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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044277
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】脱穀装置
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/18 20060101AFI20220310BHJP
   A01F 7/06 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
A01F12/18 C
A01F7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149827
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大
【テーマコード(参考)】
2B094
【Fターム(参考)】
2B094CA02
2B094CA07
(57)【要約】
【課題】アワやヒエ等の雑穀の脱穀の作業負担を軽減可能とする。
【解決手段】雑穀Xの穂軸X2から穀粒X1を取り離す脱穀装置であり、脱穀前の雑穀Xに遠心力を付与する回転刃2bと、回転刃2bを回転駆動させるモータ3と、回転刃2bの径方向外側に配置されると共に穂軸X2及び穀粒X1のうち穀粒X1を通過させるフィルタ側壁5bとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物の穂軸から穀粒を取り離す脱穀装置であって、
脱穀前の穀物に遠心力を付与する回転部材と、
前記回転部材を回転駆動させる駆動部と、
前記回転部材の径方向外側に配置されると共に前記穂軸及び前記穀粒のうち前記穀粒を通過させるフィルタ部と
を備えることを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記駆動部により回転される軸部を備え、
前記軸部の軸芯方向に沿って複数の回転部材が前記軸部に接続されている
ことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記回転部材として、
前記軸部の先端よりも駆動部側の根本側に配置された根本側回転部材と、
前記根本側回転部材よりも前記軸部の先端側に配置されると共に前記遠心力を付与しつつ前記穀物を前記根本側回転部材に向けて押し戻す先端側回転部材と
を備えることを特徴とする請求項2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記回転部材として、前記軸部の軸芯に沿った方向にて対向配置されると共に異なる回転速度あるいは異なる回転方向で回転する一対の剪断刃を備えることを特徴とする請求項2または3記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記フィルタ部は、前記回転部材を前記回転部材の回転軸芯を中心とする径方向の外側から全周に亘って囲み、前記径方向に貫通する複数の貫通孔を有することを特徴とする請求項1~4いずれか一項に記載の脱穀装置。
【請求項6】
前記貫通孔は、前記径方向に沿った方向から見て、一方向の長さ寸法が前記一方向と直交する他方向の長さ寸法よりも長い偏平形状とされていることを特徴とする請求項5記載の脱穀装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コメ等の穀物にて穂軸から穀粒を分離する脱穀装置としては、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているように、扱胴に対してワイヤ状の歯が設けられたものが一般的に用いられている。特許文献1や特許文献2に開示されたような一般的な脱穀装置は、扱胴を回転させて刃を穀粒に衝突させ、穀粒を穂軸から叩き落すことによって脱穀を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-153845号公報
【特許文献2】特開昭63-269929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アワやヒエ等の雑穀は、コメ等と異なり、極めて小さな穀粒が集合した塊が穂軸に対して複数繋がったような穂の構造となっている。このような雑穀に対して、上述のような一般的な脱穀機を用いると、穀粒が集合した塊が叩き落されるのみであり、穀粒を粒ごとに分離することができない。
【0005】
このため、従来は、アワやヒエ等の雑穀は、手作業によって脱穀が行われている。このような手作業による脱穀は重労働である。このようなことから、近年においてはアワやヒエ等の雑穀を生産する農家が減少しており、また新たにアワやヒエ等の雑穀を生産しようする農家も現れ難くなっている。雑穀の栽培条件に適し、雑穀の栽培によって振興が図れる可能性のある地域も多くあるものの、脱穀作業の負担がこのような地域の振興を阻害している現状がある。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、アワやヒエ等の雑穀の脱穀の作業負担を軽減可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
第1の発明は、穀物の穂軸から穀粒を取り離す脱穀装置であって、脱穀前の穀物に遠心力を付与する回転部材と、上記回転部材を回転駆動させる駆動部と、上記回転部材の径方向外側に配置されると共に上記穂軸及び上記穀粒のうち上記穀粒を通過させるフィルタ部とを備えるという構成を採用する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記駆動部により回転される軸部を備え、上記軸部の軸芯方向に沿って複数の回転部材が上記軸部に接続されているという構成を採用する。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記回転部材として、上記軸部の先端よりも駆動部側の根本側に配置された根本側回転部材と、上記根本側回転部材よりも上記軸部の先端側に配置されると共に上記遠心力を付与しつつ上記穀物を上記根本側回転部材に向けて押し戻す先端側回転部材とを備えるという構成を採用する。
【0011】
第4の発明は、上記第2または第3の発明において、上記回転部材として、上記軸部の軸芯に沿った方向にて対向配置されると共に異なる回転速度あるいは異なる回転方向で回転する一対の剪断刃を備えるという構成を採用する。
【0012】
第5の発明は、上記第1~第4いずれかの発明において、上記フィルタ部が、上記回転部材を上記回転部材の回転軸芯を中心とする径方向の外側から全周に亘って囲み、上記径方向に貫通する複数の貫通孔を有するという構成を採用する。
【0013】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記貫通孔が、上記径方向に沿った方向から見て、一方向の長さ寸法が上記一方向と直交する他方向の長さ寸法よりも長い偏平形状とされているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、穀粒を叩き落すのではなく、回転部材によって遠心力を穀物に付与し、この遠心力を利用して穂軸及び穀粒のうち穀粒のみがフィルタ部を通過するようにする。このような本発明によれば、穀粒が塊となっている場合であっても、穀粒の1粒1粒に対して遠心力が作用し、穀粒を1粒ずつ分離して穂軸から脱離させることができる。このため、簡易な構造で容易にアワやヒエ等の雑穀の脱穀を行うことができる。したがって、本発明によれば、アワやヒエ等の雑穀の脱穀の作業負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態における脱穀装置の概略構成を模式的に示す縦断面図である。
図2】発明の第1実施形態における脱穀装置が備える回動部及び内部容器の概略構成を示す斜視図である。
図3】発明の第1実施形態における脱穀装置のフィルタ側壁が備える貫通孔を回動部の軸芯を中心とする径方向から見た模式図である。
図4】本発明の第2実施形態における脱穀装置の概略構成を模式的に示す縦断面図である。
図5】本発明の第3実施形態における脱穀装置の概略構成を模式的に示す縦断面図である。
図6】本発明の第3実施形態における脱穀装置の回動部が備える先端側回転刃を、回動部の軸芯を中心とする径方向に沿った方向から見た模式図である。
図7】本発明の第4実施形態における脱穀装置の概略構成を模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る脱穀装置の一実施形態について説明する。
【0017】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における脱穀装置S1の概略構成を模式的に示す縦断面図である。本実施形態の脱穀装置S1は、ヒエやアワ等の雑穀Xにて、穀粒X1を穂軸X2から分離することにより脱穀作業を行う装置である。なお、本実施形態の脱穀装置S1は、ヒエやアワ等の雑穀Xの脱穀を行うことが可能であるが、コメや麦等の脱穀を行うことも可能である。図1に示すように、本実施形態の脱穀装置S1は、外殻容器1と、回動部2と、モータ3と、伝達機構4と、内部容器5とを備えている。
【0018】
外殻容器1は、回動部2、モータ3、伝達機構4及び内部容器5を収容する筐体である。この外殻容器1は、内部空間Kが上方に向けて開放された容器形状とされている。この内部空間Kに回動部2、モータ3(駆動部)、伝達機構4及び内部容器5が収容されている。なお、外殻容器1は、内部空間Kへの出入口を開閉するための開閉蓋部を内部空間Kの上方に備えていても良い。
【0019】
また、外殻容器1は、回動部2の軸芯Lを中心とする径方向外側から内部容器5を囲っており、内部容器5との間に穀粒収容空間K1を形成している。この穀粒収容空間K1は、脱穀後の穀粒X1が収容される空間であり、外殻容器1の内部空間Kの一部として設けられている。このような穀粒収容空間K1は、軸芯Lを中心とする周方向にて内部容器5を全周に亘って囲うように形成されており、内部容器5の後述するフィルタ側壁5bを通過した穀粒X1が収容される。
【0020】
また、外殻容器1は、穀粒収容空間K1の底部を形成する中間隔壁1aを有している。この中間隔壁1aは、平面視にて穀粒収容空間K1に沿って環状に設けられており、外殻容器1の外壁1bから径方向内側に向けて水平方向に突出して設けられている。この中間隔壁1aは、例えば、内部容器5の後述する底板5aと同じ高さに配置されており、内部容器5のフィルタ側壁5bを通過した穀粒X1が下方に落下することを防止する。
【0021】
なお、図1には示されていないが、穀粒収容空間K1に繋がる開閉扉を外殻容器1に設けるようにしても良い。このような開閉扉を設けることによって、開閉扉を開放することで穀粒収容空間K1に収容された雑穀Xを容易に脱穀装置S1の外部に取り出すことが可能となる。
【0022】
図2は、回動部2及び内部容器5の概略構成を示す斜視図である。回動部2は、図1に示すように、外殻容器1の内部空間Kの中央部に配置されて軸芯Lを中心として回転可能とされており、図1及び図2に示すように、軸部2aと、回転刃2b(回転部材)とを有している。軸部2aは、軸芯Lが鉛直方向に沿うように立直されており、下端が伝達機構4を介してモータ3に接続されている。軸部2aがモータ3によって回転駆動されることによって、回動部2が軸芯Lを中心として回転駆動される。
【0023】
回転刃2bは、軸部2aから径方向外側に突出するように設けられた板状の部位であり、複数設けられている。例えば、回転刃2bは、軸芯Lを中心とする周方向に等間隔に配列されている。これらの回転刃2bは、軸部2aの回転によって軸芯Lを中心する周方向に沿って回転駆動され、内部容器5の内部に収容された雑穀Xを、軸芯Lを中心とする周方向に連続的に移動させる。このように軸芯Lを中心とする周方向に移動される雑穀Xには、軸芯Lを中心とする径方向外側に向けて遠心力が作用する。つまり、これらの回転刃2bは、内部容器5の内部に収容された雑穀X(すなわち脱穀前の雑穀X)に対して遠心力を付与する。
【0024】
本実施形態においては、回転刃2bは、高さ方向(鉛直方向)にて内部容器5の底部に近い位置に配置されている。このように回転刃2bを内部容器5の底部に近い位置に配置することによって軸部2aを短くすることができる。したがって、回動部2の回転を安定化させることができ、さらには回動部2を軽量化することが可能となる。
【0025】
図1に示すように、モータ3は、回動部2の下方に配置されており、回動部2を回転させる回転動力を生成する。伝達機構4は、モータ3と回動部2の軸部2aの下端との間に設けられており、モータ3の出力を回動部2の回転に適した回転数等に変換しつつ回動部2に伝達する。なお、モータ3を回動部2に直接接続できる場合には、伝達機構4を省略することも可能である。
【0026】
図2に示すように、内部容器5は、底板5aと、フィルタ側壁5b(フィルタ部)とを備えている。底板5aは、中央部に回動部2の軸部2aが貫通する中央開口が設けられた円板状の部材である。フィルタ側壁5bは、下端が底板5aに接続され、上端が開放された筒状の部材である。このフィルタ側壁5bは、底板5aの外縁部の上方に配置されており、底板5aの直径と略同一の外径とされている。
【0027】
図2に示すようにフィルタ側壁5bは、全ての回転刃2bを、軸芯Lを中心とする径方向外側から全周に亘って囲んだ円筒形の板状部材であり、軸芯Lを中心する径方向に貫通する複数の貫通孔5cを有している。これらの貫通孔5cは、穀粒X1が通過可能な大きさとされている。
【0028】
図3は、軸芯Lを中心とする径方向から貫通孔5cを見た模式図である。この図に示すように、貫通孔5cは、径方向に沿った方向から見て、一方向の長さ寸法D1が一方向と直交する他方向の長さ寸法D2よりも長い偏平形状とされている。本実施形態においては、水平方向における貫通孔5cの長さ寸法D1が、鉛直方向における貫通孔5cの長さ寸法D2よりも大きい。このように貫通孔5cを偏平形状とすることによって、貫通孔5cの形状が穀粒X1の形状に近づき、穀粒X1が通過しやすく穂軸X2が通過し難くすることが可能となる。
【0029】
次に、このような構成の本実施形態の脱穀装置S1において雑穀Xの脱穀を行う場合の動作について説明する。雑穀Xの脱穀を行う場合には、まず、モータ3を停止した状態で、雑穀Xを内部容器5に収容する。ここでは、穂軸X2に対して穀粒X1が繋がった状態の雑穀X(すなわち脱穀前の雑穀X)を内部容器5に収容する。
【0030】
続いて、モータ3を稼働させる。モータ3が稼働されると、モータ3によって生成された回転動力が伝達機構4を介して回動部2の軸部2aに伝達される。回転動力が伝達された軸部2aは、軸芯Lを中心として回転される。また、軸部2aが回転されることによって、軸部2aに接続された回転刃2bも軸芯Lを中心として、内部容器5の内部にて回転される。
【0031】
回転刃2bが回転されると、内部容器5に収容された雑穀Xが回転刃2bの移動に伴って軸芯Lを中心とする周方向に移動され、雑穀Xに対して遠心力が作用する。このように雑穀Xに作用する遠心力は、質量が相対的に大きな穀粒X1に大きく作用し、質量が相対的に小さな穂軸X2に対して小さく作用する。このような穀粒X1と穂軸X2に作用する遠心力の差によって、穀粒X1が穂軸X2から脱離される。
【0032】
穂軸X2から脱離された穀粒X1は、内部容器5の内部を径方向外側及び周方向に移動し、フィルタ側壁5bの貫通孔5cに嵌ることによって、貫通孔5cに入り込んで通過する。この結果、穀粒X1が穂軸X2の残る内部容器5の内側から穀粒収容空間K1に排出される。一方、穀粒X1が脱離された穂軸X2は、穀粒X1よりも長いことから貫通孔5cを通過することができず、内部容器5の内側に残存したままとなる。
【0033】
このように、本願発明の脱穀装置S1では、雑穀Xを内部容器5の内部に収容し、回転刃2bを回転させることによって、穀粒X1と穂軸X2とが分離され、穀粒X1のみが穀粒収容空間K1に収容される。つまり、本願発明の脱穀装置S1によれば、回転刃2bを回転させることで、容易に雑穀Xの脱穀作業を行うことが可能となる。
【0034】
以上のような本実施形態の脱穀装置S1は、雑穀Xの穂軸X2から穀粒X1を取り離す脱穀装置であり、脱穀前の雑穀Xに遠心力を付与する回転刃2bと、回転刃2bを回転駆動させるモータ3と、回転刃2bの径方向外側に配置されると共に穂軸X2及び穀粒X1のうち穀粒X1を通過させるフィルタ側壁5bとを備えている。
【0035】
このような本実施形態の脱穀装置S1によれば、穀粒X1を叩き落すのではなく、回転刃2bによって遠心力を雑穀Xに付与し、この遠心力を利用して穂軸X2及び穀粒X1のうち穀粒X1のみがフィルタ側壁5bを通過するようにする。このような本実施形態の脱穀装置S1によれば、穀粒X1が塊となっている場合であっても、穀粒X1の1粒1粒に対して遠心力が作用し、穀粒X1を1粒ずつ分離して穂軸X2から脱離させることができる。
【0036】
このため、本実施形態の脱穀装置S1によれば、簡易な構造で容易にアワやヒエ等の雑穀の脱穀を行うことができ、アワやヒエ等の雑穀の脱穀の作業負担を軽減することが可能となる。また、本実施形態の脱穀装置S1によれば、簡易な構造であるため、装置を小型かつ廉価なものとすることができる。このため、小規模な農家であっても、本実施形態の脱穀装置S1を用いることが可能である。
【0037】
また、本実施形態の脱穀装置S1においては、フィルタ側壁5bが、回転刃2bを回転刃2bの回転軸芯(すなわち軸芯L)を中心とする径方向の外側から全周に亘って囲み、径方向に貫通する複数の貫通孔5cを有している。このため、遠心力が付与されて軸芯Lを中心とする放射方向に移動される穀粒X1を、軸芯Lを中心とする周方向の全域にて、フィルタ側壁5bを通過させることができる。このため、穀粒収容空間K1に均一に穀粒X1を排出することができる。穀粒収容空間K1の一部に局所的に穀粒X1が溜まると、その箇所において穀粒X1が穀粒収容空間K1から溢れる前に、穀粒収容空間K1から穀粒X1を取り出す必要がある。したがって、本実施形態の脱穀装置S1によれば、穀粒収容空間K1に均一に穀粒X1が溜まるため、穀粒X1の取り出し頻度を少なくすることが可能となる。
【0038】
また、本実施形態の脱穀装置S1においては、貫通孔5cが、径方向に沿った方向から見て、一方向の長さ寸法D1が一方向と直交する他方向の長さ寸法D2よりも長い偏平形状とされている。このため、上述のように、貫通孔5cの形状が穀粒X1の形状に近づき、穀粒X1が通過しやすく穂軸X2が通過し難くすることが可能となる。このような本実施形態の脱穀装置S1によれば、穀粒X1が脱離された後の穂軸X2が穀粒収容空間K1に入り込むことを防止することができ、穀粒X1と穂軸X2とをより確実に分けることが可能となる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図4を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0040】
図4は、本発明の第2実施形態における脱穀装置S2の概略構成を模式的に示す縦断面図である。この図に示すように、本実施形態の脱穀装置S2においては、回動部2の軸部2aが上記第1実施形態の脱穀装置S1よりも長い。また、回転刃2bが、軸部2aの高さ方向の複数箇所に対して設けられている。
【0041】
より具体的には、本実施形態の脱穀装置S2においては、軸部2aの高さ方向の2箇所(第1ポイントP1と第2ポイントP2)の各々に対して複数の回転刃2bが設けられている。第1ポイントP1と第2ポイントP2との各々には、軸芯Lを中心とする周方向に等間隔に複数の回転刃2bが設けられている。
【0042】
なお、第1ポイントP1に設けられる回転刃2bの数と、第2ポイントP2に設けられる回転刃2bの数とは必ずしも同一である必要はない。例えば、より雑穀Xの重量が大きく作用する下方の第1ポイントP1に接続される回転刃2bの数を、上方の第2ポイントP2に接続された回転刃2bの数よりも多くすることも可能である。
【0043】
このような本実施形態の脱穀装置S2において、回転刃2bが回転されると、内部容器5に収容された雑穀Xが回転刃2bの移動に伴って軸芯Lを中心とする周方向に移動され、雑穀Xに対して強い遠心力が作用する。このため、穀粒X1と穂軸X2とがより確実に分離され、穀粒X1のみが穀粒収容空間K1に収容される。
【0044】
以上のように本実施形態の脱穀装置S2においても、上記第1実施形態の脱穀装置S1と同様に、穀粒X1を叩き落すのではなく、回転刃2bによって遠心力を雑穀Xに付与し、この遠心力を利用して穂軸X2及び穀粒X1のうち穀粒X1のみがフィルタ側壁5bを通過するようにする。このため、本実施形態の脱穀装置S2によれば、穀粒X1が塊となっている場合であっても、穀粒X1の1粒1粒に対して遠心力が作用し、穀粒X1を1粒ずつ分離して穂軸X2から脱離させることができる。したがって、本実施形態の脱穀装置S2によれば、簡易な構造で容易にアワやヒエ等の雑穀の脱穀を行うことができ、アワやヒエ等の雑穀の脱穀の作業負担を軽減することが可能となる。また、本実施形態の脱穀装置S2によれば、簡易な構造であるため、装置を小型かつ廉価なものとすることができる。
【0045】
また、このような本実施形態の脱穀装置S2では、モータ3により回転される軸部2aを備え、軸部2aの軸芯方向に沿って複数の回転刃2bが軸部2aに接続されている。このため、上記第1実施形態と比較して、回転刃2bの数を多く設けることが可能となる。このため、本実施形態の脱穀装置S2によれば、雑穀Xに対してより強い遠心力を付与することが可能となる。
【0046】
なお、本実施形態において、第1ポイントP1に設けられる回転刃2bの長さと、第2ポイントP2に設けられる回転刃2bの長さとは必ずしも同一である必要はない。例えば、雑穀X、穀粒X1及び穂軸X2の浮き上がりを抑止するために、上方の第2ポイントP2に接続された回転刃2bの長さを、下方の第1ポイントP1に接続される回転刃2bよりも長くすることも可能である。
【0047】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、図5及び図6を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0048】
図5は、本発明の第3実施形態における脱穀装置S3の概略構成を模式的に示す縦断面図である。この図に示すように、本実施形態の脱穀装置S3においては、回動部2の軸部2aが上記第1実施形態の脱穀装置S1よりも長い。本実施形態においては、軸部2aは、外殻容器1の内部空間Kの上部位置に先端が至る長さとされている。また、回転刃2bとして、軸部2aの先端よりもモータ3側の根本側に配置された根本側回転刃2c(根本側回転部材)と、根本側回転刃2cよりも軸部の先端側に配置されると共に遠心力を付与しつつ雑穀Xを根本側回転刃2cに向けて押し戻す先端側回転刃2d(先端側回転部材)とを備えている。
【0049】
軸部2aの根本部には、根本側回転刃2cが軸芯Lを中心とする周方向に等間隔で複数設けられている。また、軸部2aの先端部には、先端側回転刃2dが軸芯Lを中心とする周方向に等間隔で複数設けられている。
【0050】
なお、根本側回転刃2cの数と先端側回転刃2dの数とは必ずしも同一である必要はない。例えば、より雑穀Xの重量が大きく作用する下方の根本側回転刃2cの数を、上方の先端側回転刃2dの数よりも多くすることも可能である。
【0051】
図6は、先端側回転刃2dを、軸芯Lを中心とする径方向に沿った方向から見た模式図である。この図に示すように、先端側回転刃2dは、図6にて矢印で示す先端側回転刃2dの移動方向に向かうに連れて、上方に変位する傾斜面2d1を有している。このような傾斜面2d1は、雑穀X、穀粒X1あるいは穂軸X2に当たった場合に、雑穀X、穀粒X1あるいは穂軸X2を下方に向けて押し込む。このため、雑穀X、穀粒X1及び穂軸X2が内部空間Kから上方に向けて溢れることを抑制することができる。
【0052】
例えば、穂軸X2は、穀粒X1が分離されると、軽いことから内部容器5の内側にて旋回されながら上方に移動され、内部容器5から溢れ出る場合がある。本実施形態の脱穀装置S3によれば、このような穂軸X2が内部容器5から溢れ出ることを抑制することが可能となる。
【0053】
このような本実施形態の脱穀装置S3においても、回転刃2bが回転されると、内部容器5に収容された雑穀Xが回転刃2bの移動に伴って軸芯Lを中心とする周方向に移動され、雑穀Xに対して強い遠心力が作用する。このため、穀粒X1と穂軸X2とがより確実に分離され、穀粒X1のみが穀粒収容空間K1に収容される。
【0054】
以上のように本実施形態の脱穀装置S3においても、上記第1実施形態の脱穀装置S1と同様に、穀粒X1を叩き落すのではなく、回転刃2bによって遠心力を雑穀Xに付与し、この遠心力を利用して穂軸X2及び穀粒X1のうち穀粒X1のみがフィルタ側壁5bを通過するようにする。このため、本実施形態の脱穀装置S3によれば、穀粒X1が塊となっている場合であっても、穀粒X1の1粒1粒に対して遠心力が作用し、穀粒X1を1粒ずつ分離して穂軸X2から脱離させることができる。したがって、本実施形態の脱穀装置S3によれば、簡易な構造で容易にアワやヒエ等の雑穀の脱穀を行うことができ、アワやヒエ等の雑穀の脱穀の作業負担を軽減することが可能となる。また、本実施形態の脱穀装置S3によれば、簡易な構造であるため、装置を小型かつ廉価なものとすることができる。
【0055】
また、このような本実施形態の脱穀装置S3では、回転刃2bとして、軸部2aの先端よりもモータ3側の根本側に配置された根本側回転刃2cと、根本側回転刃2cよりも軸部2aの先端側に配置されると共に遠心力を付与しつつ雑穀Xを根本側回転刃2cに向けて押し戻す先端側回転刃2dとを備える。このため、本実施形態の脱穀装置S3によれば、雑穀X、穀粒X1あるいは穂軸X2に先端側回転刃2dが当たった場合に、雑穀X、穀粒X1あるいは穂軸X2を下方に向けて押し込まれ、雑穀X、穀粒X1及び穂軸X2が内部空間Kから上方に向けて溢れることを抑制することができる。
【0056】
なお、本実施形態において、根本側回転刃2cの長さと、先端側回転刃2dの長さとは必ずしも同一である必要はない。例えば、雑穀X、穀粒X1及び穂軸X2の浮き上がりを抑止するために、上方の先端側回転刃2dの長さを、根本側回転刃2cよりも長くすることも可能である。
【0057】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、図7を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0058】
図7は、本発明の第4実施形態における脱穀装置S4の概略構成を模式的に示す縦断面図である。この図に示すように、本実施形態の脱穀装置S4においては、回動部2の軸部2aが外筒2a1と内筒2a2とを有する二重円筒形状とされている。内筒2a2は、外筒2a1よりも先端が上方に位置している。なお、上記第1実施形態における回転刃2bは、外筒2a1の下部に設けられている。
【0059】
また、本実施形態の脱穀装置S4は、軸部2aの軸芯Lに沿った方向にて対向配置されると共に異なる回転速度あるいは異なる回転方向で回転する一対の剪断刃(下側剪断刃2eと上側剪断刃2f)を備えている。
【0060】
下側剪断刃2eは、外筒2a1の先端部に接続されている。また、上側剪断刃2fは、内筒2a2の先端部に接続されている。これらの下側剪断刃2eと上側剪断刃2fとは、上下方向に穀粒X1が間を通過可能な隙間を介して対向配置されている。これらの一対の剪断刃は、異なる回転速度あるいは異なる回転方向で回転するように、伝達機構4から動力を伝達される。
【0061】
これらの下側剪断刃2eと上側剪断刃2fによって、雑穀Xが剪断され、穂軸X2を短くすることができる。このため、穀粒X1を、軸芯Lを中心とする径方向の外側に移動させやすくすることができ、より強い遠心力を穀粒X1に作用させて穀粒X1をより確実に穂軸X2から脱離させることが可能となる。
【0062】
このような本実施形態の脱穀装置S4においても、回転刃2bが回転されると、内部容器5に収容された雑穀Xが回転刃2bの移動に伴って軸芯Lを中心とする周方向に移動され、雑穀Xに対して強い遠心力が作用する。このため、穀粒X1と穂軸X2とがより確実に分離され、穀粒X1のみが穀粒収容空間K1に収容される。
【0063】
以上のように本実施形態の脱穀装置S4においても、上記第1実施形態の脱穀装置S1と同様に、穀粒X1を叩き落すのではなく、回転刃2bによって遠心力を雑穀Xに付与し、この遠心力を利用して穂軸X2及び穀粒X1のうち穀粒X1のみがフィルタ側壁5bを通過するようにする。このため、本実施形態の脱穀装置S4によれば、穀粒X1が塊となっている場合であっても、穀粒X1の1粒1粒に対して遠心力が作用し、穀粒X1を1粒ずつ分離して穂軸X2から脱離させることができる。したがって、本実施形態の脱穀装置S4によれば、簡易な構造で容易にアワやヒエ等の雑穀の脱穀を行うことができ、アワやヒエ等の雑穀の脱穀の作業負担を軽減することが可能となる。また、本実施形態の脱穀装置S4によれば、簡易な構造であるため、装置を小型かつ廉価なものとすることができる。
【0064】
また、このような本実施形態の脱穀装置S4では、回転刃として、軸部2aの軸芯Lに沿った方向にて対向配置されると共に異なる回転速度あるいは異なる回転方向で回転する一対の剪断刃(下側剪断刃2eと上側剪断刃2f)を備えている。このため、本実施形態の脱穀装置S4によれば、雑穀Xを短く剪断することができ、より確実に穀粒X1を穂軸X2から脱離させることが可能となる。
【0065】
なお、本実施形態において、回転刃2bの長さと、一対の剪断刃(下側剪断刃2eと上側剪断刃2f)の長さとは必ずしも同一である必要はない。例えば、雑穀X、穀粒X1及び穂軸X2の浮き上がりを抑止するために、上方の剪断刃(下側剪断刃2eと上側剪断刃2f)の長さを、回転刃2bよりも長くすることも可能である。
【0066】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0067】
例えば、上記実施形態においては、フィルタ側壁5bが軸芯Lを中心とする周方向にて、内部容器5を全周に亘って囲う構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、フィルタ側壁5bが軸芯Lを中心とする周方向の一部に配置され、フィルタ側壁5bが軸芯Lを中心とする周方向の残部には穀粒X1を通過させない壁部を設ける構成を採用することも可能である。
【0068】
また、上記実施形態においては、内部容器5を、軸芯Lを中心とする径方向外側から囲う外殻容器1を備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、外殻容器1を備えない構成も本発明の範囲に含まれる。
【0069】
また、上記実施形態においては、フィルタ側壁5bが、貫通孔5cが設けられた板状部材である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、線材が格子状に組まれた網状の部材のフィルタ側壁として備える構成を採用することも可能である。
【0070】
また、本発明においては、各実施形態の構成を組み合わせた構成を採用することも可能である。例えば、根本側回転刃2c(根本側回転部材)と、先端側回転刃2d(先端側回転部材)と、一対の剪断刃(下側剪断刃2eと上側剪断刃2f)とを備える構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1……外殻容器、2……回動部、2a……軸部、2b……回転刃(回転部材)、2c……根本側回転刃(根本側回転部材)、2d……先端側回転刃(先端側回転部材)、2e……下側剪断刃(回転部材)、2f……上側剪断刃(回転部材)、3……モータ(駆動部)、4……伝達機構、5……内部容器、5a……底板、5b……フィルタ側壁(フィルタ部)、5c……貫通孔、K……内部空間、K1……穀粒収容空間、L……軸芯、S1~S4……脱穀装置、X……雑穀(穀物)、X1……穀粒、X2……穂軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7