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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044504
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220310BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
A41D13/11 M
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150154
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】520345601
【氏名又は名称】植田 忠夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】植田 忠夫
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA01
2E185CB11
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】本発明は、抗菌性、防カビ性、消臭性、抗ウィルス性を有するマスクの提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係るマスクは、装着者顔面の少なくとも口許と鼻梁に密着可能なマスク本体と、マスク本体よりも小さい縦横寸法を有し、マスク本体に対し着脱自在であり、マスク本体とともに装着者顔面の口許及び鼻先の鼻梁を覆うことが可能な複層フィルターシートと、マスク本体を装着者顔面に装着するための耳掛け用バンド部とを有するマスクであって、複層フィルターシートが、帯電性を示す繊維から組まれた表面側の第1フィルター層と、網状の繊維体からなる多孔状のフィルターシート本体の内部に分散密着された複数の光触媒粉末粒子あるいは殺菌粉末粒子を備えた第2フィルター層とを具備したことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者顔面の少なくとも口許と鼻梁に密着可能なマスク本体と、前記マスク本体よりも小さい縦横寸法を有し、前記マスク本体に対し着脱自在であり、前記マスク本体とともに装着者顔面の口許及び鼻先の鼻梁を覆うことが可能な可撓性の複層フィルターシートと、前記マスク本体を装着者顔面に装着するための耳掛け用バンド部とを有するマスクであって、
前記複層フィルターシートが、帯電性を示す繊維からなる表面側の第1フィルター層と、網状の繊維体からなる多孔状のフィルターシート本体に分散密着された複数の光触媒粉末粒子を備えた第2フィルター層とを具備したことを特徴とするマスク。
【請求項2】
前記複層フィルターシートに対し、多孔状の可撓性のシート本体に複数の発光素子とこれら発光素子に接続された配線とこれら配線に接続されたボタン電池を備えた発光フィルター層が積層されたことを特徴とする請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記光触媒粉末粒子がチタンオキサイド粒子、あるいは、前記チタンオキサイド粒子を構成するチタン原子の一部を助触媒としての鉄イオンあるいは銅イオンで置換した触媒添加型チタンオキサイド粒子であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマスク。
【請求項4】
前記マスク本体にポケット部が形成され、前記複層フィルターシートが前記ポケット部に出し入れ自在に設けられたことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載のマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中の花粉、ウィルス、細菌などの微粒子を口や鼻から体内に取り込むことを防止するマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、空気中の有害汚染物質や細菌、ウィルスなどの微粒子を口や鼻から吸い込まないようにするために、あるいは、これら微粒子の気管支への侵入を防止するために、種々のマスクやフィルターなどの開発が進められている。また、防塵効果や抗菌作用を有するマスクの需要は増え、特に最近に至り、悪性のウィルスの蔓延が懸念されていることから、マスクの機能強化など、マスクに対し様々な要望がなされている。
【0003】
例えば、以下の特許文献1には、銀イオン系抗菌剤を含浸させたパイル地からなるシートと、竹繊維によってシート状に織られたシートを積層した抗菌・抗カビ・抗ウィルス・消臭・保湿・保温性のある多層繊維フィルターシートと、このフィルターシートを備えたマスクが開示されている。
【0004】
また、以下の特許文献2には、着用者顔面の少なくとも口許と鼻梁とを覆い隠すマスク本体と、口許及び鼻先の鼻梁を覆い且つ該マスク本体よりも小さい寸法の着脱可能な吸気浄化部材と、該マスク本体を顔面に装着するための耳にかける一対のバンド部とを備えたマイクロファイバーマスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5642886号公報
【特許文献2】特開2006-223543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近に至り、ウィルスを起因とする感染症の蔓延から、マスクの重要度が高まってきており、粉塵や花粉などに加えて微細なウィルスなどの微粒子が体内に入らないようにする機能の重要性が高くなってきている。
現在流行しているウィルスが原因の感染症は、空気感染による感染は生じないといわれているが、感染者の発したせきやくしゃみにより、ウィルスが細かい唾液や気道分泌物の液滴に包まれて空気中に飛び出し、ウィルスと水分を含む飛沫が空気中に浮遊し、これらを他者が吸い込むことによる感染が多いといわれている。従って、ウィルスを含む飛沫を原因とする感染を抑制するためにマスクは極めて有望な感染対策手段と認識されている。
また、ウィルスを起因とする感染症では、マスクを手指で触っているうちにマスクの表面に付着したウィルスを手指に付着させることがあり、手指に付着したウィルスが原因で感染症にかかるおそれがあると懸念されている。
【0007】
本願発明は、上述の背景に鑑み、ウィルスと水分を含む飛沫などのガードに有効であるとともに、内部に付着したウィルスの無害化にも有効なマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本形態のマスクは、装着者顔面の少なくとも口許と鼻梁に密着可能なマスク本体と、前記マスク本体よりも小さい縦横寸法を有し、前記マスク本体に対し着脱自在であり、前記マスク本体とともに装着者顔面の口許及び鼻先の鼻梁を覆うことが可能な複層フィルターシートと、前記マスク本体を装着者顔面に装着するための耳掛け用バンド部とを有するマスクであって、前記複層フィルターシートが、帯電性を示す繊維からなる表面側の第1フィルター層と、網状の繊維体からなる多孔状のフィルターシート本体に分散密着された複数の光触媒粉末粒子を備えた第2フィルター層とを具備したことを特徴とする。
【0009】
(2)本形態のマスクにおいて、前記複層フィルターシートに対し、多孔状のシート本体に複数の発光素子とこれら発光素子に接続された配線とこれら配線に接続されたボタン電池を備えた発光フィルター層が積層されたことが好ましい。
【0010】
(3)本形態のマスクにおいて、前記光触媒粉末粒子がチタンオキサイド粒子、あるいは、前記チタンオキサイド粒子を構成するチタン原子の一部を助触媒としての鉄イオンあるいは銅イオンで置換した触媒添加型チタンオキサイド粒子であることが好ましい。
【0011】
(4)本形態のマスクにおいて、前記マスク本体にポケット部が形成され、前記複層フィルターシートが前記ポケット部に出し入れ自在に設けられたことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るマスクによれば、マスク本体に設けた耳掛け用バンド部を装着者の耳に掛け、マスク本体で装着者の口許と鼻梁を覆うことにより、帯電性を示す繊維から組まれた表面側の第1フィルター層をマスク本体の表面に近い位置に配置した状態のマスクを装着することができる。このマスクの装着により、マスク本体の表面に近い位置の第1フィルター層は自身が具備する帯電性により微粒子に対する帯電バリア性を発揮するので、花粉、塵埃などの微粒子、ウィルスを含む飛沫などの微粒子を弾き、これらの微粒子をマスク本体の内部側に引き込むことを抑制できる。第1フィルター層は、自身の帯電性により生成させた電場により帯電している微粒子を弾くことができ、マスク内部側への微粒子の侵入を抑制する。
【0013】
また、第1フィルター層の帯電バリア性を回避し、ウィルスなどを含む微粒子が仮に第2フィルター層に到達したとしても、第2フィルター層に分散させた光触媒粉末粒子が近接して存在するウィルスなどの微粒子を不活化して無害化する。
光触媒粉末粒子は太陽光あるいは紫外光などの照射に伴い、近接位置に存在するウィルスや細菌などの有機物を分解するので、仮に、第2フィルター層にウィルスや細菌が付着したとしても、これらを不活化できる。また、光触媒粉末粒子は、有機物を分解する作用を有するので、抗菌性、抗ウィルス性に加え、防カビ性、消臭性なども発揮する。
マスクを日常的に使用する場合、口臭などがマスクに移り、マスクに臭いが付くおそれがあるが、第2フィルター層に光触媒粉末粒子を設けることで臭いの基となる有機物を分解できるので、臭いの気にならないマスクを提供できる。また、ファンデーションなどの化粧料や口紅などの有機物がマスクの内面側に付着したとして光触媒粉末粒子がこれらを分解し、消臭性を発揮するとともに、有機物を分解除去する。
【0014】
光触媒粉末粒子は、微弱な太陽光あるいは照明光であっても光触媒作用を発揮し有機物としてのウィルスを分解するので、ウィルスや細菌の不活化に有効である。しかし、夜間など、暗い場所において光触媒粉末粒子はそのままでは機能しないので、その場合は発光素子を備えた発光フィルター層を設け、発光素子からの光照射によって光触媒を有効化できる。よって、太陽光のない夜間や暗い場所などにおいてマスクを使用したい場合、発光フィルター層の利用によって、光触媒粉末粒子による抗菌性、防カビ性、抗ウイルス性、消臭性を得ることができる。
【0015】
光触媒粉末粒子として、光触媒効力の高いチタンオキサイド粒子を有効利用できる。また、紫外光から可視光まで広い領域の光を有効に利用し、強い光触媒作用を発揮させるためには、チタンオキサイド粉末粒子を構成するチタン原子の一部を助触媒としての鉄イオンあるいは銅イオンで置換した触媒添加型チタンオキサイド粉末粒子を用いることが好ましい。
【0016】
マスク本体にポケット部を形成し、ポケット部に複層フィルターシートを出し入れ自在に設けることで、複層フィルターシートの交換が容易となり、マスク本体を洗濯し清潔な状態のマスク本体を繰り返し使用できるようになる。また、ポケット部に収容する複層フィルターシートも交換が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係るマスクの全体構成を示す斜視図である。
図2図1に示すマスクにおけるAA線に沿う部分断面図である。
図3】同マスクに収容される複層フィルターシートの一例を示す斜視図である。
図4図3に示す複層フィルターシートの分解斜視図である。
図5図3に示す複層フィルターシートに含まれる第2フィルター層の部分拡大図である。
図6図3に示す複層フィルターシートに追加する形式で積層される発光シートの斜視図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るマスクの全体構成を示す斜視図である。
図8】本発明の第3実施形態に係るマスクの全体構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係るマスク1の正面図であり、マスク1は、布あるいは不織布などからなる内層部2と布あるいは不織布などからなる外層部3を有し、内層部2と外層部3を重ね合わせた状態でそれらの外周部を縫い合わせるか、溶着一体化または接着一体化して2重構造としたマスク本体5を主体として構成されている。
【0019】
図1に示す第1実施形態の構造では、正面視横長の略六角形状の内層部2と外層部3を重ね合わせ、重ね合わせ部分の外縁の若干内側に沿って縦方向に縫い目部6を形成し、横方向下辺側に縫い目部7を設けることで内層部2と外層部3が積層一体化され、マスク本体5が構成されている。マスク本体5の縦寸法と横寸法は、装着者顔面の口許と鼻梁に密着可能な大きさを有する必要がある。このため、マスク本体5は、幅方向中央部の縦長さが幅方向両端部の縦長さよりも若干大きい正面視横長の略六角形状をなし、マスク本体5の幅方向中央部で装着者顔面の口許から鼻梁までを十分に覆い隠すことができる大きさに形成されている。
一例として、マスク本体5の幅方向中央部縦長さ8cm~12cm程度、幅方向両端部縦長さ5~10cm程度、横幅12cm~20cm程度である。なお、内層部2と外層部3に折り返し型の襞部を設けること、あるいは、内層部2と外層部3に若干膨らみを持たせた形状とすることにより、マスク本体5が顔面形状に合わせて若干変形できるように構成することもできる。また、マスク本体5は、装着者顔面の口許から鼻梁までを十分に覆い隠すことができるならば、正面視横長の矩形状であっても差し支えない。
【0020】
図2は、図1のAA線に沿う断面構造の一例を示す。図2に示すように、内層部2の幅方向両端側に回り込むように外層部3の両端部3aを折り返すように延出し、内層部2の両端部と外層部3の両端部にかけて縫い目部6を設けることで内層部2と外層部3が縫い合わされている。この縫い目部6を設けることで外層部3の両端部分に筒状の折返し部8が形成されるので、この折返し部8を挿通するようにゴム紐などの紐状弾性体を挿通することで耳掛け用バンド部9が形成されている。
図2は内層部2と外層部3を縫い合わせる構成のマスク本体5とする場合の実施形態を示しているが、内層部2と内層部3を樹脂製の不織布など、溶着が可能な材料で構成する場合は、縫い目部6、7の位置を溶着部と見立てて相互溶着し、内層部と外層部を溶着した構成のマスク本体としても良い。
なお、縫い目部6、7を設けて内層部2と外層部3の2重構造とする場合、内層部2と外層部3を1枚の大きな布や不織布の折り返し構造とし、縫い目部7の側を折返し構造とすることで、縫い目部7を略した構成としても良い。
【0021】
図1に示すようにマスク本体5においてその両端側の縦方向に縫い目部6が形成され、マスク本体5においてその下端部横方向に縫い目部7が形成されている。このため、マスク本体5の内側には、内層部2と外層部3から構成され、上面側に開口部10を有するポケット部11が形成されている。そして、このポケット部11に対し、図3図4に示す構成の複層フィルターシート12が出し入れ自在に収容されている。
複層フィルターシート12は、外層部3に近い側から順に第1フィルター層15と第2フィルター層16と第3フィルター層17を貼り合わせて積層した3層構造とされている。複層フィルターシート12は、図3図4に示すように横長の長方形状で良いが、マスク本体5の内部に収容できる縦横サイズに形成されている。複層フィルターシート12の概形は、正面視横長の六角形状のマスク本体5に収容できる大きさであれば良い。複層フィルターシート12はマスク本体5とともに装着者の口許周辺から鼻梁周辺を覆うことができる大きさ、形状であることが好ましい。
【0022】
内層部2を構成する材料は、内層部2が装着者顔面の口許と鼻梁に直に密着することから肌触りの良好な材料を選択することが好ましい。
内層部2、外層部3を構成する布、不織布などは、軟質の繊維あるいは軟質の不織布などから構成することができる。
【0023】
第1フィルター層15は、例えば、ポリエステル繊維、アクリル樹脂繊維、ポリウレタン樹脂繊維、塩化ビニル樹脂繊維、ナイロン繊維などの合成繊維、あるいは、天然繊維をフッ素コートした帯電性かつ撥水性を有する絶縁体の繊維を編み込んでシート状に形成した層からなる。あるいは、第1フィルター層15は上述の帯電性の樹脂からなる多孔質の不織布からなるシート状の層であっても良い。
第2フィルター層16は、繊維を編み込んでシート状に形成したネット状構成体などの通気性を有する多孔質体層からなる。あるいは、第2フィルター層16は上述の樹脂からなる多孔質の不織布からなるシート状の多孔質体層からなる。
第3フィルター層17は、軟質の肌触りの良い繊維を編んだものあるいはこれらの材料からなる不織布からなる。
【0024】
第1フィルター層15と第2フィルター層16と第3フィルター層17は、図3に示すように積層された一体構成の可撓性を具備するシート状に組み合わされている。より詳細には、図4に示すように第1フィルター層15と第2フィルター層16と第3フィルター層17の互いに対向する面のコーナー部分に設けた面ファスナー(マジックテープ:株式会社クラレ登録商標)18により、これらが相互に着脱自在に積層されている。
【0025】
第2フィルター層16は、一例として図5に拡大して示すように、編み組み構造としたネット状の多孔質体層20に光触媒粉末粒子からなる機能性粒子21が付着された構造を有する。
ここで用いる機能性粒子21を光触媒粉末粒子から構成する場合は、光触媒粉末粒子として、チタンオキサイド粉末粒子(酸化チタン粉末粒子:TiO粉末粒子)を用いることが好ましい。チタンオキサイド粉末粒子は、光触媒の中でも強い触媒作用を有する。
接触した物質がウィルスや細菌などの有機物であった場合、有機物を分解することができ、ウィルスや細菌を不活化することができる。従って、光触媒粉末粒子からなる機能性粒子21の存在により、抗菌性、防カビ性、消臭性、抗ウィルス性を得ることができる。
【0026】
チタンオキサイド粉末粒子は、太陽光を受けると上述の触媒作用を発揮するが、太陽光のうち、紫外光とその周辺光を利用した触媒作用の発現が主体となる。弱い太陽光あるいは室内用の照明光などを利用してチタンオキサイド粉末粒子から十分な触媒作用を得るためには、チタンオキサイド粉末粒子を構成するチタン原子の一部を助触媒としての鉄イオンあるいは銅イオンで置換した触媒添加型のチタンオキサイド粉末粒子を用いることが好ましい。
【0027】
光触媒粉末粒子を多孔質体層20に付着するには、粘着剤、接着剤などを光触媒粉末粒子あるいは多孔質体層20に塗布しておき、これらにより光触媒粉末粒子を多孔質体層20に付着すれば良い。その場合、多孔質体層20に形成されている微細孔を塞がないように通気性を維持した状態で機能性粒子21を多孔質体層20に付着させると良い。光触媒粒子粉末を溶媒中に分散させた各種溶液が市販されているので、これら市販の溶液に多孔質体層20を浸漬して引き上げ、溶媒を乾燥させると、図5に示すように機能性粒子21を多孔質体層20に多数付着させた構成を得ることができる。あるいは、これら市販の溶液を多孔質体層20にスプレー塗布することで図5に示す構成を得ることができる。
【0028】
上述のように光触媒粉末粒子を含む液体が複数市販されている。従って、粘着剤、接着剤などを多孔質体層20に塗布後、これらの粉末粒子を噴霧することで機能性粒子21を備えた多孔質体層20を得ることもできる。
なお、市販の溶液状の光触媒の一例として、室内光でも強い光触媒効果が得られる可視光応答型酸化チタンとして知られ、酸化反応面と還元反応面を棒状の酸化チタン粒子に設けた次世代型の光触媒コーティング剤スプレー、Dr.OHNO(やまだ農園本舗、商品名)を適用することができる。この光触媒コーティング剤は、酸化チタン粒子の光触媒作用を受けても劣化し難いフッ素系のバインダー中に可視光応答型酸化チタン粒子が分散されている。この光触媒コーティング剤を第2フィルター層16に噴霧することで、図5に示す構成を実現でき、この光触媒コーティング剤は光触媒作用を受けてもバインダーの劣化を生じ難い。
【0029】
ところで、光触媒粉末粒子は、微弱な太陽光あるいは照明光でも光触媒効果を発現し、ウィルスや細菌を不活化あるいは分解するので、ウィルスや細菌の無効化に有効であるが、夜間や暗い場所などにおいて、そのままでは光触媒粉末粒子は機能を発揮しない。
そこで、夜間や暗い場所、あるいは、弱い照明光の基でマスク1を使用する場合、図6に示す構成の発光素子24を備えた発光フィルター層25を設け、発光フィルター層25に設けた発光素子24からの光照射によって光触媒粉末粒子を有効化することができる。
【0030】
図6は、複層フィルターシート12に積層して用いるための発光フィルター層25の一例構成を示す。
発光フィルター層25は、網目構造を有する導電性の炭素繊維(カーボンファイバー)などを編み込み成形した導電網の積層体からなるフレキシブルな(可撓性を有する)基材26を有する。この基材26は、第1フィルター層15、第2フィルター層16、第3フィルター層17と同程度の縦横寸法、厚みを有する可撓性のシート状軽量基材であり、基材26自体に導電性を有する。あるいは、基材26は、細い銅線などを編み組みした構成の可撓性を有するシート状の導電性基材であっても良い。炭素繊維の導電網の積層体はそれ自身がある程度のフィルター機能を有する。
【0031】
基材26の表面に、所定の間隔で複数の発光素子24が配置されている。発光素子24は、例えば、LED発光素子などのチップ型の発光素子であり、その正極端子と負極端子のうち、一方の端子がチップの裏面側において基材26を構成する導電性繊維に直に接続され、他方の端子が基材26上の後述する被覆配線27に電気的に接続されている。
発光素子24は、一例として、光拡散効果を示す樹脂製のレンズケースの内部にLED発光素子を封入した一般市販の発光素子構造を採用することができる。
【0032】
図6に示すように基材26の上面側に外周被覆型の被覆配線27が複数接着され、各被覆配線27が各発光素子24の他方の端子に電気的に接続されている。図6では、7つの発光素子24を基材26の上面に略等間隔配置した例を記載している。発光素子24の設置個数に特に制限はないが、第2フィルター層16に設ける光触媒粉末粒子21が光触媒として十分な効力を発揮するために必要な輝度を得られることが好ましい。
図6に示すように基材26の上面端部側にボタン電池を収容するための電池受け29が設置され、この電池受け29にボタン電池30が装着されている。電池受け29は正極側受け端子と負極側受け端子が形成され、一方の受け端子が基材26を構成する導電網に直に接続され、他方の受け端子がスイッチ31を介し前記被覆配線27の一部に接続されている。
【0033】
以上の構成により、電池受け29にボタン電池30をセットし、スイッチ31を入力側にセットすることで被覆配線27と基剤26を介し各発光素子24に通電することができ、スイッチ31を切断側にセットすることで発光素子24への通電を停止することができる。
従って、スイッチ31を入力側にセットすることで発光素子24を点灯させることができ、スイッチ31を切断側にセットすることで発光素子24を消灯することができる。
【0034】
発光フィルター層25は複層フィルターシート12に積層されるが、発光素子24を設置した側の面を第3フィルター層17を介し第2フィルター層16に向けるように第3フィルター層17の外側に積層される。
第3フィルター層17の外面四隅部と発光フィルター層25の対向面の四隅部にはそれぞれ面ファスナー(マジックテープ:株式会社クラレ登録商標)18が取り付けられ、第3フィルター層17の外面に発光フィルター層25を着脱自在に取り付けることができるようになっている。
【0035】
第3フィルター層17の外側に発光フィルター層25を積層した状態の複層フィルターシート12をマスク本体5のポケット部11に挿入し、スイッチ31を指で押すことで発光素子24を点灯することができる。この状態で発光素子24からの光は第3フィルター層17を介し第2フィルター層16の機能性粒子21に到達するので、機能性粒子21が光触媒粉末粒子であれば、夜間や暗い場所においても光触媒作用による効果を得ることができる。
即ち、発光フィルター層25を備えたマスク1であれば、夜間や暗い場所でマスク1を使用したとして、光触媒粉末粒子である機能性粒子21による有機物分解作用を得ることができ、抗菌性、防カビ性、消臭性、抗ウィルス性を得ることができる。
このように発光フィルター層25を備えたマスク1であれば夜間や暗い場所であっても必要な特性を発揮しつつ安心して使用することができる。
なお、マスク1を使用せずに引出の中や暗い場所などに保管しておく場合、発光素子24を点灯し、光触媒粉末粒子を活性化しておくならば、仮にマスク1の第2フィルター層16にウィルスが付着していた場合であっても、付着したウィルスをマスク1の保管中に不活化して無害化することができる。
【0036】
図6に示す発光フィルター層25を第3フィルター層17の外側に設けた構造では、第2フィルター層16と発光フィルター層25との間に第3フィルター層17が存在する。
しかし、発光素子24と第2フィルター層16の機能性粒子21を至近距離で配置しているため、光触媒粉末粒子である機能性粒子21に発光素子24から十分な量の光を照射できる
このため、前述の酸化反応面と還元反応面を棒状の酸化チタン粒子に設けた次世代型の光触媒粉末粒子などを利用するならば、図6に示す発光素子24により十分な光触媒効果を得ることができる。
【0037】
図7は、本発明に係るマスクの第2実施形態を示すもので、この第2実施形態のマスク50は、マスク本体5にポケット部11に加え、予備ポケット部51を設けた点に特徴を有する。
図2に示す構成のポケット部11に加え、内層部2と外層部3の間に布あるいは不織布などからなる仕切り部52を設け、内層部2及び外層部3とともにそれらの外周部を縫い合わせるか、溶着一体化または接着一体化して3重構造としたマスク本体50を得ることができる。
【0038】
第2実施形態のマスク50は、ポケット部11に複層フィルターシート12を収容したまま、必要に応じて内側に形成されている予備ポケット部51に直接発光フィルター層25を収容して使用することができる。
第2実施形態の場合、予備ポケット部51に発光フィルター層25を挿入して使用し、ポケット部11に収容した複層フィルターシート12が汚れた場合に、複層フィルターシート12のみを新規の綺麗な別の複層フィルターシート12と交換することができる。
【0039】
第2実施形態の構造では、予備ポケット部51に収容した発光フィルター層25を使用し、発光フィルター層25に設けたボタン電池30の容量がなくなった場合、予備ポケット部51から発光フィルター層25のみを取り出してボタン電池30を別の新規のボタン電池30に容易に交換することができる。
【0040】
第2実施形態の構造では、ポケット部11に収容した複層フィルターシート12と予備ポケット部51に収容した発光フィルター層25のメンテナンスを個別に行うことができる特徴を有する。
あるいは、第2実施形態の構造では、発光フィルター層25を積層した状態の複層フィルターシート12をマスク本体5のポケット部11に挿入し、予備ポケット部51に別の機能を有する他のフィルター層を収容して使用することができる。
【0041】
以上、本発明に係るマスクについて詳述したが、本発明に係るマスクは、上述した実施形態の構造に限定されるものではない。
例えば、本発明に係るマスクは、ポケット部11を有しない構造のマスク本体に適用することが可能である。ポケット部11を有しないマスク本体に複層フィルタシート12あるいは発光フィルター層25を積層した状態の複層フィルターシート12を適用するためには、図8に示す構造とすれば良い。
まず、ポケット部11を有しない1層構造のマスク本体の内層部2に対し四隅部に面ファスナー18を取り付け、面ファスナー18を介し複層フィルタシート12あるいは発光フィルター層25を積層した状態の複層フィルターシート12を着脱自在に取り付ける構成を採用できる。
【0042】
図8は、本発明に係るマスクの第3実施形態を示すもので、この実施形態のマスク60は、内層部2のみからなる単層構造のマスク本体61を主体とし、内層部2の両端側に筒状の折返し部8を構成するように縫い目部6を形成し、この折返し部8を挿通するようにゴム紐などの紐状弾性体を挿通することで耳掛け用バンド部9が形成されている。内層部2の内面側の四隅部に面ファスナー18が取り付けられている。
【0043】
ポケット部11を有しない構成のマスク本体61に対し上述のように複層フィルターシート12あるいは発光フィルター層25を積層した状態の複層フィルターシート12を面ファスナー18を利用し装着することで第1実施形態のマスク1が有する機能と同等の機能を得ることができる。図8に示す面ファスナー18により、発光フィルター層25を備えた複層フィルターシート12を着脱自在とする場合、口許側、鼻梁側に位置する層は発光フィルター層25ではなく、第3フィルター層17であることが望ましい。
この場合、第2フィルター層16から第3フィルター層17を分離し、第2フィルター層16と第3フィルター層17との間に発光フィルター層25を積層して使用することが望ましい。
【0044】
図8に示す構成のマスク60であっても、第1実施形態と同様に、抗菌性、防カビ性、消臭性、抗ウィルス性を得ることができる。
また、発光フィルター層25の発光素子24を利用することで夜間や暗い場所においても光触媒粉末粒子21を有効化し、抗菌性、防カビ性、消臭性、抗ウィルス性を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1…マスク、2…内層部、3…外層部、5…マスク本体、6…縫い目部、7…縫い目部、8…折返し部、9…耳掛け用バンド部、10…開口部、11…ポケット部、12…複層フィルターシート、15…第1フィルター層、16…第2フィルター層、17…第3フィルター層、18…平面ファスナー、20…多孔質体層、21…機能性粒子(光触媒粉末粒子)、24…発光素子、25…発光フィルター層、26…基材、27…被覆配線、29…電池受け、30…ボタン電池、31…スイッチ、50…マスク、51…予備ポケット部、52…仕切り部、60…マスク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8