(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044594
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】継手部材及び継手構造
(51)【国際特許分類】
F16B 5/07 20060101AFI20220310BHJP
E21D 11/08 20060101ALI20220310BHJP
F16B 7/20 20060101ALI20220310BHJP
E04B 1/61 20060101ALN20220310BHJP
E04B 1/58 20060101ALN20220310BHJP
【FI】
F16B5/07 C
E21D11/08
F16B7/20 C
E04B1/61 502C
E04B1/58 506L
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021206481
(22)【出願日】2021-12-20
(62)【分割の表示】P 2017253545の分割
【原出願日】2017-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2017034918
(32)【優先日】2017-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017238175
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510202167
【氏名又は名称】Next Innovation合同会社
(72)【発明者】
【氏名】道脇 裕
(57)【要約】
【課題】組み立て性や施工性が良く安価な継手部材を提供する。
【解決手段】本発明の継手部材は、被接合部材のそれぞれに配設されて該被接合部材同士を接合し得る継手部材であって、上記継手部材は、嵌合部と、嵌合受部と、上記被接続部材に配設される受部と、該嵌合部と該嵌合受部と該受部を一体又は一体的に保持する連結部を有し、上記嵌合部は、対を成す他の継手部材の嵌合受部と嵌合し得、上記嵌合受部は、対を成す他の継手部材の嵌合部と嵌合し得、上記継手部材を、該継手部材と対を成して接合される他の継手部材に対して、互いの接合方向と異なる方向に変位させることで上記嵌合をさせ得、嵌合状態においてはこれら該継手部材同士の接合方向の離間を防止するように構成されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合部材のそれぞれに配設されて該被接合部材同士を接合し得る継手部材であって、
上記継手部材は、嵌合部と、嵌合受部と、上記被接続部材に配設される受部と、該嵌合部と該嵌合受部と該受部を一体又は一体的に保持する連結部を有し、
上記嵌合部は、対を成す他の継手部材の嵌合受部と嵌合し得、
上記嵌合受部は、対を成す他の継手部材の嵌合部と嵌合し得、
上記継手部材を、該継手部材と対を成して接合される他の継手部材に対して、互いの接合方向と異なる方向に変位させることで上記嵌合をさせ得、嵌合状態においてはこれら該継手部材同士の接合方向の離間を防止するように構成されることを特徴とする継手部材。
【請求項2】
請求項1に記載の一対の前記継手部材を具え、
一方の前記継手部材は、一方の前記被接合部材に配設され、
他方の前記継手部材は、一方の前記被接合部材に配設され、
前記継手部材の前記嵌合部は、対を成す前記継手部材の前記嵌合受部と嵌合し得、嵌合受部は対を成す他の継手部材の嵌合部と嵌合し得るように構成されることを特徴とする継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの部材を接合する継手、特に、二つの部材を接合面に平行乃至はやや傾斜した方向に動かして接合するのに適した継手部材及び継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、横板部材に径大挿入窓と長窓から成る挿入口を、縦板部材に軸部と鍔部から成る突出部を設けた部材の取付構造が記載されている。この取付構造では、鍔部を径大挿入窓から挿入した後、縦板部材を接合面に平行な方向に動かして、鍔部と長窓を係合させることによって縦板部材を横板部材に取り付ける(特許文献1の段落0017、
図3)。
【0003】
特許文献2には、第2黒鉛版にスライド係合溝を、第1黒鉛版にスライド係合溝に係合する係合突部をそれぞれ設けた焼成器具が記載されている。この焼成器具では、スライド係合溝の一端から係合突部を挿入し、接合面に平行な方向に部材をスライドさせて所定の位置に組み合わせ、スライド係合溝の方向に動かないようにピンで止める(特許文献2の0022~0024、
図2)。
【0004】
二つの部材を接合する方法として接合面に対して傾斜したボルトによる方法が知られている。例えば、特許文献3には、一方の部材に雌ねじを形成し、他方の部材にはボルトを貫通させる孔部とナットを固定するための空間を形成し、二つの部材をボルトにより結合する方法が記載されている(引用文献3の段落0004、
図18)。
【0005】
特許文献4には、一方の部材にはメス型のコーンを、他方の部材にはオス型のコーンをそれぞれ設け、接合面に平行な方向に両部材を移動させてメス型のコーンとオス型のコーンを嵌合させる方法が記載されている(特許文献4の段落0004、
図6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-170722号公報
【特許文献2】特開2016-50705号公報
【特許文献3】特開2010-236348号公報
【特許文献4】特開2015-137525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法では、挿入口と突出部の形状が複雑で、接合する部材の材質によっては製作が困難であるという問題があった。また、接合する際に接合面と垂直方向に部材を動かすスペースがない場合に適用できないという問題があった。
【0008】
特許文献2に記載の方法では、接合面の全長に亘ってスライド係合溝が設けられているので、部材をスライドさせるために大きな空間がなければならないという問題があった。
また、部材の設置条件によっては、ピンを挿入することができないという問題があった。
【0009】
特許文献3に記載の傾斜したボルトによる継手では、二つの部材が正確に位置決めされた状態を維持しながらボルトの締結をしなければならず、施工が煩雑であるという問題があった。
【0010】
特許文献4に記載のメス型のコーンとオス型のコーンを組み合わせた継手を用いると、二つの部材の接合面を当接させた状態で接合面の方向にスライドさせることにより二つの部材を結合することができるため、傾斜したボルトを用いた場合に比べると施工性が良い。しかし、メス型のコーンとオス型のコーンという形状の異なる部品が必要となるため、製造コストや部品管理コストが大きくなるという問題があった。
【0011】
そこで、本発明では、組立性や施工性が良く安価な継手部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の継手部材は、被接合部材のそれぞれに配設されて該被接合部材同士を接合し得る継手部材であって、上記継手部材は、嵌合部と、嵌合受部と、上記被接続部材に配設される受部と、該嵌合部と該嵌合受部と該受部を一体又は一体的に保持する連結部を有し、上記嵌合部は、対を成す他の継手部材の嵌合受部と嵌合し得、上記嵌合受部は、対を成す他の継手部材の嵌合部と嵌合し得、上記継手部材を、該継手部材と対を成して接合される他の継手部材に対して、互いの接合方向と異なる方向に変位させることで上記嵌合をさせ得、嵌合状態においてはこれら該継手部材同士の接合方向の離間を防止するように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、組立性や施工性が良く安価な継手部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態である継手部材の形状を示す図であり、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は右側面図、(D)は平面図である。
【
図4】(A)~(C)は、継手部材による接合手順を示す図である。
【
図5】(A)~(D)は、接合面が傾斜している場合の継手部材による接合手順の一例を示す図である。
【
図6】(A)~(D)は、接合面が傾斜している場合の継手部材による接合手順の他の例を示す図である。
【
図7】本発明の第2実施形態である継手部材の形状を示す図であり、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は右側面図、(D)は平面図である。
【
図8】本発明の第3実施形態である継手部材の形状を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第4実施形態である継手部材の形状を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第5実施形態である継手部材の形状を示す斜視図である。
【
図11】継手部材のシールドへの適用を説明する図である。
【
図12】継手部材の家具への適用を説明する図である。
【
図13】本発明の第6実施形態である流入防止部材付き継手部材の形状を示す斜視図である。
【
図14】型枠に固定された流入防止部材付き継手部材の形状を説明する図である。
【
図15】(A)及び(B)は接合面に垂直な方向の引き抜き抵抗を向上させた継手部材の変形例、(C)及び(D)は接合面に平行な方向の引き抜き抵抗を向上させた継手部材の変形例を説明する図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る継手部材の一例を表す図であり、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は左側面図、(D)は底面図、(E)は右側面図である。
【
図17】本発明の一実施形態に係る継手部材の一例を表す図であり、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は左側面図、(D)は底面図、(E)は右側面図である。
【
図18】(A)及び(B)は接合面に平行な方向の引き抜き抵抗を向上させた継手部材の変形例を説明する図である。
【
図19】流体移動による抜け止め機構を備えた継手部材の変形例を説明する図であり、(A)は接合前、(B)は接合後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1実施形態である継手部材1について説明する。
図1は継手部材1の形状を説明する図であり、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は右側面図、(D)は平面図である。以後の説明を簡単にするため、
図1(A)の矢印で示したように、紙面の左右方向を挿入方向、紙面の上下方向を接合方向、紙面に垂直な方向を奥行き方向と呼ぶことにする。
【0016】
継手部材1は、他の継手部材と組み合わされて、被接合部材100の接合面101と他の被接合部材の接合面を当接させた状態で接合するための継手を構成する。以下、本第1実施形態における他の継手部材は図示の継手部材1と略同一の構造であるとして説明する。
【0017】
継手部材1は、被接合部材100の接合面101から接合方向負の向きに突出する突出部10と、被接合部材100に埋設される受部20と、被接合部材100に埋設され突出部10と受部20を接続する接続部30を備えている。この実施形態では、継手部材1は鍛造によって形成されたものであり、突出部10、受部20、接続部30は鍛造によって一体に形成されているが、鍛造以外の方法、例えば、鋳造や切削、三次元造形、放電加工、溶接による貼り合わせ等で形成することが可能である。
【0018】
突出部10は、その全体が接合面101から突出している。即ち接合面101が突出10と接続部30との境界となっている。
図1(B)、(C)に示すように、挿入方向に垂直な平面で切った場合の突出部10の断面形状は上縁12が下縁11よりも小さい台形形状であり、この断面形状は挿入方向に一定である。端面13と端面14は挿入方向に対して垂直である。即ち、突出部10の立体的な形状は、奥行き方向の幅が接合面に対向する側の端面から接合面側の端面に向かって漸次減少する一軸くさび形状である。なお、端面13と端面14は挿入方向に対して傾斜させたり、凹凸を設けたりしても良い。
【0019】
受部20は、接合方向の端面の一方の接合方向の位置が接合面101と一致するように被接合部材100に埋設されている。受部20は、二つの側壁21と天部22を備え、
図1(A)の右側の端面は開口部23となっており、この開口部23から他の継手部材の突出部を挿入可能となっている。そして、二つの側面21、天部22、開口部23、開口部23に対向する端面24aにより画定される空間は、開口部23から挿入された他の継手部材の突出部を収容する収容部24となっている。収容部24の挿入方向に垂直な面で切った断面形状は、上縁23aの幅が突出部10の下縁11の幅と等しく、下縁23bの幅が突出部10の上縁12の幅と等しい台形形状であり、この断面形状は挿入方向に一定である。また、収容部24の挿入方向の長さは、突出部10の同方向の長さとほぼ等しくなっている。即ち、収容部24の形状は、他の継手部材の突出部の形状とほぼ同一であり、収容部24は他の継手部材の突出部を完全に収容し得る。なお、受部20の接合方向の端面の一方の接合方向の位置は接合面101と一致しないようにすることもできる。
【0020】
受部20に他の継手部材の突出部が挿入された状態で、接合面に引張力が作用した場合には、他の継手部材の突出部は二枚の側板21を押し広げて抜け出そうとするが、側板21は自身の剛性の他、収容部24の端面24aと天部22によって支持されると共に、被接続部材100により拘束されているので、抜け出すことができない。勿論、側板21は肉厚を厚くして強度向上させるという方法以外に、側板21の外側にリブやフランジ等の補強手段を設けて増強することで、側板21が内側から押し広げられることを防止するように構成してもよい。
【0021】
接続部30は略直方体状の部材で、被接合部材100に埋設されているが、勿論これには限定されていない。接続部30の挿入方向の一方の端面31には受部20が、接合方向の一方の端面32には突出部10が接続されている。突出部10の端面14と収容部24端面24aの挿入方向の位置は、接続部30の端面31と一致する位置関係になっている。この例では、接続部30の形状を、製造を容易にするために直方体としているが、突出部10と受部20を概ね上記のような位置関係で接続し、また、接合時に他の継手部材の突出部により押圧される際の荷重に耐えることができれば、他の形状としてもよい。
【0022】
図2は、第1実施形態の変形例を示す図で、突出部10と収容部23の形状を一軸くさび形状以外の形状とした例である。突出部10の断面形状を段差部15を有する形状とし、収容部24の断面形状を突出部10と同型状としている。他の継手部材の突出部の段差部と収容部24の段差部26が係合するため、受部20は他の継手部材の突出部が接合面から接合方向に抜け出さないように保持することができる。受部20の形状は、他の継手部材の突出部を接合方向に動かないように係合することができれば、
図1、2に示した形状とは異なるものとすることもできる。また、この条件を満たせば、他の継手部材の突出部と収容部24の形状は同一でなくても良い。
【0023】
図3は、第1実施形態の他の変形例を示す図である。継手部材1の突出部10と接続部30の形状は
図1に示したものと同一であるが、受部20の側壁27を三角形形状とし、開口部28を接合面101に対して傾斜させている。これは、側壁27を支持する天部22及び接続部30から離れているため側壁27の強度には余り寄与しない部分28aを省略して材料の節約を図ったものである。このように、開口部は接合面に対して傾斜していても良く、また、収容部24の形状を突出部10を完全には収容しない形状としても良い。また、逆に突出部10を収容部24よりも小さくし、収容部24に空間が残るようにしても良い。
【0024】
継手部材1の材料は、所望の強度、製造コスト、被接続部材100が使用される環境条件等に応じて種々のものを使用することができ、勿論、継手部材1は金属の他、合成樹脂、木、紙、ガラス、セラミックス、ゴム或いはこれらの複合材料など適宜の材料を用いて適宜の製造方法で形成することが可能である。
【0025】
製造コストの観点からは、他の継手部材は継手部材1と同一の形状であることが望ましいが、接続部品1と機能的に同等の突出部、受部、連結部とを備え、他の継手部材の受部は、接合面と略平行な方向から継手部材1の突出部10を挿入可能な開口部と、挿入された突出部10を接合面から接合方向に抜け出さないように保持できる形状の収容部とを備えていれば、形状が異なっていてもよい。また、他の継手部材と継手部材1は素材が異なっていても良い。
【0026】
次に、
図4を参照して継手部材1を用いた部材の接合方法について説明する。
図4では、既設の部材である被接合部材100aに対して被接合部材100bを接合することを想定している。被接合部材100aには
図1の継手部材1と同形状の継手部材1aが、被接続部材100bには
図1の継手部材1と同形状の継手部材1bがそれぞれ固定されている。継手部材1aの突出部10aは接合面101aから、継手部材1bの突出部10bは接合面101bから、それぞれ突出している。
【0027】
また、被接合部材100aの継手部材1aに挿入方向に隣接する位置には空間102aが、被接合部材100bの継手部材1bに挿入方向に隣接する位置には空間102bが、それぞれ設けられている。この空間102a、102bは突出部10b、10aを収容でき、接合面101a、101bから突出部10b、10aを接合方向に挿入できる形状とする。
【0028】
まず、
図4(A)に示すように、被接合部材100bを接合面101bが被接合部101aと対向し、突出部10bと空間102aの挿入方向の位置が一致するように被接合部材100aの近傍に配置する。
【0029】
この状態から、
図4(A)の矢印Aのように、被接合部材100bを被接合部材100aの方向に移動させ、接合面100aと接合面100bを当接させ、
図4(B)に示す状態とする。突出部10aは空間102bに、突出部10bは空間102aにそれぞれ収容されている。
【0030】
次に、接合面101aと接合面101bを当接させた状態で、被接合部材100bを
図4(B)の矢印Bの方向に移動させ、
図4(C)に示すように突出部10bが受部20aに、突出部10aが受部20bにそれぞれ収容されるようにする。前述のように、受部20a(20b)は、突出部10b(10a)が接合方向に抜け出さないように保持できる形状となっているので、継手部材1aは他の継手部材1bと組み合わされて継手7を構成することができる。
【0031】
図5は、接合面が挿入方向に対してやや傾斜している場合の継手部材1による部材の接合方法の一例を説明する図である。
図5では、既設の被接合部材100c、100dの間に被接合部材100eをはめ込むことを想定している。各被接合部材の接合面103c、103d、103eは挿入方向に対して角度αだけ傾斜している。具体的な例としては、シールド工法に使用するリング部材を形成する際の、周方向に接合済のセグメント群に対して最後のセグメントを接合してリング部材を完成させる工程を挙げることができる。
【0032】
被接続部材100cには継手部材1cが、被接続部材100dには継手部材1dが、被接続部材100eには二個の継手部材1eが、それぞれ固定されている。継手部材1c、1d、1eの形状は
図1に示した継手部材1の形状と基本的には同一である。ただし、
図5(B)に示すように、収容部20c、20d、20eの接合面側の端面29c、29d、29eを、接合面の挿入方向に対する傾斜αに合わせて傾斜させている。
【0033】
被接続部材100cと被接合部材100dの間隙の形状は、被接合部材100eがちょうど嵌め込める形状となっているため、被接合部材100eを接合方向には僅かしか動かすことができない。そのため、まず、被接合部材100eを、被接合部材100c、100dに対して奥行き方向にずらし、二つの突出部10eと空間102c、102dの挿入方向の位置が一致するように配置する。次に、被接合部材100eを奥行き方向に移動して突出部10eが空間102c、102dに収容されるようにし、
図5(A)の状態とする。このように、被接合部材100eを奥行き方向に移動させる必要があるため、空間102c、102d、102eは、
図5(D)に示すように被接合部材100eが挿入される方向が開口している必要がある。
【0034】
次に、
図5(A)の矢印Cの方向に被接合部材100eを移動して、
図5(C)の状態とする。突出部10eは受部20c、20dに、突出部10c、10dは二つの受部20eにそれぞれ収容され、継手8が構成される。
【0035】
図6(A)~(D)は、接合面が挿入方向に対してやや傾斜している場合の継手部材1による部材の接合方法の他の例を説明する図である。基本的には
図5に示した方法と同様であるから、
図5と同様の構成要素には
図5と同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
図5の例では、空間102c、102d、102eの形状を、継手部材の突出部10c、10d、10eよりやや大きい台形状としたが、
図6の例では、空間105c、105d、105eの形状を挿入方向に長い三角形形状としている。このようにしたため、被接合部材100eを
図6(A)に示す位置に配置することができ、
図4の例と同様に矢印D方向に動かして
図6(C)に示すように継手8を構成することができる。側壁20c、20e、20dの端面は
図6(B)に示すように部材の傾斜α似合わせて傾斜させている。
【0037】
図6の例では、被接合部材100eを奥行き方向に動かす必要がないので、各被接合部材の配置の自由度が
図5の例に比べて大きくなる。また、空間105c、105d、105eの形状は、
図6(D)に示すように奥行き方向に開口していない溝状とすることができるため、接合後に空間105c、105d、105eが被接合部材の表面に現れない。
【0038】
継手部材1によれば、受部20は他の継手部材の突出部を挿入可能な開口部23と、挿入された他の継手部材の突出部を収容し接合面から接合方向に抜け出さないように保持できる受部20を備えている。そのため、二つの被接合部材の接合面を当接させて二つの被接合部材を挿入方向に相対的に移動させるだけで容易に接合することができる。
【0039】
継手部材1は突出部10と受部20を接続する接続部30を備え、一体の部品として構成されている。そのため、被接続部材100に容易に取り付けることができる。
【0040】
継手部材1によれば、突出部10も他の継手部材の受部に挿入され接合面から抜け出さないように保持され、係合箇所が二つ形成される。そのため、強固な継手を形成することができる。
【0041】
継手部材1によれば、突出部10と連結部30は、接合面を跨いで配置されている。そのため、継手部材1の様に構成された継手は、接合方向に沿った引張力に抵抗するだけでなく、接合面に対する剪断力に抵抗することもできる。
【0042】
本発明の第2実施形態である継手部材2について説明する。
図7は継手部材2の形状を説明する図であり、(A)は正面図、(B)は左側面図、(C)は右側面図、(D)は平面図である。継手部材2は、突出部、受部、連結部を備え、他の継手部材と組み合わされて継手を構成する点では第1実施形態の継手部材1と同様であるが、各部の形状が異なっている。以下、他の継手部材は図示の継手部材2とほぼ同一の形状であるとして説明する。
【0043】
継手部材2は、被接合部材100の接合面101から突出する突出部40と、被接合部材100に埋設される受部50と、被接合部材100に埋設され突出部40と受部50を接続する接続部60を備えている。
【0044】
突出部40は、その全体が接合面101から突出している。即ち接合面101が突出40と接続部60との境界となっている。
図7(B)、(C)に示すように、挿入方向に垂直な平面で切った場合の突出部40の断面形状は、端面43においては接合面側の幅をb1、接合面に対向する側の幅をb2とするとき、これらの大小関係が次の不等式(1)を満たす台形である。
b2>b1 不等式(1)
挿入方向に垂直な平面で切った場合の突出部40の断面形状は、端面44においては接合面側の幅をb3、接合面に対向する側の幅をb4とするとき、これらの大小関係が次の不等式(2)を満たす台形となっている。
b4>b3 不等式(2)
また、挿入方向に関しては、b1<b3、b2<b4という大小関係になっている。即ち、突出部40の立体的な形状は、接合方向の幅が奥行き方向に漸次減少すると共に、挿入方向にも漸次減少する二軸楔形状の構造を成す。
【0045】
受部50は、接合方向の端面の一方の接合方向の位置が接合面101と一致するように被接合部材100に完全に埋設されている。受部50は、二つの側壁51と天部52を備え、
図7(A)の右側の端面は開口部53となっており、この開口部53から他の継手部材の突出部を挿入可能となっている。そして、二つの側面51、天部52、開口部53に対向する端面54aの内部の空間は、開口部53から挿入された他の継手部材の突出部を収容する収容部54となっている。収容部54の形状は、他の継手部材の突出部の形状と略同一であるが僅かに収容部54の方が、挿入方向に深く、端面54aの幅が突出部40の端面43の幅より狭くなっている。収容部24は他の継手部材の突出部を完全に収容する。
【0046】
突出部40の形状を二軸楔形状とすることにより、突出部40の端面を接続部60の端面に確実に当接させて三次元的な位置決めを可能とする。そのため、継手部材2によれば、継手部材1による効果に加えて、挿入方向の荷重に対してもある程度抵抗できるという効果が得られる。
【0047】
接続部60は、被接合部材100に完全に埋設されている。接続部60の挿入方向の一方の端面31には受部20が、接合方向の一方の端面32には突出部10が接続されている。突出部40の端面44と収容部54の挿入方向の位置は、接続部60の端面61と一致する位置関係になっている。接続部50の端面61付近にはテーパー部63を設けて、端面64側の奥行き方向寸法を端面61側の奥行き方向寸法より減少させている。これは、第1実施形態と同様に、接続部60は、突出部40と受部50を上記のような位置関係で接続し、また、接合時に他の継手部材の突出部により押圧される際の荷重に耐えることができればよいため、材料無駄の無い形状としつつ、鍛造による加工をし易い形状にしたものである。従って、接続部60の形状を
図7に示したものと異なる形状とすることもできる。
【0048】
継手部材2の材料は、第1実施形態の継手部材1と同様に、所望の強度、製造コスト、被接続部材100が使用される環境条件等に応じて種々のものを使用することができ、金属の他、合成樹脂、木、紙、ガラス、セラミックス、ゴム、或いはこれらの複合材料など適宜の材料を用いて適宜の製造方法で形成することが可能である。
【0049】
また、第1実施形態の場合と同様に、継手部材2と他の継手部材の形状及び材質は、製造コストの観点からは同一であることが好ましいが、異なる形状及び材質とすることもできる。また、収容部54と他の継手部材の突出部の形状は同一でなくてもよい。なお、継手部材6による被接続部材の接合は、
図4、5、6に示した第1実施形態における方法と同様に行うことができる。
【0050】
次に、
図8を参照して、本発明の第3実施形態である継手部材3について説明する。継手部材3は、被接続部材100がコンクリート製部材等の流動体を固化させて製造される部材である場合の、本発明の適用例である。この継手部材3は、第1実施形態の継手部材1(その変形例も含む)または、第2実施形態の継手部材2(その変形例も含む)と同一形状の本体3aを備えている。本体3aの受部の接続面と対向する端面3bと、接続部の接続面と対向する端面3cには、それぞれ、アンカー70が固定されている。アンカー70として、例えば、直線状、或いはU字形、L字形等の適宜の形状の異形鉄筋等を用いることができ、想定される接合方向の荷重に対して、本体3aが被接続部材から接合方向に抜けないようにアンカー70の長さと径を設定する。アンカー70の固定としては、溶接の他、ねじ部を設けて螺合しても良い。なお、コンクリート以外の材料の場合でも、継手部材と材料との付着だけでは接合方向の引き抜き抵抗が不十分な場合には、アンカーを設けると良い。
【0051】
次に、
図9を参照して、本発明の第4実施形態である継手部材4について説明する。継手部材4は、被接続部材100がコンクリート製部材等の流動体を固化させて製造される部材である場合の、本発明の他の適用例である。この継手部材4は
図8の継手部材3と同様の本体4aとアンカー70を備えている。継手部材4は更に、挿入方向から見た形状が略U字形若しくは馬蹄形の形態を成し、本体4aの外周に接合面と略直角方向に配置された二枚の外周補強部材71を備えている。外周補強部材71は、馬蹄形を成す構造の本体4aの外面に対して法線方向に凸設され、本体4aと一体的に形成しても良く、別体として溶接や接着、嵌合によって設けても良い。外周補強部71の凸設高さや幅や形状は、特に限定されるものではなく、要求水準に合わせて本体4aを十分に補強出来るものであればよい。
図9では、外周補強部材71の挿入方向の位置は、アンカー70と一致しているが、必ずしも一致しなくても良く、枚数も一枚又は三枚以上としても良い。また、アンカー70を設けない場合にも外周補強部材71を設けても良い。外周部補強部材71を設けることによって、収容部が開くように変形することを防止し、継手の接合方向の引張強度を向上させることができる。この他、この外周補強部材71によれば、継手部材4に対して作用し得る嵌合時における挿嵌方向に対する外力に対しても抵抗力を発揮し得る。
【0052】
次に、
図10を参照して、本発明の第5実施形態である継手部材5について説明する。
継手部材5は、被接続部材100がコンクリート製部材等の流動体を固化させて製造される部材である場合の、本発明の他の適用例である。この継手部材5は
図9の継手部材4と同様の本体5aとアンカー70と外周補強部材71を備えている。継手部材5は更に、本体5aの接合面側の端面に配置され、接合面と平行な板状の接合面補強部材72を備えている。接合面補強部材72を接合面付近に配置することによって、接合面の剛性を高めることができる。
【0053】
図11に、本発明の継手部材1~5を地中にトンネルを構築するシールド工法に適用した例を示す。シールド工法においては、工場等で予め製作したセグメント81、82を周方向に接合してリング83を製作し、このリング83を軸方向に順次接続してトンネル80を構築する。セグメント82は、最後に接合されるセグメントで、接合面がトンネルの軸方向に対して僅かに傾斜している。
図11では短い直線で記号的に示したセグメントの周方向の継手84、85に本発明を好適に用いることができる。
【0054】
図12に、本発明の継手部材1、2を木製の本棚に適用した例を示す。本棚90は、鉛直方向に配置される二枚の側板91の間に、一枚の天板92と複数の棚板93を配置した構造となっている。
図12では短い直線で記号的に示した側板91と天板92の継手94及び側板91と棚板93の継手95に本発明を好適に用いることができる。木材等の部材に継手部材1、2を固定する方法としては、例えば、受部と連結部を収容できる空間を形成し、その空間に継手部材1、2を圧入し或いは接着剤等で固定する。継手部材1、2を圧入する場合は、受部及び挿入部に鬼目ナットを形成しても良い。継手部材1、2によれば、一体に形成されている突出部と接続部が、側板91と天板92及び側板91と棚板93にまたがって配置されている。そのため、継手部材1、2により構成される継手は、
図12の上下方向の剪断力に対して著しく高い強度を有している。二枚の側板91の間に天板92及び棚板93を挿入する方向は、紙面に垂直な方向とすることも、紙面の上下方向とすることもできるが、上下方向とした方が、使用時に天板92及び棚板93が抜け出すことがなく好ましい。
【0055】
次に、本発明の第6実施形態である継手部材6について説明する。継手部材6は、被接合部材が型枠に流動性材料(例えばコンクリート、合成樹脂)を注入し硬化させて作成される場合に好適な実施形態である。
図13は継手部材6の斜視図、
図14は型枠120に配置した継手部材6の平面図である。
図13、14では被接合部材100の接合面101が上面となるように型枠を作成した場合を想定している。
【0056】
被接合部材100の継手部材6は、
図3に示した継手部材1の変形例と同様の本体6aとアンカー70を備えている。継手部材6aは、突出部6bと連結部6dの境界が接合面と一致するように型枠に固定されるが、収容部6eが開放された形態の場合には、このままでは、収容部6eとなるべき空間に流動性材料が流入してしまい、収容部6eを形成することができない。そのため、継手部材6は、流入防止部材110を備えている。流入防止部材110は、収容部6eと接合時に必要な空間102の外周に沿った側壁111と、側壁111の下端に接続された底板112を備えている。側壁部111の上端には、必須ではないが、ループ状の把持部113が設けられている。側壁部111の上端は、接合面(打設面)から少し突出するようにしている。
【0057】
図13、14に示すように、収容部6eの内面に側壁部111と底面112が当接するように、流入防止部材110を設置し、流動性材料を型枠120に注入する。流動性材料は流入防止部材110に阻まれて空間102及び収容部6eに流入することができない。
流動性材料が硬化した後、把持部113を
図13の上方に引き上げ流入防止部材110を除去すると空間102と収容部が形成される。この除去がスムーズに行えるように、側壁111と底板112は流動性材料と付着しにくい材料で形成するのが好ましい。
【0058】
把持部113は、流動性材料の硬化後に流入防止部材110を除去しやすい形状であれば、図示のものと形状が異なっていても良く、取付位置も図示のものと異なっていても良い。また、把持部113を省略することもできる。
【0059】
流入防止部材110は、
図13、14に示すような上部が開口した箱状の部材とするほか、収容部6e及び空間102の形状に対応したブロック状の部材とすることもできる。
その場合、材料は例えば発泡スチロールを用いることができる。この場合も、把持部を設けても良い。
【0060】
上記に説明した第1実施形態乃至第6実施形態の構成要素は、矛盾の無い限り相互に組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の継手部材を適用する被接合部材の、材質、形状には限定がなく、接合面同士を当接させて接合する場合であればどのような部材にも適用することができる。材質としては、例えば、コンクリート、金属、合成樹脂、木材等に適用することができる。被接続部材の形状としては、例えば、板状、柱状、ブロック状等の同種のもの同士或いは異なる種類の部材の接合に適用することができる。また、上記に例示したシールドセグメント及び本棚の他にも、プレキャストによるコンクリート部材(プレキャストコンクリート部材)一般、家具一般、住宅フレーム材等を含む土木用及び/又は建設や建築用の建材、各種機械等のあらゆる物品に適用することができる。
【0061】
次に、第1実施形態乃至第6実施形態の継手部材の種々の変形例について説明する。これらの変形例は矛盾のない限り、相互に組み合わせて実施することができる。継手部材の基本的な構造は、第1実施形態の継手部材1と同様であるので、継手部材1と同様の構成要素には
図1と同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
図15(A)は、接合方向の引張強度を向上させた変形例を説明する図である。継手部材1aは、収容部24の端面131が接合面に対して天部22側が連結部30方向に入るように傾斜している。突出部10の端面132も端面131と平行な方向に傾斜している。そのため、受部20の側壁21(
図1参照)と他の継手部材の突出部の側面が係合するのに加え、端面131と端面132も係合し、継手の接合方向の引張強度(引抜強度や押込強度)が向上する。
【0063】
図15(B)は、接合方向の引張強度を向上させた別の変形例を説明する図である。継手部材1bの収容部24の端面143には、直方体状の凹部141が設けられている。また、突出部10の端面144には、凹部144と略同形状の突部142が設けられている。そのため、受部20の側壁21(
図1参照)と他の継手部材の突出部の側面が係合するのに加え、凹部141と他の継手部材の凸部142が係合し、継手の接合方向の引張強度(引抜強度)が向上する。なお、凹部141と凸部142が係合できれば、位置と形状は
図15(B)に示したものと異なっていても良い。
【0064】
図15(C)は、挿入方向の引張強度を向上させた変形例を説明する図である。継手部材1cの収容部24の天部22には、段差部152を有する三角形形状の凹部151が設けられている。突出部10の他の継手部材の天部22と当接する端面には凹部151と同形状(必須ではない。)で段差部154を有する凸部153が凹部151と略同数設けられている。そのため、段差部152と段差部154が係合し、継手の挿入方向の引張強度(引抜強度)が向上する。なお、凸部153や凹部151の数量や大きさ、形状等は、各種の要請に応じて適宜設定可能である。
【0065】
図15(D)は、接合方向の引張強度を向上させた別の変形例を説明する図である。継手部材1dの収容部24の天部22には、波状の凹凸161が設けられている。突出部10の他の継手部材の天部22と当接する端面には、凹凸161と対称(必須ではない。)な形状の凹凸162が設けられている。そのため、凹凸161と凹凸162が係合し、継手の挿入方向の引張強度(引抜強度及び押込強度)が向上する。なお、凹凸161、162の数量や大きさ、形状等は、各種の要請に応じて適宜設定可能である。
【0066】
図16は、本発明の一実施形態に係る継手部材の一例を表す図であり、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は左側面図、(D)は底面図、(E)は右側面図である。本発明の一実施形態に係る継手部材200は、例えば、
図16(A)~(E)に示すように、受部224の対向する側壁221a、221bの内面と、受部224に挿入された他の継手部材の突出部210の奥行き方向側の側面211a、211bとは、他の継手部材が接合方向及び/又は挿入方向に抜け出さないように係合する係合部271a、271b、272a、272bを有する。尚、本発明の一実施形態に係る継手部材では、必ずしも対抗する面の両方に係合部を有する必要はなく、受部224内面の一の面に係合部が形成されていても良いし、対向しない複数の面に係合部が形成されていても良い。
【0067】
係合部271a、271b、272a、272bは、例えば、上記
図15(A)~(D)で説明したような、直方体状、三角形状、或いは円弧状(勿論、これらの形状に限定されることはなく、他の多角形状や不定形な形状でも良い)の凹部及び/又は凸部を有し、受部224側の係合部271a、271bと、他の継手部材の突出部210側の係合部272a、272bとが、他の継手部材の突出部210を受部224に挿入した時に係合されるように設計することができる。
【0068】
また、係合部271a、271b、272a、272bは、
図16(B)、(D)に示すように、受部224に対する他の継手部材の突出部210の挿入方向が接合面201に対して傾斜するように形成されていても良い。このように、係合部271a、271b、272a、272bを接合面201に対して傾斜させて形成することにより、継手の挿入方向及び接合方向の両方の引張強度(引抜強度)を向上させることができる。勿論、係合部が挿入方向に対して平行に形成される態様も除外されるわけではない。
【0069】
また、係合部271a、271b、272a、272bは、他の継手部材の挿入方向に向かって受部224の対向する側壁の内面の幅が漸次縮小するように形成しても良い。すなわち、受部224側の係合部271a、271bの(開口部側の幅w1)>(挿入方向奥側の端面の幅w2)となるように、係合部271a、271b、272a、272bを形成しても良い。例えば、係合部の縁部をテーパー状に形成しても良い。テーパー形状は、例えば、突出部210側の係合部272a、272bが、受部224への挿入方向の開口部側から奥側の端面へとかけて係合部間の幅が狭まるように形成し、受部側の係合部271a、271bは、突出部210側の係合部272a、272bと係合するように形成することができる。このようにすることで、一方の係合部の縁部を他方の係合部の縁部に確実に当接させて三次元的な位置決めを可能とし、挿入方向の荷重に対してもある程度抵抗できるという効果が得られる。勿論、例えば、上述の第2実施形態で説明したように、係合部以外の箇所も同様の構造となっていても良い。
【0070】
また、突出部210は、接合方向の少なくとも一部に、平行な側面273a、273bを有しその幅が最小となる首部274を有していても良い。平行な側面273a、273bを有する首部274を備えることにより、接合方向の荷重に対して受部224が外側に広がるのを防止することができる。また、この他にも、受け部224の隅等応力が集中し易い箇所については丸み面取りや傾斜面取り等を行っても良い。
【0071】
図17は、本発明の一実施形態に係る継手部材の一例を表す図であり、(A)は斜視図、(B)は正面図、(C)は左側面図、(D)は底面図、(E)は右側面図である。本発明の一実施形態に係る接手部品300は、
図17(A)~(E)に示すように、係合部371、372が複数形成(a
1,a
2,・・・,a
n,b
1,b
2,・・・,b
n)されている形態としても良い。係合部を複数形成することにより、受部324に他の接手部品の突出部310が挿入された際に、各々の係合部371、372(a
1,a
2,・・・,a
n,b
1,b
2,・・・,b
n)が係合するため、継手の挿入方向及び接合方向の両方の引張荷重に対する応力を多段に分散することができ、嵌合部をよりコンパクトな大きさに設定することができる。複数の係合部は、
図17(A)に示すように、連続して形成されていても良いし、間隔をあけて形成されていても良い。また、各係合部の形状は同一及び/又は相似形であっても良いし、一部が異なっていても良い。勿論、対応する係合部(例えば、受部324側の係合部371a
iと対応する突出部310側の係合部372a
i(i=1,2,・・・,n))は係合可能な形状とする。
【0072】
図17に示す本発明の一実施形態においても、
図16の例と同様に、各係合部は、受部324に対する他の継手部材の突出部310の挿入方向が接合面301に対して傾斜するように形成されていても良いし、各係合部は、他の継手部材の挿入方向に向かって受部324の対向する側壁321a、321bの内面の幅が漸次縮小するように形成しても良い。
【0073】
本発明の一実施形態に係る継手部材は、一体成形で製造しても良いが、複数の構成部材に分割して成形したものを接続及び/又は一体化して製造しても良い。例えば、継手部材を奥行方向の中心線に沿って二分割し、それぞれの部材を成形して接続可能な構成とすることで継手部材を製造しても良い。このようにすれば、例えば、上述した
図16や
図17に示すように受部の内面に係合部を有するような構造であっても比較的容易に成形することができる。或いは、突出部、接続部、受部の各々又は何れかで分割可能となっていても良い。勿論、分割する箇所や個数はこれらの例に限定されない。但し、継手部材として、挿入方向及び/又は接合方向の引張強度(引抜強度)に影響が出ないように分割することが望ましい。又、構成部材を接続する手段は特に限定されず、溶接、接着、締結の何れか、又はこれらの組み合わせによって行うことができる。締結に関しては、ネジ穴が貫通していても良いし貫通していなくても良い。
【0074】
図18(A)、(B)は接合方向の引張強度を向上させた別の変形例を説明する図である。
図18(A)に示すように、継手部材1eの収容部24の挿入方向の長さL1は、突出部10の挿入方向の長さL2よりもやや長くなっている。
図18(B)は収容部24に他の継手部材の突出部10が挿入された状態であるが、収容部24の端面171の幅b5は突出部10の端面172の幅b6よりもやや小さくなっている。
図18(B)では見やすくするためにやや間隔をあけているが、実際には突出部10の端面172の隅角部174が収容部の側面173に確実に当接し、側壁21に食い込むようになっている。そのため、隅角部174と側壁21の係合によって、継手の挿入方向の引張強度(引抜強度)が向上する。
【0075】
図19(A)、(B)は、抜け止め防止機構を備えた変形例を説明する図である。
図19(A)に示すように、継手部材1gの収容部24には、容器181が設けられ、容器181の内部には流体182が収容されている。また、突出部10及び接続部20には一端が収容部24の端面184に開口し、他端が突出部10の端面185に開口して収容部24と空間102bを連通させる流路183も設けられている。
【0076】
図19(B)のように継手部材1fの収容部24に他の継手部材1gの突出部10が挿されると、容器181は破壊され流体182は突出部10により押し出され流路183を通って空間102aに流出する。ここで、流体182は、容器181から流出すると固化するものであり、空間102aは固化した流体182により満たされる。そのため、突出部10は固化した流体182により拘束され挿入方向に引き抜かれることがなくなる。なお、流路183は、一つ以上の孔や穴状及び/又は溝状のものであって、継手部材1fの挿嵌時において、流体182が初期に配置されていた空間、即ちここでは収容部24から流体182が流路183を通じて空間102aに移動するように構成されていればよく、収容部の位置や形状、流体182を収容する容器181の有無や形態、流路183の形態等は適宜設定可能である。例えば、突出部10の挿入方向における前面と背面の両面に亘って連通するように流路を設けることで、継手部材の嵌合時に流体182が流路を通じて初期位置から嵌合後位置に移動するように構成することができる。
【0077】
流出したときに固化する流体としては、例えば、二液性の接着剤のように二種類の流体が混合されることにより固化するもの(この場合、容器181には図示しない仕切りを設け破壊されるまでは二液が混合しないようにする)や、大気に触れることにより固化する流体を挙げることができる。また、空間102aの体積は収容部24の体積よりも大きいことがあるので、流体182は固化するときに膨張したり、発泡したりすることにより体積が増大するものが好ましい。
【0078】
以上、説明してきたように、本発明の本質は、被接合部材のそれぞれに配設されて該被接合部材同士を接合し得る継手部材であって、継手部材は、嵌合部と、嵌合受部と、被接続部材に配設される受部と、該嵌合部と該嵌合受部と該受部を一体又は一体的に保持する連結部を有し、嵌合部は、対を成す他の継手部材の嵌合受部と嵌合し得、嵌合受部は、対を成す他の継手部材の嵌合部と嵌合し得、継手部材を、該継手部材と対を成して接合される他の継手部材に対して、互いの接合方向と異なる方向に変位させることで嵌合をさせ得、嵌合状態においてはこれら該継手部材同士の接合方向の離間を防止するように構成されることを特徴とする。尚、ここでの嵌合部と、嵌合受部は、例えば、上述の突出部と、収容部に読み換えることが可能である。
【0079】
また、本発明の他の実施形態は、上述した一対の継手部材を具え、一方の継手部材は、一方の被接合部材に配設され、他方の継手部材は、一方の被接合部材に配設され、継手部材の嵌合部は、対を成す継手部材の嵌合受部と嵌合し得、嵌合受部は対を成す他の継手部材の嵌合部と嵌合し得るように構成されることを特徴とする継手構造である。
【符号の説明】
【0080】
1~6 継手部材、7,8 継手、10,40 突出部、20,50 受部、23,53 開口部、24,54 収容部、70 アンカー、71 外周補強部材、72 接合面補強部材、100 被接合部材、101 接合面、110 流入防止部材、181 容器、182 流体、183 流路