。ストローブ信号SSは、後述するように、CPU11がリレーRYの故障判定を行う際に、CPU11から照査入力回路13に出力される。
【0027】
本実施形態においては、上述のように、リレーRYがON状態(扛上状態)にあるときにはリレーRYの共通接点Cの電位が正電位(5V)になり、リレーRYがOFF状態(落下状態)にあるときにはリレーRYの共通接点Cの電位が接地電位(0V)になる。逆に言えば、リレーRYの共通接点Cの電位が正電位(5V)であることはリレーRYがON状態(扛上状態)にあることを示し、リレーRYの共通接点Cの電位が接地電位(0V)であることはリレーRYがOFF状態(落下状態)にあることを示している。つまり、リレーRYの共通接点Cの電位は、リレーRYの動作状態を示しているといえる。そのため、本実施形態において、照査入力回路13は、リレーRYの共通接点Cの電位を動作状態信号SRYとして読み込むように構成されている。
【0028】
また、本実施形態において、照査入力回路13は、A/D(アナログ/デジタル)変換部としてのA/D変換器14を有している。A/D変換器14は、動作状態信号SRYとして読み込まれたリレーRYの共通接点Cの電位を入力し、複数ビットのデジタル値(符号)に変換してCPU11に出力するように構成されている。具体的には、本実施形態において、A/D変換器14は、リレーRYの復旧接点Rに与えられている接地電位(0V)からリレーRYの動作接点Nに与えられている前記電源電位(5V)の範囲のアナログ入力を3ビットのデジタル値に変換してCPU11に出力するように構成されている。
【0029】
図3は、A/D変換器14の出力である3ビットのデジタル値の例を示す図である。図3に示されるように、本実施形態において、A/D変換器14は、入力されたアナログ電圧信号(0~5V)を8(=2)段階のデジタル値に変換して出力することが可能である。例えば、A/D変換器14は、0Vのアナログ電圧信号が入力された場合にはデジタル値「000」を出力し、5Vのアナログ電圧信号が入力された場合にはデジタル値「111」を出力し、2.5Vのアナログデジタル信号が入力された場合にはデジタル値「100」を出力する。
【0030】
次に、以上のような構成を有するリレー制御装置10において、CPU11が行うリレーRYの故障判定について説明する。
【0031】
本実施形態において、CPU11は、リレー制御装置10(及び列車検知装置20)の起動時にリレーRYの故障判定を行う。但し、これに限られるものではない。リレー制御装置10の起動後において、CPU11は、周期的に又は必要に応じて随時にリレーRYの故障判定を行うことも可能である。
【0032】
CPU11は、リレー制御信号CSとA/D変換器14(照査入力回路13)の出力である3ビットのデジタル値とに基づいてリレーRYの故障判定を行う。より具体的には、CPU11は、リレー制御信号CSによるリレーRYの動作状態と、A/D変換器14の出力である3ビットのデジタル値が示すリレーRYの動作状態とを比較することによってリレーRYが故障しているか否かを判定する。
【0033】
図4は、CPU11が行うリレーRYの故障判定の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、リレー制御装置10(及び列車検知装置20)が起動したとき、所定の判定周期毎に又は管理者等によって故障判定指令が入力されたときに実行される。
【0034】
図4において、ステップS1では、リレー制御信号CSをONにしてリレー制御信号CSをリレー駆動回路12に出力する。これにより、リレーRYがON動作する(OFF状態からON状態になる)。
【0035】
ステップS2では、ストローブ信号SSを照査入力回路13に出力する。これにより、照査入力回路13は、リレーRYの共通接点Cの電位を動作状態信号SRYとして読み込む。そして、読み込まれた動作状態信号SRYは、A/D変換器14によって3ビットのデジタル値に変換されて出力される。
【0036】
ステップS3では、(照査入力回路13の)A/D変換器14の出力、すなわち、3ビットのデジタル値を入力する。
【0037】
ステップS4では、ステップS3で入力されたA/D変換器14の出力(すなわち、3ビットのデジタル値)が、リレーRYがON状態にあることを示しているか否かを判定する。そして、A/D変換器14の出力が、リレーRYがON状態にあることを示している場合にはステップS5に進み、それ以外の場合にはステップS10に進む。
【0038】
上述のように、CPU11がリレー制御信号CSをリレー駆動回路12に出力することでリレーRYはON状態になる。また、リレーRYがON状態にある場合には動作状態信号SRY(共通接点Cの電位)は5Vになるから、A/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)はそのすべてのビット値が「1」になるはずである。さらに、リレーRYがON状態にある場合にA/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)がビット値「0」を含むことは通常ない。つまり、A/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)のすべてのビット値が「1」であることが、リレーRYがON状態にあることを示しているといえる。
【0039】
そのため、本実施形態において、ステップS4では、ステップS3で入力されたA/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)のすべてのビット値が「1」であるか否かを判定する。そして、A/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)のすべてのビット値が「1」である場合、すなわち、A/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)が「111」である場合にはステップS5に進む。一方、A/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)のすべてのビット値が「1」でない場合、すなわち、A/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)が「111」以外の場合(ビット値「0」を含む場合)にはステップS10に進む。
【0040】
ステップ5では、リレー制御信号CSをOFFにしてリレー制御信号CSのリレー駆動回路12への出力を停止する。すなわち、リレー制御信号CSを出力する状態からリレー駆動回路12にリレー制御信号CSを出力しない状態に切り替える。これにより、リレーRYがOFF動作する(ON状態からOFF状態になる)。
【0041】
ステップS6では、ステップS2と同様、ストローブ信号SSを照査入力回路13に出力する。これにより、照査入力回路13は、リレーRYの共通接点Cの電位を動作状態信号SRYとして読み込み、読み込まれた動作状態信号SRYがA/D変換器14によって3ビットのデジタル値に変換されて出力される。
【0042】
ステップS7では、ステップS3と同様、A/D変換器14の出力、すなわち、3ビットのデジタル値を入力する。
【0043】
ステップS8では、ステップS7で入力されたA/D変換器14の出力(すなわち、3ビットのデジタル値)が、リレーRYがOFF状態にあることを示しているか否かを判定する。そして、A/D変換器14の出力が、リレーRYがOFF状態にあることを示している場合にはステップS9に進み、リレーRYが正常である(故障していない)と判定して本フローを終了し、それ以外の場合にはステップS10に進む。
【0044】
上述のように、CPU11がリレー制御信号CSをリレー駆動回路12に出力していないときリレーRYはOFF状態である。また、リレーRYがOFF状態にある場合には動作状態信号SRY(共通接点Cの電位)は0Vになるから、A/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)はそのすべてのビット値が「0」になるはずである。さらに、かりにリレーRYがOFF状態にある場合の動作状態信号SRYにノイズが乗ったとしてもA/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)のすべてのビット値が「1」になることは通常ない。つまり、A/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)がビット値「0」を含むことが、リレーRYがOFF状態にあることを示しているといえる。そして、A/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)がビット値「0」を含むか否かを判定することは、A/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)のすべてのビット値が「1」であるか否かを判定することと実質的に同じである。
【0045】
そのため、本実施形態において、ステップS8では、ステップS4における処理と同様に、ステップS7で入力されたA/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)のすべてのビット値が「1」であるか否かを判定する。そして、A/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)のすべてのビット値が「1」でない場合、すなわち、A/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)が「111」以外である場合(ビット値「0」を含む場合)にはステップ9に進み、リレーRYが正常であると判定して本フローを終了する。一方、A/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)のすべてのビット値が「1」である場合、すなわち、A/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)が「111」である場合(ビット値「0」を含まない場合)にはステップS10に進む。
【0046】
ステップS10では、リレーRYが故障していると判定する。そして、ステップS11でリレーRYが故障している旨を所定の報知先に報知して本フローを終了する。特に制限されるものではないが、例えば列車検知装置20を管理する管理装置(図示省略)が前記所定の報知先であり得る。
【0047】
次に、実施形態に係るリレー制御装置10の効果を説明する。ここでは、図5に示された参考例に係るリレー制御装置と比較した、実施形態に係るリレー制御装置10の効果について図6を参照して説明する。なお、参考例に係るリレー制御装置(図5)において、実施形態に係るリレー制御装置10(図1)と同じ構成要素については同一の符号が用いられている。また、実施形態に係るリレー制御装置10(図1)と参考例に係るリレー制御装置(図5)との相違は、参考例に係るリレー制御装置においては、照査入力回路13がA/D変換器14を有していないことである。つまり、参考例に係るリレー制御装置において、照査入力回路13は、動作状態信号SRYとして読み込んだリレーRYの共通接点Cの電位をそのままCPU11に出力するように構成されている。
【0048】
参考例に係るリレー制御装置の場合、CPU11は、リレー制御信号と、照査入力回路13の出力である動作状態信号SRY(共通接点Cの電位)とに基づいてリレーRYの故障判定を行うことになる。この場合、CPU11は、動作状態信号SRYを「0」か「1」の2段階でしか識別することができない。すなわち、CPU11は、動作状態信号SRYが閾値(例えば、2.5V)未満であれば動作状態信号SRYを「0」と認識し、動作状態信号SRYが前記閾値以上であれば動作状態信号SRYを「1」と認識する。
【0049】
参考例に係るリレー制御装置において、リレーRYがON状態にあるときには動作状態信号SRYが5VになるからCPU11が認識する動作状態信号SRYは「1」になるはずであり、リレーRYがOFF状態にあるときには動作状態信号SRYが0VになるからCPU11が認識する動作状態信号SRYは「0」になるはずである。そのため、リレーRYの故障判定において、CPU11は、例えば、リレー制御信号CSをONにしてリレー制御信号CSをリレー駆動回路12に出力しているときの動作状態信号SRYが「0」である場合、及び/又は、リレー制御信号CSをOFFにしてリレー制御信号CSをリレー駆動回路12に出力していないときの動作状態信号SRYが「1」である場合に、リレーRYが故障していると判定する。
【0050】
ここで、図6(a)に示されるように、リレー制御信号をOFFにしてリレー制御信号CSをリレー駆動回路12に出力していないときに照査入力回路13が読み込む動作状態信号SRY(0V)に前記閾値(2.5V)以上のノイズが乗った場合、CPU11は、「0」と認識すべき動作状態信号SRYを「1」と認識し、その結果、リレーRYが故障していないにもかかわらず、リレーRYが故障していると判定(誤判定)してしまうおそれがある。既述のように、動作状態信号SRYの取得を複数回行うことでノイズの影響を除去して上記のような誤判定を避けることは可能であるが、そうすると、リレーRYの故障判定に要する時間や処理負荷の増大を招く。
【0051】
一方、実施形態に係るリレー制御装置10の場合、CPU11は、上述のように、リレー制御信号と、照査入力回路13のA/D変換器14の出力である3ビットのデジタル値とに基づいてリレーRYの故障判定を行う。この場合、CPU11は、動作状態信号SRYを「000」~「111」の8段階で識別することが可能である(図3参照)。
【0052】
実施形態に係るリレー制御装置10において、リレーRYがON状態にあるときには動作状態信号SRYが5VになるからA/D変換器14から出力される3ビットのデジタル値はそのすべてのビット値が「1」である「111」になるはずであり、リレーRYがOFF状態にあるときには動作状態信号SRYが0VになるからA/D変換器14から出力される3ビットのデジタル値はそのすべてのビット値が「0」である「000」になるはずである(図3参照)。
【0053】
また、A/D変換器14から出力される3ビットのデジタル値がビット値「1」とビット値「0」の両方を含む場合に対応するリレーRYの動作状態は存在しないから、このような3ビットのデジタル値は、本来0Vであるはずの動作状態信号SRYにノイズが乗ってしまい、その結果としてA/D変換器14から出力されたものとみなすことができる。例えば、図6(b)に示されるように、CPU11がリレー制御信号をOFFにしてリレー制御信号CSをリレー駆動回路12に出力していないときに照査入力回路13が読み込む動作状態信号SRY(0V)に3V程度のノイズA、1V程度のノイズB又は2V程度のノイズCが乗った場合、A/D変換器14から出力される3ビットのデジタル値は「101」、「010」又は「100」になる。かりに動作状態信号SRY(0V)に4V程度の大きなノイズDが乗った場合であってもA/D変換器14から出力される3ビットのデジタル値は「110」になる。これらのデジタル値は、いずれもビット値「0」を含む点で共通している。また、これらのデジタル値は、互いに異なるが、それはノイズの大きさに依るものであり、いずれにおいてもリレーRYの動作状態はOFF状態である。
【0054】
したがって、CPU11がリレー制御信号をOFFにしてリレー制御信号CSをリレー駆動回路12に出力していないときのA/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)に関し、CPU11は、「111」のみをリレーRYがON状態にあることを示すものとして及び「111」以外をリレーRYがOFF状態にあることを示すものとして処理することが可能である。換言すれば、実施形態に係るリレー制御装置10では、A/D変換器14の使用によって、動作状態信号SRYにノイズが乗っているか否かを判別することが可能であり、このことによってノイズの影響を除去した状態でリレーRYの故障判定を行うことを可能としている。このため、実施形態に係るリレー制御装置10では、参考例に係るリレー制御装置のように動作状態信号SRYの取得を複数回行う必要がなく、一回の取得によってリレーRYの故障判定を行うことができる。この結果、実施形態に係るリレー制御装置10によれば、参考例に係るリレー制御装置に比べて、リレーRYの故障判定に要する時間や処理負荷を軽減することができる。
【0055】
但し、実施形態に係るリレー制御装置10が動作状態信号SRYの取得を複数回行うことを妨げるものではなく、実施形態に係るリレー制御装置10が動作状態信号SRYの取得を複数回行ってもよいことはもちろんである。この場合であっても、参考例に係るリレー制御装置と比べて、動作状態信号SRYの取得回数をより少なくしつつ精度のよいリレーRYの故障判定が可能になる。
【0056】
なお、上述の実施形態において、A/D変換器14は、動作状態信号SRY(リレーRYの共通接点Cの電位)を3ビットのデジタル値に変換してCPU11に出力している。しかし、これに限られるものではない。A/D変換器14は、動作状態信号SRY(リレーRYの共通接点Cの電位)を2ビットのデジタル値や4ビット以上のデジタル値に変換してCPU11に出力するように構成されてもよい。
【0057】
また、上述の実施形態において、CPU11は、リレー制御信号CSをリレー駆動回路12に出力したときのA/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)のすべてのビット値が「1」でない場合、すなわち、A/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)が「111」でない場合にリレーRYが故障していると判定している。また、CPU11は、リレー制御信号CSをリレー駆動回路12に出力していないときのA/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)のすべてのビット値が「1」である場合(すなわち、A/D変換器14の出力(3ビットのデジタル値)が「111」である場合にリレーRYが故障していると判定している。しかし、これらに限られるものではない。複数ビットのデジタル値によってリレーRYの故障判定用の閾値が設定され、CPU11は、設定された閾値と、A/D変換器14の出力(複数ビットのデジタル値)とに基づいてリレーRYが故障しているか否かを判定すればよい。例えば、A/D変換器14がアナログ入力を4ビットのデジタル値に変換して出力するように構成されている場合、CPU11は、リレー制御信号CSをリレー駆動回路12に出力していないときのA/D変換器14の出力が「1111」及び「1110」である場合にリレーRYが故障していると判定するようにしてもよい。
【0058】
また、上述の実施形態において、CPU11は、リレー制御信号CSをONにしてリレー制御信号CS(Hレベル信号)をリレー駆動回路12に出力することでリレーRYをON状態とし、リレー制御信号CSをOFFにしてリレー制御信号CSをリレー駆動回路12に出力しない(Lレベル信号を出力する)ことでリレーRYをOFF状態としている。しかし、これに限られるものではない。CPU11は、HレベルとLレベルとが交互に表れる交番信号をリレー制御信号CSとしてリレー駆動回路12に出力することでリレーRYをON状態とするようにしてもよい。あるいは、CPU11は、第1リレー制御信号CS1をリレー駆動回路12に出力することでリレーRYをON状態とし、第2リレー制御信号CS2をリレー駆動回路12に出力することでリレーRYをOFF状態とするように構成されてもよい。この場合、前記第1リレー制御信号CS1がリレーRYをON状態とするための制御信号に相当し、前記第1リレー制御信号CS1ではなく前記第2リレー制御信号CS2を出力することがリレーRYをON状態とするための制御信号を出力しないことに相当する。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて変形及び変更が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0060】
10…リレー制御装置、11…CPU(制御部)、12…リレー駆動回路(リレー駆動部)、13…照査入力回路、14…A/D変換器(A/D変換部)、20…列車検知装置、21…列車、22…列車走行路、23…特定区間、C…共通接点、N…動作接点、R…復旧接点、RY…リレー
図1
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図6