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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044464
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】半導体レーザおよび半導体レーザ装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/22 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
H01S5/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150096
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】特許業務法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 勇太
(72)【発明者】
【氏名】川西 秀和
(72)【発明者】
【氏名】菊地 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】保科 幸男
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 秀輝
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA08
5F173AA57
5F173AG20
5F173AH22
5F173AL04
5F173AP05
5F173AP32
5F173AP33
5F173AP82
5F173AP92
5F173AR72
(57)【要約】
【課題】排熱性の高い半導体レーザ、およびそのような半導体レーザを備えた半導体レーザ装置を提供する。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る半導体レーザは、第1半導体層と、活性層と、活性層を介して第1半導体層上に積層され、帯状のリッジ部を有するとともに、リッジ部のすそ野に高抵抗領域を有する第2半導体層とを備えている。この半導体レーザは、リッジ部のうち、リッジ部の幅方向の両側面に接するとともに、高抵抗領域のうち、少なくとも一部が露出するように構成された絶縁層と、リッジ部の上面に接するとともに、高抵抗領域のうち、絶縁層によって覆われずに露出している箇所の全体もしくは一部に接する電極層とを更に備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体層と、
活性層と、
前記活性層を介して前記第1半導体層上に積層され、帯状のリッジ部を有するとともに、前記リッジ部のすそ野に高抵抗領域を有する第2半導体層と、
前記リッジ部のうち、前記リッジ部の幅方向の両側面に接するとともに、前記高抵抗領域のうち、少なくとも一部が露出するように構成された絶縁層と、
前記リッジ部の上面に電気的に接続されるとともに、前記高抵抗領域のうち、前記絶縁層によって覆われずに露出している箇所に接する電極層と
を備えた
半導体レーザ。
【請求項2】
前記高抵抗領域は、前記第2半導体層に対するイオン注入によって前記第2半導体層の一部を高抵抗化することにより形成された領域である
請求項1に記載の半導体レーザ。
【請求項3】
前記絶縁層は、前記リッジ部の上面を間にして互いに対向するとともに前記リッジ部の延在方向と平行な方向に延在する第1絶縁層および第2絶縁層を有し、
前記高抵抗領域は、前記リッジ部の一方の側面である第1側面側に形成された第1高抵抗領域と、前記リッジ部の他方の側面である第2側面側に形成された第2高抵抗領域とを有し、
前記第1絶縁層は、前記第1側面から前記第1高抵抗領域の端縁に渡って形成され、
前記第2絶縁層は、前記第2側面から前記第2高抵抗領域の端縁に渡って形成され、
前記電極層は、前記リッジ部の上面のうち、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層によって覆われずに露出している箇所に接するとともに、前記第1高抵抗領域および前記第2高抵抗領域に接する
請求項1に記載の半導体レーザ。
【請求項4】
前記高抵抗領域は、前記活性層に達する深さにまで形成されている
請求項1に記載の半導体レーザ。
【請求項5】
前記第1半導体層、前記活性層および前記第2半導体層を含む半導体層は、前記リッジ部の延在方向と平行な方向において、前記リッジ部を介して互いに対向配置された一対の共振器端面と、前記リッジ部の幅方向と平行な方向において、互いに対向配置された一対の端面とを更に有し、
前記高抵抗領域は、前記一対の共振器端面および前記一対の端面にも形成されている
請求項1に記載の半導体レーザ。
【請求項6】
前記半導体層は、前記一対の端面およびその近傍に欠陥集中領域を有し、
前記高抵抗領域は、前記欠陥集中領域にも形成されている
請求項5に記載の半導体レーザ。
【請求項7】
前記第2半導体層は、前記リッジ部を間にして互いに対向する位置に台座部を有し、
前記高抵抗領域は、前記リッジ部と前記台座部の間にある溝部の底面の直下から前記台座部に渡って形成されている
請求項1に記載の半導体レーザ。
【請求項8】
前記第2半導体層は、前記リッジ部を間にして互いに対向する位置に台座部を有し、
前記高抵抗領域は、前記リッジ部のすそ野のうち、前記リッジ部と前記台座部の間にある溝部の底面の直下を除く領域であって、かつ前記台座部に形成されている
請求項1に記載の半導体レーザ。
【請求項9】
半導体レーザと、
前記半導体レーザと電気的に接続された接続パッドと
を備え、
前記半導体レーザは、
第1半導体層と、
活性層と、
前記活性層を介して前記第1半導体層上に積層され、帯状のリッジ部を有するとともに、前記リッジ部のすそ野に高抵抗領域を有する第2半導体層と、
前記リッジ部のうち、前記リッジ部の幅方向の両側面に接するとともに、前記高抵抗領域のうち、少なくとも一部が露出するように構成された絶縁層と、
前記リッジ部の上面および前記接続パッドに電気的に接続され、前記高抵抗領域のうち、前記絶縁層によって覆われずに露出している箇所に接する電極層と
を有する
半導体レーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体レーザおよび半導体レーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
端面出射型の半導体レーザについては、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-311309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
端面出射型の半導体レーザでは、発熱による出力低下を抑制するために、排熱性を高めることが求められる。従って、排熱性の高い半導体レーザ、およびそのような半導体レーザを備えた半導体レーザ装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一実施形態に係る半導体レーザは、第1半導体層と、活性層と、活性層を介して第1半導体層上に積層され、帯状のリッジ部を有するとともに、リッジ部のすそ野に高抵抗領域を有する第2半導体層とを備えている。この半導体レーザは、リッジ部のうち、リッジ部の幅方向の両側面に接するとともに、高抵抗領域のうち、少なくとも一部が露出するように構成された絶縁層と、リッジ部の上面に電気的に接続されるとともに、高抵抗領域のうち、絶縁層によって覆われずに露出している箇所の全体もしくは一部に接する電極層とを更に備えている。
【0006】
本開示の一実施形態に係る半導体レーザ装置は、半導体レーザと、半導体レーザと電気的に接続された接続パッドとを備えている。半導体レーザは、第1半導体層と、活性層と、活性層を介して第1半導体層上に積層され、帯状のリッジ部を有するとともに、リッジ部のすそ野に高抵抗領域を有する第2半導体層とを備えている。この半導体レーザは、リッジ部のうち、リッジ部の幅方向の両側面に接するとともに、高抵抗領域のうち、少なくとも一部が露出するように構成された絶縁層と、リッジ部の上面および接続パッドに電気的に接続され、高抵抗領域のうち、絶縁層によって覆われずに露出している箇所の全体もしくは一部に接する電極層とを更に備えている。
【0007】
本開示の一実施形態に係る半導体レーザおよび半導体レーザ装置では、リッジ部の両側面に接する絶縁層が形成されており、リッジ部の上面に電気的に接続されるとともに、高抵抗領域のうち、絶縁層によって覆われずに露出している箇所に接する電極層が形成されている。これにより、活性層で発生した熱がリッジ部の上面や高抵抗領域を介して電極層に伝わるので、リッジ部の側面やすそ野を覆う絶縁層を設けた場合と比べて、放熱性を高くすることができる。なお、高抵抗領域では電流が流れ難いことから、リッジ部以外の箇所に電流パスが生成されるのを防止しつつ、放熱性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第1の実施形態に係る半導体レーザの斜視構成例を表す図である。
図2図1の半導体レーザのA-A線での断面構成例を表す図である。
図3図1の半導体レーザのB-B線での断面構成例を表す図である。
図4A図1の半導体レーザの製造方法の一例を表す図である。
図4B図4AのA-A線での断面構成例を表す図である。
図4C図4AのB-B線での断面構成例を表す図である。
図5A図4Aに続く製造過程の一例を表す図である。
図5B図5AのA-A線での断面構成例を表す図である。
図5C図5AのB-B線での断面構成例を表す図である。
図6A図5Aに続く製造過程の一例を表す図である。
図6B図6AのA-A線での断面構成例を表す図である。
図6C図6AのB-B線での断面構成例を表す図である。
図7A図6Aに続く製造過程の一例を表す図である。
図7B図7AのA-A線での断面構成例を表す図である。
図7C図7AのB-B線での断面構成例を表す図である。
図8図1の半導体レーザの一変形例を表す図である。
図9図8の半導体レーザのA-A線での断面構成例を表す図である。
図10図8の半導体レーザのB-B線での断面構成例を表す図である。
図11図1の半導体レーザの一変形例を表す図である。
図12図11の半導体レーザのA-A線での断面構成例を表す図である。
図13図11の半導体レーザのB-B線での断面構成例を表す図である。
図14図1の半導体レーザの一変形例を表す図である。
図15図14の半導体レーザのA-A線での断面構成例を表す図である。
図16図14の半導体レーザのB-B線での断面構成例を表す図である。
図17図2の半導体レーザの一変形例を表す図である。
図18図9の半導体レーザの一変形例を表す図である。
図19】本開示の第2の実施形態に係る半導体レーザ装置の断面構成例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。以下の説明は本開示の一具体例であって、本開示は以下の態様に限定されるものではない。また、本開示は、各図に示す各構成要素の配置や寸法、寸法比などについても、それらに限定されるものではない。なお、説明は、以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態(半導体レーザ)
2.変形例(半導体レーザ)
3.第2の実施の形態(半導体レーザ装置)
【0010】
<1.第1の実施の形態>
[構成]
本開示の第1の実施の形態に係る半導体レーザ1について説明する。図1は、本実施の形態に係る半導体レーザ1の斜視構成例を表したものである。
【0011】
半導体レーザ1は、後述の半導体層20を共振器方向から一対の共振器端面S1,S2によって挟み込んだ構造となっている。つまり、一対の共振器端面S1,S2は、後述のリッジ部20Aの延在方向と平行な方向において、リッジ部20Aを介して互いに対向配置されている。共振器端面S1は、レーザ光が外部に出射される前端面となっており、共振器端面S2は、共振器端面S1と対向配置された後端面となっている。従って、半導体レーザ1は、いわゆる端面出射型の半導体レーザの一種である。
【0012】
半導体レーザ1(半導体層20)は、共振器方向において互いに対向する共振器端面S1,S2と、共振器端面S1および共振器端面S2の間に挟まれた凸形状のリッジ部20Aとを備えている。リッジ部20Aは、共振器方向に延在する帯状の形状となっている。リッジ部20Aは、例えば、後述のコンタクト層26の表面から後述の第1上部クラッド層25の中途にかけてエッチング除去がなされることにより形成される。つまり、リッジ部20Aの両脇には、第1上部クラッド層25の一部が露出している。
【0013】
リッジ部20Aの幅(共振器方向と直交する方向の長さ)は、例えば、0.5μm以上100μm以下となっており、例えば、40μmとなっている。リッジ部20Aの、共振器方向の長さは、例えば、50μm以上3000μm以下となっており、例えば、1200μmとなっている。以下では、幅は、共振器方向と交差する方向の長さを指すものとする。また、共振器方向と交差する方向を「幅方向」と称するものとする。
【0014】
リッジ部20Aの一方の端面が、共振器端面S1に露出しており、リッジ部20Aの他方の端面が、共振器端面S2に露出している。共振器端面S1,S2は、へき開によって形成された面である。共振器端面S1,S2は、共振器ミラーとして機能し、リッジ部20Aは、光導波路として機能する。共振器端面S1には、例えば、共振器端面S1での反射率が15%程度となるように構成された反射防止膜が設けられていてもよい。共振器端面S2には、例えば、共振器端面S2での反射率が95%程度となるように構成された多層反射膜が設けられていてもよい。半導体レーザ1(半導体層20)は、さらに、幅方向において互いに対向する一対の側面S3,S4を有している。この一対の側面S3,S4は、ダイシング、へき開もしくは裂開によって形成された面であることが望ましい。
【0015】
半導体レーザ1は、リッジ部20Aのうち、幅方向の両側面に接する絶縁層50を備えている。絶縁層50は、リッジ部20Aを保護するとともに、半導体層20に電流を注入する領域(つまり、リッジ部20Aと上部電極層30とが互いに接する領域)を規定する。絶縁層50は、さらに、後述の高抵抗領域20C(20C-1,20C-2)のうち、少なくとも一部が露出するように構成されており、高抵抗領域20C(20C-1,20C-2)のうち、少なくとも一部に接するように構成されている。
【0016】
絶縁層50は、例えば、リッジ部20Aの上面を間にして互いに対向するとともにリッジ部20Aの延在方向と平行な方向に延在する絶縁層51および絶縁層52を有している。絶縁層51は、リッジ部20Aの一方の側面(第1側面)から、後述の高抵抗領域20C-1の端縁に渡って形成されている。つまり、絶縁層51は、リッジ部20Aの一方の側面(第1側面)と、高抵抗領域20C-1との間に、第1上部クラッド層25のうち、高抵抗領域20C-1よりも抵抗値の低い領域が存在する場合に、そのような領域を覆うように形成されている。絶縁層52は、リッジ部20Aの他方の側面(第2側面)から、後述の高抵抗領域20C-2の端縁に渡って形成されている。つまり、絶縁層52は、リッジ部20Aの他方の側面(第2側面)と、高抵抗領域20C-2との間に、第1上部クラッド層25のうち、高抵抗領域20C-2よりも抵抗値の低い領域が存在する場合に、そのような領域を覆うように形成されている。絶縁層51,52は、例えば、厚さ10nm~500nmのSiO層やSiN層などによって構成されている。
【0017】
図2は、図1の半導体レーザ1のA-A線での断面構成例を表したものである。図3は、図1の半導体レーザ1のB-B線での断面構成例を表したものである。図2図3には、半導体レーザ1の横方向の断面構成例が表されている。図3には、半導体レーザ1の共振器端面S1付近)の断面構成例が表されている。
【0018】
半導体レーザ1は、基板10上に半導体層20を備えたものである。半導体層20は、例えば、下部クラッド層21、下部ガイド層22、活性層23、上部ガイド層24、第1上部クラッド層25、コンタクト層26および第2上部クラッド層27を基板10側からこの順に有している。上部ガイド層24、第1上部クラッド層25、コンタクト層26および第2上部クラッド層27は、活性層23を介して、下部ガイド層22上に積層されている。半導体層20には、上記した層以外の層(例えばバッファ層など)が更に設けられていてもよい。また、半導体層20において、例えば、第2上部クラッド層27などが省略されてもよい。
【0019】
基板10は、例えば、活性層23などをエピタキシャル結晶成長させる際に用いられた結晶成長基板である。基板10、下部クラッド層21、下部ガイド層22、活性層23、上部ガイド層24、第1上部クラッド層25およびコンタクト層26は、例えば、窒化ガリウム系の半導体によって構成されている。基板10は、例えば、GaN基板である。下部クラッド層21、下部ガイド層22、活性層23、上部ガイド層24、第1上部クラッド層25およびコンタクト層26は、例えば、GaN、AlGaN、AlInN、GaInN、AlGaInNなどによって構成されている。
【0020】
下部クラッド層21および下部ガイド層22には、例えば、n型不純物として、例えば、シリコン(Si)などが含まれている。つまり、下部クラッド層21および下部ガイド層22は、n型半導体層である。上部ガイド層24、第1上部クラッド層25およびコンタクト層26には、例えば、p型不純物として、例えば、マグネシウム(Mg)や亜鉛(Zn)などが含まれている。つまり、上部ガイド層24、第1上部クラッド層25およびコンタクト層26は、p型半導体層である。活性層23は、例えば、量子井戸構造を有している。量子井戸構造の種類としては、例えば、単一量子井戸構造(QW構造)、または、多重量子井戸構造(MQW構造)が挙げられる。量子井戸構造は、井戸層および障壁層を交互に積層させた構造となっている。井戸層および障壁層の組合せとしては、例えば、(InGa(1-y)N,GaN)、(InGa(1-y)N,InGa(1-z)N)[但し、y>z]、(InGa(1-y)N,AlGaN)などが挙げられる。
【0021】
第2上部クラッド層27は、リッジ部20Aの頂部(具体的にはコンタクト層26)に接して形成されている。第2上部クラッド層27は、例えば、透明導電材料で形成されている。透明導電材料としては、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、ITiO(Indium Titanium Oxide)、AZO(Al-ZnO)、IGZO(InGaZnOx)などが挙げられる。これらの透明導電材料では、導電性がリッジ部20Aを構成する各半導体層の導電性よりも高く、しかも、屈折率がリッジ部20Aを構成する各半導体層の屈折率よりも高い。そのため、第2上部クラッド層27として透明導電材料を用い、リッジ部20Aを低く形成することにより、半導体レーザ1の駆動電圧を低減することができ、しかも、積層方向における光閉じ込め性を向上させることができる。
【0022】
半導体層20は、例えば、図1図3に示したように、リッジ部20Aのすそ野に高抵抗領域20Cを有している。リッジ部20Aのすそ野とは、半導体層20の、リッジ部20A側の表面(以下、「半導体層20の上面」と称する。)のうち、リッジ部20Aを除いた領域を示している。高抵抗領域20Cは、半導体層20のうち、少なくとも第1上部クラッド層25に形成されている。高抵抗領域20Cは、例えば、半導体層20のうち、少なくとも第1上部クラッド層25に対するイオン注入によって、半導体層20のうち、少なくとも第1上部クラッド層25の一部を高抵抗化することにより形成された領域である。
【0023】
高抵抗領域20Cは、例えば、図2図3に示したように、第1上部クラッド層25のうち、リッジ部20Aのすそ野に相当する領域の表面から、活性層23に達する深さにまで形成されていてもよい。なお、図2図3には、高抵抗領域20Cが第1上部クラッド層25のうち、リッジ部20Aのすそ野に相当する領域の表面から、下部ガイド層22に達する深さにまで形成されている場合が例示されている。
【0024】
高抵抗領域20Cは、例えば、リッジ部20Aの一方の側面(第1側面)側に形成された高抵抗領域20C-1と、リッジ部20Aの他方の側面(第2側面)側に形成された高抵抗領域20C-2とを有している。高抵抗領域20C-1,20C-2は、リッジ部20Aのすそ野において、共振器方向に延在している。高抵抗領域20C-1は、例えば、半導体層20のうち、リッジ部20Aの側面と接する箇所から側面S3まで形成されている。なお、高抵抗領域20C-1は、例えば、半導体層20のうち、リッジ部20Aの側面から所定の距離だけ離れた箇所から側面S3まで形成されていてもよい。高抵抗領域20C-2は、例えば、半導体層20のうち、リッジ部20Aの側面と接する箇所から側面S4まで形成されている。なお、高抵抗領域20C-2は、例えば、半導体層20のうち、リッジ部20Aの側面から所定の距離だけ離れた箇所から側面S4まで形成されていてもよい。高抵抗領域20C-1は、例えば、半導体層20のうち、リッジ部20Aの一方の側面(第1側面)側の側面S3に露出していてもよい(形成されていてもよい)。高抵抗領域20C-2は、例えば、半導体層20のうち、リッジ部20Aの他方の側面(第2側面)側の側面S4に露出していてもよい(形成されていてもよい)。高抵抗領域20C-1,20C-2は、例えば、共振器端面S1,S2のうち、リッジ部20Aのすそ野に相当する箇所にも露出していてもよい(形成されていてもよい)。
【0025】
高抵抗領域20Cをイオン注入によって形成する際に、例えば、ホウ素(B)、窒素(N)、プロトン(H)等が用いられる。イオン注入においてホウ素(B)を用いた場合には、注入エネルギーを例えば40keV~160keVの範囲内とし、ドーズ量を例えば2×1013cm-2~2×1015cm-2の範囲内とする。イオン注入の濃度を深さ方向で均一にするために、例えば、注入エネルギーの異なる複数回のイオン注入を行ってもよい。
【0026】
側面S3,S4において、例えば、図1図3に示したように、段差部20Bが設けられていてもよい。段差部20Bは、例えば、半導体層20を、第1上部クラッド層25側から、少なくとも活性層23を貫通する深さまでエッチングすることにより形成されている。段差部20Bには、例えば、図1図3に示したように、高抵抗領域20Dが形成されていてもよい。高抵抗領域20Dは、例えば、段差部20Bに対するイオン注入によって、段差部20Bの一部を高抵抗化することにより形成された領域である。高抵抗領域20Dをイオン注入により形成する方法は、高抵抗領域20Cをイオン注入により形成する方法と同様である。
【0027】
半導体レーザ1は、さらに、半導体層20の上面側に上部電極層30を備えており、半導体層20の裏面側に下部電極層40を備えている。
【0028】
上部電極層30は、リッジ部20Aの上に形成されており、リッジ部20Aの上面と電気的に接続されている。上部電極層30は、リッジ部20Aの上面(具体的にはコンタクト層26)に接して形成された第2上部クラッド層27を介して、リッジ部20Aの上に形成されており、コンタクト層26に電気的に接続されている。上部電極層30は、さらに、リッジ部20Aのすそ野の上にも形成されており、高抵抗領域20Cのうち、絶縁層50によって覆われずに露出している箇所に接している。つまり、上部電極層30は、リッジ部20Aのすそ野(高抵抗領域20C)に対して直接、接している。
【0029】
上部電極層30は、例えば、パッドメタル31、バリアメタル32およびボンディングメタル33をリッジ部20A側からこの順に有している。
【0030】
パッドメタル31は、外部から供給された電流をリッジ部20Aに注入するための金属層である。パッドメタル31は、例えば、チタン(Ti)層、白金(Pt)層、金(Au)層がリッジ部20Aに近い側からこの順に積層された構成となっている。Ti層の厚さは、例えば、2nm以上100nm以下となっている。Pt層の厚さは、例えば、10nm以上300nm以下となっている。Au層の厚さは、例えば、10nm以上3000nm以下となっている。パッドメタル31は、リッジ部20Aの上面と電気的に接続されていればよく、その層構成は上記の構成に限らない。
【0031】
パッドメタル31は、第2上部クラッド層27に接しており、第2上部クラッド層27を介してリッジ部20Aの上面(具体的にはコンタクト層26)と電気的に接続されている。パッドメタル31は、共振器端面S1と共振器端面S2との間に形成されており、具体的には、共振器端面S1と共振器端面S2との間の領域であって、かつ共振器端面S1,S2から所定の間隙だけ離れた領域に形成されている。以下では、共振器端面S1と共振器端面S2との間の領域であって、かつパッドメタル31が形成されていない領域を第1端部領域と称するものとする。
【0032】
パッドメタル31の幅は、第2上部クラッド層27の幅よりも広くなっており、例えば、チップ幅を150μmとした場合、5μm以上、140μm以下となっている。パッドメタル31は、絶縁層51,52に接するとともに、高抵抗領域20C-1,20C-2のうち、絶縁層51,52によって覆われずに露出している箇所に接している。パッドメタル31は、側面S3と側面S4との間に形成されており、具体的には、側面S3と側面S4との間の領域であって、かつ側面S3,S4から所定の間隙だけ離れた領域に形成されている。以下では、側面S3と側面S4との間の領域であって、かつパッドメタル31が形成されていない領域を第2端部領域と称するものとする。このように、パッドメタル31が共振器端面S1,S2から十分に離れて配置されていることにより、パッドメタル31が共振器端面S1,S2からはみ出したり、共振器端面S1,S2に触れたりするのが防止される。また、パッドメタル31が側面S3,S4から十分に離れて配置されていることにより、パッドメタル31が側面S3,S4からはみ出したり、側面S3,S4に触れたりするのが防止される。また、パッドメタル31が第1端部領域や第2端部領域にも形成されている場合と比べて、パッドメタル31を介したリッジ部20Aへの応力が低減される。
【0033】
バリアメタル32は、半田の成分(例えば、スズ(Sn))がボンディングメタル33側からパッドメタル31側に拡散するのを抑制するための金属層である。半田の成分(例えば、Sn)がパッドメタル31に拡散し続けると、パッドメタル31の端部が突然劣化することがある。このようなパッドメタル31の突然の劣化は半導体レーザ1の長期信頼性を損なう。従って、バリアメタル32は、半導体レーザ1の長期信頼性を確保するための層である。
【0034】
バリアメタル32は、例えば、Ti層、Pt層がリッジ部20Aに近い側からこの順に積層された構成となっており、Sn系の半田に対して濡れ性を有しないメタル層を含んで構成されている。Ti層の厚さは、例えば、2nm以上500nm以下となっている。Pt層の厚さは、例えば、2nm以上100nm以下となっている。パッドメタル31は、半田の成分(例えば、Sn)がボンディングメタル33側からパッドメタル31側に拡散するのを抑制することの可能な構成となっていればよく、その層構成は上記の構成に限らない。バリアメタル32の最表面(ボンディングメタル33側の表面)は、Sn系の半田に対して濡れ性を有しないメタル(たとえば、Ti、Pt、アルミニウム(Al)もしくはニッケル(Ni))によって構成されていることが好ましい。
【0035】
バリアメタル32は、パッドメタル31を覆うように形成されている。具体的には、バリアメタル32は、パッドメタル31の、共振器方向の両端部と、パッドメタル31の、幅方向の両端部と、パッドメタル31の形成面のうち、少なくともパッドメタル31の端部近傍を覆っている。これにより、パッドメタル31とボンディングメタル33とが直接接することが防止される。バリアメタル32は、さらに、側面S3,S4から十分に離れて配置されている。これにより、バリアメタル32が側面S3,S4からはみ出したり、側面S3,S4に触れたりするのが防止される。
【0036】
ボンディングメタル33は、例えば、半田を接触させる金属層である。ボンディングメタル33は、例えば、Ti層、Au層がリッジ部20Aに近い側からこの順に積層された構成となっている。Ti層の厚さは、例えば、2nm以上500nm以下となっている。Au層の厚さは、例えば、10nm以上1000nm以下となっている。ボンディングメタル33の最表面は、Sn系の半田に対して濡れ性を有するメタル(たとえば、Au、銀(Ag)もしくはパラジウム(Pd))によって構成されていることが好ましい。
【0037】
ボンディングメタル33は、バリアメタル32の表面に接して形成されている。ボンディングメタル33は、共振器端面S1と共振器端面S2との間に形成されており、具体的には、共振器端面S1と共振器端面S2との間の領域であって、かつ共振器端面S1,S2から所定の間隙だけ離れた領域に形成されている。このように、ボンディングメタル33が共振器端面S1,S2から十分に離れて配置されていることにより、ボンディングメタル33が共振器端面S1,S2からはみ出したり、共振器端面S1,S2に触れたりするのが防止される。また、ボンディングメタル33は、側面S3と側面S4の間に形成されており、具体的には、側面S3と側面S4との間の領域であって、かつ側面S3,S4から所定の間隙だけ離れた領域に形成されている。このように、ボンディングメタル33が側面S3,S4から十分に離れて配置されていることにより、ボンディングメタル33が側面S3,S4からはみ出したり、側面S3,S4に触れたりするのが防止される。
【0038】
下部電極層40は、例えば、基板10の裏面に接して形成されている。下部電極層40は、例えば、Ti層、Al層、バナジウム(V)層、Pt層およびAu層のうち少なくとも2層以上が積層された構成となっている。また、下部電極層40は、基板10の裏面全体と接触していてもよいし、基板10の裏面の一部とだけ接していてもよい。
【0039】
[製造方法]
次に、図4A図7Cを参考にして、半導体レーザ1の製造方法について説明する。図4Aは、半導体レーザ1の製造過程におけるウェハの一部の平面構成例を表したものである。図4Bは、図4AのA-A線での断面構成例を表したものである。図4Cは、図4AのB-B線での断面構成例を表したものである。図5Aは、図4Aに続く製造過程の一例を表したものである。図5Bは、図5AのA-A線での断面構成例を表したものである。図5Cは、図5AのB-B線での断面構成例を表したものである。図6Aは、図5Aに続く製造過程の一例を表したものである。図6Bは、図6AのA-A線での断面構成例を表したものである。図6Cは、図6AのB-B線での断面構成例を表したものである。図7Aは、図6Aに続く製造過程の一例を表したものである。図7Bは、図7AのA-A線での断面構成例を表したものである。図7Cは、図7AのB-B線での断面構成例を表したものである。なお、図4A図4B図5A図5B図6A図6B図7A図7Bにおいて、両側面は、ウェハに対してへき開をすることになる箇所に対応している。図4C図5C図6C図7Cにおいて、両側面は、ウェハに対してダイシング、へき開または裂開を行うことになる箇所に対応している。
【0040】
半導体レーザ1を製造するためには、GaNよりなる基板10上に、化合物半導体を、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition :有機金属気相成長)法などのエピタキシャル結晶成長法により一括に形成する。この際、化合物半導体の原料としては、例えば、ガリウムの原料ガスとして例えばトリメチルガリウム((CHGa)を、アルミニウムの原料ガスとして例えばトリメチルアルミニウム((CHAl)を、インジウムの原料ガスとして例えばトリメチルインジウム((CHIn)をそれぞれ用いる。また、窒素の原料ガスとしてアンモニア(NH)を用いる。また、ケイ素の原料ガスとして例えばモノシラン(SiH)を、マグネシウムの原料ガスとして例えばビス=シクロペンタジエニルマグネシウム((CMg)をそれぞれ用いる。これにより、基板10上に、下部クラッド層21~コンタクト層26を形成する。
【0041】
次に、コンタクト層26上に、SiOやSiN等からなるエッチングマスク層110を形成する。例えば、蒸着やスパッタ等により、SiOやSiN等からなる誘電体層を形成した後、この誘電体層上にレジスト層を形成し、このレジスト層に対してフォトリソグラフィによるパターニングを行い、それにより得られた所定のパターンのレジスト層をマスクとして、フッ素系のガスを用いたRIE法やフッ化水素酸系のウエットエッチングによって、誘電体層を選択的にエッチングする。その結果、エッチングマスク層110が得られる。
【0042】
次に、エッチングマスク層110をマスクとして、塩素系のガスを用いたRIE法によって、活性層23を貫通するまで選択的にエッチングを行い、これにより、段差部20Bを形成する(図4A図4C)。続いて、エッチングマスク層110上にレジスト層120を形成した後、レジスト層120をマスクとして、イオン注入を行い、レジスト層120で覆われてない箇所に対して高抵抗領域20C(20C-1,20C-2),20Dを形成する(図5A図5C)。
【0043】
次に、エッチングマスク層110およびレジスト層120を除去した後、第2上部クラッド層27を形成する領域を開口部としたレジスト層を形成し、第2上部クラッド層27を例えば、真空蒸着法やスパッタ法により形成する。続いて、例えばRIE法により、少なくとも第2上部クラッド層27、コンタクト層26および第1上部クラッド層25の一部をエッチングにより除去する。これにより、リッジ部20Aを形成するとともに、リッジ部20A上に第2上部クラッド層27を形成する(図6A図6C)。
【0044】
次に、第2上部クラッド層27を含む表面全体に、例えば真空蒸着法やスパッタ法を用いて絶縁層を形成した後、例えばRIE法やフッ化水素を含む溶液を用いたパターニングにより、リッジ部20Aの側面に接する絶縁層50(51,52)を形成する(図7A図7C)。
【0045】
次に、第2上部クラッド層27、絶縁層50およびリッジ部20Aのすそ野の表面上に、例えば真空蒸着法やスパッタ法により、パッドメタル31を形成するためのメタル層を形成した後、例えばリフトオフ法を行うことにより、パッドメタル31を形成する。このとき、パッドメタル31を、共振器端面S1と共振器端面S2との間の領域であって、かつ共振器端面S1,S2から所定の間隙だけ離れた領域に形成する。さらに、パッドメタル31を、側面S3と側面S4との間の領域であって、かつ側面S3,S4から所定の間隙だけ離れた領域に形成する。なお、リフトオフ法の代わりに、RIE法やミリング法を用いて、パッドメタル31を形成してもよい。
【0046】
次に、パッドメタル31を含む表面上に、例えば真空蒸着法やスパッタ法により、バリアメタル32を形成するためのメタル層を形成した後、例えばリフトオフ法を行うことにより、バリアメタル32を形成する。このとき、パッドメタル31を覆うようにバリアメタル32を形成する。なお、リフトオフ法の代わりに、RIE法やミリング法を用いて、バリアメタル32を形成してもよい。
【0047】
次に、バリアメタル32の表面上に、例えば真空蒸着法やスパッタ法により、ボンディングメタル33を形成するためのメタル層を形成した後、例えばリフトオフ法を行うことにより、ボンディングメタル33を形成する。このとき、ボンディングメタル33を、共振器端面S1と共振器端面S2との間の領域であって、かつ共振器端面S1,S2から所定の間隙だけ離れた領域に形成する。さらに、ボンディングメタル33を、側面S3と側面S4との間の領域であって、かつ側面S3,S4から所定の間隙だけ離れた領域に形成する。なお、リフトオフ法の代わりに、RIE法やミリング法を用いて、ボンディングメタル33を形成してもよい。
【0048】
次に、基板10の裏面上に、例えば真空蒸着法やスパッタ法により、下部電極層40を形成するためのメタル層を形成した後、例えばリフトオフ法により、下部電極層40を形成する。次に、基板10をバー状に切り出し、必要に応じて、露出した端面部に反射率を制御するためのコーティング膜を形成する。さらに、バー状に切断された基板10から素子を切り出し、チップ化することで、半導体レーザ1が作製される。
【0049】
[動作]
このような構成の半導体レーザ1では、上部電極層30と下部電極層40との間に所定の電圧が印加されると、リッジ部20Aを通して活性層23に電流が注入され、これにより電子と正孔の再結合による発光が生じる。この光は、一対の共振器端面S1,S2により反射されるとともに、下部クラッド層21、第1上部クラッド層25および第2上部クラッド層27によって閉じ込められることにより、所定の発振波長でレーザ発振が生じる。このとき、半導体層20内には、発振したレーザ光が導波する光導波領域が形成される。光導波領域は、活性層23を中心としたリッジ部20Aの直下の領域に生成される。そして、一方の共振器端面S1から所定の発振波長のレーザ光が外部に出射される。
【0050】
[効果]
次に、半導体レーザ1の効果について説明する。
【0051】
端面出射型の半導体レーザでは、発熱による出力低下を抑制するために、排熱性を高めることが求められる。例えば、半導体レーザを、ヒートシンク等の排熱部材に対してジャンクションダウンで固定することが考えられる。ジャンクションダウンとは、半導体レーザの発光領域に近い方の電極を排熱部材側に向けて半導体レーザを排熱部材に固定する実装形態を指す。しかし、半導体レーザをジャンクションダウンで排熱部材に固定したとき、排熱部材に固定する電極と、発光領域との間に、不要な電流パスが形成されるのを防止するために設けた、SiOやSiNなどの絶縁層によって、排熱性が十分に得られないことがある。
【0052】
一方、本実施の形態では、リッジ部20Aの両側面に接する絶縁層50が形成されており、リッジ部20Aの上面に電気的に接続されるとともに、高抵抗領域20Cのうち、絶縁層50によって覆われずに露出している箇所に接する上部電極層30が形成されている。これにより、活性層23で発生した熱がリッジ部20Aの上面や高抵抗領域20Cを介して上部電極層30に伝わるので、リッジ部20Aの側面やすそ野を覆う絶縁層を設けた場合と比べて、放熱性を高くすることができる。また、高抵抗領域20Cでは電流が流れ難いことから、リッジ部20A以外の箇所に電流パスが生成されるのを防止しつつ、放熱性を高くすることができる。
【0053】
また、本実施の形態では、高抵抗領域20Cは、第1上部クラッド層25等に対するイオン注入によって第1上部クラッド層25等の一部を高抵抗化することにより形成された領域である。これにより、リッジ部20Aの側面やすそ野を覆う絶縁層を設けた場合と比べて、放熱性を高くすることができる。また、高抵抗領域20Cでは電流が流れ難いことから、リッジ部20A以外の箇所に電流パスが生成されるのを防止しつつ、放熱性を高くすることができる。
【0054】
また、本実施の形態では、リッジ部20Aの一方の側面(第1側面)に形成された絶縁層51は、第1側面から高抵抗領域20C-1の端縁に渡って形成されており、リッジ部20Aの他方の側面(第2側面)に形成された絶縁層52は、第2側面から高抵抗領域20C-2の端縁に渡って形成されている。これにより、リッジ部20A以外の箇所に電流パスが生成されるのを防止しつつ、放熱性を高くすることができる。
【0055】
また、本実施の形態では、高抵抗領域20Cは活性層23に達する深さにまで形成されている。これにより、高抵抗領域20Cによって、活性層23に電流を注入する領域を規定することができる。さらに、高抵抗領域20Cが高抵抗領域20Cの周囲の半導体領域と比べて低屈折率となっているので、高抵抗領域20Cによって横方向の光閉じ込めを実現することができる。
【0056】
また、本実施の形態では、高抵抗領域20Cは共振器端面S1,S2および側面S3,S4にも形成されている。これにより、例えば、上部電極層30が共振器端面S1,S2および側面S3,S4からはみ出したり、共振器端面S1,S2および側面S3,S4に触れたりした場合であっても、高抵抗領域20Cによって、リッジ部20A以外の箇所に電流パスが生成されるのを防止することができる。また、半田の側面への這い上がりに起因する電流パスが生成されるのも防止することができる。従って、リッジ部20A以外の箇所に電流パスが生成されるのを防止しつつ、放熱性を高くすることができる。
【0057】
<2.変形例>
次に、上記実施の形態に係る半導体レーザ1の変形例について説明する。
【0058】
[変形例A]
図8は、上記実施の形態に係る半導体レーザ1の一変形例を表したものである。図9は、図8の半導体レーザ1のA-A線での断面構成例を表したものである。図10は、図8の半導体レーザ1のB-B線での断面構成例を表したものである。
【0059】
上記実施の形態において、例えば、図8図10に示したように、リッジ部20Aの両脇(リッジ部20Aを間にして互いに対向する位置)にそれぞれ、リッジ部20Aを保護する台座部20Eが形成されていてもよい。台座部20Eは、例えば、図9図10に示したように、リッジ部20Aから第2上部クラッド層27が省略され、さらに、最表面を含む領域に高抵抗領域20Cが形成された構成となっていてもよい。このとき、例えば、図8図10に示したように、台座部20Eとリッジ部20Aとの間にある溝部の底面の直下から台座部20Eに渡って、高抵抗領域20Cが形成されていてもよい。なお、例えば、図11図13や、図14図16に示したように、リッジ部20Aのすそ野のうち、リッジ部20Aと台座部20Eとの間にある溝部の底面の直下を除く領域であって、かつ台座部20Eに高抵抗領域20Cが形成されていてもよい。
【0060】
本変形例においても、絶縁層50は、リッジ部20Aの側面から高抵抗領域20Cの端縁に渡って形成されており、例えば、リッジ部20Aの側面から上記溝部の底面を経由して台座部20Eの最表面に渡って形成されている。これにより、活性層23で発生した熱が上記溝部および台座部20Eを介して上部電極層30に伝わるので、リッジ部20Aの側面やすそ野を覆う絶縁層を設けた場合と比べて、放熱性を高くすることができる。なお、高抵抗領域20Cでは電流が流れ難いことから、リッジ部20A以外の箇所に電流パスが生成されるのを防止しつつ、放熱性を高くすることができる。
【0061】
[変形例B]
上記実施の形態およびその変形例において、例えば、図17図18に示したように、半導体層20が一対の側面S3,S4およびその近傍に欠陥集中領域20Fを有していてもよい。欠陥集中領域20Fは、例えば、基板10を、欠陥集中領域を含むGaN基板で構成したときに、GaN基板上に半導体層20を結晶成長により形成することにより、GaN基板の欠陥集中領域に対応して半導体層20に形成される。欠陥集中領域20Fが段差部20Bに形成されている場合、欠陥集中領域20Fを含む段差部20Bに対して高抵抗領域20Dが形成されており、欠陥集中領域20Fのうち、段差部20Bに露出している箇所(以下、「欠陥露出箇所」と称する。)を覆うように絶縁層53が形成されていてもよい。絶縁層53は、さらに、半導体層20の表面のうち、欠陥露出箇所と、上部電極層30の端部との間に露出している面を覆うように形成されていてもよい。このとき、絶縁層53の端部が上部電極層30の端部と半導体層20の上面との間に設けられていてもよい。絶縁層53は、例えば、上述の絶縁層50と同一の材料で構成されている。これにより、例えば、何らかの不具合で、上部電極層30が側面S3,S4にせり出してしまった場合であっても、絶縁層53によって、上部電極層30と欠陥集中領域20Fとの電気的な短絡を防ぐことができる。また、半田の側面への這い上がりに起因する電流パスが生成されるのを防止することもできる。
【0062】
[変形例C]
上記実施の形態およびその変形例では、下部電極層40が基板10の裏面に接していた。しかし、上記実施の形態およびその変形例において、下部クラッド層21または下部ガイド層22のうち、上部電極層30側の表面を露出させ、その露出した面に下部電極層40を接触させてもよい。このようにした場合には、半導体レーザ1との電気的な接続を全て、基板10の一方の面側だけで行うことができる。
【0063】
[変形例D]
上記実施の形態およびその変形例では、1つのリッジ部20Aが設けられていたが、複数のリッジ部20Aが設けられていてもよい。この場合、例えば、複数のリッジ部20Aを挟み込む領域に高抵抗領域20Cを設けることで、放熱性を向上させることが可能である。
【0064】
[変形例E]
上記実施の形態およびその変形例において、半導体レーザ1は、GaN系の材料とは異なる材料(例えばGaAs系の材料)で構成されていてもよい。この場合であっても、上記実施の形態およびその変形例と同様の効果を得ることができる。
【0065】
<3.第2の実施の形態>
[構成]
本開示の第2の実施の形態に係る半導体レーザ装置2について説明する。図19は、本実施の形態に係る半導体レーザ装置2の断面構成例を表したものである。
【0066】
半導体レーザ装置2は、リッジ部20Aが設けられた半導体レーザ1と、サブマウント60と、リード70,70とを備えている。本実施の形態では、リッジ部20Aが形成されている面を、サブマウント60側に向けて、半導体レーザ1がサブマウント60の上面に実装されている。つまり、半導体レーザ1は、ジャンクションダウンでサブマウント60の上面に実装されている。サブマウント60の上面には、接続パッド61が設けられている。
【0067】
半導体レーザ1の上部電極層30(具体的にはボンディングメタル33)は、半田62を介して、サブマウント60の接続パッド61と電気的に接続されている。ボンディングメタル33は、半田62に接している。接続パッド61は、ボンディングワイヤ81を介してリード80に電気的に接続されている。半導体レーザ1の下部電極層40は、ボンディングワイヤ71を介して、リード70と電気的に接続されている。ボンディングワイヤ81は、例えば、ボンディングワイヤ81の端部をボール状にして、そのボール状の端部に対して超音波および熱を加えることにより、接続パッド61およびリード80に接続されている。ボンディングワイヤ71は、例えば、ボンディングワイヤ71の端部をボール状にして、そのボール状の端部に対して超音波および熱を加えることにより、下部電極層40およびリード70に接続されている。半田62は、例えば、Sn系の半田材料で構成されている。
【0068】
本実施の形態では、上記実施の形態と同様に、半導体レーザ1において、リッジ部20A以外の箇所に電流パスが生成されるのを防止しつつ、放熱性を高くすることができる。これにより、半導体レーザ1で発生した熱を、上部電極層30、半田62および接続パッド61を介してサブマウント60に速やかに排出することが可能となるので、半導体レーザ1の高出力化が可能となる。
【0069】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本開示を説明したが、本開示は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々変形が可能である。なお、本明細書中に記載された効果は、あくまで例示である。本開示の効果は、本明細書中に記載された効果に限定されるものではない。本開示が、本明細書中に記載された効果以外の効果を持っていてもよい。
【0070】
また、例えば、本開示は以下のような構成を取ることができる。
(1)
第1半導体層と、
活性層と、
前記活性層を介して前記第1半導体層上に積層され、帯状のリッジ部を有するとともに、前記リッジ部のすそ野に高抵抗領域を有する第2半導体層と、
前記リッジ部のうち、前記リッジ部の幅方向の両側面に接するとともに、前記高抵抗領域のうち、少なくとも一部が露出するように構成された絶縁層と、
前記リッジ部の上面に電気的に接続されるとともに、前記高抵抗領域のうち、前記絶縁層によって覆われずに露出している箇所に接する電極層と
を備えた
半導体レーザ。
(2)
前記高抵抗領域は、前記第2半導体層に対するイオン注入によって前記第2半導体層の一部を高抵抗化することにより形成された領域である
(1)に記載の半導体レーザ。
(3)
前記絶縁層は、前記リッジ部の上面を間にして互いに対向するとともに前記リッジ部の延在方向と平行な方向に延在する第1絶縁層および第2絶縁層を有し、
前記高抵抗領域は、前記リッジ部の一方の側面である第1側面側に形成された第1高抵抗領域と、前記リッジ部の他方の側面である第2側面側に形成された第2高抵抗領域とを有し、
前記第1絶縁層は、前記第1側面から前記第1高抵抗領域の端縁に渡って形成され、
前記第2絶縁層は、前記第2側面から前記第2高抵抗領域の端縁に渡って形成され、
前記電極層は、前記リッジ部の上面のうち、前記第1絶縁層および前記第2絶縁層によって覆われずに露出している箇所に接するとともに、前記第1高抵抗領域および前記第2高抵抗領域に接する
(1)または(2)に記載の半導体レーザ。
(4)
前記高抵抗領域は、前記活性層に達する深さにまで形成されている
(1)ないし(3)のいずれか1つに記載の半導体レーザ。
(5)
前記第1半導体層、前記活性層および前記第2半導体層を含む半導体層は、前記リッジ部の延在方向と平行な方向において、前記リッジ部を介して互いに対向配置された一対の共振器端面と、前記リッジ部の幅方向と平行な方向において、互いに対向配置された一対の端面とを更に有し、
前記高抵抗領域は、前記一対の共振器端面および前記一対の端面にも形成されている
(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の半導体レーザ。
(6)
前記半導体層は、前記一対の端面およびその近傍に欠陥集中領域を有し、
前記高抵抗領域は、前記欠陥集中領域にも形成されている
(5)に記載の半導体レーザ。
(7)
前記第2半導体層は、前記リッジ部を間にして互いに対向する位置に台座部を有し、
前記高抵抗領域は、前記リッジ部と前記台座部の間にある溝部の底面の直下から前記台座部に渡って形成されている
(1)ないし(6)のいずれか1つに記載の半導体レーザ。
(8)
前記第2半導体層は、前記リッジ部を間にして互いに対向する位置に台座部を有し、
前記高抵抗領域は、前記リッジ部のすそ野のうち、前記リッジ部と前記台座部の間にある溝部の底面の直下を除く領域であって、かつ前記台座部に形成されている
(1)ないし(6)のいずれか1つに記載の半導体レーザ。
(9)
半導体レーザと、
前記半導体レーザと電気的に接続された接続パッドと
を備え、
前記半導体レーザは、
第1半導体層と、
活性層と、
前記活性層を介して前記第1半導体層上に積層され、帯状のリッジ部を有するとともに、前記リッジ部のすそ野に高抵抗領域を有する第2半導体層と、
前記リッジ部のうち、前記リッジ部の幅方向の両側面に接するとともに、前記高抵抗領域のうち、少なくとも一部が露出するように構成された絶縁層と、
前記リッジ部の上面および前記接続パッドに電気的に接続され、前記高抵抗領域のうち、前記絶縁層によって覆われずに露出している箇所に接する電極層と
を有する
半導体レーザ装置。
【0071】
本開示の一実施形態に係る半導体レーザおよび半導体レーザ装置によれば、リッジ部の両側面に接する絶縁層を形成し、リッジ部の上面に電気的に接続されるとともに、高抵抗領域のうち、絶縁層によって覆われずに露出している箇所に接する電極層を形成するようにしたので、活性層で発生した熱がリッジ部の上面や高抵抗領域を介して電極層に伝わる。これにより、リッジ部の側面やすそ野を覆う絶縁層を設けた場合と比べて、放熱性を高くすることができる。なお、高抵抗領域では電流が流れ難いことから、リッジ部以外の箇所に電流パスが生成されるのを防止しつつ、放熱性を高くすることができる。なお、本開示の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されず、本明細書中に記載されたいずれの効果であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…半導体レーザ、2…半導体レーザ装置、10…基板、20…半導体層、20A…リッジ部、20B…段差部、20C,20D…高抵抗領域、20E…台座部、20F…欠陥集中領域、21…下部クラッド層、22…下部ガイド層、23…活性層、24…上部ガイド層、25…第1上部クラッド層、26…コンタクト層、27…第2上部クラッド層、30…上部電極層、31…パッドメタル、32…バリアメタル、33…ボンディングメタル、40…下部電極層、50,51,52,53…絶縁層、60…サブマウント、61…接続パッド、62…半田、70,80…リード、71,71…ボンディングワイヤ、110…エッチングマスク層、120…レジスト層、S1,S2…共振器端面、S3,S4…側面。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
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図19