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2022-44577CPMによって変調されたシンボルのシーケンスを担持するRF信号を復号するための方法および関連するデコーダ
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  • -CPMによって変調されたシンボルのシーケンスを担持するRF信号を復号するための方法および関連するデコーダ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044577
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】CPMによって変調されたシンボルのシーケンスを担持するRF信号を復号するための方法および関連するデコーダ
(51)【国際特許分類】
   H04L 27/22 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
H04L27/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021144648
(22)【出願日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】20315405.9
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514288772
【氏名又は名称】リヴィエラウェーブズ・(エール・ドゥブルヴェ)
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アーマッド・バッジ
(72)【発明者】
【氏名】リサ・メイヤック
(57)【要約】      (修正有)
【課題】CPMによって変調された送信シンボルのシーケンスを担持するRF信号を復号するための方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】受信機1において、モデルパラメータ{h,ω,Φ0}を推定するステップと、送信シンボルに対応する受信シンボルを検出するステップとを含み、パラメータ{h,ω,Φ0}が、その3つの未知数が、それぞれ、モデルパラメータ{h,ω,Φ0}の関数であり、係数{B(n)、C(n)、D(n)、F(n)、G(n)、H(n)、v1 (n)、v2 (n)、v3 (n)}が、時間nTまでの送信シンボルのシーケンスに対応するシンボルのシーケンス

及び時間(n-1)Tから時間nTまでに受信されたRF信号のサンプル{yk}の測定位相{Ψk}に応じて、再帰的な方法で計算される3次連立一次方程式を解くことによって推定される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続位相変調を使用することによって変調された送信シンボルのシーケンスを担持するRF信号を復号するための方法であって、前記RF信号の受信機(1)レベルにおいて、
- モデルパラメータ{h,ω,Φ0}を推定するステップであって、第1のパラメータhが変調インデックスを特徴付け、第2のパラメータωがキャリア周波数オフセットを特徴付け、第3のパラメータΦ0が初期位相オフセットを特徴付ける、ステップと、
- 受信RF信号内で、前記シーケンスの前記送信シンボルに対応する受信シンボルを検出するステップと
を含み、
Tが、シンボル持続時間であり、
【数1】
である、時間nTにおいて、前記モデルパラメータ{h,ω,Φ0}が、
a. 3つの未知数
【数2】
が、それぞれ、前記モデルパラメータ{h,ω,Φ0}の関数であり、
b. 係数{B(n)、C(n)、D(n)、F(n)、G(n)、H(n)、v1 (n)、v2 (n)、v3 (n)}が、
i. 時間nTまでの送信シンボルの前記シーケンスに対応するシンボルのシーケンス
【数3】
および
ii. 時間(n-1)Tから時間nTまでに受信された前記RF信号のサンプル{yk}の測定位相{Ψk}
に応じて、再帰的な方法で計算される
3次連立一次方程式を解くことによって推定される
方法。
【請求項2】
前記3次連立一次方程式が、以下の行列の形式、
【数4】
であり、
この場合、前記行列の係数が、
【数5】
の形であり、
式中、I(n)が、0からnMの間のインデックスのサブセットであり、rkが、|yk|の中から選定された1つに等しく、かつユーザ定義定数であり、αkが、
nM≦k≦(n+1)Mの場合、
【数6】
の形である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第(m+1)の受信シンボルが、
- 時間mTまでの送信シンボルの前記シーケンスに対応するシンボルのシーケンス
【数7】
に応じて、かつ時間mTにおいて推定される前記未知数
【数8】
に応じて、時間mTから時間(m+1)Tまでに受信された前記RF信号の予測位相Γmを計算し、
- 時間mTから時間(m+1)Tまでに受信された前記RF信号のサンプル{yk}の位相{Ψk}を測定し、次いで、
- 両方の位相を整合させるために、前記測定位相{Ψk}のベクトルΨmと前記予測位相Γmとの間の誤差を計算する
ことによって検出される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
a. 予測位相Γnが、
【数9】
の場合、
【数10】
の形であり、
b. 検出される第nの受信シンボルが、
【数11】
によって与えられ、
式中、
- Ψn=angle([ynM ynM+1…y nM+(M-1]T)=[ΨnM ΨnM+1…ΨnM+(M-1)]T
- Ωn=[(ΦnMnM-1),(ΦnM+1nM)…(ΦnM+(M-1)nM+(M-2)]T
- ρnが、ユーザ定義パラメータであり、
- pnが、以下の値、
【数12】
から選定され、
rnが、|yn|の中から選定された1つに等しく、かつユーザ定義定数である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記未知数
【数13】
が、前記3次連立一次方程式を解くことによって推定され、かつ/または前記モデルパラメータ{h,ω,Φ0}の所与の値に応じて推定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
シンボルの前記シーケンス
【数14】
が、推測シンボルのシーケンスおよび前記受信RF信号のサンプル{yk}に対応するシンボルのシーケンスのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記推測シンボルが、トレーニングシンボルおよび検出された受信シンボルのシーケンスの中から選定される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記連続位相変調が、ガウス周波数シフトキーイング(GFSK)に基づく、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
連続位相変調を使用することによって変調された送信シンボルのシーケンスを担持するRF信号を復号するためのデコーダ(1)であって、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法を実装するように設計された、位相抽出器(11)、モデルパラメータ{h,ω,Φ0}の推定器(12)、シンボル検出器(13)、およびデマルチプレクサ(14)を備える、デコーダ(1)。
【請求項10】
ソフトウェアプログラム命令を含むコンピュータプログラムであって、少なくとも1つのデータプロセッサによる前記ソフトウェアプログラム命令の実行が、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法の実行を含む動作を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、いわゆるCPM(連続位相変調)方式を使用することによってコーディングされたシンボルを復号するための方法に関する。本発明は、より詳細には、いくつかのBluetooth(登録商標)規格に対して、また好ましくは、Bluetooth BR(基本レート)およびBLE(Bluetooth低エネルギー)に対して、開発されたそのような方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CPMは、その電力およびスペクトル効率のために通信において広く使用されている。
【0003】
有利には、それらの通信は、単純な弁別受信機を使用して容易に復調され得る。通常LDIと呼ばれるこの復調器は、リミッタ-弁別積分器(Limiter-Discriminator Integrator)に基づく。この復調器は、非常に低い複雑性を示すが、最適受信機よりもかなりの損失(>6dB)があるという欠点がある。
【0004】
反対に、最適受信機は、特に、復調に加えて、周波数オフセットなど、何らかの障害/不整合が推定されなければならないとき、非常に高い複雑性を有する。
【0005】
Bluetooth BRおよびBLE変調は、1つのCPM方式タイプであるガウス周波数シフトキーイング(GFSK:Gaussian Frequency-Shift Keying)に基づく。
【0006】
したがって、受信シンボル当たりの全体的な複雑性として、たとえば、線形スケールに対する複雑性を、すなわち、0(n)フロップスに制限しながら、たとえば、LDI復調器と比較して4dBを上回る性能利得を有する、CPM、より具体的には、GFSK、を使用することによって変調されたシンボルのシーケンスを担持するRF信号の復調方法を提供することが本発明の目的である。
【0007】
より具体的には、論理的な方法では、エミッタレベルにおいて、GFSK複素ベースバンド信号は、
sBB(t)=GejΦ(t,h,a)
の形であり、
Gは、信号の振幅であり、
Φ(t,h,a)は、情報を搬送する変調位相であり、
【0008】
【数1】
【0009】
によって与えられ、
式中、Tは、シンボル持続時間であり、a={ai}は情報シーケンスであり、hは、変調インデックスと呼ばれる。
【0010】
Bluetooth BR技術の場合、変調インデックスは、0.27から0.35の間で変化し、BLE技術の場合、変調インデックスは、およそ0.5に等しいことに留意されたい。
【0011】
たとえば、位相パルスq(t)は、ガウス周波数パルスg(t)の積分として取得される:
【0012】
【数2】
【0013】
ガウス周波数パルスg(t)は間隔[0,LT]に含まれる有限持続時間を有すると仮定され得るため、t>LTである場合、位相パルスq(t)も、有限長、より具体的には、q(t)=1/2を有する。たとえば、Lは、Bluetooth BR技術の場合、3に等しい。
【0014】
位相パルスq(t)の時間制限された性質により、変調位相は、以下のように表現され得る:
nT≦t≦(n+1)Tの場合、
【0015】
【数3】
【0016】
式中、第1の項は、時間(n-L)Tまでの累積位相である。
【0017】
【数4】
【0018】
をさらに書き込むことによって、変調位相は以下のように表現され得る:
nT≦t≦(n+1)Tの場合、
【0019】
【数5】
【0020】
論理的な方法ではすでに、受信機レベルにおいて、現実の異常を考慮に入れて、連続時間受信信号は、以下の形で表現され得る:
【0021】
【数6】
【0022】
式中:
i. θ0は、初期位相オフセットであり、
ii. ωは、キャリア周波数オフセット(CFO)に対応し、
iii. w(t)は、背景雑音に対応し、比率
【0023】
【数7】
【0024】
が信号対雑音比(SNR)の可能な基準であるように、分散σ2を用いたゼロ平均ガウスプロセスに従うと仮定され得、
iv. i(t)は、干渉信号である。
【0025】
干渉物/妨害物がBT(Bluetooth技術)パケットの部分である場合、干渉信号は、たとえば、以下の形で表現され得る:i(t)=Bejε(t)、式中、ε(t)は、干渉物/妨害物を表す別のGFSK信号であり、その結果、比率
【0026】
【数8】
【0027】
は、同一チャネルチャネル対干渉比(CIR)の可能な基準である。
【0028】
Tsを、受信機によって受信された連続時間信号y(t)のサンプリング時間期間と呼ぶことにする。
【0029】
連続時間信号y(t)は、周波数fs=1/Ts=M/Tにおいてサンプリングされ、式中、Mは、オーバーサンプリング係数であり、Tは、シンボル持続時間である。その場合、第nのシンボルのシンボル持続時間T中に受信されるサンプルは、以下の形で表現され得る:
【0030】
【数9】
【0031】
nM≦k≦(n+1)Mの場合、
【0032】
【数10】
【0033】
ベクトル表記法を使用することによって、本発明者らは、
【0034】
【数11】
【0035】
を取得し、
Φn=[ΦnMΦnM+1…ΦnM+(M-1)]T、および
qi=[q(iT)q(iT+Ts)…q(iT+(M-1)Ts]T
である。
【0036】
前述の観点から、受信サンプル{y1,…,y(n+1)M}が与えられる場合、最小レイテンシ、最小平均2乗誤差(MSE)、および干渉に対する最大ロバストネスを条件として、変数およびパラメータのセット{a1,…,an,h,ω,Φ0}を推定することが本発明のさらなる目的である。
【0037】
本発明のさらなる目的、特徴、および利点は、添付の図面を参照しながら以下の説明を考察すると当業者に明らかになるであろう。いずれの追加の利点も本明細書に組み込まれることが意図される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0038】
第1の態様によれば、本発明は、連続位相変調を使用することによって変調された送信シンボルのシーケンスを担持するRF信号を復号するための方法であって、前記RF信号の受信機レベルにおいて、
- 第1のパラメータhが変調インデックスを特徴付け、第2のパラメータωがキャリア周波数オフセットを特徴付け、第3のパラメータΦ0が初期位相オフセットを特徴付ける、モデルパラメータ{h,ω,Φ0}を推定するステップと、
- 受信RF信号内で、シーケンスの前記送信シンボルに対応する受信シンボルを検出するステップと
を含み、
Tが、シンボル持続時間であり、
【0039】
【数12】
【0040】
である、時間nTにおいて、パラメータ{h,ω,Φ0}が、その
a. 3つの未知数
【0041】
【数13】
【0042】
が、それぞれ、推定されることになる前記モデルパラメータ{h,ω,Φ0}の関数であり、
b 係数{B(n)、C(n)、D(n)、F(n)、G(n)、H(n)、v1 (n)、v2 (n)、v3 (n)}が、
i. 時間nTまでの送信シンボルのシーケンスに対応するシンボルのシーケンス
【0043】
【数14】
【0044】
および、
ii. 時間(n-1)Tから時間nTまでに受信されたRF信号のサンプル{yk}の測定位相{Ψk}
に応じて、再帰的な方法で計算される、
3次連立一次程式(system of three linear equations)を解くことによって推定される、方法に関する。
【0045】
その第1の態様による方法は、コンピュータ実装方法である。
【0046】
図2および図3を参照しながら以下で論じるシミュレーション結果によって示すように、上記で紹介した方法は、受信シンボル当たりの線形スケールに対する複雑性を制限しながら、LDI復調器と比較して性能利得を可能にする。この方法は、最小レイテンシ、最小平均2乗誤差(MSE)、および干渉に対する最大ロバストネスで、変数およびパラメータのセット{a1,…,an,h,ω,Φ0}の推定を可能にする。
【0047】
一実施形態によれば、かつ「背景技術」部分で紹介した形式に従って、3次連立一次方程式は、以下の行列形式:
【0048】
【数15】
【0049】
であり、
この場合、行列係数は、
【0050】
【数16】
【0051】
の形であり、
式中、I(n)は、0からnMの間のインデックスのサブセットであり、rkは、|yk|の中から選定された1つに等しく、ユーザ定義定数であり、αkは、
nM≦k≦(n+1)Mの場合、
【0052】
【数17】
【0053】
の形である。
【0054】
したがって、再帰的な様式でモデルパラメータを推定することが可能である復号方法を提供する。
【0055】
有利な実施形態によれば、第(m+1)の受信シンボルは、
- 時間mTまでの送信シンボルのシーケンスに対応するシンボルのシーケンス
【0056】
【数18】
【0057】
に応じて、かつ時間mTにおいて推定される未知数
【0058】
【数19】
【0059】
に応じて、時間mTから時間(m+1)Tまでに受信されたRF信号の予測位相Γmを計算し、
- 時間mTから時間(m+1)Tまでに受信されたRF信号のサンプル{yk}の位相{Ψk}を測定し、次いで、
- 両方の位相を整合させるために、測定位相{Ψk}のベクトルΨmと前記予測位相Γmとの間の誤差項を計算する
ことによって検出される。
【0060】
後者の有利な実施形態によれば、かつ「背景技術」部分で紹介した形成に従って、
a. 予測位相Γnは、
【0061】
【数20】
【0062】
の形であり、
b. 検出される第nの受信シンボルは、
【0063】
【数21】
【0064】
によって与えられ、
式中、
- Ψn=angle([ynM ynM+1…ynM+(M-1)]T)=[ΨnM ΨnM+1…ΨnM+(M-1)]T
- Ωn=[(ΦnMnM-1),(ΦnM+1nM)…(ΦnM+(M-1)nM+(M-2))]T
- ρnは、ユーザ定義パラメータであり、
- pnは、以下の値の中から選定され、
【0065】
【数22】
【0066】
この場合、rnは、|yn|の中から選定された1つに等しく、かつユーザ定義定数である。
【0067】
随意に、本発明は、別個にまたは組み合わせて使用され得る以下の任意の(facultative)特徴のうちのいずれかを有し得る。
【0068】
本発明の第1の態様の随意の実施形態によれば、未知数
【0069】
【数23】
【0070】
は、3次連立一次方程式を解くことによって推定され、かつ/または前記モデルパラメータ{h,ω,Φ0}の所与の値に応じて推定される。
【0071】
本発明の第1の態様の別の随意の実施形態によれば、シンボルの前記シーケンス
【0072】
【数24】
【0073】
は、推測シンボルのシーケンスおよび受信RF信号のサンプル{yk}に対応するシンボルのシーケンスのうちの少なくとも1つを含む。前記推測シンボルは、トレーニングシンボルおよび検出された受信シンボルのシーケンスの中から選定され得る。
【0074】
本発明の第1の態様の別の随意の実施形態によれば、前記連続位相変調は、ガウス周波数シフトキーイング(GFSK)変調である。
【0075】
別の態様によれば、本発明はまた、連続位相変調を使用することによって変調された送信信号のシーケンスを担持するRF信号を復号するためのデコーダに関する。このデコーダは、全部が上記で紹介した方法を実装するように設計された、位相抽出器、モデルパラメータ{h,ω,Φ0}の推定器、シンボル検出器、およびデマルチプレクサを備える。
【0076】
別の態様によれば、本発明はさらに、ソフトウェアプログラム命令を含むコンピュータプログラム製品に関し、少なくとも1つのデータプロセッサによるソフトウェアプログラム命令の実行は、上記で紹介した方法の実行を含む動作を実行させる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
図1】本発明の一態様の一実施形態による受信機のトップレベルブロック図である。
図2】星印を有する曲線が基準LDIデコーダに対して取得されており、輪を有する曲線がここで提案されるデコーダに対して取得されている、シミュレーション結果として、30バイトを含むフレームを用いたBluetooth BR送信に対してログスケールで信号対雑音比(SNR)に応じて与えられる、3つのグラフ、すなわち、パケット誤り率(PER)、パケット損失率(PLR)、およびビット誤り率(BER)を示す図である。
図3】提案される方法(星印を有する曲線を参照)を含む複数の復号方法に対してデコーダにおいて受信されたビット数に応じたh(k)の進展のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本発明の以下の詳細な説明は、添付の図面を参照する。説明は例示的な実施形態を含むが、他の実施形態が可能であり、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、説明する実施形態に対して変更が行われてよい。
【0079】
本明細書において、連立方程式は、共通の解が存在する方程式の有限セットとして定義され得る。
【0080】
「トレーニングシンボル」という用語は、受信機レベルで取り出されることになる、受信機によってすでに知られている、シンボルのシーケンスの部分を作るシンボルを示す。
【0081】
図1は、本発明の第1の態様による復号方法を実装するように設計された受信機1の例示的なアーキテクチャを示す。
【0082】
図1に示すように、そのようなアーキテクチャは、
- 「角度」ブロックによって示される位相抽出器11、
- 「モデルパラメータ推定」ブロックによって示されるモデルパラメータ{h,ω,Φ0}の推定器12、
- 「シンボル検出」ブロックによって示されるシンボル検出器13、および
- 台形によって示されるデマルチプレクサ14
を少なくとも備え得る。
【0083】
位相抽出器11は、サンプリングされたRF信号の各サンプルykの瞬時位相Ψkを抽出するように設計される。
【0084】
推定器12は、第1のパラメータhが変調インデックスを特徴付け、第2のパラメータωがキャリア周波数オフセットを特徴付け、第3のパラメータΦ0が初期位相オフセットを特徴付ける、パラメータのセットのパラメータ{h,ω,Φ0}を推定するように設計される。これらの3つのパラメータは、モデルパラメータ{h,ω,Φ0}と呼ばれる。これらは、その
a 3つの未知数
【0085】
【数25】
【0086】
は、それぞれ、前記モデルパラメータ{h,ω,Φ0}の関数であり、
b. 係数{B(n)、C(n)、D(n)、F(n)、G(n)、H(n)、v1 (n)、v2 (n)、v3 (n)}は、
i. 時間nTまでの送信シンボルのシーケンスに対応するシンボルのシーケンス
【0087】
【数26】
【0088】
および、
ii. 時間(n-1)Tから時間nTまでに受信されたRF信号のサンプル{yk}の測定位相{Ψk}
に応じて、再帰的な方法で計算される
3次連立一次方程式を解くことによって推定される。
【0089】
シンボル検出器13は、受信RF信号内で、シーケンスの前記送信シンボルに対応する受信シンボルを検出するように設計される。その基本的なタスクは、受信RF信号から送信シンボルを確実に復元することである。
【0090】
より具体的には、シンボル検出器13は、
- 時間mTまでの送信シンボルのシーケンスに対応するシンボルのシーケンス
【0091】
【数27】
【0092】
に応じて、かつ時間mTにおいて推定される未知数
【0093】
【数28】
【0094】
に応じて、時間mTから時間(m+1)Tまでに受信されたRF信号の予測位相Γmを計算し、次いで、
- 両方の位相を整合させるために、測定位相{Ψk}のベクトルΨmと前記予測位相Γmとの間の誤差項を計算する
ことによって、第(m+1)の受信シンボルを検出する。
【0095】
前記測定位相{Ψk}は、前記位相抽出器11によって受信RF信号から抽出されている。より具体的には、位相抽出器11は、第(m+1)の受信シンボルを検出するために、シンボル検出器13に対して、時間mTから時間(m+1)Tまでに受信されたRF信号のサンプル{yk}の位相{Ψk}を測定する。
【0096】
シンボル検出器13は、より具体的には、「受信位相再構成」ブロックによって示される位相再構成器、および図1の「投影」ブロックによって示される比較器から構成され得る。
【0097】
シンボル検出器13の位相再構成器は、受信シンボルが推定器12によって推定されるモデルパラメータ{h,ω,Φ0}に従って、有すると推測される位相を再構成するように設計される。位相構成器は、前記予測位相Γmを計算する。
【0098】
シンボル検出器13の比較器は、
- 測定位相{Ψk}のベクトルΨm、および
- 前記予測位相Γm
を比較するように設計される。
【0099】
そのような比較により、不整合、厳密には、両方の位相の整合レベルを特徴付ける誤差項が計算される。
【0100】
モデルパラメータ{h,ω,Φ0}の推定器12は、より具体的には、何らかの近似値を用いて、以下の尤度基準を最大化することによって導出されている:
【0101】
【数29】
【0102】
式中、すでに上記で紹介したように、
nM≦k≦(n+1)Mの場合、
【0103】
【数30】
【0104】
および
【0105】
【数31】
【0106】
であり、時間nTまでのセット
【0107】
【数32】
【0108】
がシンボル{ai}の推定として知られていると仮定する。
【0109】
より具体的には、
i. 信号対雑音比は、十分適度であり、
ii. RF信号がCPMを使用することによって変調されたシンボルのシーケンスを担持するとき、この仮定が特に満たされている場合、RF信号は定振幅信号である
と仮定して、
以下の3次連立一次方程式、
【0110】
【数33】
【0111】
または、同等に、拡張式:
κ(n)=D(n)F(n)H(n)+2B(n)C(n)G(n)-(B(n)B(n)H(n)+C(n)C(n)F(n)+G(n)G(n)D(n))
【0112】
【数34】
【0113】
を用いて、モデルパラメータ{h,ω,Φ0}の時間nTにおける推定が計算され、
式中、
【0114】
【数35】
【0115】
は、系の未知数であり、それぞれ、前記モデルパラメータ{h,ω,Φ0}の関数であり、
行列係数は、
【0116】
【数36】
【0117】
として再帰的な方法で計算され得、
式中、I(n)は、0からnMのインデックスのサブセットであり、rkは、|yk|に等しいが、定数に設定されてもよく(たとえば1に等しいが、好ましくは、信号対雑音比の関数内に適合される)、αkは、
nM≦k≦(n+1)Mの場合、
【0118】
【数37】
【0119】
によって与えられる。
【0120】
αkは、hに対するΦk(h)の導関数と見なされ得ることに留意されたい。
【0121】
デマルチプレクサ14は、通常、既知のデコーダ内で使用される。デマルチプレクサ14は、トレーニング位相からブラインド位相に切り替えるために使用される。トレーニング位相中、事前に知られている送信シンボルを使用して、パラメータ推定が行われる。BTにおいて、そのようなトレーニング位相は、たとえば、受信機によって知られている同期ワードの受信中に生じる。ブラインド位相中、復調器は、決定指向アルゴリズムになる。
【0122】
シンボル検出器13は、より具体的には、時間期間[mT..(m+1)T]中に受信されたサンプルの位相を時間mTまで前のシンボルの事前知識および以下の手順に従って時間mTにおけるモデルパラメータ推定から計算された何らかの再構成/予測位相と「比較すること」によって、送信シンボルam+1の推定b(m+1)を取得するように設計される。
【0123】
Ψnを、時間nTから(n+1)Tまでの受信信号の測定位相のベクトルと呼ぶことにする:
Ψn=angle([ynM ynM+1…ynM+(M-1)]T)=[ΨnM ΨnM+1…ΨnM+(M-1)]T
【0124】
パラメータMは、オーバーサンプリング係数である。たとえば、M=3である。「背景技術」の項で説明したモデルによれば、
【0125】
【数38】
【0126】
であり、式中、cn=[nM,nM+1,…,nM+M-1]Tであり、θ()は、非線形関数である。
【0127】
検出は、2つのステップで実行される。
【0128】
最初に、再構成ブロックは、時間(n-1)Tまで、推定シーケンス
【0129】
【数39】
【0130】
から予測位相Γnを計算する:
【0131】
【数40】
【0132】
の場合、
【0133】
【数41】
【0134】
次いで、シンボルanの推定
【0135】
【数42】
【0136】
が以下の閉じた形の方程式から取得される:
【0137】
【数43】
【0138】
成分ρnΩnは、干渉および送信フィルタに対するロバストな規則化として役立つが、これは、このパラメータが受信RF信号の位相の勾配を不利にする(penalizes)ためである。
【0139】
Ωnは、測定位相の導関数を含み、Ωn=[(ΦnMnM-1),(ΦnM+1nM)…(ΦnM+(M-1)nM+(M-2)]T、ρnは、ユーザ定義パラメータである。
【0140】
ρnは、投影ベクトルである。ρnは、以下のように異なる値をとってよい:
【0141】
【数44】
【0142】
式中、
【0143】
【数45】
【0144】
は、アダマール演算子であり、rnは、|yn|=[ynM ynM+1…ynM+(M-1)]Tの中から選定された1つに等しく、ユーザ定義定数である。
【0145】
本発明の第1の態様による方法は、遭遇する状況に応じて、推定ステップおよび検出ステップのうちのいずれかによって開始し得る。いくつかの例示的な実施形態は、以下で短く論じられ、限定的であることを意図しない。
【0146】
送信シーケンスの第1のシンボルが受信機のレベルにおいてすでに知られている場合、学習段階と呼ばれることがある期間中、モデルパラメータの推定を達成するために、いくつかの推定ステップが最初に実装され得る。以下で論じる図3に示すように、十分のいくつかの事前に知られているシンボルまたはトレーニングシンボルは、この方法がモデルパラメータの良好な推定に向けて収束するには十分であり得る。これらのモデルパラメータは、次いで、検出ステップ、したがって、トレーニングシンボルに続くシーケンスのシンボルの確実な、すなわち、現実の異常を特徴付けるモデルパラメータの推定を用いた、検出ステップを実装するのに役立ち得る。
【0147】
モデルパラメータまたはそれらの推定が、たとえば、前の復号を参照することにより、与えられるかまたはすでに知られている場合、未知数
【0148】
【数46】
【0149】
は、前記モデルパラメータまたは推定の所与の値に応じて推定可能であり、この方法は、推定される未知数
【0150】
【数47】
【0151】
を使用することにより、いくつかの検出ステップで開始することによって実装され得る。
【0152】
この方法はさらに、任意の時点で、かつ推定ステップと検出ステップとの間で必要とされる/所望されるたびに切り替えを可能にする。この意味で、前に検出されたシンボルは、モデルパラメータの新しい推定に役立ち得、前に推定されたモデルパラメータは、新しく受信されたシンボルの検出に役立ち得る。
【0153】
この方法は、いわゆる、CPMを使用することによってコーディングされたシンボルを復号するように設計される。実際、上記の所与の3次連立一次方程式に対する尤度基準を低減するために行われた仮定は、RF信号が定振幅信号であるという仮定を含む。これは、使用可能な変調方式の選定を限定し得る主な仮定であるか、または唯一の仮定ですらある。言い換えれば、GFSK変調方式など、定振幅信号を達成する任意の変調方式が使用され得る。実際、干渉誤差および同期誤差が存在する場合にGFSK信号を復号するのに十分弾性がある、非常に効率的かつロバストなデコーダがこれにより提供される。OQPSK変調として知られている変調方式、およびMSK変調として知られている変調方式など、他の変調方式も使用可能であろう。
【0154】
複雑性の観点から、厳密な複雑性分析は、全数探索も高価な行列分解(EVD、SVD、QR、LU、RRQR、ジョルダン、シューア、など)も必要とされないため、線形時間、すなわち、O(n)において、本発明者らのアルゴリズムが動作することを示す。
【0155】
提案する方法はまた、他の準最適化方法と比較するとき、非常に低いレイテンシを有する。これらは、通常ビタビアルゴリズムに基づく既存の高度GFSKデコーダと比較した主な差別化要因である。
【0156】
図2は、Bluetooth BR送信用のログスケールで信号対雑音比(SNR)に応じて、パケット誤り率(PER)、パケット損失率(PLR)、およびビット誤り率(BER)を与える。基準LDIデコーダに対して星印を有する曲線が取得されており、ここで提案するデコーダに対して輪を有する曲線が取得されている。LDIと比較して、提案するデコーダの4dBを上回る性能利得を理解されよう。
【0157】
図3から、ランダムGFSKビットを生成し、真の値hが0.31になるように選定されている、シミュレートされた実験で、本発明者らは、その中にここで提案した方法(星印を有する曲線を参照されたい)がある、複数の方法を使用したh(k)の発展を見ることができる。提案した方法が最適に最も近いと思われる(連続的な太線を参照されたい)。さらに、提案した方法は、最適なブルートフォースよりもk∈[10,30]の範囲でより正確な推定を与えることに留意されたい。これは、提案した方法の性質によるものと思われるが、その理由は、提案した方法は探索を必要とせず、グリッドなしであるが、h(k)の最適値は離散化グリッド上の全数探索から構成され、したがって、グリッディング誤差に直面するためである。実際、より小さなグリッドサイズは、より良い性能をもたらすことになるが、シミュレーションは、はるかに遅くなる。実際、十分小さい、この実験において選定されたステップサイズは、すでに非常に遅い指数時間の複雑性を経験しているが、提案した方法は、線形である。
【0158】
本発明の第2の態様によるデコーダ1の推定器12は、不偏性、十分統計量、各ビット受信における分散(したがって、MSE)減少、および推定ごとの密度関数収束(density function convergence)など、良い統計的性質を享受することが分かる。これは、(ビット/バイトの点で)送信フレームが長ければ長いほど、推定器12の信頼性がより高まることを意味する。
【0159】
前述の説明は、例示的な非限定的な例として、本発明による復号方法の完全かつ有益な説明を提供した。しかしながら、添付の図面および添付の請求項と合わせて読むと、前述の説明の観点から様々な変更形態および適応形態が当業者に明らかになるであろう。しかしながら、いくつかの例として、他の同様のまたは等価なアルゴリズムおよびデータ表現の使用が当業者によって試行され得る。さらに、異なる要素、変数、および関数に対して使用される様々な名称(たとえば、シンボル検出器、推測シンボル、角度())は、単なる記述であり、これらの様々な要素、変数、および関数は、何らかの公的な名称で呼ばれることがあるため、限定的な意味で読まれることを意図しない。本発明の教示のすべてのそのような同様の変更形態は、依然として本発明の請求項の範囲内に入ることになる。
【0160】
さらに、本発明の例示的な実施形態の特徴のうちのいくつかは、他の特徴の対応する使用を伴わずに、有利に使用され得る。したがって、前述の説明は、本発明の原理、教示、および実施形態の限定ではなく、それらを単に示すと見なされるべきである。
【符号の説明】
【0161】
1 受信機、デコーダ
11 位相抽出器
12 推定器
13 シンボル検出器
14 デマルチプレクサ
図1
図2
図3
【外国語明細書】