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特開2022-44748薬液注入装置およびその装置に使用される注射針
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  • 特開-薬液注入装置およびその装置に使用される注射針 図1
  • 特開-薬液注入装置およびその装置に使用される注射針 図2
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  • 特開-薬液注入装置およびその装置に使用される注射針 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044748
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】薬液注入装置およびその装置に使用される注射針
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/34 20060101AFI20220310BHJP
【FI】
A61M5/34 510
A61M5/34 520
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010382
(22)【出願日】2022-01-26
(62)【分割の表示】P 2016238222の分割
【原出願日】2016-12-08
(71)【出願人】
【識別番号】392006606
【氏名又は名称】株式会社ユニシス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【弁理士】
【氏名又は名称】大塩 竹志
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】小澤 博
(72)【発明者】
【氏名】稲生 昭典
(57)【要約】
【課題】注射器と注射針との間に空間が生じる場合でも薬液を無駄にすることなく薬液を注入することを可能にする薬液注入装置およびその装置に使用される注射針を提供すること。
【解決手段】注射器10および注射針30は、注射針30が注射器10の先端部に取り付けられている場合に、注射器10と注射針30との間に空間が生じるように構成されている。注射針30は、注射器10の先端部を受け入れるためのハブ31と、ハブ31の先端部から突出する少なくとも1つの針33と、その空間の少なくとも一部を充填するための充填物40とを含む。充填物40は、注射針30が注射器10の先端部に取り付けられている場合に、注射器10のチャンバ13に充填された薬液が、充填物40の少なくとも1つの貫通孔41を通って、少なくとも1つの針33のそれぞれの中空部に流れるように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液を患者に注入するための薬液注入装置およびその装置に使用される注射針に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、注射器と注射針とを着脱可能に接続する方法として、注射器の先端に設けられたテーパー状凸部と注射針のハブに設けられたテーパー状凹部とを摩擦係合することによって注射器と注射針とを着脱可能に接続する方法(ルアーロックタイプ)が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この方法は、注射器と注射針との間に優れた密封性を実現できる点で有用であるが、このような密封性を実現するためには、注射器の先端部に設けられたテーパー状の凸部の径を注射針のハブに設けられたテーパー状の凹部の径よりも若干大きくする必要があるため、テーパー状の凸部とテーパー状の凹部との間に空間が必然的に生じることになる。薬液注入装置は、この空間内の薬液を注入することができないため、この空間はデッドスペースとなってしまうという課題が知られていた。バイオテクノロジー薬剤などの高価な薬液を注入する際には、このデッドスペースによって失われる薬液のコストを無視することができない。このため、高価な薬液を注入する際には、上述した従来の、注射器の先端に設けられたテーパー状の凸部と注射針のハブに設けられたテーパー状の凹部とを摩擦係合することによって注射器と注射針とを着脱可能に接続する方法(ルアーロックタイプ)を採用しないことによって、上述した課題が発生すること自体を回避するという対策がもっぱらとられていた(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4328064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上述した課題を従来とは異なるアプローチで解決するためになされたものであり、注射器と注射針との間に空間が生じる場合でも薬液を無駄にすることなく薬液を注入することを可能にする薬液注入装置およびその装置に使用される注射針を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の注射器は、注射器の先端部に着脱可能に取り付けられる注射針であって、前記注射器および前記注射針は、前記注射針が前記注射器の前記先端部に取り付けられている場合に、前記注射器と前記注射針との間に空間が生じるように構成されており、前記注射針は、前記注射器の前記先端部を受け入れるためのハブと、前記ハブの先端部から突出する少なくとも1つの針と、前記空間の少なくとも一部を充填するための充填物とを含み、前記少なくとも1つの針のそれぞれは、中空部を有し、前記充填物は、少なくとも1つの貫通孔を有し、前記充填物は、前記注射針が前記注射器の前記先端部に取り付けられている場合に、前記注射器のチャンバに充填される薬液が、前記充填物の前記少なくとも1つの貫通孔を通って、前記少なくとも1つの針のそれぞれの前記中空部に流れるように構成されている。
【0006】
本発明の1つの実施形態では、前記注射器の前記先端部には、テーパー状凸部が設けられており、前記ハブは、前記注射器の前記先端部に設けられた前記テーパー状凸部と摩擦係合するテーパー状凹部を有し、前記空間は、前記テーパー状凸部と前記テーパー状凹部とが摩擦係合することによって生じるように構成されている。
【0007】
本発明の1つの実施形態では、前記充填物は、圧縮変形可能な材料を含んでいてもよい。
【0008】
本発明の1つの実施形態では、前記材料は、シリコンゴムであってもよい。
【0009】
本発明の1つの実施形態では、前記充填物は、前記空間内で圧縮変形するように構成されている。
【0010】
本発明の1つの実施形態では、前記テーパー状凹部は、前記充填物の前記少なくとも1つの貫通孔と嵌合する少なくとも1つの嵌合凸部を有していてもよい。
【0011】
本発明の1つの実施形態では、前記注射器の先端部には、前記チャンバに充填される前記薬液を前記注射器に導出する薬液導出部が設けられており、前記充填物の前記少なくとも1つの貫通孔のそれぞれの内径は、前記少なくとも1つの針のそれぞれの中空部の内径よりも大きく、前記薬液導出部の内径よりも小さいように構成されている。
【0012】
本発明の薬液注入装置は、薬液を注入するための薬液注入装置であって、前記薬液注入装置は、注射器と、前記注射器の先端部に着脱可能に取り付けられる注射針とを含み、 前記注射器は、薬液が充填されるチャンバを含み、前記注射針は、前記注射器の前記先端部を受け入れるためのハブと、前記ハブの先端部から突出する少なくとも1つの針と、前記空間の少なくとも一部を充填するための充填物とを含み、前記少なくとも1つの針のそれぞれは、中空部を有し、前記充填物は、少なくとも1つの貫通孔を有し、前記充填物は、前記注射針が前記注射器の前記先端部に取り付けられている場合に、前記注射器の前記チャンバに充填される前記薬液が、前記充填物の前記少なくとも1つの貫通孔を通って、前記少なくとも1つの針のそれぞれの前記中空部に流れるように構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、注射器と注射針との間に空間が生じる場合でも薬液を無駄にすることなく薬液を注入することを可能にする薬液注入装置およびその装置に使用される注射針を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の1つの実施形態の薬液注入装置100が分解された状態における、薬液注入装置100の分解縦断面図
図2】注射器10の先端部に注射針30が取り付けられた状態における、注射器10と注射針30との係合部分の縦断面図
図3】本発明の1つの実施形態の注射針30の縦断面図
図4】本発明の1つの実施形態の注射針30の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の1つの実施形態である薬液注入装置100が分解された状態における、薬液注入装置100の分解縦断面図である。
【0017】
薬液注入装置100は、注射器10と、注射器10の先端部に着脱可能に取り付けられる注射針30とを含む。
【0018】
注射器10は、薬液が充填されるチャンバ13を有するシリンジ12と、シリンジ12のチャンバ13内に挿入されるプランジャ20とを含む。
【0019】
シリンジ12の先端部(すなわち、注射器10の先端部)には、テーパー状の凸部11が設けられている。
【0020】
チャンバ13の先端部は、テーパー状の凸部11内に形成された薬液導出部14に連通されている。チャンバ13の後端部には、開放口15が設けられている。
【0021】
プランジャ20は、開放口15を介してチャンバ13に挿入されることが可能であるように構成されている。プランジャ20は、シリンジ12の長手方向軸に沿って移動可能である。プランジャ20にはピストン21が接合されている。プランジャ20は、シリンジ12の長手方向軸に沿って移動することにより、ピストン21もまたシリンジ12の長手方向軸に沿って移動する。
【0022】
プランジャ20の後端部には、操作部22が設けられている。操作部22を引くことにより、シリンジ12に対してプランジャ20を引く操作を行うことが可能である。操作部22を押すことにより、シリンジ12に対してプランジャ20を押す操作を行うことが可能である。
【0023】
プランジャ20の先端部には、突起部23が設けられている。プランジャ20がチャンバ13の先端部まで移動した場合に、突起部23は、テーパー状の凸部11内に形成された薬液導出部14の空間を遮蔽するように機能する。これにより、注射針30に供給されることなく薬液導出部14の空間内に留まる薬液の量を大幅に削減することが可能である(図2を参照)。
【0024】
薬液導出部14は、例えば、円形状孔である。この場合、薬液導出部14は、任意の内径を有し得る。1つの実施形態において、薬液導出部14の内径は、約1.5~約2.5mm程度であるが、本発明はこれに限定されない。ただし、薬液導出部14は、円形状孔には限定されない。薬液導出部14は、円形状孔以外の任意の形状の孔であってもよい。例えば、薬液導出部14は、三角形状孔であってもよいし、四角形以上の多角形状孔であってもよいし、楕円形状孔であってもよい。
【0025】
図2は、注射器10の先端部に注射針30が取り付けられた状態における、注射器10と注射針30との係合部分の縦断面図である。
【0026】
注射針30は、ハブ31と、ハブ31の先端部から突出する針33とを含む。ハブ31は、テーパー状の凹部32を有する。テーパー状の凹部32は、シリンジ12の先端部に設けられたテーパー状の凸部11と摩擦係合するように構成されている。ここで、薬液の外部への漏れを防止するために注射器10と注射針30との間に高い密封性を実現するためには、シリンジ12の先端部に設けられたテーパー状の凸部11の大きさ(例えば、凸部11の外径)を注射針30のハブ31に設けられたテーパー状の凹部32の大きさ(例えば、凹部32の内径)に等しくするかそれよりも若干大きくする必要がある。このため、テーパー状の凸部11とテーパー状の凹部32との間に空間が必然的に生じることになる。薬液注入装置100は、この空間内の薬液を注入することができないため、この空間はデッドスペースである。注射針30は、このデッドスペース(すなわち、注射器10の先端部に注射針30が取り付けられた場合に、テーパー状の凸部11とテーパー状の凹部32との間に生じる空間)の少なくとも一部を充填するための充填物40をさらに含む。
【0027】
テーパー状の凹部32の形状は、注射器10の先端部に設けられたテーパー状の凸部11と摩擦係合することが可能である限り、任意の形状であり得る。1つの実施形態において、製造コストや係合の正確性などの観点から、テーパー状の凹部32の形状は、略円錐形状であることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。例えば、テーパー状の凹部32の形状は、3角錐状であってもよいし、4角錐状であってもよい。1つの実施形態において、テーパー状の凹部32の内径は先端部において約3~4mmであるが、本発明はこれに限定されない。
【0028】
なお、図1図2に示される実施形態において、シリンジ12の先端部にテーパー状の凸部11(例えば、ルアーロックタイプの凸部)が設けられており、かつ、注射針30のハブ31にテーパー状の凹部32(例えば、ルアーロックタイプの凹部)が設けられている例を説明したが、本発明はこれに限定されない。注射器10の先端部に注射針30が取り付けられている場合において、凸部11と凹部32との間に空間が生じる限り、凸部11および凹部32は、任意の形状を有し得る。例えば、凸部11は、雄ねじ状の凸部(例えば、ルアーチップタイプの凸部)であってもよいし、凹部32は、雌ねじ状の凹部(例えば、ルアーチップタイプの凹部)であってもよい。シリンジ12の先端部に設けられた凸部11と注射針30のハブ31に設けられた凹部32との間に生じる空間(デッドスペース)の少なくとも一部を充填するための充填物40を含む限り、そのような充填物40を含む注射針30は、本発明の範囲内であり、そのような注射針30を含む薬液注入装置100は、本発明の範囲内である。
【0029】
充填物40の材料は、任意の材料であり得る。1つの実施形態において、充填物40の材料は、圧縮変形可能な材料であることが好ましい。例えば、圧縮変形可能な材料は、シリコンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、エラストマー、エラストマー材料からなる群から選択される。充填物40の少なくとも一部を圧縮変形可能な材料で構成することにより、注射器10の凸部11とハブ31の凹部32とが係合した際に、凸部11と凹部32との間に生じる空間(デッドスペース)の大きさに違いが生じたとしても、充填物40が圧縮変形することにより、デッドスペースを好適に充填することが可能である。これにより、針33に供給されることなくデッドスペース内に留まる薬液の量を削減することが可能である。その他の実施形態において、充填物40の材料は、圧縮変形されないプラスチックや金属などであってもよい。
【0030】
充填物40の形状および大きさは、注射器10の凸部11とハブ31の凹部32とが係合した際に、凸部11と凹部32との間に生じる空間(デッドスペース)の少なくとも一部を充填することが可能である限り、任意の形状および大きさであり得る。1つの実施形態において、図2に示されるように、充填物40は、凸部11と凹部32との間に生じる空間(デッドスペース)をほぼ完全に充填する大きさを有する円筒体であることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。例えば、充填物40の形状は、三角筒体であってもよいし、四角筒体などの多角筒体であってもよい。また、充填物40の大きさは、デッドスペースの大きさよりも小さくてもよい。1つの実施形態において、充填物40の形状および大きさは、例えば、外径約3~5mm、高さ約3~5mmの円筒体である。
【0031】
充填物40は、貫通孔41を有している。貫通孔41は、注射器10の薬液導出部14と針33の中空部とを連通させるように構成されている。これにより、注射器10のチャンバ13に充填された薬液を、注射器10の薬液導出部14、充填物40の貫通孔41を介して針33の中空部に供給することが可能である。針33の中空部に供給された薬液は、患者の体内に注入される。
【0032】
なお、図1図2に示される実施形態において、針33の数が1つであり、充填物40の貫通孔41の数が1つである例を説明したが、本発明はこれに限定されない。針33の数は、任意の数であり得る。貫通孔41の数もまた任意の数であり得る。例えば、図3に示されるように、3つの針33に対して(針33の数と同数の)3つの貫通孔41を設けるようにしてもよい。あるいは、図4に示されるように、3つの針33に対して(針33の数よりも少ない)1つの貫通孔41を設けるようにしてもよい。
【0033】
貫通孔41の大きさ(例えば、内径)は、注射器10の薬液導出部14と針33の中空部とを連通することができる限り、任意の大きさ(例えば、内径)であり得る。1つの実施形態において、貫通孔41の内径は、針33の中空部の内径よりも大きく、薬液導出部14の内径よりも小さいことが好ましい。これにより、注射器10のチャンバ13から針33の中空部に薬液がスムーズに流れることが可能であり、針33の中空部に供給されることなくデッドスペースに留まる薬液の量を削減することが可能である。ただし、本発明はこれに限定されない。例えば、貫通孔41の内径は、針33の中空部の内径と同じであってもよいし、薬液導出部14の内径と同じもしくはそれ以上であってもよい。1つの実施形態において、貫通孔41の内径は、例えば、約0.1~約2.5mmである。
【0034】
1つの実施形態において、貫通孔41は、円形状孔であってもよいが、本発明はこれに限定されない。貫通孔41は、円形状孔以外の任意の形状の孔であってもよい。例えば、貫通孔41は、三角形状孔であってもよいし、四角形以上の多角形状孔であってもよいし、楕円形状孔であってもよい。
【0035】
充填物40は、貫通孔41が薬液導出部14と針33の中空部とを連通するような態様で、ハブ31の凹部32内に接着剤などの固着部材によって固着される。なお、充填物40をハブ31の凹部32内に固着する方法は、接着に限定されない。融着や圧入などの他の方法を用いて、充填物40をハブ31の凹部32内に固着するようにしてもよい。また、図2に示されるように、凹部32内に、充填物40の貫通孔41と嵌合する嵌合凸部34を設けるようにしてもよい。充填物40の貫通孔41と嵌合凸部34とを嵌合することにより、充填物40を係合凹部32に強固に固着することが可能である。図2に示される実施形態では、嵌合凸部34の数は1つであるが、本発明はこれに限定されない。嵌合凸部34の数は、1つ以上の任意の数であり得る。例えば、嵌合凸部34の数は、貫通孔41の数に応じた任意の数であり得る。
【0036】
ハブ31には、少なくとも1つの針33を通すための少なくとも1つの通孔35が設けられている。この通孔35は、ハブ31の内部に形成された凹部32とつながっている。図2に示される実施形態では、通孔35の数は、(針33の本数と同数の)1つであるが、本発明はこれに限定されない。針33の数および通孔35の数は、任意の数であり得る。例えば、針33の本数が3本である場合には、(針33の本数と同数の)3つの通孔35を設けるようにしてもよいし、針33の本数が5本である場合には、(針33の本数と同数の)5つの通孔35を設けるようにしてもよい。針33は、その先端がハブ31の先端から突出する態様で、通孔35に挿入された状態で接着剤などの固着部材によって通孔35内に固着される。なお、針33を通孔35内に固着する方法は、接着に限定されない。融着などの他の方法を用いて、針33を通孔35内に固着するようにしてもよい。
【0037】
針33の材料は、任意の材料であり得る。1つの実施形態において、製造コストや強度などの観点から、針33の材料は、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金であることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。例えば、針33の材料は、チタンまたはチタン合金などの金属材料、プラスチック材料などであってもよい。
【0038】
ハブ31の材料は、任意の材料であり得る。1つの実施形態において、製造コストなどの観点から、ハブ31の材料は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂であることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。例えば、ハブ31の材料は、ステンレス鋼などの金属材料などであってもよい。ハブ31の材料として熱可塑性樹脂が用いられる場合には、ハブ31を射出成形などによって製造することが可能である。また、金属製の針33と熱可塑性樹脂からなるハブ31とを射出成形などで一体成形するようにしてもよい。
【0039】
針33の中空部の大きさ(例えば、内径)は、用いられる薬液の種類や薬液が投与される条件に基づいて任意の大きさ(例えば、内径)であり得る。1つの実施形態において、針33の中空部の内径は、0.1~0.6mmであることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。例えば、針33の中空部の内径は、0.1mmであってもよいし、0.6mm以上であってもよい。
【0040】
1つの実施形態において、針33の中空部は、円形状孔であってもよいが、本発明はこれに限定されない。針33の中空部は、円形状孔以外の任意の形状の孔であってもよい。例えば、針33の中空部は、三角形状孔であってもよいし、四角形以上の多角形状孔であってもよいし、楕円形状孔であってもよい。
【0041】
薬液注入装置100は、針33を保護するキャップ(図示せず)を備えていてもよい。
【0042】
次に、薬液注入装置100の使用方法を説明する。
【0043】
注射器10の先端部に設けられた凸部11と、注射針30のハブ31に設けられた凹部32とが摩擦係合されることによって、注射器10と注射針30とが係合される。これにより、薬液注入装置100の組み立てが完了する。
【0044】
凸部11と凹部32とが係合されている場合に、注射針30の凹部32内に配置された充填物40により、凸部11と凹部32との間に生じる空間(デッドスペース)が埋められる。また、充填物40に形成された貫通孔41により、注射器10の薬液導出部14と針33の中空部とが連通した状態とされる。
【0045】
薬液注入装置100の組み立てが完了すると、針33の先端部が患者の体内に突き刺され、注射器10の操作部22を介してプランジャ20に接合されたピストン21が押圧操作される。これにより、注射器10のチャンバ13に充填される薬液が、薬液導出部14を通過し、充填物40の貫通孔41を介して針33の中空部に供給される。その結果、薬液は、針33の中空部を通って患者の体内に注入される。ピストン21を押圧操作することにより、プランジャ20がチャンバ13の前方端まで移動することにより、薬液注入行為が終了する。
【0046】
注射針30に設けられた凹部32の内部に配置されている充填物40により、凸部11と凹部32との間の空間(デッドスペース)が埋められた状態であるため、針33の中空部に供給されることなくデッドスペース内に留まる薬液は貫通孔41の空間に保留される薬液だけになる。これにより、針33の中空部に供給されることなくデッドスペース内に留まる薬液の量を大幅に削減することが可能である。また、プランジャ20の先端部に設けられた突起部23により、薬液導出部14を遮蔽することにより、針33の中空部に供給されることなく薬液導出部14の空間に留まる薬液の量をさらに削減することが可能である。
【0047】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、注射器と注射針との間に空間が生じる場合でも薬液を無駄にすることなく薬液を注入することを可能にする薬液注入装置およびその装置に使用される注射針等を提供するものとして有用である。
【符号の説明】
【0049】
10 注射針
11 凸部
12 シリンジ
13 チャンバ
14 薬液導出部
20 プランジャ
21 ピストン
22 操作部
23 突起部
30 注射針
31 ハブ
32 凹部
33 針
34 嵌合凸部
35 通孔
40 充填物
41 貫通孔
図1
図2
図3
図4