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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044607
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】光検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/42 20060101AFI20220310BHJP
   H01L 31/107 20060101ALI20220310BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20220310BHJP
   G01J 1/02 20060101ALI20220310BHJP
   G01J 1/44 20060101ALI20220310BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
G01J1/42 H
H01L31/10 B
H01L31/10 G
G01J1/02 Q
G01J1/44 P
H01L27/146 F
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210937
(22)【出願日】2021-12-24
(62)【分割の表示】P 2018550255の分割
【原出願日】2017-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2016220785
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆
(72)【発明者】
【氏名】足立 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中村 重幸
(72)【発明者】
【氏名】永野 輝昌
(72)【発明者】
【氏名】山本 晃永
(57)【要約】
【課題】一次元配列されている複数の画素を用いて、微弱光を高精度に省電力で検出可能な光検出装置を提供する。
【解決手段】光検出装置は、複数の画素が一次元のみに配列されている半導体基板を備え、画素毎に、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオード、複数のクエンチング抵抗、複数のクエンチング抵抗が電気的に接続されている電極、及び信号処理部を有する。画素毎の電極は、複数の画素が一次元のみに配列されている領域の外側に配置されている。各信号処理部は、ゲート接地回路と、ゲート接地回路に電気的に接続されているカレントミラー回路とを有する。ゲート接地回路には、複数のクエンチング抵抗を通して、対応する画素の複数のアバランシェフォトダイオードが電気的に接続されている。カレントミラー回路は、複数のアバランシェフォトダイオードからの出力信号に対応する信号を出力する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出装置であって、
互いに対向する第一主面及び第二主面を有していると共に複数の画素が一次元のみに配列されている半導体基板を備え、
前記画素毎に、
前記半導体基板の前記第一主面側に設けられた受光領域をそれぞれ有していると共に、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードと、
前記半導体基板の前記第一主面側に配置されていると共に、対応する前記アバランシェフォトダイオードに電気的に直列接続されている複数のクエンチング抵抗と、
前記複数のクエンチング抵抗が電気的に接続されている電極と、
前記複数のアバランシェフォトダイオードからの出力信号を処理する信号処理部と、を有し、
前記複数のアバランシェフォトダイオードの前記受光領域は、前記画素毎に、二次元配列されており、
前記画素毎に有する前記電極は、前記複数の画素が一次元のみに配列されている領域の外側に配置されており、
各前記信号処理部は、
前記複数のクエンチング抵抗を通して、対応する前記画素の前記複数のアバランシェフォトダイオードが電気的に接続されているゲート接地回路と、
対応する前記ゲート接地回路に電気的に接続されていると共に前記複数のアバランシェフォトダイオードからの出力信号に対応する信号を出力するカレントミラー回路と、を有している。
【請求項2】
請求項1に記載の光検出装置であって、
前記半導体基板と分離している回路基板を備え、
前記信号処理部は、前記回路基板に配置されている。
【請求項3】
請求項2に記載の光検出装置であって、
前記半導体基板を有する半導体光検出素子を備え、
前記半導体光検出素子は、前記第二主面と前記回路基板とが対向するように前記回路基板に搭載されていると共に、前記画素毎に、前記半導体基板を厚み方向に貫通している貫通電極を有し、
前記貫通電極は、前記画素毎に有する前記電極を通して、対応する前記複数のクエンチング抵抗に電気的に接続されており、
各前記信号処理部の前記ゲート接地回路は、対応する前記貫通電極を通して前記複数のアバランシェフォトダイオードと電気的に接続されている。
【請求項4】
請求項3に記載の光検出装置であって、
前記画素毎に有する前記電極は、前記複数の画素が一次元のみに配列されている前記領域に沿って一次元のみに配列されており、
前記半導体光検出素子が前記画素毎に有している前記貫通電極は、前記複数の画素が一次元のみに配列されている前記領域に沿って一次元のみに配列されている。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の光検出装置であって、
前記画素毎に有する前記電極は、前記複数の画素が一次元のみに配列されている前記領域に沿って一次元のみに配列されている。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の光検出装置であって、
各前記信号処理部は、一次元のみに配列されている。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の光検出装置であって、
各前記信号処理部は、前記カレントミラー回路からの出力信号が入力されるコンパレータを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに対向する第一主面及び第二主面を含むと共に1つの画素が配置されている半導体基板を備えている光検出装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。この光検出装置は、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードと、対応するアバランシェフォトダイオードに電気的に直列接続されている複数のクエンチング抵抗と、複数のアバランシェフォトダイオードからの出力信号を処理する信号処理部とを備えている。複数のアバランシェフォトダイオードは、半導体基板の第一主面側に設けられた受光領域をそれぞれ有している。複数のクエンチング抵抗は、半導体基板の第一主面側に配置されている。複数のアバランシェフォトダイオードの受光領域は、二次元配列されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-007693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一態様は、一次元配列されている複数の画素を備え、高精度かつ省電力で微弱光を検出する光検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、調査研究の結果、以下のような事実を新たに見出した。
【0006】
各アバランシェフォトダイオードが光検出装置の後段回路に電気的に直接接続される場合、後段回路が有する受動素子に起因して、光検出装置の出力パルスが劣化する。そこで、後段回路の前段に、オペアンプ回路を含む信号処理部(フロントエンド回路)が電気的に接続される。各アバランシェフォトダイオードからの信号は、フロントエンド回路である信号処理部を通して、後段回路に出力される。この場合、各アバランシェフォトダイオードからの出力信号のパルス波形は後段回路へ伝達される。
【0007】
フロントエンド回路がオペアンプ回路を含んでいる場合、以下の問題点が生じるおそれがある。オペアンプ回路の応答速度が遅い場合、オペアンプ回路の応答速度が速い場合に比して、オペアンプ回路に入力されたパルス信号の波形、特に、パルス信号の立ち上がりの急峻さを後段回路に正確に伝達し難い。オペアンプ回路の応答速度を速くするためには、オペアンプ回路は、ゲインの低下又は供給電力の増加を余儀なくされる。
【0008】
オペアンプ回路のゲインが低い場合、光検出装置からの出力信号のパルス波高値が小さくなり、微弱光の検出精度が悪化するおそれがある。そこで、オペアンプ回路のゲイン及び応答速度を所望の値とするために、オペアンプ回路への供給電力が大きくされる。オペアンプ回路への供給電力が大きい場合、オペアンプ回路での消費電力も大きい。光検出装置が一次元配列されている複数の画素を備え、画素毎にオペアンプ回路が電気的に接続されている場合、装置全体での消費電力が膨大となる。
【0009】
本発明者らは、以下の構成を有する光検出装置を見出すに至った。光検出装置は、画素毎に、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードと、複数のアバランシェフォトダイオードからの出力信号を処理する信号処理部とを有する。各信号処理部が、対応する複数のアバランシェフォトダイオードが電気的に接続されているゲート接地回路と、ゲート接地回路に電気的に接続されているカレントミラー回路とを有する。
【0010】
一般に、ゲート接地回路の入力インピーダンスは、ゲート接地回路以外の読み出し回路の入力インピーダンスに比べて低い。したがって、ゲート接地回路は、ガイガーモードで動作する各アバランシェフォトダイオードからの出力信号の立ち上がりの急峻さをカレントミラー回路に正確に伝達する。カレントミラー回路は、オペアンプ回路に比して、省電力であり、かつ、応答速度が速く、入力信号の情報を正確に伝達する。入力信号の情報は、たとえば、信号波形を含む。
【0011】
ゲート接地回路とカレントミラー回路とを有する各信号処理部は、アバランシェフォトダイオードからの出力信号の立ち上がりの急峻さをより一層正確に、かつ、省電力で伝達する。したがって、本発明者らが見出した光検出装置は、一次元配列されている複数の画素を備え、高精度かつ省電力で微弱光を検出する。
【0012】
本発明の一態様は、光検出装置であって、互いに対向する第一主面及び第二主面を有していると共に複数の画素が一次元配列されている半導体基板を備えている。光検出装置は、画素毎に、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードと、複数のクエンチング抵抗と、信号処理部と、を有している。複数のアバランシェフォトダイオードは、半導体基板の第一主面側に設けられた受光領域をそれぞれ有している。複数のクエンチング抵抗は、半導体基板の第一主面側に配置されていると共に、対応するアバランシェフォトダイオードに電気的に直列接続されている。信号処理部は、複数のアバランシェフォトダイオードからの出力信号を処理する。複数のアバランシェフォトダイオードの受光領域は、画素毎に、二次元配列されている。各信号処理部は、ゲート接地回路と、カレントミラー回路とを有している。ゲート接地回路は、複数のクエンチング抵抗を通して、対応する画素の複数のアバランシェフォトダイオードが電気的に接続されている。カレントミラー回路は、対応するゲート接地回路に電気的に接続されていると共に、複数のアバランシェフォトダイオードからの出力信号に対応する信号を出力する。
【0013】
本一態様に係る光検出装置では、各信号処理部が、ゲート接地回路とカレントミラー回路とを有している。したがって、各信号処理部は、アバランシェフォトダイオードからの出力信号の立ち上がりの急峻さを正確に、かつ、省電力で伝達する。したがって、本一態様に係る光検出装置では、一次元配列されている複数の画素が、高精度かつ省電力で微弱光を検出する。
【0014】
本一態様に係る光検出装置では、各信号処理部が、カレントミラー回路からの出力信号が入力されるコンパレータを有していてもよい。この場合、所望のパルス波高を有する信号がコンパレータに入力された信号から検出される。
【0015】
本一態様に係る光検出装置は、半導体基板と分離している回路基板を備えていてもよい。信号処理部は、回路基板に配置されていてもよい。半導体基板と回路基板とが分離している場合、半導体基板と回路基板とは、それぞれに適したプロセスで製造され得る。したがって、各基板の特性及び歩留まりの向上が両立する。
【0016】
本一態様に係る光検出装置は、半導体基板を有する半導体光検出素子を備えていてもよい。半導体光検出素子は、第二主面と回路基板とが対向するように回路基板に搭載されていてもよく、画素毎に、半導体基板を厚み方向に貫通している貫通電極を有していてもよい。貫通電極は、対応する複数のクエンチング抵抗に電気的に接続されていてもよい。各信号処理部のゲート接地回路は、対応する貫通電極を通して複数のアバランシェフォトダイオードと電気的に接続されていてもよい。この場合、複数のアバランシェフォトダイオードは、貫通電極を通して、搭載基板に配置されている信号処理部に電気的に接続される。本態様は、複数のアバランシェフォトダイオードがボンディングワイヤを通して信号処理部に電気的に接続されている構成に比して、寄生インダクタンス及び寄生容量を低減すると共に時間応答性を向上させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様は、一次元配列されている複数の画素を備え、高精度かつ省電力で微弱光を検出する光検出装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、一実施形態に係る光検出装置を示す概略斜視図である。
図2図2は、光検出装置の分解斜視図である。
図3図3は、半導体光検出素子の概略平面図である。
図4図4は、半導体光検出素子の概略拡大図である。
図5図5は、半導体光検出素子の断面構成を示す図である。
図6図6は、光検出装置の回路図である。
図7図7は、本実施形態の変形例に係る光検出装置の回路図である。
図8図8は、本実施形態の変形例に係る半導体光検出素子の概略平面図である。
図9図9は、搭載基板の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態に係る光検出装置の構成を説明する。図1は、本実施形態に係る光検出装置を示す概略斜視図である。図2は、図1に示された光検出装置の分解斜視図である。
【0021】
光検出装置1は、図1及び図2に示されるように、半導体光検出素子10、搭載基板20、及びガラス基板30を備えている。搭載基板20は、半導体光検出素子10と対向している。ガラス基板30は、半導体光検出素子10と対向している。半導体光検出素子10は、搭載基板20とガラス基板30との間に配置されている。本実施形態では、半導体光検出素子10、搭載基板20、及びガラス基板30の各主面と平行な面がXY軸平面であると共に、各主面に直交する方向がZ軸方向である。
【0022】
半導体光検出素子10は、平面視で矩形形状を呈している半導体基板50を有している。半導体基板50は、Siからなり、N型の半導体基板である。半導体基板50は、互いに対向する主面1Naと主面1Nbとを有している。N型は、第一導電型の一例である。第二導電型の一例は、P型である。
【0023】
図2に示されるように、半導体光検出素子10は、複数の画素Uと、複数の貫通電極TEとを有している。複数の画素Uは、半導体基板50にY軸方向に一次元配列されている。複数の貫通電極TEは、複数の画素Uの列に沿って、半導体基板50にY軸方向に一次元配列されている。光検出装置1は、複数の画素Uで検出された光に対応する信号を出力する。本実施形態では、画素Uの数は、8~32である。画素U間のピッチWUは、10~500μmである。
【0024】
ガラス基板30は、互いに対向する主面30aと主面30bとを有している。ガラス基板30は、平面視で矩形形状を呈している。主面30bは、半導体基板50の主面1Naと対向している。主面30a及び主面30bは、平坦である。ガラス基板30と半導体光検出素子10とは、光学接着剤OAにより光学的に接続されている。ガラス基板30は、半導体光検出素子10上に直接形成されていてもよい。
【0025】
搭載基板20は、互いに対向する主面20aと主面20bとを有している。搭載基板20は、平面視で矩形形状を呈している。半導体光検出素子10は、搭載基板20に搭載されている。主面20aと主面1Nbとが対向している。
【0026】
搭載基板20は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)を構成している。搭載基板20は、図2に示されるように、複数の信号処理部SPを有している。複数の信号処理部SPは、搭載基板20の主面20a側に一次元配列されている。各信号処理部SPは、貫通電極TEに対応して配置されている電極を有している。各電極は、バンプ電極BEを通して、対応する貫通電極TEに電気的に接続されている。
【0027】
搭載基板20の側面20cは、半導体基板50の側面1Nc及びガラス基板30の側面30cよりもXY軸平面方向の外側に位置している。すなわち、平面視で、搭載基板20の面積は、半導体基板50及びガラス基板30の各面積よりも大きい。半導体基板50の側面1Ncとガラス基板30の側面30cと搭載基板20の側面20cは、面一とされてもよい。この場合、平面視で、半導体基板50の外縁と、ガラス基板30の外縁と、搭載基板20の外縁は、一致する。
【0028】
次に、図3及び図4を参照して、半導体光検出素子10の構成を説明する。図3は、主面1Naに直交する方向(Z軸方向)から半導体光検出素子10を見た図である。図3では、絶縁層L4(図6参照)の図示が省略されている。図4は、一つの画素Uと当該画素Uの近傍とを示している。
【0029】
半導体光検出素子10は、画素U毎に、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードAPDと、複数のクエンチング抵抗21と、貫通電極TEとを有している。貫通電極TEは、半導体基板50を厚み方向(Z軸方向)に貫通している。
【0030】
複数のアバランシェフォトダイオードAPDは、半導体基板50に二次元配列されている。各アバランシェフォトダイオードAPDは、受光領域Sを有している。受光領域Sは、半導体基板50の主面1Na側に設けられている。図4に示されるように、半導体光検出素子10では、各画素Uが複数の受光領域Sを含んでいる。複数の受光領域Sは、各画素Uで、二次元配列されている。1つの画素U内での受光領域SのピッチWSは、行方向及び列方向において、10~50μmである。受光領域S1は、入射光に応じて電荷が発生する電荷発生領域(光感応領域)である。すなわち、受光領域S1は、光検出領域である。
【0031】
図4に示されるように、各受光領域Sは、Z軸方向から見て矩形形状を呈している。半導体基板50には、溝13が、Z軸方向から見て各受光領域Sの全周を囲むように形成されている。溝13によって囲まれた領域は、受光領域Sと同様に、Z軸方向から見て矩形形状を呈している。
【0032】
半導体光検出素子10は、画素U毎に、複数の電極E1と、電極E2と、電極E3とを有している。各電極E1は、対応する受光領域Sに接続されている。電極E1は、半導体基板50の主面1Na側に配置されており、受光領域Sの外側に延在している。電極E1は、クエンチング抵抗21に接続されている。電極E1は、互いに対応する受光領域Sとクエンチング抵抗21とを接続している。電極E1は、受光領域Sに接続される端部と、クエンチング抵抗21に接続される端部とを有している。
【0033】
クエンチング抵抗21は、パッシブクエンチング回路を構成している。各クエンチング抵抗21は、半導体基板50の主面1Na側に配置されている。各クエンチング抵抗21は、電極E1を通して、対応するアバランシェフォトダイオードAPDの受光領域Sと電気的に直列接続されている。クエンチング抵抗21は、受光領域Sの外縁に沿って延在している。クエンチング抵抗21は、電極E1と電極E2に接続されている。電極E1に接続される端部と、電極E2に接続される端部とを有している。
【0034】
電極E2は、Z軸方向から見て1つの画素Uに含まれる複数の受光領域Sの間を通るように、格子状に設けられている。受光領域S及び溝13は、Z軸方向から見て、電極E2に囲まれている。電極E2は、電極E1及びクエンチング抵抗21を通して、1つの画素Uに含まれる全ての受光領域Sと電気的に接続されている。電極E2は、電極E3と接続されている。
【0035】
電極E3は、電極E2から延在しており、対応する貫通電極TEに電気的に接続されている。1つの画素Uに含まれる全てのクエンチング抵抗21は、電極E2及び電極E3によって、1つの貫通電極TEに電気的に並列接続されている。
【0036】
複数の貫通電極TEは、Z軸方向から見て、複数の画素Uが一次元配列されている領域に沿って配列されている。各貫通電極TEは、対応する1つの画素Uと電気的に接続されている。各貫通電極TEは、対応する画素Uに含まれる複数のアバランシェフォトダイオードAPD(複数の受光領域S)と、電極E1、クエンチング抵抗21、電極E2、及び電極E3を通して電気的に接続されている。
【0037】
次に、図5を参照して、本実施形態に係る半導体光検出素子10の構成を説明する。図5は、半導体光検出素子10及び搭載基板20の断面構成を示している。
【0038】
各アバランシェフォトダイオードAPDは、P型の第一半導体領域PAと、N型の第二半導体領域NAと、P型の第三半導体領域PBと、を有している。第一半導体領域PAは、半導体基板50の主面1Na側に位置している。第二半導体領域NAは、半導体基板50の主面1Nb側に位置している。第三半導体領域PBは、第一半導体領域PA内に形成されている。第三半導体領域PBの不純物濃度は、第一半導体領域PAの不純物濃度よりも高い。第三半導体領域PBは、受光領域Sである。各アバランシェフォトダイオードAPDは、主面1Na側から、第三半導体領域PBであるP層、第一半導体領域PAであるP層、第二半導体領域NAであるN層の順で構成されている。
【0039】
半導体基板50には、第三半導体領域PBを囲むように、溝13が形成されている。図5に示されるように、溝13は、Z軸方向に第一半導体領域PAを貫通して、第二半導体領域NAに到達している。溝13には、絶縁層13aと芯材13bとが配置されている。芯材13bは、高融点金属からなる。芯材13bは、たとえば、タングステンからなる。
【0040】
半導体光検出素子10は、画素U毎に、電極パッド12と、電極E4とを有している。電極パッド12は、主面1Na側に位置しており、電極E4は、主面1Nb側に位置している。電極パッド12と電極E4とは、貫通電極TEに対応して配置されている。電極パッド12は、接続部Cを通して、電極E3と電気的に接続されている。電極パッド12は、電極E3と貫通電極TEとを電気的に接続している。
【0041】
貫通電極TEは、半導体基板50を厚み方向(Z軸方向)に貫通している貫通孔THに配置されている。貫通孔THには、絶縁層L1、貫通電極TE及び絶縁層L2が配置されている。絶縁層L1は、貫通孔THの内周面上に形成されている。貫通電極TEは、絶縁層L1を介して、貫通孔TH内に配置されている。絶縁層L2は、貫通電極TEの内側に形成された空間に配置されている。本実施形態では、貫通電極TEは筒状を呈している。貫通孔THに配置される部材は、貫通孔THの内周面側から、絶縁層L1、貫通電極TE、絶縁層L2の順で構成されている。
【0042】
第一半導体領域PA、第二半導体領域NA、第三半導体領域PB、及び溝13の上には、絶縁層L3が配置されている。クエンチング抵抗21及び電極パッド12は、絶縁層L3で覆われている。電極E2,E3は、絶縁層L3上に配置されており、絶縁層L4で覆われている。
【0043】
電極E4は、主面1Nb上に、絶縁層L5を介して配置されている。電極E4は、貫通電極TEに接続される端部と、バンプ電極BEに接続される端部とを有している。電極E4は、貫通電極TEとバンプ電極BEとを接続している。電極E4は、バンプ電極BEに接続される領域を除き、絶縁層L6で覆われている。
【0044】
電極E1,E2,E3,E4、電極パッド12、及び貫通電極TEは、金属からなる。電極E1,E2,E3,E4、電極パッド12、及び貫通電極TEは、たとえば、アルミニウム(Al)からなる。半導体基板50がSiからなる場合には、電極材料として、アルミニウム以外に、たとえば、銅(Cu)が用いられる。電極E1,E2、E3、E4、電極パッド12、及び貫通電極TEは、一体に形成されていてもよい。電極E1,E2、E3、E4、電極パッド12、及び貫通電極TEは、たとえば、スパッタ法により形成される。
【0045】
半導体基板50の材料にSiが用いられる場合、P型不純物にはIII族元素(たとえば、B)が用いられ、N型不純物にはV族元素(たとえば、P又はAs)が用いられる。半導体の導体型であるN型とP型とが互いに置換されている素子も、半導体光検出素子10と同様に、半導体光検出素子として機能する。これらの不純物の添加法には、たとえば、拡散法又はイオン注入法が用いられる。
【0046】
絶縁層L1,L2,L3,L4,L5,L6,13aは、たとえば、SiO、SiN、又は樹脂からなる。絶縁層L1,L2,L3,L4,L5,L6,13aの形成方法には、熱酸化法、スパッタ法、CVD法、又は樹脂コート法が用いられる。
【0047】
搭載基板20は、バンプ電極BEによって貫通電極TEと電気的に接続されている。各アバランシェフォトダイオードAPDから出力された信号は、電極E1、クエンチング抵抗21、電極E2、電極E3、電極パッド12、貫通電極TE、電極E4、及びバンプ電極BEを通して、搭載基板20に導かれる。
【0048】
バンプ電極BEは、不図示のUBM(Under Bump Metal)を介して、電極E4に形成される。UBMは、バンプ電極BEと電気的及び物理的に接続が優れた材料からなる。UBMは、たとえば、無電解めっき法によって形成される。バンプ電極BEは、たとえば、ハンダボールを搭載する手法、印刷法、又は電解めっきによって形成される。バンプ電極BEは、たとえば、はんだ又はインジウムからなる。
【0049】
次に、図2及び図6を参照して、本実施形態に係る搭載基板の構成を説明する。図6は、光検出装置1の回路構成を示している。
【0050】
図2に示されるように、搭載基板20は、複数の信号処理部SPを有している。複数の信号処理部SPは、搭載基板20の主面20a側にY軸方向に一次元配列されている。信号処理部SPは、光検出装置1に接続される後段回路に信号を出力する前段階で、対応するアバランシェフォトダイオードAPDからの信号を処理するフロントエンド回路である。
【0051】
後段回路では、後段回路が有する受動素子に起因して、光検出装置1の出力パルスが劣化するおそれがある。信号処理部SPは、各アバランシェフォトダイオードAPDからの出力信号のパルス波形を後段回路に伝達するように構成されている。信号処理部SPは、低インピーダンスであり、かつ、高い周波数応答を有する。信号処理部SPは、各アバランシェフォトダイオードAPDの出力信号の高速な立ち上がりを後段回路に伝える。したがって、光検出装置1の出力パルスの劣化が抑制される。
【0052】
信号処理部SPは、バンプ電極BEに電気的に接続されている入力端を有している。各信号処理部SPには、クエンチング抵抗21、貫通電極TE、及びバンプ電極BEを通して、対応する画素Uが有する複数のアバランシェフォトダイオードAPDからの出力信号が入力される。各信号処理部SPは、入力された出力信号を処理する。
【0053】
各信号処理部SPは、ゲート接地回路31と、カレントミラー回路34と、コンパレータ35とを有している。本実施形態では、ゲート接地回路31及びカレントミラー回路34は、NチャンネルMOS FET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)を有している。
【0054】
ゲート接地回路31は、互いに対応する貫通電極TEとカレントミラー回路34との間に挿入されている。ゲート接地回路31は、対応する貫通電極TEを通して、対応する画素Uが有する複数のアバランシェフォトダイオードAPDに電気的に接続されている。ゲート接地回路31が有するFETのドレインには、対応するバンプ電極BEが電気的に直列接続されている。ゲート接地回路31には、対応する貫通電極TEを通して、対応する画素Uが有する複数のアバランシェフォトダイオードAPDからの出力信号が入力される。ドレインには、バンプ電極BEと並列に、定電流源32が電気的に接続されている。ゲート接地回路31が有するFETのゲートには、電圧源33が電気的に接続されている。ゲート接地回路31が有するFETのソースには、カレントミラー回路34の入力端子が電気的に接続されている。
【0055】
カレントミラー回路34は、ゲート接地回路31と電気的に接続されている。カレントミラー回路34には、ゲート接地回路31からの出力信号が入力される。カレントミラー回路34には、対応する貫通電極TEを通して、複数のアバランシェフォトダイオードAPDが電気的に接続されている。複数のアバランシェフォトダイオードAPDからの出力信号に対応する信号が、カレントミラー回路34に入力される。カレントミラー回路34は、入力された複数のアバランシェフォトダイオードAPDからの出力信号に対応する信号を出力する。
【0056】
カレントミラー回路34は、互いに対となるNチャンネルMOS FET34a,34bを含む。FET34aのドレインに、ゲート接地回路31の出力端子が電気的に接続されている。FET34aのドレイン及びゲートは短絡している。FET34aのゲートは、FET34bのゲートと電気的に接続されている。FET34a及びFET34bのソースは、接地されている。FET34bのドレインは、抵抗34c及びコンパレータ35の入力端子に電気的に接続されている。抵抗34cは、コンパレータ35の入力端子と並列に、FET34bのドレインに電気的に接続されている。抵抗34cは、FET34bのドレインと電気的に接続されている端部と、接地されている端部とを有している。
【0057】
コンパレータ35は、第一及び第二入力端子と、出力端子とを有している。コンパレータ35の第一入力端子は、カレントミラー回路34の出力端子(FET34bのドレイン)に電気的に接続されている。コンパレータ35には、カレントミラー回路34の出力信号が入力される。コンパレータ35の第二入力端子には、可変電圧源36が電気的に接続されている。コンパレータ35の電源端子35aには、電圧源が電気的に接続されている。コンパレータ35は、1つの画素Uが有する複数のアバランシェフォトダイオードAPDからの出力信号に対応するデジタル信号を出力端子から出力する。
【0058】
各アバランシェフォトダイオードAPDにおいて、N型とP型とが互いに置換されている場合、各信号処理部SPは、図7に示された回路構成を備えていてもよい。この場合、アバランシェフォトダイオードAPDの極性が貫通電極TEに対して反転する。信号処理部SPは、カレントミラー回路34に代えて、カレントミラー回路44を有している。カレントミラー回路44は、互いに対となるPチャンネルMOS FET44a,44bを有している。信号処理部SPは、ゲート接地回路31に代えて、ゲート接地回路41を有している。ゲート接地回路41は、PチャンネルMOS FETを有している。
【0059】
ゲート接地回路41が有するFETのドレインには、対応するバンプ電極BEが電気的に直列接続されている。ゲート接地回路41は、対応する貫通電極TEを通して、対応する画素Uが有する複数のアバランシェフォトダイオードAPDに電気的に接続されている。ゲート接地回路41には、対応する貫通電極TEを通して、対応する画素Uが有する複数のアバランシェフォトダイオードAPDからの出力信号が入力される。ドレインには、バンプ電極BEと並列に、定電流源42が電気的に接続されている。定電流源42と定電流源32とは、電流の向きが逆である。ゲート接地回路41が有するFETのゲートには、電圧源33が電気的に接続されている。ゲート接地回路41が有するFETのソースには、カレントミラー回路44の入力端子が電気的に接続されている。
【0060】
カレントミラー回路44は、ゲート接地回路41と電気的に接続されている。カレントミラー回路44には、ゲート接地回路41からの出力信号が入力される。カレントミラー回路44には、対応する貫通電極TEを通して、複数のアバランシェフォトダイオードAPDが電気的に接続されている。複数のアバランシェフォトダイオードAPDからの出力信号に対応する信号が、カレントミラー回路44に入力される。カレントミラー回路44は、入力された複数のアバランシェフォトダイオードAPDからの出力信号に対応する信号を出力する。
【0061】
FET44aのドレインに、ゲート接地回路41の出力端子が電気的に接続されている。FET44aのドレイン及びゲートは短絡している。FET44aのゲートは、FET44bのゲートと電気的に接続されている。FET44a及びFET44bのソースは、接地されている。FET44bのドレインは、抵抗44c及びコンパレータ35の入力端子に電気的に接続されている。抵抗44cは、コンパレータ35の入力端子と並列に、FET44bのドレインに電気的に接続されている。抵抗44cは、FET44bのドレインと電気的に接続されている端部と、接地されている端部とを有している。
【0062】
再び図6を参照して、本実施形態に係る光検出装置1の動作を説明する。
【0063】
半導体光検出素子10では、各アバランシェフォトダイオードAPDがガイガーモードで動作する。ガイガーモードでは、アバランシェフォトダイオードAPDのブレークダウン電圧よりも大きな逆方向電圧(逆バイアス電圧)がアバランシェフォトダイオードAPDのアノードとカソードとの間に印加される。本実施形態では、アノードは第一半導体領域PAであり、カソードは第二半導体領域NAである。第二半導体領域NAは、半導体基板50の裏面側に配置された電極(図示省略)に電気的に接続されている。第一半導体領域PAは、第三半導体領域PBを通して、電極E1に電気的に接続されている。たとえば、第一半導体領域PAにはマイナス電位が印加され、第二半導体領域NAにはプラス電位が印加される。これらの電位の極性は相対的なものである。
【0064】
アバランシェフォトダイオードAPDに光(フォトン)が入射すると、半導体基板内部で光電変換が行われて光電子が発生する。第一半導体領域PAのPN接合界面の近傍領域において、アバランシェ増倍が行われ、増幅された電子群は、電極E1、クエンチング抵抗21、電極E2、電極E3、貫通電極TE、及びバンプ電極BEを通して、搭載基板20に流れる。すなわち、半導体光検出素子10のいずれかの受光領域Sに光(フォトン)が入射すると、発生した光電子が増倍され、増倍された光電子による信号がバンプ電極BEから取り出されて、対応する信号処理部SPに入力される。信号処理部SPは、入力された信号に対応するデジタルパルス信号を出力端子から出力する。
【0065】
以上説明したように、光検出装置1では、各信号処理部SPが、ゲート接地回路31,41と、カレントミラー回路34,44とを有している。ゲート接地回路31,41は、対応する画素Uが含む複数のアバランシェフォトダイオードAPDが電気的に接続されている。カレントミラー回路34,44は、対応するゲート接地回路31,41に電気的に接続されていると共に、複数のアバランシェフォトダイオードAPDからの出力信号に対応する信号を出力する。
【0066】
ゲート接地回路31,41の入力インピーダンスは、ゲート接地回路以外の読み出し回路の入力インピーダンスに比べて低い。したがって、ゲート接地回路31,41は、ガイガーモードで動作する各アバランシェフォトダイオードAPDからの出力信号の立ち上がりの急峻さをカレントミラー回路34,44に正確に伝達する。カレントミラー回路34,44は、オペアンプ回路に比して、省電力であり、かつ、応答速度が速く、入力信号の情報を正確に伝達する。入力信号の情報は、たとえば、信号波形を含む。したがって、各信号処理部SPは、アバランシェフォトダイオードAPDからの出力信号の立ち上がりの急峻さをより一層正確に、かつ、省電力で伝達する。この結果、光検出装置1は、一次元配列されている複数の画素Uを備え、高精度かつ省電力で微弱光を検出する。光検出装置1では、各画素Uが、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードAPDを含んでいる。ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードAPDは、カレントミラー回路34,44に電気的に接続されている。したがって、光検出装置1では、消費電力の増加が抑えられていると共に、光検出装置1は高い周波数特性を有する。また、光検出装置1では、光検出特性(光検出感度、時間分解能、空間分解能)の向上と高いダイナミックレンジの実現とが両立される。光検出装置1では、各画素Uが、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードAPDを含んでいるので、光検出装置1は、ダイナミックレンを有する。すなわち、光検出装置1は、画素Uから出力された信号に基づいて、複数のフォトンが識別される。これに対し、各画素Uが一つのアバランシェフォトダイオードAPDのみを有している光検出装置、すなわち、各画素Uが単一光子アバランシェダイオード(SPAD)からなる光検出装置では、ダイナミックレンジを有さない。高精度とは、たとえば、信号のS/Nが高く、かつ、微弱な信号が検出されることを意味すると共に、時間分解能が高いことを意味する。
【0067】
各信号処理部SPは、コンパレータ35を有している。コンパレータ35には、カレントミラー回路34,44からの出力信号が入力される。したがって、各信号処理部SPは、コンパレータ35に入力された信号のうち、所望のパルス波高を有する信号を検出する。コンパレータ35により、たとえば、ダークカウントなどのノイズが適切に除去される。本実施形態では、コンパレータ35の第二入力端子には、可変電圧源36が接続されている。可変電圧源36により、第二入力端子に印加される電圧が適切に調整される。したがって、信号処理部SPでは、環境光に応じてノイズのパルス波高が変化する場合でも、目的の信号が検出される。目的の信号は、ノイズの波高を上回る波高値を有する。
【0068】
光検出装置1は、半導体基板50と分離している搭載基板20(回路基板)を備えている。複数の信号処理部SPは、搭載基板20に配置されている。半導体基板50と搭載基板20とが分離している場合、半導体基板50と搭載基板20とは、それぞれに適したプロセスで製造され得る。したがって、本実施形態では、各基板20,50の特性及び歩留まりの向上が両立する。
【0069】
複数のアバランシェフォトダイオードAPDは、貫通電極TEを通して、搭載基板20に配置されている信号処理部SPに電気的に接続されている。したがって、光検出装置1は、複数のアバランシェフォトダイオードがボンディングワイヤを通して信号処理部に電気的に接続されている構成に比して、寄生インダクタンス及び寄生容量を低減すると共に時間応答性を向上させる。
【0070】
半導体光検出素子10は、一次元配列されている画素U毎に、ガイガーモードで動作する複数のアバランシェフォトダイオードAPDを有している。アバランシェフォトダイオードAPDは内部増倍機能を有しているので、画素Uの受光面積が比較的小さい場合でも、シングルフォトンなどの微弱光を検出する。したがって、本実施形態では、受光面積が小さい画素Uを備える半導体光検出素子10が実現される。半導体光検出素子10では、1つの半導体基板50に複数の画素Uが一次元配列されていると共に、画素UのピッチWUが10~500μmである。すなわち、半導体光検出素子10では、受光面積が小さい複数の画素Uが挟ピッチで配列されているので、半導体光検出素子10(光検出装置1)は、背景光を受光し難い。光検出装置1では、検出対象の微弱光の受光量に対する背景光の受光量の割合が小さいので、一つの画素Uあたりの背景光の成分が少ない。背景光は、微弱光に対するノイズである。
【0071】
半導体基板50に配置された画素U間のピッチWUが大きい場合、ピッチWUが小さい場合に比して、画素U間で、アバランシェフォトダイオードAPDをガイガーモードで動作させるために要求されるブレークダウン電圧がばらつく傾向がある。アバランシェフォトダイオードAPDで要求されるブレークダウン電圧が画素U間で異なっている場合、以下の事象が生じるおそれがある。均一な電圧が各画素Uに印加された場合、アバランシェフォトダイオードAPDのゲインが画素U毎に異なる。したがって、画素U毎に、検出効率及びダークカウントレートなどの特性が異なる。
【0072】
光検出装置1では、画素U間のピッチWUが比較的小さいので、画素U間でのブレークダウン電圧のばらつきが少ない。したがって、均一な電圧が各画素Uに印加された場合でも、画素U間でのアバランシェフォトダイオードAPDのゲインのばらつきが少ない。すなわち、画素U間で、ブレークダウン電圧及びダークカウントレートなどの特性が均質であるので、光検出装置1では、一次元配列されている複数の画素U全体での微弱光の検出効率が均質である。
【0073】
光検出装置1は、以下の比較対象の光検出装置に比して、画素が配置されている領域の面積が狭いので、背景光が受光され難く、かつ、ブレークダウン電圧のばらつきが小さい。比較対象の光検出装置では、複数の画素が二次元配列されており、複数の画素が配置されている領域のY軸方向での幅が光検出装置1での幅と同じである。光検出装置1は、たとえば、複数の画素Uが一次元配列された方向と直交する方向(X軸方向)に走査された場合、結果的に、上述した比較対象の光検出装置と同様の検出範囲を有する。したがって、光検出装置1は、画素が二次元配列されている光検出装置と同様の検出範囲で、微弱光を高精度に検出することが可能である。
【0074】
半導体基板50には、溝13が、Z軸方向から見て各受光領域Sの全周を囲むように形成されている。したがって、隣り合うアバランシェフォトダイオードAPD間の干渉が防止される。たとえば、ガイガーモードで動作するアバランシェフォトダイオードでは、なだれ増倍に続くキャリアの再結合による発光が起こり得る。アバランシェフォトダイオードAPDは、隣に位置するアバランシェフォトダイオードAPDが発した光を受光するおそれがある。光検出装置1では、溝13により、アバランシェフォトダイオードAPDが発した光が、隣に位置するアバランシェフォトダイオードAPDに伝わることが抑制される。
【0075】
以上、本発明の好適な実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0076】
上述した実施形態では、半導体基板50に貫通電極TEが配置されており、複数のアバランシェフォトダイオードAPDは、貫通電極TEを通して、搭載基板20に配置されている信号処理部SPと電気的に接続されている。複数のアバランシェフォトダイオードAPDは、貫通電極TEではなく、ボンディングワイヤを通して、対応する信号処理部SPと電気的に接続されていてもよい。この場合、図8に示されるように、貫通電極TEの代わりに、ボンディングパッドPが、半導体基板50の主面1Na側に配置される。図8に示されている複数の画素UのピッチWUは、100~500μmである。
【0077】
光検出装置1は、図9に示されるように、信号処理部SP毎に、第一回路C1と第二回路C2とを有していてもよい。第一回路C1と第二回路C2とは、対応する信号処理部SPと電気的に接続されている。光検出装置1は、複数の第一回路C1と、複数の第二回路C2とを有している。複数の第一回路C1と複数の第二回路C2とは、たとえば、搭載基板20に配置されている。搭載基板20は、対応するボンディングパッドPと、ワイヤボンディングされる複数のボンディングパッドP1を有している。複数のボンディングパッドP1は、対応する信号処理部SPと電気的に接続されている。各第一回路C1は、信号処理部SP(カレントミラー回路34,44)からの出力信号(電流信号)の強度(大きさ)を記録する。すなわち、第一回路C1は、対応する画素Uから出力された信号の大きさ(高さ)を記録する。各第一回路C1は、たとえば、チャージポンプを有している。各第二回路C2は、信号処理部SP(コンパレータ35)からの出力信号に基づいて、信号処理部SPから信号が出力された時刻を記録する。すなわち、第二回路C2は、対応する画素Uに光が入射し、当該画素Uから信号が出力された時刻が記録される。各第二回路C2は、時間-デジタル変換器(TDC)を有している。図9に示された搭載基板20は、たとえば、LiDERに適用される光検出装置1に備えられる。
【0078】
光検出装置1は、上述したように、ダイナミックレンジを有している。すなわち、画素Uから出力された信号によって、一つのイベントにおいて、複数のフォトンが入射した場合でも、入射したフォトンの数が識別される。したがって、光検出装置1では、背景光と信号光との弁別が可能である。また、光検出装置1では、タイムウォークの補正が可能である。タイムウォークは、以下の事象である。画素Uから出力された信号の波形、すなわち、信号処理部SPに入力される信号の波形は、当該信号の高さ(大きさ)によって変化する。信号処理部SPに入力された信号が所定の閾値(波高)と比較される場合、信号の高さが大きい場合、信号の高さが小さい場合に比して、所定の閾値に到達する時刻(以下、「到達時刻」と称する)が早い。すなわち、信号の高さによって、到達時刻にズレが生じる。この事象がタイムウォークである。一つのイベントにおいて、画素Uに入射したフォトンの数が多いほど、画素Uから出力される信号の高さが大きくなる。したがって、光検出装置1では、一つのイベント毎に入射したフォトンの数が識別されるので、フォトンの数に基づいて、到達時刻を補正すること、すなわち、タイムウォークの補正が可能である。この場合、光検出装置1では、時間分解能が向上する。
【0079】
複数の信号処理部SPは、半導体基板50に配置されていてもよい。たとえば、互いに対応する画素U(複数のアバランシェフォトダイオードAPD)と信号処理部SPとの電気的な接続に貫通電極TEが用いられない場合、複数の信号処理部SPは、複数の画素Uが配列されている半導体基板50に配置されていてもよく、半導体基板50と分離している回路基板に配置されていてもよい。複数の信号処理部SPが半導体基板50に配置される場合、光検出装置1の製造工程が減るので、光検出装置1の生産性が向上する。複数の信号処理部SPが半導体基板50と分離している回路基板に配置される場合、上述したように、各基板は、それぞれに適したプロセスで製造され得る。この場合、各基板の特性及び歩留まりの向上が両立する。複数の信号処理部SPが半導体基板50に配置されている場合、複数の第一回路C1と複数の第二回路C2も半導体基板50に配置されていてもよい。
【0080】
たとえば、光検出装置1がコンパレータ35を備えているが、これに限られない。光検出装置1は、コンパレータ35の代わりに、インバータを備えていてもよい。この場合、カレントミラー回路34,44からの出力信号がインバータに入力される。光検出装置1がインバータを備える場合、光検出装置1(信号処理部SP)は、固定されたパルス波高以下のノイズが除去された所望の信号を検出する。
【0081】
ゲート接地回路31,41は、NチャンネルMOS FETとPチャンネルMOS FETとのいずれを有していてもよい。
【0082】
カレントミラー回路34が有するFET34a,34bのサイズは、互いに異なってもよい。カレントミラー回路44が有するFET44a,44bのサイズも、互いに異なってもよい。互いに対となるFET34a,34b,44a,44bのサイズが異なる場合、各アバランシェフォトダイオードAPDからの出力信号の立ち上がりの急峻さが保たれると共に、出力が増幅され得る。FETのサイズは、ゲート長を意味する。
【0083】
上述した実施形態では、溝13は、受光領域S毎に半導体基板50に形成されている。溝13の一部は、隣り合う受光領域Sの間で共有されてもよい。半導体基板50には、溝13が形成されていなくてもよい。クエンチング抵抗21、電極パッド12、及び電極E2,E3は、一つの絶縁層で覆われていてもよい。電極E2と電極パッド12とが直接的に接続されていてもよい。貫通孔THに、絶縁層L2が配置されていなくてもよい。この場合、貫通電極TEは、柱体状又は錐台状を呈していてもよい。
【0084】
上述した実施形態では、アバランシェフォトダイオードAPDの一つの層構造が示されているが、アバランシェフォトダイオードAPDの層構造はこれに限定されない。たとえば、第一半導体領域PAと第三半導体領域PBとが、互いに異なる導電型を有していてもよい。この場合、PN接合は、第一半導体領域PAと第三半導体領域PBとによって形成される。たとえば、第二半導体領域NAは、不純物濃度が互いに異なる複数の半導体領域で構成されていてもよい。たとえば、アバランシェフォトダイオードAPDは、第1導電型(たとえばP型)の半導体領域と、当該第1導電型の半導体領域内に位置し、かつ、当該第1導電型の半導体領域とpn接合を形成する第2導電型(たとえばN型)の半導体領域と、を有していてもよい。本構成では、第2導電型の半導体領域が、受光領域である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、微弱光を検出する光検出装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1…光検出装置、10…半導体光検出素子、20…搭載基板、21…クエンチング抵抗、31,41…ゲート接地回路、34,44…カレントミラー回路、35…コンパレータ、50…半導体基板、1Na,1Nb、20a…主面、APD…アバランシェフォトダイオード、S…受光領域、U…画素、TE…貫通電極、SP…信号処理部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9