(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044243
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】防音装置
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20220310BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20220310BHJP
G10K 11/20 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
G10K11/16 110
E04H1/12 302C
G10K11/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149776
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】515094464
【氏名又は名称】株式会社ルボア
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】特許業務法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩森 弥郁夫
【テーマコード(参考)】
5D061
【Fターム(参考)】
5D061CC07
5D061CC17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】賃貸住宅や木造アパートに設置しやすく、防音される空間の空調又は換気を行うことが容易で、費用が嵩まず、手軽に設置可能な防音装置提供する。
【解決手段】防音装置2は、複数の遮蔽部材51と、複数の遮蔽部材51a~51eを、所定の間隔を空けて保持する、床10の床面に対して垂直な2本の支持部材54a~と、床の床面に対して平行な2本の支持部材54b~により構成される保持部と、隣接する2つの遮蔽部材の間に形成され、空気が流れる流路を変形する流路変形部材57b~57dと、を備える。流路は、空気が流入する流路入口58aより、空気が流出する流路出口58cの面積が小さく形成され、かつ、流路変形部材により、流路内部58bの面積が流路入口58aの面積より小さく変形される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の遮蔽部と、
複数の前記遮蔽部を、所定の間隔を空けて保持する保持部と、
隣接する2つの前記遮蔽部の間に形成され、空気が流れる流路を変形する流路変形部と、を備え、
前記流路は、空気が流入する流路入口より、空気が流出する流路出口の面積が小さく形成され、かつ前記流路変形部により、前記流路の内部の面積が前記流路入口の面積より小さく変形される
防音装置。
【請求項2】
前記遮蔽部は、主遮蔽部と、副遮蔽部とを有し、
隣接する2つの前記主遮蔽部は、前記流路入口を形成し、
隣接する2つの前記主遮蔽部の一方に前記流路変形部が設けられ、
隣接する2つの前記遮蔽部のうち、一方の前記遮蔽部に設けられる前記副遮蔽部と、他方の前記遮蔽部に設けられる前記主遮蔽部とで、前記流路出口が形成される
請求項1に記載の防音装置。
【請求項3】
前記副遮蔽部及び前記流路変形部は、音源が放音した音が前記流路を通過するにあたって、少なくとも1回以上、音が前記副遮蔽部又は前記流路変形部に反射されるように配置される
請求項2に記載の防音装置。
【請求項4】
前記流路変形部は、前記流路入口から前記流路出口に向けて、前記流路が狭まるように変形させる
請求項3に記載の防音装置。
【請求項5】
前記主遮蔽部及び前記副遮蔽部は、平板状に形成される
請求項2~4のいずれか一項に記載の防音装置。
【請求項6】
前記主遮蔽部は、平面部で形成され、
前記副遮蔽部は、上に凸に湾曲する湾曲部で形成される
請求項2~4のいずれか一項に記載の防音装置。
【請求項7】
前記防音装置は、複数の前記遮蔽部の傾きを変更可能な傾き変更部を備える
請求項1~6のいずれか一項に記載の防音装置。
【請求項8】
前記主遮蔽部、前記副遮蔽部及び前記流路変形部には、防音加工が施される
請求項1~6のいずれか一項に記載の防音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、防音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、楽器練習やホームシアター等の大きな音が発生する環境において、家屋に防音室を設ける工事が行われることがある。一般に防音室は、重厚なパネル、ドアにより構成されており、防音室内で発した音が、防音室外に伝播することを防ぐことができる。このような防音室に関する技術として、下記の特許文献1に開示された技術が知られていた。
【0003】
特許文献1には、天井パネルと、複数の壁パネルとを含む組立式防音室について開示されている。この組立式防音室は、複数のパネルを箱状に組み立てて構成される。パネルは防音素材として実績があり、すでに市販されている物であり、パネルの構造は高圧縮されたグラスファイバーと防振素材の板が組み込まれていて自立可能な商品である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、一般家庭、音楽室等に設けられる防音室は、重厚であり、設置費用も高くなりがちであった。また、パーティションで区切られた簡易な構成とした会議スペースごとに防音室を設けることについても費用が嵩んでいた。そこで、一定の方向から発生する音を防音するため、音の進行方向に設置される防音装置を用いることが要望されてきた。しかし、従来の防音装置についても、音を遮断することを目的として形成されるため、大きくかつ重い仕様であり、さらに高価な商品となることが多かった。
【0006】
また、従来の防音装置は、部屋ごとの取り付け工事が必要とされていた。そして、従来の防音装置のサイズは、防音装置の設置場所の広さに対して大きく、重量もあった。このため、従来の防音装置を、賃貸住宅や木造アパートに設置することは困難であった。
【0007】
このように、従来の防音装置は室内に設置することが容易でなかった。また、従来の防音装置が有する防音性能を高めるためには、できるだけ通気を止めなければならず、防音性能と通気とはトレードオフの関係にあった。このため、防音装置で防音される空間の空調又は換気を行うことが容易でなかった。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、手軽に設置可能な防音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る防音装置は、複数の遮蔽部と、複数の遮蔽部を、所定の間隔を空けて保持する保持部と、隣接する2つの遮蔽部の間に形成され、空気が流れる流路を変形する流路変形部と、を備える。この防音装置の流路は、空気が流入する流路入口より、空気が流出する流路出口の面積が小さく形成され、かつ流路変形部により、流路の内部の面積が流路入口の面積より小さく変形される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る防音装置は、簡易な構成としながら高い防音性能が得られる。また、防音装置を通じて換気及び空調することが容易である。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る防音室の全体構成例を示す外観斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る天井パネルを取り除いた防音室の構成例を示す外観斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る防音室の側面パネル、連結ジョイナーの配置例を示す上面図である。
【
図4】本発明の第1の実施の形態に係る側面パネルの一部を取り除いた防音室の防音性能を示す説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る防音室の防音性能を示す説明図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係る防音装置の全体構成例を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係る防音装置の構成例及び使用例を示す側面図である。
【
図8】本発明の第2の実施の形態に係る防音装置の構成例及び使用例を示す側面図である。
【
図9】本発明の第3の実施の形態に係る防音装置の構成例及び第1の使用例を示す側面図である。
【
図10】本発明の第3の実施の形態に係る防音装置の構成例及び第2の使用例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0013】
[第1の実施の形態]
始めに、本発明の第1の実施の形態に係る防音室の構造について、
図1~
図5を参照して説明する。
【0014】
<防音室の全体構成例>
図1は、防音室1の全体構成例を示す外観斜視図である。
図2は、天井パネル13a~13cを取り除いた防音室1の構成例を示す外観斜視図である。
図3は、防音室1の側面パネル11a~11m、連結ジョイナー12a~12kの配置例を示す上面図である。なお、
図3に示す防音室1では、天井パネル13及び天井ジョイナー14の記載を省略している。
【0015】
本実施の形態に係る防音室1の設置場所は、例えば、一軒家、マンション、アパートの部屋の中が想定される。この防音室1は、木管楽器や弦楽器等の楽器演奏の練習に用いられる。防音室1内では、例えば、約80dB以下の音量で演奏する楽器の使用が推奨される。また、楽器演奏以外にも、防音室1を室内の一部に設置することで、防音室1を勉強部屋、寝室又は、ホームシアターとして用いたり、室内犬の遠吠えを軽減するための犬小屋として用いたりしてもよい。
【0016】
防音室1は、家屋内に設けられた床10の上面に設置される。なお、床10の上には、防音性能を高めるために、市販されている防音カーペット(35~45dB程度の遮音性能)等が敷かれるとよい。
図1~
図3に示すように防音室1は、側面パネル11a~11m、連結ジョイナー12a~12k、天井パネル13a~13c、天井ジョイナー14a~14dによって構成される。
図3に示すよう側面パネル11a~11mは、略渦巻き型で構成されている。
【0017】
そして、防音室1の開口部21から防音室1の内部に向けて、空調機から送風される空気が流入する。この空気は、防音室1の内部で循環して、再び開口部21から流出する。このため、防音室1の内部の空気は、空調機から送風される空気により冷やされ、又は暖められる。
【0018】
天井パネル13bには、照明取付部15が設けられる。照明取付部15には、電源コード16が接続されている。電源コード16は、天井パネル13a、側面パネル11cに沿わせて、不図示のコンセントに電気的に接続される。また、照明取付部15には、防音室1の内部に設けられた不図示の照明器具が接続される。この照明器具は、電源コード16を通じて供給される電力により、防音室1の内部を照明する。
【0019】
そして、側面パネル11a,11bの側端部は、連結ジョイナー12aに形成された凹部に嵌め込まれる。側面パネル11a,11bは、床10に対して直立可能に固定される。また、側面パネル11b,11cの側端部は、連結ジョイナー12bに形成された凹部に嵌め込まれる。そして、側面パネル11b,11cは、床10に対して直立可能に固定される。同様に、隣り合って配置される側面パネルは、連結ジョイナーにより連結され、床10に対して直立可能に固定される。以下の説明において、側面パネル11a~11mを区別しない場合、「側面パネル11」と記載し、連結ジョイナー12a~12kを区別しない場合、「連結ジョイナー12」と記載する。
【0020】
図2に示すように、直立した側面パネル11d,11e及び連結ジョイナー12c~12eの上部に天井ジョイナー14aが嵌め込まれる。また、直立した連結ジョイナー12b,12fの上部に天井ジョイナー14bが嵌め込まれる。そして、天井ジョイナー14a,14bの間に天井パネル13aが載せられる。同様に天井パネル13b,13cについても、側面パネル11及び連結ジョイナー12の上部に嵌め込まれた、隣り合う2つの天井ジョイナー14c,14dの間に載せられる。そして、天井パネル13a~13cにより、防音室1の天井が構成される。以下の説明において、天井パネル13a~13cを区別しない場合、「天井パネル13」と記載し、天井ジョイナー14a~14dを区別しない場合、「天井ジョイナー14」と記載する。
【0021】
以下の説明では、同一方向に並ぶ1枚又は複数枚の側面パネル11で構成される部位を防音壁と呼ぶ。そして、防音室1を構成する防音壁を、設置された方向順に従って第1~第6防音壁と呼ぶ。第1~第6防音壁は、順に隣り合って設置される。なお、連結ジョイナー12は、各防音壁に含まれるものとして、説明を省略する。
【0022】
図3に示すように、第1防音壁(側面パネル11a)は、所定の設置位置41に一端が設置され、設置位置41から第1の方向(-Y方向)に他端が設置される。
第2防音壁(側面パネル11b,11c)は、第1防音壁の他端を起点とする設置位置42に一端が設置され、第1の方向(-Y方向)に対してほぼ垂直な第2の方向(+X方向)に他端が設置される。
【0023】
第3防音壁(側面パネル11d,11e)は、第2防音壁の他端を起点とする設置位置43に一端が設置され、第1の方向(-Y方向)とは逆の第3の方向(+Y方向)に他端が設置される。第3防音壁(側面パネル11d,11e)の長さは、第1防音壁(側面パネル11a)より長い。
【0024】
第4防音壁(側面パネル11f~11h)は、第3防音壁の他端を起点とする設置位置44に一端が設置され、第2の方向(+X方向)とは逆の第4の方向(-X方向)に他端が設置される。第4防音壁(側面パネル11f~11h)の長さは、第2防音壁(側面パネル11b,11c)より長い。
【0025】
第5防音壁(側面パネル11i~11k)は、第4防音壁の他端を起点とする設置位置45に一端が設置され、第1の方向(-Y方向)に他端が設置される。第5防音壁(側面パネル11i~11k)の長さは、第3防音壁(側面パネル11d,11e)より長い。
第6防音壁(側面パネル11m)は、第5防音壁の他端を起点とする設置位置46に一端が設置され、第2の方向(+X方向)に他端が設置される。
【0026】
図3に示すように、防音室1の内部空間は、放音空間31と通路32とで分けられる。
放音空間31は、第1防音壁、第2防音壁、第3防音壁、及び第4防音壁の一部で囲まれる空間である。例えば、側面パネル11a~11gによって境界が定められた略正方形の空間が放音空間31として用いられる。この放音空間31において、音源の放音が可能になる。
【0027】
楽器演奏等は、放音空間31で行われることが望ましい。防音室1は、放音空間31及び通路32により構成される。また、防音室1は、天井パネル13a~13cによって構成される天井部を備える。放音空間31及び通路32に面する側の第1防音壁から第6防音壁、並びに天井部には、防音加工(スポンジ等の気泡部材の貼り付け等)が施される。放音空間31で放音された音量は、まず放音空間31を構成する側面パネル11及び天井パネル13に当たって減衰する。
【0028】
連結ジョイナー12は、音を反射するので、隣接する側面パネル11の間から音は漏れにくい。同様に、天井ジョイナー14も、音を反射するので、隣接する天井パネル13の間、及び側面パネル11と天井パネル13との間から音は漏れにくい。
【0029】
通路32は、第4防音壁の他の一部、第5防音壁、及び第6防音壁で囲まれる空間である。通路32は、側面パネル11g~11mによって境界が定められた略長方形の空間である。第1防音壁の一端と、第4防音壁との間は放音空間31の開口部22として用いられる。開口部22は、通路32の一端になっている。すなわち、開口部22は、防音室1の使用者が通路32に移動可能な空間としての役割を果たしている。また、通路32の他端は、通路32の開口部21となる。
【0030】
通路32の幅は、演奏者等がスムーズに出入りできる長さであればよい。
図2に示すように本実施の形態では、通路32の幅を約600mmとしている。通路32にて、放音空間31に滞在する人物が防音室1の外から放音空間31に入ったり、放音空間31から防音室1の外に出たりすることが可能である。
一方、放音空間31を構成する側面パネル11及び天井パネル13から反射した音は、開口部22を経て通路32に漏れ出すが、その大きさはかなり減衰されたものとなる。
【0031】
すなわち、放音空間31から漏れ出した音は、通路32の内部でも反射する。そして、通路32の内部に入った音の音量は、通路32を構成する側面パネル11及び天井パネル13cの内側に当たるたびに減衰する。このため、通路32から開口部21に流出する音の音量は十分に減衰され、防音室1から漏れ出す音は十分に小さくなる。
【0032】
また、上述したように、第1防音壁から第6防音壁、並びに天井部は、いずれも分解可能な一又は複数枚の側面パネル11及び天井パネル13によって構成される。つまり、複数枚の側面パネル11が同一方向に並べられ、又は垂直な方向に並べられて連結ジョイナー12によって結合される。また、一又は複数枚の側面パネル11が、互いにほぼ垂直な方向に結合される。また、一又は複数枚の側面パネル11と、天井パネル13とが、連結ジョイナー12によってほぼ垂直な方向に結合される。
【0033】
図2に示すように、側面パネル11の1枚当たりの寸法は、2050mm×600mm×50mmである。そして、側面パネル11の1枚当たりの重さは、約5kgである。また、防音室1で使用される側面パネル11の枚数は、12枚としている。このため、側面パネル11の総重量は、約60kg(=5kg×12枚)である。
【0034】
天井パネル13a,13bの1枚当たりの寸法は、1200mm×600mm×25mmである。また、天井パネル13cの寸法は、1800mm×600mm×25mmである。そして、天井パネル13a~13cの総重量は、約10~15kgである。
また、防音室1の設置スペースは、床10の上面に2畳程度あればよい。このため、防音室1は、使用者自身が防音室1の組み立て、分解、移動することが可能な簡易的な構成としている。
【0035】
<防音性能の比較例>
次に、本実施の形態に係る防音室1と、防音室1から側面パネル11mを取り除いた防音室1Aとの防音性能の違いについて、
図4と
図5を参照して説明する。
図4は、側面パネル11mを取り除いて通路32の開口部21をオープンにした防音室1Aの防音性能を説明するための図である。
図5は、側面パネル11mを設置して通路32の開口部21をクローズにした防音室1の防音性能を説明するための図である。
【0036】
図4と
図5では、いずれも演奏者が放音空間31、通路32の同じ場所で、音源としての楽器を同じ音量の変化で演奏した時に放音される音の音量を音量センサーが計測した例を示している。この計測では、演奏者は、使用音域を変ロ~二点トの範囲とし、オーボエを最大音量で演奏したものとする。オーボエは音の指向性(直進性)が強い楽器なので、このような実験に最適である。なお、音量の計測場所40は、防音室1、1Aの外側であり、いずれも同じ場所とする。
【0037】
また、
図4と
図5に丸印で示す放音位置A~Gは、いずれも演奏者が楽器を演奏した位置を表す。また、放音位置A~Gを起点として、所定方向に向く矢印は、楽器の放音部位(例えば、ベル)を向けた方向を表す。さらに、放音位置A~Gごとに付加された数値は、放音位置A~Gで演奏者が楽器を低音域から高音域まで放音した際に、計測場所40で計測された平均の音量値(dB)を表す。図中では、楽器から放音される音の最小音量(括弧書き外)と最大音量(括弧書き内)を併記している。
【0038】
放音位置Aで放音された音は、最小音量で67dB、最大音量で83dBであり、防音室1、1Aのいずれも同じ値である。
放音位置Bは、通路32の真ん中付近から+Y方向に向かって演奏者が楽器を放音する位置であり、放音位置Cは、通路32の側面パネル11h付近から-Y方向に向かって演奏者が楽器を放音する位置を表す。
【0039】
防音室1Aの放音位置Bで放音された音は、最小音量で57dB、最大音量で62dBであるが、防音室1の放音位置Bで放音された音は、最小音量で54dB、最大音量で59dBになっている。
また、防音室1Aの放音位置Cで放音された音は、最小音量で59dB、最大音量で64dBであるが、防音室1の放音位置Cで放音された音は、最小音量で54dB、最大音量で59dBになっている。
【0040】
このことから、防音室1の放音位置B、Cで放音された音は、防音室1Aの放音位置B、Cで放音された音よりも数dBだけ低い値となっていることが分かる。これは、防音室1で放音された音が、側面パネル11mに当たって音量が減衰された後に計測場所40に到達するのに対し、防音室1Aで放音された音は、通路32を通過した後、計測場所40に到達するまでに減衰しないためであると考えられる。
【0041】
放音位置D~Gは、いずれも放音空間31内に配置されている位置である。
放音位置Dは、側面パネル11e、11fの付近から開口部22(-X方向)に向けて演奏者が放音する位置である。
放音位置Eは、放音空間31の中央付近から連結ジョイナー12cに向けて演奏者が放音する位置である。
【0042】
放音位置Fは、側面パネル11b、11cの付近から+X方向に向けて演奏者が放音する位置である。
放音位置Gは、側面パネル11a、11bの付近から連結ジョイナー12aに向けて演奏者が放音する位置である。
【0043】
防音位置D~Gに関しても、放音位置G以外は、防音室1の放音空間31内で放音される音の音量の方が、防音室1Aの放音空間31内で放音される音の音量より小さくなっていることが認められた。
【0044】
すなわち、
図4、
図5に示すように、計測場所40で行われた音量測定の結果、点線で示す放音空間31の中心部で演奏が行われると、音が響き、音量が増えることが判明した。但し、放音位置Gでは、角にある連結ジョイナー12aの連結部(側面パネル11a、11bと、連結ジョイナー12aとの連結箇所)からわずかに音漏れが生じることがあり、演奏時の音量が増えることが分かった。
このため、演奏者は、連結ジョイナー12aの連結部ではなく、側面パネル11a、11bに向けて10cm~30cmまでベルを近づければ、連結部からの音漏れが減少し、防音効果が上がることが想定される。
【0045】
このように防音室1、1Aのいずれにおいても、音源が放音空間31内で放音することで、音量が減衰される。ただし、防音室1の内部(放音空間31)で行われた演奏の音量の測定値は、防音室1Aの内部で行われた演奏の音量に比べて、平均で2dB低くなる。つまり、防音室1は、側面パネル11mを備えていることで、防音室1Aよりも防音性能が高くなることが判明した。
【0046】
このため、防音室1の内部で演奏者が演奏することで、防音室1の外部に漏れる音の音量が軽減される。例えば、木管楽器(オーボエ、フルート等)の音量が78dbから64dbと14db(約5分の1)軽減される。
ここで、1dbで1.1倍、12dbで4倍、20dbで10倍、40dbで100倍の音量が軽減されることを表す。また、他にも音量計測を行った結果、防音室1の構成とすることで、70dB(例えば、大声での歌唱)の音量が、40dB(例えば、ささやき声、又は静かな住宅地)の音量にまで軽減することが判明した。
【0047】
なお、防音室1の防音性能をより高めるためには、第6防音壁の第2の方向に沿った長さを、通路32の第2の方向に沿った幅以上とするとよい。例えば、側面パネル11mの+X方向に、二点鎖線で示す側面パネル11nを設け、側面パネル11m,11nを連結ジョイナー12mで連結してもよい。この場合、
図3に示した通路32よりも、側面パネル11nの分だけ通路32が長くなる。このため、放音空間31で放音された音が通路32に反射する回数が多くなり、音量が一層減衰される。
【0048】
以上説明した第1の実施の形態に係る防音室1は、複数枚の側面パネル11及び天井パネル13を組み合わせて構成される。そして、隣接する側面パネル11の側端部を、連結ジョイナー12のくぼみ部分に嵌め込むことで設置可能である。このため、防音室1の組み立てに際して、脚立以外の工具を必要とせず、非力な人でもパネルを手持ちしたり、防音室1を設置したりする作業が容易である。
【0049】
また、一旦、部屋内に防音室を設置した後に、大掛かりな工事をしなくても、防音室1の設置場所を変えることができる。また、防音室1の販売者は、通常の家具であるベッドや家電と同様に、側面パネル11、連結ジョイナー12、天井パネル13及び天井ジョイナー14を、防音室1の使用者が指定する目的地に送ることが可能であり、大規模な工事や用具を必要としない。
【0050】
また、従来の防音室は、防音室を構成するパネル自体の重さがあり、クレーンを用いてパネルを吊り下げたり、複数の成人男性がパネルを手持ちしたりする必要があり、設置作業が大掛かりとなっていた。一方、本実施の形態に係る防音室1は、その使用者自身が、防音室1を組み立てることができる。
【0051】
このように、本実施の形態に係る防音室1は、パネルが軽量であることと、室内にネジや釘で固定する必要がないため、賃貸住宅や木造アパートでも設置可能である。なお、側面パネル11、連結ジョイナー12、天井パネル13及び天井ジョイナー14は、全て防災素材又は防燃素材で形成されている。側面パネル11の1枚当たりの重量は約5kgと軽量である。このため、各部品を一般的なエレベーターで運ぶことができる。そのため、本人及び補助者の2名で本実施の形態に係る防音室1を組み立てたり、分解又は移動したりすることが可能である。
【0052】
また、従来の簡易式または小型(1畳~2畳程度)防音室の最大の欠点は、防音室内に空調機を設置しにくく、室温調整や換気が難しい点であった。しかし、本実施の形態に係る防音室1は、防音室1の外部に設けられた空調機から送風される空気が、通路32を通過することで防音室1内を空調又は換気する。このため、空調機により、防音室1内の温度を調整することが可能である。
【0053】
また、従来の防音室は、使用者が防音室内に出入りするためのドアが設けられていた。一般にドアは、ドア枠と共に強固なものが用いられることが多く、ドアとドア枠の重量も嵩んでいた。そして、従来の防音室は、防音用ドアの取り付けに強度な枠が必要なため、防音室が重く、木造建築の家や賃貸住宅では防音室を設置することが困難であった。
【0054】
一方、本実施の形態に係る防音室1は、側面の一部に開口部を含むものであり、密閉空間を形成しない構造としている。このため、本実施の形態に係る防音室1は、直進性のある音を、曲がり角や出口に向かうまでの側面パネル11で吸収することで、ドアを必要としない。また、防音室1は、ドアを設けない構成であるので、ドア枠の設置も不要である。このように防音室1では、ドア及びドア枠の部品を不要とした分だけ、販売コスト及び設置コストを下げることができる。
【0055】
また、従来の防音室では、密閉性が高いため、防音室内にいる人には特有の耳鳴り音(キーンという高い音)が発生しやすかった。しかし、本実施の形態に係る防音室1は、開口部21、22が設けられるので完全な密室にならない。このため、耳鳴り音は極めて少なく、防音室1内にいる人にとって不快感が生じにくい。
【0056】
なお、側面パネル11の床10からの高さが、防音室1が設置される部屋の天井までの高さと同じであれば、天井パネル13a~13cを設置しなくてもよい。
また、連結ジョイナー12に沿わせて、伸縮可能な棒(いわゆる突っ張り棒)を床10から天井までの間に設けてもよい。この棒により、側面パネル11及び連結ジョイナー12の傾きを抑制することができる。
【0057】
また、
図3には、設置位置41を起点として、第1~第6防音壁を反時計周りに配置した例を示したが、第1~第6防音壁を時計周りに配置した防音室を構成してもよい。
【0058】
[防音装置]
次に、設置が容易であり、かつ、防音性能が高いままでも換気又は空調が可能である、本発明の複数の実施の形態に係る防音装置の構成例及び使用例について説明する。
【0059】
<防音装置の構成例>
次に、本発明の第1の実施の形態に係る防音装置の構成例について、
図6~
図10を参照して説明する。
図6は、防音装置2の全体構成例を示す斜視図である。
防音装置2は、
図3に示した防音室1の通路32、又は
図4に示した防音室1Aの通路32のいずれかに設置される。
【0060】
防音装置2は、床10に対して垂直方向に重ねて並べられた、複数の遮蔽部材(遮蔽部の一例)51a~51e、保持枠54及び台車55を備える。以下の説明にて遮蔽部材51a~51eを区別しない場合、「遮蔽部材51」と記載する。遮蔽部材51は、空調機から送風される風を通路32内に送り、放音空間31から通路32に伝わる音を遮蔽する。
【0061】
保持枠54(保持部の一例)は、床10の床面に対して垂直な2本の支持部材54a,54cと、床10の床面に対して平行な2本の支持部材54b,54dにより構成される。支持部材54a,54cには、遮蔽部材51a~51eに対応する支点部55a~55eが設けられる。
【0062】
遮蔽部材51aは、2枚の主遮蔽板52a(主遮蔽部の一例)、副遮蔽板53a(副遮蔽部の一例)により構成される。主遮蔽板52a、副遮蔽板53aのX方向の幅は同じである。また、主遮蔽板52aは、保持枠54の支持部材54a,54cの支点部55aに取り付けられる。主遮蔽板52aは、支点部55aを支点として、上下(±Z)方向に所定角度内で回動可能である。また、副遮蔽板53aは、主遮蔽板52aの手前側の端部に対して任意の角度で回動可能である。
他の遮蔽部材51b~51eについても遮蔽部材51aと同様の構成としている。
【0063】
保持枠54は、台車55に取り付けられ、複数の遮蔽部材51a~51eを、所定の間隔を空けて保持する。台車55には、複数の車輪56が取り付けられている。台車55は、床10の上を移動可能である。車輪56には、ストッパーを取り付けてもよい。車輪56にストッパーを取り付けることで、任意の位置で防音装置2を固定することができる。
【0064】
<防音装置の使用例>
図7は、防音装置2の使用例を示す側面図である。
図6に示した防音装置2は、手前側を音源、又は音が流れてくる方向に向け、奥側を空調機3がある方向に向けて配置される。そこで、以下の説明では、
図6に示した防音装置2の手前側を「音源側」と呼び、防音装置2の奥側を「空調機側」と呼ぶ。
【0065】
支持部材54bの端部には、複数の遮蔽部材51(特に主遮蔽板52a~52e)の傾きを変更可能な傾き変更部59が設けられる。複数の遮蔽部材51は、例えば、床10(床面)の垂直方向に対して、角度θ1°だけ傾けた状態としている。傾き変更部59としては、例えば、主遮蔽板52a~52eの同じ個所に接続されるコードが用いられる。もちろん、コード以外の、他の部材を傾き変更部59として用いてもよい。
【0066】
防音装置2の使用者は、傾き変更部59を引っ張ることで、主遮蔽板52a~52eの同じ角度の傾きに変えることができる。そして、主遮蔽板52a~52eの変更された傾きに追随して、音源側の副遮蔽板53a~53eの傾きも変わる。ただし、音源側の副遮蔽板53a~53eは、主遮蔽板52a~52eとの接続箇所より下向きになるように常に傾いている。そして、副遮蔽板53a及び流路変形部材57bは、音源が放音した音が流路を通過するにあたって、少なくとも1回以上、音が副遮蔽板53a又は流路変形部材57bに反射されるように配置される。また、主遮蔽板52a、副遮蔽板53a及び流路変形部材57bには、防音加工(スポンジ等の気泡部材の貼り付け等)が施される。
【0067】
主遮蔽板52bの表面(上向きの面)には、空調機側から音源側にかけて傾斜する流路変形部材57bが設けられる。流路変形部材57b(流路変形部の一例)は、隣接する2つの遮蔽部材51aの間に形成され、空気が流れる流路を変形する部材である。流路は、空気が流入する流路入口58aより、空気が流出する流路出口58cの面積が小さく形成され、かつ流路変形部材57bにより、流路内部58bの面積が流路入口58aの面積より小さく変形される。
【0068】
主遮蔽板52a,52bは、防音装置2を側面視した時に、ほぼ平行に配置されている。そして、主遮蔽板52a及び副遮蔽板53aは、平板状に形成される。隣接する2つの主遮蔽板52a,52bは、流路入口58aを形成する。そして、主遮蔽板52bには、流路変形部材57bが設けられる。このため、主遮蔽板52bの上側に配置された主遮蔽板52aの裏面(下向きの面)と、流路変形部材57bの表面(上向きの面)との間は、空調機側から音源側にかけて徐々に狭まっている。このため、流路変形部材57bは、流路入口58aから流路出口58cに向けて、流路が狭まるように変形させることができる。
【0069】
また、隣接する2つの遮蔽部材51a,51bのうち、一方の遮蔽部材51aに設けられる副遮蔽板53aと、他方の遮蔽部材51aに設けられる主遮蔽板52aとで、流路出口58cが形成される。また、主遮蔽板52b,52cの間、主遮蔽板52c,52dの間、主遮蔽板52d,52eの間についても、主遮蔽板52a,52bの間と同様に構成されている。
【0070】
また、遮蔽部材51に施される防音加工として、例えば、主遮蔽板52a~52eの表面及び裏面を、起毛素材等の音を減衰しやすい素材又は形状の部材で被覆する加工としてもよい。なお、主遮蔽板52b~52eの表面に形成された流路変形部材57b~57eも、音を減衰しやすい素材又は形状の部材により被覆されている。このため、主遮蔽板52a~52e、及び流路変形部材57b~57eに当たった音の音量は減衰される。
【0071】
次に、防音装置2の空調機側における空気の流れについて説明する。
図7に示すように、空調機3から送風された空気(暖気又は冷気)は、防音装置2の空調機側から防音装置2を通過する。ここで、ベルヌーイの定理より、空気(流体)が通過する流路の面積が狭くなるほど、流路から出る時の空気の速度は、流路に入った時の空気の速度より大きくなることが知られている。
【0072】
そこで、主遮蔽板52aの裏面と、流路変形部材57bの表面とで挟まれる空間を、空気の流路と仮定する。なお、防音装置2が、
図3に示した通路32に設けられる場合、
図7に示す防音装置2の手前側及び奥側は、通路32を構成する側面パネル11により塞がれた状態となる。このため、主遮蔽板52aと、流路変形部材57bとで挟まれる空間にある空気は、防音装置2の手前側及び奥側から漏れなくなる。
【0073】
空調機側の流路入口58aの面積は、流路変形部材57bにより流路内部に向かうにつれて狭くなる。したがって、主遮蔽板52bに対して流路変形部材57bの凸部の高さが最大となる流路内部58bの面積は、最も小さくなる。そして、音源側の流路出口58cの面積は再び広くなるが、流路入口58aの面積よりは小さい。このように隣接する遮蔽部材51によって形成される流路のうち、空調機3から送風される風が通路32に出る側の面積を、風が入る側の面積より小さくする。
【0074】
このため、空調機側から音源側に送風される空気の速度は、空調機側の流路入口58aにおける速度より、音源側の流路出口58cにおける速度の方が大きくなる。すなわち、空調機3から防音装置2に送風された空気は、空調機側から取り込まれた時より大きい速度で、防音装置2の音源側に送風される。なお、防音装置2の音源側の空間に送風された空気は、この空間内を循環した後、この空間から押し出される。このため、防音装置2の音源側の空間は十分に換気される。
【0075】
次に、防音装置2の音源側における音の流れについて説明する。
音源側から放音された音は、主遮蔽板52a及び副遮蔽板53aに衝突する。そして、主遮蔽板52aに衝突した音は、音源側に反射するか、主遮蔽板52a,52bの間の空間に流入する。しかし、音は、空気の流入する方向に伝わりにくくなる。このことは、主遮蔽板52b,52cの間、主遮蔽板52c,52dの間、主遮蔽板52d,52eの間についても同様である。
【0076】
なお、使用者は、防音装置2を使用しない間(例えば、防音装置2の片づけ時)、傾き変更部59を元の位置に戻すことで、遮蔽部材51を床面に対してほぼ垂直に傾斜させることができる。この場合、空調機3から送風された空気は遮蔽部材51によりほぼ遮蔽される。一方、使用者は、防音装置2を使用する間(例えば、防音装置2の設置時)、傾き変更部59を引っ張ることで、遮蔽部材51を床面に対して所定の角度で傾斜させることができる。この場合、空調機3から送風された空気は遮蔽部材51を通過するが、音源側から放音された音はほぼ遮蔽される。
【0077】
以上説明した第1の実施の形態に係る防音装置2では、遮蔽部材51が、音源側から放音された音を遮蔽する。このため、防音装置2から空調機側に漏れる音が十分に減衰される。一方で、遮蔽部材51は、空調機側から流入する空気を音源側に流出させることができる。このため、音源側には、冷気又は暖気が送風されるため、音源側にいる演奏者等の不快感を低減することができる。従来の防音装置を用いて防音室の防音性能を高めるには通気を止めなければならず、通気がないと部屋の環境が悪くなっていたのに対し、本実施の形態に係る防音装置2は、従来の防音と通気(換気)の相反する問題を解消することができる。
【0078】
防音装置2を、ドアのない防音室1、1Aの出入り口に設置すると、防音室1、1Aの防音性能をさらに高めることができる。なお、防音装置2は、
図3に示した防音室1、1Aの通路32の開口部21付近に設置されることが望ましいが、通路32の内部、通路32の開口部22付近に設置されてもよい。
【0079】
また、既存の防音室(従来の防音室)であっても、ドアの構造を、防音装置2と同様の遮蔽部材51を用いた構造としたドアに置き換えてもよい。この場合、従来の防音室では、換気することが不可能であったのに対し、防音装置2と同様の構造のドアによって換気することが可能になる。
【0080】
また、商談室等、パーティションで区切られた小部屋では声が響いて会話が聞き取りにくいことがある。そこで、パーティションに防音装置2を用いることで声の聞き取りにくさが解消されるだけでなく、小部屋内の換気を改善することもできる。
【0081】
また、従来の防音装置は、音を遮断することを目的として提供されていたので、大きく、重量もあり、高価な製品が多かった。このため、従来の防音装置を、賃貸住宅や木造アパートに設置できなかった。しかし、本実施の形態に係る防音装置2であれば、持ち運び可能な大きさであるので、設置場所が制限されることがない。
【0082】
防音装置2は、簡易的で完全な防音は望めないものの、音を遮断したい方向、又は音源の四方を囲むように配置して、簡易的な防音室として用いることができる。また、遮蔽部材51を何層も重ねる構造にしたり、複数の防音装置2を横に並べる構造にしたりすることが可能である。このように防音装置2は、設置場所を問わず、自由に大きさを選択することもできる。このため、防音装置2を設置する環境の近隣に迷惑をかけない程度の静音効果を期待してよい。
【0083】
なお、防音装置2の側面部に板材を貼り付けることで、防音装置2の側面部から空気が漏れ出ないようにしてもよい。
【0084】
また、
図7には、防音装置2より高い位置に設置された空調機3から送風される例を示した。他にも、防音装置2の空調機側に向けて、床10に置かれた送風機から送風されることもある。この場合、遮蔽部材51の角度をさらに傾け、遮蔽部材51を床10と水平にし、又は遮蔽部材51の空調機側の端部の高さを、音源側の端部の高さより低くしてもよい。
【0085】
また、防音装置2を、
図4に示した防音室1Aの通路32に設置してもよい。この場合でも、防音装置2は、防音室1Aの放音空間31から放音される音の音量を減衰することができる。
【0086】
また、
図6に示す支点部55a~55eにはめ込んだねじ式ダイヤル等を傾き変更部として用い、一部の遮蔽部材51だけを任意の角度で傾けることが可能な構成としてもよい。
【0087】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態に係る防音装置の構成例について、
図8を参照して説明する。
図8は、第2の実施の形態に係る防音装置2Aの構成例を示す側面図である。
【0088】
防音装置2Aの構成は、
図6及び
図7に示した防音装置2とほぼ同様の構成であるが、遮蔽部材61a~61eの構成が、遮蔽部材51a~51eとは異なる。
【0089】
防音装置2Aは、遮蔽部材61a~61eを備える。
遮蔽部材61aは、平面部と湾曲部とで構成される部材である。このため、遮蔽部材61aの主遮蔽部は、平面部で形成され、副遮蔽部は、上に凸に湾曲する湾曲部で形成される。平面部の長さは、
図6に示した遮蔽部材51aの主遮蔽板52aの長さとほぼ等しくする。遮蔽部材61a~61eの平面部は、例えば、床10(床面)の垂直方向に対して、角度θ2°だけ傾けた状態としている。湾曲部は、副遮蔽板53bを上に凸となるように湾曲させた形状である。遮蔽部材61aの平面部及び湾曲部は一体化した構成としているが、分割された平面部及び湾曲部を防音装置2Aの設置時に接続する構成としてもよい。
【0090】
図8に示す主遮蔽板52b~52eの表面においても、それぞれ流路変形部材57b~57eが設けられる。このため、
図8に示す防音装置2Aにおいても、
図7に示した防音装置2と同様に、空調機側の流路入口58aの面積は、流路変形部材57bにより流路内部に向かうにつれて狭くなり、流路内部58bの面積がさらに小さくなる。そして、防音装置2Aでは、流路出口58cの面積が最も小さくなる。
【0091】
このため、空調機側から音源側に送風される空気の速度は、空調機側の流路入口58aにおける速度より、流路内部58bにおける速度の方が大きい。そして、流路内部58bにおける空気の速度より、音源側の流路出口58cにおける速度の方がさらに大きくなる。
【0092】
このように防音装置2Aが備える遮蔽部材61a~61eは、第1の実施の形態に係る遮蔽部材51a~51eと同様に、空調機側から送風される空気を音源側に送出するが、これによって音源側から放音された音が遮蔽される。このため、防音装置2Aについても、従来の防音装置に比べて防音性能を高めることができる。
【0093】
また、防音装置2Aの流路出口58cの面積は、
図7に示した防音装置2の流路出口58cの面積よりも小さくなっている。このため、防音装置2Aの流路出口58cに、音源側から音が入りにくくなるので、防音装置2Aは、防音装置2よりも防音性能が高くなる。
【0094】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態に係る防音装置の構成例について、
図9と
図10を参照して説明する。
図9は、第3の実施の形態に係る防音装置2Bの構成例である。特に、
図9は、第1の使用例を示す側面図である。
【0095】
防音装置2Bは、
図6と
図7に示した防音装置2と同様の構成例としている。そして、主遮蔽板52a~52eをいずれも床10の垂直方向に対して、角度θ3°だけ傾けた状態としている。主遮蔽板52b~52eの上面には、それぞれ空気の流路に突出する流路変形部材63b~63eが設けられている。流路変形部材63b~63eは、空調機3から送風される空気の流路を変形する機能を持つ。
【0096】
図7に示した防音装置2と同様に、
図9に示す防音装置2Bにおいても、空調機側の流路入口58aの面積は、流路変形部材63bにより流路内部に向かうにつれて狭くなり、流路内部58bの面積がさらに小さくなる。また、流路出口58cの面積も小さい。ただし、
図9に示す第1の使用例では、流路内部58bと流路出口58cの面積は、いずれも同じくらいである。このため、音源側から放音された音は、流路を伝って空調機側に抜けやすい。
【0097】
図10は、第3の実施の形態に係る防音装置2Bの第2の使用例を示す側面図である。
防音装置2Bは、主遮蔽板52a~52eをいずれも床10(床面)の垂直方向に対して、角度θ4°だけ傾けた状態としている。ここで、
図9に示した角度θ3°より、
図10に示した角度θ4°の方が小さい。このため、
図10に示した主遮蔽板52a~52eは、
図9に示した主遮蔽板52a~52eより立たせた状態である。そして、空調機側の流路入口58aの面積は、流路変形部材63bにより流路内部に向かうにつれて狭くなる。主遮蔽板52bに対して流路変形部材63bの凸部の高さが最大となる流路内部58bの面積は、最も小さい。そして、音源側の流路出口58cの面積は再び広くなるが、流路入口58aの面積よりは小さい。
【0098】
このように主遮蔽板52a~52eを床10に対して立たせた状態とすることで、音源側から放音された音は、主遮蔽板52a~52e及び副遮蔽板53a~53eに反射されやすくなる。また、音源側の流路出口58cの面積が小さいので、源側から放音された音は、流路を伝いにくくなる。このため、防音装置2Bを第2の使用例で用いた場合に、第1の使用例で用いる場合と比べて防音性能を高めることができる。
【0099】
そして、
図8に示した三角柱形状の流路変形部材57b~57eが、
図9と
図10に示した防音装置2Bの主遮蔽板52b~52eの上部に設けられてもよい。また、防音装置2Bに設けられた平板上の流路変形部材63b~63eが、
図7に示した防音装置2の主遮蔽板52b~52eに設けられてもよいし、
図8に示した防音装置2Aの主遮蔽板61b~61eに設けられてもよい。
【0100】
なお、本発明は上述した各実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した各実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために防音室及び防音装置の構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。
【0101】
また、ここで説明した実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることは可能であり、さらにはある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1…防音室、2…防音装置、11…側面パネル、12…連結ジョイナー、13…天井パネル、14…天井ジョイナー、21,22…開口部、31…放音空間、32…通路、40…計測場所、51…遮蔽部材、55a~55e…支点部、57b~57e、63b~63e…流路変形部材、58a…流路入口、58b…流路内部、58c…流路出口、59…傾き変更部