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特開2022-44773セルロース系ポリマーの包装方法および輸送方法、並びにセルロース系ポリマーの包装物
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  • 特開-セルロース系ポリマーの包装方法および輸送方法、並びにセルロース系ポリマーの包装物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044773
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】セルロース系ポリマーの包装方法および輸送方法、並びにセルロース系ポリマーの包装物
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/24 20060101AFI20220310BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
B65D81/24 Z
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010991
(22)【出願日】2022-01-27
(62)【分割の表示】P 2021549960の分割
【原出願日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2020076414
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020111368
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113398
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 直
(72)【発明者】
【氏名】井上 一彦
(72)【発明者】
【氏名】宮森 智
(72)【発明者】
【氏名】金子 佑馬
(72)【発明者】
【氏名】小熊 朗裕
(57)【要約】
【課題】セルロース系ポリマーの輸送等に適した包装方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
下記条件(1)~(3)を満たすように、セルロース系ポリマーの包装を包装する。
条件(1):ガスバリアー性を有する包装袋内に、セルロース系ポリマーを充填すること。
条件(2):前記包装袋内の酸素濃度を0.8%以下に調整し封止すること。
条件(3):セルロース系ポリマーを充填した前記包装袋の、最も長い長辺Lが、700mm以上1100mmであり、且つ、セルロース系ポリマーを充填した前記包装袋を前記長辺Lが水平になるように設置した際の、水平面からの包装袋の深さDが、125mm以下であること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件(1)~(3)を満たすことを特徴とする、セルロース系ポリマーの包装方法。
条件(1):ガスバリアー性を有する包装袋内に、セルロース系ポリマーを充填すること。
条件(2):前記包装袋内の酸素濃度を0.8%以下に調整し封止すること。
条件(3):セルロース系ポリマーを充填した前記包装袋の、最も長い長辺Lが、700mm以上1100mmであり、且つ、セルロース系ポリマーを充填した前記包装袋を前記長辺Lが水平になるように設置した際の、水平面からの包装袋の深さDが、125mm以下であること。
【請求項2】
セルロース系ポリマーを充填した前記包装袋の最も長い長辺Lが、700mm以上1000mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
【請求項3】
セルロース系ポリマーを充填した前記包装袋の長辺Lと、直行する短辺Wが、400mm以上700mm未満であることを特徴とする請求項1または2に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
【請求項4】
セルロース系ポリマーを充填した前記包装袋の深さDが、120mm以下であることを特徴とする請求項1~3いずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
【請求項5】
前記セルロース系ポリマーが、カルボキシメチルセルロースであることを特徴とする、請求項1~4いずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
【請求項6】
前記包装袋内を真空処理した後、窒素置換し酸素濃度を0.8%以下に調整することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
【請求項7】
前記包装袋内の内圧が、85KPa以下であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装方法により得られた包装袋を、積層し、目的地まで輸送することを特徴とするセルロース系ポリマーの輸送方法。
【請求項9】
前記包装袋を、2段以上10段以下の積層状態とすることを特徴とする、請求項8に記載のセルロース系ポリマーの輸送方法。
【請求項10】
密封された包装袋と、前記包装袋内に充填されたセルロース系ポリマーとを備える、セルロース系ポリマーの包装物であって、下記条件(1)~(3):
条件(1):ガスバリアー性を有する前記包装袋内に、セルロース系ポリマーを充填すること、
条件(2):前記包装袋内の酸素濃度を0.8%以下に調整し封止すること、
条件(3):セルロース系ポリマーを充填した前記包装袋の、最も長い長辺Lが、700mm以上1100mmであり、且つ、セルロース系ポリマーを充填した前記包装袋を前記長辺Lが水平になるように設置した際の、水平面からの包装袋の深さDが125mm以下であること、
を満たす、包装物。
【請求項11】
前記セルロース系ポリマーが、カルボキシメチルセルロースであることを特徴とする、請求項10に記載のセルロース系ポリマーの包装物。
【請求項12】
前記包装袋内の酸素濃度が、0.3%より大きく、0.8%以下であることを特徴とする、請求項10または11に記載のセルロース系ポリマーの包装物。
【請求項13】
前記包装袋内の内圧が、85KPa以下であることを特徴とする請求項10~12のいずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装物。
【請求項14】
前記包装袋は2層または3層以上の層構造を有し、前記包装袋の最外層が紙基材であり、前記最外層の内側にある内袋層のうちの少なくとも一層がガスバリアー層である、請求項10~13のいずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系ポリマーの包装方法およびその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース由来のポリマーはその安全性の高さから、医療、食品などの様々な分野に利用されている。例えば、カルボキシメチルセルロースはアイスクリームなどの食品の増粘剤や乳化安定剤に使用されているとともに、歯磨剤、下剤、ダイエット用錠剤、水性インク、界面活性剤、紙製品などの非食品製品にも使用されている。
【0003】
従来から、セルロース系ポリマーは粉末状態で保管されることが一般的である。しかしながら、長期間保管したセルロース系ポリマーの溶液の粘度は、保管前のセルロース系ポリマーの溶液の粘度と比較して、大きく低下してしまい、粘度調整剤としての役割を果たせなくなってしまうという問題があった。
【0004】
そのため特許文献1では、包装袋内の酸素濃度を一定以下に保つことにより、酸化等による粘度低下を抑制する保管方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-121957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1では、粘度低下を最大限低減するため、窒素置換を行い包装袋内の残酸素濃度をできるだけ下げる方法が提案されており、このように包装袋内の窒素置換を最大限行うと、包装袋は内圧などにより膨らみを有してしまい、梱包がしづらかったり、輸送時に包装袋同士を積載し難かったりと、問題があった。
【0007】
以上のような状況に鑑み、解決しようとする課題の1つは、セルロース系ポリマーの輸送等に適した包装方法を提供することにある。
また、解決しようとする更なる課題の1つは、セルロース系ポリマーの粘度低下を抑制しつつ、さらに輸送等に適した包装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示中に提示される発明は、多面的にいくつかの態様として把握しうるところ、課題を解決するための手段として、例えば、下記のものを含む。すなわち本発明は以下の[1]~[20]である。
【0009】
〔1〕 ガスバリアー性を有する包装袋内にセルロース系ポリマーを充填し、前記包装袋を封止する、セルロース系ポリマーの包装方法。
〔2〕 下記条件(1)~(3)を満たすことを特徴とする、上記〔1〕に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
条件(1):ガスバリアー性を有する前記包装袋内に、セルロース系ポリマーを充填すること。
条件(2):前記包装袋内の酸素濃度を0.8%以下に調整し封止すること。
条件(3):セルロース系ポリマーを充填した前記包装袋を、最も長い長辺Lが水平になるように設置した際に、水平面からの包装袋の深さDと、長辺Lが、6.1≦L/D≦10の関係式を満たすこと。
〔3〕 セルロース系ポリマーを充填した前記包装袋の最も長い長辺Lが、700mm以上1100mm以下であることを特徴とする、上記〔1〕または〔2〕に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
〔4〕 セルロース系ポリマーを充填した前記包装袋の長辺Lと、直行する短辺Wが、400mm以上700mm未満であることを特徴とする、上記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
〔5〕 セルロース系ポリマーを充填した前記包装袋の深さDが、130mm未満であることを特徴とする、上記〔1〕~〔4〕いずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
〔6〕 最外層表面の静摩擦係数が0.2~0.5、且つ動摩擦係数0.15~0.35の範囲を満たすガスバリアー性を有する前記包装袋に、セルロース系ポリマーを充填することを特徴とする、上記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
〔7〕 前記包装袋の最外層の平滑度が2~10秒の範囲を満たすことを特徴とする、上記〔6〕に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
〔8〕 前記包装袋の最外層が、紙基材であることを特徴とする、上記〔6〕または〔7〕に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
〔9〕 前記包装袋の最外層が、坪量50~100g/m2の範囲を満たすことを特徴とする、上記〔6〕~〔8〕のいずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
〔10〕 前記セルロース系ポリマーが、カルボキシメチルセルロースであることを特徴とする、上記〔1〕~〔9〕いずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
〔11〕 前記包装袋内を真空処理した後、窒素置換し酸素濃度を0.8%以下に調整することを特徴とする、上記〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
〔12〕 前記包装袋内の内圧が、85KPa以下であることを特徴とする、上記〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装方法。
〔13〕 上記〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装方法により得られた包装袋を、積層し、目的地まで輸送することを特徴とするセルロース系ポリマーの輸送方法。
〔14〕 前記包装袋を、2段以上10段以下の積層状態とすることを特徴とする、上記〔13〕に記載のセルロース系ポリマーの輸送方法。
〔15〕 密封された包装袋と、前記包装袋内に充填されたセルロース系ポリマーとを備える、セルロース系ポリマーの包装物であって、下記条件(1)~(3):
条件(1):ガスバリアー性を有する前記包装袋内に、セルロース系ポリマーを充填すること、
条件(2):前記包装袋内の酸素濃度を0.8%以下に調整し封止すること、
条件(3):セルロース系ポリマーを充填した前記包装袋を、最も長い長辺Lが水平になるように設置した際に、水平面からの包装袋の深さDと、長辺Lが、6.1≦L/D≦10の関係式を満たすこと、
を満たす、包装物。
〔16〕 前記包装袋は、最外層表面の静摩擦係数が0.2~0.5、且つ動摩擦係数0.15~0.35の範囲を満たす、上記〔15〕に記載のセルロース系ポリマーの包装物。
〔17〕 前記セルロース系ポリマーが、カルボキシメチルセルロースであることを特徴とする、上記〔15〕または〔16〕に記載のセルロース系ポリマーの包装物。
〔18〕 前記包装袋内の酸素濃度が、0.3%より大きく、0.8%以下であることを特徴とする、上記〔15〕~〔17〕のいずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装物。
〔19〕 前記包装袋内の内圧が、85KPa以下であることを特徴とする、上記〔15〕~〔18〕のいずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装物。
〔20〕 前記包装袋は2層または3層以上の層構造を有し、前記包装袋の最外層が紙基材であり、前記最外層の内側にある内袋層のうちの少なくとも一層がガスバリアー層である、上記〔15〕~〔19〕のいずれか一項に記載のセルロース系ポリマーの包装物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、セルロース系ポリマーの輸送等に適した包装方法を提供することができる。
また、本発明の一態様によれば、セルロース系ポリマーの粘度低下を抑制しつつ、セルロース系ポリマーを輸送等することに適した包装方法を提供することができる。
さらに、本発明の一態様によれば、輸送等に適したセルロース系ポリマーの包装物を提供することができる。
また、本発明の一態様によれば、セルロース系ポリマーの粘度低下を抑制しつつ、セルロース系ポリマーを輸送等することに適した包装物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、セルロース系ポリマーを充填した包装袋であって、該包装袋を最も長い長辺Lが水平な設置面(水平面)と水平になるように設置した図であり、Dは水平面からの深さをあらわし、WはLと直行する幅方向の短辺をあらわす。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本開示において、特に断らない限り、数値範囲に関し、「AA~BB」という記載は、「AA以上BB以下」を示すこととする(ここで、「AA」および「BB」は任意の数値を示す)。また、下限および上限の単位は、特に断りない限り、後者(すなわち、ここでは「BB」)の直後に付された単位と同じである。また、本開示において、「Xおよび/またはY」との表現は、XおよびYの双方、またはこれらのうちのいずれか一方のことを意味する。また、本開示において、特に断らない限り、気体濃度は容積比率にて示す。例えば、酸素濃度についての単位「%」は、酸素の容積比(Vol/Vol)の百分率を示す。
【0013】
1.本発明の第一実施形態
本発明の1つの実施形態として、ガスバリアー性を有する包装袋内にセルロース系ポリマーを充填し、前記包装袋を封止する、セルロース系ポリマーの包装方法であって、下記条件(1)~(3)を満たす方法が提供される(以下、第一実施形態ともいう。)。
条件(1):ガスバリアー性を有する包装袋内に、セルロース系ポリマーを充填すること。
条件(2):包装袋内の酸素濃度を0.8%以下に調整し封止すること。
条件(3):セルロース系ポリマーを充填した包装袋を、最も長い長辺Lが水平になるように設置した際に、水平な設置面(水平面)からの包装袋の深さDと、長辺Lが、6.1≦L/D≦10の関係式を満たすこと。
【0014】
<セルロース系ポリマー>
本発明の第一実施形態において、セルロース系ポリマーとはセルロース由来の化合物であれば特に限定されるものではないが、化学変性されたものが好ましく、そのような化学変性とはパルプに官能基を導入することであり、化学変性はアニオン変性であることが好ましい、すなわち化学変性セルロースはアニオン性基を有することが好ましい。アニオン性基としてはカルボキシル基、カルボキシル基含有基、リン酸基、リン酸基含有基、硫酸エステル基等の酸基が挙げられる。カルボキシル基含有基としては、-COOH基、-R-COOH(Rは炭素数が1~3のアルキレン基)、-O-R-COOH(Rは炭素数が1~3のアルキレン基)が挙げられる。リン酸基含有基としては、ポリリン酸基、亜リン酸基、ホスホン酸基、ポリホスホン酸基等が挙げられる。これらの酸基は反応条件によっては、塩の形態(例えばカルボキシレート基(-COOM、Mは金属原子))で導入されることもある。本発明において化学変性は酸化またはエーテル化が好ましい。
【0015】
酸化は公知のとおりに実施できる。例えばN-オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物およびこれらの混合物からなる群より選択される物質との存在下で、酸化剤を用いて水中で原料パルプを酸化する方法が挙げられる。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基、カルボキシル基、およびカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。あるいは、オゾン酸化方法が挙げられる。この酸化反応によればセルロースを構成するグルコピラノース環の少なくとも2位および6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。
【0016】
エーテル化としては、カルボキシメチル(エーテル)化、メチル(エーテル)化、エチル(エーテル)化、シアノエチル(エーテル)化、ヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピル(エーテル)化、エチルヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピルメチル(エーテル)化などが挙げられる。この中でもカルボキシメチル化が好ましい。カルボキシメチル化は、例えば、発底原料としての原料パルプをマーセル化し、その後エーテル化する方法により実施できる。このうち、特にカルボキシメチル化セルロースにおいて、水溶液とした際の粘度低下を防止でき、さらに輸送等を行うに適する包装袋とすることができる。
【0017】
そのようなカルボキシメチル化セルロースは、一般に、セルロースをアルカリで処理(マーセル化)した後、得られたマーセル化セルロース(アルカリセルロースともいう。)を、カルボキシメチル化剤(エーテル化剤ともいう。)と反応させることにより製造することができる。
【0018】
本発明の第一実施形態においてセルロースとは、D-グルコピラノース(単に「グルコース残基」、「無水グルコース」ともいう。)がβ-1,4結合で連なった構造の多糖を意味する。セルロースは、一般に起源、製法等から、天然セルロース、再生セルロース、微細セルロース、非結晶領域を除いた微結晶セルロース等に分類される。本発明では、これらのセルロースのいずれも、マーセル化セルロースの原料として用いることができる。
【0019】
天然セルロースとしては、晒パルプまたは未晒パルプ(晒木材パルプまたは未晒木材パルプ);リンター、精製リンター;酢酸菌等の微生物によって生産されるセルロース等が例示される。晒パルプ又は未晒パルプの原料は特に限定されず、例えば、木材、木綿、わら、竹、麻、ジュート、ケナフ等が挙げられる。また、晒パルプ又は未晒パルプの製造方法も特に限定されず、機械的方法、化学的方法、あるいはその中間で二つを組み合せた方法でもよい。製造方法により分類される晒パルプ又は未晒パルプとしては例えば、メカニカルパルプ(サーモメカニカルパルプ(TMP)、砕木パルプ)、ケミカルパルプ(針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)等の亜硫酸パルプ、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)等のクラフトパルプ)等が挙げられる。さらに、製紙用パルプの他に溶解パルプを用いてもよい。溶解パルプとは、化学的に精製されたパルプであり、主として薬品に溶解して使用され、人造繊維、セロハンなどの主原料となる。
【0020】
カルボキシメチル化セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、0.2~1.5の範囲が好ましく、0.3~1.2の範囲がより好ましく、0.5~1.0の範囲がさらに好ましい。カルボキシメチル置換度が0.2未満であると、カルボキシメチル化セルロースを水溶液とした際に粘度の発現があまり起こらなく、本発明の効果が限定的である。カルボキシメチル置換度が1.5超であると、本発明の包装方法であっても粘度の低下が起こりやすく適さない。
【0021】
なお、本発明の第一実施形態において無水グルコース単位とは、セルロースを構成する個々の無水グルコース(グルコース残基)を意味する。また、カルボキシメチル置換度(エーテル化度ともいう。)とは、セルロースを構成するグルコース残基中の水酸基のうちカルボキシメチルエーテル基に置換されているものの割合(1つのグルコース残基当たりのカルボキシメチルエーテル基の数)を示す。なお、カルボキシメチル置換度はDSと略すことがある。
【0022】
カルボキシメチル置換度の測定方法は以下の通りである:
試料約2.0gを精秤して、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振盪して、カルボキシメチルセルロースの塩(CMC)をH-CMC(水素型カルボキシメチルセルロース)に変換する。その絶乾H-CMCを1.5~2.0g精秤し、300mL共栓付き三角フラスコに入れる。80%メタノール15mLでH-CMCを湿潤し、0.1NNaOHを100mL加え、室温で3時間振盪する。指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1N-H2SO4で過剰のNaOHを逆滴定し、次式によってカルボキシメチル置換度(DS値)を算出する。
A=[(100×F’-0.1N-H2SO4(mL)×F)×0.1]/(H-CMCの絶乾質量(g))
カルボキシメチル置換度=0.162×A/(1-0.058×A)
F’:0.1N-H2SO4のファクター
F:0.1N-NaOHのファクター。
【0023】
本発明の第一実施形態で用いうるセルロース系ポリマーとしては、化学変性を行ったパルプ状物のセルロースをそのまま用いてもよいし、パルプ状物を粉砕処理などにより粉末状にしてもよい。またパルプ状物を解繊処理し、ミクロフィブリル状のセルロースや、ナノファイバー状のセルロースなどの乾燥物を用いてもよい。
【0024】
セルロースナノファイバーは、セルロース原料を未変性のまま、あるいは化学変性を施してから、強いせん断力をかけることにより製造することができる。本発明の第一実施形態においては、セルロース原料は未変性であっても、化学変性されていてもよいが、化学変性されている方がより好ましい。化学変性を施したセルロース原料を用いて製造されたセルロースナノファイバーは、未変性のセルロース原料を用いて製造されたセルロースナノファイバーに対し、繊維長・繊維径が均一になるため、水中分散性が安定であり、より優れた効果を発揮すると推測される。化学変性の方法は特に制限されないが、例えば、酸化、エーテル化、リン酸化、エステル化、シランカップリング、フッ素化、カチオン化などを行うことができる。中でも、N-オキシル化合物を用いた酸化、カルボキシメチル化、カチオン化のいずれかであることが好ましく、カルボキシメチル化または酸化であることが特に好ましい。
【0025】
また本発明の第一実施形態で用いうるセルロース系ポリマーとしては、包装袋内に充填されたときの乾燥固形分量が60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましい。乾燥固形分量が本範囲であると、包装体内で並行水分の乖離量が減少するため、水分によるセルロース系ポリマーの劣化を抑えることができる。
【0026】
<包装袋>
本発明の第一実施形態において、包装袋はガスバリアー性有する包装袋であれば特に制限なく用いることができる。なお、本発明においてガスバリアー性を有するとは、酸素や水分等の透過を抑制できる機能を有することをいい、そのような包装袋としては、ガスバリアー性の高いアルミや、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン系樹脂のコーティング膜を有するナイロンフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体、オレフィン系ポリマー、オレフィン-ポリカルボン酸共重合体、またプラスチック製の基材の上に、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着層を設けた構成からなる透明バリア性フィルム、およびアルミニウム等の金属の蒸着層を設けたバリア性フィルムなどを用いた包装袋とすることが好ましい。
【0027】
また包装袋の最外層は、強度が強く破れにくいものが適しており、紙基材が好ましい。
そのような紙基材としては、例えばクラフト紙が挙げられる。
【0028】
よって、本発明の第一実施形態で用いられる包装袋は、最外層が紙基材であり、内層にガスバリアー性層を有することが好ましく、そのようなガスバリアー層は内袋として別袋としても良いし、最外層の紙基材に添着加工(例えばラミ加工)などをして用いても良い。取り扱いの簡便性等から、ガスバリアー性層は内袋として用いることが、より好ましい。
【0029】
また、本発明の第一実施形態で用いられる包装袋は、充填されるセルロース系ポリマーの品質維持の観点から、紫外線非透過性、または遮光性を有するものが好適である。
【0030】
<セルロース系ポリマーの充填>
包装袋内に、セルロース系ポリマーを充填する方法としては、特に制限されず、包装袋にセルロース系ポリマーが適切に充填されるように充填すればよい。なお、充填量が多すぎると、酸素濃度の調整や、第一実施形態に関し後述する条件(3)の調整などが難しくなるため、セルロース系ポリマーの充填量は包装袋内容積の、99%以下が好ましく、95%以下がより好ましく、90%以下がさらに好ましい。
【0031】
また包装袋が、前述される最外層に紙基材となる外袋(又は外層)と、ガスバリアー層の内袋(又は内層)を有する包装袋である場合、内袋にセルロース系ポリマーを充填してから、外袋に梱包しても良いし、あらかじめ外袋に内袋を入れた後、セルロース系ポリマーを充填しても良い。
【0032】
<包装袋内の酸素濃度の調整>
包装袋内の酸素濃度の調整は、特に限定されないが、セルロース系ポリマーを充填後に行うことが好ましく、例えば、セルロース系ポリマーを充填した後、1)包装袋内を真空にする方法、2)包装袋内を窒素置換する方法、3)包装袋内を真空にした後、窒素置換する方法、4)包装袋内に酸素吸収剤を同封する方法、などが挙げられる。これらの方法の中では、包装袋内を真空にした後、窒素置換する方法が、セルロース系ポリマー同士の凝集を抑制できるため、本発明の第一実施形態においてより好適である。
【0033】
そのような本発明の第一実施形態の包装方法においては、包装袋内の酸素濃度を0.8%以下に調整し封止することが重要である。酸素濃度が0.8%超であると、セルロース系ポリマーが劣化を起こしやすく、セルロース系ポリマーを水溶液にした際の粘度低下が懸念される。酸素濃度は0.75%以下が好ましく、0.7%以下がより好ましく、0.6%以下がさらに好ましい。酸素濃度の下限は制限されないが、作業性や窒素置換時の内圧調整の点から、0.1%以上が好ましく、0.2%以上がより好ましく、0.3%超がさらに好ましい。
【0034】
また包装袋内は、内圧を85kPa以下にすることが好ましく、特にガスバリアー層内の内圧が85kPa以下であることが好適である。内圧が85kPa超であると、充填物に対する包装袋の膨張が大きくなるため、包装袋を積み重ねる積層状態とすることが難しくなり、輸送時などに問題がある。そのような包装袋の内圧は、80kPa以下がより好ましい。
【0035】
なお、包装袋内の内圧の調整方法は特に制限されないが、例えば包装袋内を真空にした後、窒素置換する方法である場合には、真空処理後に窒素を流入する際に、その窒素流入量及び元圧からの内圧指示値を適切に調整することで、包装袋内の内圧を適宜調整することができる。
【0036】
<封止された包装袋の形状>
本発明の第一実施形態においては、セルロース系ポリマーを充填し酸素濃度を調整、封止された包装袋は、その最も長い長辺Lが水平になるように、水平な設置面(水平面という)上に設置した際に、水平面からの包装袋の深さDと、長辺Lが、6.1≦L/D≦10の関係式を満たすことが重要である。
【0037】
図1は、水平面上に、長辺Lが水平になるように設置した、セルロース系ポリマーを充填した包装袋を示している。本発明において、セルロース系ポリマーが充填された包装袋は、水平となるように設置されたのち、長辺Lと深さDの計測を行う前に、水平面に沿って充填領域が均等に充填されることが重要である。
【0038】
そのような長辺Lは、包装袋の封止口は含まず、包装袋の充填領域のみの長さを現わす。長辺Lは700mm以上1100mm以下の範囲であることが好ましく、700mm以上1000mm以下がよりしく、700mm以上900mm以下がさらに好ましい。
【0039】
セルロース系ポリマーを充填した包装袋の長辺Lと、直行する短辺Wは、400mm以上700mm未満であることが好ましく、450mm以上650mm以下が好ましく、450mm以上600mm以下がさらに好ましい。
【0040】
セルロース系ポリマーを充填した包装袋の深さDは、130mm未満が好ましく、125mm以下がより好ましく、120mm以下がさらに好ましい。
【0041】
本発明の第一実施形態であるセルロース系ポリマーの包装方法では、前述の関係式を満たすことで、セルロース系ポリマーを充填した包装袋を、積層する際に適度なバランスとなり、積層が容易となる。また包装袋の長辺L、深さD、および短辺Wが上述される範囲を満たすことで、セルロース系ポリマーの充填がしやすくなり、また包装袋の積層も容易となる。
さらに当該包装袋を積層し輸送する際に、振動などによる積層状態のバランス欠如が起こりにくくなるため、本発明において重要である。
【0042】
本発明の第一実施形態において、包装袋を積層する際には、2段以上10段以下の積層状態とすることが好ましく、さらに好ましくは2段以上8段以下の積層状態とすることが好ましい。積層状態が本範囲であると、包装袋の積層状態のバランスがより適度とすることができる。
【0043】
2.本発明の第二実施形態
本発明の他の実施形態として、最外層表面の静摩擦係数が0.2~0.5、且つ動摩擦係数0.15~0.35の範囲を満たすガスバリアー性を有する包装袋に、セルロース系ポリマーを充填することを特徴とする、セルロース系ポリマーの包装方法が提供される(以下、第二実施形態ともいう)。
【0044】
まず、第二実施形態における1つの特徴的な部分である包装袋について説明する。
<包装袋>
本発明の第二実施形態において、包装袋はガスバリアー性有する包装袋であれば特に制限なく用いることができる。なお、本発明においてガスバリアー性を有するとは、酸素や水分等の透過を抑制できる機能を有することをいい、そのような包装袋としては、ガスバリアー性の高いアルミや、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン系樹脂のコーティング膜を有するナイロンフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体、オレフィン系ポリマー、オレフィン-ポリカルボン酸共重合体、またプラスチック製の基材の上に、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物の蒸着層を設けた構成からなる透明バリア性フィルム、およびアルミニウム等の金属の蒸着層を設けたバリア性フィルムなどを用いた包装袋とすることが好ましい。
【0045】
また包装袋の最外層は、強度が強く破れにくいものが適しており、紙基材が好ましい。そのような紙基材としては、例えばクラフト紙が挙げられる。
【0046】
よって、本発明の第二実施形態で用いられる包装袋は、最外層が紙基材であり、内層にガスバリアー性層を有することが好ましく、そのようなガスバリアー性層は内袋として別袋としても良いし、最外層の紙基材に添着加工(例えばラミ加工)などをして用いても良い。取り扱いの簡便性等から、ガスバリアー性層は内袋として用いることが、より好ましい。
【0047】
そのような包装袋の最外層表面は、静摩擦係数が0.2~0.5の範囲であることが重要であり、0.2~0.45の範囲であることが好ましく、0.2~0.4の範囲であることがより好ましい。最外層表面の静摩擦係数が本範囲にあることで、包装袋にセルロース系ポリマーを充填し、輸送のためパレット上などに包装袋同士を積層する場合でも、バランスを崩して落下しにくくなり、また摩擦力も強すぎることもないため、積層時に包装袋をずり動かせて積層状態を調整することも容易である。
【0048】
また包装袋の最外層表面は、動摩擦係数が0.15~0.35の範囲であることが重要であり、0.2~0.35の範囲であることが好ましく、0.22~0.32の範囲であることがより好ましい。最外層表面の動摩擦係数が本範囲にあることで、包装袋にセルロース系ポリマーを充填し、輸送のためパレット上などに包装袋同士を積層する場合でも、積層状態の包装袋同士をずり動かしやすく、また包装袋がバランスを崩して落下などをし難くなる、適度な範囲である。なお、包装袋の最外層表面の静摩擦係数及び動摩擦係数の測定は、JIS P8147に準拠し測定することができる。
【0049】
さらに包装袋の最外層は、王研法による平滑度が2~10秒の範囲であることが好ましく、3~9秒の範囲であることがより好ましく、4~8秒の範囲であることがさらに好ましい。平滑度が本範囲にあることで、最外層表面の凹凸が、包装袋にセルロース系ポリマーを充填し、輸送のためパレット上などに包装袋同士を積層する場合、落下防止やずり動かす際の適するバランスとなることができる。そのような王研法による平滑度の測定は、JIS P8155に準拠し行うことができる。
【0050】
また本発明の第二実施形態において、包装袋の最外層は、坪量50~100g/m2の範囲を満たすことが好ましく、60~100g/m2の範囲を満たすことがより好ましく、65~95g/m2の範囲を満たすことがさらに好ましい。包装袋の最外層基材が上記範囲を満たすことで、セルロース系ポリマーを充填する場合にも、強度を保持しつつ前述する最外層としての最適なバランスを発揮しやすくなる。そのような坪量の測定は、JIS P8124に準拠し行うことができる。
【0051】
また、本発明の第一実施形態で用いられる包装袋は、充填されるセルロース系ポリマーの品質維持の観点から、紫外線非透過性、または遮光性を有するものが好適である。
【0052】
第二実施形態に関するその他の技術的事項は、上記第一実施形態と同様である。すなわち、第一実施形態に関する説明で示した事項である:セルロース系ポリマーの定義;酸化の方法;エーテル化;カルボキシメチル化セルロース;セルロース;天然セルロース;カルボキシメチル化セルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度;無水グルコース単位;カルボキシメチル置換度の測定方法;セルロース系ポリマーについての形状(パルプ状、粉末状、ミクロフィブリル状、ナノファイバー状など);包装袋内に充填されたときの乾燥固形分量;包装袋の積層段数に関する状態、などに係る説明は、第二実施形態においても第一実施形態と同様に採用されうる。
【0053】
3.第一実施形態および第二実施形態の組み合わせ
本発明の他の実施形態として、上述の第一実施形態および第二実施形態を組み合わせてもよい。そのような変形例としては例えば、次のような実施形態でありうる。
【0054】
<第一及び第二実施形態の組み合わせの例>
ガスバリアー性を有する包装袋内にセルロース系ポリマーを充填し、前記包装袋を封止する、セルロース系ポリマーの包装方法であって、
下記条件(1)~(4):
条件(1):ガスバリアー性を有する包装袋内に、セルロース系ポリマーを充填すること、
条件(2):包装袋内の酸素濃度を0.8%以下に調整し封止すること、
条件(3):セルロース系ポリマーを充填した包装袋を、最も長い長辺Lが水平になるように設置した際に、水平面からの包装袋の深さDと、長辺Lが、6.1≦L/D≦10の関係式を満たすこと、
条件(4):前記包装袋の最外層表面の静摩擦係数が0.2~0.5、且つ動摩擦係数0.15~0.35の範囲を満たすこと、
を満たす方法。
【0055】
第一および第二実施形態の組み合わせの場合において、具体的な技術的事項または好ましい例などは、上記第一実施形態または第二実施形態において説明したことを同様に採用しうる。
【0056】
4.本発明の第三実施形態
上述のとおり、本発明のいくつかの態様は、包装方法、輸送方法などの方法でありうるが、本発明によれば、係る包装方法を利用した、セルロース系ポリマーの包装物が提供される。包装物の実施形態としては、例えば、上記第一実施形態に示す包装方法によって、以下のようなセルロース系ポリマーの包装物が提供される。
【0057】
密封された包装袋と、前記包装袋内に充填されたセルロース系ポリマーとを備える、セルロース系ポリマーの包装物であって、下記条件(1)~(3):
条件(1):ガスバリアー性を有する包装袋内に、セルロース系ポリマーを充填されていること、
条件(2):包装袋内の酸素濃度を0.8%以下に調整し封止すること、
条件(3):セルロース系ポリマーを充填した包装袋を、最も長い長辺Lが水平になるように設置した際に、水平面からの包装袋の深さDと、長辺Lが、6.1≦L/D≦10の関係式を満たすこと、
を満たす、包装物。
【0058】
包装物の他の実施形態としては、例えば、上記第二実施形態に示す包装方法によって、以下のようなセルロース系ポリマーの包装物が提供される。
【0059】
ガスバリアー性を有し、密封された包装袋と、前記包装袋内に充填されたセルロース系ポリマーとを備える、セルロース系ポリマーの包装物であって、
前記包装袋は、最外層表面の静摩擦係数が0.2~0.5、且つ動摩擦係数0.15~0.35の範囲を満たす、包装物。
【0060】
第三実施形態に関するより具体的な技術的事項または好ましい例などは、上記第一実施形態または第二実施形態において説明したことを同様に採用しうる。また、第一実施形態および第二実施形態に示した技術的事項を組み合わせたセルロース系ポリマーの包装物とすることもできる。
【実施例0061】
<第1実施例群>
[実施例1-1]
カルボキシメチルセルロース(日本製紙社製、製品名:MAC500LC)を、未充填(空袋)の状態で長さ850mm、幅565mmで、最外層がクラフト紙基材であり、内装にフィルム基材を有する包装袋に、充填を行った。
充填後、真空脱気した後、窒素ガスを注入し、包装体内の酸素濃度を0.50%、内圧指示値が70kPaとなるように調整し、封止口を密封した。
得られた包装袋を、水平面に設置し、包装袋の内容物が充填領域に均等になるようにしたのち包装袋を計測したところ、その最も長い長辺Lは760mm、水平面からの深さDは110mm、長辺Lと直行する短辺W520mmであった。
【0062】
[実施例1-2]
カルボキシメチルセルロース(日本製紙社製、製品名:MAC350HC)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして包装袋を得た。
【0063】
[実施例1-3]
カルボキシメチルセルロース(日本製紙社製、製品名:MAC800LC)を用いた以外は、実施例1と同様にして包装袋を得た。
【0064】
[比較例1-1]
包装体内の酸素濃度を0.3%、内圧指示値を90kPaにした以外は、実施例1と同様にして包装袋を得た。得られた包装袋は水平面に設置し、包装袋の内容物が充填領域に均等になるようにしたのち包装袋を計測したところ、その最も長い長辺Lは760mm、水平面からの深さDは130mm、長辺Lと直行する短辺W520mmであった。
【0065】
【表1】
【0066】
実施例1-1~1-3、および比較例1-1のカルボキシメチルセルロースの充填直後、および50℃のコンテナに1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月保管後の1%水溶液の粘度を測定した。なお水溶液の調整方法及び粘度の測定方法は後述の方法により行った。
また、得られた包装袋をパレット上に、4列6段積みにて積層した際の、積層状態を目視にて確認を行った。
【0067】
<水溶液の調整>
試料約10gを上皿天秤で採取する。その試料を純水880ml入りのビーカーに溶解用攪拌機を使用し、攪拌しながら徐々に試料を投入して3時間攪拌する。水分値から計算した純水を濃度が1%になるように補正する。
【0068】
<粘度測定>
3時間攪拌後(完全溶解確認)、溶液の温度を25±0.2℃に調整する。B型粘度計を用い、粘度を測定する。測定値はローターを始動してから3分後の目盛りを読み取る。
【0069】
[粘度変化率]
経過日数0日(包装前)のセルロース系ポリマーの1%水溶液粘度(粘度1)に対する、包装後コンテナ内で50℃で保管(1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月)したセルロース系ポリマーの1%水溶液粘度(粘度2)粘度の変化率は次式(1)により算出する。
〔(粘度2-粘度1)/粘度1〕×100 (%)・・・(1)
【0070】
【表2】
【0071】
実施例1-1~1-3の包装袋は、充填されたカルボキシメチルセルロースが保管後の高く粘度を維持できていることがわかる。さらに、包装袋は包装袋の強度に対し内圧のバランスが優れ膨張を起こしていないので、積層時のバランスにも優れる。
一方、比較例1-1の包装袋は、酸素濃度が低く抑えられているため、カルボキシメチルセルロースの粘度維持効果には優れているが、内圧が高く包装袋が膨張しており積層状態でのバランスが悪く、輸送形態としては適していない。
【0072】
<第2実施例群>
[実施例2-1]
カルボキシメチルセルロース(日本製紙社製、製品名:MAC500LC)を、最外層がクラフト紙基材(表面の静摩擦係数:0.32、動摩擦係数:0.28、王研式平滑度:5秒、坪量:85g/m2)であり、内層にフィルム基材を有する包装袋に、充填を行った。
充填後、真空脱気した後、窒素ガスを注入し、包装体内の酸素濃度を0.50%、内圧指示値が70kPaとなるように調整し、封止口を密封し、カルボキシメチルセルロースを充填した包装袋2-1を得た。
【0073】
[実施例2-2]
最外層がクラフト紙基材(表面の静摩擦係数:0.30、動摩擦係数:0.28、王研式平滑度:5秒、坪量:76g/m2)に変えた以外は、実施例1と同様にして、カルボキシメチルセルロースを充填した包装袋2-2を得た。
【0074】
[比較例2-1]
クラフト紙基材を用いず、フィルム基材(表面の静摩擦係数:0.12、動摩擦係数:0.1、王研式平滑度:測定不可、坪量:109g/m2)が最外層となるように変えた以外は、実施例1と同様にしてカルボキシメチルセルロースを充填した包装袋3を得た。
【0075】
【表3】
【0076】
実施例2-1および2-2のカルボキシメチルセルロースの充填直後、および50℃のコンテナに1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月保管後の1%水溶液の粘度を測定した。なお水溶液の調整方法、粘度の測定方法、および粘度変化率の算出は、上記第一実施例群について示した方法と同じ方法により行った。
【0077】
また、実施例2-1および2-2及び比較例2-1の包装袋をパレット上に、4列6段積みにて積層した際の積層のしやすさと、積層状態を目視にて確認を行った。
【0078】
【表4】
図1