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特開2022-44375無電源車両及び無電源車両用動力発生装置
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  • 特開-無電源車両及び無電源車両用動力発生装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044375
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】無電源車両及び無電源車両用動力発生装置
(51)【国際特許分類】
   A63H 17/26 20060101AFI20220310BHJP
   A63H 17/36 20060101ALI20220310BHJP
   A63H 17/38 20060101ALI20220310BHJP
   B60B 33/00 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
A63H17/26 B
A63H17/36
A63H17/38
A63H17/26 C
B60B33/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020149966
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】520345302
【氏名又は名称】小沢 雄太
(74)【代理人】
【識別番号】100197734
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小沢 雄太
【テーマコード(参考)】
2C150
【Fターム(参考)】
2C150CA08
2C150DA16
2C150DJ08
2C150EA02
2C150EA03
2C150EA15
2C150EB36
(57)【要約】
【課題】一般に広く知られているキャスターを用いて、電源を備えていないにも関わらず、ハンドルを左右に回すだけで簡単に前進方向への動力を発生させて走行することができる無電源車両及びこの無電源車両用の動力発生装置を提供することを目的とする。
【解決手段】無電源車両用動力発生装置であって、取付座と、旋回部と、フォーク部と、車輪部とを有し、前記旋回部は前記取付座と前記フォーク部との間に形成され、前記フォーク部が前記車輪部を挟持するよう形成された旋回キャスターと、該旋回キャスターを基台に取り付け可能な動力発生部とを備え、該動力発生部は、前記旋回キャスターを後方から前方に俯角を有するように前記基台に取付可能に形成されていることを特徴とする。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付座と、旋回部と、フォーク部と、車輪部とを有し、前記旋回部は前記取付座と前記フォーク部との間に形成され、前記フォーク部が前記車輪部を挟持するよう形成された旋回キャスターと、
該旋回キャスターを基台に取り付け可能な動力発生部とを備え、
該動力発生部は、前記旋回キャスターを後方から前方に俯角を有するように前記基台に取付可能に形成されている
ことを特徴とする無電源車両用動力発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無電源車両用動力発生装置を取り付けたことを特徴とする無電源車両。
【請求項3】
前記無電源車両用動力発生装置が複数個取り付けられたことを特徴とする請求項2に記載の無電源車両。
【請求項4】
請求項1に記載の無電源車両用動力発生装置が、少なくとも3個前輪として設けられ、かつ、少なくとも2個後輪として設けられている
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の無電源車両。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源不要で前進駆動することができる無電源車両及びこの無電源車両用の動力発生装置に関し、特に、キャスターを備えた無電源車両玩具及びこの無電源車両玩具の動力発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、キャスターは周知技術であり、このキャスターを備えた旅行かばん(スーツケースともいう。)、台車、無電源の車両玩具等も広く知られている。キャスターは、一般的に、金具部と車輪部とから構成され、金具部は、キャスターを上部の基台下部に水平に取り付けられる取付座と、車輪部を挟持するフォーク部と、フォーク部と取付座との間に設けられた旋回部とを備え、車輪部はフォーク部の両先端にシャフトで軸支されている。旋回部は、旋回軸及びベアリングを含んで構成され、車輪と地面との交点が、旋回軸芯を中心に地面上で円の軌跡を描くように、回動可能に構成されている。この円の中心は、取付座の中心でもある。また、フォーク部は、取付座の中心から鉛直方向に設けられたものと、取付座の中心から斜め下方に傾斜して設けられたものがある。取付座の基台下部への取付方式としては、プレート式、ねじ込み式、差し込み式等が知られている。
【0003】
キャスターに関しては、数多く特許出願されており、例えば、特許文献1には「鞄の本体に簡単に付けることができて交換も簡単な鞄用の一軸キャスター」(段落「0001」参照。)に関し、「鞄用キャスターの強度を低下させることなく、低コストで簡単に取り替えられるようにすること」(段落「0011」参照。)を目的として、「鞄の底に固定するベース部と、円環状の抜止ワッシャと、上端の嵌合部と中央の胴体部と下端の鍔部からなる旋回軸と、潤滑穴が円周状に並んで開いている円環状の潤滑ワッシャと、車軸とリムとタイヤで構成される車輪と、車輪を回転自在に保持するフォーク部とを具備する一軸キャスターであって、前記ベース部は、前記抜止ワッシャを固定して収容する上側凹部と、前記旋回軸を固定して保持する旋回軸保持部と、前記フォーク部の荷重を、前記潤滑ワッシャを介して支持する下側凹部とを備え、前記フォーク部は、前記潤滑ワッシャを収容する頭頂凹部と、前記旋回軸に対して自由に回転できる旋回軸受部と、前記車軸を回転自在に保持する車輪支持部とを備え、前記旋回軸の嵌合部は、前記抜止ワッシャの穴に嵌合していることを特徴とする一軸キャスター」(「請求項1」参照。)。が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、「運搬車や手押し車や車いす、台車、家具などに取付ける旋回キャスタ」(段落「0001」参照。)に関し、「(イ)旋回キャスタは、正面から見て、旋回中心線とタイヤの接地点が真っ直ぐ垂下した位置にあり左右対称だったため、進んでいた方向から正反対の方向へ、真っ直ぐ後退する時、タイヤがくるりと向きを変えるが、そのタイミングや回転方向がさだまらないので、それを使用した運搬車や台車などは、不安定な動きをして、転倒や荷崩れをおこす心配があった。(ロ)旋回キャスタ付きの家具や事務いす、車いすなど、カウンター下や事務机下、作業机からそれを引き出し、ふたたび元に戻す際に、同じ位置に真っ直ぐ戻らず煩わしさを感じることが、しばしばあった」(段落「0003」参照。)という従来技術の問題点を解決することを目的として、「取付台と、取付台に旋回可能に設けられた旋回板と、旋回板に取付けた旋回中心点から進行逆方向に偏芯した位置に軸受けを有する軸受け部材と、軸受けに軸を介して設けられたタイヤよりなり、前記軸受け部材とタイヤは、旋回板の中心線からさらに横方向に偏芯した位置になるよう設けられたものであることを特徴とする偏芯旋回キャスタ」(「請求項1」参照。)が記載されている。
【0005】
ところで、特許文献1、2に記載されたキャスターが取付けられた鞄や運搬車等は、キャスターが左右自在に回転することにより、鞄や運搬車等を左右前後に容易に方向転換することができるが、特許文献1、2に記載のキャスターが取付けられた鞄や運搬車等には、電源が設けられておらず、鞄や運搬車を動かすためには、人や機械で前方から牽引するか、または、人や機械で後方から押す必要がある。
【0006】
ここで、前方からの牽引や、後方から押すことなく、基台に取付けられたハンドルを左右交互に回すことで、車体自体が左右に振れながらも前方向に前進する動力を発生することができる走行玩具(無電源車両玩具)が知られている。
【0007】
このような走行玩具としては、特許文献3に「プラズマカーは、・・・、大体ハンドルを左右に回すだけで前後に移動する」(段落「0002」参照。)と記載され、このような動作をする「プラズマカー」が市販されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014-015199号公報
【特許文献2】特開2005-206125号公報
【特許文献3】実用新案登録第3196056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3に記載の「プラズマカー」は、車輪部の構成がキャスターではなく、また、特許文献3に記載の発明は、「プラズマカーの引きロープ伸縮装置に関する」(段落「0002」、図参照。)ものであり、特許文献3には、「プラズマカー」の車輪の具体的な構造、動力、動作については、何ら開示されていない。
【0010】
このため、本発明では、一般に広く知られているキャスターを用いて、無電源、つまり、電源を備えていないにも関わらず、ハンドルを左右に回すだけで簡単に前進方向への動力を発生させて走行することができる無電源車両及びこの無電源車両用の動力発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、無電源車両用動力発生装置であって、取付座と、旋回部と、フォーク部と、車輪部とを有し、前記旋回部は前記取付座と前記フォーク部との間に形成され、前記フォーク部が前記車輪部を挟持するよう形成された旋回キャスターと、該旋回キャスターを基台に取り付け可能な動力発生部とを備え、該動力発生部は、前記旋回キャスターを後方から前方に俯角を有するように前記基台に取付可能に形成されていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、無電源車両であって、請求項1に記載の無電源車両用動力発生装置を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の無電源車両であって、前記無電源車両用動力発生装置が複数個取り付けられたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2又は請求項3に記載の無電源車両であって、前記無電源車両用動力発生装置が、少なくとも3個前輪として設けられ、かつ、少なくとも2個後輪として設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、一般的なキャスターを用いて、無電源、つまり、電源を備えていないにも関わらず、ハンドルを左右に回すだけで簡単に前進駆動するための動力を発生させて走行することができる無電源車両及びこの無電源車両用の動力発生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来技術における旋回キャスターの構成及び基台への取付構造を説明する側面図である。
図2】本発明の第一実施形態における旋回キャスターの構成及び基台への取付構造を説明する側面図である。
図3】本発明の第二実施形態における無電源車両玩具の側面図である。
図4】本発明の第二実施形態における無電源車両玩具の底面図である。
図5】本発明の第二実施形態における無電源車両玩具の動作を説明する図である。
図6】本発明の第二実施形態における無電源車両玩具の動作を説明する図である
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の無電源車両用動力発生装置の第一実施形態について図1及び図2を参照しながら説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0018】
(第一実施形態)
[旋回キャスターの一般的な構成と基台への取付構造]
まず、本願発明を説明する前に、一般的なキャスターの構成及びキャスターの基台への取付構造について説明する。ここで、「基台」とは、キャスターが取り付けられる鞄、台車、運搬車、車両玩具等の総称、又は、それらのキャスター取付け部を示すものとする。なお、キャスターについては、種々のタイプが市販されているが、基本的な構造は同じであるので、本実施形態では、そのうちの一例について説明する。図1は、従来のプレート式の旋回キャスター100及び旋回キャスター100の基台101への取付構造を示す図であり、図1(a)は、旋回キャスター100の進行方向を「前」とするときの右側面図であり、図1(b)は、図1(a)において、旋回キャスター100が、180度旋回したときの状態を示す図であり、図1(c)は、旋回キャスター100の回転動作を説明する図であり、図1(d)は、旋回キャスター100の動作特性を説明する図である。
【0019】
旋回キャスター100は、プレート式の旋回キャスターであり、周知の技術である。例えば、台車等の基台101下部に、不図示の螺着手段等で取り付けられる。旋回キャスター100は、金具部102と車輪部103から構成されている。金具部102は、旋回キャスター100を基台101に取り付けるための略平板状の取付座104と、車輪部103を挟持するフォーク部105と、フォーク部105の両側面に形成された軸受に支承されたシャフト106を備えている。取付座104の下部には旋回部104aが凸設され、旋回部104aとフォーク部105の上端部との間隙部には不図示のボールベアリングが配設され、また、旋回部104aの中心部には、旋回部104aとフォーク部105の上端部とに軸支された旋回軸104b(不図示)とを備えている。これらの構造により、フォーク部105は車輪部103とともに、旋回軸104bを中心にして、旋回軸104bと略直角に交差する水平面内を旋回することができる。車輪部103は、シャフト106に軸支されたホイール107と、ホイール107に還装されたタイヤ108とを備えている。
【0020】
本従来技術の旋回キャスター100は、フォーク部105が取付座104に対して鉛直方向ではなく、斜め後方に向かって取り付けられているが、図1(c)に示すように、転舵軸STAと地面GLとの交点SGPと、タイヤ18の接地点TGPとの距離をトレールTRといい、トレールTRの距離が長い(トレールTRがプラスである)ほど、キャスターを回転させたときの復元力が大きくなるので、キャスターの直進性が良くなり、逆に、操舵性は悪くなることが知られている。なお、転舵軸とは、車輪部103が向きを変える時の回転軸のことである。本実施形態の従来の旋回キャスター100の場合、転舵軸STAは、取付座104に設けられたボールベアリングの回転中心軸(ここでは、旋回軸104bと同じである。)であり、転舵軸STAは、地面GLに対して垂直になっている。これにより、転舵軸STAと地面GLの交点SGPは、タイヤ108の地面GLとの交点TGPよりも前方にあり、旋回キャスター100は、前方向に安定に進むことができる。
【0021】
上記のような構成において、例えば、基台101が台車の場合には、台車を前方向に押す(又は前方から牽引する)ことで台車は直進し、また、左右に押す(又は左右から牽引する)ことで台車は左右に進み、さらに、後方に押す(又は後方から牽引する)ことで後方に進む。このとき、台車が直進しているときは、図1(a)のように、フォーク部105が斜め後方に向いた状態で直進を維持するが、左右方向、又は、後方に方向転換する際には、車輪部103がフォーク部105とともに瞬時に180度旋回して、台車は左右方向、又は、後方にスムーズに進行することができる。このように、台車(基台101)の向きを変えると、トレールTRがプラスになるように旋回キャスター100が瞬時に回転して、進行方向に対して安定した直進性を持たせることができるのは、転舵軸STAが地面に対して垂直である、つまり、旋回部104aは、水平面内を旋回し、結果的に、フォーク部105に挟持された車輪部103も、水平面内を旋回するからである。タイヤ108の地面との交点TGAは、地面(水平面)内において、転舵軸STAと地面との交点SGPを中心点とし、トレールTRの距離を半径とする円の円周を回転することになるので、常に、直進性のよい方向へ旋回キャスター100の向きを瞬時に安定的に回転させることができるのである。
【0022】
[本願発明のキャスターの構成と基台への取付構造]
次に、本願発明のキャスターの構成及びキャスターの基台への取付構造について説明する。本願発明の旋回キャスター10は、プレート式の旋回キャスターであり、従来技術の旋回キャスター100と同様の構成を備えている。図2は、本願発明の旋回キャスター10及び旋回キャスター10の基台11への取付構造を示す図であり、図2(a)は、旋回キャスター10の進行方向を「前」とするときの右側面図であり、図2(b)は、図2(a)において、旋回キャスター100が、180度旋回したときの状態を示す図であり、図2(c)および図2(d)は、旋回キャスター10の回転動作を説明する図である。
【0023】
旋回キャスター10は、プレート式の旋回キャスターであり、従来技術の旋回キャスター100と同じ構造の部分は、周知の技術である。例えば、走行玩具等の基台11下部に、動力発生部材20を介して、不図示の螺着手段等で取り付けられる。旋回キャスター10は、金具部12と車輪部13と動力発生部材20から構成されている。金具部12は、旋回キャスター10を、動力発生部材20を介して、基台11に取り付けるための略平板状の取付座14と、車輪部13を挟持するフォーク部15と、フォーク部15の両側面の軸受に支承されたシャフト16を備えている。取付座14の下部には旋回部14aが凸設され、旋回部14aとフォーク部15の上端部との間隙部には不図示のボールベアリングが配設され、また、旋回部14aの中心部には、旋回部14aとフォーク部15の上端部とに軸支された旋回軸14b(不図示)とを備えている。
【0024】
本願発明が従来技術と異なり、格段の進歩性を有する部分は、基台11と取付座14との間に動力発生部材20を備えていることである。動力発生部材20は、外観的には楔形状をなし、図1のように、側面視では、下方に斜辺を有し、基台11と前方で直角をなす、直角三角形の形状を備えている。したがって、旋回キャスター10を動力発生部材20を介して基台11下部に取り付けた状態では、従来の旋回キャスター100のように取付座104が水平に基台101に取り付けられるのではなく、取付座14は、後方から前方を見て俯角θを有するように、基台11に取り付けられている。車輪部13は、シャフト16に軸支されたホイール17と、ホイール17に還装されたタイヤ18とを備えている。
【0025】
これらの構造により、フォーク部15は車輪部13とともに、旋回軸14bを中心にして、旋回軸14bと略直角に交差する面内を旋回することができるのであるが、取付座14が水平方向に対して前方に俯角θを有した傾斜面を有している、つまり、旋回軸14bも、鉛直方向に対して前方に傾斜した構成であるので、車輪部13は、フォーク部15とともに、水平方向に俯角θだけ傾斜した傾斜面上を旋回することになる。
【0026】
ここで、従来技術の旋回キャスター100は、水平面内を旋回するだけであるので、基台101を左右に回転させても、旋回キャスター100は、旋回軸104bを中心に回転するだけであり、基台101を前方へ駆動するための動力は全く発生しない。しかしながら、本願発明においては、旋回キャスター10を、図2(a)に示す前進状態から、図2(b)に示す後進状態に180度回転させると、地面の水平位置は変わらないので、地面に対して基台11が持ち上がることになる。この基台11が持ち上がった分は、そのまま重力として旋回キャスター10に加わることになり、もともと旋回キャスター10の特性として有する復元力にこの重力が作用して、旋回キャスター10を前方向に駆動する動力が発生するものと考えられる。
【0027】
図2(d)は、基台11(取付座14、旋回部14a)を基準にして、旋回キャスター10の回転動作を分かりやすく説明するための模擬図である。図2(d)に示す要に、旋回キャスター10を回転させると、最大俯角θで決定される上昇距離t分だけ旋回キャスター10が垂直方向に変動することが分かる。実際には、タイヤ18の設置面は変動しないので、図2(c)に示すように、基台11が上昇距離t分だけ上下する。また、基台11を左右に交互に回転させたときに、旋回キャスター10が180度まで回転する前に直進方向に復元し、前進する。なお、旋回キャスター10のトレールTRについては、原理的には旋回キャスター100と同様であるので、説明は省略する。
【0028】
このように、本願発明においては、基台11に対して、前方向に俯角θを形成するように、基台11と旋回キャスター10との間に動力発生部材20を備えたことにより、従来技術の旋回キャスター10では決して実現することができず、また、従来技術のキャスター(旋回キャスターを含む。)や、従来技術のキャスターを利用した技術、その他の公知技術からは、当業者といえども容易に想到することができなかった前方向に進むための動力を、電源無しで発生することができた。
【0029】
なお、上記の本願発明の説明では、旋回キャスター10と動力発生部材20を別々の構成としていたが、上記旋回キャスター10と動力発生部材20とを含めた構成を一つの構成に含め、本願発明の旋回キャスター10として構成してもよい。
【0030】
(第二実施形態)
[車両玩具への適用例]
次に、第二実施形態として、本願発明の旋回キャスター10を無電源車両玩具50に適用した例を、図3図6を参照しながら説明する。無電源車両玩具50は、本願発明の無電源車両の一例として説明するものであり、主として、略箱形の車体フレーム51、車体フレーム51の前部に設けられた転蛇ハンドル52、車体フレーム51の略中央部から後部に亘って設けられた座席部53、3つの前輪用旋回キャスター10a,10b,10c、2つの後輪用旋回キャスター10d、10e、2つの補助旋回キャスター10f、10g、前輪用キャスター10a,10b,10cがそれぞれ動力発生部材20a,20b,20cを介して取り付けられた円盤状の回転板54、転舵ハンドル52の中心と回転板54の中心とを連結する転舵軸55と、補助旋回キャスター10f,10gを車体フレーム51に固定する前部固定台56と、後輪用キャスター10d,10eが取付けられた傾斜板57を車体フレーム51に固定する後部固定台58とを備えている。
【0031】
転舵ハンドル52は、棒状、環状等、特に限定されず、連結された転舵軸55を介して、回転板54を左右自在に回転(「回動」ともいう。)することができるように構成されていればよい。本実施形態の転舵ハンドル52は、自家用自動車等で一般に用いられているような環状のハンドルを用いている。
【0032】
転舵軸55は、棒状に形成されており、上端部が転舵ハンドル52の中心部に螺着されており、下端部が、回転板54の中心部に螺着されている。また、転舵軸55は、車体フレーム51に固定されたガイド筒59に挿通されており、ガイド筒59内で回動するように構成されている。
【0033】
回転板54は、所定の厚さを有する円板で構成され、中心部には転舵軸54の下端部が連結されている。回転板54の形状は円板に特定されず、矩形でもよいが、好適には円板がよい。転舵ハンドル52を左右に回転させると、連結された転舵軸54を介して、転舵ハンドル52の回転に連動して回転板54も左右に回転するように構成されている。無電源車両玩具50は、一人乗りを想定しているので、回転板54は、車体フレーム51の中央位置に配設されている。
【0034】
回転板54下面の前方には、進行方向に交差するラインの延長上に、前輪用旋回キャスター10a,10bが、それぞれ、動力発生部材20a,20bを介して、取り付けられている。また、回転板54下面の後方には、進行方向のラインの延長上に、前輪用旋回キャスター10cが、動力発生部材20cを介して、取り付けられている。前輪用旋回キャスター10a,10b,10cは、上述した、旋回キャスター10と構成、機能が同一であり、また、動力発生部材20a,20b,20cは、上述した、動力発生部材20と構成、機能が同一であるので、ここでは、詳細説明は省略する。前輪用旋回キャスター10a,10b,10cは、好適には、回転板54の中心から略等距離に配設されている。本実施形態では、前輪用旋回キャスター10a,10b,10cは、略正三角形の各頂点に配設された構成となっている。また、前輪用旋回キャスター10a,10b,10cは、トレールTRがプラスになるように、取り付けられている。
【0035】
傾斜板57には、進行方向に交差するラインの延長上に、後輪用キャスター10d,10eが、トレールTRがプラスになるように取り付けられている。後輪用旋回キャスター10d,10eは、好適には、回転板54の中心から略等距離に配設される。傾斜板57は、少なくとも後輪用旋回キャスター10d,10eが取り付けられる下面が、動力発生部材20と同様に水平方向に対して前方に俯角θを有した傾斜面を有している。つまり、傾斜板20が、動力発生部材20と同様の作用・機能・効果を備えている。ただし、本実施形態においては、傾斜板57は、水平方向には回転せずに、後部固定台58に固定されている。一方、傾斜板57は、前後方向に回転するように構成されている。この傾斜板58の回転手段としては、不図示であるが、例えば、車体フレーム51の前方下部にペダルを設け、このペダルと、前後方向に回転可能に軸支された傾斜板57とを、ワイヤーロープで連結し、搭乗者が走行中にペダルを踏むことで、連結されたワイヤーロープを介して傾斜板57が前後方向に回転するように構成されている。そして、この傾斜板57の回転角度に応じて、車体フレーム51の後部の左右へのドリフト量を調整することができる。
【0036】
補助旋回キャスター10f、10gは、従来技術の旋回キャスター100と同様の構成であり、水平方向に旋回するように前部固定台56に取付けられており、前部固定台56は、車体フレーム51の前端部の所定位置に取り付けられている。
【0037】
以上のように構成された車両玩具50の動作について、主に図5図6を参照しながら、以下、説明する。
図5に示すように、いま、図面左側を進行方向とすると、図5右側に示す状態、つまり、前輪旋回キャスター10a,10b,10cのトレールTRがプラスになる状態が、安定して直進できる状態である。この状態から、搭乗者(不図示)が転舵ハンドル52を左回転させると、転舵軸55を介して、回転板54が左回転する。このとき、同時に前輪旋回キャスター10a,10bは、左回転し,前輪旋回キャスター10cは、右回転しようとする。図5の左側の状態は、回転板54を直進状態から約45度左回転させたときの状態であり、回転板54が、距離tだけ上昇し、前輪旋回キャスター10a,10b,10cに重力が加重される、この重力の加重とキャスターの復元力により、キャスターに前進方向に動力が発生する。
【0038】
この状態で、次に、搭乗者が転舵ハンドル52を右回転させる。そうすると、左回転で上述したのと逆の作用により、転舵軸55を介して、回転板54が右回転する。このとき、同時に前輪旋回キャスター10a,10bは、右回転し、前輪旋回キャスター10cは、左回転しようとする。そうすると、不図示ではあるが、左回転の場合と同様に、回転板54が、距離tだけ上昇し、前輪旋回キャスター10a,10b,10cに重力が加重される、この重力の加重とキャスターの復元力により、キャスターに前進方向に動力が発生する。
【0039】
以上説明した左回転・右回転を交互に繰り返し行うことで、つまり、搭乗者が転舵ハンドル52を左右に交互に繰り返し回転させることで、無電源車両玩具50は、左右に振れながらも、前進方向に発生した動力により、電源がなくても安定に走行することができる。
【0040】
なお、本願出願人が、本実施形態による無電源車両玩具50を作成して試験運転したところ、転舵ハンドル52を左回転させた場合には、前輪用旋回キャスター10bを中心点とした円の円周上を前輪用旋回キャスター10aが移動するように動作し、前進方向の前輪用旋回キャスター10bの移動距離より、前進方向のも前輪用旋回キャスター10aの移動距離の方が長くなり、また、転舵ハンドル52を右回転させた場合には、前輪用旋回キャスター10aを中心点とした円の円周上を前輪用旋回キャスター10bが移動するように動作し、前進方向の前輪用旋回キャスター10aの移動距離より、前進方向のも前輪用旋回キャスター10bの移動距離の方が長くなることを確認した。このそれぞれの移動距離の差が、前進方向への動力を発生させることになっている。
【0041】
以上、無電源車両玩具についての適用を説明した。なお、鞄、台車、運搬車、並びに車椅子等にも適用できるが、鞄、台車、運搬車等は、前方から牽引する、又は、後方から押すことが前提となるので、人が乗車して操縦することを前提にすれば、車両玩具もしくは車椅子への適用が好適であると考えられる。
【符号の説明】
【0042】
10,100 旋回キャスター
10a,10b,10c 前輪用旋回キャスター
10d、10e 後輪用旋回キャスター
10f、10g 補助旋回キャスター
11 基台
12 金具部
13 車輪部
14 取付座
14a 旋回部
14b 旋回軸
15 フォーク部
16 シャフト
17 ホイール
18 タイヤ
20 動力発生部材
20a,20b,20c 動力発生部材
50 走行玩具
51 車体フレーム
52 転舵ハンドル
53 座席部
54 回転板
55 転舵軸
56 前部固定台
57 傾斜板
58 後部固定台
101 基台
102 金具部
103 車輪部
104 取付座
104a 旋回部
104b 旋回軸
105 フォーク部
106 シャフト
107 ホイール
108 タイヤ
GL 地面
SGP 転舵軸STAと地面との交点
TGP タイヤ18と地面との交点
TR トレール
t 上昇距離


図1
図2
図3
図4
図5
図6