(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044292
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】分岐プロテクタ、分岐プロテクタの使用方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20220310BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20220310BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
H02G3/04 037
H02G3/04 062
F16L57/00 C
B60R16/02 623U
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149846
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】501314396
【氏名又は名称】古河樹脂加工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】泉水 誠
(72)【発明者】
【氏名】山本 清旭
【テーマコード(参考)】
3H024
5G357
【Fターム(参考)】
3H024CA03
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD02
5G357DD04
5G357DD05
5G357DD06
5G357DD07
5G357DD10
5G357DD11
5G357DE02
5G357DG05
(57)【要約】
【課題】 簡単に取り付けることが可能なため、省人化とコストダウンが可能であり、電線の噛み込みを抑制することが可能な、分岐プロテクタ、及び分岐プロテクタの使用方法を提供する。
【解決手段】 主幹収納部3は、少なくとも所定方向にヒンジ部により半割状に開閉可能に形成される。分岐収納部9は、主幹収納部3の一部において、主幹収納部3から所定角度で分岐する。主幹収納部3と分岐収納部9のリジッド部13とコルゲート部15は、それぞれ半割状に形成された収納部である。主幹収納部3と分岐収納部9は、ヒンジ部5を開いた時に、相互に干渉しないように、それぞれのヒンジ部5により独立して開閉可能なように配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも所定方向にヒンジ部により半割状に開閉可能に形成された主幹収納部と、前記主幹収納部の一部において、前記主幹収納部から所定角度で分岐し、ヒンジ部により開閉可能に形成された1つまたは複数の分岐収納部と、を備え、
前記主幹収納部は、収納部として少なくともリジッド部を有し、
前記分岐収納部は、収納部として、リジッド部、コルゲート部、リジッド部の順に、リジッド部がコルゲート部を挟んで形成され、
前記主幹収納部と、前記分岐収納部の前記リジッド部及び前記コルゲート部は、半割状に形成された収納部であり、
前記主幹収納部と前記分岐収納部のそれぞれの一方の半割状部は、相互に連続して形成され、前記主幹収納部と前記分岐収納部のそれぞれの他方の半割状部は、前記一方の半割状部と前記他方の半割状部が前記ヒンジ部を介して開口された時に、相互に不連続になるように形成され、
さらに、前記分岐収納部の、少なくとも前記リジッド部の一部が前記主幹収納部と所定位置で接続されていて、
前記主幹収納部と前記分岐収納部は、前記ヒンジ部を開いた時に、相互に干渉しないように、それぞれの前記ヒンジ部により独立して開閉可能なように配置され、
前記主幹収納部及び前記分岐収納部は、それぞれの前記ヒンジ部を閉じることで、電線又はケーブルを収納することが可能であることを特徴とする分岐プロテクタ。
【請求項2】
前記主幹収納部は、直線状の収納部であり、
前記主幹収納部の端部には、前記リジッド部の他に、コルゲート部が形成され、前記リジッド部、前記コルゲート部、前記リジッド部がこの順に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の分岐プロテクタ。
【請求項3】
前記ヒンジ部は、前記主幹収納部と前記分岐収納部のそれぞれの前記リジッド部のみに形成され、前記ヒンジ部が形成されたそれぞれの前記収納部の、前記ヒンジ部とは反対側の、前記リジッド部のそれぞれの端部に、係合雄部と係合雌部がそれぞれ形成され、前記係合雄部と前記係合雌部により、前記リジッド部のそれぞれの端部が係合されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分岐プロテクタ。
【請求項4】
前記ヒンジ部は、前記主幹収納部の前記リジッド部と、前記分岐収納部の前記リジッド部及び前記コルゲート部にそれぞれ形成され、
前記ヒンジ部が形成されたそれぞれの前記収納部の、前記コルゲート部を除く、前記ヒンジ部とは反対側の前記リジッド部の端部には、それぞれ係合雄部と係合雌部が形成され、前記係合雄部と前記係合雌部により、前記リジッド部のそれぞれの端部が係合されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分岐プロテクタ。
【請求項5】
前記コルゲート部は、前記係合雄部と前記係合雌部が係合されたときに、前記コルゲート部の一方の半割状部の前記ヒンジ部とは反対側の端部が、前記コルゲート部の他方の半割状部の前記ヒンジ部と反対側の端部に重ね合わせられるように形成されていることを特徴とする請求項4に記載の分岐プロテクタ。
【請求項6】
前記主幹収納部及び前記分岐収納部の端部には、それぞれの先端に向かって、大径連結部と小径連結部の順に、2段の連結可撓部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の分岐プロテクタ。
【請求項7】
前記主幹収納部の前記リジッド部の一方の先端側には、ヒンジ部により開閉して取り付け可能な電線保護ブッシングを有する保護部材が取付けられていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の分岐プロテクタ。
【請求項8】
前記主幹収納部は、平面視で閉曲線状または多角形状の箱型の収納部であり、
複数の前記分岐収納部が、前記主幹収納部の外周部からそれぞれ所定角度で分岐して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の分岐プロテクタ。
【請求項9】
前記閉曲線状または多角形状の収納部である主幹収納部が円形、楕円形、長円形、三角形、四角形、五角形、又は六角形のいずれかの形状を有することを特徴とする請求項8に記載の分岐プロテクタ。
【請求項10】
前記ヒンジ部は、前記主幹収納部と前記分岐収納部の前記リジッド部のみに形成され、前記ヒンジ部が形成されたそれぞれの前記収納部の、前記ヒンジ部とは反対側の前記リジッド部の端部に、それぞれ係合雄部と係合雌部が形成され、前記係合雄部と前記係合雌部により、前記リジッド部のそれぞれの端部が係合されることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の分岐プロテクタ。
【請求項11】
前記ヒンジ部は、前記主幹収納部の前記リジッド部と、前記分岐収納部の前記リジッド部及び前記コルゲート部に形成され、前記ヒンジ部が形成されたそれぞれの前記収納部の、前記コルゲート部を除く、前記ヒンジ部とは反対側の前記リジッド部の端部には、それぞれ係合雄部と係合雌部が形成され、前記係合雄部と前記係合雌部により、前記リジッド部のそれぞれの端部が係合されることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の分岐プロテクタ。
【請求項12】
前記コルゲート部は、前記係合雄部と前記係合雌部が係合されたときに、前記コルゲート部の一方の半割状部の前記ヒンジ部とは反対側の端部が、前記コルゲート部の他方の半割状部の前記ヒンジ部と反対側の端部に重ね合わせられるように形成されていることを特徴とする請求項11記載の分岐プロテクタ。
【請求項13】
複数の前記分岐収納部のそれぞれの端部には、先端に向かって、大径連結部と小径連結部の順に2段の連結可撓部が形成されていることを特徴とする請求項7から請求項12のいずれかに記載の分岐プロテクタ。
【請求項14】
前記分岐収納部の前記リジッド部の先端側に、ヒンジ部により開閉して取り付け可能な電線保護ブッシングを有する保護部材が取付けられているか、前記分岐収納部に電線保護ブッシングが、あらかじめ設置されていることを特徴とする請求項8から請求項13のいずれかに記載の分岐プロテクタ。
【請求項15】
請求項1から請求項14のいずれかに記載の分岐プロテクタの使用方法であって、前記主幹収納部の一方の半割状部と前記分岐収納部の一方の半割状部に、電線又はケーブルを収納した後、前記主幹収納部の他方の半割状部を閉じた後に、前記分岐収納部の他方の半割状部を閉じて、それぞれの前記収納部の係合雄部と係合雌部を係合させるか、あるいは、前記分岐収納部の他方の半割状部を閉じた後、前記主幹収納部の他方の半割状部を閉じて、それぞれの前記収納部の係合雄部と係合雌部を係合させることの、いずれも可能なことを特徴とする分岐プロテクタの使用方法。
【請求項16】
請求項1から請求項14のいずれかに記載の分岐プロテクタの使用方法であって、前記主幹収納部の一方の半割状部を取り付け部に取り付け固定した後、前記主幹収納部の一方の半割状部と前記分岐収納部の一方の半割状部に電線又はケーブルを収納した状態で、前記主幹収納部の他方の半割状部と、前記分岐収納部の他方の半割状部を閉じることで、前記主幹収納部の一方の半割状部と前記分岐収納部の一方の半割状部のそれぞれの係合雄部または係合雌部を、前記主幹収納部の他方の半割状部と、前記分岐収納部の他方の半割状部の係合雌部または係合雄部に係合させることを特徴とする分岐プロテクタの使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数分岐が可能で、民生用の多様な分野に加えてワイヤハーネスの分岐部等に使用することができ、主幹収納部と分岐収納部を独立してできる、分岐プロテクタ、及び分岐プロテクタの使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車用途等のワイヤハーネスの分岐部を保護する方法としては、配線後の取り付けができ、かつ、可撓性が要求されるため、ビニールテープをラップ巻きにすることで対応されてきた。しかしこのテープ巻きは人手による作業に頼らざるを得ないため、多くの人手が必要であり、また、多量のテープを巻く必要があるため、軽量化のネックになっていた。
【0003】
一方、近年、5Gの日本での運用開始に関して、通信容量の増大にともない、通信ケーブルの増設などのニーズが拡大することが予想されている。これに関して、一般民生用の製品に関する適用として、5G対応等既設配線を撤去することなく配線を増設できないかとのニーズがあるが、この要求を満たすために、配線保護の保護管をはずす必要があり対応に苦慮しているのが現状である。そこで、保護管を外すことなく簡便に配線が容易にできることが期待される。
【0004】
従来の一般民生用の電線保護管は、ハーネスの様に、配線(電線)を予め設置した後で保護管を設置することは想定されていない。従って、既設の保護管に電線を追加する場合は、一度配線をはずして再度一から配線を行う必要がある。また、この他にも、保護管にメッセンジャーワイヤが内包されているような場合には、メッセンジャーワイヤを使用して電線を保護管内部に挿入するか、または追加配線あるいは配管を別の場所に設置する等種々の場合がある。
【0005】
このような電線の分岐部を保護する分岐保護部材としては、リジッドタイプのプロテクタや、可撓性を有するプロテクタが各種提案されているが、多数分岐が可能で、主幹収納部と分岐収納部を相互に干渉しないように独立して開閉でき、さらにコルゲート部によりケーブル配線の形状に合わせて、分岐部材の形状を調整できる分岐部材は存在しなかったため、配線の噛み込みや複雑な配線パターンの場合には2人作業が必要であるなどの問題があった。例えば、1又は2以上の分岐用補助管により一方側が交差された基体スリーブの形状を有する接続用及び分岐用部品が提案されている(特許文献1)。
【0006】
特許文献1の部品は、スリーブと補助管を含む平面で2つのシェルに開くことができ、これらのシェルはスリーブの開口側とは反対の直線部に従ってヒンジで結合される。少なくとも1つの補助管は、基体スリーブとの交差部のレベルに1又は2以上の波状部を有するか、又は、スリーブが、隣接する補助管の交差部との間に1又は2以上の波状部を有する。
【0007】
また、継手の外部で電線を曲げたときにコルゲートチューブの割溝が拡がるのを防止することが可能なコルゲートチューブ用継手が提案されている(特許文献2)。
【0008】
特許文献2の継手は、ワイヤハーネスの幹線と支線の分岐点を囲む基部と、この基部から延出するとともに幹線又は支線を貫通させる複数の円筒部とを備える。また、この円筒部は、コルゲートチューブの端部に外嵌される保持部と、この保持部よりも分岐点側に位置する蛇腹状可撓部とを備えている。幹線又は支線を分岐点の近傍で曲げようとするときには、蛇腹状可撓部を湾曲変形させつつ基部に対して保持部の向きを変えればよく、これにより、コルゲートチューブの曲げ変形が防止される。このように、特許文献2では、ワイヤハーネスを構成する幹線及びこの幹線から分岐した支線に対し、個別に外嵌された蛇腹状のコルゲートチューブ同士を連結するものである。
【0009】
また、取り付け作業の効率を良くすることが可能なプロテクタとして、組み付けられると筒状をなす一対の半割部材からなるプロテクタが提案されている(特許文献3)。
【0010】
特許文献3のプロテクタは、一方の半割部材に、他方の半割部材との当接縁よりも突出するように、コルゲートチューブの両側で立ち上がる一対の仮固定リブが設けられる。この一対の仮固定リブは、コルゲートチューブの溝部に差し込み可能な形状に形成されるとともに、一対の仮固定リブの立ち上がり端部は、コルゲートチューブの溝部に沿って互いに近付く向きに屈曲した形状とされている。
【0011】
また、長さの変更を要することなく、挿通部に異なるサヤ管を取着可能とするサヤ管接続具が提案されている(特許文献4)。
【0012】
特許文献4のサヤ管接続具は、サヤ管接続具本体の挿通口に取着して、この挿通口にサヤ管を接続する為に用いられる。この際、一端側と他端側とを選択する事で、異なるサヤ管を挿通口に接続可能とする一端側接続部と他端側接続部とを備える。このため、挿通口に対して、いずれの接続部についても一方を挿通部の外方に向け、他方を内側へ向くようにサヤ管を取着可能である。
【0013】
また、部品点数の増加を抑制しつつ配策材を適正に保護し、フレキシブルな配策に対応する事が可能なプロテクタ、及び、ワイヤハーネスが提案されている(特許文献5)。
【0014】
特許文献5では、ワイヤハーネスのプロテクタは、筒状に形成された内部に導電性を有する配策材が挿通される。また、当該配索材の配策経路を規制する第1プロテクタ部及び第2プロテクタ部と、筒状に形成され内部に配策材が挿通されると共に第1プロテクタ部と第2プロテクタ部より高い可撓性を有する連結可撓部を備える。第1プロテクタ部又は第2プロテクタ部の少なくとも一方は、配策材の配策経路を直線状とは異なる形状に規制し、第1プロテクタ部と第2プロテクタ部と連結可撓部とは、一体で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特表2001-501075号公報
【特許文献2】特開2001-119836号公報
【特許文献3】特開2008-278724号公報
【特許文献4】特開2008-95714号公報
【特許文献5】特開2019-33553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述したように、特許文献1の分岐用部品は、基体スリーブと分岐用補助管が略T字状に直交し、半割り構造の基体スリーブのコルゲート部に形成されたヒンジによって半割り構造が開閉可能である。すなわち、分岐用部品の開閉は、基体スリーブ側に形成されたヒンジにより行われ、分岐用補助管側の内部に形成された側面フックや切欠きにより固定される。このように、特許文献1では、開閉機構が基体スリーブ、固定機構が分岐用補助管側に形成されるという構造的特徴を有している。
【0017】
特許文献1は、主幹収納部のリジッド部と分岐収納部のコルゲート部が一体のT字形状で、プロテクタを開閉するヒンジが主幹部分にしか存在しないため、主幹収納部と分岐収納部が同時に閉じられる。そのため、プロテクタに挿入する電線・ケーブルの全体を、プロテクタと同様の形状にあらかじめ配置する必要がある。
【0018】
従って、基本スリーブと分岐用補助管を独立して開閉することが出来ない構造なので、特許文献1の分岐用部品は電線等の全てを略T字状に配置した後に、閉じる必要があり、ケーブル配線の配置の安定性を確保しづらい。
【0019】
また、特許文献2は、外形が略T字状で、基部の幹線部分側に設けたヒンジにより、略十字状に開閉可能な構造を有するコルゲートチューブ用継ぎ手に関するものである。この際、支線部分である分岐部には、コルゲート部を有しているが、ヒンジが形成されておらず、単に半割形状に形成されているだけである。そのため、幹線部分と支線部分のケーブルの敷設あるいは分岐作業を別々に行なうことができない。
【0020】
このように、特許文献2は、主幹収納部と分岐収納部にともに、コルゲート部が形成されていることは、特許文献1とは異なるが、主幹収納部と分岐収納部は同時に閉じられる。このため、プロテクタに配線を挿入後、可撓部であるコルゲート部を曲げることで、配線を曲げることは可能であるが、特許文献2においても特許文献1と同様の問題が生じる。
【0021】
すなわち、特許文献2の方式では幹線の電線と支線の電線をすべて設置後に全体を嵌合させるため、電線の曲がり等により電線噛みこみが発生しやすい。さらに、主幹基本部と分岐部にはいずれも蛇腹状可撓部と保持部(リジッド部)とさらにその先端には連結可撓部が設置されているが、特許文献2の方式では連結部に可撓部が設置されていない。
【0022】
また、特許文献3のプロテクタは、主幹収納部と分岐収納部が略T字状に直交するように接続され、半割り構造の主幹収納部に形成されたヒンジ部により開閉可能である。このプロテクタは、全体としてリジッドな構造を有しており、この分岐プロテクタを閉じるときに、主幹収納部に内装されるコルゲート管を仮固定する仮固定部が形成される。仮固定部にコルゲート管が仮固定された後にプロテクタが分岐収納部の外周に形成されたロック部により相互に固定される。
【0023】
特許文献3のプロテクタは、ヒンジ部を有し、ヒンジ部を介して分割可能な構造になっているが、プロテクタ自体は、コルゲート部を有していないため、全体としてリジッドな構造を有しており、可撓性を有しない。
【0024】
また、特許文献4のサヤ管接続具は、外形が略T字状であり、円周方向の一部が開口したヒンジ部等の開閉機構を有しない。このサヤ管接続具本体には、平滑なサヤ管と波付けサヤ管の両者が固定可能である。さらにサヤ管接続具本体の他に、サヤ管接続具本体に内装可能な、サヤ管接続部品を用いることにより、直径の異なるサヤ管も固定可能である。特許文献4は、配管に被冠して使用する開閉機構を持たないリジッドなカバー部材であり、ヒンジ部により開閉可能なプロテクタとは構造が異なる。またこの接続具は、コルゲート部がどこにも形成されておらず、全く可撓性を有しない。
【0025】
特許文献4のプロテクタはプロテクタ自体が特許文献3と同様にコルゲート部を有しておらず、またヒンジ部も有していないため、一方が開口した単なるサヤ管固定用のカバー部材に過ぎない。
【0026】
また、特許文献5のプロテクタは、リジッドな第1プロテクタ部と第2プロテクタ部の間に、コルゲート形状の連結可撓部を設けて、その連結可撓部を利用してケーブルの曲がり配置にも対応するもので、分岐部を有する構造も開示されている。また、特許文献5には、主幹部は、スリットを設けてヒンジにより開口可能な構造として、さらにロック部を介して係止可能な構造とすることができる。一方、分岐部については、スリットを設けて開口可能にすることはできない。
【0027】
特許文献5については、基本的には、筒状のカバー部材であり、スリットとヒンジを設けて開閉可能な構造とすることは可能であるが、特許文献2と同様に主幹収納部と分岐収納部は同時に閉じられるものである。
【0028】
このように、特許文献1から特許文献5は、分岐部に電線等を追加する際などにおいて、保護管にメッセンジャーワイヤで挿通する必要があるか、又は、プロテクタ全体を一度開いて、プロテクタの形態に沿って、電線等を全て配置した後に閉じる必要がある。このため、ケーブル配線の安定性を確保しづらく、また、プロテクタを閉じる際に、電線等を挟み込む恐れがある。
【0029】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、多数分岐が可能で主幹収納部と分岐収納部を相互に干渉しないように独立して開閉できるため、複雑な配線パターンに対しても、簡単に取り付けることが可能で、さらに省人化とコストダウンが実現でき、電線の破断原因となる電線の噛み込みを抑制することが可能な、分岐プロテクタ、及び分岐プロテクタの使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
前述した目的を達するために第1の発明は、少なくとも所定方向にヒンジ部により半割状に開閉可能に形成された主幹収納部と、前記主幹収納部の一部において、前記主幹収納部から所定角度で分岐し、ヒンジ部により開閉可能に形成された1つまたは複数の分岐収納部と、を備え、前記主幹収納部は、収納部として少なくともリジッド部を有し、前記分岐収納部は、収納部として、リジッド部、コルゲート部、リジッド部の順に、リジッド部がコルゲート部を挟んで形成され、前記主幹収納部と、前記分岐収納部の前記リジッド部及び前記コルゲート部は、半割状に形成された収納部であり、前記主幹収納部と前記分岐収納部のそれぞれの一方の半割状部は、相互に連続して形成され、前記主幹収納部と前記分岐収納部のそれぞれの他方の半割状部は、前記一方の半割状部と前記他方の半割状部が前記ヒンジ部を介して開口された時に、相互に不連続になるように形成され、さらに、前記分岐収納部の、少なくとも前記リジッド部の一部が前記主幹収納部と所定位置で接続されていて、前記主幹収納部と前記分岐収納部は、前記ヒンジ部を開いた時に、相互に干渉しないように、それぞれの前記ヒンジ部により独立して開閉可能なように配置され、前記主幹収納部及び前記分岐収納部は、それぞれの前記ヒンジ部を閉じることで、電線又はケーブルを収納することが可能であることを特徴とする分岐プロテクタである。
【0031】
前記主幹収納部は、直線状の収納部であり、前記主幹収納部の端部には、前記リジッド部の他に、コルゲート部が形成され、前記リジッド部、前記コルゲート部、前記リジッド部がこの順に配置されても良い。
【0032】
前記ヒンジ部は、前記主幹収納部と前記分岐収納部のそれぞれの前記リジッド部のみに形成され、前記ヒンジ部が形成されたそれぞれの前記収納部の、前記ヒンジ部とは反対側の、前記リジッド部のそれぞれの端部に、係合雄部と係合雌部がそれぞれ形成され、前記係合雄部と前記係合雌部により、前記リジッド部のそれぞれの端部が係合されてもよい。
【0033】
前記ヒンジ部は、前記主幹収納部の前記リジッド部と、前記分岐収納部の前記リジッド部及び前記コルゲート部にそれぞれ形成され、前記ヒンジ部が形成されたそれぞれの前記収納部の、前記コルゲート部を除く、前記ヒンジ部とは反対側の前記リジッド部の端部には、それぞれ係合雄部と係合雌部が形成され、前記係合雄部と前記係合雌部により、前記リジッド部のそれぞれの端部が係合されてもよい。
【0034】
前記コルゲート部は、前記係合雄部と前記係合雌部が係合されたときに、前記コルゲート部の一方の半割状部の前記ヒンジ部とは反対側の端部が、前記コルゲート部の他方の半割状部の前記ヒンジ部と反対側の端部に重ね合わせられるように形成されてもよい。
【0035】
前記主幹収納部及び前記分岐収納部の端部には、それぞれの先端に向かって、大径連結部と小径連結部の順に、2段の連結可撓部が形成されてもよい。
【0036】
前記主幹収納部の前記リジッド部の一方の先端側には、ヒンジ部により開閉して取り付け可能な電線保護ブッシングを有する保護部材が取付けられてもよい。
【0037】
前記主幹収納部は、平面視で閉曲線状または多角形状の箱型の収納部であり、
複数の前記分岐収納部が、前記主幹収納部の外周部からそれぞれ所定角度で分岐して形成されてもよい。
【0038】
前記閉曲線状または多角形状の収納部である主幹収納部が円形、楕円形、長円形、三角形、四角形、五角形、又は六角形のいずれかの形状を有してもよい。
【0039】
前記ヒンジ部は、前記主幹収納部と前記分岐収納部の前記リジッド部のみに形成され、前記ヒンジ部が形成されたそれぞれの前記収納部の、前記ヒンジ部とは反対側の前記リジッド部の端部に、それぞれ係合雄部と係合雌部が形成され、前記係合雄部と前記係合雌部により、前記リジッド部のそれぞれの端部が係合されてもよい。
【0040】
前記ヒンジ部は、前記主幹収納部の前記リジッド部と、前記分岐収納部の前記リジッド部及び前記コルゲート部に形成され、前記ヒンジ部が形成されたそれぞれの前記収納部の、前記コルゲート部を除く、前記ヒンジ部とは反対側の前記リジッド部の端部には、それぞれ係合雄部と係合雌部が形成され、前記係合雄部と前記係合雌部により、前記リジッド部のそれぞれの端部が係合されてもよい。
【0041】
前記コルゲート部は、前記係合雄部と前記係合雌部が係合されたときに、前記コルゲート部の一方の半割状部の前記ヒンジ部とは反対側の端部が、前記コルゲート部の他方の半割状部の前記ヒンジ部と反対側の端部に重ね合わせられるように形成されてもよい。
【0042】
複数の前記分岐収納部のそれぞれの端部には、先端に向かって、大径連結部と小径連結部の順に2段の連結可撓部が形成されてもよい。
【0043】
前記分岐収納部の前記リジッド部の先端側に、ヒンジ部により開閉して取り付け可能な電線保護ブッシングを有する保護部材が取付けられているか、前記分岐収納部に電線保護ブッシングが、あらかじめ設置されてもよい。
【0044】
第1の発明によれば、主幹収納部と分岐収納部とを別々に開閉することができるので、予め配線を行った後の複雑な配線であっても、複雑な配線に合わせて、主幹基本部に幹線の電線(ハーネス)を設置後、分岐部に支線の電線(ハーネス)を単独で設置することができる。このため幹線の電線と支線の電線の設置が容易であり、分岐点等での電線噛みこみ等を防止することができる。
【0045】
すなわち、本発明の分岐プロテクタは、多数分岐が可能であるとともに、主幹収納部と分岐収納部が、相互に干渉することなく、両者が電線収納時に独立して開閉できる。このため、主幹収納部と分岐収納部に沿わせて収納する電線の配置を調整した上で作業を行うことができ、電線が複雑で不安定な配置であっても主幹収納部と分岐収納部に独立してケーブル配線を収納することができることから、分岐プロテクタを電線にかぶせる作業がしやすく、分岐プロテクタを閉じる際に電線を挟み込んだりすることがない。
【0046】
このように、本発明の分岐プロテクタは、新設の場合の複雑な形状の配線や配線の増設の場合にも工事が簡便に行うことができ、自動車用やその他民生用にも多様な分野に適用可能である。その結果、ワイヤハーネス分岐部のテープレス化、今後5Gの普及に伴うケーブル配線の複雑多様化にも、柔軟に対応できる分岐プロテクタを提供できる。
【0047】
また、主幹収納部の端部において、リジッド部の間にコルゲート部が形成されれば、主幹収納部に可撓性を付与することができる。
【0048】
また、ヒンジ部がリジッド部にのみ形成されれば、製造が容易である。
【0049】
また、半割状部のコルゲート部が隣接して略平行して配置されていれば、隣接するコルゲート部を繋ぐヒンジ部を設けることが可能である。このように、ヒンジ部がリジッド部とコルゲート部の両方に形成されれば、内部の電線をより確実に覆って保護することができる。
【0050】
また、ヒンジ部とは逆側の端部に係合雄部と係合雌部とを形成することで、半割状部同士を閉じた状態で保持することができる。このため、分岐収納部が複数形成されていたとしても、分岐プロテクタに電線を収納して係合部により固定することができ、使用現場に合わせた柔軟な使用が可能になる。
【0051】
また、コルゲート部のヒンジ部の反対の端部を重ね合わせることで、コルゲートの外周を覆うことができる。このように、コルゲート部にヒンジを設置するとともに、コルゲート部のヒンジ部の反対の端部を重ね合わせることで、外部からの異物や埃の侵入を防止することができる。
【0052】
また、配線取り出し口である可撓性を有する連結部を2段に形成することで、太さの異なる種々のケーブル配線の組合せにも適用可能で、しかも連結部が可撓性を有しているので、分岐プロテクタとこれと接続するカバー部材との連結作業がしやすい。このように、分岐プロテクタの電線・ケーブル取出口に、2つの口径の可撓性を有する連結可撓部を形成することで、ケーブル集合体の断面積が変わっても、電線・ケーブルあるいはケーブル集合体を安定して保持することができる。また、先端の連結可撓部により、先端部分に可撓性が付与されるため、先端部における割部が拡がることを抑制することができる。
【0053】
また、主幹収納部の先端に電線保護ブッシングを取り付けることで、より確実に内部の電線を保護することができる。
【0054】
また、主幹収納部が箱型であれば、容易に多数分岐が可能な構造とすることができ、今後の情報容量の拡大するニーズにも対応可能となる。また、この場合でも、主幹収納部が直線状の場合と同様の効果を得ることができる。
【0055】
なお、主幹収納部が箱型の場合には、分岐収納部のリジッド部の先端側に、ヒンジ部により開閉して取り付け可能な電線保護ブッシングを有する保護部材が取付けられてもよい。又は、分岐収納部9に電線保護ブッシングが、あらかじめ設置されていてもよい。
【0056】
第2の発明は、第1の発明にかかる分岐プロテクタの使用方法であって、前記主幹収納部の一方の半割状部と前記分岐収納部の一方の半割状部に、電線又はケーブルを収納した後、前記主幹収納部の他方の半割状部を閉じた後に、前記分岐収納部の他方の半割状部を閉じて、それぞれの前記収納部の係合雄部と係合雌部を係合させるか、あるいは、前記分岐収納部の他方の半割状部を閉じた後、前記主幹収納部の他方の半割状部を閉じて、それぞれの前記収納部の係合雄部と係合雌部を係合させることの、いずれも可能なことを特徴とする分岐プロテクタの使用方法である。
【0057】
また、第2の発明は、第1の発明にかかる分岐プロテクタの使用方法であって、前記主幹収納部の一方の半割状部を取り付け部に取り付け固定した後、前記主幹収納部の一方の半割状部と前記分岐収納部の一方の半割状部に電線又はケーブルを収納した状態で、前記主幹収納部の他方の半割状部と、前記分岐収納部の他方の半割状部を閉じることで、前記主幹収納部の一方の半割状部と前記分岐収納部の一方の半割状部のそれぞれの係合雄部または係合雌部を、前記主幹収納部の他方の半割状部と、前記分岐収納部の他方の半割状部の係合雌部または係合雄部に係合させることを特徴とする分岐プロテクタの使用方法であってもよい。
【0058】
第2の発明によれば、既設のケーブル配線から特定の配線を新たに分岐または追加する場合には、分岐プロテクタの主幹収納部または分岐収納部を個々に開くことで作業を行うことができる。このため、ケーブル配線全体を安定な状態で保持したまま、主幹収納部に加えて必要な分岐収納部のみを開閉して作業を行うことが可能になり、作業がしやすい。また、必要により主幹収納部と分岐収納部のいずれかを個々に開くことで、分岐プロテクタ内部の配線を安定に支持できるので、既設のケーブル配線を取り外すことなく容易にケーブル配線を追加できる。さらに、電線・ケーブルを電線保護管から取り外すことなく分岐部を簡単に追加できる。
【0059】
より具体的には、多数分岐を有する分岐プロテクタの主幹収納部と多数の分岐収納部を1カ所のヒンジを用いて、開閉する構造の場合には、分岐プロテクタを複雑なケーブル配線の構造に合わせて、変形させた状態でケーブル配線を各収納部に一度で収納しなければならない。このため、ケーブル配線の幾何学的な形状に分岐プロテクタの形状を一致させて保持する必要があり、ケーブル配線の分岐プロテクタへの収納・固定が著しく困難になる。そのため、一人での分岐プロテクタへの収納ができない場合が生じることもあるが、本発明のプロテクタを用いれば、主幹収納部と分岐収納部を相互に干渉しないように独立して開閉できるため、複雑な配線パターンに対しても、簡単に取り付けることが可能になる。
【0060】
しかし、本発明の分岐プロテクタを用いれば、主幹収納部や個別の分岐収納部毎にケーブル配線を収納できるため、ケーブル配線を各収納部に無理なく収納できる。このため、分岐プロテクタにケーブル配線を挟み込んだりすることもなく、複雑な配線の場合であっても一人での作業が可能である。このように、電線・ケーブルの収納順序や壁面などへの取り付けを状況に合わせて選択できる。
【発明の効果】
【0061】
本発明によれば、多数分岐が可能で、主幹収納部と分岐収納部を相互に干渉しないように独立して開閉でき、複雑な配線パターンに対しても、簡単に取り付けることが可能なため、省人化とコストダウンが実現でき、電線の破断原因となる電線の噛み込みを抑制することが可能な、分岐プロテクタ、及び分岐プロテクタの使用方法を提供することができる。その結果、ワイヤハーネス分岐部のテープレス化、今後5Gの普及に伴うケーブル配線の複雑多様化にも、柔軟に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】開いた状態の分岐プロテクタ1を示す正面図。
【
図2】(a)は、
図1のC-C線端面図、(b)は
図1のD-D線端面図。
【
図3】閉じた状態の分岐プロテクタ1を示す正面図。
【
図4】(a)、(b)は、
図2に対応し、閉じた状態の各部の端面図。
【
図5】開いた状態の分岐プロテクタ1aを示す正面図。
【
図6】(a)は、
図4のE-E線端面図、(b)は
図4のF-F線端面図。
【
図7】(a)は、
図6(b)に対応し、閉じた状態の端面図であり、(b)は、(a)の他の形態を示す図。
【
図8】(a)、(b)は、分岐プロテクタ1の使用方法を示す図。
【
図9】(a)、(b)は、分岐プロテクタ1の使用方法を示す図。
【
図10】(a)、(b)は、分岐プロテクタ1に電線保護ブッシング27を取り付ける工程を示す図。
【
図11】開いた状態の分岐プロテクタ1bを示す正面図。
【
図12】開いた状態の分岐プロテクタ1cを示す正面図。
【
図13】開いた状態の分岐プロテクタ1dを示す正面図。
【
図14】(a)、(b)は、分岐プロテクタ1dの使用方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0063】
(第1の実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、開いた状態の分岐プロテクタ1を示す正面図であり、
図2(a)は、
図1のC-C線端面図、
図2(b)は、
図1のD-D線端面図である。分岐プロテクタ1は、ヒンジ部5と、主幹収納部3及び分岐収納部9等から構成される。
【0064】
主幹収納部3は、少なくとも所定方向にヒンジ部により半割状に開閉可能に形成される。主幹収納部3は、直線状の収納部であり、主幹収納部3の端部には、リジッド部13の他に、コルゲート部15が形成され、リジッド部13、コルゲート部15、リジッド部13がこの順に配置されている。すなわち、主幹収納部3は、収納部として少なくともリジッド部13を有する。コルゲート部15は、可撓性を有する部位である。
【0065】
分岐収納部9は、主幹収納部3の一部において、主幹収納部3から所定角度で分岐する。分岐収納部9も、主幹収納部3と同様に、収納部として、リジッド部13、コルゲート部15、リジッド部13の順に、リジッド部13がコルゲート部15を挟んで形成される。なお、分岐収納部は、少なくともリジッド部13の一部が主幹収納部3と所定位置で接続される。
【0066】
主幹収納部3と分岐収納部9のリジッド部13とコルゲート部15は、それぞれ半割状に形成された収納部である。主幹収納部3の半割状部7a、7bはヒンジ部5によって開閉可能に連結される。また、分岐収納部9の半割状部11a、11bは、ヒンジ部5によって連結され、開閉可能に形成される。なお、本実施形態では、分岐収納部9は1つであるが、複数配置してもよい。また、本実施形態では、ヒンジ部5は、主幹収納部3と分岐収納部9のそれぞれのリジッド部13のみに形成される。
【0067】
主幹収納部3と分岐収納部9のそれぞれの一方の半割状部7a、11aは、相互に連続して形成される。主幹収納部3と分岐収納部9のそれぞれの他方の半割状部7b、11bは、一方の半割状部7a、11aと他方の半割状部7b、11bがヒンジ部5を介して開口された時に、相互に不連続になるように形成される。また、主幹収納部3と分岐収納部9は、ヒンジ部5を開いた時に、相互に干渉しないように、それぞれのヒンジ部5により独立して開閉可能なように配置される。ここで、主幹収納部3と分岐収納部9とが開いた時に、相互に干渉しないように独立して開閉可能な構造とするのは、主幹収納部3と分岐収納部9とを開いた時に、両者が相互に干渉すると、主幹収納部3と分岐収納部9を損傷したり、破損したりする可能性があると同時に作業性の低下や分岐部材に収納するケーブル配線の収納容量の低下につながるからである。
【0068】
また、主幹収納部3と分岐収納部9のそれぞれのヒンジ部5が形成された収納部において、ヒンジ部5とは反対側の、リジッド部13のそれぞれの端部には、係合雄部19と係合雌部21がそれぞれ形成される。
【0069】
主幹収納部3及び分岐収納部9の端部には、それぞれの先端に向かって、大径連結部である連結可撓部17aと、小径連結部である連結可撓部17bの順に、2段の連結可撓部が形成されている。連結可撓部17a、17bは、いずれも可撓性を有し、互いに径が異なる。連結可撓部17a、17bは、他の電線保護管との接続部となる。このため、主幹収納部3及び分岐収納部9の端部には、それぞれ径の異なる電線保護管を選択して接続することができる。
【0070】
前述したように、主幹収納部3と分岐収納部9は、それぞれのヒンジ部5により独立して開閉可能である。
図2(a)、
図2(b)に示すように、ヒンジ部5によって主幹収納部3の半割状部7a、7bを閉じることができる(図中矢印A)。同様に、ヒンジ部5によって分岐収納部9の半割状部11a、11bを閉じることもできる(
図1の矢印B)。
【0071】
図3は、主幹収納部3と分岐収納部9の両方を閉じた状態の分岐プロテクタ1を示す正面図であり、
図4(a)は、
図2に対応する部位の端面を示す図である。主幹収納部3及び分岐収納部9は、それぞれ、閉じた際に、係合雄部19と係合雌部21により、リジッド部13のそれぞれの端部が係合される。したがって、閉じた状態を保持することができる。なお、コルゲート部15は、半割状部7a、7bの端部同士、又は半割状部11a、11bの端部同士が互いに突き合わされる。このように、主幹収納部3及び分岐収納部9は、それぞれのヒンジ部5を閉じることで、いずれも管状となり、内部に電線又はケーブルを収納することが可能である。
【0072】
なお、ヒンジ部5は、リジッド部13にのみ形成されなくてもよい。
図5は、開いた状態の分岐プロテクタ1aを示す正面図であり、
図6(a)は、
図5のE-E線端面図、
図6(b)は、
図5のF-F線端面図である。分岐プロテクタ1aは、分岐プロテクタ1と略同様の構成であるが、ヒンジ部5が、主幹収納部3と、分岐収納部9のリジッド部13及びコルゲート部15にそれぞれ形成される点で異なる。
【0073】
すなわち、リジッド部13における端面図は、分岐プロテクタ1と分岐プロテクタ1aとで同じであるが、分岐プロテクタ1aでは、コルゲート部15においてもヒンジ部5が形成され、半割状部7a、7b(半割状部11a、11b)が連結される。この場合でも、ヒンジ部5が形成されたそれぞれの収納部の、コルゲート部15を除く、ヒンジ部5とは反対側のリジッド部13の端部に、それぞれ係合雄部19と係合雌部21が形成される。主幹収納部3又は分岐収納部9を閉じると、係合雄部19と係合雌部21により、リジッド部13のそれぞれの端部が係合される。
【0074】
なお、
図7(a)に示すように、ヒンジ部5とは反対側のコルゲート部15の端部には、係合雄部19と係合雌部21は形成されないため、両端部は突き合せられた状態となる。これに対し、リジッド部13の周方向長さに対して、コルゲート部15の周方向長さを長くしてもよい。このようにすることで、リジッド部13の係合雄部19と係合雌部21が係合された際、
図7(b)に示すように、コルゲート部15の一方の半割状部7a(11a)のヒンジ部5とは反対側の端部が、コルゲート部15の他方の半割状部7b(11b)のヒンジ部5とは反対側の端部に重ね合わせられるように形成することができる。
【0075】
次に、分岐プロテクタ1の使用方法について説明する。なお、分岐プロテクタ1aの使用方法も同様である。まず、
図8(a)に示すように、主幹収納部3の一方の半割状部7aを取り付け部23に取り付け固定する。なお、主幹収納部3の取り付け部23への固定は、必須ではない。半割状部7aを取り付け部23へ固定した後、主幹収納部3の一方の半割状部7aへ電線25a、25bを収納し、分岐収納部9の一方の半割状部11aに、一方の電線25aを収納する。なお、電線に代えてケーブルを収納してもよい。
【0076】
図8(b)は、
図8(a)の状態から、主幹収納部3を閉じた状態を示す図である。前述したように、主幹収納部3と分岐収納部9は、独立して開閉可能であるため、分岐収納部9を開いたまま、主幹収納部3のみを閉じることができる。
【0077】
一方、
図9(a)は、
図8(a)の状態から、分岐収納部9を閉じた状態を示す図である。このように、主幹収納部3と分岐収納部9は、独立して開閉可能であるため、主幹収納部3を開いたまま、分岐収納部9のみを閉じることができる。このように、主幹収納部3の一方の半割状部7aと分岐収納部9の一方の半割状部11aに電線等を収納した後、主幹収納部3の他方の半割状部7bを閉じた後に、分岐収納部9の他方の半割状部11bを閉じて、それぞれの収納部の係合雄部19と係合雌部21を係合させてもよいし、あるいは、分岐収納部9の他方の半割状部11bを閉じた後、主幹収納部3の他方の半割状部7bを閉じて、それぞれの収納部の係合雄部19と係合雌部21を係合させてもよく、いずれも可能である。
【0078】
ここで、一方の主幹収納部3の半割状部7aと一方の分岐収納部9の半割状部11aの側に電線等を挿入して収納する。この理由は、半割状部7aと半割状部11aが相互に連続して形成されているからであり、他方の側は、半割状部7bと半割状部11bが連続して形成されておらず、通線できない位置に離隔して形成されているからである。本発明では、原則として主幹収納部3の半割状部7a、分岐収納部9の半割状部11aが連続して形成されている一方の側のそれぞれの側の半割状部にケーブル配線を挿入して収納し、他方の側の半割状部7b、半割状部11bの係合部を閉じるものとする。そのため、電線を挿入するのは一方の側に限られる。
【0079】
また、主幹収納部3が取り付け部23に固定されていれば、主幹収納部3の一方の半割状部7aと分岐収納部9の一方の半割状部11aに電線又はケーブルを収納した状態で、両手で主幹収納部3の他方の半割状部7bと、分岐収納部9の他方の半割状部11bを閉じることができる。すなわち、主幹収納部3の一方の半割状部7aの係合雄部19または係合雌部21を、主幹収納部3の他方の半割状部7bの係合雌部21または係合雄部19に係合させることができる。同様に、分岐収納部9の一方の半割状部11aの係合雄部19または係合雌部21を、分岐収納部9の他方の半割状部11bの係合雌部21または係合雄部19に係合させることができる。
【0080】
図9(b)は、主幹収納部3と分岐収納部9の両者を閉じた状態を示す図である。このように、主幹収納部3と分岐収納部9を独立して開閉可能とすることで、主幹収納部3を閉じる際には、主幹収納部3の半割状部7aに電線等を収納すればよく、分岐収納部9における電線等の配置をあまり気にしなくてもよい。また、分岐収納部9を閉じる際には、主幹収納部3における電線等の配置をあまり気にしなくてもよい。このため、各収納部を閉じる際に、電線等が噛み込むことを抑制し、作業が容易である。
【0081】
なお、
図10(a)に示すように、主幹収納部3のリジッド部13の一方の先端側に、電線保護ブッシング用ヒンジ部29により開閉して取り付け可能な電線保護ブッシング27を有する保護部材が取付けられてもよい。この場合、開いた状態の電線保護ブッシング27を、主幹収納部3の一方の端部側に配置し、例えば連結可撓部17bに被せるようにして、電線保護ブッシング27を閉じることで、
図10(b)に示すように、端部に電線保護ブッシング27が取り付けられた分岐プロテクタ1を得ることができる。
【0082】
以上、第1の実施形態によれば、主幹収納部3と分岐収納部9を独立して開閉可能であるため、主幹収納部3と分岐収納部9に、電線等の全体を一度に確実に収納しなくても、各部ごとに閉じることができ、さらにコルゲート部により角度の微調整もできる。このため、電線等の噛み込みを抑制することができる。また、例えば、主幹収納部3のみに電線等を追加する際に、分岐収納部9は閉じたままでよいため、分岐収納部9の内部に収納されていた電線等が飛び出してしまうことがない。また、主幹収納部3を通じて分岐収納部9に予備線を布設しておけば、ケーブル配線の増設の際に、該当する分岐収納部9のみを開閉することで、ケーブル配線を増設することも可能である。
【0083】
また、リジッド部13のヒンジ部5とは逆側の端部に、係合雄部19と係合雌部21とをそれぞれ対向する位置に配置することで、各収納部を閉じた際に、係合雄部19と係合雌部21とを係合させることができる。このため、各収納部を閉じた状態で保持することができる。
【0084】
また、ヒンジ部5は、リジッド部13のみに形成してもよく、この場合には、製造が容易となる。また、ヒンジ部5をリジッド部13のみではなく、コルゲート部15にも形成することで、より確実に内部の電線等を保護することができる。この際、コルゲート部15の周長をリジッド部13の周長よりも長くしておくことで、収納部を閉じた際に、端部同士を重ね合わせることができる。このため、外部からの異物の侵入を抑制することができる。
【0085】
また、各収納部の端部に連結可撓部17a、17bを形成することで、収納部の端部に可撓性を付与することができる。このため、内部の電線等が、各収納部の取り出し方向に対して異なる方向に向けて引き出された際にも、端部が電線等の引き出し方向に向けて変形することを許容することができる。このため、収納部端部の口開きを抑制することができる。
【0086】
また、連結可撓部17a、17bが、外径の異なる2段の連結部であるため、各収納部の端部に、異なる径の電線保護管等を接続することができる。
【0087】
また、主幹収納部3の端部に、電線保護ブッシング27を取り付けることで、より確実に電線等を保護することができる。また、電線保護ブッシングをアウトレットボックス等の内側にて使用することで、分岐プロテクタの抜け防止も可能となる。さらに、保護管設置後も電線保護ブッシングのロックを解除することで分岐プロテクタを容易に取り外すことができる。
【0088】
なお、前述した実施形態において、分岐収納部9は、主幹収納部3に対して斜めに接続される例を示したが、本発明はこれには限られない。例えば、
図11に示す分岐プロテクタ1bは、主幹収納部3に対して、分岐収納部9が略垂直に接続され、さらに主幹収納部3にコルゲート部が形成されていないことが異なる。このように、分岐収納部9は、主幹収納部3に対して所定の角度で接続されればよく、角度は特に限定されず、主幹収納部3と、分岐収納部9が、ヒンジを介して開閉する場合に、それぞれ相互に干渉せずに独立して開閉可能であればよい。
【0089】
また、前述した実施形態において、分岐収納部9は、主幹収納部3に対して、一つ形成されたが、分岐収納部9は複数個形成してもよい。例えば、
図12は、分岐収納部9が3つ併設された分岐プロテクタ1cを示す図である。このように、分岐収納部9が複数配置される場合には、主幹収納部3と、各分岐収納部9が、それぞれ独立して開閉可能となる。なお、各分岐収納部9は、互いに平行に配置されなくてもよく、主幹収納部3に対して、それぞれ異なる角度で配置されてもよい。
【0090】
また、前述した実施形態において、分岐収納部は主幹収納部に対して図示した場合とは逆の、現在の分岐収納部とは主幹収納部に対して対称な位置に設置されてもよい。分岐プロテクタへ電線等を収納するとき、収納方向から見て分岐収納部の設置される方向は作業のやりやすい方向が望まれる。このため分岐収納部は主幹収納部に対して常に同一方向に分岐される必要は無い。
【0091】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図13は、開いた状態の分岐プロテクタ1dを示す図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態と同様の機能等を奏する構成については、第1の実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0092】
分岐プロテクタ1dは、分岐プロテクタ1等と略同様の構成であるが、主幹収納部3が、直線状ではなく、箱型である点で異なる。なお、図示した例では、主幹収納部3は、平面視で六角形の箱型であるが、これには限定されず、平面視で閉曲線状または多角形状の箱型の収納部であればよい。例えば、閉曲線状または多角形状の収納部である主幹収納部3は、円形、楕円形、長円形、三角形、四角形、五角形、又は六角形のいずれかの形状を有してもよい。
【0093】
複数の分岐収納部9は、主幹収納部3の外周部からそれぞれ所定角度で分岐して形成されている。図示した例では、六角形の主幹収納部3の、一方の半割状部7aの5辺に、それぞれ各辺に直交するように分岐収納部9が接続され、残りの1辺には、ヒンジ部5を介して、半割状部7bが連結される。なお、分岐収納部9は、それぞれ独立して開閉可能である。
【0094】
主幹収納部3は、全体がリジッド部13で構成される。分岐収納部9は、リジッド部13、コルゲート部15、リジッド部13の順に、リジッド部13がコルゲート部15を挟んで形成される。また、複数の分岐収納部9のそれぞれの端部には、先端に向かって、大径連結部と小径連結部の順に2段の連結可撓部17a、17bが形成される。
【0095】
なお、分岐プロテクタ1dも分岐プロテクタ1と同様に、ヒンジ部5は、主幹収納部3と分岐収納部9のリジッド部13のみに形成されてもよく、この場合には、ヒンジ部5が形成されたそれぞれの収納部の、ヒンジ部5とは反対側のリジッド部13の端部に、それぞれ係合雄部19と係合雌部21が形成される。
【0096】
また、ヒンジ部5は、主幹収納部3のリジッド部13と、分岐収納部9のリジッド部13及びコルゲート部15に形成されてもよい。この場合には、ヒンジ部5が形成されたそれぞれの収納部の、コルゲート部15を除く、ヒンジ部5とは反対側のリジッド部13の端部に、それぞれ係合雄部19と係合雌部21が形成される。いずれの場合も、係合雄部19と係合雌部21により、リジッド部13のそれぞれの端部が係合される。
【0097】
また、分岐プロテクタ1dも分岐プロテクタ1と同様に、係合雄部19と係合雌部21を係合して閉じた状態で、コルゲート部15は、一方の半割状部11aのヒンジ部5とは反対側の端部が、他方の半割状部11bのヒンジ部5と反対側の端部に重ね合わせられるように形成されてもよい。
【0098】
次に、分岐プロテクタ1dの使用方法の一例を説明する。
図14(a)に示すように、電線25aが一部の分岐収納部9から挿入され、主幹収納部3を介して、他の分岐収納部9から引き出されている。この状態から、さらに他の電線25b(図中破線で示す)を追加する際には、まず、主幹収納部3と、配置対象の分岐収納部9を開く。この際、電線25bの配置とは関係のない分岐収納部9は閉じたままでよい。このため、既存の電線25aは保持された状態を維持することができる。
【0099】
次に、電線25bを、主幹収納部3の一方の半割状部7aと分岐収納部9の一方の半割状部11aにそれぞれ配置する。その後、
図14(b)に示すように、主幹収納部3の他方の半割状部7bを閉じた後に、それぞれの分岐収納部9の他方の半割状部11bを閉じてもよいし、分岐収納部9の他方の半割状部11bを閉じた後、主幹収納部3の他方の半割状部7bを閉じてもよい。いずれの場合も、それぞれの収納部の係合雄部19と係合雌部21を係合させることで、閉じた状態を保持することができる。
【0100】
なお、その後、さらに、分岐収納部9のリジッド部13の先端側に、ヒンジ部により開閉して取り付け可能な電線保護ブッシングを有する保護部材(図示省略)が取付けられてもよい。また、分岐収納部9の先端に電線保護ブッシングをあらかじめ設置しておいてもよい。
【0101】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。このように、主幹収納部3を箱型とし、分岐収納部9を主幹収納部3から放射状に配置してもよい。
【0102】
以上のように、本発明によれば、多数分岐が可能で、主幹収納部と分岐収納部を独立して開閉でき、複雑な配線パターンに対しても、簡単に取り付けることが可能で、省人化とコストダウンが実現できる分岐プロテクタ及び分岐プロテクタの使用方法を提供できる。また、本発明の分岐プロテクタ及び分岐プロテクタの使用方法を用いれば、主幹収納部と分岐収納部を独立して開閉することが可能なため、電線の破断原因となる電線の噛み込みを抑制することを可能とすることができる。
【0103】
また、コルゲート部の端部同士を重ねわせることで内部に収納するケーブル配線をより確実に保護することができる。さらに、主管収納部または分岐収納部の端部に、2段の連結可撓部を形成することで、ケーブル配線の曲がりにも対応しつつ、異なる直径の保護管との接続が可能になる。また、ヒンジ部により開閉して可能な電線保護ブッシングを有する保護部材を設けることで、分岐プロテクタをプルボックスなどに取り付ける場合に内部のケーブル配線をより確実に保護できる。その結果、今後5Gの普及に伴うケーブル配線の複雑多様化にも、柔軟に対応できる。
【0104】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0105】
1、1a、1b、1c、1d………分岐プロテクタ
3………主幹収納部
5………ヒンジ部
7a、7b………半割状部
9………分岐収納部
11a、11b………半割状部
13………リジッド部
15………コルゲート部
17a、17b………連結可撓部
19………係合雄部
21………係合雌部
23………取り付け部
25a、25b………電線
27………電線保護ブッシング
29………電線保護ブッシング用ヒンジ部