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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044419
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】生物処理装置及び生物処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/12 20060101AFI20220310BHJP
   C02F 3/10 20060101ALI20220310BHJP
   C02F 1/20 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
C02F3/12 N
C02F3/10 A
C02F1/20 A
C02F3/12 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150034
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】596136316
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】澤田 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】江田 庸宏
(72)【発明者】
【氏名】森川 政幸
【テーマコード(参考)】
4D003
4D028
4D037
【Fターム(参考)】
4D003AA12
4D003AB02
4D003BA02
4D003CA02
4D003EA19
4D003EA28
4D028AA08
4D028BA00
4D028BB02
4D037AA11
4D037AB18
4D037BA23
4D037BB01
4D037BB05
4D037CA07
(57)【要約】
【課題】メタンを10体積ppm以上含む被処理水に対して優れた硝化性能を発揮できる生物処理装置及び生物処理方法の提供。
【解決手段】前曝気槽10及び生物硝化槽20を備え、前曝気槽10及び生物硝化槽20においてメタンを10体積ppm以上含む被処理水を処理する生物処理装置であって、前曝気槽10における被処理水の滞留時間を0.01~0.5時間に制御する制御機構を有する、生物処理装置1及び生物処理装置1を用いる生物処理方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前曝気槽及び生物硝化槽を備え、前記前曝気槽及び前記生物硝化槽においてメタンを10体積ppm以上含む被処理水を処理する生物処理装置であって、
前記前曝気槽における前記被処理水の滞留時間を0.01~0.5時間に制御する制御機構を有する、生物処理装置。
【請求項2】
前記前曝気槽は曝気装置を有し、
前記曝気装置は、前記前曝気槽における曝気量が、槽あたり20m/m/h以上になるように制御する、請求項1に記載の生物処理装置。
【請求項3】
前記生物硝化槽は2槽以上の生物硝化槽が直列に接続されている、請求項1又は2に記載の生物処理装置。
【請求項4】
前記生物硝化槽は担体を有し、前記担体の嵩体積が前記生物硝化槽の有効容積の60体積%未満である、請求項1~3のいずれか1項に記載の生物処理装置。
【請求項5】
前記担体がスポンジ状担体である、請求項4に記載の生物処理装置。
【請求項6】
前記担体が一辺の長さが3~10mmの角型担体である、請求項4又は5に記載の生物処理装置。
【請求項7】
前曝気槽を用いる前曝気処理及び生物硝化槽を用いる生物硝化処理を含み、前記前曝気処理に次いで前記生物硝化処理を行うことによりメタンを10体積ppm以上含む被処理水を処理する生物処理方法であって、
前記前曝気処理において、前記前曝気槽における前記被処理水の滞留時間を0.01~0.5時間に制御する、生物処理方法。
【請求項8】
前記前曝気槽は曝気装置を有し、
前記前曝気処理において、前記曝気装置は、前記前曝気槽における曝気量が、槽あたり20m/m/h以上になるように制御する、請求項7に記載の生物処理方法。
【請求項9】
前記生物硝化槽は2槽以上の生物硝化槽が直列に接続され、前記生物硝化処理が前記2槽以上の生物硝化槽を用いて行われる、請求項7又は8に記載の生物処理方法。
【請求項10】
前記生物硝化槽は担体を有し、前記担体の嵩体積が前記生物硝化槽の有効容積の60体積%未満であり、
前記生物硝化処理は、前記被処理水と前記担体とを接触させた状態で行われる、請求項7~9のいずれか1項に記載の生物処理方法。
【請求項11】
前記担体がスポンジ状担体である、請求項10に記載の生物処理方法。
【請求項12】
前記担体が一辺の長さが3~10mmの角型担体である、請求項10又は11に記載の生物処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物処理装置及び生物処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地下水はアンモニア態窒素を含む場合がある。飲料水中に含まれるアンモニア態窒素は、有機物が腐敗・分解する初期の段階で発生するため、汚染指標として扱われてきた。しかし、水質基準に関する省令(昭和53年厚生省令第56号)から削除され、現在の水道水質基準51項目(水質基準に関する省令(平成15年厚生労働省令第101号、平成26年改正))には該当していない。
地下水を飲用として用いる場合、塩素消毒が必須である。地下水がアンモニア態窒素を含むと、アンモニア態窒素に対して8倍から10倍の塩素を消費するだけでなく、塩素濃度管理が難しいことから、塩素消毒の前工程でアンモニア態窒素を除去する処理が一般的となっている。
アンモニア態窒素の除去方法については、アンモニアと塩素との反応から、アンモニア態窒素濃度に対して8倍から10倍以上の塩素を添加して、アンモニア態窒素を窒素ガスとして除去するブレークポイント法が一般的である。しかし、多量の塩素を必要として、処理コストが高いという欠点がある。また、アンモニア態窒素の濃度が高い地下水にはフミン質等の天然有機物の濃度が高いことから、これらの天然有機物と塩素との反応により生成されるトリハロメタン等の消毒副生成物の濃度が高くなるリスクが大きい。
また、物理化学的なアンモニア態窒素の処理方法としては、イオン交換樹脂による除去法がある。最もコストが安い方法としては、生物学的硝化(アンモニア態窒素を除去する方法ではないが生物学的酸化反応によりアンモニア態窒素を硝酸態窒素に変換する反応)又は硝化脱窒方法がある。
【0003】
上水処理の分野で生物学的硝化(すなわち生物硝化)が生じることが知られたのは、古くは緩速ろ過の時代からである。緩速ろ過は、珪砂をろ材としてろ過速度4~5m/日の緩やかな速度で下降流ろ過する方式で、1829年英国で考案され、ヨーロッパをはじめとして全世界に普及した。
日本で初めて近代上水施設が導入された京都市の蹴上浄水場では、英国式緩速ろ過装置が採用された。この緩速ろ過装置は、ろ材表面に付着生息する微生物や藻類が原水中の懸濁物や病原菌を含む微生物を付着させてろ過する方式であり、シンプルかつ高性能なろ過装置であった。さらに、原水中にアンモニアが存在すると、硝化細菌が生育し、ろ過作用に加えて生物硝化反応も同時に生じ、より安定的な浄水を生産できるというメリットもあった。しかし、アンモニア態窒素が2mg/Lもの高濃度で存在すると、溶存酸素(DO)を約8mg/L消費し、原水中の溶存酸素の全量を消費してしまい、処理水を嫌気化させて腐敗化させ、不衛生な浄水となるデメリットもあった。戦後の高度化社会となって公害が生じる中、河川中のアンモニア態窒素が2mg/Lを超える環境となり、緩速ろ過が米国式急速ろ過に置き換わった歴史がある。
【0004】
しかし、酸素供給手段と硝化細菌を保持する手段とを講ずれば、安価に生物硝化できることから、各種の生物硝化装置が考案され実用化されている。
特許文献1には、ろ材が粒状ゼオライトであり、酸素供給手段がろ層上部の曝気手段である生物硝化装置が記載されている。
非特許文献1には、ろ材がアンスラサイトと珪砂であり、酸素供給手段が原水貯槽における曝気手段である生物硝化装置が記載されている。
非特許文献2には、ろ材がアンスラサイトと珪砂であり、酸素供給手段がろ層上部の気液エゼクターによる気液接触槽である生物硝化装置が記載されている。
非特許文献3には、ろ材が直径5~7mmの球状繊維ろ材であり、酸素供給手段として充填材式気曝装置を原水貯槽に設けている。
非特許文献4には、ろ材が特殊焼結多孔ろ材であり、酸素供給手段として充填材式気曝装置を原水貯槽に設けている。
なお、特許文献1及び非特許文献1~3に記載された生物硝化装置は下降流ろ過装置であり、非特許文献4に記載された生物硝化装置は上向流ろ過装置である。
上記のような公知例では、装置新設時に積極的な硝化細菌の接種又は硝化細菌を付着したろ材の添加は行われておらず、試運転時に原水及び大気中に浮遊存在する硝化細菌がろ材表面で付着増殖するのを待つものであり、生物硝化処理が可能になるまで、概ね1ヵ月を要するものであった。
【0005】
このような中、本特許出願人は、硝化細菌を担持しやすい紐状繊維を複数本、躯体に固定した生物接触担体を水槽内に浸漬し、水槽を曝気することで生物硝化を促進する装置を発明、権利化している(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-59705号公報
【特許文献2】特許第6414394号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】神鋼パンテック技報、神鋼パンテック株式会社、2002年、第45巻、第2号、p.16-24
【非特許文献2】“地下水を原水とする超高速無薬注生物処理装置”、ユーザーのための凝集・沈降/浮上分離・粒状層ろ過事例集、日本液体清澄化技術工業会、2001年、p.64-67
【非特許文献3】黒木省三、杉澤滋;環境技術、2001年、第30巻、第12号、p.18-22
【非特許文献4】地下水アンモニア低減システム、株式会社トーケミ、[令和2年8月7日検索]、インターネットURL https://www.tohkemy.co.jp/products/actysomonasu/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2では、メタンを2~3体積ppm含む地下水に対して、生物硝化槽への空気吹き込み量(曝気量)を槽体積あたり2~10m/m/hと過剰に吹き込むことで、メタンによる硝化阻害を生じさせることなく高い硝化性能を維持できると記載している。
本発明者らは、硝化細菌を担持する担体として3~5mm角の略立方体形状ポリウレタン製スポンジを用いた気液固3相流動層方式の生物硝化試験を、メタン濃度が10体積ppmの地下水を対象に行った。その結果、曝気量を槽体積あたり20m/m/hに高めても、十分な硝化性能が発揮されないことを知見した。一般的に地下水中にはメタンを10体積ppm以上の高濃度で含むものがあり、それらの地下水にも対応できる生物硝化装置が求められている。
【0009】
本発明は、メタンを10体積ppm以上含む被処理水に対して優れた硝化性能を発揮できる生物処理装置及び生物処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1] 前曝気槽及び生物硝化槽を備え、前記前曝気槽及び前記生物硝化槽においてメタンを10体積ppm以上含む被処理水を処理する生物処理装置であって、
前記前曝気槽における前記被処理水の滞留時間を0.01~0.5時間に制御する制御機構を有する、生物処理装置。
[2] 前記前曝気槽は曝気装置を有し、
前記曝気装置は、前記前曝気槽における曝気量が、槽あたり20m/m/h以上になるように制御する、[1]に記載の生物処理装置。
[3] 前記生物硝化槽は2槽以上の生物硝化槽が直列に接続されている、[1]又は[2]に記載の生物処理装置。
[4] 前記生物硝化槽は担体を有し、前記担体の嵩体積が前記生物硝化槽の有効容積の60体積%未満である、[1]~[3]のいずれかに記載の生物処理装置。
[5] 前記担体がスポンジ状担体である、[4]に記載の生物処理装置。
[6] 前記担体が一辺の長さが3~10mmの角型担体である、[4]又は[5]に記載の生物処理装置。
[7] 前曝気槽を用いる前曝気処理及び生物硝化槽を用いる生物硝化処理を含み、前記前曝気処理に次いで前記生物硝化処理を行うことによりメタンを10体積ppm以上含む被処理水を処理する生物処理方法であって、
前記前曝気処理において、前記前曝気槽における前記被処理水の滞留時間を0.01~0.5時間に制御する、生物処理方法。
[8] 前記前曝気槽は曝気装置を有し、
前記前曝気処理において、前記曝気装置は、前記前曝気槽における曝気量が、槽あたり20m/m/h以上になるように制御する、[7]に記載の生物処理方法。
[9] 前記生物硝化槽は2槽以上の生物硝化槽が直列に接続され、前記生物硝化処理が前記2槽以上の生物硝化槽を用いて行われる、[7]又は[8]に記載の生物処理方法。
[10] 前記生物硝化槽は担体を有し、前記担体の嵩体積が前記生物硝化槽の有効容積の60体積%未満であり、
前記生物硝化処理は、前記被処理水と前記担体とを接触させた状態で行われる、[7]~[9]のいずれかに記載の生物処理方法。
[11] 前記担体がスポンジ状担体である、[10]に記載の生物処理方法。
[12] 前記担体が一辺の長さが3~10mmの角型担体である、[10]又は[11]に記載の生物処理方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、メタンを10体積ppm以上含む被処理水に対して優れた硝化性能を発揮できる生物処理装置及び生物処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の生物処理装置の一例を示す概要図である。
図2図2は、本発明の生物処理装置の変形例を示す概要図である。
図3図3は、実施例1、2及び比較例1~3のN負荷量及び硝化量の経時変化を示すグラフである。
図4図4は、実施例3のN負荷量及び硝化量の経時変化を示すグラフである。
図5図5は、生物硝化槽の菌叢を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、「~」を用いて表される数値範囲は、その両端の数値をその数値範囲に含む。
本発明において、「A又はB」とは、AとBのうちいずれか一方を意味する。
本発明において、気体の体積は、0℃、101.325kPaにおける体積である。
本発明において、「アンモニア態窒素」とは、水中においてアンモニア(分子)の形態で存在する窒素及びアンモニウムイオンの形態で存在する窒素を意味する。
本発明において、「硝酸態窒素」とは、水中において硝酸イオンの形態で存在する窒素を意味する。
本発明において、「亜硝酸態窒素」とは、亜硝酸イオンの形態で存在する窒素を意味する。
本発明において、「担体」とは、微生物を担持するための基材を意味する。特に、生物硝化処理に用いる硝化細菌を担持した担体を「硝化細菌担持担体」という。
【0014】
以下では、本発明の生物処理装置及び生物処理方法の実施形態について、適宜、図面を参照しながら詳細に説明する。しかし、本発明は後述する実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。
なお、以下の説明で用いる各図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示す場合があり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なるときがある。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例に過ぎない。
【0015】
[生物処理装置]
図1は、本発明の生物処理装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
生物処理装置1は、被処理水供給流路100を通って原水貯槽(図示略)から供給されるメタンを10体積ppm以上含む被処理水を曝気して前曝気処理水とする前曝気槽10と、前曝気処理水移送流路101を通って前曝気槽10から移送された前曝気処理水を処理して処理水とする生物硝化槽20と、被処理水供給流路100の途中に設けられた移送ポンプ61と、被処理水供給流路100の途中に設けられ、前曝気槽10に供給される被処理水の水量を測定する水流量測定装置62と、後述する曝気装置のブロワ及び空気量調整手段、移送ポンプ61及び水流量測定装置40に電気的に接続された制御装置(図示略)とを備える。
【0016】
(被処理水)
被処理水は、メタンを10体積ppm以上含む水である。水としては、例えば、地下水及び表流水が挙げられるが、地下水が好ましい。被処理水は、さらに、アンモニア態窒素を含むことが好ましい。
【0017】
(前曝気槽)
前曝気槽10は、容器状の槽本体11と、槽本体11の底部に送入された曝気装置13とを備える。
【0018】
前曝気槽10に接続された被処理水供給流路100の途中に設けられた移送ポンプ61及び水流量測定装置40によって、前曝気槽10に流入する被処理水の流量が制御される。すなわち、生物処理装置1では、移送ポンプ61及び水流量測定装置40と、これらに電気的に接続された制御装置(図示略)とは、前曝気槽10における被処理水の滞留時間を制御する制御機構を構成する。
水流量測定装置40としては、例えば、ローターメータ又は電磁流量計が挙げられる。
生物処理装置1において、前記制御機構により、被処理水の滞留時間が0.01~0.5時間に制御される。被処理水の滞留時間が0.01時間未満であると、前曝気槽でのメタン脱気が不十分となり、移送先の生物硝化槽でメタン酸化細菌が増殖してしまい、メタン酸化細菌と硝化細菌との競合のため、硝化性能が低下する。被処理水の滞留時間が0.5時間超であると、前曝気槽でメタン酸化細菌が増殖してしまい、移送先の生物硝化槽でのメタン酸化細菌と硝化細菌との競合のため、硝化性能が低下する。
被処理水の滞留時間の下限値は、短絡流を避ける観点から、0,01時間以上が好ましく、0.1時間以上がより好ましく、0.15時間以上がさらに好ましく、0.2時間以上が特に好ましい。また、被処理水の滞留時間の上限値は、メタン酸化細菌の増殖を避ける観点から、0.5時間以下が好ましく、0.4時間以下がより好ましく、0.3時間以下がさらに好ましい。
【0019】
曝気装置13は、槽本体11の底部に位置する散気部14と、散気部14に空気を供給する空気供給部15と、空気供給部15の途中に設けられた空気量調整手段17とを備える。
散気部14としては、例えば、散気孔(図示略)が形成された、散気管又は散気筒が挙げられる。
空気量調整手段17としては、例えば、ゲート弁又はバタフライ弁が挙げられる。
前曝気槽10における曝気量は、特に限定されないが、槽あたり、20m/m/h以上になるように制御することが好ましい。曝気量が槽あたり20m/m/h以上であると、前曝気槽でのメタン脱気を行いやすい。
【0020】
(生物硝化槽)
生物硝化槽20は、硝化細菌担持担体200が充填された容器状の槽本体21と、槽本体21に処理水移送流路102が接続する箇所に設けられた、硝化細菌担持担体200と処理水とを分離するための固液分離手段22と、槽本体21の底部に送入された曝気装置23とを備える、いわゆる流動床型生物硝化槽である。
【0021】
固液分離手段22としては、例えば、スクリーンが挙げられる。
曝気装置23は、槽本体21の底部に位置する散気部24と、散気部24に空気を供給する空気供給部25と、空気供給部25の途中に設けられたブロワ26と、散気部24とブロワ26との間の空気供給部25の途中に設けられた空気量調整手段27とを備える。
散気部24としては、例えば、散気孔(図示略)が形成された、散気管及び散気筒が挙げられる。
空気量調整手段27としては、例えば、ゲート弁及びバタフライ弁が挙げられる。
生物硝化槽20における曝気量は、特に限定されないが、槽あたり、5m/m/h以上となるように制御することが好ましく、10m/m/h以上となるように制御することがより好ましい。
【0022】
(制御装置)
制御装置は、インターフェイス部(図示略)、記憶部(図示略)、処理部(図示略)、判定部(図示略)、制御部(図示略)等を備える。
【0023】
インターフェイス部は、曝気装置のブロワ及び空気量調整手段、移送ポンプ61、水流量測定装置62等と制御部との間を電気的に接続するものである。
【0024】
記憶部は、生物処理装置1の運転条件等を記憶するものである。
処理部は、水流量測定装置62で測定された被処理水の水量から前曝気槽10での被処理水の滞留時間の算出等の演算を行うものである。
判定部は、処理部で算出された前曝気槽10での被処理水の滞留時間があらかじめ設定されかつ記憶部に記憶された範囲内であるか否かの判定等を行うものである。
制御部は、判定部における判定結果、記憶部に記憶された生物処理装置1の運転条件等に基づいて、生物処理装置1の制御を行うものである。例えば、あらかじめ設定されかつ記憶部に記憶された被処理水の水量に基づいて移送ポンプ61を制御したり、あらかじめ設定されかつ記憶部に記憶された空気量に基づいて曝気装置13(23)のブロワ16(26)及び空気量調整手段17(27)を制御したりするものである。
【0025】
処理部、判定部及び制御部は、専用のハードウエアによって実現されるものであってもよく、メモリ及び中央演算装置(CPU)によって構成され、処理部、判定部及び制御部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによってその機能を実現させるものであってもよい。
制御装置には、周辺機器として、入力装置、表示装置等が接続されていてもよい。入力装置としては、ディスプレイタッチパネル、スイッチパネル、キーボード等の入力デバイスが挙げられ、表示装置としては、液晶表示装置、CRT等が挙げられる。
【0026】
(硝化細菌担持担体)
硝化細菌担持担体200は、担体の表面に硝化細菌が担持されたものである。担体が多孔質である場合は、担体の内部(孔内)に硝化細菌が担持されていてもよい。
【0027】
前記担体の形状は、特に限定されないが、例えば、直方体(立方体を含む)、球体、筒体及び糸状体からなる群から選択される少なくとも1種である。前記担体として、2種以上の形状のものを併用してもよい。また、前記担体の形状が直方体又は筒体である場合、角が欠けていたり、丸みを持っていたりしてもよい。また、前記担体の形状が球体である場合、真球体でなくてもよい。前記担体の形状は、角型、すなわち、略直方体が好ましい。ここで、略直方体とは、全ての面が長方形(正方形を含む)からなる六面体に限定されず、基本的に6つの面で構成された六面体であり、角の欠けた形状や、角に丸みを持たせた形状であってもよい。前記担体の形状が角型である場合、一辺の長さは、特に限定されないが、3~10mmが好ましく、3~7mmがより好ましく、3~5mmがさらに好ましい。角型担体の一辺の長さが3~10mmであると、担体の質量あたりの表面積をより大きくすることができ、硝化細菌の担持量をより多くすることができるので、硝化性能をより向上できる。
【0028】
前記担体としては、担体の表面及び内部に硝化細菌を担持できることから、多孔質のものが好ましい。多孔質担体であると、担体の表面のみならず内部にも硝化細菌を担持できるので、より多くの硝化細菌を担持でき、硝化性能がより向上する。
また、多孔質担体としては、硝化細菌の担持を良好に維持でき、かつポンプ及び配管の損傷を最小限に抑制できることから、スポンジ状担体がより好ましい。ここで、「スポンジ」とは、内部に細かな孔が無数に空いた多孔質の柔らかい物質を意味する。
スポンジ状担体の材料は、特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、ポリスチレンゴム及びポリウレタンからなる群から選択される少なくとも1種であり、耐久性が良好でることから、ポリウレタンが好ましい。前記スポンジ状担体の材料は2種以上を併用してもよい。
【0029】
生物硝化槽20における硝化細菌担持担体200の嵩体積は、生物硝化槽20の有効容積の60体積%未満が好ましく、20~50体積%がより好ましく、30~40体積%がさらに好ましい。
生物硝化槽20における硝化細菌担持担体200の嵩体積が、生物硝化槽20の有効容積の60体積%未満であると、硝化細菌担持担体200が槽内を流動しやすく、硝化細菌の増殖に必要な酸素が硝化細菌に充分に供給されるので、硝化性能を向上しやすい。
【0030】
硝化細菌としては、アンモニア態窒素の生物硝化に用いられる公知の硝化細菌が挙げられる。硝化細菌とは、Nitrosomonas属細菌、Nitrosococcus属細菌及びNitrosospira属細菌等のアンモニア酸化細菌(亜硝酸生成細菌)並びにNitrobacter属細菌及びNitrospira属細菌等の亜硝酸酸化細菌(硝酸生成細菌)の総称である。硝化細菌は、通性好気化学合成独立栄養であり、アンモニア態窒素及び炭酸を基質とする。硝化細菌は炭酸を唯一の炭素源として増殖可能であるが、その増殖速度は極めて小さい。したがって、生物硝化反応を高く保持するためには、硝化細菌を槽内に大量に保持する操作が必要となる。そのため、硝化細菌を、浮遊菌体ではなく担体に担持した状態で保持することが好ましい。
硝化細菌の担体への担持方法としては、例えば、既存の水処理システムの硝化槽に担体を投入して、担体の表面等に硝化細菌を増殖させる方法が挙げられる。
【0031】
<生物処理装置の変形例>
本発明の生物処理装置は、2槽以上の生物硝化槽が直列に接続されていてもよい。生物硝化槽を2槽以上直列に接続して備えることにより、1槽あたりの負荷が軽減されるとともに、安定的な処理を行いやすくなる。
図2は、直列に接続された2つの生物硝化槽を備える例を示す概略構成図である。
生物処理装置2は、被処理水供給流路100を通って原水貯槽(図示略)から供給されたメタンを10体積ppm以上含む被処理水を曝気して前曝気処理水とする前曝気槽10と、前曝気処理水移送流路101を通って前曝気槽10から移送された前曝気処理水を処理して第1の処理水とする第1の生物硝化槽20と、第1の処理水移送流路102を通って第1の生物硝化槽20から移送された第1の処理水を処理して第2の処理水とする第2の生物硝化槽30と、被処理水供給流路100の途中に設けられた移送ポンプ61と、被処理水供給流路100の途中に設けられ、前曝気槽10に供給される被処理水の水量を測定する水流量測定装置62と、後述する曝気装置のブロワ及び空気量調整手段、移送ポンプ61、水流量測定装置62に電気的に接続された制御装置(図示略)とを備える。
以下、生物処理装置1と異なる点を中心に説明する。
【0032】
(第1の生物硝化槽)
第1の生物硝化槽20は、槽本体21と、槽本体21に第1の処理水移送流路102が接続する箇所に設けられた、硝化細菌担持担体200と第1の処理水とを分離するための固液分離手段22と、槽本体21の底部に送入された曝気装置23とを備える、いわゆる流動床型生物硝化槽である。
槽本体21、第1の処理水移送流路102、固液分離手段12、曝気装置23及び硝化細菌担持担体200は、それぞれ、上述した生物処理装置1における槽本体21、処理水移送流路102、固液分離手段12、曝気装置23及び硝化細菌担持担体200と同様である。
第1の生物硝化槽20における曝気量は、特に限定されないが、槽あたり、5m/m/h以上となるように制御することが好ましく、10m/m/h以上となるように制御することがより好ましい。
【0033】
(第2の生物硝化槽)
第2の生物硝化槽30は、槽本体31と、槽本体31に第2の処理水移送流路103が接続する箇所に設けられた、硝化細菌担持担体300と第2の処理水とを分離するための固液分離手段32と、槽本体31の底部に送入された曝気装置33とを備える、いわゆる流動床型生物硝化槽である。
【0034】
固液分離手段32としては、例えば、スクリーンが挙げられる。
曝気装置33は、槽本体31の底部に位置する散気部34と、散気部34に空気を供給する空気供給部35と、空気供給部35の途中に設けられたブロワ36と、散気部34とブロワ36との間の空気供給部35の途中に設けられた空気量調整手段37とを備える。
散気部34としては、例えば、散気孔(図示略)が形成された、散気管及び散気筒が挙げられる。
空気量調整手段37としては、例えば、ゲート弁及びバタフライ弁が挙げられる。
第2の生物硝化槽30における曝気量は、特に限定されないが、槽あたり、5m/m/h以上となるように制御することが好ましく、10m/m/h以上となるように制御することがより好ましい。
【0035】
(制御装置)
制御装置は、上述した生物処理装置1における制御装置と同様である。
【0036】
(硝化細菌担持担体)
生物処理装置2における硝化細菌担持担体200及び硝化細菌担持担体300は、生物処理装置1における硝化細菌担持担体200と同様である。
【0037】
第1の生物硝化槽20における硝化細菌担持担体200の嵩体積は、第1の生物硝化槽20の有効容積の60体積%未満が好ましく、20~50体積%がより好ましく、30~40体積%がさらに好ましい。
第2の生物硝化槽30における硝化細菌担持担体300の嵩体積は、第2の生物硝化槽30の有効容積の60体積%未満が好ましく、20~50体積%がより好ましく、30~40体積%がさらに好ましい。
第1の生物硝化槽20における硝化細菌担持担体200の嵩体積及び第2の生物硝化槽30における硝化細菌担持担体300の嵩体積の合計は、第1の生物硝化槽20の有効容積及び第2の生物硝化槽30の有効容積の合計の60体積%未満が好ましく、20~50体積%がより好ましく、30~40体積%がさらに好ましい。
第1の生物硝化槽20における硝化細菌担持担体200の嵩体積及び第2の生物硝化槽30における硝化細菌担持担体300の嵩体積が、第1の生物硝化槽20及び第2の生物硝化槽30のそれぞれの有効容積の60体積%未満であると、硝化細菌担持担体200が槽内を流動しやすく、硝化細菌の増殖に必要な酸素が硝化細菌に充分に供給されるので、硝化性能を向上しやすい。
硝化細菌担持担体300について、担体及び硝化細菌は、上述した硝化細菌担持担体200におけるものと同様である。
【0038】
[生物処理方法]
以下、生物処理装置1を用いた生物処理方法の一例について説明する。
【0039】
(前曝気処理)
被処理水供給流路100の途中に設けられた移送ポンプ61を稼働させて、メタンを10体積ppm以上含む被処理水を、原水貯槽(図示略)から被処理水供給流路100を通って前曝気槽10に供給し、被処理水を前曝気槽10に貯める。
被処理水は、メタンを10体積ppm以上含む水である。水としては、例えば、地下水及び表流水が挙げられるが、地下水が好ましい。被処理水は、さらに、アンモニア態窒素を含むことが好ましい。
【0040】
前曝気槽10に、被処理水の滞留時間が0.01~0.5時間になるように、制御機構、すなわち、制御装置(図示略)に電気的に接続された移送ポンプ61及び水流量測定装置62によって水量を制御しながら、被処理水の供給を続ける。前曝気槽10における被処理水の滞留時間の下限値は、短絡流を避ける観点から、0,01時間以上が好ましく、0.1時間以上がより好ましく、0.15時間以上がさらに好ましく、0.2時間以上が特に好ましい。また、被処理水の滞留時間の上限値は、メタン酸化細菌の増殖を避ける観点から、0.5時間以下が好ましく、0.4時間以下がより好ましく、0.3時間以下がさらに好ましい。
【0041】
前曝気槽10に被処理水を供給しつつ、曝気装置13を駆動させて、散気部14から前曝気槽10内に空気をあらかじめ設定された空気量で散気する。
【0042】
(生物硝化処理)
前曝気槽10の被処理水を、前曝気処理水移送流路101を通って生物硝化槽20に移送し、前曝気処理水を生物硝化槽20に貯める。
【0043】
既存の生物処理装置から抜き出された硝化細菌担持担体200を、生物処理装置1の生物硝化槽20に投入する。
生物硝化槽20における硝化細菌担持担体200の嵩体積は、生物硝化槽20の有効容積の60体積%未満が好ましく、20~50体積%がより好ましく、30~40体積%がさらに好ましい。
硝化細菌担持担体200について、担体及び硝化細菌は、上述したとおりである。
【0044】
前曝気槽10から排出された前曝気処理水を、前曝気処理水移送流路101を通って生物硝化槽20に移送しつつ、曝気装置23を駆動させて、散気部24から生物硝化槽20内に空気をあらかじめ設定された空気量で散気する。
生物硝化槽20の底部から空気を散気すると、生物硝化槽20内に上昇流及び下降流からなる旋回流が生じ、生物硝化槽20の前曝気処理水内で硝化細菌担持担体200が自由に流動する。
旋回流における上昇流の流速は、特に限定されないが、0.1~0.5m/sが好ましく、0.3~0.5m/sがより好ましい。
曝気装置23の散気部14から散気される空気量は、空気量調整手段27によって任意の空気量に調整(制御)できる。
【0045】
生物硝化槽20においては、酸素を含む空気が曝気装置23の散気部24から供給される。生物硝化槽20内に酸素が供給されると、前曝気処理水中のアンモニア態窒素は、生物硝化槽20内で硝化細菌担持担体200の硝化細菌によってアンモニア酸化(硝化)されて硝酸になる。このようにして、アンモニア態窒素を含む被処理水を生物硝化槽20で処理して処理水とする。
なお、アンモニア態窒素は、次式に示すように、2段階反応により生物硝化される。
(1) 2NH+3O → 2H+2NO +2H
(2) 2NO +O → 2NO
式(1)はアンモニア酸化細菌による反応であり、式(2)は亜硝酸酸化細菌による反応である。
式(1)と式(2)をまとめると、式(3)となる。
(3) 2NH+4O → 2H+2HO+2NO
すなわち、2モルのアンモニアと4モルの酸素とが反応して、2モルの硝酸イオンが生成する。
【0046】
生物硝化槽20から固液分離手段22を通って排出された処理水は、処理水移送流路102を通って生物処理装置1の外部に排出される。
【0047】
<生物処理方法の変形例>
本発明の生物処理方法は、2槽以上の生物硝化槽が直列に接続された生物処理装置を用いて実施してもよい。以下では、2槽の生物硝化槽を備える、生物処理装置2を用いた生物処理方法の一例について説明する。
【0048】
(前曝気処理)
前曝気処置は、上述した生物処理装置1を用いた生物処理方法の一例における前曝気処理と同様である。
【0049】
(生物硝化処理)
前曝気槽10の被処理水を、前曝気処理水移送流路101を通って第1の生物硝化槽20に移送し、前曝気処理水を第1の生物硝化槽20に貯める。さらに、第1の生物硝化槽20の前曝気処理水を、第1の処理水移送流路102を通って第2の生物硝化槽30に移送し、第1の処理水を第2の生物硝化槽30に貯める。
【0050】
既存の生物処理装置から抜き出された硝化細菌担持担体200を、生物処理装置2の生物硝化槽20に、同様に既存の生物処理装置から抜き出された硝化細菌担持担体300を第2の生物硝化槽30に投入する。
第1の生物硝化槽20における硝化細菌担持担体200の嵩体積は、第1の生物硝化槽20の有効容積の60体積%未満が好ましく、20~50体積%がより好ましく、30~40体積%がさらに好ましい。
第2の生物硝化槽30における硝化細菌担持担体300の嵩体積は、第2の生物硝化槽30の有効容積の60体積%未満が好ましく、20~50体積%がより好ましく、30~40体積%がさらに好ましい。
第1の生物硝化槽20における硝化細菌担持担体200の嵩体積及び第2の生物硝化槽30における硝化細菌担持担体300の嵩体積の合計は、第1の生物硝化槽20の有効容積及び第2の生物硝化槽30の有効容積の合計の60体積%未満が好ましく、20~50体積%がより好ましく、30~40体積%がさらに好ましい。
第1の生物硝化槽20における硝化細菌担持担体200の嵩体積及び第2の生物硝化槽30における硝化細菌担持担体300の嵩体積が、第1の生物硝化槽20及び第2の生物硝化槽30のそれぞれの有効容積の60体積%未満であると、硝化細菌担持担体200が槽内を流動しやすく、硝化細菌の増殖に必要な酸素が硝化細菌に充分に供給されるので、硝化性能を向上しやすい。
硝化細菌担持担体300について、担体及び硝化細菌は、上述した硝化細菌担持担体200におけるものと同様である。
【0051】
前曝気槽10から排出された前曝気処理水を、前曝気処理水移送流路101を通って第1の生物硝化槽20に移送しつつ、曝気装置23を駆動させて、散気部24から第1の生物硝化槽20内に空気を予め設定された空気量で散気する。
第1の生物硝化槽20の底部から空気を散気すると、第1の生物硝化槽20内に上昇流及び下降流からなる旋回流が生じ、第1の生物硝化槽20の前曝気処理水内で硝化細菌担持担体200が自由に流動する。
旋回流における上昇流の流速は、特に限定されないが、0.1~0.5m/sが好ましく、0.3~0.5m/sがより好ましい。
曝気装置23の散気部24から散気される空気量は、空気量調整手段27によって任意の空気量に調整(制御)できる。
【0052】
第1の生物硝化槽20から固液分離手段22を通って排出された第1の処理水を、第1の処理水移送流路102を通って第2の生物硝化槽30に移送しつつ、曝気装置33を駆動させて、散気部34から第2の生物硝化槽30内に空気を予め設定された空気量で散気する。
第2の生物硝化槽30の底部から空気を散気すると、第2の生物硝化槽30内に上昇流及び下降流からなる旋回流が生じ、第2の生物硝化槽30の第1の処理水内で硝化細菌担持担体200が自由に流動する。
旋回流における上昇流の流速は、特に限定されないが、0.1~0.5m/sが好ましく、0.3~0.5m/sがより好ましい。
曝気装置33の散気部34から散気される空気量は、空気量調整手段37によって任意の空気量に調整(制御)できる。
【0053】
第1の生物硝化槽20においては、酸素を含む空気が曝気装置23の散気部24から供給される。第1の生物硝化槽20内に酸素が供給されると、前曝気処理水中のアンモニア態窒素は、第1の生物硝化槽20内で硝化細菌担持担体200の硝化細菌によってアンモニア酸化(硝化)されて硝酸になる。このようにして、アンモニア態窒素を含む被処理水を生物硝化槽20で処理して第1の処理水とする。
第2の生物硝化槽30においては、酸素を含む空気が曝気装置33の散気部34から供給される。第2の生物硝化槽30内に酸素が供給されると、第1の処理水中のアンモニア態窒素は、第2の生物硝化槽30内で硝化細菌担持担体300の硝化細菌によってアンモニア酸化(硝化)されて硝酸になる。このようにして、アンモニア態窒素を含む被処理水を第2の生物硝化槽30で処理して第2の処理水とする。
【0054】
第2の生物硝化槽30から固液分離手段32を通って排出された第2の処理水は、第2の処理水移送流路103を通って生物処理装置2の外部に排出される。
【0055】
[作用効果]
メタンを10体積ppm以上の高濃度で含む被処理水を直接生物硝化槽に流入させた場合に起こる硝化阻害は、高濃度メタン存在下でのメタン酸化細菌の増殖速度が硝化細菌の増殖速度よりも速いことにより、メタン酸化細菌が水中の酸素及び微量元素を消費してしまい、硝化細菌によるアンモニア酸化反応及び亜硝酸酸化反応を阻害することによると考えられる。
本発明の生物硝化装置及び生物硝化方法では、前曝気槽における被処理水の滞留時間を0.01~0.5時間に制御する。このように被処理水の前曝気槽における滞留時間を制御することにより、被処理水中のメタン短時間で気相へと脱気され、前曝気槽におけるメタン酸化細菌の増殖が抑制される。前曝気槽において前曝気処理を行った後の被処理水中のメタン濃度は10体積ppm未満に低下する。被処理水中のメタン濃度が10体積ppm未満に低下すれば、従来と同様に、生物硝化槽において生物硝化処理を行うことにより、被処理水中のアンモニア態窒素を硝酸態窒素に酸化することができる。
【実施例0056】
以下では、実施例によって本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明は後述する実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。
【0057】
[試験方法の概要]
〈生物処理装置〉
図1に概要を示す生物処理装置を用いた。前曝気槽及び生物硝化槽をいずれも有効容積100Lとし、前曝気槽の有効水量を可変できるように、かつ、前曝気槽をバイパスして、原水貯槽から原水を直接生物硝化槽に供給できる構成とした。
【0058】
〈原水〉
表1に示す水質の原水(O市において採取した地下水)を用いた。
【0059】
【表1】
【0060】
〈硝化細菌担持担体〉
既設の生物硝化槽から抜き出した硝化細菌担持担体を用いた。この硝化細菌担持担体は、5mm角の立方体形状のポリウレタン製スポンジ担体(ウォーターフレックスAQ-15 5×5×5mm角、テクノフォームジャパン社製)に硝化細菌を担持したものである。
生物硝化槽における硝化細菌担持担体の充填率は、生物硝化槽の有効容積の30%とした。
【0061】
〈通水条件〉
表2に示す通水条件とした。
【0062】
【表2】
【0063】
通水条件aは前曝気処理なし(比較例1、比較例3)、通水条件bは前曝気処理を前曝気槽の有効水量100Lで、滞留時間DTを0.83h、曝気量を20m/m/hとしたものであり(比較例2)、通水条件cは前曝気処理を前曝気槽有効水量25Lで、滞留時間DTを0.21h、曝気量を20m/m/hとしたものである(実施例1、2)。
生物硝化槽の曝気条件は、曝気量20m/m/hの一定とし、硝化量を徐々に増加させる方式とした。
曝気は前曝気槽及び生物硝化槽の底部に設置した散気装置の散気部から空気を曝気する方法とした。
通水条件毎のN負荷量及び硝化量の経時変化を図3に示す。
【0064】
次に、前曝気槽及び生物硝化槽の有効容積がそれぞれ1.0m及び13.5mである生物処理装置を準備した。硝化細菌担持担体としては上述したものと同等のものを用い、生物硝化槽における硝化細菌担持担体の充填率は、生物硝化槽の有効容積の30%とした。
この生物処理装置を用いて、上述したものと同等の被処理水を用いて、表3に示す通水条件で、硝化処理を行った(実施例3)。
【0065】
【表3】
【0066】
N負荷量及び硝化量の経時変化を図4に示す。
【0067】
[試験結果の説明]
〈比較例1〉
通水条件aでは、硝化量が0.02kg-N/m/d程度で頭打ちとなった。
比較例1の終了時点での生物硝化槽の菌叢解析の結果を図5に示す。ここで、菌叢解析は、DNA抽出後,Illumina Miseqを用いて16S rRNA遺伝子V4領域を対象としたアンプリコン解析を実施した。
図5に示すように、通水条件aでの生物硝化槽の菌叢は、硝化反応に関与するNitrosomonas属細菌及びNitrospira属細菌等の硝化細菌は全菌数の5%にとどまり、40%近くをメタン酸化細菌群が占めていた。このことは、100L規模の生物硝化槽の内部で、メタン酸化細菌と硝化細菌が競合し、メタン酸化細菌が優勢となる条件にあることを示唆する。すなわち、両者が共通する微量栄養源などにおいて、メタン酸化細菌に優先的に摂取されて、硝化細菌の増殖が抑制されている。
【0068】
〈比較例2〉
比較例1の通水条件aの後、通水条件bに変更したところ、硝化量が速やかに増加し、0.1kg-N/m/d程度に達し、その後頭打ちとなった。
【0069】
〈実施例1〉
比較例2の通水条件bの後、通水条件cに変更したところ、硝化量が直ちに増加し、目標の0.3kg-N/m/d程度に達した。
【0070】
〈比較例3〉
実施例1の通水条件cの後、通水条件aに戻したところ、硝化量が速やかに減少し、0.1kg-N/m/d程度まで落ちた。メタンに硝化阻害が観察された。
【0071】
〈実施例2〉
通水条件cに戻したところ、硝化量は即増加し、実施例1と同様の0.3kg-N/m/d程度に達し、長期にわたって硝化量を維持した。
実施例2の終了時点での生物硝化槽の菌叢解析の結果を図5に示す。ここで、菌叢解析は比較例1と同様にして行った。
硝化反応に関与するNitrosomonas属細菌及びNitrospira属細菌等の硝化細菌は全菌数の50%近くに達し、硝化細菌が優勢であることが確認された。
【0072】
〈実施例3〉
図4に示すとおり、硝化量は、100L規模の場合と同様に、目標の0.3kg-N/m/d程度に達した。
【0073】
〈総括〉
特許文献2(特許第6414394号公報)の記載によれば、生物硝化槽への空気吹き込み量(曝気量)を槽体積あたり2~10m/m/hとすれば、メタンの硝化阻害は減じて、高い硝化性能が得られるとのことである。しかし、比較例1によって示されるとおり、10体積ppm以上もの高濃度のメタンを含む地下水に対しては、生物硝化槽の曝気量を20m/m/hとしても、メタンによる硝化阻害が生じ、硝化性能が充分に発揮されなかった。
本発明は、生物硝化槽の前段に前曝気槽を設置し、生物硝化処理の前に0.01~0.5時間という短時間で前曝気処理を行うことにより、前曝気槽においてメタン脱気を行い、メタン酸化細菌が増殖しにくい条件を整えることにより、生物硝化槽においてメタンによる硝化阻害を抑制し、メタンを10体積ppm以上含む被処理水に対しても、優れた硝化性能を発揮するものである。
本発明においては、前曝気槽では、充填材等の生物付着が発生する部位を減らす、単一な水槽であることが有効である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の生物処理装置及び生物処理方法は、10体積ppm以上の高濃度のメタンを含む地下水等の非処理水の硝化処理を行うことができ、優れた硝化性能を発揮することから、特に、飲料水用の浄化処理施設において利用するのに適している。
【符号の説明】
【0075】
1…生物処理装置、2…生物処理装置、10…前曝気槽、11…槽本体、13…曝気装置、14…散気部、15…空気供給部、16…ブロワ、17…空気量調整手段、20…生物硝化槽(第1の生物硝化槽)、21…槽本体、22…固液分離手段、23…曝気装置、24…散気部、25…空気供給部、26…ブロワ、27…空気量調整手段、30…第2の生物硝化槽、31…槽本体、32…固液分離手段、33…曝気装置、34…散気部、35…空気供給部、36…ブロワ、37…空気量調整手段、61…、62…水流量測定装置、100…被処理水供給流路、101…前曝気処理水移送流路、102…処理水移送流路(第1の処理水移送流路)、103…第2の処理水移送流路、200…硝化細菌担持担体、300…硝化細菌担持担体
図1
図2
図3
図4
図5