(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044422
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】地中空洞部に対応した小口径推進工法及び小口径推進装置
(51)【国際特許分類】
E21D 9/06 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
E21D9/06 311E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150038
(22)【出願日】2020-09-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 発行日: 2020年8月1日 刊行物名: 令和2年度土木学会全国大会 第75回年次学術講演会[講演概要集] 発行者: 公益社団法人土木学会 公開者: 井口 昌之(株式会社関電工内) 内藤 元昭(株式会社関電工内) 露崎 正行(露崎工業株式会社内) 岡田 公彦(株式会社立花マテリアル内)
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(71)【出願人】
【識別番号】593188420
【氏名又は名称】露崎工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】吉本 正浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克晴
(72)【発明者】
【氏名】菊池 奈保美
(72)【発明者】
【氏名】井口 昌之
(72)【発明者】
【氏名】露崎 正行
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC18
2D054BA19
2D054FA02
2D054GA10
2D054GA15
2D054GA82
2D054GA92
(57)【要約】
【課題】推進工法の施工中において、空洞部を検出し、充填材を吐出して空洞部を埋め、その後推進工事を再開させ、これにより効率のよい工事が可能である。
【解決手段】掘削した発進立坑から先端ヘッド3の先端が傾斜面5となっている小口径推進装置Aの先端ヘッド3を土中に回転させながら押し込む推進工法において、前記傾斜面5の後部にCCDカメラ9、照明具8、充填材吐出口7を有し、さらに、前記傾斜面に土圧検出センサ用のダイヤフラム15を有する小口径推進装置の先端ヘッド3を土中に推進させ、前記CCDカメラ9により推進前方の土中の撮影と、前記ダイヤフラム15の土圧検出により空洞部を検出し、空洞部が検出された際、推進を止め、前記充填材吐出口7から前記空洞部に充填材を注入して前記空洞部を埋め、充填材が固化した後、前記先端ヘッド3を土中を推進させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削した発進立坑から先端ヘッドの先端が傾斜面となっている小口径推進装置の先端ヘッド及びこれに続く布設管を土中に回転させながら押し込む推進工法において、
前記先端ヘッドの傾斜面の後部にカメラ、照明具、充填材吐出口を設け、さらに、前記傾斜面に土圧検出センサを設けた小口径推進装置の先端ヘッドを土中に推進させ、前記カメラにより推進前方の地中の撮影と、前記土圧検出センサの土圧検出により空洞部を検出し、空洞部が検出された際、推進を止め、前記充填材吐出口から前記空洞部内に充填材を注入して前記空洞部を埋め、充填材が固化した後、前記先端ヘッド及び布設管を土中を推進させることを特徴とする、地中空洞部に対応した小口径推進工法。
【請求項2】
前記充填材は瞬結型の2液混合タイプのものとしたことを特徴とする、請求項1に記載の地中空洞部に対応した小口径推進工法。
【請求項3】
掘削した立坑から先端ヘッドの先端が傾斜面となっている小口径推進装置の先端ヘッド及びこれに続く布設管を土中に回転させながら押し込む小口径推進装置において、
前記先端ヘッドの傾斜面の後部又は傾斜面の後部を削ってできた垂直面にカメラ、照明具、充填材吐出口を夫々設け、さらに、前記傾斜面に土圧検出センサを設けたことを特徴とする、小口径推進装置。
【請求項4】
前記カメラと照明具の設置位置を前記傾斜面の後部において離れて設けたことを特徴とする、請求項3に記載の小口径推進装置。
【請求項5】
前記充填材吐出口と土圧検出センサの設置位置を離れて設けたことを特徴とする、請求項3又は4に記載の小口径推進装置。
【請求項6】
前記カメラ、照明具、充填材吐出口の前方の傾斜面又は当該傾斜面を削ってできた水平面に、カメラ洗浄ノズル、照明具洗浄ノズル及び充填材吐出口洗浄ノズルを夫々設けたことを特徴とする、請求項3~5のいずれかに記載の小口径推進装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中への小口径推進工法において、予期していない地中の空洞部に遭遇した際、当該空洞部に充填材を吐出して空洞部を塞ぎ、推進させる、地中空洞部に対応した小口径推進工法及び小口径推進装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中への小口径管路の推進工事に際しては、施工前に地上から埋設調査や空洞調査をしているが、深層部や埋設物の下部は、確認することが非常に困難である。
【0003】
地中に空洞部や軟弱地盤が見つかった場合、地上部から空洞箇所まで掘削または地上部から空洞部まで削孔し、特許文献1に示すように、地上で作成した補修用材を空洞部に充填している。
【0004】
この様にして、地中の空洞部や軟弱地盤に補修用材を充填した後に、小口径管路の推進工事を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記方法では小口径管路を埋設する箇所の地中調査又は空洞調査を行い、空洞部があった場合に当該空洞部に補修材を注入、充填して空洞部を塞ぎ、その後に小口径管路を埋設する工事を行うという、極めて手間がかかり、工期の長く、費用の高い工事を余儀なくされていた。
【0007】
そこで、この発明は上述の課題を解決するため、推進工法の施工中において、地中を掘削している最中に空洞部を検出し、空洞部を検出した場合にその場で充填材を吐出して空洞部を埋め、その後推進工事を再開させ、これにより工期を短縮させ、工事コストを抑える等効率のよい工事が可能な地中空洞部に対応した小口径推進工法及びその装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、掘削した発進立坑から先端ヘッドの先端が傾斜面となっている小口径推進装置の先端ヘッド及びこれに続く布設管を土中に回転させながら押し込む推進工法において、前記先端ヘッドの傾斜面の後部にカメラ、照明具、充填材吐出口を設け、さらに、前記傾斜面に土圧検出センサを設けた小口径推進装置の先端ヘッドを土中に推進させ、前記カメラにより推進前方の土中の撮影と、前記土圧検出センサの土圧検出により空洞部を検出し、空洞部が検出された際推進を止め、前記充填材吐出口から前記空洞部に充填材を注入して前記空洞部を埋め、充填材が固化した後、前記先端ヘッド及び布設管を地中に推進させる、地中空洞部に対応した小口径推進工法とした。
【0009】
また、請求項2の発明は、前記充填材は瞬結型の2液混合タイプのものとした、請求項1に記載の地中空洞部に対応した小口径推進工法とした。
【0010】
請求項3の発明は、掘削した発進立坑から先端ヘッドの先端が傾斜面となっている小口径推進装置の先端ヘッド及びこれに続く布設管を土中に回転させながら押し込む小口径推進装置において、前記先端ヘッドの傾斜面の後部又は傾斜面の後部を削ってできた垂直面にカメラ、照明具、充填材吐出口を夫々設け、さらに、前記傾斜面に土圧検出センサを設けた、小口径推進装置とした。
【0011】
また、請求項4の発明は、前記カメラと照明具の設置位置を前記傾斜面の後部において離れて設けた、請求項3に記載の小口径推進装置とした。
【0012】
また、請求項5の発明は、前記充填材吐出口と土圧検出センサの設置位置を離れて設けた、請求項3又は4に記載の小口径推進装置とした。
【0013】
また、請求項6の発明は、前記カメラ、照明具、充填材吐出口の前方の傾斜面又は当該傾斜面を削ってできた水平面に、カメラ洗浄ノズル、照明具洗浄ノズル及び充填材吐出口洗浄ノズルを夫々設けた、請求項3~5のいずれかに記載の小口径推進装置とした。
【発明の効果】
【0014】
請求項1及び3の発明によれば、小口径推進工事において、事前の地中の空洞部等の調査や空洞部への充填材の注入、充填工事が不要となり、これらの工事のための装置の搬入等も不要となり、工期が短縮されると共に、工事費用が低減する等、効率の良い工事が可能となった。しかも、埋設された小口径管路の周囲に空洞部がなくなり、地中で埋設管路が安定する。
【0015】
また、請求項2の発明によれば、空洞部に充填する充填材は瞬結型の2液混合タイプであるため、空洞部に注入後、数時間後に固まり、推進工事を早い時期に再開できる。しかも、推進ヘッドの吐出口までは固まらずに搬送できる。
【0016】
また、請求項4の発明によれば、カメラと照明具との間を離して設けているため、照明具の光がカメラ前面の保護ガラスに当たらず、先端ヘッドの前方の地中を映すことができる。カメラと照明具とが近接していると、カメラ保護ガラスへ照明具からの光が反射し、空洞部の視認ができない。
【0017】
また、請求項5の発明によれば、充填材吐出口と土圧検出センサの設置位置を離すことにより土圧を誤検知する可能性を低減した。
【0018】
また、請求項6の発明によれば、カメラ、照明具、充填材吐出口の前方の傾斜面に、カメラ洗浄ノズル、照明具洗浄ノズル及び充填材吐出口洗浄ノズルを夫々設けているため、これらを水で洗浄することにより土砂の付着による各機能の低下を回復できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の実施の形態例1の小口径推進装置の先端ヘッドの斜視図である。
【
図2】この発明の実施の形態例1の小口径推進装置の先端ヘッドの断面側面図である。
【
図3】この発明の実施の形態例1の小口径推進装置の前面図である。
【
図4】この発明の実施の形態例1の小口径推進装置の先端ヘッドの、
図2におけるX-X線断面図である。
【
図5】この発明の実施の形態例1の小口径推進装置の使用状態を示す断面図である。
【
図6】この発明の実施の形態例1の小口径推進装置を使用する地中の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施の形態例1)
この発明の実施の形態例1の小口径推進装置Aを
図1~
図5に基づいて説明する。
【0021】
この小口径推進装置Aは、
図5に示すように、地中に掘った立坑1内にベースマシン2を載置、固定し、当該ベースマシン2の押圧装置2aの先端部に、先端に先端ヘッド3を接続した布設管4の後部を嵌め、当該先端ヘッド3及びこれに続く布設管4を回転させながら、前記押圧装置2aにより先端ヘッド3及び布設管4を土中に押圧推進させ、推進に伴って布設管4を立坑1内で継ぎ足して行くものである。
【0022】
当該先端ヘッド3の先端面は斜めに切断された傾斜面5を有し、当該傾斜面5の後部上部を垂直に切り落として垂直面6を形成し、当該垂直面6の中央部に充填材吐出口7その左右に照明具8及びCCDカメラ9を設けている。この様に照明具8とCCDカメラ9を離して設けているのは、両者が近い位置にあると照明具8の光がCCDカメラ9の前面の保護ガラスに反射してしまい、カメラで前方を撮影できないためである。
【0023】
また、前記垂直面6の前方に、垂直面6に続き水平面10を設け、当該水平面10に、前記充填材吐出口7、照明具8及びCCDカメラ9に夫々相応する位置に凹部11を設けて当該各凹部11内に充填材吐出口洗浄ノズル12、照明具洗浄ノズル13及びカメラ洗浄ノズル14を設けている。
【0024】
これらの充填材吐出口洗浄ノズル12、照明具洗浄ノズル13及びカメラ洗浄ノズル14から、前記充填材吐出口7、照明具8及びCCDカメラ9に水を噴射させて、洗浄するようになっている。従って、これらの充填材吐出口7、照明具8及びCCDカメラ9の前面が土砂で塞がれて夫々の機能が低下するのを防ぐ。
【0025】
また、前記傾斜面5には土圧検出センサであるダイヤフラム15が設けられ、当該ダイヤフラム15の裏面から先端ヘッド3内部に伸びた土圧検出ロッド16の他端が同じく先端ヘッド3内部に設けた土圧検出スイッチ17に接続されている。この土圧検出スイッチ17は、先端ヘッド3の傾斜面5に土砂があるときは当該土砂の土圧を前記ダイヤフラム15で検出し、警報が鳴り(オン)、空洞部に達した時点で土圧を検出せず、警報が止まる(オフ)ようになっている。
【0026】
また、前記充填材吐出口7から出てくる充填材は硬化後に掘進を再開することから、再施工可能な条件である一軸圧縮強度0.5N/mm2程度となる、粉末粘土に水とセメント及び混和剤から成る材料と珪酸ソーダを2ショットで混錬する瞬結型充填材を使用する。
【0027】
従って、
図2に示すように、先端ヘッド3の充填材吐出口7の手前まで粉末粘土に水とセメント及び混和剤から成る材料を配管18で搬送し、珪酸ソーダは配管19で搬送して、充填材吐出口7の手前でこれらを混錬して充填材吐出口7から外部に吐出する構成となっている。
【0028】
また、前記充填材吐出口7と土圧検出センサのダイヤフラム15とは離れた位置に設けている。これも両者が近い位置にあると、充填材の吐出圧をダイヤフラム15で誤検知してしますおそれを回避するためである。
【0029】
また、前記充填材吐出口洗浄ノズル12、照明具洗浄ノズル13及びカメラ洗浄ノズル14には、夫々布設管4内を通した配管から洗浄水が供給されている。
【0030】
また、
図2において先端ヘッド3の中心軸位置にターゲット20が設けられている。このターゲット20を使って、先端ヘッド3の向きを検出し、先端ヘッド3を回転させて前記傾斜面5の向きを変えて推進の方向修正を行う。
【0031】
以上の構成の小口径推進装置Aを使用して布設管4を土中に掘進させていくには、
図5に示すように、立坑1のベースマシン2の押圧装置2aの先端部に、先端に先端ヘッド3を接続した布設管4の後部を把持し、当該先端ヘッド3及びこれに続く布設管4を回転させながら、前記押圧装置2aにより先端ヘッド3及び布設管4を土中に押圧推進させて行く。
【0032】
この様な推進工事において、
図6に示すように、土中の空洞部Bに先端ヘッド3が到達すると、前記CCDカメラ9により空洞部Bを視認できる。これは照明具8の光で空洞部Bが照らされ、これを前記CCDカメラ9で撮影し、立坑1内又は地上のモニタに前記カメラの画像を映して作業者が確認する。また、これと同時に土圧検出スイッチ17による警報が止む。
【0033】
この様に空洞部Bの確認をすると、作業者は小口径推進装置Aの運転を止め、立坑1又は地上から充填材を配管18及び19を通して先端ヘッド3まで搬送し、充填材吐出口7の手前で粉末粘土に水とセメント及び混和剤から成る材料と珪酸ソーダを2ショットで混錬する。そしてこれを充填材吐出口7から空洞部B内に注入、充填する。また、前記充填材吐出口7には一定時間毎に充填材吐出口洗浄ノズル12から洗浄水をかけて吐出口が塞がらないように洗浄する。
【0034】
前記空洞部Bへの充填材の充填が終わると、数時間充填材の硬化を待つ。そして一定時間後に再び小口径推進装置Aを稼働させると、硬化した充填材の土圧により前記土圧検出スイッチ17がオンとなり警報が鳴る。これにより充填材が硬化していることが分かり、推進工事を再開させる。また、前記警報が鳴らない場合は前記充填材の硬化が未だされていないことが分かり、硬化を待つこととなる。
【0035】
この様にして、推進工事の途中で空洞部Bに遭遇しても、当該空洞部Bを充填材で埋めて推進工事を進めることができる。
【0036】
なお、上記実施の形態例1では、充填材を具体的に示しているが、再施工可能な条件である一軸圧縮強度が0.15N/mm2~0.55N/mm2の範囲であれば他のものでもよい。
【0037】
また、上記実施の形態例1では、照明具8とCCDカメラ9を離して設けているが、この構成はこの発明の必須要件ではない。また、充填材吐出口7とダイヤフラム15の位置構成も同様に必須要件ではない。
【0038】
また、上記実施の形態例1では先端ヘッド3の傾斜面5の後部を削って垂直面6及び水平面10とし、前記垂直面6に充填材吐出口7、照明具8及びCCDカメラ9を設け、前記水平面10に凹部11を設けてこれらの凹部11に充填材吐出口洗浄ノズル12、照明具洗浄ノズル13及びカメラ洗浄ノズル14を設けたが、これらの垂直面6及び水平面10を設けずに、傾斜面5の後部に充填材吐出口7、照明具8及びCCDカメラ9を、また、これらの前方の傾斜面5に充填材吐出口洗浄ノズル12、照明具洗浄ノズル13及びカメラ洗浄ノズル14を夫々設けてもよい。
【符号の説明】
【0039】
A 小口径推進装置 B 空洞部
1 立坑 2 ベースマシン
2a 押圧装置 3 先端ヘッド
4 布設管 5 傾斜面
6 垂直面 7 充填材吐出口
8 照明具 9 CCDカメラ
10 水平面 11 凹部
12 充填材吐出口洗浄ノズル 13 照明具洗浄ノズル
14 カメラ洗浄ノズル 15 ダイヤフラム
16 土圧検出ロッド 17 土圧検出スイッチ
18 配管 19 配管
20 ターゲット