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特開2022-44528電気駆動強化透過性反応壁によるヒ素汚染土壌の修復方法
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  • 特開-電気駆動強化透過性反応壁によるヒ素汚染土壌の修復方法 図1
  • 特開-電気駆動強化透過性反応壁によるヒ素汚染土壌の修復方法 図2
  • 特開-電気駆動強化透過性反応壁によるヒ素汚染土壌の修復方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044528
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】電気駆動強化透過性反応壁によるヒ素汚染土壌の修復方法
(51)【国際特許分類】
   B09C 1/08 20060101AFI20220310BHJP
   B02C 19/00 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
B09C1/08
B02C19/00 101A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020205692
(22)【出願日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】202010925378.8
(32)【優先日】2020-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520489802
【氏名又は名称】桂林理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100135194
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 智雄
(72)【発明者】
【氏名】朱宗強
(72)【発明者】
【氏名】方雅莉
(72)【発明者】
【氏名】田炎
(72)【発明者】
【氏名】趙寧寧
(72)【発明者】
【氏名】朱義年
(72)【発明者】
【氏名】王亞茹
(72)【発明者】
【氏名】章俊
(72)【発明者】
【氏名】張立浩
(72)【発明者】
【氏名】唐沈
【テーマコード(参考)】
4D004
4D067
【Fターム(参考)】
4D004AA41
4D004AB05
4D004AC05
4D004BA02
4D004CA04
4D004CA13
4D004CA15
4D004CA34
4D004CA44
4D004CA47
4D004CB05
4D004CB13
4D004CB21
4D004CC03
4D004CC11
4D004DA03
4D067CG07
4D067DD03
4D067DD08
4D067GA03
4D067GA20
(57)【要約】
【課題】電気駆動強化透過性反応壁によるヒ素汚染土壌の修復方法を開示する。
【解決手段】本発明は、電気駆動強化透過性反応壁装置を利用することにより、ヒ素汚染土壌をその場で効率的に修復することである。具体的なステップは、汚染されたヒ素土壌を自然乾燥させた後、粉砕して篩い分けた後、脱イオン水と均一に混合・撹拌し、混合後の土壌水分含有量を30%-35%に維持するようにし、静置してそのバランスを取った後に1V/cm~3V/cmの電圧条件下で修復し、ここでPRB材料は濾布で包み、土壌反応器に入れ、土壌の異なるヒ素汚染度や土壌の性質に応じて材料を選択する。この方法は、汚染された土壌中のヒ素の除去率を改善すると同時に二次汚染を回避し、透過性反応壁は、更新しやすいためヒ素の除去率を改善する。この方法は、明らかな修復効果と簡単な操作があり、ヒ素汚染鉱山、ヒ素汚染化学土壌や農地などの現場での実装可能性を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気駆動強化透過性反応壁によるヒ素汚染土壌の修復方法であって、
自然乾燥したヒ素汚染土壌をハンマーで粉砕して、ふるいにかけるステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた土壌を脱イオン水と混合し、土壌水分含有量が30%-40%に保たれるようにし、均一に撹拌した後に7-14d静置するステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた均一に混合された土壌をEK-PRB装置の土壌チャンバーに充填し、同時にPRB材料を土壌の中央に垂直に置くステップ(3)と、
ステップ(3)における土壌チャンバーの両側のアノードチャンバーとカソードチャンバーに電解液を追加し、それぞれグラファイト電極を挿入し、電源を入れて修復する装置を起動し始めるステップ(4)と、
電源投入が終了した後、PRB透過性反応壁を取り外して、修復されたヒ素汚染土壌を得るステップ(5)と、を含む方法。
【請求項2】
前記ヒ素汚染土壌のpH値は6.35であり、土壌中のヒ素の総濃度は250mg/kgであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(1)に記載のヒ素汚染土壌を、ハンマーで粉砕して、20メッシュのスクリーンを通過し、大きな土塊をふるい分けで除去することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(2)に記載の土壌1キログラムあたり約500mlの脱イオン水を追加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(3)で、土壌の中央に垂直に充填されたPRB材料は、ヒ素を急速に吸着する性能を有する竹炭/FeMn-LDH複合材料等であり、充填厚さは約1cmであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(4)では、両側の電極チャンバーでの電解液は0.1mol/L塩化カリウム溶液であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(4)の実行時間は96hであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
電極チャンバーに挿入された電極の両側はいずれもグラファイト電極であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
下部と上部から1cm離れるところにそれぞれ直径1cmのオーバーフローポートが開いており、下部の電解液流入と上部の電解液流出との間の水位バランスをとるために使用されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
両側の電解液は、オーバーフローポートと外部蠕動ポンプを通して、電解液をカソードとアノードで個別に循環させ、電解チャンバー内の電解液の量を変化させないように電解液を即時補充することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境保護技術における土壌重金属汚染修復の技術分野に属し、特に、電気駆動強化透過性反応壁によるヒ素汚染土壌の修復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の環境保護意識が徐々に向上するにつれ、土壌重金属汚染の問題がますます注目されている。土壌ヒ素汚染の原因には、金属鉱山の採掘と製錬、化学工業生産、重金属農薬下水灌漑と肥料の使用、および高い地質学的背景値が含まれ、その中には、非鉄金属鉱業の採掘と製錬から排出される重金属廃ガス沈降、廃水灌漑、及び廃残留物などの固形廃棄物の土壌への溶解・拡散がヒ素汚染の主な原因である。
【0003】
ヒ素は環境中を移動する可能性があり、土壌中のヒ素の一部は農作物に吸収され、もう一部は降水や河川によって水域に洗い流され、最終的にフードチェーンを通って人体に入る。農作物に受動的に吸収されたヒ素は、作物自体にも害を及ぼし、過剰なヒ素は、植物の蒸散を減少させることにより、根による水の吸収と輸送を阻害し、それにより、作物の葉の表面の滑らかさ、根の長さ、苗の高さに影響を与える。そのうち、三価ヒ素と人体の酵素の組み合わせは、酵素活性を阻害し、グルコース代謝障害、中毒性神経衰弱症候群等の問題を引き起こす可能性があり、五価ヒ素の毒性は慢性的であり、脊髄炎や再生不良性貧血などの後遺症を引き起こす可能性がある。ヒ素中毒は、主に皮膚を損傷する全身性疾患であり、人間の皮膚、呼吸、消化、泌尿、心血管、神経、造血などのシステムに害を及ぼす可能性がある。
【0004】
現在、ヒ素汚染土壌の修復には、国内外でさまざまな方法があり、主に2つの方法がある。土壌中の重金属の存在形態を変更し、それらを固定し、環境での移動性と生物学的利用能を低下させ、土壌から重金属を除去し、主に、物理的修復、生物的修復、および化学的修復である。電気駆動強化透過性反応壁によるヒ素汚染土壌の修復技術(EK-PRB)は、電気修復技術(EK)と透過性反応グリッド技術(PRB)を組み合わせて土壌汚染物を修復する新しい技術である。原理は、修復しようとする土壌における汚染物は電解液や地下水などによって駆動され、電気技術を使用してPRB修復を強化し、汚染物が土壌や地下水中を定方向移動して反応障壁に到達して反応できるようにする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電界駆動とPRB技術との長所を組み合わせて、電界駆動下でのヒ素汚染土壌のその場での修復のエネルギー効率に対するPRBの特定の影響を分析すること、PRB材料による標的イオンの精製メカニズムと電界駆動作用プロセスを組み合わせて、EK-PRBの制御可能な適用プロセスと吸着効率の間の相互作用の本質的な関係を明らかにし、その場での修復メカニズムモデルを構築すること、二次汚染を防ぐために、元の単一のEKおよびPRB技術の上で土壌ヒ素除去効率を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決手段を採用する。
電気駆動強化透過性反応壁によるヒ素汚染土壌の修復方法であって、
自然乾燥したヒ素汚染土壌をハンマーで粉砕し、ふるいにかけるステップ(1)と、
ステップ(1)で得られた土壌を脱イオン水と混合して土壌水分含有量が35%に保たれるようにし、均一に撹拌した後に7d静置するステップ(2)と、
ステップ(2)で得られた均一に混合された土壌をEK-PRB装置の土壌チャンバーに充填し、同時にPRB材料を土壌の中央に垂直に置くステップ(3)と、
ステップ(3)で土壌チャンバーの両側のアノードチャンバーとカソードチャンバーに電解液を追加し、それぞれグラファイト電極を挿入し、電源を入れて修復する装置を起動し始めるステップ(4)と、
電源投入が終了した後、PRB透過性反応壁を取り外して、修復されたヒ素汚染土壌を得るステップ(5)と、を含む。
【0007】
上記ヒ素汚染土壌のpH値は6.35であり、土壌中のヒ素の総濃度は250mg/kgである。
【0008】
上記のステップ(1)に記載のヒ素汚染土壌は、ハンマーで粉砕された後、20メッシュのスクリーンを通過した。
【0009】
上記のステップ(2)では、前記土壌1キログラムあたりの脱イオン水の添加量は約500mlであるため、水分含有量は土壌の導電性を確保するのに適している。
【0010】
上記ステップ(3)において、土壌の中央に垂直に充填されたPRB材料は竹炭Fe/Mn-LDH複合材料であり、充填厚さは約1cmである。
【0011】
上記のステップ(4)では、安定した電気駆動能力を確保するために、両側の電極チャンバー内の電解液は0.1mol/L塩化カリウム溶液である。
【0012】
上記のステップ(4)の実行時間は96hである。
【0013】
上記の電極チャンバーに挿入された電極の両側はいずれもグラファイト電極板である。
【0014】
本発明のステップ(3)に記載されているEK-PRB技術は、以下の装置によって処理される。
本発明で使用されるEK-PRB装置は、土壌チャンバー、カソードチャンバー、アノードチャンバー、直流電源、電極、オーバーフローホール、電解液タンク、蠕動ポンプ、グラファイト電極、フィルタースクリーン、Fe/Mn-LDH PRB材料を含む。
【0015】
ここで土壌チャンバーは、2:1:1のサイズ比のヒ素汚染土壌で充填され、電解液は両側のカソードチャンバーとアノードチャンバーに充填され、電解チャンバーのサイズ比は1:1:1である。PRBは濾布で包まれ、汚染された土壌に垂直に置かれる。ここで土壌チャンバーと電極チャンバーとの間の仕切板には均一に分布した穴があり、遮断するために300メッシュの濾布が仕切板に貼り付けられて、土壌が電解チャンバーに入るのを防止する。アノードチャンバーとカソードチャンバーはどちらも厚さ1cmのグラファイト電極板を使用し、電極線を使用して直流電源に接続し、電圧勾配は2v/cmである。カソードチャンバーとアノードチャンバーの上側と下側には、それぞれ上部と下部から1cm離れるところに直径1cmのオーバーフローポートが開かれ、上部オーバーフローポートは、アノードとアノードとの電解液の液面が平坦で水圧差が安定しており、電気駆動能力が安定していることを保証する。下部オーバーフローポートは、蠕動ポンプを介して電解液収集タンクに接続されて、目的は、失われた電解液と循環電解液を補うことである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以下の重要な利点を有する。
1.従来の純粋な電気駆動ヒ素汚染土壌および単一の逆浸透バリア技術と比較して、この方法は、修復効率が20%-40%向上した。
2.この方法で修復されたヒ素汚染土壌は、修復前の土壌より浸出毒性が約90%減少した。
3.この方法は、土壌に二次汚染を引き起こさず、グリーンで環境にやさしい修復の理念を持っている。
4.この方法は、いつでも透過性の反応壁を置き換えることができ、ヒ素汚染の除去率を向上させる。
5.この方法は、操作が簡単で、コストが低く、処理時間が速く、大規模なエンジニアリング実装可能で、幅広い用途がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明で使用される電気的に駆動される強化透過性壁反応装置の構造の模式図である。
図2】純粋な電気駆動とEK-PRB処理後のヒ素汚染土壌中の総ヒ素の比較図である。
図3】純粋な電気駆動とEK-PRB処理後のヒ素汚染土壌の浸出毒性の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
電気駆動強化透過性反応壁によるヒ素汚染土壌の修復方法である。自作装置によってヒ素汚染土壌を修復することであり、前記装置は、一つの土壌チャンバー、2つの電解チャンバー、一つの直流電源、2つの蠕動ポンプ、および2つの電解液収集タンクで構成されている。ヒ素汚染土壌を土壌チャンバーに充填し、濾布で包んだPRB材料を一緒に土壌チャンバーに置き、2v/cmの実行電圧で96h実行した後、PRB壁を取り外し、処理した土壌を分離して除去し、土壌からヒ素を処理する目的を達成する。その具体的なステップは、広西独特の赤い土壌から一定量のきれいな土壌を秤取し、サンプリング土壌は土壌表層から5-20cmの土壌であり、自然乾燥後、草の根や大きな岩などの不純物を取り除き、20メッシュのふるいを通過して土壌のサンプルを得て、使用に備えておく。一定量の亜ヒ酸ナトリウムを秤取し、脱イオン水に溶解して一定の体積にするように定容する。調製したヒ素溶液と使用に備えるきれいな土壌を、土壌1キログラムあたり250mlのヒ素溶液を追加することで混合して均一に撹拌した後、1週間静置して500mg/kgのヒ素汚染土壌を構成するステップ(1)と、ステップ(1)でヒ素汚染土壌を装置の土壌チャンバーに充填し、両側のアノードおよびカソード電解チャンバーにグラファイト電極板と0.1mol/LのKCl電解液を充填し、2v/cmの電圧で電源を入れて96h動作して取り出すステップ(2)と、ステップ(2)で動作が終了した土壌を王水水浴法で分解した後にICPまたは原子蛍光でサンプルを測定する。土壌中のヒ素はアノードに移動してPRB逆浸透壁を通して除去され、ヒ素が除去された土壌が得られるステップ(3)と、を含む。
【0019】
化学分析を実行して土壌を修復した後の土壌からの総ヒ素の除去率は、純粋な電気駆動の28.64%からEK-PRBで処理された48.17%に増加した。処理前後の土壌ヒ素浸出毒性は、純粋な電気駆動の86.1%からEK-PRBの95.7%に増加した。総ヒ素の除去率の増加と浸出毒性率の増加は、総量であろうと生物学的利用可能の量であろうといずれも良好な結果が達成されたことを示している。
【符号の説明】
【0020】
1 土壌チャンバー
2 電解チャンバー
3 電極板
4 循環ポンプ
5 電解液収集タンク
6 1cmの孔径を有する仕切板
7 透過性反応壁
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-03-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項4
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項4】
ステップ(2)に記載の土壌1キログラムあたり500mlの脱イオン水を追加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項5
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項5】
ステップ(3)で、土壌の中央に垂直に充填されたPRB材料は、ヒ素を急速に吸着する性能を有する竹炭/FeMn-LDH複合材料であり、充填厚さは1cmであることを特徴とする請求項1に記載の方法。