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  • 特開-ヒンジ構造および樹脂ワッシャ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044320
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】ヒンジ構造および樹脂ワッシャ
(51)【国際特許分類】
   F16C 11/04 20060101AFI20220310BHJP
   B60R 7/04 20060101ALI20220310BHJP
   E05D 3/02 20060101ALI20220310BHJP
   E05D 5/12 20060101ALI20220310BHJP
   F16B 43/00 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
F16C11/04 B
B60R7/04 C
E05D3/02
E05D5/12 E
F16B43/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149883
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小橋 和也
【テーマコード(参考)】
2E030
3D022
3J034
3J105
【Fターム(参考)】
2E030AB01
2E030BB07
2E030CA01
2E030CB01
2E030CC02
2E030CC03
3D022CA07
3D022CD18
3J034AA20
3J034BA03
3J034BC02
3J034CA01
3J105AA04
3J105AB46
3J105AB48
3J105AC06
3J105BA24
3J105BB13
(57)【要約】
【課題】ヒンジ構造の組み立て作業を簡易化でき、また、部品点数を削減できるヒンジ構造を提供する。
【解決手段】ヒンジ構造10は、回転部材の回転軸として機能するヒンジ軸16と、前記ヒンジ軸16が挿通される貫通孔44が形成され、前記ヒンジ軸16に取り付けられる終端ワッシャ20と、備え、前記終端ワッシャ20は、前記貫通孔44の内周面より径方向内側に突出するとともに、径方向外側に弾性変形可能な1以上の突起部46を有し、前記ヒンジ軸16は、前記突起部46が嵌まり込み可能な1以上の位置決め溝32を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部材の回転軸として機能するヒンジ軸と、
前記ヒンジ軸が挿通される貫通孔が形成され、前記ヒンジ軸に取り付けられる樹脂ワッシャと、
を備え、前記樹脂ワッシャは、前記貫通孔の内周面より径方向内側に突出するとともに、径方向外側に弾性変形可能な1以上の突起部を有し、
前記ヒンジ軸は、前記突起部が嵌まり込み可能な1以上の位置決め溝を有する、
ことを特徴とするヒンジ構造。
【請求項2】
請求項1に記載のヒンジ構造であって、
前記樹脂ワッシャは、さらに、前記突起部の径方向外側に隣接して設けられ、径方向外側に弾性変形した前記突起部を受け入れる受容孔を有する、ことを特徴とするヒンジ構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のヒンジ構造であって、
前記突起部は、その周方向両端のみが前記貫通孔の内周面に連結され、その中間部が径方向内側に迫り出したアーチ形状である、ことを特徴とするヒンジ構造。
【請求項4】
ヒンジ軸が挿通される貫通孔が形成され、前記ヒンジ軸に取り付けられる樹脂ワッシャであって、
前記貫通孔の内周面より径方向内側に突出するとともに、径方向外側に弾性変形可能な1以上の突起部であって、前記ヒンジ軸に形成された位置決め溝に嵌まり込む1以上の突起部を有する、ことを特徴とする樹脂ワッシャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、回転部材をヒンジ軸周りに回転可能に支持するヒンジ構造、および、当該ヒンジ構造に使用される樹脂ワッシャを開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転部材をヒンジ軸周りに支持するヒンジ構造が、広く知られている。例えば、特許文献1には、シャフト(ヒンジ軸に該当)を固定部材に固定するとともに回転部材に形成された軸孔にシャフトを挿通し、回転部材をシャフトに対して回転可能に支持するヒンジ構造が開示されている。
【0003】
ところで、こうしたヒンジ構造では、ヒンジ軸に、回転部材や固定部材を組み付けるが、このとき、ガタツキや異音を防止するために、ヒンジ軸と、回転部材または固定部材と、の間に樹脂ワッシャを配置することがある。特許文献1では、ヒンジ軸に挿通された固定部材および回転部材の間に樹脂ワッシャを配置することが開示されている。ここで、こうした樹脂ワッシャは、ヒンジ軸の軸方向一端から挿し込まれるが、そのままでは、当該樹脂ワッシャがヒンジ軸の一端から抜け落ちるおそれがある。そこで、特許文献1では、樹脂ワッシャをヒンジ軸に挿し込んだ後、当該ヒンジ軸にEリングを装着することで、樹脂ワッシャの抜け落ちを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-31671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、ヒンジ軸からの抜け落ちを防止するために、Eリングを使用した場合、組み立て作業の複雑化や部品点数の増加という問題を招く。そこで、本明細書では、ヒンジ構造の組み立て作業を簡易化でき、また、部品点数を削減できるヒンジ構造および当該ヒンジ構造に用いられる樹脂ワッシャを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書で開示するヒンジ構造は、回転部材の回転軸として機能するヒンジ軸と、前記ヒンジ軸が挿通される貫通孔が形成され、前記ヒンジ軸に取り付けられる樹脂ワッシャと、備え、前記樹脂ワッシャは、前記貫通孔の内周面より径方向内側に突出するとともに、径方向外側に弾性変形可能な1以上の突起部を有し、前記ヒンジ軸は、前記突起部が嵌まり込み可能な1以上の位置決め溝を有する、ことを特徴とする。
【0007】
突起部が、位置決め溝に嵌り込み、突起部が位置決め溝に径方向に係合されることで、樹脂ワッシャの軸方向位置が規定され、樹脂ワッシャの脱落が防止される。この場合、Eリングが不要となるため、部品点数を削減でき、組み立て作業を簡易化できる。
【0008】
この場合、前記樹脂ワッシャは、さらに、前記突起部の径方向外側に隣接して設けられ、径方向外側に弾性変形した前記突起部を受け入れる受容孔を有してもよい。
【0009】
かかる構成とすることで、突起部が、容易に径方向外側に弾性変形できる。その結果、比較的小さい力で樹脂ワッシャをヒンジ軸に取り付けることができる。
【0010】
また、前記突起部は、その周方向両端のみが前記貫通孔の内周面に連結され、その中間部が径方向内側に迫り出したアーチ形状であってもよい。
【0011】
本明細書で開示する樹脂ワッシャは、ヒンジ軸が挿通される貫通孔が形成され、前記ヒンジ軸に取り付けられる樹脂ワッシャであって、前記貫通孔の内周面より径方向内側に突出するとともに、径方向外側に弾性変形可能な1以上の突起部であって、前記ヒンジ軸に形成された位置決め溝に嵌まり込む1以上の突起部を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本明細書で開示する技術によれば、ヒンジ構造の組み立て作業を簡易化でき、また、部品点数を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ヒンジ構造の要部を示す斜視図である。
図2】終端ワッシャの斜視図である。
図3】終端ワッシャを異なる方向からみた斜視図である。
図4】終端ワッシャ近傍の断面図である。
図5】他のヒンジ構造の一例を示す断面図である。
図6】従来のヒンジ構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照してヒンジ構造10について説明する。図1は、ヒンジ構造10の要部を示す斜視図である。ヒンジ構造10は、固定部材12に対して、可動部材(図1では回転側軸部22のみ図示)を揺動可能に支持する構造である。本例では、車両に搭載されるコンソールボックスの開閉蓋に設けられるヒンジ構造10を例に挙げて説明する。また、以下の説明で「軸方向」とは、ヒンジ軸16の長尺方向を意味する。
【0015】
本例において、可動部材は、コンソールボックスの開口部を開閉可能に覆う開閉蓋である。この可動部材の底面には、軸方向に長尺形状の回転側軸部22が連結されており、この回転側軸部22には、ヒンジ軸16が挿通される軸孔24が形成されている。軸孔24にヒンジ軸16を挿通することで、可動部材(すなわち開閉蓋)は、ヒンジ軸16を中心として揺動可能となる。
【0016】
固定部材12は、不動のベース部材(例えば、車両ボディの一部)に直接または間接的に固定される。固定部材12は、軸方向に間隔を開けて配置された一対の支持部26a,26bが、設けられている。なお、以下では、二つの支持部26a,26bを区別する必要がない場合は、添え字アルファベットa,bを省略し、「支持部26」と表記する。他部材についても同様である。各支持部26は、軸方向に略垂直な方向に延びる平板状である。各支持部26には、後述する樹脂ワッシャ18,20を介してヒンジ軸16を取り付けるための取付孔28が形成されている。この取付孔28は、支持部26を軸方向に貫通する孔であり、軸方向視で非円形(図示例ではD字形)の外形を有する孔である。
【0017】
ヒンジ軸16は、可動部材の回転軸として機能する軸部材である。ヒンジ軸16は充分な強度を有する必要があるため、本例では、ヒンジ軸16(例えばアルミニウム等)を、金属で構成している。このヒンジ軸16の始端には、径方向外側に張り出すフランジ30が形成されている。このフランジ30は、始端ワッシャ18の貫通孔44よりも大径である。また、ヒンジ軸16の終端より僅かに始端側に近づいた位置には、周方向に一周する環状溝である位置決め溝32が形成されている。この位置決め溝32は、終端ワッシャ20の抜け落ちを防止するためのものであるが、これについては後述する。
【0018】
ヒンジ軸16は、樹脂ワッシャ18,20を介して、支持部26に取り付けられている。以下では、二つの樹脂ワッシャ18,20のうち、ヒンジ軸16の始端近傍(すなわちフランジ30近傍)に配置される樹脂ワッシャを「始端ワッシャ18」と呼び、ヒンジ軸16の終端近傍に配置される樹脂ワッシャを「終端ワッシャ20」と呼ぶ。また、両者を区別しない場合は、「樹脂ワッシャ18,20」と呼ぶ。この樹脂ワッシャ18,20の構成について、図2図3を参照して説明する。
【0019】
図2図3は、終端ワッシャ20を、それぞれ違う方向からみた斜視図である。終端ワッシャ20は、樹脂で形成された成型品である。終端ワッシャ20は、図2図3から明らかな通り、D字状の外形を有する嵌合部42と、当該嵌合部42より大径の大径部40と、が軸方向に並んでいる。また、終端ワッシャ20の中心には、軸方向に貫通する貫通孔44が形成されている。この貫通孔44の内径は、ヒンジ軸16の外形とほぼ同じである。また、嵌合部42の外形は、支持部26の取付孔28の外形とほぼ同じである。ヒンジ構造10を組み立てる際には、この嵌合部42が、支持部26の軸方向外側から取付孔28に嵌合される。
【0020】
図3に示すように、大径部40の端面には、三つの突起部46が設けられている。各突起部46は、貫通孔44の内周面から径方向内側に突出するとともに、径方向外側に弾性変形可能となっている。より具体的には、本例における突起部46は、その周方向両端のみが貫通孔44の内周面に連結され、その中間部が径方向内側に迫り出したアーチ形状である。この突起部46の径方向外側には、当該突起部46が径方向外側に弾性変形した際に、当該突起部46を受容する受容孔48が形成されている。受容孔48は、弾性変形した突起部46を受容できるのであれば、その形状は、特に限定されない。本例では、受容孔48は、軸方向視で、突起部46と同程度の周方向範囲に広がる略円弧状となっている。この受容孔48は、突起部46に対して軸方向に隣接し、貫通孔44の内周面から径方向外側に進む横孔49を介して貫通孔44に連通している。
【0021】
ここで、上述した通り、また、図1に示す通り、ヒンジ軸16の終端近傍には、周方向に延びる位置決め溝32が、形成されている。この位置決め溝32は、突起部46に対応する位置に設けられている。すなわち、後に詳説するように、始端ワッシャ18の嵌合部42は、一つの取付孔28aに嵌合され、終端ワッシャ20の嵌合部42は、もう一つの取付孔28bに嵌合される。また、ヒンジ軸16は、そのフランジ30が、始端ワッシャ18の端面に当接するまで、始端ワッシャ18および終端ワッシャ20に挿通される。位置決め溝32は、このようにヒンジ軸16を組み付けた際において、終端ワッシャ20の突起部46と軸方向位置が同じとなる位置に形成されている。また、位置決め溝32の幅(軸方向寸法)は、突起部46よりわずかに大きい。
【0022】
始端ワッシャ18は、突起部46、受容孔48、および横孔49が無いことを除けば、終端ワッシャ20と同じ構造を有する。すなわち、始端ワッシャ18は、D字状の嵌合部42と、当該嵌合部42より大径の大径部40と、を有し、その中心には軸方向に貫通する貫通孔44が形成されている。
【0023】
次に、こうしたヒンジ構造10の組み立てについて説明する。ヒンジ構造10を組み立てる際には、予め、ヒンジ軸16の終端から、始端ワッシャ18を差し込み、当該始端ワッシャ18がフランジ30に当接する位置まで、当該始端ワッシャ18を軸方向に押し込む。フランジ30は、始端ワッシャ18の貫通孔44より大径であるため、始端ワッシャ18が、ヒンジ軸16から抜け落ちることは無い。
【0024】
続いて、ヒンジ軸16の終端が、一つの取付孔28a、軸孔24、もう一つの取付孔28bを順に通過するように、ヒンジ軸16をこれらの孔28,24に挿通させる。そして、ヒンジ軸16の始端近傍に位置する始端ワッシャ18の嵌合部42を、一つの取付孔28に嵌合させる。この状態になれば、もう一つの取付孔28bからは、ヒンジ軸16の終端が突出している。
【0025】
作業者は、この取付孔28から突出しているヒンジ軸16の終端から、終端ワッシャ20を挿し込む。ここで、終端ワッシャ20をヒンジ軸16の終端に挿し込んだ際、突起部46は、ヒンジ軸16からの圧力を受けて、径方向外側に弾性変形し、受容孔48に入り込む。この状態で、作業者は、終端ワッシャ20を、その嵌合部42が、取付孔28に嵌合する位置まで軸方向に進める。図4は、終端ワッシャ20の嵌合部42を取付孔28に嵌合した際の断面図である。図4に示すように、終端ワッシャ20の嵌合部42を取付孔28に嵌合した際、突起部46は、ヒンジ軸16の位置決め溝32と軸方向位置が一致することになる。この状態になれば、突起部46は、弾性復元し、貫通孔44の内周面より径方向内側に突出し、位置決め溝32に嵌まり込む。換言すれば、終端ワッシャ20の突起部46が、ヒンジ軸16の位置決め溝32に対して径方向に係合される。その結果、終端ワッシャ20の軸方向移動が規制され、ひいては、終端ワッシャ20のヒンジ軸16の終端からの抜け落ちが防止できる。
【0026】
なお、終端ワッシャ20をヒンジ軸16に挿し込む初期段階において、突起部46は、ヒンジ軸16の終端面に当接する。このとき、突起部46が終端面から受ける軸方向の力を径方向外側の力に変換させるために、突起部46の軸方向端面、または、ヒンジ軸16の終端面、または、その両方に、傾斜面52を形成してもよい。かかる構成とすることで、終端ワッシャ20をヒンジ軸16に容易に挿し込むことができる。
【0027】
次に、こうしたヒンジ構造10の効果について、従来技術と比較して説明する。図6は、従来のヒンジ構造10の一例を示す図であり、終端ワッシャ20*近傍の断面図である。従来の終端ワッシャ20*は、本明細書で開示する終端ワッシャ20と同様に、嵌合部42と大径部40が軸方向に並んでおり、その中心には軸方向に貫通する貫通孔44が形成されている。一方で、従来の終端ワッシャ20*には、突起部46はない。そのため、従来の終端ワッシャ20*は、そのままでは、ヒンジ軸16の終端から容易に抜け落ちる。こうした終端ワッシャ20*の抜け落ちを防止するために、従来のヒンジ構造10では、終端ワッシャ20*と軸方向に隣接する位置にEリング54を取り付けていた。
【0028】
Eリング54は、周知の通り、薄い金属板を打ち抜いて形成されており、略C字の本体と、当該本体の末端、中間、終端から径方向を内側に突出する突起と、を有している。Eリング54で終端ワッシャ20*の抜け落ちを防止する際には、終端ワッシャ20*をヒンジ軸16に挿し込んだ後、当該Eリング54を、ヒンジ軸16の側方からヒンジ軸16に挿し込み、Eリング54の突起をヒンジ軸16に形成された位置決め溝32に嵌め込む。これにより、終端ワッシャ20*の脱落がEリング54により防止できる。
【0029】
しかし、Eリング54を使用する従来技術の場合、Eリング54が必要な分、部品点数が増加する。また、Eリング54は、薄く小さいため、その管理が、終端ワッシャ20等と比べて手間であった。さらに、Eリング54を使用した場合、終端ワッシャ20*を挿し込んだ後、Eリング54を取り付ける作業が必要であった。このEリング54の取り付けの際には、比較的、大きな力が必要であり、素手では難しく、何らかの工具が必要であった。そのため、Eリング54を使用する従来技術では、組み立て工程の工数が増え、また、工具のある環境でなければ組み立てができないという問題があった。
【0030】
一方、本明細書で開示するヒンジ構造10では、終端ワッシャ20に、突起部46が設けられており、この突起部46をヒンジ軸16の位置決め溝32に係合させることで、終端ワッシャ20の脱落が防止されている。換言すれば、Eリング54が不要であるため、本例の技術によれば、部品点数を低減できる。また、樹脂で構成される突起部46は、比較的小さい力で弾性変形するため、突起部46を有する終端ワッシャ20は、専用の工具が無くても、素手で容易にヒンジ軸16に取り付けることができる。その結果、本例の技術によれば、工具のない環境、例えば、車両の組み立て現場でも、ヒンジ構造10を容易に組み立てることができる。さらに、終端ワッシャ20をヒンジ軸16に取り付けた後、Eリング54を取り付ける必要がないため、組み立て工程の工数を従来技術に比べて低減できる。
【0031】
なお、これまで説明した構成は、一例であり、少なくとも、樹脂ワッシャが1以上の突起部46を有し、ヒンジ軸16が1以上の位置決め溝32を有するのであれば、その他の構成は、適宜変更されてもよい。例えば、上述の説明では、一対の樹脂ワッシャ18,20のうち、終端ワッシャ20にのみ突起部46を設けているが、終端ワッシャ20および始端ワッシャ18の双方に突起部46を設けてもよい。その場合、ヒンジ軸16の始端側には、フランジ30に代えて、位置決め溝32が設けられる。
【0032】
また、これまでの説明では、突起部46を、その両端のみが貫通孔44の内周面に連結されたアーチ形状としているが、突起部46は、無負荷状態では、内周面より径方向内側に突出し、負荷を受けた際に径方向外側に弾性変形するのであれば、その形状は、特に限定されない。したがって、突起部46は、図5に示すように、その根元のみが貫通孔44の内周面に連結され、その先端が貫通孔44の内周面よりも径方向内側に突出した片持ち梁状でもよい。図5の例において、突起部46は、貫通孔44の内周面から、周方向に進むにつれて径方向内側に進むような方向に延びている。
【0033】
また、上述の説明では、突起部46は、周方向に間隔を開けて3つ設けているが、突起部46は、1以上であれば、その個数は、限定されない。ただし、貫通孔44とヒンジ軸16とを同心に保つためには、突起部46は、3以上であることが望ましい。
【0034】
また、上述の説明では、位置決め溝32を、周方向に一周する環状溝としている。かかる構成とすれば、ヒンジ軸16に対する終端ワッシャ20(ひいては突起部46)の位相を気にする必要がなくなるため、終端ワッシャ20の取り付け作業を簡易化できる。しかし、位置決め溝32は、突起部46を受け入れることができるのであれば、周方向に間隔を開けて複数、形成されてもよい。例えば、図5に示すように、位置決め溝32は、突起部46と同位相となる位置に、突起部46と同じ個数(図5の例では4つ)だけ、設けられてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 ヒンジ構造、12 固定部材、16 ヒンジ軸、18 始端ワッシャ、20,20* 終端ワッシャ、22 回転側軸部、24 軸孔、26 支持部、28 取付孔、30 フランジ、32 位置決め溝、40 大径部、42 嵌合部、44 貫通孔、46 突起部、48 受容孔、49 横孔、52 傾斜面、54 Eリング。
図1
図2
図3
図4
図5
図6