(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044339
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】路面点検支援システム
(51)【国際特許分類】
E01C 23/01 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
E01C23/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149921
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】598123334
【氏名又は名称】ダットジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205084
【弁理士】
【氏名又は名称】吉浦 洋一
(72)【発明者】
【氏名】羽田 典久
(72)【発明者】
【氏名】洞口 克彦
(72)【発明者】
【氏名】小山 一人
【テーマコード(参考)】
2D053
【Fターム(参考)】
2D053AA32
2D053AB03
2D053FA02
(57)【要約】
【課題】
道路の路面の点検を支援する路面点検支援システムを提供することを目的とする。
【解決手段】
道路を走行する車両における振動強度を判定し,判定した振動強度が所定条件を充足している場合,車両の進行方向を撮影する撮影装置で撮影した画像情報とその位置情報とに対応づけて,振動強度の条件を充足したことを示す情報を付する判定処理部と,画像情報を表示する表示処理部と,を有しており,表示処理部は,画像情報を表示する表示画面を表示し,表示画面において,マーキング位置までのスキップ操作を受け付けると,現在表示している画像情報から進行方向に対してもっとも近い位置の,振動強度の条件を充足したことを示す情報が対応する位置情報を特定し,その位置情報またはその位置情報から所定距離だけ手前の位置情報に対応する画像情報を表示画面で表示させる,路面点検支援システムである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の路面の点検を支援する路面点検支援システムであって,
前記路面点検支援システムは,
前記道路を走行する車両における振動強度を判定し,前記判定した振動強度が所定条件を充足している場合,前記車両の進行方向を撮影する撮影装置で撮影した画像情報とその位置情報に対応づけて,振動強度の条件を充足したことを示す情報を付する判定処理部と,
前記画像情報を表示する表示処理部と,を有しており,
前記表示処理部は,
前記画像情報を表示する表示画面を表示し,
前記表示画面において,前記振動強度の条件を充足したことを示す情報がある位置までのスキップ操作を受け付けると,現在表示している画像情報から進行方向に対してもっとも近い位置の,前記振動強度の条件を充足したことを示す情報が対応する位置情報を特定し,
その位置情報またはその位置情報から所定距離だけ手前の位置情報に対応する画像情報に再生をスキップする,
ことを特徴とする路面点検支援システム。
【請求項2】
前記表示処理部は,
前記検査区間を示すマーカを表示する,
ことを特徴とする請求項1に記載の路面点検支援システム。
【請求項3】
前記表示処理部は,
前記表示画面に設けた入力部から,前記路面の損傷状態の評価の入力を受け付ける,
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の路面点検支援システム。
【請求項4】
前記判定処理部は,
前記車両の加速度を計測する加速度計測装置から受け付けた加速度情報に基づいて振動値を算出し,あらかじめ定めた振動強度の閾値と,前記算出した振動値とを比較することで,前記振動強度の条件を充足するかを判定する,
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の路面点検支援システム。
【請求項5】
道路の路面の点検を支援する路面点検支援システムであって,
前記路面点検支援システムは,
前記道路を走行する車両の進行方向を撮影した画像情報を表示画面で表示する表示処理部,
を有しており,
前記表示処理部は,
所定のスキップ操作を受け付けると,現在表示している画像情報から進行方向に対してもっとも近い位置にあり,前記車両の振動強度の条件を充足した位置またはその位置から所定距離だけ手前の画像情報に再生をスキップする,
ことを特徴とする路面点検支援システム。
【請求項6】
道路の路面の点検を支援する路面点検支援システムであって,
前記路面点検支援システムは,
前記道路を走行する車両における振動強度を判定し,前記判定した振動強度が所定条件を充足している場合,振動強度の条件を充足したことを示す情報を付する判定処理部と,
前記画像情報を表示する表示処理部と,を有しており,
前記表示処理部は,
前記画像情報を表示する表示画面を表示し,
前記表示画面において所定の操作を受け付けると,現在表示している画像情報から進行方向に対して,前記振動強度の条件を充足したことを示す情報が対応する画像情報またはその画像情報から所定だけ手前の画像情報に再生をスキップする,
ことを特徴とする路面点検支援システム。
【請求項7】
コンピュータを,
道路を走行する車両における振動強度を判定し,前記判定した振動強度が所定条件を充足している場合,前記車両の進行方向を撮影する撮影装置で撮影した画像情報とその位置情報とに対応づけて,振動強度の条件を充足したことを示す情報を付する判定処理部,
前記画像情報を表示する表示処理部,として機能させる路面点検支援プログラムであって,
前記表示処理部は,
前記画像情報を表示する表示画面を表示し,
前記表示画面において,前記振動強度の条件を充足したことを示す情報がある位置までのスキップ操作を受け付けると,現在表示している画像情報から進行方向に対してもっとも近い位置の,前記振動強度の条件を充足したことを示す情報が対応する位置情報を特定し,
その位置情報またはその位置情報から所定距離だけ手前の位置情報に対応する画像情報に再生をスキップする,
ことを特徴とする路面点検支援プログラム。
【請求項8】
コンピュータを,
道路を走行する車両の進行方向を撮影した画像情報を表示画面で表示する表示処理部,として機能させる路面点検支援プログラムであって,
前記表示処理部は,
所定のスキップ操作を受け付けると,現在表示している画像情報から進行方向に対してもっとも近い位置にあり,前記車両の振動強度の条件を充足した位置またはその位置から所定距離だけ手前の画像情報に再生をスキップする,
ことを特徴とする路面点検支援プログラム。
【請求項9】
コンピュータを,
道路を走行する車両における振動強度を判定し,前記判定した振動強度が所定条件を充足している場合,振動強度の条件を充足したことを示す情報を付する判定処理部,
前記車両の進行方向を撮影する撮影装置で撮影した画像情報を表示する表示処理部,として機能させる路面点検支援プログラムであって,
前記表示処理部は,
前記画像情報を表示する表示画面を表示し,
前記表示画面において所定の操作を受け付けると,現在表示している画像情報から進行方向に対して,前記振動強度の条件を充足したことを示す情報が対応する画像情報またはその画像情報から所定だけ手前の画像情報に再生をスキップする,
ことを特徴とする路面点検支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,道路の路面の点検を支援する路面点検支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路は社会インフラとして重要であることから,その維持管理が適切になされなければならない。そのため,国土交通省は舗装点検要領を定め,5年に1回の定期点検を道路管理者(国,県,市区町村など)に求めている。この点検方法は,目視または機器を用いた方法によることとされている。そして実際の道路の舗装路面の点検は,点検員が目視で路面のひび割れなどの損傷を確認し,損傷レベルを3段階で判定をしている。
【0003】
点検対象となる道路は,中堅都市でも700~800kmになるなど膨大な距離である。そして点検員も不足していること,また上述の定期点検は義務ではないことなどの理由もあり,点検対象となる道路のすべてについて定期点検を行えている道路管理者は多くはない。
【0004】
そこで,点検業務の負担を軽減するため,非特許文献1に示すような,車両に専用の点検装置を備えた点検車両を用い,点検対象となる道路を走行させて点検を行う方法がある。
【0005】
しかし非特許文献1に示すような点検車両はきわめて高額であり,各道路管理者が保有することは困難である。それを所有する道路管理者から貸与を受けることも考えられるが,その貸与料も安価ではない。
【0006】
また非特許文献2に示すように,通常の車両にカメラを設置し,撮影した道路の路面から点検員が路面の撮影箇所を確認するシステムもある。しかし,撮影した画像(動画データ)は点検員が目視で確認をしなければならず,膨大な距離を確認しなければいけない点においては変わりはない。
【0007】
そこで通常の車両にカメラを設置し,撮影した道路の路面から自動的に損傷箇所を検出する装置やシステムが考えられている(特許文献1乃至特許文献3)。また,撮影した路面の画像情報ではなく,所定のセンサなどで検出した振動やそれに基づくIRI(国際ラフネス指数。舗装路面と運転者の乗り心地を関連付けた評価値)から自動的に路面の損傷箇所を検出する装置やシステムもある(特許文献4乃至特許文献6,非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8-86645号公報
【特許文献2】特開2005-43324号公報
【特許文献3】特開2017-002658号公報
【特許文献4】特開2015-161580号公報
【特許文献5】特開2015-176540号公報
【特許文献6】特開2017-61786号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】中日本高速道路株式会社,”vol.04 高速で測定できる,路面性状測定車「ロードタイガー」”,[online],インターネット<URL:https://www.c-nexco.co.jp/corporate/safety/torikumi/torikumi/vol04/>
【非特許文献2】ソリトン・コム株式会社,”道路パトロール車を用いた舗装点検・維持管理”,[online],インターネット<URL:https://www.soliton-com.co.jp/maintenance/index.htm#n02>
【非特許文献3】JIPテクノサイエンス株式会社,”センサモニタリングとビッグデータを活用した次世代マネジメント手法の研究開発”,[online],インターネット<URL:https://www.jip-ts.co.jp/highlights/sip.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1乃至特許文献3に開示されるような,撮影した路面から損傷箇所を自動的に検出する装置等の場合,その検出精度が課題となる。検出精度を向上させるため,さまざまな画像解析方法が用いられ,あるいは近時では深層学習(ディープラーニング)などを用いた自動検出方法が用いられることもある。
【0011】
しかしいずれの場合であっても,自動検出は完全ではないので,正確に検出されているかを点検員が確認しなければならない。また深層学習を用いる場合,さまざまな路面状況,さまざまな損傷などの学習用の教師データを準備しなければならず,そこに大きな作業負担が発生する。
【0012】
また,特許文献4乃至特許文献6,非特許文献3などに開示される方法では,撮影した路面からの検出ではなく,車両に設置したセンサやスマートフォンのセンサなどを用いて検出した振動やそれに基づくIRIによって路面の性状を評価できる。しかし,いずれの場合も,路面の性状を評価することから,正確にIRIを算出するためには正確に振動値などを計測する必要があるので,車両固有の振動による影響を除外するためのセンサのキャリブレーションが必要であるなど,センサやスマートフォンを設置する際には,所定の手間が発生する。
【0013】
そのため,車両を変更する場合などでは,再度,キャリブレーションなどの設置の手間を行わなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記課題に鑑み,道路の路面の点検を支援する路面点検支援システムを発明した。
【0015】
第1の発明は,道路の路面の点検を支援する路面点検支援システムであって,前記路面点検支援システムは,前記道路を走行する車両における振動強度を判定し,前記判定した振動強度が所定条件を充足している場合,前記車両の進行方向を撮影する撮影装置で撮影した画像情報とその位置情報に対応づけて,振動強度の条件を充足したことを示す情報を付する判定処理部と,前記画像情報を表示する表示処理部と,を有しており,前記表示処理部は,前記画像情報を表示する表示画面を表示し,前記表示画面において,前記振動強度の条件を充足したことを示す情報がある位置までのスキップ操作を受け付けると,現在表示している画像情報から進行方向に対してもっとも近い位置の,前記振動強度の条件を充足したことを示す情報が対応する位置情報を特定し,その位置情報またはその位置情報から所定距離だけ手前の位置情報に対応する画像情報に再生をスキップする,路面点検支援システムである。
【0016】
振動強度が一定以上であることを検出している場合,そこに損傷がある可能性がある。そこで,本発明のように構成することで,点検員は画像情報を目視で点検する場合に,振動強度が所定の条件を充足する位置に画像情報をスキップすることができるので,点検員の負担を軽減することができる。また従来技術のように,IRIを算出することもしておらず,相対値としての振動強度を用いているので,キャリブレーションなどの設置の手間も軽減することができる。
【0017】
上述の発明において,前記表示処理部は,前記検査区間を示すマーカを表示する,路面点検支援システムのように構成することができる。
【0018】
路面の点検は,検査区間ごとに損傷状態の評価を入力する必要がある。そこで,本発明のように,検査区間を目視している画像情報から特定することで,画像情報を目視して行う点検が容易となる。
【0019】
上述の発明において,前記表示処理部は,前記表示画面に設けた入力部から,前記路面の損傷状態の評価の入力を受け付ける,路面点検支援システムのように構成することができる。
【0020】
本発明のように構成することで,点検員は,その場で損傷状態の評価の入力を行うことができる。
【0021】
上述の発明において,前記判定処理部は,前記車両の加速度を計測する加速度計測装置から受け付けた加速度情報に基づいて振動値を算出し,あらかじめ定めた振動強度の閾値と,前記算出した振動値とを比較することで,前記振動強度の条件を充足するかを判定する,路面点検支援システムのように構成することができる。
【0022】
本発明のように構成することでIRIを算出せずに,点検員が目視すべき位置を特定することができる。とくに相対値としての振動強度を用いているので,キャリブレーションなどの設置の手間も軽減することができる。
【0023】
第5の発明は,道路の路面の点検を支援する路面点検支援システムであって,前記路面点検支援システムは,前記道路を走行する車両の進行方向を撮影した画像情報を表示画面で表示する表示処理部,を有しており,前記表示処理部は,所定のスキップ操作を受け付けると,現在表示している画像情報から進行方向に対してもっとも近い位置にあり,前記車両の振動強度の条件を充足した位置またはその位置から所定距離だけ手前の画像情報に再生をスキップする,路面点検支援システムである。
【0024】
本発明のように構成することで,点検員は画像情報を目視で点検する場合に,振動強度が所定の条件を充足する位置に画像情報をスキップすることができるので,点検員の負担を軽減することができる。
【0025】
第6の発明は,道路の路面の点検を支援する路面点検支援システムであって,前記路面点検支援システムは,前記道路を走行する車両における振動強度を判定し,前記判定した振動強度が所定条件を充足している場合,振動強度の条件を充足したことを示す情報を付する判定処理部と,前記画像情報を表示する表示処理部と,を有しており,前記表示処理部は,前記画像情報を表示する表示画面を表示し,前記表示画面において所定の操作を受け付けると,現在表示している画像情報から進行方向に対して,前記振動強度の条件を充足したことを示す情報が対応する画像情報またはその画像情報から所定だけ手前の画像情報に再生をスキップする,路面点検支援システムである。
【0026】
本発明のように構成することで,第1の発明と同様の技術的効果を得ることができる。すなわち,振動強度が一定以上であることを検出している場合,そこに損傷がある可能性がある。そこで,本発明のように構成することで,点検員は画像情報を目視で点検する場合に,振動強度が所定の条件を充足する位置に画像情報をスキップすることができるので,点検員の負担を軽減することができる。また従来技術のように,IRIを算出することもしておらず,相対値としての振動強度を用いているので,キャリブレーションなどの設置の手間も軽減することができる。
【0027】
第1の発明は,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現することができる。すなわち,コンピュータを,道路を走行する車両における振動強度を判定し,前記判定した振動強度が所定条件を充足している場合,前記車両の進行方向を撮影する撮影装置で撮影した画像情報とその位置情報とに対応づけて,振動強度の条件を充足したことを示す情報を付する判定処理部,前記画像情報を表示する表示処理部,として機能させる路面点検支援プログラムであって,前記表示処理部は,前記画像情報を表示する表示画面を表示し,前記表示画面において,前記振動強度の条件を充足したことを示す情報がある位置までのスキップ操作を受け付けると,現在表示している画像情報から進行方向に対してもっとも近い位置の,前記振動強度の条件を充足したことを示す情報が対応する位置情報を特定し,その位置情報またはその位置情報から所定距離だけ手前の位置情報に対応する画像情報に再生をスキップする,路面点検支援プログラムのように構成することができる。
【0028】
第5の発明は,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現することができる。すなわち,コンピュータを,道路を走行する車両の進行方向を撮影した画像情報を表示画面で表示する表示処理部,として機能させる路面点検支援プログラムであって,前記表示処理部は,所定のスキップ操作を受け付けると,現在表示している画像情報から進行方向に対してもっとも近い位置にあり,前記車両の振動強度の条件を充足した位置またはその位置から所定距離だけ手前の画像情報に再生をスキップする,路面点検支援プログラムのように構成することができる。
【0029】
第6の発明は,本発明のプログラムをコンピュータに読み込ませて実行することで実現することができる。すなわち,コンピュータを,道路を走行する車両における振動強度を判定し,前記判定した振動強度が所定条件を充足している場合,振動強度の条件を充足したことを示す情報を付する判定処理部,前記車両の進行方向を撮影する撮影装置で撮影した画像情報を表示する表示処理部,として機能させる路面点検支援プログラムであって,前記表示処理部は,前記画像情報を表示する表示画面を表示し,前記表示画面において所定の操作を受け付けると,現在表示している画像情報から進行方向に対して,前記振動強度の条件を充足したことを示す情報が対応する画像情報またはその画像情報から所定だけ手前の画像情報に再生をスキップする,路面点検支援プログラムのように構成することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の路面点検支援システムを用いることで,道路の路面点検を行うための作業負担を軽減し,またキャリブレーションなどの設置の手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の路面点検支援システムの全体の構成の一例を模式的に示す図である。
【
図2】本発明の路面点検支援システムで用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の路面点検支援システムにおいて,点検対象となる道路を車両で走行して,路面の画像情報などを取得する場合の処理プロセスの一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の路面点検支援システムにおいて,点検員が道路の路面を撮影した画像情報に基づいて目視による点検を行う場合の処理プロセスの一例をフローチャートである。
【
図5】撮影装置を車両のフロントガラス付近に設置した状態を示す図である。
【
図7】本発明の路面点検支援システムを用いて,実際の道路を走行した場合のZ方向の加速度の変化率と,道路の路面の損傷との関係を模式的に示す図である。
【
図8】地点aに基づく重点点検範囲の画像情報の表示の一例を示す図である。
【
図9】地点bに基づく重点点検範囲の画像情報の表示の一例を示す図である。
【
図10】地点cに基づく重点点検範囲の画像情報の表示の一例を示す図である。
【
図11】地点dに基づく重点点検範囲の画像情報の表示の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の路面点検支援システム1の全体のシステム構成の一例を
図1に,路面点検支援システム1で用いるコンピュータのハードウェア構成の一例を
図2に示す。
【0033】
路面点検支援システム1は,コンピュータによって実現される。コンピュータは,プログラムの演算処理を実行するCPUなどの演算装置70と,情報を記憶するRAMやハードディスクなどの記憶装置71と,ディスプレイなどの表示装置72と,情報の入力を行う入力装置73と,演算装置70の処理結果や記憶装置71に記憶する情報を通信する通信装置74とを有している。なお,コンピュータがタッチパネルディスプレイを備えている場合には表示装置72と入力装置73とが一体的に構成されていてもよい。タッチパネルディスプレイは,たとえばタブレット型コンピュータやスマートフォンなどの可搬型通信端末などで利用されることが多いが,それに限定するものではない。
【0034】
タッチパネルディスプレイは,そのディスプレイ上で,直接,所定の入力デバイス(タッチパネル用のペンなど)や指などによって入力を行える点で,表示装置72と入力装置73の機能が一体化した装置である。
【0035】
路面点検支援システム1は一台のコンピュータによって実現されていてもよいが,その一部または全部の機能が複数のコンピュータによって実現されていてもよい。この場合のコンピュータとして,たとえばクラウドサーバであってもよい。
【0036】
本発明の路面点検支援システム1における各手段は,その機能が論理的に区別されているのみであって,物理上あるいは事実上は同一の領域を為していてもよい。
【0037】
路面点検支援システム1は,制御端末2と撮影装置3と加速度計測装置4と位置情報取得装置5とを有する。
【0038】
撮影装置3は,車両に設置し,車両の進行方向の路面を動画像または静止画像(以下,これらを総称して,「画像情報」という)で撮影するカメラであって,たとえばドライブレコーダやアクションカメラなどが該当する。撮影装置3を車両のフロントガラス付近に設置した状態を
図5に示す。撮影装置3は,その撮影している画像情報の中心が,撮影装置3から所定距離,たとえば5m先を写すように設置される。撮影装置3が静止画像を撮影する場合,所定の距離間隔または時間間隔で静止画像を連続的に撮影する。
【0039】
加速度計測装置4は,加速度を計測する装置であって,加速度センサなどが該当する。加速度計測装置4は,車両,撮影装置3,車両内に載置したスマートフォンなどに設置することができる。
【0040】
位置情報取得装置5は,車両の位置情報を取得する装置であり,たとえばGPS装置が該当する。位置情報取得装置5は,車両が走行する緯度,経度の各情報を取得する。位置情報取得装置5は,車両,撮影装置3,車両内に載置したスマートフォンなどに設置することができる。
【0041】
撮影装置3,加速度計測装置4,位置情報取得装置5は,一つの装置として構成されていてもよいし,別々の装置として構成されていてもよい。たとえば撮影装置3としてドライブレコーダを用いる場合,ドライブレコーダで撮影装置3,加速度計測装置4,位置情報取得装置5を兼用し,それぞれの情報を取得してもよい。
【0042】
制御端末2は,撮影装置3,加速度計測装置4,位置情報取得装置5で取得した各情報に基づいて,各処理を実行する端末であって,たとえばコンピュータが該当する。
【0043】
制御端末2は,画像情報入力受付処理部20と加速度情報入力受付処理部21と位置情報入力受付処理部22と入力情報記憶部23と判定処理部24と表示処理部25と地図情報記憶部26とを有する。
【0044】
画像情報入力受付処理部20は,車両の進行方向の路面を,撮影装置3で撮影した画像情報の入力を受け付ける。入力を受け付けた画像情報は,入力情報記憶部23に記憶させる。
【0045】
加速度情報入力受付処理部21は,加速度計測装置4で計測した加速度情報の入力を受け付ける。入力を受け付けた加速度情報は,入力情報記憶部23に記憶させる。
【0046】
位置情報入力受付処理部22は,位置情報取得装置5で取得した位置情報の入力を受け付ける。入力を受け付けた位置情報は,入力情報記憶部23に記憶させる。
【0047】
入力情報記憶部23は,画像情報入力受付処理部20で入力を受け付けた画像情報,加速度情報入力受付処理部21で入力を受け付けた加速度情報,位置情報入力受付処理部22で入力を受け付けた位置情報を,それぞれ対応づけて記憶する。すなわち,ある画像情報には,その位置情報と加速度の情報とが対応づけられている。また,入力情報記憶部23は,後述する判定処理部24において所定の振動があることを判定したことを示す情報,たとえばフラグなどを,路面の損傷状態の評価なども対応づけて記憶するとよい。
【0048】
判定処理部24は,入力情報記憶部23に記憶した加速度情報に基づいて振動を算出し,算出した振動の値と,あらかじめ記憶している振動の閾値とを比較し,振動強度を判定する。そして振動強度が所定の振動の閾値を充足している場合には,その振動強度に応じた情報,たとえばフラグを入力情報記憶部23に記憶する。ここで判定する振動強度は,相対値となるのでキャリブレーションは不要となる。
【0049】
たとえば振動強度が大,中,小の三段階に区分けされている場合,それぞれの段階ごとの振動強度の閾値が設定されている。そして判定処理部24は,加速度情報を用いて算出した振動の値と,振動の閾値とを比較し,対応する振動強度を判定する。たとえば振動強度を大と判定した場合,当該振動値の対応する加速度情報に対応する位置情報を,入力情報記憶部23から特定し,その位置情報に対応づけて振動強度が大であることを示す情報,たとえばフラグを付する。また,振動の値と,振動の閾値とを比較するほか,ひとつ前または所定時間前の振動の平均値を用いた振動の変位とその変位の閾値とを比較して,対応する振動強度を判定してもよい。なお,当該フラグが付された位置情報における画像情報には,フラグがあることを示すアイコン(所定の振動強度を検出した位置であることを示すマーク)を重畳して表示可能としてもよい。
【0050】
また,判定処理部24は,振動強度が所定の振動の閾値を充足している場合には,その位置に対応付けて,振動強度に応じたアイコンを地図情報記憶部26に記憶する。すなわち,上述で特定した位置情報に基づいて,地図情報上における当該位置に,たとえば振動強度が大であることを示すアイコンを付して,そのアイコンを地図情報に重畳して表示可能なように構成してもよい。
【0051】
表示処理部25は,入力情報記憶部23に記憶した画像情報を再生し,道路の路面の損傷状態の評価の入力を受け付ける。たとえば
図6に示す表示画面100を表示し,画像情報記憶部に記憶した画像情報を再生する。また再生する画像情報が対応する位置情報に基づいて,地図情報記憶部26に記憶する地図情報を表示する。
【0052】
図6の表示画面100には,画像情報表示領域101,地図情報表示領域102,操作部103,損傷状態評価入力部104がある。画像情報表示領域101は,入力情報記憶部23に記憶した画像情報を表示する領域である。地図情報表示領域102は,画像情報表示領域101で表示する画像情報に対応する位置情報に基づいて,その位置情報に対応する地図情報を地図情報記憶部26から抽出して表示する表示領域である。操作部103は,画像情報表示領域101で再生する画像情報の表示操作を行うための入力部であり,たとえば操作ボタンである。操作部103には,画像情報の再生103a,一時停止103b,再生終了103c,フラグ単位のスキップ103d,フレーム単位での再生103eおよび戻し103f,所定距離だけスキップ103g,103hのボタンがある。再生103aは画像情報を再生し,一時停止103bは画像情報の再生を一時停止し,再生終了103cは画像情報の再生を終了する。フラグ単位のスキップ103dは現在表示している位置情報から進行方向に対してもっとも近い位置にあるフラグが付された位置付近の画像情報までスキップして再生し,フレーム単位での再生103eおよび戻し103fはフレーム(コマ)単位で再生および戻しを行い,所定距離だけスキップ103g,103hは,所定距離,たとえば10m,20m単位で画像情報をスキップして再生する。損傷状態評価入力部104には,点検員が画像表示領域に表示された画像情報を目視して確認して損傷状態の評価,たとえば大,中,小などの入力が可能となっている。なお,フラグ単位のスキップは,つぎのフラグにスキップして再生させるほか,二つ先あるいは任意の数だけ先のフラグにスキップして再生させるようにしてもよい。
【0053】
表示処理部25は,表示画面100における損傷状態評価入力部104で入力された損傷状態の評価の入力を受け付け,その位置情報や画像情報などに対応づけて入力情報記憶部23に記憶するとよい。
【0054】
また,
図6の表示画面100における画像情報表示領域101に表示する画像情報には所定の検査区間を示すマーカ105が,画像情報に重畳して表示されていてもよい。これは,道路の路面の点検は,所定の検査区間,たとえば100m,10mごとに行うことが定められており,そのマーカ105を目視することで,その検査区間における損傷状態の評価の入力を行うためである。さらに,検査区間がどれだけの距離残っているのかの距離表示106をしていてもよい。
【0055】
さらに,
図6の表示画面100における地図情報表示領域102に表示する地図情報の位置情報に対応づけてアイコン107がある場合,そのアイコン107を表示してもよい。
【実施例0056】
つぎに本発明の路面点検支援システム1における処理プロセスの一例を
図3および
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0057】
まず,点検対象となる道路を車両で走行して,路面の画像情報などを取得する場合の処理プロセスを
図3のフローチャートを用いて説明する。
【0058】
点検対象となる道路を走行する車両のフロントガラスには,撮影装置3,加速度計測装置4,位置情報計測装置を備えたドライブレコーダを,
図5に示すように設置する。この際に,ドライブレコーダの撮影装置3では,車両から所定距離先,たとえば5m先が中心に写るようにドライブレコーダを設置する。
【0059】
車両は点検対象となる道路を走行する(S100)。この走行時に,ドライブレコーダの撮影装置3は道路の路面を撮影し,加速度計測装置4は加速度情報を計測し,位置情報取得装置5は位置情報を計測する。そして撮影装置3で撮影した画像情報,加速度計測装置4で計測した加速度情報,位置情報取得装置5で取得した位置情報は,それぞれ対応づけておく。
【0060】
制御端末2の画像情報入力受付処理部20は,撮影装置3で撮影した画像情報の入力を受け付け,加速度情報入力受付処理部21は,加速度計測装置4で計測した加速度情報の入力を受け付け,位置情報入力受付処理部22は,位置情報取得装置5で取得した位置情報の入力を受け付け,それぞれ対応づけて入力情報記憶部23に記憶させる(S110)。
【0061】
そして,判定処理部24は,入力情報記憶部23に記憶した加速度情報に基づいて振動の値を算出し(S120),算出した振動の値と,あらかじめ定めた振動強度の閾値とを比較して,振動強度を判定する(S130)。この振動強度も,画像情報,位置情報,加速度情報などに対応付けて入力情報記憶部23に記憶させてもよい。
【0062】
そして振動強度が,あらかじめ定めた条件,たとえば振動強度が大,中,小の三段階に分け,大,中についてはそれぞれフラグを付することを定めていた場合,振動強度が大の位置には,その位置情報に対応づけて振動強度が大であることを示すフラグを,振動強度が中の位置には,振動強度が中であることを示すフラグを,それぞれ入力情報記憶部23に記憶させる(S140,S150)。
【0063】
また判定処理部24は,振動強度が大,中の位置には,その位置情報に基づいて地図情報記憶部26にアイコン107を付する。
【0064】
以上のような処理を実行することで,所定以上の振動を検出した位置に,それを示す情報,たとえばフラグを付することができる。なお,閾値は一つであってもよいし,複数であってもよい。閾値が一つの場合には,振動強度が閾値を超過した場合には,その振動を検出した位置にフラグなどの情報を付する。閾値が複数,たとえば2つの場合には,超過した閾値に応じたフラグ(たとえば大,中など)などの情報を,その振動を検出した位置に付する。
【0065】
つぎに点検員が道路の路面を撮影した画像情報に基づいて目視による点検を行う場合を
図4のフローチャートを用いて説明する。
【0066】
点検員は所定の操作をすることで,表示処理部25は,
図6の表示画面100を表示する。そして点検員が,表示画面100の操作部103の再生ボタン103aを押下することで,表示処理部25は,再生の操作を受け付け(S200),入力画像情報記憶部に記憶した画像情報を抽出し,画像情報表示領域101に画像情報を表示して再生する(S210,S220)。この際に,画像情報表示領域101に表示する画像情報に対応する位置情報に基づいて,その位置情報が対応する地図情報を地図情報記憶部26から抽出し,表示画面100の地図情報表示領域102に表示させる。また地図情報表示領域102に表示している範囲に,振動強度が所定の閾値を超過したことを示すフラグの位置が含まれている場合,地図情報に重畳してアイコン107を表示してもよい。
【0067】
点検員は,画像情報表示領域101に表示される画像情報を逐次,目視で確認をするが,そのまま再生をしただけでは膨大な時間を要する。そこで,表示画面100の操作部103のフラグ単位でのスキップボタン103dを押下する。この操作を表示処理部25で受け付けると(S230),表示処理部25は,現在,画像情報表示領域101で表示する画像情報の対応する位置情報から進行方向に対してもっとも近い,所定の振動強度を示すフラグがある位置情報を特定する。たとえば振動強度が中と大の位置までスキップをする場合,現在,画像情報表示領域101で表示する画像情報の対応する位置情報から進行方向に対して,もっとも近い,振動強度が中または大のフラグがある位置情報を特定する。そしてその位置情報またはその位置情報から所定距離だけ手前,たとえば振動強度が中または大の位置情報の10m手間の位置情報を特定し,特定した位置情報に対応する画像情報を画像情報表示領域101に表示させる(S240)。フラグがある位置情報から所定距離だけ手前の距離としては,撮影装置3で車両から進行方向を写す際に,撮影装置3とその画像情報の中心となる位置の間の距離よりも手前であることが好ましい。たとえば,撮影装置3が撮影している画像情報の中心が,撮影装置3から5m先を写す場合には,フラグがある位置情報から5m以上手前の距離となり,たとえば10m手前の位置から画像情報を画像情報表示領域101に表示して再生させる。
【0068】
また,大きな損傷のみを確認したい場合には,振動強度が大の位置までスキップすることを選択することで,現在,画像情報表示領域101で表示する画像情報の対応する位置情報から進行方向に対して,もっとも近い,振動強度が大のフラグがある位置情報を特定する。そしてその位置情報若しくはその位置情報から所定距離だけ手前,たとえば振動強度が大の位置情報の10m手間の位置情報を特定し,特定した位置情報に対応する画像情報を画像情報表示領域101に表示して再生させる(S240)。
【0069】
なお,表示処理部25は,当該特定した位置情報に基づいて,その位置情報が対応する地図情報を地図情報記憶部26から抽出し,表示画面100の地図表示領域102に表示させるとよい。
【0070】
振動強度が一定以上であることを検出している場合,そこに損傷がある可能性が高い。そこで,点検員は,画像情報表示領域101に表示される画像情報を目視し,当該検査区間における損傷状態の評価を,損傷状態評価入力部104から入力をする(S250)。そして入力を受け付けた損傷状態の評価を,表示している画像情報,位置情報などに対応づけて前記入力情報記憶部23に記憶させる。
【0071】
表示処理部25は,検査区間ごとに,マーカ105を画像情報表示領域101に重畳して表示させることに加え,検査区間の残り距離を表示画面100に表示させてもよい。
【0072】
このように点検員はフラグ単位でのスキップを繰り返すことで,路面に損傷がある箇所を重点的に目視で確認することができるので,その作業負担は軽減する。また,損傷は目視で行うので,学習用教師データの作成なども不要となる。
【0073】
なお,表示処理部25は,現在,画像情報表示領域101で表示する画像情報の対応する位置情報から進行方向に対してもっとも近い,所定の振動強度を示すフラグがある位置情報若しくはその位置情報から所定距離だけ手前の位置情報から,あらかじめ定めた距離間隔若しくは時間間隔までを重点点検範囲として,その区間の画像情報を順次,画像情報表示領域101に表示させてもよい。これによって,点検員は,損傷の可能性がある始点の位置と終点の位置とを意識せずとも目視による確認作業を行うことができる。
上述の実施例では加速度に基づいて振動を算出し,振動強度を判定したが,振動値を直接計測してもよい。この場合,加速度計測装置4は振動計測装置,加速度情報は振動値と読み替えて処理を実行する。また加速度情報に基づいて振動値を算出する処理は実行しなくてもよい。