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▶ 茶谷 郁夫の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044518
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】音響装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/32 20060101AFI20220310BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20220310BHJP
   H04R 7/12 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
H04R1/32 310Z
H04R1/02 101D
H04R7/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020160204
(22)【出願日】2020-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】520369272
【氏名又は名称】茶谷 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 郁夫
【テーマコード(参考)】
5D016
5D018
【Fターム(参考)】
5D016AA08
5D018AA10
5D018AF30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】広い指向性を有したまま、デザインと使用目的に応じて卓上形からフロアー形まで変化できるスピーカを提供する。
【解決手段】スピーカシステムは、凸振動板の共通ユニット4が取り付けられた前面キャビネット5を共通部分とし、これに後部キャビネット6が組み合わせられる構成を有する。後部キャビネット6は、図示の球形キャビネットの他、後部円錐キャビネットや後部円筒キャビネットとすることで全体のキャビネット容積を変更でき、低域の再生能力を変えることができる。また、デザインや大きさを変えられるので、卓上形からフロアースタンド形までの使用が可能となる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカユニットが付く前面キャビネットとその背面の後面キャビネットを分離可能とし、その前面キャビネットを共通化し、後面キャビネットの形状を交換可能としたスピーカシステム。
【請求項2】
キャビネットの前面キャビネット以外の形状部分を、前面キャビネットの曲面とスムースに連続させるように形成したスピーカシステム。
【請求項3】
前面キャビネットの曲率を凸形状の振動板と近似させたものとするスピーカシステム。
【請求項4】
後部キャビネットを前面キャビネットと近似の曲率とし、仕上がりが球形となるスピーカシステム。
【請求項5】
後部キャビネットを前面キャビネットとスムースにつなぐ面とし、円錐形となるスピーカシステム。
【請求項6】
後部キャビネットを前面キャビネットとスムースにつなぐ面とし、円筒形となるスピーカシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広指向性を有するスピーカシステムに関する物である
【背景技術】
【0002】
ステレオ音響で音場の再生を楽しむ場合、広い指向性が求められている。
通常のスピーカの場合、コーン振動板のスピーカユニットが使用せれており、凹んだコーン形状の為に±60度方向以上で音の放射指向特性が劣化し、試聴位置が限定される、その為音場の再現が良くないことが確認されている。
図1に通常の2ウエイスピーカシステムの断面図と斜視図を示す。
例えば中低域にはコーンスピーカ、高域にはドームツイーターを使用する。
高音帯域はドームツイーター等を使用すれば、左右の指向性は改善するが、上下方向は中低域ユニットとの干渉で指向周波数特性は悪化する。
中低音用のコーンスピーカはコーン振動板の開き角度(半頂角)が120度程度の物が多く、従って±60度以上の試聴位置では急激に音圧が低下する。
図2に従来スピーカとたまご形スピーカの指向特性を極座標表示する。
従来形の長方形キャビネットにコーンユニットを取り付けた例では±60度以上で特性劣化しているのが見られる。
本発明と同様な凸振動板ユニットを同等な曲率を有するたまご形キャビネットに取り付けた場合、指向性が広がっているのが分かる。
【0003】
そこで、本発明でも広指向性のスピーカユニットをユニット振動板の曲率(カーブ)と近似の曲率を有するキャビネットに装着し、良好な指向特性を得たスピーカシステムとする。
【0004】
この広指向性ユニットの付いた前面キャビネットに、後面キャビネットを取り付けスピーカシステムとする。
前面キャビネットと同曲面で出来る球形システムでは、音響特性は良いが、容積が小さい。そこで、後面キャビネットを容易に変更できるようにし、指向周波数特性を良好なまま、容積やデザインや使用目的を変更できるようにした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4925892号
【特許文献2】特開2019-036932
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特開2019-036932では球形キャビネットに通常のコーンユニットを使用しており、±60度方向以上では指向特性が劣化する。
【0008】
特許4925892号ではたまご形キャビネット、球形キャビネットそれに円筒キャビネットも図示されている。
たまご形スピーカに凸振動板ユニットを付けたこのシステムはすぐれた指向特性を有しているが、たまご形の場合容積が固定されており、低域再生などに改良が求められていた。
そこで、広い指向性を有したまま、デザインと使用目的に応じて卓上形からフロアー形まで変化できるスピーカが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
凸振動板のユニットの取り付けられた前面キャビネットを共通使用出来る構造とし、後面キャビネットを半球形、円錐形、円筒形の3種類を選べるようにし、目的に合った特性を得られるように工夫した物である。この3種類のキャビネットは何れも優れた指向周波数特性を有するスピーカとなる。
図3に示すように球形の場合の回折効果は大変スムースな特性となり、広い指向性となる。一方半球の場合、これもかなり優れた回折効果を示しているが、半球が前半だけで終わっているので、特性上の凸凹が生じている。
そこで、優れた特性とするためには前面バッフルの曲面を出来るだけ維持し、スムースな曲面で後面キャビネットに繋いでいく必要が有る。
そこで本発明のように、凸振動板のスピーカユニットを半球面のバッフルに取りつけ、これを共通使用出来るようにし、後面キャビネットとして半球形と円錐形と円筒形の3種類を選んで、指向特性が優れていると同時に、音質的にも、デザイン的にも、目的に合わせたスピーカとする。
仕上がりが球形となるシステムの場合、容積は小さいが指向特性は一番優れており、一つの理想的な音源となりえるので、これも加える。
容積の小さな場合、箱内部の音の反射が問題になることが有るので、これを解決するために優れた吸音材が必要に成る。
最近では容易に優れた吸音材が入手できるので、この技術も合わせて生かしていく。
【発明の効果】
【0010】
前面キャビネットを共通化することで、全体のキャビネット容積を変更でき、低域の再生能力を変えられる点にある。
また、デザインや大きさを変えられるので、卓上形から、フロアースタンド形までの使用が可能となる。
容易にデザインを変えられる事は、製造時に部品共通化による作りやすさが出る。と同時に、例えばユーザーが球形のシステムを使用しており、これを容積の大きな低音再生に優れたシステムに変更したい場合、後面キャビネットのみ入手すれば可能になる等のメリットが出る。
円形のスピーカユニットは、多くのスピーカが円形であるため、部品の制作、調達にも有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】従来形の2ウエイスピーカシステムの例である。横断面図と斜視図
図2】極座標表示の指向特性。従来形スピーカとたまご形キャビネット+凸振板ユニットの場合。
図3】軸上での回折効果の周波数特性。球形と半球形の例
図4】本発明の球形キャビネットの例。上面(前面)ユニットと半球状キャビネットが共通部分となる。下面(後面)キャビネットとの組み合わせで球形となる。
図5】前面キャビネットと後面キャビネットで円錐形となる例。前面キャビネットは共通に使用出来る。
図6】前面キャビネットと後面キャビネットで円筒形となる例。容積が大きく選べるので、フロアー形とし、主に水平方向360度への音の放射を利用する
図7】本発明の球形キャビネットの場合の指向特性(極座標表示)
図8】本発明の球形キャビネットの場合の指向周波数特性0度~180度
【発明を実施するための形態】
【0012】
図4は本発明の基本となる球状キャビネットの例である。
前面キャビネットには凸振動板のユニットが取り付けられており、後面キャビネットとの組み合わせで全体として球形となる。
広い指向性を有する球形システムの場合、全方向への音の放射が大変スムースで、音の1つの理想形である点音源に近い特性を実現できる。
現在のステレオ再生において、まだまだ録音時に間接音成分(音場を感じさせる成分)が少ないと言う説もあり、またボーズ901システムのように間接音成分を極端に増やしたスピーカまで存在し、通常のステレオ音源でも間接音成分を増やして再生することで、自然な音場感が得られる事が確認されている。
本システムのように、すでに録音されている音源を用いても、広い指向性のあるシステムで再生することで、音場感、臨場感を向上することが可能である。
図5図6とキャビネット形態を変えることで、広い指向性を保ったまま、内容積を増やしたり、デザインを変えたり、卓上形から、フロアー形まで変化させることが出来る。
【実施例0013】
図4は、本発明装置の1実施例で図5図6と共通の前面キャビネットを使って3種類の形態に変化できる。
図4は前後の組み合わせで球形としたもので、左右上下の全方向に対称に音を放射出来るため最も均一な広い指向性を得ることが出来る。
【実施例0014】
図5はキャビネットが円錐形となり、図4に比較し容積が増える。これにより低域の再生限界が伸び、Qも低下し、低音の音を伸び伸び再生する。
また、円錐形は後面方向にキャビネットが伸びているためにキャビネット内部での音の反射が減少し、内部での音のノイズ感が減少しクリヤーな音質になる。
円錐形は低域、中低域の音質向上に有効となる。
球形、円錐形はユニットの軸上でも、あるいはスピーカを上面に向けてセットし、ユニット軸上から90度方向でも音を楽しむことが出来る。
この場合再生音のほとんどは部屋全体に放射され、放射音の一部を聞くこととなる。間接音成分が多くなり、部屋全体に広い音場を作るように再生する為に、伸び伸びとした音場再生に優れたスピーカとなる。
【実施例0015】
図6は円筒形となり、最も容積が大きくなり低音再生が伸びる。ユニット後方へのキャビネット内部での音の反射も最も少なくなり、全体帯域の音質が伸びやかとなる。
この場合はフロアー形として使用し、試聴時の耳の高さ(約90cm)に来るよう円筒の長さを設定する。その場合ユニットの軸上から90度ずれた方向で音を聞くようになる。間接音成分が増加し、ゆったりとした低域と共に広い再生音場を楽しむことが出来る。
【0016】
図7は球形キャビネットの場合の極座標表示の指向特性を示す。180度までのデーターを15度毎に測定し360度分として示した。室内での測定なので、少し反射波の影響が出ているが、20kHzまでー16dBに収まっており、優れた指向特性と言える。
【0017】
図8は球形キャビネットの場合の指向周波数特性を軸上0度から180度まで30度置きに表示したもので、軸上やや高域が強く出ているが、30度方向で全体にフラットな特性となっている。また、60度から180度までの特性が、少ないレベルの低下で出ている。かなり良い指向特性と言える。
【産業上の利用可能性】
【0018】
レストランやホテル等でPAあるいはSRとしてスピーカを使用する場合、従来は通常のコーンユニットを使用することが多く、軸上特性が強いために場所により音の強度、明瞭度が異なることが多かった。
本発明のように大変広い指向特性を持ち、しかもフルレンジユニットのシステムを用いると、広いサービスエリアが確保でき、方向の違いが生じないので、大変聞きやすいシステムとなる。
【符号の説明】
【0019】
1高音用スピーカ
2低音用スピーカ
3角形キャビネット
4凸振動板の共通ユニット
5前面キャビネット
6後面キャビネット
7後面円錐キャビネット
8後面円筒キャビネット
9スタンド部分
10バッフル面(ユニットの付いている面)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8