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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044548
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】ガスタービンエンジン用の排気ダクト
(51)【国際特許分類】
   F02C 6/18 20060101AFI20220310BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20220310BHJP
   F28D 7/06 20060101ALI20220310BHJP
   F01D 25/30 20060101ALI20220310BHJP
   F02C 6/16 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
F02C6/18 Z
F28D9/00
F28D7/06
F01D25/30 A
F01D25/30 B
F01D25/30 D
F02C6/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021098998
(22)【出願日】2021-06-14
(31)【優先権主張番号】20181760
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH-5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】ブーリア・モハメッド・ファキヒ
(72)【発明者】
【氏名】デオラス・プラブハダハルワダカル
(72)【発明者】
【氏名】ジラル・ジア
(72)【発明者】
【氏名】ファディ・ガイス
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA32
3L103BB05
3L103CC27
3L103DD06
3L103DD32
3L103DD68
(57)【要約】      (修正有)
【課題】熱回収蒸気発生器を設けるために必要な費用および追加の空間なしに、ガスタービンエンジンの排気ガスから排気熱を回収するのに有用なガスタービンエンジン用の排気ダクトを提供する。
【解決手段】サイレンサセクション12を備える、ガスタービンエンジン50用の排気ダクトが開示される。少なくとも2つの板状サイレンサバッフル20が、サイレンサセクション12の内側に設けられる。板状サイレンサバッフルの少なくとも1つは、熱交換流体を受け入れるのに適しており、排気ダクトの内部に対して漏れ防止である少なくとも1つの内部キャビティを備えるという点で、熱交換装置として構成され、少なくとも1つの内部キャビティは、入口ポートおよび出口ポートで排気ダクトの外側に流体的に接続される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンエンジン(50)用の排気ダクト(1)であって、前記排気ダクト(1)は、サイレンサセクション(12)を備え、前記サイレンサセクション(12)は、入口および出口と、前記入口から前記出口への流れ方向とを有し、
少なくとも2つの板状サイレンサバッフル(20)が、前記サイレンサセクション(12)の内側に設けられ、互いに平行に配置され、各サイレンサバッフル(20)は、上流縁(21)から下流縁まで前記サイレンサセクション(12)の前記流れ方向に沿って延び、
前記少なくとも2つの板状サイレンサバッフル(20)の各々は、前記上流縁(21)から前記下流縁まで前記サイレンサセクション(12)の前記流れ方向に沿って延びる側面(25、26)を有し、2つの隣接する板状サイレンサバッフル(20)の2つの側面(25、26)は、互いに対向して配置され、それらの間に排気流路を形成し、
さらに前記板状サイレンサバッフル(20)の少なくとも1つは、前記板状サイレンサバッフル(20)の前記少なくとも1つが熱交換流体を受け入れるのに適した少なくとも1つの内部キャビティ(22)を備えるという点で、熱交換装置として構成され、前記少なくとも1つの内部キャビティ(22)は、入口ポートおよび出口ポート(23、24)で前記排気ダクト(1)の外側に流体的に接続される、
排気ダクト(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの内部キャビティ(22)は、前記排気ダクト(1)の前記外側に流体的に接続された少なくとも1つの内部ダクト(22)として設けられる、請求項1に記載の排気ダクト(1)。
【請求項3】
少なくとも1つの内部ダクト(22)が、少なくとも1つの板状サイレンサバッフル(20)の前記前縁(21)に隣接して前記前縁(21)に沿って延びる、請求項2に記載の排気ダクト(1)。
【請求項4】
少なくとも1つの内部ダクト(22)が、少なくとも1つのサイレンサバッフル(20)の内側で蛇行形状に延びる、請求項2乃至3のいずれか1項に記載の排気ダクト(1)。
【請求項5】
少なくとも1つのサイレンサバッフル(20)の前記側面(25、26)は、側壁(250、260)に設けられ、各側壁(250、260)は、2つのシート(251、252)を有して前記2つのシート(251、252)間に空間が残された中空体として設けられ、前記シート(251、252)の各々は、多数の開口部によって穿孔され、前記側壁(250、260)の前記シート(251、252)上の各整列した対の開口部は、前記空間を橋渡しし、前記それぞれのシート(251、252)と気密にシールする管(27)によって接続され、それにより前記管(27)を通して前記側壁(250、260)の2つの対向する側を流体的に接続し、したがって熱交換流体を受け入れるのに適した前記キャビティ(22)は、前記2つのシート(251、252)間の前記空間および前記管(27)の外側に形成される、請求項2乃至4のいずれか1項に記載の排気ダクト(1)。
【請求項6】
熱交換装置として構成されたすべてのサイレンサバッフル(20)の熱交換流体を受け入れるのに適したすべての内部キャビティ(22)は、2つの共通のヘッダ(28、29)に接続され、熱交換流体用の各内部キャビティ(22)は、前記2つの共通のヘッダ(28、29)を流体的に接続する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の排気ダクト(1)。
【請求項7】
膨張タービン(53)の排気側が、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の排気ダクト(1)に接続される、ガスタービンエンジン(50)。
【請求項8】
請求項7に記載の少なくとも1つのガスタービンエンジン(50)を備え、圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)システムをさらに備え、熱交換装置として構成された前記サイレンサバッフル(20)の前記入口ポート(23)は、CAES貯蔵タンクに流体的に接続され、熱交換装置として構成された前記サイレンサバッフル(20)の前記出口ポート(24)は、CAES膨張タービン(103)に流体的に接続される、発電所。
【請求項9】
請求項7に記載の少なくとも1つのガスタービンエンジン(50)を備え、ターボ過給機をさらに備え、前記ターボ過給機は、少なくとも1つの低圧圧縮機(71)と、少なくとも1つの高圧圧縮機(76)と、前記圧縮機(71、76)を駆動するための少なくとも1つのタービン(72、77)とを備え、
前記少なくとも1つの低圧圧縮機(71)の圧縮機出口は、熱交換装置として構成された前記サイレンサバッフル(20)の前記入口ポート(23)、および前記少なくとも1つの高圧圧縮機(76)の圧縮機入口に流体的に接続され、
熱交換装置として構成された前記サイレンサバッフル(20)の前記出口ポート(24)は、前記ターボ過給機の前記少なくとも1つのタービン(72、77)のタービン入口に流体的に接続され、
前記ターボ過給機の前記少なくとも1つのタービン(72、77)のタービン出口は、背圧制御装置(78)に流体的に接続され、
前記少なくとも1つの高圧圧縮機(76)の圧縮機出口は、前記ガスタービンエンジン(50)の燃焼器(52)に流体的に接続される、
発電所。
【請求項10】
請求項7に記載の少なくとも1つのガスタービンエンジン(50)を備え、熱交換装置として構成された前記サイレンサバッフル(20)は、それらの入口および出口ポート(23、24)を通して、前記ガスタービンエンジン(50)の圧縮機(111)と燃焼器(52)との間に流体的に介在され、それによって熱交換装置として構成された前記サイレンサバッフル(20)は、前記圧縮機(111)から前記燃焼器(52)に搬送される流体流の少なくとも一部を受け入れるように構成される、発電所。
【請求項11】
前記圧縮機(111)は、前記ガスタービンエンジン(50)の圧縮機(51)とは異なる補助圧縮機であり、前記圧縮機(111)は、モータ駆動される、請求項10に記載の発電所。
【請求項12】
請求項7に記載の少なくとも1つのガスタービンエンジン(50)を備え、前記ガスタービンエンジン(50)は、吸気予熱回路を備え、前記吸気予熱回路は、前記ガスタービンエンジン(50)の前記圧縮機(51)の上流に設けられた吸気予熱熱交換器(56)を備え、熱交換装置として構成された前記サイレンサバッフル(20)は、それらの入口および出口ポート(23、24)を通して、前記吸気予熱回路に組み込まれ、それにより前記吸気予熱回路に含まれる流体を、熱交換装置として構成された前記サイレンサバッフル(20)の内側に設けられた熱交換流体用の前記内部キャビティ(22)を通して流す、発電所。
【請求項13】
請求項7に記載の少なくとも1つのガスタービンエンジン(50)を備え、前記ガスタービンエンジン(50)は、燃料予熱回路を備え、前記燃料予熱回路は、燃料流路内の前記ガスタービンエンジン(50)の燃焼器(52)の上流に設けられた燃料予熱熱交換器を備え、熱交換装置として構成された前記サイレンサバッフル(20)は、それらの入口および出口ポート(23、24)を通して、前記燃料予熱回路に組み込まれ、それにより前記燃料予熱回路に含まれる流体を、熱交換装置として構成された前記サイレンサバッフル(20)の内側に設けられた熱交換流体用の前記内部キャビティ(22)を通して流す、発電所。
【請求項14】
請求項7に記載の少なくとも1つのガスタービンエンジン(50)を備え、前記ガスタービンエンジン(50)の圧縮機(51)は、前記圧縮機入口の下流かつ前記圧縮機出口の上流に抽気ポートを備え、第1のラインが、前記抽気ポートから外部圧縮機(111)の低圧入口ポートに延び、それによって前記第1のラインは、前記抽気ポートを前記外部圧縮機(111)の前記低圧入口ポートに流体的に接続し、さらに第2のラインが、前記外部圧縮機(111)の高圧出口ポートに接続され、前記外部圧縮機(111)の前記高圧出口ポートと熱交換装置として構成された前記サイレンサバッフル(20)の前記入口ポート(23)を流体的に接続し、第3のラインが、前記ガスタービンエンジン(50)の前記圧縮機(51)の前記高圧出口および前記ガスタービンエンジン(50)の燃焼器(52)の少なくとも1つに接続され、熱交換装置として構成された前記サイレンサバッフル(20)の前記出口ポート(24)と前記ガスタービンエンジン(50)の前記圧縮機(51)の前記高圧出口および前記ガスタービンエンジン(50)の前記燃焼器(52)の少なくとも1つを流体的に接続する、発電所。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、特許請求の範囲に記載のタイプのガスタービンエンジン用の排気ダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンの排気ガスは、膨張タービンを出た後、依然として摂氏数百度であり、典型的には現代のガスタービンエンジンにおける高部分負荷および全負荷条件下で500℃~600℃の範囲にあり得る。したがって、排気ガスにより、膨張タービン内で膨張する前に燃料を燃焼させる際に加えられていた大きなエンタルピー流が大気中に排出され、技術的使用のために失われる。結果として生じるエンタルピーの損失は、効率に悪影響を及ぼす。
【0003】
熱回収蒸気発生器でガスタービンエンジンの排気エンタルピーを回収し、それによって生成された蒸気を蒸気タービンで使用して発電することが当技術分野で知られている。蒸気はまた、工業目的にも使用され得る。しかしながら、ボトミングサイクルとしての蒸気タービンがガスタービンエンジンからの排気エネルギーを使用する複合サイクル発電プラントの構築には多大な設備投資が必要であり、これは、優れた全体効率にもかかわらず、少なくとも本質的にベース負荷発電プラントとして、例えば年間5000時間を超えて、かつ例えば定格出力の少なくとも75%の高出力でプラントを運転することができる場合にのみ、この技術を経済的に魅力的であるものにする。さらに、排気ダクトの内側の多数の設備は、追加の圧力損失をもたらし、したがってガスタービンエンジン自体の効率および出力を低下させる。加えて、熱回収蒸気発生器が、常に利用可能であるとは限らない空間を必要とする。特に、熱回収蒸気発生器の設置は、既存のシングルサイクルガスタービンエンジン発電所に追加する選択肢ではない場合がある。
【0004】
米国特許出願公開第2013/0327052号明細書は、複数のガスタービンエンジンを共通のスタックに接続し、共通のスタックに熱交換器を配置することを教示している。さらに、この文献は、共通のスタックに熱交換器を設けること、そして共通の排気スタックを通る非層流を導入し、さらに露点制御を適用することによって排気ガスから熱交換器への熱伝達を改善することを教示している。
【0005】
米国特許第8,069,660号明細書は、消音チャンバ内に組み込まれた熱回収システムを開示している。この文献の教示によれば、排気流が最初に第1の消音チャンバに入り、次いで2つの部分流に分割される。前記部分流のうちの第1の流れは、第1の消音チャンバから第2の消音チャンバに、そしてそこから第3の消音チャンバに搬送される。前記部分流のうちの第2の流れは、第2の消音チャンバをバイパスして第3の消音チャンバに直接導かれる。これにより、前記第2の部分流は、内側ハウジングと熱回収外側ハウジングとの間に形成された熱回収流路内の消音チャンバの周りに配置された導管を通って流れる。熱伝達流体は、熱回収流路を通して案内され、内壁を通って消音チャンバ内の排気ガスと熱交換し、かつ導管を通って流れる排気ガスの第2の部分流と熱交換し、熱伝達流体は導管の周りを流れる。前記文献の教示は、ガスタービンエンジンに関連する使用に特に言及していない。
【0006】
米国特許第3,235,001号明細書は、燃焼エンジンの出口または入口に取り付けるのに適したサイレンサと熱交換装置の組み合わせを教示している。サイレンサと熱交換装置の組み合わせは、ハウジングを備える。ハウジングの前面側では、前面パネルがハウジングを部分的に閉じ、前面パネルとハウジングの外側パネルとの間に形成された前面入口を開いたままにする。ハウジングの背面側では、ハウジングの内部がエンジン入口に接続され、それによってハウジングの内部をエンジン入口およびハウジングの外側パネルに接続するダクトの周りに背面入口が形成される。したがって、流体の流れは、背面および前面入口を通ってハウジングの内部に入ることができ、ハウジングの中心へと半径方向内側に、そしてそこからエンジン入口に偏向される。熱交換器アセンブリがハウジングの内側に設けられ、熱交換器アセンブリは、外側に正方形のフィンを有する管を備え、それにより管の周りの流れと管との間の熱交換を改善する。
【発明の概要】
【0007】
本開示の目的は、ガスタービンエンジンからの排気熱の回収を可能にする手段を提供することである。本開示の主題のより具体的な目的は、最初に述べたタイプのガスタービンエンジン用の排気ダクトを提供することである。一態様では、ガスタービンエンジン用の排気ダクトが提供されるものとされ、これは、圧力損失をもたらす排気ダクトの内側に追加の設備を追加することなく、排気ガスからの廃熱の回収を可能にする。別の態様では、熱交換装置は、排気ダクト内の既存の設備に組み込まれるものとする。さらに別の態様では、熱交換装置は、追加の設備投資が少なくなるように提供されるものとする。
【0008】
これは、請求項1に記載の主題によって達成される。
【0009】
開示される主題のさらなる効果および利点は、明示的に言及されているか否かにかかわらず、以下に提供される開示を考慮すると明らかになるであろう。
【0010】
したがって、ガスタービンエンジン用の排気ダクトが開示され、排気ダクトは、入口および出口と、入口から出口への流れ方向とを有するサイレンサセクションを備える。流れ方向は、幾何学的形状、空気力学的設計などによって決定することができる。入口は、サイレンサセクションの出口よりもガスタービンエンジンの排気出口の近くに配置されるように構成されることが理解される。少なくとも2つの板状サイレンサバッフルが、サイレンサセクションの内側に設けられ、互いに平行に配置される。各サイレンサバッフルは、上流縁から下流縁までサイレンサセクションの流れ方向に沿って延びる。少なくとも2つの板状サイレンサバッフルの各々は、上流縁から下流縁までサイレンサセクションの流れ方向に沿って延びる側面を有する。上流縁は、特に丸みを帯びており、空気力学的な理由からバッフルのいわゆる「ブルノーズ」を形成することができる。サイレンサバッフルの側面は、サイレンサセクションの流れ断面を横切ってさらに延びる。2つの隣接する板状サイレンサバッフルの2つの側面は、互いに対向して配置され、それらの間に排気流路を形成する。板状サイレンサバッフルの少なくとも1つは、熱交換流体を受け入れるのに適した少なくとも1つの内部キャビティを備えるという点で、熱交換装置として構成される。当業者は、熱交換流体を受け入れるのに適した内部キャビティが排気ダクトの内部に対して漏れ防止であることを理解するであろう。少なくとも1つの内部キャビティは、入口ポートおよび出口ポートで排気ダクトの外側に流体的に接続される。特に、入口および出口ポートは、排気ダクトの1つまたは複数の側壁を通って延びる。
【0011】
熱交換装置として構成されたバッフルは、以下では熱交換バッフルまたは熱交換サイレンサバッフルとも呼ばれ得る。
【0012】
本開示の枠組みの中で、不定冠詞「a」または「an」の使用は決して単数を規定しておらず、多数の指定された部材または特徴の存在を排除しないことに留意されたい。したがって、それは「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」という意味で読むべきである。
【0013】
実施形態では、少なくとも1つの内部キャビティは、排気ダクトの外側に、すなわち、排気ダクトの壁を通して流体的に接続された少なくとも1つの内部ダクトとして設けられてもよい。例示的な実施形態では、少なくとも1つの内部ダクトは、少なくとも1つの板状サイレンサバッフルの前縁に隣接して前縁に沿って延び、入口ポートから出口ポートまで延びてもよい。同様に、少なくとも1つの内部ダクトは、少なくとも1つのサイレンサバッフルの内側で蛇行形状に延び、入口ポートから出口ポートまで延びることができるようにすることができる。
【0014】
本明細書にさらに開示される例示的な実施形態では、少なくとも1つのサイレンサバッフルの側面は、側壁に設けられ、各側壁は、2つのシートを有してシート間に空間が残された中空体として設けられ、前記シートの各々は、多数の開口部によって穿孔され、側壁のシート上の開口部は、空間を橋渡しする管によって接続され、それにより管を通して側壁の2つの対向する側を流体的に接続する。管は、必ずしも円形断面を有する必要はない。シートへの管の接続は、それぞれのシートと気密にシールする。したがって、熱交換流体を受け入れるのに適したキャビティは、シート間の空間内の側壁の内側および管の外側に形成される。
【0015】
本明細書にさらに開示される例示的な実施形態では、熱交換流体を受け入れるのに適した内部キャビティを有する、すなわち、熱交換装置として構成されたすべてのサイレンサバッフルの、熱交換流体を受け入れるのに適したすべての内部キャビティは、2つの共通のヘッダに接続され、熱交換流体用の各内部キャビティは、2つの共通のヘッダを流体的に接続する。内部キャビティが熱交換流体の貫流を意図していることを考慮すると、ヘッダは、入口ヘッダおよび出口ヘッダと呼ぶことができる。
【0016】
ガスタービンエンジンがさらに開示され、膨張タービンの排気側は、上述のタイプの排気ダクトに接続される。開示された少なくとも1つのガスタービンエンジンを備える発電所、すなわち、膨張タービンが上述のタイプの排気ダクトに接続される発電所がさらに開示される。
【0017】
発電所は、ガスタービンエンジンの他に、圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)システムを備えることができ、熱交換装置として構成されたサイレンサバッフルの入口ポートは、CAES貯蔵タンクに流体的に接続され、熱交換装置として構成されたサイレンサバッフルの出口ポートは、CAES膨張タービンに流体的に接続される。
【0018】
さらなる実施形態では、発電所は、本質的に、米国特許出願公開第2019/0195131号明細書に開示されているタイプの発電所であってもよい。発電所は、ガスタービンエンジンの他に、ターボ過給機を備え、ターボ過給機は、少なくとも1つの低圧圧縮機と、少なくとも1つの高圧圧縮機と、前記圧縮機を駆動するための少なくとも1つのタービンとを備える。各圧縮機は、個々のタービンと共に共通のシャフトに配置され、個々のタービンによって駆動され得る。次いで、ターボ過給機は、少なくとも1つの低圧ターボチャージャと、1つまたは複数の高圧ターボチャージャとを備えることができ、低圧ターボチャージャの圧縮機は、流体を高圧圧縮機に送達する。例えば、高圧圧縮機および低圧圧縮機の異なる体積流量を考慮しながら同一のターボチャージャを使用するために、複数の低圧ターボチャージャが互いに平行に、かつ単一の高圧ターボチャージャと直列に配置される場合がある。他の実施形態では、1つまたは複数の高圧圧縮機および1つまたは複数の低圧圧縮機は、低圧ターボチャージャの圧縮機が流体を高圧圧縮機に送達するように流体的に配置され、一方で、圧縮機を駆動するための、特に単一のタービンを有する共通のシャフトに設けられるようにすることができる。少なくとも1つの低圧圧縮機の圧縮機出口は、熱交換装置として構成されたサイレンサバッフルの入口ポート、および少なくとも1つの高圧圧縮機の圧縮機入口に流体的に接続される。インタークーラが、少なくとも1つの低圧圧縮機の圧縮機出口と少なくとも1つの高圧圧縮機の圧縮機入口との間に流体的に介在されてもよい。熱交換装置として構成されたサイレンサバッフルの出口ポートは、ターボ過給機の少なくとも1つのタービンのタービン入口に流体的に接続される。ターボ過給機の少なくとも1つのタービンのタービン出口は、背圧制御装置に流体的に接続され、少なくとも1つの高圧圧縮機の圧縮機出口は、ガスタービンエンジンの圧縮機の下流かつガスタービンエンジンの燃焼器の上流でガスタービンエンジンの作動流体流路に接続され、すなわち、ガスタービンエンジンの燃焼器に流体的に接続される。したがって、熱交換バッフル内で回収された廃熱を使用して、追加の空気をガスタービンエンジンの燃焼器に供給するための外部圧縮機を駆動することができ、したがってガスタービンエンジンのタービン出力を向上させ、かつ/またはガスタービンエンジンの圧縮機を通る流れを減少させ、したがってガスタービンエンジンの圧縮機の電力消費を低減することができる。背圧弁は、ターボ過給装置の高圧圧縮機の排出圧力を制御するために利用される。
【0019】
本明細書に開示される発電所のさらに別の実施形態では、熱交換装置として構成されたサイレンサバッフルは、それらの入口および出口ポートを通して、ガスタービンエンジンの圧縮機と燃焼器との間に流体的に介在され、それによって熱交換装置として構成されたサイレンサバッフルは、圧縮機から燃焼器への流体流の少なくとも一部を受け入れるように構成される。より具体的な実施形態では、圧縮機は、ガスタービンエンジンの圧縮機とは異なる補助圧縮機であり、圧縮機は、特にモータ駆動される。部分負荷運転中、圧縮機はバッテリーを充電することができ、バッテリーは、高電力需要の期間中、補助圧縮機を駆動するためのモータに供給し、ガスタービンエンジンの出力を増強するために使用される。
【0020】
本明細書に開示される発電所の実施形態では、ガスタービンエンジンは、ガスタービンエンジンの圧縮機の上流に設けられた吸気予熱熱交換器を備える吸気予熱回路を備えている。吸気予熱熱交換器を備えたガスタービンエンジンの1つの例示的な特定の非限定的な実施形態は、米国特許出願公開第2018/0135467号明細書に開示されている。熱交換装置として構成されたサイレンサバッフルは、それらの入口および出口ポートを通して、吸気予熱回路に組み込まれ、それにより吸気予熱回路に含まれる流体を、熱交換サイレンサバッフルの内側に設けられた熱交換流体用の内部キャビティを通して流す。前記用途は、ガスタービンエンジンの部分負荷効率を向上させるのに有用であることが見出されるか、さもなければ、ガスタービンエンジンがISO定格出力の低いパーセンテージにおいて通常運転モードで運転することを可能にし得る。
【0021】
本明細書に開示される発電所のさらに他の実施形態では、ガスタービンエンジンは、燃料予熱回路を備え、燃料予熱回路は、燃料流路内のガスタービンエンジンの燃焼器の上流に設けられた燃料予熱熱交換器を備える。熱交換装置として構成されたサイレンサバッフルは、それらの入口および出口ポートを通して、燃料予熱回路に組み込まれ、それにより燃料予熱回路に含まれる流体を、熱交換サイレンサバッフルの内側に設けられた熱交換流体用の内部キャビティを通して流す。
【0022】
本明細書に開示される発電所のさらに他の実施形態では、ガスタービンエンジンの圧縮機は、圧縮機入口の下流かつ圧縮機出口の上流に抽気ポートを備える。第1のラインが、抽気ポートから外部圧縮機の低圧入口ポートに延び、それによって前記第1のラインは、抽気ポートを外部圧縮機の低圧入口ポートに流体的に接続する。第2のラインが、外部圧縮機の高圧出口ポートに接続され、外部圧縮機の高圧出口ポートと熱交換装置として構成されたサイレンサバッフルの入口ポートを流体的に接続する。第3のラインが、ガスタービンエンジンの圧縮機の高圧出口およびガスタービンエンジンの燃焼器の少なくとも1つに接続され、熱交換装置として構成されたサイレンサバッフルの出口ポートとガスタービンエンジンの圧縮機の高圧出口および/またはガスタービンエンジンの燃焼器を流体的に接続する。
【0023】
上述の特徴および実施形態は、互いに組み合わせることができることが理解される。さらに、当業者には明白かつ明らかであるが、本開示の範囲および特許請求されている主題の範囲内でさらなる実施形態が考えられることが理解されるであろう。
【0024】
本開示の主題は、ここで、添付の図面に示す選択された例示的な実施形態によって、より詳細に説明される。図は、以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ガスタービンエンジンの排気ダクトの例示的な実施形態の斜視図である。
図2】矩形断面を有するガスタービンエンジンの排気ダクトのサイレンサセクションの断面図である。
図3】熱交換サイレンサバッフルの第1の例示的な実施形態の断面図である。
図4】熱交換サイレンサバッフルの第2の例示的な実施形態の断面図である。
図5】熱交換サイレンサバッフルの第3の例示的な実施形態の斜視図である。
図6図5に図示するバッフルの別の断面図である。
図7】等角図における排気ダクトの熱交換サイレンサセクションの部分であり、入口および出口ヘッダへの熱交換バッフルの接続を概説している。
図8】ガスタービンエンジンと圧縮空気エネルギー貯蔵プラントとを備え、ガスタービンエンジンの排気ダクトの熱交換サイレンサセクションを用いて圧縮空気エネルギー貯蔵プラントの作動流体を予熱する、発電所の一実施形態の概略図である。
図9】ガスタービンエンジンの排気ダクトの熱交換サイレンサセクションを用いてターボチャージャを駆動するためのエネルギーを供給する、ターボチャージャ駆動空気噴射を伴う発電所の一実施形態の概略図である。
図10】ガスタービンエンジンの排気ダクトの熱交換サイレンサセクションを用いて外部圧縮機からの空気を予熱する、外部モータ駆動ブースタ圧縮機を伴う発電所の一実施形態の概略図である。
図11】ガスタービンエンジンの排気ダクトの熱交換サイレンサセクションを用いて熱を吸気予熱器に提供する、ガスタービン吸気予熱を伴う発電所の一実施形態の概略図である。
図12】ガスタービンエンジンの排気ダクトの熱交換サイレンサセクションを用いてガスタービンエンジンの圧縮機から抽気された空気を予熱する、ガスタービン発電所のさらなる実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面は非常に概略的であり、説明のために必要とされない詳細は、理解および描写を容易にするため省略されていることが理解される。図面は、選択された例示的な実施形態のみを示しており、図示されていない実施形態は、本明細書に開示した範囲および/または特許請求されている主題の範囲内にあることがさらに理解される。
【0027】
本明細書に記載の主題は、添付の図面に示され、以下に概説される例示的な実施形態によって、当業者によってより理解されるであろう。これらの例示的な実施形態は、本明細書に記載の主題のより良い理解を可能にするために単に例示目的で示されており、特許請求の範囲に概説される主題を限定しないと理解されるべきであることを理解されたい。
【0028】
図1は、ガスタービンエンジンの排気ダクト1の一例を示す。排気ダクト1は、スタック10を備える。排気ダクト移行セクション11が、ガスタービンエンジン50(図8図12に概略的に示す)の下流端と接続するように構成される。排気ダクトのサイレンサセクション12は、サイレンサバッフル20を備え、これは本部分断面図で見ることができる。図示の例では、スタック10およびサイレンサセクション12は、丸みを帯びた断面を有し、排気ダクト移行セクション11は、矩形断面で示されている。しかしながら、スタック10およびサイレンサセクション12のいずれかが矩形断面を呈することが十分に可能であり、排気ダクト移行セクション11が丸みを帯びた断面または円形断面を呈するようにしてもよい。同様に、サイレンサセクション12は排気ダクト1の垂直セクションに配置されるように例示されているが、サイレンサセクション12はまた、排気ダクト1の水平セクションに配置されてもよい。これらの事実は、当業者には容易に知られている。
【0029】
図2は、例として、矩形断面を有するサイレンサセクション12の断面図を図示している。排気ダクト1は、ダクト壁13によって画定される。理解されるように、サイレンサセクション12内の排気ガスの流れは、図面の平面に対して直角である。多数のサイレンサバッフル20が排気ダクト1の断面にわたって配置され、本質的に互いに平行であり、それによって2つの隣り合うサイレンサバッフル20がそれらの間に流路を形成する。本明細書に開示される主題によれば、サイレンサバッフル20の少なくとも1つ、およびいくつかの実施形態ではサイレンサバッフル20の各々は、以下でより詳細に概説するように、熱交換装置、または熱交換サイレンサバッフルとして構成される。
【0030】
一般的に言えば、サイレンサバッフル20は、熱交換流体を受け入れるのに適した少なくとも1つの内部キャビティを備えるという点で、熱交換装置として構成される。当業者であれば、熱交換流体を受け入れるための内部キャビティが排気ダクト1の内部に対して漏れ防止であり、それにより熱交換流体がサイレンサバッフル20の内部キャビティから排気ダクト1内に漏れることがないことを理解するであろう。少なくとも1つの内部キャビティは、排気ダクト1の外側に流体的に接続される。図3は、熱交換装置として構成されたサイレンサバッフル20の第1の例示的な実施形態の断面図を示し、断面は、バッフルの側面25および26に対して直角である。側面は、サイレンサセクション12における排気ダクト1を横切り、上流縁21から下流縁までサイレンサセクション12の流れ方向に沿って延びる。排気ガスの流れは、図面の左から右になる。特定の実施形態では、サイレンサバッフル20の上流縁21は、空気力学的抗力を低減し、したがってサイレンサバッフル20の圧力損失を低減するように、サイレンサセクション12のいわゆるブルノーズセクションを形成するように丸みを帯びている。図示の実施形態では、熱交換流体を受け入れるのに適した内部キャビティ22が、サイレンサバッフル20のブルノーズセクションにおいて、サイレンサバッフル20の前(または上流)縁21に沿って延びるダクトとして設けられている。ダクト22は、サイレンサバッフル20の「スパン幅」全体に沿って延び、ポートが設けられた開口端を有し、ポートは、バッフル20がサイレンサセクション12に設置されたとき、ダクト22を排気ダクト1の外側と流体連通させるように排気ダクト1の壁を通って延びる。前記ポートは、本描写には示されていないが、当業者には容易に明らかである。ブルノーズセクションの下流では、バッフル20は、側壁250と260との間で中空である。側面25、26は、側壁250、260の外側にそれぞれ位置する。
【0031】
図4は、バッフル20の主面に平行な断面で、熱交換装置として構成されたサイレンサバッフル20の第2の実施形態を示す。内部キャビティ22は、この例示的な実施形態では、側面25、26間でバッフルの内側で曲がりくねるダクトとして設けられる。ダクト22は、それぞれ入口ポートおよび出口ポートと呼ぶことができるポート23および24に流体的に接続される。図4に例示される種類の熱交換ダクトはまた、排気スタック壁13の内側ライニングに設けられてもよく、その壁は、例えば上述の図2または以下に参照する図7に図示されている。排気スタック壁の内側のダクトは明示的に示されていないが、本開示により、当業者には容易に明らかである。
【0032】
図3および図4に示す両方のタイプのダクトは、単一のバッフル20に組み合わせることができることが理解されよう。
【0033】
図5および図6に示す一実施形態では、バッフル20の側壁250、260は、その側壁250がより詳細に図示されており、シート251、252間に形成されてシート間に空間が残された中空体として設けられる。中空体側壁250が1つだけ図示されているが、当業者は、側壁260が同一であってもよいことを容易に理解するであろう。側壁250は、側壁250自体が中空体を構成するように、互いに離間したシート251、252を備える。バッフル20の側面25は、シート251の外側に設けられる。
【0034】
図6は、図5の「VI-VI」によって指定される視線方向における側壁250の断面図を示す。シート251、252の各々は、多数の開口部によって穿孔され、側壁250の2つのシート251、252上の開口部は、互いに整列している。対向して配置された開口部の各対は、シート251、252間の空間を橋渡しする管27によって接続される。したがって、管27は、管27を通して側壁250の2つの対向する側を流体的に接続する。さらに、管27は、それぞれのシート251、252と気密にシールし、それにより2つのシート251、252間の空間および管27の外側に熱交換流体を受け入れるのに適したキャビティ22を形成する。
【0035】
図7は、等角図における排気ダクト1の熱交換サイレンサセクション12の部分を示し、熱交換バッフル20の流体接続をさらに示している。上記で概説したように、バッフル20がダクト壁13によって形成された排気ダクト1の一部に配置される。排気ダクトの外側では、ヘッダ28および29が供給ラインおよび戻りラインに接続される。ポート23および24は、ダクト壁13を通って延び、バッフル20の内側の熱交換流体を受け入れるための内部キャビティ22をヘッダ28および29に接続する。容易に理解されるように、特に、各熱交換バッフル20に関連付けられた1つのポート23および1つのポート24があってもよい。熱交換バッフル20の数ならびにポート23および24の数は、それぞれ、例示的な実施形態に示されているものとは異なっていてもよいことは言うまでもない。したがって、熱交換バッフル20は、供給ヘッダおよび戻りヘッダ28、29に接続される。
【0036】
膨張タービン53の排気側が、上記で概説した任意のタイプの1つまたは複数の熱交換サイレンサバッフル20を備える熱交換サイレンサセクション12に流体的に接続されるガスタービンエンジン50は、多くの用途に有用に適用することができ、そのいくつかは、以下でより詳細に概説される。以下で言及される例示的な用途は包括的ではなく、単なる例として示されていることが理解される。
【0037】
図8は、発電所における上述の主題の使用の第1の例示的な実施形態を図示している。発電所は、ガスタービンエンジン50と、圧縮空気エネルギー貯蔵(CAESとしても知られる)プラント100とを備える。ガスタービンエンジン50は、圧縮機51と、燃焼器52と、膨張タービン53とを備え、発電機54を駆動するように配置される。膨張タービン53からの排気ガス61は、スタック10を通して排出される。排気ガス61の流路において、排気ダクトのサイレンサセクション12は、スタック10の上流に配置される。サイレンサセクション12の内側のサイレンサバッフル20は、上述したように、熱交換装置として構成される。
【0038】
CAESプラント100は、圧縮空気貯蔵タンク101と、主空気加熱器102と、膨張タービン103と、膨張タービン103によって駆動される発電機104とを備える。サイレンサセクション12の熱交換バッフル20は、圧縮空気貯蔵タンク101と主空気加熱器102との間に流体的に介在される。これは、サイレンサセクション12の内側の熱交換サイレンサバッフル20の入口ポートが圧縮空気貯蔵タンク101に流体的に接続され、熱交換サイレンサバッフル20の出口ポートが主空気加熱器102を介して膨張タービン103に流体的に接続されることで達成される。したがって、圧縮空気貯蔵タンク101から排出された空気は、主空気加熱器102に供給される前に、サイレンサセクション12のバッフル20の内側の熱交換流体を受け入れるための内部キャビティ22を通って流れる。
【0039】
したがって、ガスタービンエンジン50およびCAESプラント100が同時に運転されると、圧縮空気貯蔵タンク101から排出された空気は、サイレンサセクション12の内側の熱交換バッフル20を通過し、主空気加熱器102に入る前にガスタービンエンジン排気ガス61と熱交換して加熱され、それによってガスタービンエンジン排気ガス61を冷却する。これにより、主空気加熱器102内で空気を特定の温度に加熱するために必要なエネルギーが少なくなり、スタック10を通る排気ガス流61に関連付けられた熱エネルギー損失が低減され、それによって全体的な発電所効率が向上する。CAESプラント100の熱電力要件、熱交換サイレンサセクション12の熱交換能力、およびCAES膨張タービン103に望まれる入口温度と熱交換サイレンサセクション12が圧縮空気貯蔵タンク101から排出された空気を加熱することができる温度の一致に応じて、熱交換サイレンサセクション12はCAESプラント用の主空気加熱器として機能することができ、したがって加熱器102は省略することができる。しかしながら、CAES加熱器102がない配置では、CAESプラント100の運転はガスタービンエンジン50の運転に完全に依存するが、CAES加熱器102が存在する場合、CAESプラント100は、ガスタービンエンジン50から独立して運転することができることに留意されたい。
【0040】
本明細書に開示される熱交換サイレンサ配置を利用する発電所の第2の例示的な例は、本質的に米国特許出願公開第2019/0195131号明細書に記載されているように、ターボチャージャ駆動空気噴射を伴うガスタービン発電所であり、図9に示される。発電所は、ガスタービンエンジン50の他に、図示の例示的な実施形態では、低圧ターボチャージャ70および高圧ターボチャージャ75を備えるターボ過給機を備える。例示的な実施形態は、3つの低圧ターボチャージャおよび1つの高圧ターボチャージャを示す。以下で明らかになるように、一方では、低圧ターボチャージャ70の圧縮機を通る質量流量は、高圧ターボチャージャ75を通る質量流量よりも大きい。さらに、低圧ターボチャージャ70の圧縮機71における空気の圧縮により、高圧ターボチャージャ75の圧縮機76の入口流は、等しい質量流量であっても、低圧ターボチャージャ70の圧縮機71の入口質量流量よりも小さい。低圧ターボチャージャの数を適合させる際のこれらの効果を考慮すると、原則として、高圧ターボチャージャ75および低圧ターボチャージャ70に同じタイプのターボチャージャを使用することが可能になる。
【0041】
ガスタービンエンジン50は、排気ガスを膨張タービン53から移行セクション11を通して排気ダクト1に排出する。それによって、排気ガスは、熱交換サイレンサセクション12を通過してスタック10に入る。運転中、吸気65は、低圧圧縮機71によって圧縮され、低圧圧縮空気66として低圧圧縮機から排出される。低圧圧縮機71の圧縮機出口は、熱交換サイレンサセクション12の内側に配置された熱交換サイレンサバッフル20の入口ポート、および高圧圧縮機76の圧縮機入口に流体的に接続される。したがって、低圧圧縮空気66は、熱交換サイレンサセクション12の熱交換サイレンサバッフル20に流入する第1の部分流に分割され、第2の部分流は、インタークーラ73を介して、高圧圧縮機76の入口に供給される。熱交換サイレンサセクション12の内側に配置された熱交換サイレンサバッフル20の出口ポートは、低圧ターボチャージャ70の膨張タービン72のタービン入口、および高圧ターボチャージャ75の膨張タービン77のタービン入口に流体的に接続される。したがって、熱交換サイレンサセクション12からの加熱された低圧圧縮空気67は、膨張タービン72および77に送達されてタービン内で膨張し、排出空気69として排出される。加熱された低圧圧縮空気を膨張させる際に、膨張タービン72および77は、圧縮機71および76を駆動する電力を生成する。
【0042】
高圧圧縮機76の圧縮機出口は、ガスタービンエンジン50の燃焼器52に流体的に接続される。よって、高圧圧縮機76からの高圧圧縮空気68は、燃焼器52に送達され、ガスタービンエンジンの圧縮機51によって燃焼器52に送達される質量流量に加わる。したがって、ガスタービンエンジンの膨張タービン53は、圧縮機51によって送達されるよりも大きい質量流量を膨張させることができる。この構成は、膨張タービン53から出力される機械的電力を向上させ、かつ/または圧縮機51の電力消費を低減し、その結果、電気エネルギーを生成するために発電機54を駆動するのにより多くの電力が利用可能になる。高圧膨張タービン77のタービン出口は、背圧制御装置78に流体的に接続され、したがって高圧圧縮空気68の圧力の制御を可能にする。
【0043】
本明細書に記載の主題を組み込んだ発電所のさらなる例示的な例が図10に示されており、外部のモータ駆動圧縮機111がガスタービンエンジン50の出力を高めるために使用される。そのような用途は、低グリッド電力需要とピークグリッド電力需要の両方の期間に有用であることが分かる。例えば、低グリッド電力需要の場合、バッテリーは、ガスタービンエンジン50によって駆動される発電機によって生成された電気によって充電される。ピークグリッド電力需要の場合、前記蓄積された電気エネルギーを使用してモータを駆動することができ、モータは次に圧縮機111を駆動する。一般に、圧縮機111は、吸気65を圧縮し、得られた追加の圧縮空気を本質的に圧縮機51の下流もしくは出口でガスタービンエンジンに、または燃焼器52に供給する。いずれの場合でも、圧縮機111の出口は、燃焼器52と流体連通している。
【0044】
本明細書に示す実施形態では、ガスタービンエンジン50の膨張タービン53は、熱交換サイレンサバッフル20を備える熱交換サイレンサセクション12を有する排気ダクトに排気ガスを排出する。熱交換サイレンサバッフル20は、それらの入口および出口ポートを通して、圧縮機111と燃焼器52との間に流体的に介在され、圧縮機111から燃焼器52に搬送される流体流の少なくとも一部を受け入れるように構成される。したがって、圧縮機111からの圧縮空気81は、熱交換サイレンサバッフル20を通って流れ、加熱された圧縮空気82として圧縮機51の下流のガスタービンエンジン50に供給される。
【0045】
温度センサ115は、加熱された圧縮空気82の温度を検知し、加熱された圧縮空気82の温度をコントローラ116に転送する。制御弁113を通して、コントローラ116は、熱交換サイレンサバッフル20を通る圧縮空気81の質量流量を制御し、加熱された圧縮空気の所望の目標温度を達成するように利用可能な熱に圧縮空気81の質量流量を適合させる。停止弁112が、圧縮機111が運転していない場合に圧縮空気81のためのラインを閉じることを可能にする。ガスタービンエンジン50の排気ガスとの熱交換により、圧縮空気82は、高温でガスタービンエンジン50に導入され、したがって、燃焼器52を通るガスタービンエンジン作動流体流の前記画分の温度上昇が低減される。したがって、圧縮機111によってガスタービンエンジン50に供給される補助空気82を加熱することにより、ガスタービンエンジン50の燃料消費を低減する。
【0046】
本明細書に記載のタイプの熱交換サイレンサセクションを有するガスタービンエンジンが効率を改善するために適用される発電所の別の例示的な例が、図11に示される。上述したように、吸気予熱熱交換器を備えたガスタービンエンジンの1つの例示的な特定の非限定的な実施形態は、米国特許出願公開第2018/0135467号明細書に開示されている。ガスタービンエンジン50は、吸気予熱回路を備え、吸気予熱回路は、入口ハウジング55内に設けられた、ガスタービンエンジン50の作動流体流においてガスタービンエンジン50の圧縮機51の上流にある吸気予熱熱交換器56を備える。吸気予熱は、ガスタービンエンジン50の圧縮機51の電力消費を増加させるが、非常に低い負荷でガスタービンエンジン50を運転させるときに効率的な手段であることが知られている。当業者に周知のように、吸気60の温度を変化させる際に、ガスタービンエンジン50の相対出力を一定のメガワット出力で変化させることができる。したがって、全体的に良好な効率および改善された排出値を達成するように、運転点をシフトすることができる。
【0047】
熱交換サイレンサバッフル20は、それらの入口および出口ポートを通して、吸気予熱回路に組み込まれ、それにより吸気予熱回路に含まれる流体を、熱交換サイレンサバッフル20の内側に設けられた熱交換流体用の内部キャビティを通して流す。当業者に一般的に知られている方法で、吸気予熱回路は、タンク118から流体を搬送するポンプ117を備える。流体は、一般に、排気ダクトの熱交換サイレンサセクション12の内側に設けられた熱交換サイレンサバッフル20を通してポンプから供給される。
【0048】
ガスタービンエンジンの運転中、膨張タービン53からの排気ガスは、熱交換サイレンサセクション12を通って流れる。したがって、ポンプ117によって搬送され、熱交換バッフル20を通って流れる流体は、ガスタービンエンジン50からの排気ガスと熱交換して加熱され、吸気予熱熱交換器56を通って流れ、水と熱交換して圧縮機51を通って流れる吸気60を加熱し、タンク118に戻される。吸気予熱回路において、熱交換サイレンサバッフル20の下流には、温度センサ115が配置され、コントローラ116に接続される。コントローラ116は、三方制御弁114に作用し、三方制御弁は、熱交換バッフル20をバイパスするバイパスラインを通る水の流れを制御し、それにより吸気熱交換器56に入る流体の温度を制御する。温度センサ115はまた、吸気熱交換器56からガスタービンエンジン50の圧縮機51に流れる加熱された吸気60の流れに配置されてもよいことに留意されたい。このようにして、吸気の温度は、直接制御することができる。さらに、本明細書に示す例示的な実施形態では、吸気予熱回路は、ポンプ117が遮断された場合でも発生する可能性がある最終的な熱駆動対流を回避するために、吸気予熱回路内の流体流を完全に遮断するための停止弁112を備える。
【0049】
燃料予熱のために熱交換サイレンサバッフル20における排気熱回収を適用するために、非常に類似した配置を使用することができる。この場合、吸気予熱熱交換器56は、吸気の代わりに燃料が供給される燃料予熱熱交換器に置き換えられるだけである。
【0050】
熱交換サイレンサセクションを有する本明細書に記載の排気ダクトを利用するガスタービン発電所のさらなる例示的な実施形態が、図12に示されている。部分的に圧縮された空気は、圧縮機入口の下流かつ圧縮機出口の上流の抽気ポートにおいてガスタービンエンジン50の圧縮機51から抽気され、外部圧縮機111によってさらに圧縮される。圧縮機111の高圧出口ポートは、熱交換サイレンサバッフル20の入口ポートに流体的に接続される。したがって、外部圧縮機111からの圧縮空気は、熱交換バッフル20を通って流れる。
【0051】
さらなるラインが、圧縮機51の高圧出口およびガスタービンエンジン50の燃焼器52の少なくとも1つに接続され、したがって熱交換サイレンサバッフルの出口ポートとガスタービンエンジンの燃焼器を流体的に接続する。したがって、ガスタービンエンジン50からの排気熱は回収され、ガスタービンエンジンプロセスに再導入される。温度センサ115が、熱交換サイレンサバッフル20の下流の圧縮空気の温度を検知する。検知された温度はコントローラ116に転送され、コントローラは次に三方制御弁114を制御する。三方制御弁114によって、圧縮機111からの圧縮空気の画分を熱交換バッフル20の周りにバイパスすることができ、したがって熱交換サイレンサバッフル20の下流の圧縮空気の温度の制御が可能になる。抽気の流路に配置された停止弁112は、抽気ポートから熱交換サイレンサバッフル20を通ってガスタービンエンジン50の燃焼器52までの外部流路を閉じることを可能にする。
【0052】
本開示の主題は、例示的な実施形態によって説明されているが、これらは、特許請求された発明の範囲を限定することを決して意図するものではないことが理解される。特許請求の範囲は、本明細書に明示的に図示または開示されていない実施形態をカバーし、本開示の教示を実施する例示的な態様において開示された実施形態から逸脱する実施形態は、依然として特許請求の範囲によって包含されることが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0053】
1 排気ダクト
10 スタック
11 排気ダクト移行セクション
12 熱交換サイレンサセクション
13 ダクト壁、排気スタック壁
20 熱交換サイレンサバッフル
21 上流縁
22 内部キャビティ、ダクト
23 入口ポート
24 出口ポート
25 側面
26 側面
27 管
28 供給ヘッダ
29 戻りヘッダ
50 ガスタービンエンジン
51 圧縮機
52 燃焼器
53 膨張タービン
54 発電機
55 入口ハウジング
56 吸気予熱熱交換器
60 吸気
61 排気ガス流、ガスタービンエンジン排気ガス
65 吸気
66 低圧圧縮空気
67 低圧圧縮空気
68 高圧圧縮空気
69 排出空気
70 低圧ターボチャージャ
71 低圧圧縮機
72 膨張タービン
73 インタークーラ
75 高圧ターボチャージャ
76 高圧圧縮機
77 高圧膨張タービン
78 背圧制御装置
81 圧縮空気
82 加熱された圧縮空気、補助空気
100 圧縮空気エネルギー貯蔵(CAES)プラント
101 圧縮空気貯蔵タンク
102 主空気加熱器、CAES加熱器
103 CAES膨張タービン
104 発電機
111 外部のモータ駆動圧縮機
112 停止弁
113 制御弁
114 三方制御弁
115 温度センサ
116 コントローラ
117 ポンプ
118 タンク
250 側壁
251 シート
252 シート
260 側壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【外国語明細書】