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特開2022-44606モータ駆動制御装置及び電動アシスト車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044606
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置及び電動アシスト車
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20220310BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
B62M6/45
B60L7/14
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210841
(22)【出願日】2021-12-24
(62)【分割の表示】P 2018000395の分割
【原出願日】2018-01-05
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000112978
【氏名又は名称】ブリヂストンサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103528
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 一男
(72)【発明者】
【氏名】保坂 康夫
(72)【発明者】
【氏名】白川 弘和
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼岡 太一
(72)【発明者】
【氏名】田上 勝
(57)【要約】
【課題】自動回生を行う際にユーザの意図を容易に反映できるようにする。
【解決手段】本発明のモータ駆動制御装置は、(A)電動アシスト車のモータを駆動する駆動部と、(B)自動的に実行される回生である自動回生が機能している状態において、電動アシスト車の運転者が運転中に行う第1の所定操作又は第1の所定走行状態を検出した場合、自動回生の継続的な停止又は抑制を行うように駆動部を制御する制御部とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動アシスト車のモータを動作させる駆動部と、
自動回生を実行すべき条件を満たしており前記自動回生を実行している間に、前記電動アシスト車の運転者が運転中に行う第1の所定操作又は第1の所定走行状態が一度でも検出されるとオンになるフラグがオンを維持していれば、前記自動回生を実行すべき条件を満たしていても前記自動回生の抑制又は停止を行うように前記駆動部を制御する制御部と、
を有するモータ駆動制御装置。
【請求項2】
前記フラグは、前記第1の所定操作又は前記第1の所定走行状態が一度でも検出されるとオンになり、且つ前記第1の所定操作とは異なる第2の所定操作又は前記第1の所定走行状態とは異なる第2の所定走行状態を検出するまでオンが維持されるフラグである
請求項1記載のモータ駆動制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記自動回生を実行すべき条件を満たしていて前記フラグがオンを維持している間は、前記自動回生の抑制又は停止を継続する
請求項1又は2記載のモータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つ記載のモータ駆動制御装置を有する電動アシスト車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動アシスト車の回生制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電動アシスト車の一例である電動アシスト自転車に対して回生制御を利用することで、走行中にモータで発電した電力がバッテリへ蓄電されるので、1回の満充電で走行できる距離を伸ばすことができる。また、回生制御を行うとモータでは制動力が発生するため、下り坂などでは機械ブレーキ以外の方法で減速することができる。
【0003】
回生制御をどのような場合に行うかについては、様々な方法が存在している。例えば、ユーザの操作に応じて動作させる方法や、走行状態に応じて自動的に動作させる方法がある。後者の方法としては、加速度を利用する方法が知られている(例えば特許文献1)。
【0004】
後者の方法によれば、ユーザが操作しなくても自動的に回生が開始するので、これまで回生が行われなかった走行状態においても回生が行われて回生量が増加することが期待される。一方で、ユーザが減速を意図していないときに自動的に回生が開始することで、ユーザに違和感を感じさせることがある。同様に、当初はユーザの減速意図に沿った形で自動的に回生が行われていたとしても、その後意図に反することになる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本特許第5655989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、本発明の目的は、一側面としては、自動回生を行う際にユーザの意図を容易に反映できるようにするための技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るモータ駆動制御装置は、(A)電動アシスト車のモータを駆動する駆動部と、(B)自動的に実行される回生である自動回生が機能している状態において、電動アシスト車の運転者が運転中に行う第1の所定操作又は第1の所定走行状態を検出した場合、自動回生の継続的な停止又は抑制を行うように駆動部を制御する制御部とを有する。
【発明の効果】
【0008】
一側面によれば、自動回生を行う際にユーザの意図を容易に反映できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、電動アシスト自転車の外観を示す図である。
図2図2は、モータ駆動制御装置の構成例を示す図である。
図3図3は、回生制御部の構成例を示す図である。
図4図4は、第1の実施の形態における処理フローを示す図である。
図5図5は、ペダル回転についての条件判定の処理フロー(第1の例)を示す図である。
図6図6は、ペダル回転についての条件判定の処理フロー(第2の例)を示す図である。
図7図7は、第1の実施の形態の動作例を示すタイムチャートを示す図である。
図8図8は、第2の実施の形態における処理フローを示す図である。
図9図9は、第2の実施の形態における処理フローを示す図である。
図10図10は、第2の実施の形態の動作例(トルクを用いる例)を示すタイムチャートを示す図である。
図11図11は、第2の実施の形態の動作例(停車検出を用いる例)を示すタイムチャートを示す図である。
図12図12は、第2の実施の形態の動作例(負の加速度を用いる例)を示すタイムチャートを示す図である。
図13図13は、第3の実施の形態における処理フローを示す図である。
図14図14は、第3の実施の形態の動作例を示すタイムチャートを示す図である。
図15図15は、第3の実施の形態の他の動作例を示すタイムチャートを示す図である。
図16図16は、第4の実施の形態における処理フローを示す図である。
図17図17は、ペダル回転角度による回生係数の調整を説明するための図である。
図18図18は、第4の実施の形態における処理フローを示す図である。
図19図19は、第4の実施の形態の動作例を示すタイムチャートを示す図である。
図20図20は、ペダル回転角度による回生係数の調整の他の例を説明するための図である。
図21図21は、ペダル回転による回生係数の調整の他の例を示すための図である。
図22図22は、ペダル回転と車輪回転とによる回生係数の調整の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、電動アシスト車の一例である電動アシスト自転車の例をもって説明する。しかしながら、本発明の実施の形態は、電動アシスト自転車だけに適用対象を限定するものではなく、人力に応じて移動する移動体(例えば、台車、車いす、昇降機など)の移動を補助するモータなどに対するモータ駆動制御装置についても適用可能である。
【0011】
[実施の形態1]
図1は、本実施の形態における電動アシスト車の一例である電動アシスト自転車の一例を示す外観図である。この電動アシスト自転車1は、モータ駆動装置を搭載している。モータ駆動装置は、バッテリパック101と、モータ駆動制御装置102と、トルクセンサ103と、ペダル回転センサ104と、モータ105と、操作パネル106と、ブレーキセンサ107とを有する。
【0012】
また、電動アシスト自転車1は、前輪、後輪、前照灯、フリーホイール、変速機等も有している。
【0013】
バッテリパック101は、例えばリチウムイオン二次電池であるが、他種の電池、例えばリチウムイオンポリマー二次電池、ニッケル水素蓄電池などであってもよい。そして、バッテリパック101は、モータ駆動制御装置102を介してモータ105に対して電力を供給し、回生時にはモータ駆動制御装置102を介してモータ105からの回生電力によって充電も行う。
【0014】
トルクセンサ103は、クランク軸周辺に設けられており、運転者によるペダルの踏力を検出し、この検出結果をモータ駆動制御装置102に出力する。また、ペダル回転センサ104は、トルクセンサ103と同様に、クランク軸周辺に設けられており、回転に応じた信号をモータ駆動制御装置102に出力する。
【0015】
モータ105は、例えば周知の三相直流ブラシレスモータであり、例えば電動アシスト自転車1の前輪に装着されている。モータ105は、前輪を回転させるとともに、前輪の回転に応じてローターが回転するように、ローターが前輪に連結されている。さらに、モータ105はホール素子等の回転センサを備えてローターの回転情報(すなわちホール信号)をモータ駆動制御装置102に出力する。
【0016】
モータ駆動制御装置102は、モータ105の回転センサ、ブレーキセンサ107、トルクセンサ103及びペダル回転センサ104等からの信号に基づき所定の演算を行って、モータ105の駆動を制御し、モータ105による回生の制御も行う。
【0017】
操作パネル106は、例えばアシストの有無に関する指示入力(すなわち、電源スイッチのオン及びオフ)、アシスト有りの場合には希望アシスト比等の入力をユーザから受け付けて、当該指示入力等をモータ駆動制御装置102に出力する。また、操作パネル106は、モータ駆動制御装置102によって演算された結果である走行距離、走行時間、消費カロリー、回生電力量等のデータを表示する機能を有する場合もある。また、操作パネル106は、LED(Light Emitting Diode)などによる表示部を有している場合もある。これによって、例えばバッテリパック101の充電レベルや、オンオフの状態、希望アシスト比に対応するモードなどを運転者に提示する。
【0018】
ブレーキセンサ107は、運転者のブレーキ操作を検出して、ブレーキ操作に関する信号(例えば、ブレーキの有無を表す信号)をモータ駆動制御装置102に出力する。具体的には、磁石とリードスイッチを用いたセンサである。
【0019】
本実施の形態に係るモータ駆動制御装置102に関連する構成を図2に示す。モータ駆動制御装置102は、制御器1020と、FET(Field Effect Transistor)ブリッジ1030とを有する。FETブリッジ1030は、モータ105のU相についてのスイッチングを行うハイサイドFET(Suh)及びローサイドFET(Sul)と、モータ105のV相についてのスイッチングを行うハイサイドFET(Svh)及びローサイドFET(Svl)と、モータ105のW相についてのスイッチングを行うハイサイドFET(Swh)及びローサイドFET(Swl)とを含む。このFETブリッジ1030は、コンプリメンタリ型スイッチングアンプの一部を構成している。
【0020】
また、制御器1020は、演算部1021と、ペダル回転入力部1022と、モータ回転入力部1024と、可変遅延回路1025と、モータ駆動タイミング生成部1026と、トルク入力部1027と、ブレーキ入力部1028と、AD(Analog-Digital)入力部1029とを有する。
【0021】
演算部1021は、操作パネル106からの入力(例えばアシストのオン/オフなど)、ペダル回転入力部1022からの入力、モータ回転入力部1024からの入力、トルク入力部1027からの入力、ブレーキ入力部1028からの入力、AD入力部1029からの入力を用いて所定の演算を行って、モータ駆動タイミング生成部1026及び可変遅延回路1025に対して出力を行う。なお、演算部1021は、メモリ10211を有しており、メモリ10211は、演算に用いる各種データ及び処理途中のデータ等を格納する。さらに、演算部1021は、プログラムをプロセッサが実行することによって実現される場合もあり、この場合には当該プログラムがメモリ10211に記録されている場合もある。また、メモリ10211は、演算部1021とは別に設けられる場合もある。
【0022】
ペダル回転入力部1022は、ペダル回転センサ104からの、ペダル回転位相角(クランク回転位相角とも呼ぶ。なお、回転方向を表す信号を含む場合もある)を、ディジタル化して演算部1021に出力する。モータ回転入力部1024は、モータ105が出力するホール信号からモータ105の回転(本実施の形態においては前輪の回転)に関する信号(例えば回転位相角、回転方向など)を、ディジタル化して演算部1021に出力する。トルク入力部1027は、トルクセンサ103からの踏力に相当する信号をディジタル化して演算部1021に出力する。ブレーキ入力部1028は、ブレーキセンサ107からのブレーキ有り又は無しを表す信号をディジタル化して演算部1021に出力する。
AD入力部1029は、二次電池からの出力電圧をディジタル化して演算部1021に出力する。
【0023】
演算部1021は、演算結果として進角値を可変遅延回路1025に出力する。可変遅延回路1025は、演算部1021から受け取った進角値に基づきホール信号の位相を調整してモータ駆動タイミング生成部1026に出力する。演算部1021は、演算結果として例えばPWM(Pulse Width Modulation)のデューティー比に相当するPWMコードをモータ駆動タイミング生成部1026に出力する。モータ駆動タイミング生成部1026は、可変遅延回路1025からの調整後のホール信号と演算部1021からのPWMコードとに基づいて、FETブリッジ1030に含まれる各FETに対するスイッチング信号を生成して出力する。演算部1021の演算結果によって、モータ105は、力行駆動される場合もあれば、回生駆動される場合もある。なお、モータ駆動の基本動作については、国際公開公報第WO2012/086459号パンフレット等に記載されており、本実施の形態の主要部ではないので、ここでは説明を省略する。
【0024】
次に、図3に、演算部1021における回生制御部3000についての機能ブロック構成例(本実施の形態に係る部分)を示す。回生制御部3000は、回生抑制処理部3100と、自動回生処理部3200と、制御部3300とを有する。
【0025】
自動回生処理部3200は、自動回生用入力に基づき、自動回生の実施の可否を判定するための処理を実行する。例えば電動アシスト自転車1の加速度(速度の時間変化量)に基づき自動回生の実施の可否を判断する場合には、例えばモータ回転入力部1024からの入力が自動回生用入力であり、当該入力から車速を算出すると共に、当該車速の時間変化量から加速度を算出する。
【0026】
また、ペダル回転と車輪回転との関係に基づき自動回生の実施の可否を判断する場合、より具体的には車速又は車輪回転数とペダル回転換算速度(ペダル回転をギア比等に基づき車速に換算した速度)又はペダル回転数との差又は比などに基づき自動回生の実施の可否を判断する場合には、モータ回転入力部1024からの入力及びペダル回転入力部1022からの入力が、自動回生用入力となる。そして、モータ回転入力部1024からの入力に基づき車速又は車輪回転数を算出し、ペダル回転入力部1022からの入力に基づき、ペダル回転換算速度又はペダル回転数を算出する。なお、これ以外の方針に基づき自動回生の可否を判断する場合には、その方針に従って用いられる入力が自動回生用入力となる。
【0027】
なお、電動アシスト自転車1が停止している状態では自動回生は行わないし、トルク入力部1027からの入力により閾値以上のトルクを検出している状態でも自動回生は行わない。このような場合には、モータ回転入力部1024からの入力により車速が閾値以下の停車状態であるか否かを判断する。また、トルク入力部1027からの入力により閾値以上のトルクを検出したか否かを判断する。
【0028】
様々なケースについて述べたが、自動回生を行うか否かについては、従来技術と同じよ
うに判断してもよい。
【0029】
自動回生処理部3200の出力は、自動回生フラグで表される。すなわち、自動回生フラグがオンにセットされれば、自動回生を行うことが示され、自動回生フラグがオフにセットされれば、自動回生を行わないことが示される。
【0030】
回生抑制処理部3100は、電動アシスト自転車1の運転者(ユーザとも呼ぶ)が運転中に行う第1の所定操作又は第1の所定走行状態に基づき、自動回生の継続的な停止(又は抑制)を行うべき第1の事象を特定するための処理を実行する。この第1の所定操作又は第1の所定走行状態は、回生抑制用入力から特定される。例えばペダル回転角度又はペダル回転換算速度に基づき第1の事象を特定する場合には、回生抑制用入力は、ペダル回転入力部1022からの入力であり、当該入力からペダル回転角度又はペダル回転換算速度等を特定する。また、回生抑制用入力は、自動回生用入力と同じ場合もある。
【0031】
さらに、回生抑制処理部3100は、電動アシスト自転車1の運転者が運転中に行う第2の所定操作又は第2の所定走行状態に基づき、自動回生の継続的な停止(又は抑制)をキャンセルすべき第2の事象を特定するための処理を実行する。この第2の所定操作又は第2の所定走行状態は、抑制キャンセル用入力から特定される。例えば、ブレーキ操作に基づき第2の事象を特定する場合には、ブレーキ入力部1028からの入力が抑制キャンセル用入力であり、当該入力からブレーキ操作の有無を特定する。
【0032】
回生抑制処理部3100の出力は、回生抑制モードフラグで表される。すなわち、回生抑制モードフラグがオンにセットされれば、自動回生の継続的な停止(又は抑制)を行う回生抑制モードであることが表され、回生抑制モードフラグがオフにセットされれば、自動回生の継続的な停止(又は抑制)を行う回生抑制モードではないことが表される。
【0033】
制御部3300は、回生抑制処理部3100及び自動回生処理部3200からの出力と回生用入力とに基づき、回生の有無及び回生量を算出して出力する。本実施の形態では、例えば車速に応じて予め定められた回生目標量を現在の車速から特定して、当該回生目標量に対して回生係数を乗ずることで回生量を算出する例を示す。このような場合、回生用入力は、モータ回転入力部1024からの入力であり、当該入力から車速を算出する。
【0034】
制御部3300は、自動回生フラグと回生抑制モードフラグとに基づき、回生係数を決定する。具体的には、自動回生フラグがオンになると、回生量を徐々に増加させるべく回生係数を漸増させ、上限値に達すると、当該上限値で維持する。そして、回生抑制モードフラグがオンになると、本実施の形態では、回生係数をゼロにする。その後、回生抑制モードフラグがオフになると、自動回生フラグがオンのままであれば、再度回生量を徐々に増加させるべく回生係数を漸増させ、上限値に達すると、当該上限値で維持する。また、回生抑制モードフラグがオフになった時点で自動回生フラグがオフになっていれば、回生係数はゼロのままとなる。
【0035】
なお、回生を行わない場合には、演算部1021は、従来の力行駆動を行うようにFETブリッジ1030を介してモータ105を駆動する。一方、回生を行う場合には、演算部1021は、制御部3300が出力する回生量を実現するように、FETブリッジ1030を介してモータ105を回生駆動する。
【0036】
本実施の形態によれば、例えば下り坂を下る際に、自動回生フラグがオンになって回生が始まった場合でも、回生制動による減速に違和感があって例えば運転者がペダルを漕ぐことで所定角度以上のペダル回転角度が検出されれば、回生抑制モードフラグがオンにセットされ、自動回生の継続的な停止(又は抑制)が始まる。すなわち、回生制動がなくなって減速がなくなる(又は抑制される)。その後、下り坂の勾配が急になったりして、運転者が減速を求める場合にはブレーキ操作を行うことになるので、回生抑制モードフラグがオフにセットされ、自動回生が再開する。そうすると、回生制動が再開されるので自動的な減速がなされるようになり、回生による充電も行われるようになる。
【0037】
このようにすれば、ユーザの意図に反する場面以外は自動回生を行うことでバッテリに対する充電をより長く行うことができるようになる。すなわち、商用電源による充電を極力行わないようにして走行距離を伸ばすことができるようになる。
【0038】
次に、図4乃至図7を用いて図3に示した回生制御部3000の処理内容について説明する。なお、図4の処理は、ステップS1からステップS21を単位時間毎に実行する処理である。
【0039】
まず、回生制御部3000は、自動回生用入力、回生抑制用入力、抑制キャンセル用入力、回生用入力などの各種入力を取得する(図4:ステップS1)。これに応じて、自動回生処理部3200は、自動回生用入力に基づき、自動回生の可否を判断し、自動回生フラグをオン又はオフに設定する。
【0040】
そして、制御部3300は、自動回生処理部3200の出力である自動回生フラグがオンになっているか判断する(ステップS3)。自動回生フラグがオフであれば、制御部3300は、回生係数をゼロに設定する(ステップS4)。そして処理はステップS7に移行する。一方、自動回生フラグがオンになっていれば、制御部3300は、回生係数を所定のルールに従って設定する(ステップS5)。例えば、所定のルールとは、自動回生フラグがオンになったことを検出したタイミングから、回生係数を単位時間毎に所定値ずつ上限値まで増加させるようなルールであっても良いし、予め定められたカーブに沿って回生係数を上限値まで漸増するようなルールであっても良い。場合によっては、直ぐに上限値まで増加させても良い。よって、自動回生フラグがオンになったことを検出したタイミングから、所定のルールに従って特定される現時点の回生係数が、本ステップで設定される。なお、回生係数は、初期的には0であるものとする。
【0041】
その後、回生抑制処理部3100は、回生抑制用入力に基づき第1の事象の一例としてペダル回転が条件を満たしているか判断する(ステップS7)。例えば、所定時間内に所定角度以上のペダル回転が検出されたか否かを判断する。また、ペダル回転角度が第1の閾値以上となった後に所定時間内にさらに第2の閾値以上となったか否かを判断するようにしても良い。
【0042】
前者の条件を満たしたか否かについては、例えば図5に示すような処理にて判断される。図5の処理は、単位時間毎に実行されるが、図4の処理とは別に実行される。
【0043】
回生抑制処理部3100は、回生抑制用入力に基づき、単位時間内のペダル回転角度を取得する(図5:ステップS201)。
【0044】
また、回生抑制処理部3100は、ペダル回転角度を累積して、累積ペダル回転角度を算出する(ステップS205)。なお、ペダルの回転方向を検知できる場合には、例えば、ペダルが正方向(進行方向)に連続して回転しているか否かを判断して、ペダルが負方向(後退方向)に回転していると判断した場合には、ステップS217に移行するようにしてもよい。
【0045】
また、回生抑制処理部3100は、既に時間計測中であるか否かを判断する(ステップS207)。未だ時間計測中ではない場合には、回生抑制処理部3100は、時間計測を開始する(ステップS209)。そして処理はステップS219に移行する。
【0046】
一方、既に時間計測中である場合には、回生抑制処理部3100は、計測時間は閾値以下であるか否かを判断する(ステップS211)。すなわち、ペダル回転角度を累積し始めてから計測時間が所定時間内であるか否かを判断する。
【0047】
計測時間が閾値を超えている場合には、所定時間内に累積ペダル回転角度が閾値以上とならなかったことになるので、処理はステップS217に移行する。一方、計測時間が閾値以下である場合には、自動回生処理部3200は、累積ペダル回転角度が閾値以上であるか否かを判断する(ステップS213)。累積ペダル回転角度が閾値未満である場合には、処理はステップS219に移行する。一方、累積ペダル回転角度が閾値以上である場合には、ペダル回転についての条件を満たしているので、回生抑制処理部3100は、条件充足を設定する(ステップS215)。これによって、図4のステップS7で条件を満たしたと判断することができるようになる。なお、条件充足の設定については、回生抑制モードフラグがオフに設定されると、設定解除にすることが好ましい。
【0048】
そして、回生抑制処理部3100は、時間計測を停止させ、累積ペダル回転角度をゼロに設定するといった初期化を行う(ステップS217)。条件充足後も累積ペダル回転角度を用いる場合には、本ステップで累積ペダル回転角度を初期化しなくても良い場合もある。その後、回生抑制処理部3100は、電源オフなどにより処理終了が指示されたか否かを判断する(ステップS219)。処理終了ではない場合には、処理はステップS201に戻る。処理終了の場合には、処理を終了する。
【0049】
また、上で述べた後者の条件を満たしたか否かについては、例えば図6に示すような処理にて判断される。図6の処理も、単位時間毎に実行され、図4の処理とは別に実行される。
【0050】
回生抑制処理部3100は、回生抑制用入力に基づき、単位時間内のペダル回転角度を取得する(図6:ステップS251)。
【0051】
また、回生抑制処理部3100は、ペダル回転角度を累積して累積ペダル回転角度を算出する(ステップS255)。なお、ペダルの回転方向を検知できる場合には、例えば、ペダルが正方向(進行方向)に連続して回転しているか否かを判断して、ペダルが負方向(後退方向)に回転していると判断した場合には、ステップS269に移行するようにしてもよい。
【0052】
そして、回生抑制処理部3100は、累積ペダル回転角度が第1の閾値(例えば45°)以上となったか否かを判断する(ステップS257)。累積ペダル回転角度が第1の閾値未満である場合には、処理はステップS271に移行する。一方、累積ペダル回転角度が第1の閾値以上になった場合には、回生抑制処理部3100は、既に時間計測中であるか否かを判断する(ステップS259)。未だ時間計測中ではない場合には、回生抑制処理部3100は、時間計測を開始する(ステップS261)。そして処理はステップS271に移行する。
【0053】
一方、既に時間計測中である場合には、回生抑制処理部3100は、計測時間は閾値以下であるか否かを判断する(ステップS263)。すなわち、累積ペダル回転角度が、第1の閾値以上となってから、計測時間が所定時間内であるか否かを判断する。
【0054】
計測時間が閾値を超えている場合には、所定時間内に累積ペダル回転角度が第2の閾値以上とならなかったことになるので、処理はステップS269に移行する。一方、計測時間が閾値以下である場合には、自動回生処理部3200は、累積ペダル回転角度が第2の閾値(例えば90°)以上であるか否かを判断する(ステップS265)。累積ペダル回転角度が第2の閾値未満である場合には、処理はステップS271に移行する。一方、累積ペダル回転角度が第2の閾値以上である場合には、ペダル回転についての条件を満たしているので、回生抑制処理部3100は、条件充足を設定する(ステップS267)。これによって、図4のステップS7で条件を満たしたと判断することができるようになる。
なお、条件充足の設定については、回生抑制モードフラグがオフに設定されると、設定解除にすることが好ましい。
【0055】
そして、回生抑制処理部3100は、時間計測を停止させ、累積ペダル回転角度をゼロに設定するといった初期化を行う(ステップS269)。ステップS217と同様である。その後、回生抑制処理部3100は、電源オフなどにより処理終了が指示されたか否かを判断する(ステップS271)。処理終了ではない場合には、処理はステップS251に戻る。処理終了の場合には、処理を終了する。
【0056】
図4の処理の説明に戻って、ペダル回転が条件を満たしていない場合には、処理はステップS11に移行する。一方、ペダル回転が条件を満たしている場合には、回生抑制処理部3100は、回生抑制モードフラグをオンにセットする(ステップS9)。なお、回生抑制モードフラグは、初期的にはオフにセットされているものとする。
【0057】
また、回生抑制処理部3100は、抑制キャンセル用入力に基づき、第2の事象の一例としてブレーキ入力部1028からの入力がブレーキ操作ありを示しているか否かを判断する(ステップS11)。ブレーキ操作を検出しない場合には、処理はステップS15に移行する。一方、ブレーキ操作が検出されると、回生抑制処理部3100は、回生抑制モードフラグをオフにセットする(ステップS13)。
【0058】
その後、制御部3300は、自動回生フラグ及び回生抑制モードフラグの2つのフラグがオンになっているか否かを判断する(ステップS15)。自動回生フラグ及び回生抑制モードフラグがオンになっている場合には、制御部3300は、回生係数を0に設定する(ステップS17)。すなわち、本実施の形態では、回生は行われない。そして、処理はステップS21に移行する。
【0059】
一方、自動回生フラグがオフになっている場合又は自動回生フラグがオンになっているが回生抑制モードフラグがオフになっている場合、制御部3300は、既に設定されている回生係数に応じた回生量を算出して、当該回生量を実現するように回生制御を実施する(ステップS19)。なお、自動回生フラグがオフになっていれば、回生抑制モードフラグがオンであるかオフであるかを問わず、ステップS4で回生係数がゼロに設定されるので、回生は行われない。
【0060】
このような処理を電源オフなどにより処理終了になるまで繰り返す(ステップS21)。
【0061】
このような処理を行うことで、一旦回生抑制モードフラグがオンになると、回生抑制モードがブレーキ操作ありを検出するまで継続することになる。すなわち、一旦回生抑制モードフラグをオンにするような動作を行えば、その後はペダル回転などの動作を継続させ無くても良いので、運転者の手間が減ぜられている。また、ブレーキ操作を実施するような場面では減速の意図を検知できるので、回生を復活させるべく自動的に回生抑制モードを終了させる。このような場面においても運転者に余分な手間をかけずに、自動回生を行うことで充電量を増加させることができる。
【0062】
図7を用いて、図4の処理の動作例を説明する。図7の(a)は回生係数の時間変化を表し、(b)は自動回生フラグの時間変化を表し、(c)は回生抑制モードフラグの時間変化を表し、(d)はペダル回転角度の時間変化を表し、(e)はブレーキ操作の有無の時間変化(ブレーキセンサ107の状態(ON/OFF)の時間変化)を表す。
【0063】
この例では、自動回生フラグがオンになると、回生係数は漸増して100%に達した後、ペダルが回転し始めて、時刻t1になると累積ペダル回転角度が第1の閾値45°に達成するので、時間計測が開始される。この例では、時刻t1から所定時間Tth(例えば1秒)後の時刻t2には、累積ペダル回転角度が第2の閾値90°に達成するので、回生抑制モードフラグがオンにセットされ、回生抑制モードが開始される。そうすると、回生係数は0に設定され、維持される。なお、この例では、第1の事象発生は、2番目の条件で判断されている。
【0064】
一方、時刻t3になるとブレーキ操作が検出されるので、回生抑制モードフラグがオフにセットされ、回生抑制モードが終了する。そうすると、回生係数は漸増して100%に達する。なお、二度ほどペダル回転角度が第1の閾値45°を超える場面が存在しているが、所定時間Tth内で累積ペダル回転角度が第2の閾値90°に達していないので、これら動作は無視されている。なお、ブレーキ操作は時刻t4で終了しているが、この操作も本実施の形態では無視される。
【0065】
その後、ペダルが回転し始めて、時刻t5になると累積ペダル回転角度が第1の閾値45°に達成するので、時間計測が開始される。この例では、時刻t5から所定時間Tth後の時刻t6には、累積ペダル回転角度が第2の閾値90°に達成するので、回生抑制モードフラグがオンにセットされ、回生抑制モードが開始される。そうすると、回生係数は0に設定され、維持される。
【0066】
しかしながら、回生抑制モード中の時刻t7に、自動回生フラグがオフに設定されるので、回生抑制モードは実質的に無効化される。その後、時刻t8において再度ブレーキ操作が検出されるので、時刻t8で回生抑制モードは終了する。
【0067】
本例では、その後時刻t9でブレーキ操作は終わるが、この操作は本実施の形態では無視される。その後、時刻t10で自動回生フラグが再度オンにセットされると、自動回生フラグはオンにセットされ、回生係数は上限値まで漸増する。
【0068】
上でも述べたように、自動回生が機能している状態において、回生制動による減速が運転者にとって好ましくない場合には、ペダルを漕ぐ操作を行って加速しようとするので、回生抑制モードが開始するようになる。これによって回生制動がなくなるので、減速しないようになる。回生抑制モードが好ましい間は回生抑制モードは維持されるが、減速が必要となりブレーキ操作が行われるようになると、自動回生を復活させて回生制動を行うことが好ましい。よって、回生抑制モードを終了させて、自動回生を再開させる。これによって回生制動による減速が働き、バッテリに対する充電も行われるようになる。
【0069】
全体的に運転者の意図に反しない限り自動回生をできるだけ有効化させ、バッテリに対する充電をより長く行うことができるようになる。
【0070】
なお、回生抑制モードフラグをオンにセットするための第1の事象は、ペダル回転角度についての条件ではなく、ペダル回転換算速度又はペダル回転数が閾値以上であるという条件を満たした場合に検出するようにしても良い。
【0071】
さらに、車速とペダル回転換算速度との差が所定値以下になったことを検出した場合、車速に対するペダル回転換算速度の割合が所定値以上となったことを検出した場合、車輪回転数とペダル回転数との差が所定値以下になったことを検出した場合、車輪回転数に対するペダル回転の割合が所定値以上となったことを検出した場合、第1の事象を検出するようにしても良い。すなわち、ペダル回転換算速度が車速に近づいていくようにペダル操作が行われた場合、ペダル回転数が車輪回転数に近づいていくようにペダル操作が行われた場合に、第1の事象を検出するようにしても良い。
【0072】
[実施の形態2]
第1の実施の形態では、回生抑制モードを終了させて自動回生を再開させる第2の事象発生は、ブレーキ操作の有無に基づき判断されていたが、これに限定されるものではない。
【0073】
本実施の形態では、回生抑制モードを終了させるイベントとして、閾値以上のトルク(ペダルトルクとも呼ぶ)の検出、電動アシスト自転車1(車両と呼ぶこともある)の停車の検出、及び閾値以下の負の加速度の検出をさらに採用する。このようなイベントは、走行状態の変化を示すものであり、回生抑制モードを終了させて、自動回生を実施することが好ましい場面であればできるだけ回生を行って、バッテリの充電を行うようにするものである。
【0074】
本実施の形態における処理フローを図8乃至図12を用いて説明する。なお、図8及び図9の処理は、ステップS1乃至S21を単位時間毎に実行する処理である。なお、図8におけるステップS1乃至S13は、図4におけるステップS1乃至S13と同じであるから、簡単に説明する。
【0075】
まず、回生制御部3000は、自動回生用入力、回生抑制用入力、抑制キャンセル用入力、回生用入力などの各種入力を取得する(図8:ステップS1)。これに応じて、自動回生処理部3200は、自動回生用入力に基づき、自動回生の可否を判断し、自動回生フラグをオン又はオフに設定する。
【0076】
そして、制御部3300は、自動回生処理部3200の出力である自動回生フラグがオンになっているか判断する(ステップS3)。自動回生フラグがオフであれば、制御部3300は、回生係数をゼロに設定する(ステップS4)。一方、自動回生フラグがオンになっていれば、制御部3300は、回生係数を所定のルールに従って設定する(ステップS5)。
【0077】
その後、回生抑制処理部3100は、回生抑制用入力に基づき第1の事象の一例としてペダル回転が条件を満たしているか判断する(ステップS7)。ペダル回転が条件を満たしていない場合には、処理はステップS11に移行する。一方、ペダル回転が条件を満たしている場合には、回生抑制処理部3100は、回生抑制モードフラグをオンにセットする(ステップS9)。
【0078】
また、回生抑制処理部3100は、抑制キャンセル用入力に基づき、第2の事象の一例としてブレーキ入力部1028からの入力がブレーキ操作ありを示しているか否かを判断する(ステップS11)。ブレーキ操作を検出しない場合には、処理は端子Aを介して図9の処理に移行する。一方、ブレーキ操作が検出されると、回生抑制処理部3100は、回生抑制モードフラグをオフにセットする(ステップS13)。そして処理は端子Aを介して図9の処理に移行する。
【0079】
図9の処理の説明に移行して、回生抑制処理部3100は、抑制キャンセル用入力としてトルク入力部1027からの入力に基づき、ペダルを漕ぐことで入力されたトルクが所定の閾値以上であるか否かを判断する(ステップS31)。閾値以上のトルクが検出されるということは、運転者が加速を意図しているので、走行状態が変化したとして回生抑制モードを終了させる。
【0080】
入力されたトルクが所定の閾値未満であれば、処理はステップS35に移行する。一方、入力されたトルクが所定の閾値以上である場合には、回生抑制処理部3100は、回生抑制モードフラグをオフにセットする(ステップS33)。そして処理はステップS35に移行する。
【0081】
また、回生抑制処理部3100は、抑制キャンセル用入力としてモータ回転入力部1024からの入力に基づき、停車したか否かを判断する(ステップS35)。例えば、車速が閾値以下である状態を停車状態と判断する。停車状態も、走行状態の変化として認識して回生抑制モードを終了させる。
【0082】
停車していない場合には、処理はステップS39に移行する。一方、停車していると判断した場合には、回生抑制処理部3100は、回生抑制モードフラグをオフにセットする(ステップS37)。そして処理はステップS39に移行する。
【0083】
さらに、回生抑制処理部3100は、抑制キャンセル用入力としてモータ回転入力部1024からの入力に基づき、負の加速度が閾値以下であるか否かを判断する(ステップS39)。例えば、モータ回転入力部1024から車速を算出し、さらに車速の時間変化として加速度を算出して、負の加速度の絶対値が所定値以上となったか否かを判断する。負の加速度は、例えばブレーキ操作によって発生する。すなわち、ブレーキセンサ107が設けられない場合においても検出可能になる。なお、ブレーキ操作を加速度によって検出するためには、閾値以下の負の加速度が所定時間以上継続した場合に、負の加速度を検出したものとする場合もある。
【0084】
負の加速度が閾値を超えていれば、処理はステップS15に移行する。一方、負の加速度が閾値以下であれば、回生抑制処理部3100は、回生抑制モードフラグをオフにセットする(ステップS41)。そして処理はステップS15に移行する。
【0085】
そうすると、制御部3300は、自動回生フラグ及び回生抑制モードフラグの2つのフラグがオンになっているか否かを判断する(ステップS15)。自動回生フラグ及び回生抑制モードフラグがオンになっている場合には、制御部3300は、回生係数を0に設定する(ステップS17)。すなわち、本実施の形態では、回生は行われない。そして、処理はステップS21に移行する。
【0086】
一方、自動回生フラグがオフになっている場合又は自動回生フラグがオンになっているが回生抑制モードフラグがオフになっている場合、制御部3300は、既に設定されている回生係数に応じた回生量を算出して、当該回生量を実現するように回生制御を実施する(ステップS19)。なお、自動回生フラグがオフになっていれば、回生抑制モードフラグがオンであるかオフであるかを問わず、ステップS4で回生係数がゼロに設定されるので、回生は行われない。
【0087】
このような処理を電源オフなどにより処理終了になるまで繰り返す(ステップS21)。すなわち、処理終了でない場合には、処理は端子Bを介して図8のステップS1に戻る。
【0088】
このようにすれば、走行状態の変化や、運転者の意図に応じて、回生抑制モードを終了させて、回生の機会を増加させることができるようになる。
【0089】
図10を用いて、閾値以上のトルクの検出により回生抑制モードを終了させる例について説明する。
【0090】
図10の(a)は回生係数の時間変化を表し、(b)は自動回生フラグの時間変化を表し、(c)は回生抑制モードフラグの時間変化を表し、(d)はペダル回転角度の時間変化を表し、(e)はトルクの時間変化を表す。
【0091】
この例でも、自動回生フラグがオンになると、回生係数は漸増して100%に達した後、ペダルが回転し始めて、時刻t11になると累積ペダル回転角度が第1の閾値45°に達成するので、時間計測が開始される。この例でも、時刻t11から所定時間Tth後の時刻t12には、累積ペダル回転角度が第2の閾値90°に達成するので、回生抑制モードフラグがオンにセットされ、回生抑制モードが開始される。そうすると、回生係数は0に設定され、維持される。なお、この例でも、第1の事象発生は、2番目の条件で判断されている。
【0092】
一方、時刻t13になると、トルクが増加し始めるので、自動回生フラグがオフにセットされる。その後さらにトルクが増加して時刻t14になると閾値TrqAに達するので、回生抑制モードフラグがオフにセットされて、回生抑制モードが終了する。その後もトルクは増加するが、一転して減少に転じ、時刻t15にはゼロになる。そうすると、条件が満たされれば自動回生フラグがオンに設定されるようになる。
【0093】
このように、回生抑制モードになって回生を継続的に停止するような状態から、ペダルを漕いでトルクを生じさせて加速しようとするような走行状態になれば、回生抑制モードに継続するのは不適切であるから、回生抑制モードを終了させるものである。
【0094】
次に、図11を用いて、停車検出により回生抑制モードを終了させる例について説明する。
【0095】
図11の(a)は回生係数の時間変化を表し、(b)は自動回生フラグの時間変化を表し、(c)は回生抑制モードフラグの時間変化を表し、(d)はペダル回転角度の時間変化を表し、(e)は停車検出の時間変化を表す。
【0096】
この例でも、自動回生フラグがオンになると、回生係数は漸増して100%に達した後、ペダルが回転し始めて、時刻t21になると累積ペダル回転角度が第1の閾値45°に達成するので、時間計測が開始される。この例でも、時刻t21から所定時間Tth後の時刻t22には、累積ペダル回転角度が第2の閾値90°に達成するので、回生抑制モードフラグがオンにセットされ、回生抑制モードが開始される。そうすると、回生係数は0に設定され、維持される。なお、この例でも、第1の事象発生は、2番目の条件で判断されている。
【0097】
一方、時刻t23になると、車速が低下して停車が検出されるようになる。そうすると、自動回生フラグもオフにセットされ、さらに回生抑制モードフラグもオフにセットされて、回生抑制モードが終了する。その後、時刻t24で電動アシスト自転車1が動き出して停車検出が終了するので、条件が満たされれば自動回生フラグがオンに設定されるようになる。
【0098】
このように、回生抑制モードになって回生を継続的に停止するような状態から、停車状態に遷移すれば、次にどのような走行状態に変化するかは不明であるから、回生抑制モードを終了することが好ましい。
【0099】
さらに、図12を用いて、閾値以下の負の加速度の検出により回生抑制モードを終了させる例について説明する。
【0100】
図12の(a)は回生係数の時間変化を表し、(b)は自動回生フラグの時間変化を表し、(c)は回生抑制モードフラグの時間変化を表し、(d)はペダル回転角度の時間変化を表し、(e)は閾値以下の負の加速度検出の時間変化を表す。
【0101】
この例でも、自動回生フラグがオンになると、回生係数は漸増して100%に達した後、ペダルが回転し始めて、時刻t31になると累積ペダル回転角度が第1の閾値45°に達成するので、時間計測が開始される。この例でも、時刻t31から所定時間Tth後の時刻t32には、累積ペダル回転角度が第2の閾値90°に達成するので、回生抑制モードフラグがオンにセットされ、回生抑制モードが開始される。そうすると、回生係数は0に設定され、維持される。なお、この例でも、第1の事象発生は、2番目の条件で判断されている。
【0102】
一方、時刻t33になると、閾値以下の負の加速度を検出されるようになる。そうすると、回生抑制モードフラグがオフにセットされ、回生抑制モードが終了する。この例では、自動回生フラグはオンにセットされたままなので、回生抑制モードが終了すると、回生係数は漸増して100%に達すると、100%が維持される。時刻t34になると、閾値以下の負の加速度の検出がなくなるが、この例ではこのイベントは関係しない。
【0103】
このように、ブレーキ操作に対応する他の現象を検出した場合には、ブレーキ操作の検出と同様に減速を求めていると判断して、回生抑制モードを終了させるものである。
【0104】
このように、回生抑制モードを終了させるのに適切な事象は様々であり、ブレーキ操作と同様の事象を検出したり、走行状態の変化を検出するための他のイベントに応じて、回生抑制モードフラグをオフにセットするようにしても良い。また、回生抑制モードを終了させるイベントの種類をより少数に絞り込んでも良い。すなわち、任意のイベントを1つ選択しても良いし、任意に組み合わせても良い。
【0105】
[実施の形態3]
第1及び第2の実施の形態では、回生抑制モードになると回生係数がゼロに設定されて、回生が全く行われなくなる。しかしながら、回生を停止させるのではなく、一定値以下に抑制するだけでも、運転者の感覚からは同様の効果が得られる場合もある。また、回生を抑制することで、少ないレベルでも回生が継続することでバッテリへの充電が行われて、走行距離の延長につながる場合もある。
【0106】
このため本実施の形態では図13に示すような処理フローを実施する。なお、処理フローの形としては第1の実施の形態についての図4とほぼ同様である。
【0107】
まず、回生制御部3000は、自動回生用入力、回生抑制用入力、抑制キャンセル用入力、回生用入力などの各種入力を取得する(図13:ステップS1)。これに応じて、自動回生処理部3200は、自動回生用入力に基づき、自動回生の可否を判断し、自動回生フラグをオン又はオフに設定する。
【0108】
そして、制御部3300は、自動回生処理部3200の出力である自動回生フラグがオンになっているか判断する(ステップS3)。自動回生フラグがオフであれば、制御部3300は、回生係数をゼロに設定する(ステップS4)。そして処理はステップS7に移行する。一方、自動回生フラグがオンになっていれば、制御部3300は、回生係数を所定のルールに従って設定する(ステップS5)。
【0109】
その後、回生抑制処理部3100は、回生抑制用入力に基づき第1の事象の一例としてペダル回転が条件を満たしているか判断する(ステップS7)。ペダル回転が条件を満たしていない場合には、処理はステップS11に移行する。一方、ペダル回転が条件を満たしている場合には、回生抑制処理部3100は、回生抑制モードフラグをオンにセットする(ステップS9)。
【0110】
また、回生抑制処理部3100は、抑制キャンセル用入力に基づき、第2の事象の一例としてブレーキ入力部1028からの入力がブレーキ操作ありを示しているか否かを判断する(ステップS11)。ブレーキ操作を検出しない場合には、ステップS15に移行する。一方、ブレーキ操作が検出されると、回生抑制処理部3100は、回生抑制モードフラグをオフにセットする(ステップS13)。そして処理はステップS15に移行する。
【0111】
そして、制御部3300は、自動回生フラグ及び回生抑制モードフラグの2つのフラグがオンになっているか否かを判断する(ステップS15)。自動回生フラグ及び回生抑制モードフラグがオンになっている場合には、制御部3300は、回生係数を所定値(例えば10%)に設定して、当該回生係数に応じた回生量を算出して、当該回生量を実現するように回生制御を実施する(ステップS51)。所定値は、上限値(但し、上限値に達する前であれば、直前の値の場合もある)と下限値の間で、その目的に応じて設定する。所定値が10%程度であれば、例えば前照灯を点灯させることができる程度の発電が行われ、運転者によっては回生なしと感じることもある。また、モータ105のバックラッシュによる雑音を抑制できるという副次的な効果がある。なお、より大きな値を採用すれば、バッテリへの充電量を増加させることができるが、運転者には違和感を感じさせることになるので、それらのトレードオフによって調整を行うことが好ましい。そして、処理はステップS21に移行する。
【0112】
一方、自動回生フラグがオフになっている場合又は自動回生フラグがオンになっているが回生抑制モードフラグがオフになっている場合、制御部3300は、既に設定されている回生係数に応じた回生量を算出して、当該回生量を実現するように回生制御を実施する(ステップS19)。なお、自動回生フラグがオフになっていれば、回生抑制モードフラグがオンであるかオフであるかを問わず、ステップS4で回生係数がゼロに設定されるので、回生は行われない。
【0113】
このような処理を電源オフなどにより処理終了になるまで繰り返す(ステップS21)。
【0114】
このようにすれば、回生抑制モードにおいてもバッテリに対する充電を行うことができる。また、モータ105のバックラッシュによる雑音を抑制できるようになる。
【0115】
次に図14を用いて、本実施の形態の処理による動作例を示す。
【0116】
図14の(a)は回生係数の時間変化を表し、(b)は自動回生フラグの時間変化を表し、(c)は回生抑制モードフラグの時間変化を表し、(d)はペダル回転角度の時間変化を表し、(e)はブレーキ操作の有無の時間変化を表す。
【0117】
この例でも、自動回生フラグがオンになると、回生係数は漸増して100%に達した後、ペダルが回転し始めて、時刻t41になると累積ペダル回転角度が第1の閾値45°に達成するので、時間計測が開始される。この例でも、時刻t41から所定時間Tth後の時刻t42には、累積ペダル回転角度が第2の閾値90°に達成するので、回生抑制モードフラグがオンにセットされ、回生抑制モードが開始される。そうすると、回生係数は例えば10%に設定され、維持される。10%は一例であり、上限値より小さく下限値より大きい任意の値を採用しても良い。但し、あまり大きな値を採用すると運転者には違和感を感じさせることになるし、小さすぎるとバックラッシュによる雑音の抑制効果が得られなくなる。なお、この例でも、第1の事象発生は、2番目の条件で判断されている。
【0118】
一方、時刻t43になるとブレーキ操作が検出されるので、回生抑制モードフラグがオフにセットされ、回生抑制モードが終了する。この例では、自動回生フラグはオンにセットされたままなので、回生抑制モードが終了すると、回生係数は漸増して100%に達すると、100%が維持される。なお、二度ほどペダル回転角度が第1の閾値45°を超える場面が存在しているが、所定時間Tth内で累積ペダル回転角度が第2の閾値90°に達していないので、これら動作は無視されている。なお、ブレーキ操作は時刻t44で終了しているが、この操作も本実施の形態では無視される。
【0119】
その後、ペダルが回転し始めて、時刻t45になると累積ペダル回転角度が第1の閾値45°に達成するので、時間計測が開始される。この例では、時刻t45から所定時間Tth後の時刻t46には、累積ペダル回転角度が第2の閾値90°に達成するので、回生抑制モードフラグがオンにセットされ、回生抑制モードが開始される。そうすると、回生係数は例えば10%に設定され、維持される。
【0120】
しかしながら、時刻t47で自動回生フラグがオフにセットされるので、回生係数もゼロにセットされる。その後、時刻t49になると、ブレーキ操作有りが検出されるようになるので、回生抑制モードフラグがオフにセットされ、回生抑制モードが終了する。この例では、既に自動回生フラグがオフにセットされて回生係数もゼロにセットされているので、回生係数は変化しない。その後、ブレーキ操作は時刻t50で終了するが、本例では影響はない。
【0121】
このようにすれば、回生抑制モードで回生係数がゼロにならず、回生がある程度維持されるので、バッテリに対する充電がある程度維持され、モータ105のバックラッシュによる雑音も抑制されるようになる。
【0122】
なお、図14の例では、回生抑制モードフラグがセットされると直ぐに回生係数が所定値にセットされるが、図15に示すように、回生係数を漸減させた後所定値で維持させるようにしても良い。
【0123】
図15は、図14とほぼ同様であるが、時刻t42において回生係数が直ぐに10%に減るのではなく、100%から徐々に減少して10%まで減少すると、10%を維持するように変化するようになっている。このようにすることで、回生制動がなくなることによる加速度変化を和らげるようにすることができる。なお、回生係数を直線的に変化させる例だけではなく、二次関数のような曲線的な変化を行わせるようにしても良い。他の関数で表されるような変化を行わせるようにしても良い。このような時間の関数を用いる場合には、ステップS51で単位時間毎に回生係数を変化させて設定する。
【0124】
図13では、第1の実施の形態と同じようにブレーキ操作ありを検出すると回生抑制モードフラグをオフにセットするようにしているが、第2の実施の形態と同じように他のイベントで回生抑制モードフラグのオフをセットするようにしても良い。
【0125】
[実施の形態4]
第3の実施の形態では、回生抑制モードフラグがオンにセットされると、自動的に回生係数を変化させるようにしていたが、運転者によっては回生の抑制度合いを制御したい場合もある。本実施の形態では、回生の抑制度合いを制御するような場合について説明する。
【0126】
図16乃至図22を用いて本実施の形態に係る処理フローを説明する。第1の実施の形態における処理と同じ部分については同じステップ番号を付している。
【0127】
まず、回生制御部3000は、自動回生用入力、回生抑制用入力、抑制キャンセル用入力、回生用入力などの各種入力を取得する(図16:ステップS1)。これに応じて、自動回生処理部3200は、自動回生用入力に基づき、自動回生の可否を判断し、自動回生フラグをオン又はオフに設定する。
【0128】
そして、制御部3300は、自動回生処理部3200の出力である自動回生フラグがオンになっているか判断する(ステップS3)。自動回生フラグがオフであれば、制御部3300は、回生係数をゼロに設定する(ステップS4)。さらに、本実施の形態では、回生抑制処理部3100は、自動回生処理部3200による自動回生フラグ「オフ」を検出すると、回生抑制モードフラグをオフにセットする(ステップS6)。なお、第1乃至第3の実施の形態でもこのようなタイミングで回生抑制モードフラグをオフにセットしても良い。そして処理はステップS7に移行する。
【0129】
一方、自動回生フラグがオンになっていれば、制御部3300は、回生係数を所定のルールに従って設定する(ステップS5)。ステップS5は、第1の実施の形態において述べたとおりである。
【0130】
その後、回生抑制処理部3100は、回生抑制用入力に基づき第1の事象の一例としてペダル回転が条件を満たしているか判断する(ステップS7)。ペダル回転が条件を満たしていない場合には、処理は端子Cを介して図18の処理に移行する。
【0131】
一方、ペダル回転が条件を満たしている場合には、回生抑制処理部3100は、回生抑制モードフラグがオフに設定されているか否かを判断する(ステップS101)。まだ回生抑制モードフラグがオフであった場合には、回生抑制処理部3100は、回生抑制モードフラグをオンにセットする(ステップS103)。このように回生抑制モードフラグがオンにセットされると、制御部3300は、回生係数を設定するための制御指標の判定基準値に、初期値を設定する(ステップS105)。
【0132】
本実施の形態では、最もわかりやすい例として、ペダル回転角度を回生係数の制御指標として採用する例を最初に述べる。
【0133】
すなわち、第1の実施の形態にように回生抑制モードフラグがオンになるような条件を満たした後、さらにペダル回転を行わせることによってその度合いに応じて回生係数の抑制度合いを調整できるようにする。
【0134】
例えば、図17に示すような形で回生係数の調整を行う。図17の縦軸は回生係数を表し、横軸はペダル回転角度[deg]を表す。図17の例では、ペダル回転角度が90°までは、回生抑制モードフラグがオフのままなので、回生係数は100%のままである。なお、回生抑制モードフラグがオンになった時にまだ回生係数が100%に達していない場合もあるので、その場合には図17における縦軸を調整度として取り扱い、その時点の回生係数×調整度=設定すべき回生係数とすればよい。
【0135】
図17の例では、90°から270°までは線形に回生係数が100%から0%まで減少する。すなわち180°回転させると、回生係数は50%となる。270°を超えても回生係数は0%のままになる。
【0136】
図16の処理の説明に戻って、ステップS105では、ペダル回転角度を回生係数の制御指標として用いる場合には、回生係数を設定するための制御指標の判定基準値に、回生抑制モードフラグがオンになった時点におけるペダル回転角度(上の例では90°)を設定する。
【0137】
そして、制御部3300は、判定基準値に対応する回生係数を設定する(ステップS111)。本ステップでは、例えば図17のような制御指標と回生係数との関係に基づき、制御指標の判定基準値に対応する回生係数を特定して、設定する。図17のような例では、回生抑制モードフラグがオンになった時点では、判定基準値が90°に設定されて、回生係数は100%と設定される。そして処理は、端子Cを介して図18の処理に移行する。
【0138】
一方、ステップS101で回生抑制モードフラグが既にオンになっていると判定されると、制御部3300は、所定の判定条件を満たしているか判断する(ステップS107)。所定の判定条件は、制御指標がペダル回転角度である場合には、現在のペダル回転角度(図5及び図6の例では、累積ペダル回転角度)が判定基準値を超えている、という条件となる。すなわち、よりペダルを回転させる意図があるのか否かを判断している。なお、トルクが所定値未満という条件が付されることもある。この条件は自動回生フラグのオンオフ判定基準になることもあり、その場合にはステップS107では判断しない。
【0139】
制御部3300は、所定の判定条件が満たされていない場合には、処理は端子Cを介して図18の処理に移行する。一方、所定の条件が満たされている場合には、制御部3300は、判定基準値を更新する(ステップS109)。例えば、ペダル回転角度が135°になっていれば、135°を判定基準値に設定する。そして、処理はステップS111に移行する。すなわち、ステップS109を経由してステップS111に至った場合には、その時点の判定基準値に対応する回生係数を設定することになる。判定基準値が135°であれば、図17の例であれば回生係数「75%」が設定されることになる。
【0140】
端子Cの後の図18の説明に移行して、回生抑制処理部3100は、抑制キャンセル用入力に基づき、第2の事象の一例としてブレーキ入力部1028からの入力がブレーキ操作ありを示しているか否かを判断する(ステップS11)。ブレーキ操作を検出しない場合には、ステップS113に移行する。一方、ブレーキ操作が検出されると、回生抑制処理部3100は、回生抑制モードフラグをオフにセットする(ステップS13)。なお、第2の事象については第2の実施の形態で述べたように変形しても良い。そして処理はステップS113に移行する。
【0141】
そして、制御部3300は、既に設定されている回生係数に応じた回生量を算出して、当該回生量を実現するように回生制御を実施する(ステップS113)。
【0142】
このような処理を電源オフなどにより処理終了になるまで繰り返す(ステップS21)。すなわち、処理終了でなければ、処理は端子Dを介して図16のステップS1に戻る。
【0143】
このような処理を実行することで、回生抑制モードにおいて、回生係数の抑制度合いを、ユーザが意図的に調整できるようになる。
【0144】
次に図19を用いて、本実施の形態の処理による動作例を示す。
【0145】
図19の(a)は回生係数の時間変化を表し、(b)は自動回生フラグの時間変化を表し、(c)は回生抑制モードフラグの時間変化を表し、(d)はペダル回転角度の時間変化を表し、(e)はブレーキ操作の有無の時間変化を表す。
【0146】
この例でも、自動回生フラグがオンになると、回生係数は漸増して100%に達した後、ペダルが回転し始めて、時刻t51になると累積ペダル回転角度が第1の閾値45°に達成するので、時間計測が開始される。この例でも、時刻t51から所定時間Tth後の時刻t52には、累積ペダル回転角度が第2の閾値90°に達成するので、回生抑制モードフラグがオンにセットされ、回生抑制モードが開始される。
【0147】
本実施の形態では、さらにユーザは同じペースでペダル回転を継続して時刻t53までに180°まで回転させる。これに応じて、図17に示したように、回生係数は50%まで減少する。時刻t53から時刻t54までは、ペダル回転角度180°を維持しているので、回生係数も50%で維持される。
【0148】
その後、時刻t54になるとブレーキ操作が検出されるので、回生抑制モードフラグがオフにセットされ、回生抑制モードが終了する。この例では、自動回生フラグはオンにセットされたままなので、回生抑制モードが終了すると、回生係数は50%から漸増して100%に達すると、100%が維持される。なお、二度ほどペダル回転角度が第1の閾値45°を超える場面が存在しているが、所定時間Tth内で累積ペダル回転角度が第2の閾値90°に達していないので、これら動作は無視されている。なお、ブレーキ操作は時刻t55で終了しているが、この操作も本実施の形態では無視される。
【0149】
本実施の形態では、このように回生抑制モードにおける抑制度合いを、ユーザの意図どおりに設定できる。
【0150】
なお、図17は一例であって、図17のように回生係数を線形的に変化させるだけではなく、他のカーブに従って回生係数を変化させるようにしても良い。
【0151】
図20に、制御指標をペダル回転角度とする場合の他の例を示している。図20において、縦軸は回生係数を表し、横軸はペダル回転角度を表す。
【0152】
点線の直線aは図17の直線と同じである。実線bは、放物線のようなカーブを表しており、90°を超えて直ぐの部分ではあまり回生係数は変化しないが、90°から離れると変化度合いが大きくなる例である。すなわち、回生抑制モードになった後、少しのペダル回転ではあまり回生係数は変化しないが、大きく回転させれば急激に回生係数が変化する。例えば、意図せずペダルを90°程度回転させても回生係数は変化しないが、90°を大きく超えた場合には、ユーザの明確な意図があると判断して回生係数を大きく変化させるものである。なお、実線bのように滑らかなカーブではなく、複数の直線を組み合わせて類似の効果を得るようにしても良い。
【0153】
また、実線cは、3次関数のようなカーブを表しており、例えば180°までの第1段階の制御と、180°から270°までの第2段階の制御とを可能にするものである。すなわち、第1段階の制御では、回生抑制モードになると、ペダル回転に応じて急激に回生係数が減少するが、ペダル回転角度が180°に近づくとほぼ変化しなくなる。一方、第2段階の制御は、実線bと同じような形である。この場合、回生抑制モードに入った後、大きくペダルを回転させなくても、回生係数は比較的容易に50%近くまで減少するので、ユーザは回生制動の減少を体感しやすくなる。一方、もっと回生制動の減少を欲するユーザはさらにペダル回転を行うことで回生制動の減少度合いを制御できる。この例でも、複数の直線の組み合わせで類似の効果を得るようにしても良い。
【0154】
図17及び図20の数値は一例に過ぎず他の値を採用しても良い。またカーブの形も様々に設定できる。
【0155】
また、制御指標には、ペダル回転換算速度(又はペダル回転数)を採用するようにしても良い。この場合、ステップS107における所定の判定条件は、現在のペダル回転換算速度が、判定基準値を超えている、という条件となる。すなわち、より早くペダルを回転させるようになったかを判断する。
【0156】
このような場合、図21に示すような、制御指標であるペダル回転換算速度[km/h]と回生係数[%]との関係を採用するようにしても良い。
【0157】
図21の縦軸は回生係数を表し、横軸はペダル回転換算速度を表す。図21の例では、ステップS105で設定される初期値として、回生抑制モードフラグがオンになった時のペダル回転換算速度が判定基準値に設定され、判定基準値が初期値の場合に回生係数を100%とする。回生抑制モードフラグがオンになった後ペダル回転換算速度が増加すれば、その増加分に応じて回生係数が減少する。図21の例では、直線dは、ペダル回転換算速度が閾値Vthになるまで、回生係数が100%から50%まで線形に減少する例を示しており、直線eは、回生係数が100%から0%まで線形に減少する例を示している。
直線ではなく任意のカーブにて回生係数を減少させるようにしても良い。
【0158】
また、制御指標には、ΔV=車輪回転数-ペダル回転数[rpm]を採用するようにしても良い。この場合、ステップS107における所定の判定条件は、現在のΔVが、判定基準値未満である、という条件となる。すなわち、ペダル回転数を増加させて車輪回転数により近づいているかを判断する。
【0159】
このような場合、図22に示すような、制御指標であるΔV[rpm]と回生係数[%]との関係を採用するようにしても良い。
【0160】
図22の縦軸は回生係数を表し、横軸はΔVを表す。図22の例では、ステップS105で設定される初期値として、回生抑制モードフラグがオンになった時のΔVが判定基準値に設定され、判定基準値が初期値の場合に回生係数を100%とする。回生抑制モードフラグがオンになった後ΔVが減少すれば、その減少分に応じて回生係数が減少する。図22の例では、直線fは、ΔVが閾値ΔVthになるまで、回生係数が100%から50%まで線形に減少する例を示しており、直線gは、回生係数が100%から0%まで線形に減少する例を示している。直線ではなく任意のカーブにて回生係数を減少させるようにしても良い。
【0161】
第1の実施の形態において、第1の事象を検出する条件として、車輪回転とペダル回転との関係に基づく指標を述べているが、それらを本実施の形態における制御指標に用いることができる。なお、回生抑制モードフラグをオンにするか否かを判定する指標と、異なる種類の指標を制御指標として採用しても良い。
【0162】
以上本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、目的に応じて、上で述べた各実施の形態における任意の技術的特徴を削除するようにしても良いし、他の実施の形態で述べた任意の技術的特徴を追加するようにしても良い。
【0163】
さらに、上で述べた機能ブロック図は一例であって、1の機能ブロックを複数の機能ブロックに分けても良いし、複数の機能ブロックを1つの機能ブロックに統合しても良い。
処理フローについても、処理内容が変わらない限り、ステップの順番を入れ替えたり、複数のステップを並列に実行するようにしても良い。
【0164】
演算部1021は、一部又は全部を専用の回路にて実装しても良いし、予め用意したプログラムを実行することで、上で述べたような機能を実現させるようにしても良い。
【0165】
センサの種類も上で述べた例は一例であり、上で述べたパラメータを得られるような他のセンサを用いるようにしても良い。
【0166】
以上述べた実施の形態をまとめると以下のようになる。
【0167】
本実施の形態に係るモータ駆動制御装置は、(A)電動アシスト車のモータを駆動する駆動部と、(B)自動的に実行される回生である自動回生が機能している状態において、電動アシスト車の運転者が運転中に行う第1の所定操作又は第1の所定走行状態を検出した場合、自動回生の継続的な停止又は抑制を行うように駆動部を制御する制御部とを有する。
【0168】
これによって自動回生を行う際にユーザの意図を容易に反映できる。より具体的には、自動回生が機能している場合は、回生制動が自動的に発生するが、運転者にとって回生制動が不要な場合もあるので、第1の所定操作又は第1の所定走行状態によって、自動回生の継続的な停止又は抑制の意図を検出して、その意図に沿った制御を行うものである。
【0169】
また、上で述べた制御部は、自動回生の継続的な停止又は抑制を行っている状態において、運転者が運転中に行う第2の所定操作又は第2の所定走行状態を検出した場合、自動回生の継続的な停止又は抑制をキャンセルするようにしても良い。
【0170】
一度自動回生の継続的な停止又は抑制を行ったとしても、再度自動回生を行うようにすべき事象を、第2の所定操作又は第2の所定走行状態で検出することで、より運転者の意図を反映できるようにするものである。
【0171】
なお、上で述べた制御部は、第3の所定操作又は第3の所定走行状態を検出した場合に、自動回生を機能させる状態を特定するようにしても良い。自動回生を機能させる状態については、様々な操作や走行状態から特定できる。例えば第3の所定操作は、ユーザによる回生指示の場合もある。また、第3の所定走行状態は、第1の所定走行状態と同一種類の指標にて判断しても良いし、加速度等に基づき判断しても良い。
【0172】
また、上で述べた自動回生の継続的な抑制は、(b1)継続的な抑制の直前のレベル又は自動回生の最大レベルより低いレベルで回生すること、及び(b2)継続的な抑制の直前のレベル又は自動回生の最大レベルから漸減させて回生することのいずれかであってもよい。自動回生を停止させるだけではなく、抑制させる場合には、様々な態様が可能である。なお、抑制の度合いを低くすれば、その分回生が継続することになるので、充電量が増加する。また、所定レベル以上の回生を行っていれば、モータのバックラッシュによる雑音抑制の効果もある。さらに、漸減の態様も任意のカーブに定められる。
【0173】
さらに、上で述べた自動回生の継続的な抑制は、継続的な抑制の直前のレベル又は自動回生の最大レベルから、第4の所定操作の量を表す指標値又は第4の所定走行状態を表す指標値の関数に応じて減少させて回生することであってもよい。このように運転者の意図に応じた抑制度合いを設定できるようになる。なお、自動回生の停止又は抑制の開始条件と、回生レベルの制御とを異なる指標に基づき行うようにしても良い。
【0174】
また、上記関数には、指標値の変化に応じて関数の出力値が変化しない又は微変動する指標値の範囲が存在するようにしても良い。これによって例えば運転者の意図しない操作に遊びを設けることができるようになる。
【0175】
また、上で述べた第1の所定操作又は第1の所定走行状態は、所定角度以上のペダル回転と、所定速度以上のペダル回転換算速度と、所定数以上のペダル回転数と、車輪回転とペダル回転との関係が所定の状態になることとのいずれかである場合もある。所定の状態とは、例えば車輪回転にペダル回転が近づくことであり、それを判断するための指標は様々である。
【0176】
さらに、上で述べた第2の所定操作又は第2の所定走行状態は、ブレーキ操作と、所定速度以下での走行と、負の加速度の発生と、所定値以上の入力トルクの発生とのいずれかである場合もある。このような場合には、走行状態が変化したことが明らかであるから、自動回生の停止又は抑制をキャンセルすることが好ましいからである。
【0177】
このような構成は、実施の形態に述べられた事項に限定されるものではなく、実質的に同一の効果を奏する他の構成にて実施される場合もある。
【符号の説明】
【0178】
3000 回生制御部
3100 回生抑制処理部
3200 自動回生処理部
3300 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22