(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044498
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】ソファ
(51)【国際特許分類】
A47C 17/02 20060101AFI20220310BHJP
A47C 7/00 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
A47C17/02 Z
A47C7/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150146
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】城ノ下 朋興
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】臼本 浩人
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084AA01
(57)【要約】
【課題】高級感や重厚感が要求されていて大型化が進み、重量が重くて持ち運びが難しいソファ10を気軽に配置換えしたり移動させたりできるようにする。
【解決手段】本発明のソファ10は、座体11と、背もたれ12と、座体11及び/又は背もたれ12を支持するベース体13と、ベース体13を支持するキャスタ21と、キャスタ21の転動によってベース体13が移動可能なフリー状態か、キャスタ21を転動不能にしてベース体13が移動不能なロック状態かに切り換える切換手段22と、切換手段22を操作する操作部23とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
他のソファと背面同士を向かい合わせ可能に構成されたソファであって、
座体と、
背もたれと、
前記座体及び/又は前記背もたれを支持するベース体と、
前記ベース体を支持するキャスタと、
前記キャスタの転動によって前記ベース体が移動可能なフリー状態か、前記キャスタが転動せず前記ベース体が移動不能なロック状態かに切り換える切換手段と、
前記切換手段を操作する操作部と
を備えている、
ソファ。
【請求項2】
前記操作部は、前記ソファにおける背面側を除く所定領域に配置されている、
請求項1に記載したソファ。
【請求項3】
人が背中合わせに着座可能なソファであって、
前後に対向配置された座体と、
前後に対向配置された背もたれと、
前記座体及び/又は前記背もたれを支持するベース体と、
前記ベース体を支持するキャスタと、
前記キャスタの転動によって前記ベース体が移動可能なフリー状態か、前記キャスタが転動せず前記ベース体が移動不能なロック状態かに切り換える切換手段と、
前記切換手段を操作する操作部と
を備えている、
ソファ。
【請求項4】
前記操作部は、座体の上面よりも下方で、かつ前記ベース体の前面側に配置されている、
請求項1~3のいずれかに記載のソファ。
【請求項5】
前記操作部は、座体の前面よりも後方に配置されている、
請求項4に記載のソファ。
【請求項6】
前記キャスタは、少なくとも上半部が前記ベース体で覆われている、
請求項1~5のうちいずれかに記載したソファ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばオフィス、病院、学校施設や店舗などで設置されることの多いソファに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、オフィス等でも、ファミリーレストランやファストフード店等のように対面式でソファを配置するミーティングブースが増えている(例えば特許文献1の使用状態を示す参考図参照)。また、昨今、オフィスの中で、少人数・他人数の打ち合わせスペースを構築したり、セミナーを開催したり、と用途に応じてレイアウトを変更して多目的に利用するスペースを設けることも増えてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、特許文献1のようなソファを配置換えや移動させる際、ソファ重量やサイズ等の関係に起因して複数人で持ち運ぶ必要がある。従って、この種のソファを利用シーン等に合わせて気軽に配置換えするのが難しいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記のような現状を検討して改善を施したソファを提供することを技術的課題としている。
【0006】
本発明のソファは、他のソファと背面同士を向かい合わせ可能に構成されたソファであって、座体と、背もたれと、前記座体及び/又は前記背もたれを支持するベース体と、前記ベース体を支持するキャスタと、前記キャスタの転動によって前記ベース体が移動可能なフリー状態か、前記キャスタが転動せず前記ベース体が移動不能なロック状態かに切り換える切換手段と、前記切換手段を操作する操作部とを備えているというものである。
【0007】
本発明のソファにおいて、前記操作部は、前記ソファにおける背面側を除く所定領域に配置されているようにしてもよい。
【0008】
本発明のソファとしては、人が背中合わせに着座可能なソファであって、前後に対向配置された座体と、前後に対向配置された背もたれと、前記座体及び/又は前記背もたれを支持するベース体と、前記ベース体を支持するキャスタと、前記キャスタの転動によって前記ベース体が移動可能なフリー状態か、前記キャスタが転動せず前記ベース体が移動不能なロック状態かに切り換える切換手段と、前記切換手段を操作する操作部とを備えているものも含まれる。
【0009】
本発明のソファにおいて、前記操作部は、座体の上面よりも下方で、かつ前記ベース体の前面側に配置されているようにしてもよい。
【0010】
本発明のソファにおいて、前記操作部は、座体の前面よりも後方に配置されているようにしてもよい。
【0011】
本発明のソファにおいて、前記操作部は、背もたれの上面部に配置されているようにしてもよい。
【0012】
本発明のソファにおいて、前記操作部は、前記ソファの側面に露出しつつ側方に突出しないように配置されているようにしてもよい。
【0013】
本発明のソファにおいて、前記操作部は、前記背もたれの前面に露出しつつ前方に突出しないか、又は前記座体の上面に露出しつつ上方に突出しない、ように配置されている構成であってもよい。
【0014】
本発明のソファにおいて、前記操作部は、操作基部と、人が操作する操作部材とを有し、前記操作部材は、前記ベース体に設けた開口部を通じて露出するように配置されるものであって、前記操作部材は、前記操作基部に対して伸縮可能または複数の位置で固定可能となっているようにしてもよい。
【0015】
本発明のソファにおいて、前記キャスタは、少なくとも上半部が前記ベース体で覆われるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、キャスタの転動によってベース体が移動可能なフリー状態か、前記キャスタが転動せず前記ベース体が移動不能なロック状態かに切り換える切換手段と、前記切換手段を操作する操作部とを備えるので、前記操作部材をフリー状態になるように操作すれば、前記キャスタが転動可能になる(前記ベース体がフリー状態になる)。このような状態で前記ソファを所望の方向へ押す等することによって、前記キャスタを転動させて、前記ソファを抱え上げたりせずに手軽に移動させることができる。前記キャスタの転動によって、前記ソファの移動を軽い力でスムーズに行える。前記操作部材をロック状態になるように操作すれば、前記キャスタが転動しなくなる(前記ベース体がロック状態になる)。その結果、前記ソファを安定的に設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態における複数人掛け用ソファを正面一側方から見た斜視図である。
【
図2】複数人掛け用ソファを背面側から見た斜視図である。
【
図6】操作部の配置態様を例示するために複数人掛け用ソファを正面一側方から見た斜視図である。
【
図7】操作部の配置態様を例示するために複数人掛け用ソファを正面他側方から見た斜視図である。
【
図8】第2実施形態における複数人掛け用ソファを正面一側方から見た斜視図である。
【
図10】第1又は第2実施形態のソファを背中合わせ状に配置した場合を示す斜視図である。
【
図11】第3実施形態におけるソファの斜視図である。
【
図12】第4実施形態における一人掛け用ソファを正面側(手前側)から見た斜視図である。
【
図13】一人掛け用ソファを背面側(奥側)から見た斜視図である。
【
図15】操作部の配置態様を例示するために一人掛け用ソファを正面側(手前側)から見た斜視図である。
【
図16】向かい合わせ状のソファ及びテーブルの組を並設したレイアウトの斜視図である。
【
図17】ソファを横並びに配置したレイアウトの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づき説明する。以下の説明では、方向を特定するために前後・左右等の文言を使用するが、この前後・左右の文言は、ソファに普通に着座した(腰掛けた)人の向きを基準にしている。正面視は、着座した人と相対向した方向から見た状態である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、第1実施形態のソファ10は、複数人(二~三人)掛け用に構成されたものであり、人が腰掛ける座体11と、人の背や腰を支える背もたれ12と、座体11及び/又は背もたれ12を支持するベース体13とを備えている。第1実施形態のベース体13は、座体11と背もたれ12との両方を支持するように構成されている。
【0020】
ベース体13は、平面視矩形枠状に構成されている。ベース体13の後部上面には、背もたれ12の構成要素である箱枠状の背支持体15が立設されている。座体11は、例えば座板とクッション材とを表皮材で張りくるんだ構造であり、ベース体13上に着脱可能に載置されている(
図1~
図3参照)。背もたれ12は、例えば背板とクッション材とを表皮材で張りくるんだ構造であり、背支持体15の前面側に取り付けられている。なお、ソファ10の背面側(ベース体13や背支持体15の背面)は、人の目に触れるベース体13の前面及び左右側面や背支持体15の左右側面と同様に、美感を奏する程度に意匠性に優れた仕上がりになっている。
【0021】
特に、背支持体15やベース体13の背面は、突起物のない垂直平面で構成されている。このため、他のソファ10と背面同士を向かい合わせ状に配置(他のソファ10と背中合わせ状に配置)することが可能になっている。なお、第1実施形態では、木質の背支持体15が意匠面を構成するが、背支持体15を有さずに、背もたれ12を座体11又はベース体13に固定する態様でもよく、この場合は、背もたれ12の背面が意匠面となる。また、前述した特許文献のように、背もたれ背面に別体のパネルを取り付け、当該パネルを意匠面とすることも可能である。ベース体13と背支持体15とを一体に構成してもよい。
【0022】
図3及び
図4に示すように、ベース体13の内部には、当該内部を左右に二分する前後長手の補強板16が取り付けられている。ベース体13内は、補強板16によって左右の二区画に分けられている。補強板16を挟んだ左右両側には、左右の各区画内を上下に仕切る中底板17が取り付けられている。従って、ベース体13の内部は、補強板16と二枚の中底板17とによって上下左右の四室に区画されている。上側の左右二室には、座体11が着脱可能に被さっている。すなわち、上側の左右二室は、座体11の取り外しによって上向きに開放可能な収納空間になっていて、座体11は、上側の左右二室(二つの収納空間)に対する蓋として機能している。収納空間には、例えば、飲料水や非常食、ヘルメット等の防災備蓄品を収納・保管しておくことが可能である。
【0023】
図4に示すように、ベース体13における下側の左右二室にはそれぞれ、例えば特許第5215983号公報に明示されるキャスタ装置20が配置されている。左右のキャスタ装置20は、ソファ10を抱え上げることなく手軽(スムーズ)に移動させるためのものであり、それぞれ中底板17の下面側に取り付けられている。
【0024】
キャスタ装置20は、ベース体13を支持する複数個のキャスタ21(制動キャスタ)と、キャスタ21群が転動するフリー状態か、キャスタ21群を転動不能にするロック状態かに切り換える切換手段22(連結部材及び制動操作部材)と、切換手段22を操作する操作部23(操作片)とを備えている。第1実施形態では、一つのキャスタ装置20が四個のキャスタ21を有している。これら各キャスタ21は、転動の向きを任意に変更可能に構成されている。
【0025】
各キャスタ装置20の操作部23はレバー式のものであり、操作基部23aと、人が操作する操作部材24とを有している。そして、各操作部23は、対応する中底板17の下面側に支持された縦向きの回動支軸25回りに水平回動可能に構成されている。ベース体13の前面側において左右の下室に対応する領域には、左右横長のガイド溝穴26がそれぞれ形成されている。各操作部23の先端側に設けた操作部材24(握り部)は、ベース体13前面側で対応するガイド溝穴26を貫通して、ベース体13(ソファ10)の前方に突出(露出)している。すなわち、操作部材24は、ベース体13に形成したガイド溝穴26(開口部)を通じて露出するように配置される。
【0026】
各操作部23は、ベース体13前面側のガイド溝穴26に沿って左右回動操作が可能になっている。各ガイド溝穴26の存在によって、対応する操作部23の左右回動範囲が規制されている。
図4に仮想線で示すように、操作部材24は、操作基部23aに対して伸縮可能又は複数の位置で固定可能となっている。つまり、ガイド溝穴26(開口部)からの操作部材24の突出量を操作基部23aの長さ方向に沿って調整することが可能になっている。このため、操作部材24は、ベース体13前面に露出はするが突出はしないように設定したりでき、着座者が意図せず操作部材24に触れることによる誤操作を防止できる。また、座り心地に悪影響を及ぼすことも回避できる。
【0027】
特に第1実施形態では、各操作部23(操作部材24)が、座体11の上面よりも下方で、かつベース体13の前面側に配置されているから、不意に着座者の体に操作部23(操作部材24)が触れたり、着座者以外の通行人等が操作部23に触れることで不用意に誤作動することを抑止できると共に、ベース体13前面側にあることで、ソファ10を横並びに連接した状態でも個別にロック解除して移動させたりでき、ソファ10を手軽に移動できる。また、各操作部23(操作部材24)は、座体11の前面よりも後方に配置されているから、各操作部23(操作部材24)が着座者の足などに引っ掛かりにくく、この点でも、意図なく誤操作されることを抑止できるメリットがある。
【0028】
各操作部23(操作部材24)を、座体11の上面よりも下方で、かつベース体13の前面側に配置する態様というのは、例えばベース体13の下方から、すなわち、床面とベース体13との隙間から操作部23(操作部材24)を露出させることも含んでいる。このような構成でも、操作性を犠牲にせずに意図しない誤操作を防止できる。
【0029】
第1実施形態の各キャスタ装置20においては、操作部23を一方向(左方向)に回動操作(フリー操作)すると、切換手段22が作動してキャスタ21群がまとめて転動可能なフリー状態に切り換わる。操作部23を他方向(右方向)に回動操作(ロック操作)すると、切換手段22が作動してキャスタ21群がまとめて転動不能なロック状態に切り換わる。
【0030】
従って、左右両キャスタ装置20の操作部23をフリー操作すれば、全てのキャスタ21が転動可能になる(ベース体13がフリー状態になる)。このような状態でソファ10を所望の方向へ押す等することによって、キャスタ21群を転動させて、ソファ10を抱え上げたりせずに手軽に移動させることができる。キャスタ21群の転動によって、ソファ10の移動を軽い力でスムーズに行える。操作部23をロック操作すれば、全てのキャスタ21が転動不能になる(ベース体13がロック状態になる)。その結果、ソファ10は安定的に設置される。
【0031】
図5に示すように、各キャスタ装置20のキャスタ21群は、水平方向から見て少なくとも上半部がベース体13で覆われている。すなわち、これら各キャスタ21の少なくとも上半部がベース体13で隠れている。ベース体13の下方に露出している(はみ出している)のは、各キャスタ21の下側の一部分である。
【0032】
このように構成すると、ベース体13の下面が床に接地せず、キャスタ21群の転動でソファ10を軽い力で移動させやすいのは言うまでもないが、高級感や重厚感が要求されるソファ10の下部から各キャスタ21が見えることはほぼなく、大変見栄えがよい。各キャスタ21の隠れる範囲は、上下方向で半分以上あるのが望ましい。例えば各キャスタ21の回動中心(車輪軸)は、ベース体13で隠れるのが好適である。
【0033】
なお、キャスタ装置20自体の詳細構造についてはこれ以上詳述しないが、必要であれば前記した特許第5215983号公報等を参照されたい。また、キャスタ装置20の構造は、図示した第1実施形態のものに限定されるものではなく、少なくとも一部がロック機構付きであれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0034】
図6及び
図7に仮想線で示すように、各キャスタ装置20における操作部23の操作部材24は、第1実施形態のようなベース体13の前面に配置する(突出させる)態様だけに限定されるものではなく、ソファ10における背面側を除く所定領域に配置することが可能である。例えばベース体13の左右側面に操作部23の操作部材24を配置したり、背支持体15の左右側面に操作部23の操作部材24を配置したりしてもよい。座体11の前面や左右側面、又は上面(着座面)に操作部材24を配置しても構わないし、背もたれ12の前面や左右側面、又は上面に操作部材24を配置することも可能である。座体11の前面に操作部材を配置する際には、座体11に、ベース体13の前面側に設けたガイド溝穴26(開口部)と連通する貫通孔を設け、ガイド溝穴26(開口部)と貫通孔を通じて、操作部材を露出させるようにしてもよい。また、この時、操作部材24の先端部を、座体11の前面よりも後方に配置することにより、操作部材24が着座者の足などに引っ掛かりにくく、意図なく誤操作されることを抑止できるメリットがある。
【0035】
例えば操作部23(操作部材24)を背もたれ12の上面部に配置した場合は、ソファ10を横並びに連接した状態でも個別にロック解除して移動させられ、配置換え(レイアウト変更)を簡単に行える。また、操作部23(操作部材24)を立った状態で操作し易く、少ない労力でソファ10を移動させられる。
【0036】
操作部23(操作部材24)は、ソファ10の側面に露出しつつ側方に突出しないように配置することも可能である。この場合は、ソファ10を背中合わせ状に連接したとしても個別にロック解除して移動させることが可能であるし、ソファ10を横並びに連接したとしても隣り合うソファ10の操作部23(操作部材24)同士が干渉しないため、操作部23(操作部材24)の破損を防止できる。
【0037】
操作部23(操作部材24)は、背もたれ12の前面から露出しつつ前方に突出しないか、又は座体11の上面から露出しつつ上方に突出しない、ように配置されていてもよい。このように構成すると、ソファ10を背中合わせ状に連接したとしても個別にロック解除して移動させることが可能である。その上、着座者が意図せず操作部23に触れることによる誤作動を防止できると共に、座り心地に悪影響を及ぼさないのである。
【0038】
図6及び
図7に示した操作部材24の仮想線の位置は、大人二人掛け用のソファ10である場合の一例であり、あくまで例示である。ソファ10における背面側を除く所定領域というのは、着座する人の背、腰、太ももの裏側やふくらはぎ等に接触するおそれの少ない領域、換言すると、着座する人にとって邪魔にならない領域であればよい。従って、ソファ10の背面側(背もたれ12やベース体13及び背支持体15の背面)以外の領域であれば、操作部材24を配置する所定領域となり得るのである。ソファ10における背面側を除く所定領域に配置された操作部材24について、どの配置態様であっても、開口部から露出はするが突出はしないように設定できることは言うまでもない。
【0039】
種々の所定領域に操作部材24を配置するにあたっては、操作部23を第1実施形態のようなレバー式に構成するに限らず、例えば操作部23をワイヤー式に構成して、切換手段22と機械的に連動連結させてもよいし、操作部23をスイッチ式に構成して、操作部23の操作に連動する電動モータの作動によって切換手段22を電気的に作動させてもよい。これらの選択は任意に行える。例えば操作部23と切換手段22との位置関係等によって選択すれば足りる。
【0040】
仮に操作部23をソファ10の背面側に設けると、例えばファミレスブースを構成したり壁置きしたり場合に、背面側にある操作部23が他のソファ10や壁の存在によって隠れてしまい操作できなくなる不具合があるが、上記のように、操作部23の操作部材24をソファ10における背面側を除く所定領域に配置する構成を採用すると、ファミレスブースを構成したり壁置きしたり場合、すなわち、ソファ10の背面側が隠れるような配置態様であったとしても、周囲の人から見える箇所に操作部23(操作部材24)が現れることになり、操作部23(操作部材24)を確実に操作でき、ソファ10の移動による配置換え(レイアウト変更)を簡単に行える。また、人がソファ10に着座するに際して、操作部材24の存在が着座の邪魔にならないようにもでき、操作の利便性の点も向上できる。
【0041】
図8及び
図9には、キャスタ装置20の配置態様の別例である第2実施形態を示している。ここで、第2実施形態以降の実施形態において、構成及び作用が第1実施形態と同様なものには、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0042】
第2実施形態では、キャスタ装置20の配置態様を第1実施形態のものと異ならせていて、ベース体13の内部には、前後長手の補強板16が左右に並べて取り付けられている。つまり、ベース体13内には補強板16が左右一対配置されていて、ベース体13内は、左右一対の補強板16によって左中右の三区画に分けられている。左中右の各区画内には、中底板17が取り付けられている。従って、ベース体13の内部は、左右一対の補強板16と三枚の中底板17とによって上下左中右の六室に区画されている。
【0043】
図9に示すように、ベース体13における下側の中央一室には、第1実施形態と同様のキャスタ装置20が配置されている。ベース体13の前面側において下側の中央一室に対応する領域には、左右横長のガイド溝穴26が形成されている。各操作部23の先端側に設けた操作部材24(握り部)は、ベース体13前面側で対応するガイド溝穴26を貫通して、ベース体13(ソファ10)の前方に突出(露出)している。
【0044】
ベース体13における下側の左右各室には、ベース体13の隅部寄りの二箇所に、ロック機構(切換手段22及び操作部23)のないロックなしキャスタ27がそれぞれ配置されている。当該各ロックなしキャスタ27は、対応する中底板17の下面側に取り付けられている。ロックなしキャスタ27群をベース体13の四隅部に配置したのは、ベース体13(ベース体13)ひいてはソファ10を安定支持するためである。
【0045】
詳細な図示は省略するが、第2実施形態では、各キャスタ装置20のキャスタ21群だけでなくロックなしキャスタ27群も、水平方向から見て少なくとも上半部がベース体13で覆われている。すなわち、キャスタ21及びロックなしキャスタ27の少なくとも上半部がベース体13で隠れている。ベース体13の下方に露出している(はみ出している)のは、キャスタ21及びロックなしキャスタ27の下側の一部分である。
【0046】
図8及び
図9に示す第2実施形態においても、仮想線で示すように、各キャスタ装置20における操作部23の操作部材24は、ベース体13の前面に配置する(突出させる)態様だけに限定されるものではなく、ソファ10における背面側を除く所定領域に配置することが可能である。
図8に示した操作部材24の仮想線の位置も、大人二人掛け用のソファ10である場合の一例であり、あくまで例示に過ぎないのは言うまでもない。図示はしないが、操作部材24を、ベース体の前面または側面の下方(ベース体と床面の隙間)に配置することも可能である。ソファ10における背面側を除く所定領域に配置された操作部材24について、第2実施形態においても、開口部から露出はするが突出はしないように設定できる。
【0047】
種々の所定領域に操作部材24を配置するにあたっては、操作部23をレバー式に構成するに限らず、例えば操作部23をワイヤー式に構成して、切換手段22と機械的に連動連結させてもよいし、操作部23をスイッチ式に構成して、操作部23の操作に連動する電動モータの作動によって切換手段22を電気的に作動させてもよい。
【0048】
第2実施形態の構成を採用した場合においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0049】
図10は、第1又は第2実施形態のソファ10の二台を背中合わせ状に配置した場合を示している。この場合、各ソファ10の背面側が背中合わせ状になって隠れるが、このような領域に操作部材24を設けることがなく、操作部材24をソファ10における背面側を除く所定領域に露出させるため、周囲の人から見える箇所に操作部23(操作部材24)が現れることになり、操作部23(操作部材24)を確実に操作できるのである。
【0050】
図11は、人が背中合わせに着座可能なソファ1を示した第3実施形態である。第3実施形態のソファ1は、前後に対向配置された座体11と、前後に対向配置された背もたれ12と、前記座体11及び/又は前記背もたれ12を支持するベース体13とを備えている。第3実施形態のベース体13も、座体11と背もたれ12との両方を支持するように構成されている。ベース体13は、平面視矩形枠状に構成されていて、ベース体13上面の前後中途部に、背もたれ12を構成する背支持体15が立設されている。第3実施形態では、ベース体13と背支持体15とが一体に構成されている。もちろん、ベース体13と背支持体15とを別体に構成してもよい。第3実施形態のキャスタ装置20は、一つであっても複数であっても構わない。第3実施形態のキャスタ21(又は27)群も水平方向から見て少なくとも上半部がベース体13で覆われることは言うまでもない。
【0051】
図11に示す第3実施形態においても、仮想線で示すように、各キャスタ装置20における操作部23の操作部材24は、ベース体13の前面に配置する(突出させる)だけではなく、各ソファ10における背面側を除く所定領域に配置することが可能である。
【0052】
第3実施形態において、ソファ1の側面に操作部23(操作部材24)を配置する場合は、操作部23(操作部材24)がソファ1の側面に露出しつつ側方に突出しないように配置するのが望ましい。そうすると、ソファ1を横並びに連接したとしても隣り合うソファ1の操作部23(操作部材24)同士が干渉しないため、操作部23(操作部材24)の破損を防止できる。
【0053】
図10に示した操作部材24の仮想線の位置もあくまで例示である。種々の所定領域に操作部材24を配置するにあたっては、操作部23をレバー式に構成してもよいし、操作部23をワイヤー式に構成して、切換手段22と機械的に連動連結させてもよいし、操作部23をスイッチ式に構成して、操作部23の操作に連動する電動モータの作動によって切換手段22を電気的に作動させてもよい。
【0054】
第3実施形態の構成を採用した場合においても、第1及び第2実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0055】
図12~
図15は、一人掛け用のソファ30を示した第4実施形態である。第4実施形態のソファ30は、例えば第1又は第2実施形態のソファ10の側部に配置するエンド用やコーナー用のソファ30として使用可能なように、背もたれ32と背支持体35とが平面視L字状の形態に構成されている。
【0056】
詳細な図示は省略するが、ベース体13内には、補強板16はないものの、内部を上下に仕切る中底板17が取り付けられている。ベース体13の上室には、座体11が着脱可能に被さっている。座体11は、ベース体13の上室(収納空間)に対する蓋として機能している。
【0057】
また、中底板17の下面側には、第1~第3実施形態と同様のキャスタ装置20が配置されている(図示省略)。ベース体13において背もたれ32や背支持体35と対向する手前側の一側面に、左右横長のガイド溝穴26が形成されている。各操作部23の先端側に設けた操作部材24(握り部)は、ベース体13のガイド溝穴26を貫通して、ベース体13(ソファ10)の外側に突出(露出)している。
【0058】
操作部23(操作部材24)は、ソファ30の手前側の側面に露出しつつ手前側の側方に突出しないように配置されている。これは、第1又は第2実施形態のソファ10の側部にエンド用やコーナー用のソファ30を並べて配置した場合に、隣のソファ10のベース体13に、エンド用等のソファ30の操作部23(操作部材24)が干渉しないようにするためである。この構成を採用することによって、エンド用等のソファ30において操作部23(操作部材24)の破損を防止できる。その上、着座者が意図せず操作部23に触れることによる誤作動を防止できると共に、座り心地に悪影響を及ぼさないという利点もある。第4実施形態のキャスタ21群も水平方向から見て少なくとも上半部がベース体33(ベース体13)で覆われることは言うまでもない。
【0059】
図12~
図15に示す第4実施形態においても、仮想線で示すように、キャスタ装置20における操作部23の操作部材24を、ソファ30における背面側を除く所定領域に配置することが可能である。第4実施形態においては、二面ある背もたれ面それぞれに対応する背面側の二面が、ソファ30の背面側に相当することになる。
【0060】
図15に示した操作部材24の仮想線の位置もあくまで例示である。種々の所定領域に操作部材24を配置するにあたっては、第1~第3実施形態の場合と同様に、操作部23をレバー式に構成してもよいし、操作部23をワイヤー式に構成して、切換手段22と機械的に連動連結させてもよいし、操作部23をスイッチ式に構成して、操作部23の操作に連動する電動モータの作動によって切換手段22を電気的に作動させてもよい。
【0061】
第4実施形態の構成を採用した場合においても、第1~第3実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0062】
第1~第4実施形態のソファ1,10,30は、様々な態様でお互いに組み合わせてレイアウトすることが可能になっている。
図16は、例えばオフィス、病院、学校施設や店舗などでよく見られるミーティングスペース等のレイアウトの例を示している。
【0063】
当該レイアウト例では、テーブル28を挟んで第2実施形態のソファ10の二台を向かい合わせ状に配置し、向かい合わせ状のソファ10の二台及びテーブル28の組を並設したレイアウトになっている。背中合わせ状に隣り合わせた二台のソファ10同士は、互いに連結してもよいし、単に並べただけでも構わない。さらには、背中合わせ状に隣り合う二台のソファ10を第3実施形態のソファ1に置き換えることも可能である。
【0064】
これらソファ1,10,30において、キャスタ装置20における操作部23の操作部材24を、ソファ1,10,30における背面側を除く所定領域に配置したものにしてもよいことは言うまでもない。なお、
図16において一番手前のソファ10の背面側と一番奥のソファ10の背面側とには、植物等を配置したりできる置き棚29が重ね合わせて立設配置されている。
【0065】
図17は、
図16のレイアウトから配置換えしたレイアウトの例を示している。当該配置換えレイアウト例では、第2実施形態のソファ10の四台を横並びに配置したレイアウトになっている。この場合も、隣り合わせたソファ10同士は、互いに連結してもよいし、単に並べただけでもよい。さらには、これら各ソファ10において、キャスタ装置20における操作部23の操作部材24を、各ソファ10における背面側を除く所定領域に配置したものにできることはもちろんである。なお、
図17において一番手前のソファ10の左右外側と一番奥のソファ10の左右外側とには、植物等を配置したりできる置き棚29が立設配置されている。
【0066】
例えば
図16から
図17へのレイアウト変更や、その反対へのレイアウト変更等を簡単且つ素早く行えるようにすることは、本発明の課題である。本発明のソファ1,10,30においては、キャスタ21の転動によってベース体13が移動可能なフリー状態か、キャスタ21が転動せずベース体13が移動不能なロック状態かに切り換える切換手段22を操作する操作部23を、ソファ1,10,30における背面側を除く所定領域に配置することによって、操作部23が例えば他のソファ1,10,30や壁等の存在によって隠れてしまい操作できなくなる不具合を確実に回避し、ソファ1,10、30の背面側が隠れるような配置態様であったとしても、周囲の人から見える箇所に操作部23(操作部材24)が現出させ、操作部23(操作部材24)を確実に操作できるようにしたものである。その結果、ソファ1,10,30の移動による配置換え(レイアウト変更)を手軽でかつスムーズに行えるのである。
【0067】
本発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えばキャスタ装置20としては、第1~第6実施形態に示した特許第5215983号公報に明示のようなキャスタ21が転動不能にロックされるものだけでなく、何らかの接地部材を床に押し付けるか、若しくはキャスタ21を浮き上がらせることによって、キャスタ21を宙に浮かせて移動不能にする、いわゆるリフトロック方式のもの等、種々のものを採用できる。
【0068】
また、本発明のソファ1,10,30においては、ベース体13,33や背支持体15,35の周囲を座体や背もたれの表皮材等で全体的に覆うような構成であってもよい。さらに、図示した実施形態は、操作部23(操作部材24)が水平方向に回動するものであるが、水平方向や上下方向にスライドするものや、上下に回動するもの、押しボタン式のものなど種々のものを採用することが可能である。この場合も、操作部23をレバー式にするだけでなく、ワイヤー式にしたり電動式にしたりできることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0069】
1,10,30 ソファ
11 座体
12,32 背もたれ
13,33 ベース体
15,35 背支持体
20 キャスタ装置
21 キャスタ
22 切換手段
23 操作部
24 操作部材
26 ガイド溝穴(開口部)