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特開2022-44810低品質油の改質方法および改質システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044810
(43)【公開日】2022-03-17
(54)【発明の名称】低品質油の改質方法および改質システム
(51)【国際特許分類】
   C10G 67/04 20060101AFI20220310BHJP
   C10G 21/00 20060101ALI20220310BHJP
   C10G 11/00 20060101ALI20220310BHJP
   C10G 47/00 20060101ALI20220310BHJP
   C10G 45/58 20060101ALI20220310BHJP
【FI】
C10G67/04
C10G21/00
C10G11/00
C10G47/00
C10G45/58
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022012236
(22)【出願日】2022-01-28
(62)【分割の表示】P 2020514508の分割
【原出願日】2017-09-11
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】龍軍
(72)【発明者】
【氏名】侯煥▲テイ▼
(72)【発明者】
【氏名】王子軍
(72)【発明者】
【氏名】申海平
(72)【発明者】
【氏名】董明
(72)【発明者】
【氏名】戴立順
(72)【発明者】
【氏名】▲キョウ▼剣洪
(72)【発明者】
【氏名】李吉廣
(72)【発明者】
【氏名】張書紅
(72)【発明者】
【氏名】王翠紅
(72)【発明者】
【氏名】▲シャ▼玉成
(72)【発明者】
【氏名】王玉章
(72)【発明者】
【氏名】陶夢▲エイ▼
(57)【要約】
【課題】低品質油の改質方法および改質システムを開示する。
【解決手段】この改質方法は、(1)水素ガスの存在下(および任意構成で、転化触媒の存在下)にて低品質油を転化反応させて、転化産物を得る工程;(2)転化産物を処理して、第1処理産物を得る工程(第1処理産物は、特定量の特別成分を含む);(3)第1処理産物を抽出分離して、改質油および残渣を得る工程;を含む。この改質方法および改質システムは、処理が安定していたり、改質の効率が高かったり、環境的であったり、コークスの収率が低かったり、改質油の収率が高かったりするなどの利点を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(1)~(3)を含む改質方法であって、任意構成で、下記工程(4)をさらに含む改質方法:
工程(1) 水素ガスの存在下(および任意構成で、転化触媒の存在下)にて、改質原料である低品質油を転化反応させて、転化産物を得る工程;
工程(2) (例えば、成分の調整または分離によって)上記転化産物を処理して、第1処理産物を得る工程であって、
ここで、上記第1処理産物は、沸点または沸騰範囲が350℃~524℃(好ましくは355℃~500℃、例えば380℃~524℃または400℃~500℃)である成分を、20重量%~60重量%(好ましくは、上記第1処理産物の総重量に対して25重量%~55重量%)含んでおり、
特に、任意構成でヘテロ原子有している1種類以上炭化水素を含んでいる、工程;
工程(3) 上記第1処理産物を抽出分離して、改質油および残渣を得る工程;
工程(4) 上記残渣の全部または一部を上記工程(1)にリサイクルする工程(例えば80重量%超、好ましくは90重量%超、さらに好ましくは95重量%以上)。
【請求項2】
上記工程(2)は、下記工程(2-1)~(2-4)のうち1つ以上を含む、請求項1に記載の改質方法:
工程(2-1) 第1圧力下および第1温度下にて、上記転化産物から気体成分および液体成分を分離して得る工程;
工程(2-2) 第2圧力下および第2温度下にて、上記液体成分から第2分離産物および上記第1分離産物を分離して得る工程であって、
ここで、上記分離においては、
(i)第1分離産物は、沸点または沸騰範囲が350℃~524℃(好ましくは355℃~500℃、例えば380℃~524℃または400℃~500℃)である成分を、20重量%~60重量%(好ましくは、上記第1分離産物の総重量に対して25重量%~55重量%)含んでおり、
特に、任意構成でヘテロ原子を有している1種類以上の炭化水素を含み、
(ii)上記第2分離産物(または、第2分離産物の任意の成分)は、終留点が350℃以下である、工程;
工程(2-3) 任意構成で、上記第2分離産物からナフサおよび常圧軽油を分離して得る工程;
工程(2-4) 任意構成で、上記気体成分を上記工程(1)にリサイクルする工程;
ここで、上記第1圧力は上記第2圧力よりも大きく、
好ましくは、上記第1圧力は上記第2圧力よりも4MPa~24MPa大きく、より好ましくは、上記第1圧力は上記第2圧力よりも7MPa~19MPa大きい。
【請求項3】
上記工程(3)は、下記工程(3-1)~(3-11)のうち1つ以上を含む、請求項1または2に記載の改質方法:
工程(3-1) 第3圧力下および第3温度下にて、上記第1分離産物または上記第1処理産物を溶媒と接触させて(好ましくは向流接触させて)、上記改質油および上記残渣を得る工程;
工程(3-2) 任意構成で、上記改質油を水素化処理して、水素化改質油を得る工程;
工程(3-3) 任意構成で、上記改質油を水素化分解して水素化分解産物を得た後、当該水素化分解産物から乾性ガス、液化ガス、航空用ケロシン、ディーゼル油および水素化テール油を分離して得る工程;
工程(3-4) 任意構成で、上記水素化改質油を接触分解して第1触媒分解産物を得た後、当該第1触媒分解産物から、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油を分解して得る工程;
工程(3-5) 任意構成で、上記水素化改質油および上記常圧軽油を共に接触分解して第2触媒分解産物を得た後、当該第2触媒分解産物から、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油を分離して得る工程;
工程(3-6) 任意構成で、上記水素化改質油および上記第2分離産物を共に接触分解して第3触媒分解産物を得た後、当該第3触媒分解産物から、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油、およびスラリー油を分離して得る工程;
工程(3-7) 任意構成で、上記常圧軽油を水素化処理してディーゼル油を得る工程;
工程(3-8) 任意構成で、上記改質方法における任意の工程にて得られる循環油を、単独でまたは上記改質油と共に水素化処理して、水素化処理油を得る工程;
工程(3-9) 任意構成で、上記水素化処理油および上記第2分離産物を共に接触分解して第4触媒分解産物を得た後、当該第4触媒分解産物から、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油を分離して得る工程;
工程(3-10) 任意構成で、上記改質方法における任意の工程にて得られるスラリー油および/または外部から供給されるスラリー油を、上記工程(1)、上記工程(2)および/または上記工程(3)にリサイクルする工程;
工程(3-11) 任意構成で、上記改質方法における任意の工程にて得られる液化ガスを、上記工程(3)または上記工程(3-1)にリサイクルする工程。
【請求項4】
上記転化反応(任意構成で、転化触媒の存在下における添加反応)の反応条件は、下記の通りである、請求項1に記載の改質方法:
水素ガスの分圧:10.0MPa~25.0MPa(好ましくは13.0MPa~20.0MPa);
反応温度:380℃~470℃(好ましくは400℃~440℃);
上記改質原料の体積空間速度:0.01h-1~2.0h-1(好ましくは0.1h-1~1.0h-1);
水素ガスの上記改質原料に対する体積比:500~5000(好ましくは800~2000)。
【請求項5】
(i)上記第1圧力は10.0MPa~25.0MPa(好ましくは13.0MPa~20.0MPa)であり、上記第1温度は380℃~470℃(好ましくは400℃~440℃)である、あるいは、
(ii)上記第2圧力は0.1MPa~5.0MPa(好ましくは0.1MPa~4.0MPa)であり、上記第2温度は150℃~390℃(好ましくは200℃~370℃)である、
請求項2に記載の改質方法。
【請求項6】
上記溶媒は、C3-7炭化水素のうちの1種類以上であり、
好ましくは、C3-5アルカンおよびC3-5アルケンから選択される1種類以上であり(例えば、C3-4アルカンおよびC3-4アルケンから選択される1種類以上)、
上記溶媒の、上記第1分離産物または上記第1処理産物に対する重量比は(1~7):1であり、
好ましくは、(1.5~5):1である、
請求項3に記載の改質方法。
【請求項7】
上記第3圧力は、3MPa~12MPaであり、
好ましくは、3.5MPa~10MPaであり、
上記第3温度は55℃~300℃であり、
好ましくは、70℃~220℃である、
請求項3に記載の改質方法。
【請求項8】
請求項3に記載の改質方法であって、
(i)上記工程(3-2)または上記工程(3-8)は水素化触媒の存在下にて行われ、当該工程の反応条件は下記の通りである、改質方法:
水素ガスの分圧:5.0MPa~20.0MPa(好ましくは8.0MPa~15.0MPa);
反応温度:330℃~450℃(好ましくは350℃~420℃)
原料油の体積空間速度:0.1h-1~3.0h-1(好ましくは0.3h-1~1.5h-1);
水素ガスの原料油に対する体積比:300~3000(好ましくは800~1500);
;あるいは、
(ii)上記工程(3-3)は水素化分解触媒の存在下にて行われ、当該工程の反応条件は下記の通りである、改質方法:
水素ガスの分圧:10.0MPa~20.0MPa;
反応温度:310℃~420℃;
上記改質油の体積空間速度:0.3h-1~1.2h-1
水素ガスの上記改質油に対する体積比:600~1500;あるいは、
(iii)上記工程(3-4)、上記工程(3-5)、上記工程(3-6)または上記工程(3-9)は分解触媒の存在下にて行われ、当該工程の反応条件は下記の通りである、改質方法:
反応温度:450℃~650℃(好ましくは480℃~560℃);
反応圧力:0.15MPa~0.4MPa;
反応時間:0.1秒間~10秒間(好ましくは、0.2秒間~4秒間);
分解触媒の原料油に対する重量比:3~30(好ましくは5~15);
水蒸気の原料油に対する重量比:0.05~0.6(好ましくは0.05~0.4);あるいは、
(iv)上記工程(3-7)水素化触媒の存在下にて行われ、当該工程の反応条件は下記の通りである、改質方法:
水素ガスの分圧:7.0MPa~15.0MPa;
反応圧力:8MPa~12MPa;
反応温度:340℃~400℃;
上記常圧軽油の体積空間速度:0.6h-1~1.5h-1
水素ガスの上記常圧軽油に対する体積比:500~800。
【請求項9】
上記残渣の軟化点は150℃未満である、請求項1に記載の改質方法。
【請求項10】
上記低品質油は、アスファルト質、アスファルテンおよびアスファルテン前駆体のうちの1種類以上(特に、アスファルト質)を含み、
好ましくは、劣等油、脱油アスファルト、重油、超重質油、石炭由来油、シェールオイルおよび石油化学廃油から選択される1種類以上であり、
好ましくは、
上記重油は、抜頭原油、オイルサンドビチューメンから得られる重油、および、初留点が350℃超の重油から選択される1種類以上であり、
上記石炭由来油は、石炭の液化によって生成された液化石炭油、および、石炭の熱分解によって生成されたコールタールから選択される1種類以上であり、
上記石油化学廃油は、石油化学廃油スラッジ、石油化学残渣、および、これらの精製物から選択される1種類以上である、
請求項1に記載の改質方法。
【請求項11】
(i)上記第1分離産物または上記第1処理産物の初留点は330℃以上である、あるいは、
(ii)上記第1分離産物または上記第1処理産物は、沸点または沸騰範囲が350℃以下の軽質成分をさらに含む、あるいは、
(iii)上記第1分離産物または上記第1処理産物は、沸点または沸騰範囲が500℃超(好ましくは524℃超)の重質成分をさらに含み、
好ましくは、上記重質成分は、アスファルト質、アスファルテンおよびアスファルテン前駆体のうちの1種類以上(特に、アスファルト質)を含む、
請求項1または2に記載の改質方法。
【請求項12】
上記工程(2)においては、上記第1処理産物に加えて、第2処理産物の1種類以上が得られ、
上記第2処理産物(またはその任意の成分)の終留点は350℃以下である、
請求項1に記載の改質方法。
【請求項13】
転化反応ユニット、転化産物処理ユニット、第1制御ユニット、抽出分離ユニット、および任意構成の残渣処理ユニットを備えている改質システムであって、
上記転化反応ユニットは、水素ガスの存在下(および任意構成で、転化触媒の存在下)にて低品質油を転化反応させて、得られる転化産物を放出するように構成されており、
転化産物処理ユニットは、(例えば、成分の調整または分離によって)上記転化産物を処理し、得られる第1処理産物を放出するように構成されており、
第1制御ユニットは、上記転化産物処理ユニットの処理条件(処理温度および/または処理圧力など)を制御するように構成されており、
このとき、上記第1処理産物は、沸点または沸騰範囲が350℃~524℃(好ましくは355℃~500℃、例えば、380℃~524℃または400℃~500℃)である成分(特に、任意構成でヘテロ原子を有している1種類以上の炭化水素)が、20重量%~60重量%(好ましくは、上記第1処理産物の総重量に対して30重量%~50重量%)含まれるように制御されており、
上記抽出分離ユニットは、上記第1処理産物を抽出分離して、得られる改質油および残渣を別々に放出するように構成されており、
上記残渣処理ユニットは、上記残渣の全部または一部(例えば、80重量%超、好ましくは90重量%超、さらに好ましくは95重量%以上)を上記転化反応ユニットに運搬するように構成されている、
改質システム。
【請求項14】
上記転化産物処理ユニットは、第1転化産物分離ユニットと、第2転化産物分離ユニットと、任意構成の第2分離産物分離ユニットと、任意構成の気体成分運搬ユニットと、を備えており、
上記第1転化産物分離ユニットは、上記転化産物を分離して、得られる気体成分および液体成分を別々に放出するように構成されており、
上記第2転化産物分離ユニットは、上記液体成分を分離して、得られる第2分離産物および上記第1分離産物を別々に放出するように構成されており、
上記第2分離産物分離ユニットは、上記第2分離産物を分離して、得られるナフサおよび常圧軽油を別々に放出するように構成されており、
上記気体成分運搬ユニットは、上記気体成分を上記転化反応ユニットに運搬するように構成されている、
請求項13に記載の改質システム。
【請求項15】
第2制御ユニットと、第3制御ユニットと、をさらに備えており、
上記第2制御ユニットは、上記第1転化産物分離ユニットの処理圧力(好ましくは、上記気体成分の出口圧力)を制御するように構成されており、
上記第3制御ユニットは、上記第2転化産物分離ユニットの処理圧力(好ましくは、上記第2分離産物の出口圧力)を制御して、上記第1転化産物分離ユニットの処理圧力を上記第2転化産物分離ユニットの処理圧力よりも大きくするように構成されており、
好ましくは、上記第3制御ユニットは、上記第2転化産物分離ユニットの処理条件(例えば、処理温度および/または処理圧力)を制御して、
(i)上記第1分離産物が、沸点または沸騰範囲が350℃~524℃(好ましくは355℃~500℃、例えば、380℃~524℃または400℃~500℃)である成分を、20重量%~60重量%(好ましくは、上記第1分離産物の総重量に対して25重量%~55重量%)含み(特に、任意構成でヘテロ原子を有している1種類以上の炭化水素を含み)、
(ii)上記第2分離産物(または、その任意の構成成分)の終留点が350℃以下となるように構成されている、
請求項14に記載の改質システム。
【請求項16】
上記抽出分離ユニットは、上記第1分離産物または上記第1処理産物と溶媒とを接触(好ましくは向流接触)させて、得られる改質油および上記残渣を別々に放出するように構成されている、請求項13または14に記載の改質システム。
【請求項17】
下記ユニットの1つ以上をさらに備えている、請求項13または16に記載の改質システム:
上記改質油を水素化処理して、得られる水素化改質油を放出するように構成されている、第1水素化ユニット;
上記改質油を水素化分解して、得られる水素化分解産物を、乾性ガス、液化ガス、航空用ケロシン、ディーゼル油および水素化テール油に分離するように構成されている、第2水素化ユニット;
上記水素化改質油を接触分解して、得られる第1触媒分解産物を、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油に分離するように構成されている、第1接触分解ユニット;
上記水素化改質油および上記常圧軽油を共に接触分解して、得られる第2触媒分解産物を、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油に分離するように構成されている、第2接触分解ユニット;
上記水素化改質油および上記第2分離産物を共に接触分解して、得られる第3触媒分解産物を、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油に分離するように構成されている、第3接触分解ユニット;
上記常圧軽油を水素化処理して、得られるディーゼル油を放出するように構成されている、第3水素化ユニット;
上記改質システムにおける任意のユニットにて得られる循環油を上記改質油と共に水素化処理して、得られる水素化処理油を放出するように構成されている、第4水素化ユニット;
上記水素化処理油および上記第2分離産物を共に接触分解して、得られる第4触媒分解産物を、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油に分離するように構成されている、第4接触分解ユニット;
上記改質システムにおける任意のユニットにて得られるスラリー油および/または外部から供給されるスラリー油を、上記転化反応ユニット、上記転化産物処理ユニットおよび/または上記抽出分離ユニットに運搬するように構成されている、スラリー油運搬ユニット;
上記改質システムにおける任意のユニットにて得られる液化ガスを、上記抽出分離ユニットに運搬するように構成されている、液化ガス運搬ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料化学工業の分野に関しており、特に低品質油の改質方法に関している。本発明はまた、これに対応する改質システムにも関している。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料の品質は、年を追うごとに低下している。また、品質の低い燃料油(残油、劣等油、シェールオイル、オイルサンド由来の重油、石炭由来油など)の生産量も、年々増加している。これらの低品質油には、密度および粘度が高く、ヘテロ原子(硫黄、窒素、重金属)やアスファルト質を多く含むという特徴がある。また、これらの低品質油のために開発された、ディレードコーキング法などの従来の加工技術には、コークスの収率が高かったり、エネルギーの利用効率が低かったり、経済性が悪かったり、生産工程が環境的ではなかったりするなどの課題が存在している。そのため、これらの低品質油を効率的かつ環境的に改質する技術を開発することが、石油化学産業の発展および研究の焦眉となっている。
【0003】
中国特許第ZL200310104918.2号には、低品質重油および残油の改質方法が開示されている。この方法においては、まず、重油および残油をスラリー床で緩やかに水素化分解して、大部分の(または全ての)金属不純物を樹脂質およびアスファルト質から遊離させる。次に、水素化処理後の産物を金属吸着反応器に通す(この反応器は、切替操作できるか、またはライン稼働中に充填剤を交換できる)。これによって、スラリー床で水素化分解した油から溶出した金属不純物を吸着除去する。次に、金属を除去した後の産物を固定床式水素化装置に送る。この装置で深度水素化することにより、他の不純物を除去して、接触分解用の高品質重油原料が生産される。
【発明の概要】
【0004】
本発明の発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、低品質油の新規な改質方法および改質システムを開発し、本発明を完成させた。
【0005】
具体的に、本発明は、以下の態様に関連する。
【0006】
<態様1>
下記工程(1)~(3)を含む改質方法であって、任意構成で、下記工程(4)をさらに含む改質方法:
工程(1) 水素ガスの存在下(および任意構成で、転化触媒の存在下)にて、改質原料である低品質油を転化反応させて、転化産物を得る工程;
工程(2) (例えば、成分の調整または分離によって)上記転化産物を処理して、第1処理産物を得る工程であって、
ここで、上記第1処理産物は、沸点または沸騰範囲が350℃~524℃(好ましくは355℃~500℃、例えば380℃~524℃または400℃~500℃)である成分を、20重量%~60重量%(好ましくは、上記第1処理産物の総重量に対して25重量%~55重量%)含んでおり、
特に、任意構成でヘテロ原子有している1種類以上炭化水素を含んでいる、工程;
工程(3) 上記第1処理産物を抽出分離して、改質油および残渣を得る工程;
工程(4) 上記残渣の全部または一部を上記工程(1)にリサイクルする工程(例えば80重量%超、好ましくは90重量%超、さらに好ましくは95重量%以上)。
【0007】
<態様2>
上記工程(2)は、下記工程(2-1)~(2-4)のうち1つ以上を含む、態様1に記載の改質方法:
工程(2-1) 第1圧力下および第1温度下にて、上記転化産物から気体成分および液体成分を分離して得る工程;
工程(2-2) 第2圧力下および第2温度下にて、上記液体成分から第2分離産物および第1分離産物を分離して得る工程であって、
ここで、上記分離においては、
(i)第1分離産物は、沸点または沸騰範囲が350℃~524℃(好ましくは355℃~500℃、例えば380℃~524℃または400℃~500℃)である成分を、20重量%~60重量%(好ましくは、上記第1分離産物の総重量に対して25重量%~55重量%)含んでおり、
特に、任意構成でヘテロ原子を有している1種類以上の炭化水素を含み、
(ii)上記第2分離産物(または、第2分離産物の任意の成分)は、終留点が350℃以下である、工程;
工程(2-3) 任意構成で、上記第2分離産物からナフサおよび常圧軽油を分離して得る工程;
工程(2-4) 任意構成で、上記気体成分を上記工程(1)にリサイクルする工程;
ここで、上記第1圧力は上記第2圧力よりも大きく、
好ましくは、上記第1圧力は上記第2圧力よりも4MPa~24MPa大きく、より好ましくは、上記第1圧力は上記第2圧力よりも7MPa~19MPa大きい。
【0008】
<態様3>
上記工程(3)は、下記工程(3-1)~(3-11)のうち1つ以上を含む、態様1または2に記載の改質方法:
工程(3-1) 第3圧力下および第3温度下にて、上記第1分離産物または上記第1処理産物を溶媒と接触させて(好ましくは向流接触させて)、上記改質油および上記残渣を得る工程;
工程(3-2) 任意構成で、上記改質油を水素化処理して、水素化改質油を得る工程;
工程(3-3) 任意構成で、上記改質油を水素化分解して水素化分解産物を得た後、当該水素化分解産物から乾性ガス、液化ガス、航空用ケロシン、ディーゼル油および水素化テール油を分離して得る工程;
工程(3-4) 任意構成で、上記水素化改質油を接触分解して第1触媒分解産物を得た後、当該第1触媒分解産物から、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油を分解して得る工程;
工程(3-5) 任意構成で、上記水素化改質油および上記常圧軽油を共に接触分解して第2触媒分解産物を得た後、当該第2触媒分解産物から、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油を分離して得る工程;
工程(3-6) 任意構成で、上記水素化改質油および上記第2分離産物を共に接触分解して第3触媒分解産物を得た後、当該第3触媒分解産物から、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油、およびスラリー油を分離して得る工程;
工程(3-7) 任意構成で、上記常圧軽油を水素化処理してディーゼル油を得る工程;
工程(3-8) 任意構成で、上記改質方法における任意の工程にて得られる循環油を、単独でまたは上記改質油と共に水素化処理して、水素化処理油を得る工程;
工程(3-9) 任意構成で、上記水素化処理油および上記第2分離産物を共に接触分解して第4触媒分解産物を得た後、当該第4触媒分解産物から、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油を分離して得る工程;
工程(3-10) 任意構成で、上記改質方法における任意の工程にて得られるスラリー油および/または外部から供給されるスラリー油を、上記工程(1)、上記工程(2)および/または上記工程(3)にリサイクルする工程;
工程(3-11) 任意構成で、上記改質方法における任意の工程にて得られる液化ガスを、上記工程(3)または上記工程(3-1)にリサイクルする工程。
【0009】
<態様4>
上記転化反応(任意構成で、転化触媒の存在下における添加反応)の反応条件は、下記の通りである、態様1に記載の改質方法:
水素ガスの分圧:10.0MPa~25.0MPa(好ましくは13.0MPa~20.0MPa);
反応温度:380℃~470℃(好ましくは400℃~440℃);
上記改質原料の体積空間速度:0.01h-1~2.0h-1(好ましくは0.1h-1~1.0h-1);
水素ガスの上記改質原料に対する体積比:500~5000(好ましくは800~2000)。
【0010】
<態様5>
(i)上記第1圧力は10.0MPa~25.0MPa(好ましくは13.0MPa~20.0MPa)であり、上記第1温度は380℃~470℃(好ましくは400℃~440℃)である、あるいは、
(ii)上記第2圧力は0.1MPa~5.0MPa(好ましくは0.1MPa~4.0MPa)であり、上記第2温度は150℃~390℃(好ましくは200℃~370℃)である、
態様2に記載の改質方法。
【0011】
<態様6>
上記溶媒は、C3-7炭化水素のうちの1種類以上であり、
好ましくは、C3-5アルカンおよびC3-5アルケンから選択される1種類以上であり(例えば、C3-4アルカンおよびC3-4アルケンから選択される1種類以上)、
上記溶媒の、上記第1分離産物または上記第1処理産物に対する重量比は(1~7):1であり、
好ましくは、(1.5~5):1である、
態様3に記載の改質方法。
【0012】
<態様7>
上記第3圧力は、3MPa~12MPaであり、
好ましくは、3.5MPa~10MPaであり、
上記第3温度は55℃~300℃であり、
好ましくは、70℃~220℃である、
態様3に記載の改質方法。
【0013】
<態様8>
態様3に記載の改質方法であって、
(i)上記工程(3-2)または上記工程(3-8)は水素化触媒の存在下にて行われ、当該工程の反応条件は下記の通りである、改質方法:
水素ガスの分圧:5.0MPa~20.0MPa(好ましくは8.0MPa~15.0MPa);
反応温度:330℃~450℃(好ましくは350℃~420℃)
原料油の体積空間速度:0.1h-1~3.0h-1(好ましくは0.3h-1~1.5h-1);
水素ガスの原料油に対する体積比:300~3000(好ましくは800~1500);;あるいは、
(ii)上記工程(3-3)は水素化分解触媒の存在下にて行われ、当該工程の反応条件は下記の通りである、改質方法:
水素ガスの分圧:10.0MPa~20.0MPa;
反応温度:310℃~420℃;
上記改質油の体積空間速度:0.3h-1~1.2h-1
水素ガスの上記改質油に対する体積比:600~1500;あるいは、
(iii)上記工程(3-4)、上記工程(3-5)、上記工程(3-6)または上記工程(3-9)は分解触媒の存在下にて行われ、当該工程の反応条件は下記の通りである、改質方法:
反応温度:450℃~650℃(好ましくは480℃~560℃);
反応圧力:0.15MPa~0.4MPa;
反応時間:0.1秒間~10秒間(好ましくは、0.2秒間~4秒間);
分解触媒の原料油に対する重量比:3~30(好ましくは5~15);
水蒸気の原料油に対する重量比:0.05~0.6(好ましくは0.05~0.4);あるいは、
(iv)上記工程(3-7)水素化触媒の存在下にて行われ、当該工程の反応条件は下記の通りである、改質方法:
水素ガスの分圧:7.0MPa~15.0MPa;
反応圧力:8MPa~12MPa;
反応温度:340℃~400℃;
上記常圧軽油の体積空間速度:0.6h-1~1.5h-1
水素ガスの上記常圧軽油に対する体積比:500~800。
【0014】
<態様9>
上記残渣の軟化点は150℃未満である、態様1に記載の改質方法。
【0015】
<態様10>
上記低品質油は、アスファルト質、アスファルテンおよびアスファルテン前駆体のうちの1種類以上(特に、アスファルト質)を含み、
好ましくは、劣等油、脱油アスファルト、重油、超重質油、石炭由来油、シェールオイルおよび石油化学廃油から選択される1種類以上であり、
好ましくは、
上記重油は、抜頭原油、オイルサンドビチューメンから得られる重油、および、初留点が350℃超の重油から選択される1種類以上であり、
上記石炭由来油は、石炭の液化によって生成された液化石炭油、および、石炭の熱分解によって生成されたコールタールから選択される1種類以上であり、
上記石油化学廃油は、石油化学廃油スラッジ、石油化学残渣、および、これらの精製物から選択される1種類以上である、
態様1に記載の改質方法。
【0016】
<態様11>
(i)上記第1分離産物または上記第1処理産物の初留点は330℃以上である、あるいは、
(ii)上記第1分離産物または上記第1処理産物は、沸点または沸騰範囲が350℃以下の軽質成分をさらに含む、あるいは、
(iii)上記第1分離産物または上記第1処理産物は、沸点または沸騰範囲が500℃超(好ましくは524℃超)の重質成分をさらに含み、
好ましくは、上記重質成分は、アスファルト質、アスファルテンおよびアスファルテン前駆体のうちの1種類以上(特に、アスファルト質)を含む、
態様1~10のいずれかに記載の改質方法。
【0017】
<態様12>
上記工程(2)においては、上記第1処理産物に加えて、第2処理産物の1種類以上が生産され、
上記第2処理産物(またはその任意の成分)の終留点は350℃以下である、
態様1~11のいずれかに記載の改質方法。
【0018】
<態様13>
転化反応ユニット、転化産物処理ユニット、第1制御ユニット、抽出分離ユニット、および任意構成の残渣処理ユニットを備えている改質システムであって、
上記転化反応ユニットは、水素ガスの存在下(および任意構成で、転化触媒の存在下)にて低品質油を転化反応させて、得られる転化産物を放出するように構成されており、
転化産物処理ユニットは、(例えば、成分の調整または分離によって)上記転化産物を処理し、得られる第1処理産物を放出するように構成されており、
第1制御ユニットは、上記転化産物処理ユニットの処理条件(処理温度および/または処理圧力など)を制御するように構成されており、
このとき、上記第1処理産物は、沸点または沸騰範囲が350℃~524℃(好ましくは355℃~500℃、例えば、380℃~524℃または400℃~500℃)である成分(特に、任意構成でヘテロ原子を有している1種類以上の炭化水素)が、20重量%~60重量%(好ましくは、上記第1処理産物の総重量に対して25重量%~55重量%)含まれるように制御されており、
上記抽出分離ユニットは、上記第1処理産物を抽出分離して、得られる改質油および残渣を放出するように構成されており、
上記残渣処理ユニットは、上記残渣の全部または一部(例えば、80重量%超、好ましくは90重量%超、さらに好ましくは95重量%以上)を上記転化反応ユニットに運搬するように構成されている、
改質システム。
【0019】
<態様14>
上記転化産物処理ユニットは、第1転化産物分離ユニットと、第2転化産物分離ユニットと、任意構成の第2分離産物分離ユニットと、任意構成の気体成分運搬ユニットと、を備えており、
上記第1転化産物分離ユニットは、上記転化産物を分離して、得られる気体成分および液体成分を別々に放出するように構成されており、
上記第2転化産物分離ユニットは、上記液体成分を分離して、得られる第2分離産物および上記第1分離産物を別々に放出するように構成されており、
上記第2分離産物分離ユニットは、上記第2分離産物を分離して、得られるナフサおよび常圧軽油を別々に放出するように構成されており、
上記気体成分運搬ユニットは、上記気体成分を上記転化反応ユニットに運搬するように構成されている、
態様13に記載の改質システム。
【0020】
<態様15>
第2制御ユニットと、第3制御ユニットと、をさらに備えており、
上記第2制御ユニットは、上記第1転化産物分離ユニットの処理圧力(好ましくは、上記気体成分の出口圧力)を制御するように構成されており、
上記第3制御ユニットは、上記第2転化産物分離ユニットの処理圧力(好ましくは、上記第2分離産物の出口圧力)を制御して、上記第1転化産物分離ユニットの処理圧力を上記第2転化産物分離ユニットの処理圧力よりも大きくするように構成されており、
好ましくは、上記第3制御ユニットは、上記第2転化産物分離ユニットの処理条件(例えば、処理温度および/または処理圧力)を制御して、
(i)上記第1分離産物が、沸点または沸騰範囲が350℃~524℃(好ましくは355℃~500℃、例えば、380℃~524℃または400℃~500℃)である成分を、20重量%~60重量%(好ましくは、上記第1分離産物の総重量に対して25重量%~55重量%)含み(特に、任意構成でヘテロ原子を有している1種類以上の炭化水素を含み)、
(ii)上記第2分離産物(または、その任意の構成成分)の終留点が350℃以下となるように構成されている、
態様13または14に記載の改質システム。
【0021】
<態様16>
上記抽出分離ユニットは、上記第1分離産物または上記第1処理産物と溶媒とを接触(好ましくは向流接触)させて、得られる改質油および上記残渣を別々に放出するように構成されている、態様13~15のいずれかに記載の改質システム。
【0022】
<態様17>
下記ユニットの1つ以上をさらに備えている、態様13~16のいずれかに記載の改質システム:
上記改質油を水素化処理して、得られる水素化改質油を放出するように構成されている、第1水素化ユニット;
上記改質油を水素化分解して、得られる水素化分解産物を、乾性ガス、液化ガス、航空用ケロシン、ディーゼル油および水素化テール油に分離するように構成されている、第2水素化ユニット;
上記水素化改質油を接触分解して、得られる第1触媒分解産物を、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油に分離するように構成されている、第1接触分解ユニット;
上記水素化改質油および上記常圧軽油を共に接触分解して、得られる第2触媒分解産物を、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油に分離するように構成されている、第2接触分解ユニット;
上記水素化改質油および上記第2分離産物を共に接触分解して、得られる第3触媒分解産物を、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油に分離するように構成されている、第3接触分解ユニット;
上記常圧軽油を水素化処理して、得られるディーゼル油を放出するように構成されている、第3水素化ユニット;
上記改質システムにおける任意のユニットにて得られる循環油を上記改質油と共に水素化処理して、得られる水素化処理油を放出するように構成されている、第4水素化ユニット;
上記水素化処理油および上記第2分離産物を共に接触分解して、得られる第4触媒分解産物を、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油に分離するように構成されている、第4接触分解ユニット;
上記改質システムにおける任意のユニットにて得られるスラリー油および/または外部から供給されるスラリー油を、上記転化反応ユニット、上記転化産物処理ユニットおよび/または上記抽出分離ユニットに運搬するように構成されている、スラリー油運搬ユニット;
上記改質システムにおける任意のユニットにて得られる液化ガスを、上記抽出分離ユニットに運搬するように構成されている、液化ガス運搬ユニット。
【発明の効果】
【0023】
本発明の改質方法および改質システムによれば、下記の技術的効果のうち1つ以上を実現できる。好ましくは、下記の技術的効果のうち2つ以上を同時に実現できる。
(1) 廃水、廃ガスおよび固体廃棄物の排出が少なく、固体コークスがほとんど産出されず、生産工程が環境的である。
(2) 飽和度が高く重金属およびアスファルト質を実質的に含まない改質油へと、低品質油を最大限に改質できる。最適な条件において、低品質油の転化率は、通常は90重量%超であり、好ましくは95重量%超である。改質油中の重金属の含有量は、Ni+Vに換算して、通常は10μg/g未満であり、好ましくは1μg/g未満である。改質油中のアスファルト質の含有量は、通常は2.0重量%未満であり、好ましくは0.5重量%未満である。
(3) 改質方法(特に、抽出分離工程)の稼働安定性が向上する。さらに、改質方法または改質システムの稼働期間が顕著に長くなる。
(4) 改質油の収率が高い。最適な条件において、改質油の収率は、最大で88%に達する。
(5) トルエン不溶分の収率が低い。最適な条件において、トルエン不溶分の収率は、最低で0.5%に達する。
(6)得られる改質油をさらに加工すれば、中国国家標準を満たす高品質航空用ケロシン、高オクタン価ガソリン、または、中国国家VI指標を満たす高品質ディーゼル油を生産できる。最適な条件において、高オクタン価ガソリンの収率は、通常は50重量%超である。あるいは、高品質航空用ケロシンの収率は、通常は35重量%超である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る低品質油の改質方法を説明する模式図である。
図2】本発明の他の実施形態に係る低品質油の改質方法を説明する模式図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る低品質油の改質方法を説明する模式図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る低品質油の改質方法を説明示する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、本明細書に添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0026】
本明細書において言及する刊行物、特許出願、特許およびその他の参考文献は全て、参照により本明細書中に組み込まれる。別途定義のない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は全て、当業者が通常に理解している意味を有する。定義が矛盾する場合、本明細書における定義が優先される。
【0027】
本明細書において、材料、物質、方法、工程、装置、部材などを、「本技術分野において通常使用される」「本技術分野において周知」またはこれに類する表現で修飾する場合、修飾される対象には、本願の出願の時点において本技術分野において通常に用いられているまたは周知のものが含まれる。のみならず、現在では一般的に使用されていないまたは既知ではないが、将来において均等物であると本技術分野で認められるであろうものも含まれている。
【0028】
本発明に関連して、「アスファルテン」という用語は、燃料化学工業分野における通常の意味で解される。一例を挙げると、トルエンに可溶かつn-ヘキサンに不溶な油中物質を、一般的にアスファルテンと称する。
【0029】
本発明に関連して、「アスファルテン前駆体」という用語は、燃料化学工業分野における通常の意味で解される。一例を挙げると、テトラヒドロフランに可溶かつトルエンに不溶な油中物質を、一般的にアスファルテン前駆体と称する。
【0030】
本発明に関連して、「アスファルト質」という用語は、燃料化学工業分野における通常の意味で解される。一例を挙げると、非極性の小分子n-アルカン(n-ペンタン、n-ヘプタンなど)に不溶かつベンゼンまたはトルエンに可溶な油中物質を、一般的にアスファルト質と称する。
【0031】
本発明に関連して、「石油化工油」という用語は、燃料化学工業分野において、原料または製品として使用される様々な油を一般的に指す。石油化工油の例としては、化石燃料、燃料油、化石燃料加工物(ディーゼル油および灯油など)、廃油、残渣が挙げられる。
【0032】
本発明に関連して、「低品質油」という用語は、燃料化学工業分野において、改質が要求される任意の油を指す。このような油の例としては、低品質化石燃料、低品質燃料油、低品質化石燃料加工物(低品質ガソリン、低品質ディーゼル油など)、化石燃料加工物由来の廃油または残渣が挙げられる。改質において要求されることの例としては、化学反応が挙げられる。化学反応によって、油中の1種類以上の成分の分子構造を変化させて、燃料化学製品(ガソリン、ディーゼル油、灯油、液化ガス、ナフサなど)を得ることができる。このような成分の例としては、芳香族成分およびアスファルト質が挙げられる。
【0033】
本発明に関連して、「劣等油」という用語は、燃料化学工業分野における通常の意味で解される。一例を挙げると、次のうち1つ以上の特徴を有する油を、一般的に劣等油と称する。(i)API度が27未満。(ii)硫黄含有量が1.5重量%超。(iii)TAN(全酸価)が1.0mgKOH/g超。(iv)上流範囲が500℃超。(v)アスファルト質含有量が10重量%超。(vi)重金属含有量(Ni+Vで換算)が100μg/g超。
【0034】
本発明に関連して、「残油」という用語は、燃料化学工業分野における通常の意味で解される。一例を挙げると、原油を常圧蒸留または減圧蒸留して得られる塔底留出物を、一般的に残油と称する。さらに一例を挙げると、常圧蒸留における塔底留出物を、一般的に常圧残油と称する(一般的に、沸点が350℃超の留分)。また、減圧蒸留における塔底留出物を、一般的に減圧残油と称する(一般的に、沸点が500℃超または524℃超の留分)。
【0035】
本発明に関連して、「循環油」という用語は、燃料化学工業分野における通常の意味で解される。一例を挙げると、接触分解工程で得られる、蒸留範囲が205℃~350℃の留分(ディーゼル油留分とも称する)、または、蒸留範囲が343℃~500℃の留分(重質循環油とも称する)を、一般的に循環油と称する。
【0036】
本発明に関連して、分解工程において分取される塔底油を、沈降機にて分離した後に、沈降機の上部から得られる産物を、一般的にデカント油と称する。また、沈降機の底部から得られる産物を、一般的にスラリー油と称する。
【0037】
本発明に関連して、「重油」という用語は、燃料化学工業分野における通常の意味で解される。一例を挙げると、沸点が350℃超の留分または残油を、一般的に重油と称する。さらに一例を挙げると、留分油とは、原油または二次加工油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られる蒸留産物を一般的に指す(重質ディーゼル油、重質ガス油、潤滑油留分、クラッキング原料など)。
【0038】
本発明に関連して、「超重質油」という用語は、燃料化学工業分野における通常の意味で解される。一例を挙げると、アスファルト質および樹脂質の含有量が高く、粘度が高い原油を、一般的に超重質油と称する。さらに一例を挙げると、地上で20℃における密度が0.943超であり、地下における粘度が50cP超の原油を、一般的に超重質油と称する。
【0039】
本発明に関連して、「脱油アスファルト」という用語は、燃料化学工業分野における通常の意味で解される。一例を挙げると、脱油アスファルトとは、アスファルトおよび芳香族成分を豊富に含む抽残物を一般的に指す。この抽残物は、溶媒を用いる脱アスファルト装置の抽出塔の塔底から、原料油を溶媒と接触させて可用性成分を溶出させることによって得られる。脱油アスファルトは、溶媒の種類によって、プロパンでの脱油アスファルト、ブタンでの脱油アスファルト、ペンタンでの脱油アスファルトなどに分類される。
【0040】
本発明に関連して、「抜頭原油」という用語は、燃料化学工業分野における通常の意味で解される。一例を挙げると、常圧蒸留または減圧蒸留で原油を分留して、初期蒸留塔の塔底またはフラッシュ蒸留塔の塔底から得られる油を、一般的に抜頭原油と称する。
【0041】
本発明に関連して、「石炭由来油」という用語は、燃料化学工業分野における通常の意味で解される。一例を挙げると、原料である石炭を化学的に加工して得られる液体燃料を、一般的に石炭由来油と称する。
【0042】
本発明に関連して、「シェールオイル」という用語は、燃料化学工業分野における通常の意味で解される。一例を挙げると、油母頁岩を低温乾留して得られる高粘度の褐色ペーストを、一般的にシェールオイルと称する。シェールオイルは、刺激臭があり窒素含有量が高い。
【0043】
別途特別に説明する場合(または、当業者の通常の理解と一致しない場合)を除いて、本発明に関連して、「分離」という用語は、物理的分離を一般的に指す(抽出、分液、蒸留、蒸発、フラッシュ蒸留、凝結など)。
【0044】
本発明に関連して、沸点、沸騰範囲(蒸留範囲と称する場合がある)、終留点および初留点、またはこれらに類似するパラメータは、いずれも常圧(101325Pa)下における測定値を指す。
【0045】
別途記載のある場合、または、当業者の通常の理解と一致しない場合を除いて、本明細書中に記載されている百分率、部数、比率などは、いずれも重量基準である。
【0046】
特に説明すべき点として、本明細書において開示されている2つ以上の態様(または実施形態)は、任意に組合せることができる。このようにして得られる技術的構成(方法、システムなど)も、本明細書の出願当初の開示内容の一部に属しており、本発明の範囲に含まれる。
【0047】
第一に、本発明は、改質方法に関する。この改質方法は、下記の工程(1)、工程(2)および工程(3)を少なくとも含む。
【0048】
〔工程(1)〕
水素ガスの存在下で低品質油を転化反応させて、転化産物を得る工程(以下、この工程を原料転化工程と称する)。この場合、改質原料は低品質油である。
【0049】
本発明の一態様によれば、本発明の1つ以上の技術的効果を高めるために、工程(1)において、低品質油は、アスファルト質、アスファルテンまたはアスファルテン前駆体を含んでいてもよい。あるいは、低品質油は、アスファルト質、アスファルテンおよびアスファルテン前駆体のうち2種類以上を含んでいてもよい。特に、低品質油は、アスファルト質および/またはアスファルテン前駆体を含んでいてもよい。これらの低品質油は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。本発明では、アスファルト質、アスファルテンまたはアスファルテン前駆体の、低品質油中における具体的な含有量を特定することは意図されていない。当業者の通常の理解に基づいて、「含有している」と理解される程度であればよい。ただし理解の便宜上、上記の含有量は、一般的に、0.5重量%以上であってもよい。
【0050】
本発明の一態様によれば、工程(1)における低品質油の具体例として、劣等油、脱油アスファルト、重油、超重質油、石炭由来油、シェールオイルおよび石油化学廃油が挙げられる。より具体的に、重油の具体例としては抜頭原油、オイルサンドビチューメンから得られる重油、および、初留点が350℃超の重油が挙げられる。また、石炭由来油の具体例としては、石炭の液化によって生成された液化石炭油、および、石炭の熱分解によって生成されたコールタールが挙げられる。さらに、石油化学廃油の具体例としては、石油化学廃油スラッジ、石油化学残渣およびその精製物が挙げられる。これらの低品質油は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。
【0051】
本発明の一態様によれば、工程(1)において、転化反応(水素化-熱転化反応とも称する)は、本技術分野において周知の任意の方式で行われてもよく、特に限定されない。また、転化反応は、本技術分野おいて周知の任意の転化反応装置(熱転化反応器など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0052】
本発明の一態様によれば、工程(1)における水素ガスの分圧は、本技術分野における慣用知識から選択できる。水素ガスの分圧は、一般的には10.0MPa~25.0MPaであり、好ましくは13.0MPa~20.0MPaである。
【0053】
本発明の一態様によれば、工程(1)における反応温度は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応温度は、一般的には380℃~470℃であり、好ましくは400℃~440℃である。
【0054】
本発明の一態様によれば、工程(1)において、改質原料(低品質油など)の体積空間速度は、本技術分野における慣用知識から選択できる。体積空間速度は、一般的には0.01h-1~2.0h-1であり、好ましくは0.1h-1~1.0h-1である。
【0055】
本発明の一態様によれば、工程(1)において、水素ガスの改質原料(低品質油など)に対する体積比は、本技術分野における慣用知識から選択できる。この体積比は、一般的には500~5000であり、好ましくは800~2000である。
【0056】
本発明の一態様によれば、工程(1)において、転化反応は、転化触媒の存在下で行われてもよいし、転化触媒の不存在下で行われてもよい。転化触媒の例としては、本技術分野において転化反応に通常使用される任意の転化触媒や、本技術分野において周知の任意の方法で製造された転化触媒が挙げられ、特に限定されない。転化触媒の例としては、バルク転化触媒が挙げられる。具体的には、元素周期表における5B族金属の化合物、6B族金属の化合物、8族金属の化合物などが挙げられる。とりわけ、Mo化合物、W化合物、Ni化合物、Co化合物、Fe化合物、V化合物、Cr化合物などが挙げられる。これらの化合物は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。さらに、転化触媒の使用量は、改質原料(低品質油など)の総重量に対して、一般的には10μg/g~50000μg/gであり、好ましくは30μg/g~25000μg/gである。
【0057】
〔工程(2)〕
転化産物を処理し、第1処理産物を得る工程(以下、転化産物処理工程と称する)。
【0058】
本発明の一態様によれば、工程(2)における処理は、本技術分野において周知の任意の方式で行われてもよく、これによって第1処理産物が得られる。ただし、この処理を経た後の転化産物中には、沸点または沸騰範囲が350℃~524℃である成分(以下、特別成分と称する)が、20重量%~60重量%(以下、特定含有量と称する)含まれている。このような処理の例としては、転化産物に対して所定量の特別成分を添加または除去して、最終的に得られる第1処理産物が特定含有量の特別成分を含んでいるようにする方法が挙げられる(以下、成分調整法と称する)。あるいは、転化産物の成分を分離して、最終的に得られる第1処理産物が特定含有量の特別成分を含んでいるようにする方法も挙げられる(以下、成分分離法と称する)。
【0059】
本発明の一態様によれば、工程(2)において、第1処理産物が特定含有量の特別成分を含んでいることにより、少なくとも改質工程(特に、抽出分離工程)における稼働安定性が向上する。特定含有量は、第1処理産物の総重量に対して、通常は20重量%~60重量%であり、好ましくは25重量%~55重量%である。
【0060】
本発明の一態様によれば、工程(2)において、特別成分の沸点または沸騰範囲は、350℃~524℃であってもよい(例えば、380℃~524℃または400℃~500℃)。
【0061】
本発明の一態様によれば、工程(2)における特別成分は、石油化工油に由来しており、一般的には炭化水素である(特に、複数種類の炭化水素の混合物)。炭化水素とは、基本的に炭素原子および水素原子からなる化合物を指し、分子中にヘテロ原子(O、N、P、Cl、Sなど)を有していてもよい。本発明では、特別成分の具体的な化学構成を特定することは意図されていない。特別成分は、その含有量および沸点(または沸騰範囲)が上述のいずれかの要件を満たしていればよい。石油化工油(特に、炭化水素またはその混合物)の範疇に属するものであり、その沸点(または沸騰範囲)が上述のいずれかの要件を満たしているならば、市販品を特別成分としてもよいし、簡易な方法で特別成分を製造してもよい。これに鑑み、特別成分は、転化産物に直接由来するものであってもよい。これは、特別成分が、転化産物中の通常の構成成分として含まれているためである。あるいは、特別成分は、改質原料や、本明細書中に記載の改質方法の任意の工程にて得られる石油化工油に由来するものであってもよい(特に、後述する残渣およびスラリー油などに由来するもの)。特別成分の生成方法の例としては、石油化工油を蒸留して、本明細書で規定されているいずれかの沸点(または沸騰範囲)を満たす留分を取得して、特別成分とする方法が挙げられる。特別成分の特定含有量の測量方法の例としては、第1処理産物を蒸留し、本明細書で規定されているいずれかの沸点(または沸騰範囲)を満たす全留分を留出して、第1処理産物の総重量に対する当該留分の百分率を特定含有量とする方法が挙げられる。
【0062】
本発明の一態様によれば、工程(2)において、第1処理産物の初留点は、一般的に300℃以上である(例えば、330℃以上または350℃以上)。
【0063】
本発明の一態様によれば、工程(2)において、第1処理産物は、特別成分以外にも、沸点または沸騰範囲が350℃以下の軽質成分をさらに含んでいてもよい。本発明では、第1処理産物中における軽質成分の具体的な含有量を特定することは意図されていない。一例を挙げると、軽質成分の含有量は、第1処理産物の総重量に対して、1重量%~10重量%である。
【0064】
本発明の一態様によれば、工程(2)において、第1処理産物は、特別成分以外にも、沸点または沸騰範囲が500℃超(好ましくは524℃超)の重質成分をさらに含んでいてもよい。「沸点または沸騰範囲が500℃超」という表現には、重質成分の沸点または沸騰範囲が500℃超である場合と、重質成分が500℃超で熱分解して沸点または沸騰範囲を示さない場合とが含まれる。本発明の1つ以上の技術的効果を高めるために、重質成分は、アスファルト質、アスファルテン、アスファルテン前駆体、またはこれらの組合せを構成成分として含むことが好ましく、特にアスファルト質を構成成分として含むことが好ましい。本発明では、第1処理産物中における重質成分の具体的な含有量を特定することは意図されていない。一例を挙げると、重質成分の含有量は、第1処理産物の総重量における残部であってもよい。
【0065】
本発明の一態様によれば、工程(2)において、第1処理産物は、特別成分および軽質成分以外にも、沸点または沸騰範囲が500℃超(好ましくは524℃超)の重質成分をさらに含んでいてもよい。「沸点または沸騰範囲が500℃超」という表現には、重質成分の沸点または沸騰範囲が500℃超である場合と、重質成分が500℃超で熱分解して沸点または沸騰範囲を示さない場合とが含まれる。本発明の1つ以上の技術的効果を高めるために、重質成分は、アスファルト質、アスファルテン、アスファルテン前駆体、またはこれらの組合せを構成成分として含むことが好ましく、特にアスファルト質を構成成分として含むことが好ましい。本発明では、第1処理産物中における重質成分の具体的な含有量を特定することは意図されていない。一例を挙げると、重質成分の含有量は、第1処理産物の総重量における残部であってもよい。
【0066】
本発明の一態様によれば、工程(2)においては、第1処理産物以外にも、1種類以上の第2処理産物をさらに得てもよい。第2処理産物(またはその任意の構成成分)の終留点は、350℃以下である。
【0067】
本発明の一態様によれば、工程(2)における成分の分離方法の例としては、蒸発、蒸留およびフラッシュ蒸留が挙げられる。これら成分の分離方法は、最終的に第1処理産物が得られるならば、本技術分野において通常使用される任意の方式にて行ってもよい。より具体的な成分の分離方法としての例としては、工程(2-1)および工程(2-2)を含む分離方法が挙げられる。
【0068】
[工程(2-1)]
第1圧力および第1温度において、転化産物から気体成分および液体成分を分離して得る工程。
【0069】
本発明の一態様によれば、工程(2-1)における分離は、本技術分野において周知の任意の方法および任意の方式にて行ってもよい。具体例としては、蒸留、分留およびフラッシュ蒸留が挙げられる(特に蒸留)。また、分離は、本技術分野において周知の任意の分離装置(蒸留塔など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0070】
本発明の一態様によれば、工程(2-1)における気体成分は、一般的には水素ガスを豊富に含む。すなわち、気体成分は、水素ガスを主成分とする。なお、本発明では、気体成分中における水素ガスの具体的な含有量を特定することは意図されていない。一例を挙げると、水素ガスの含有量は、一般的には85重量%以上である。必要に応じて、気体成分を水素ガスとして工程(1)にリサイクルし、転化反応に供与してもよい。一例として、加圧蒸留塔またはそれに類似する装置を用いて分離を行う場合、気体成分は塔頂の留分を指し、液体成分は塔底の留分を指す。
【0071】
本発明の一態様によれば、工程(2-1)における第1圧力は、一般的には10.0MPa~25.0MPaであり、好ましくは13.0MPa~20.0MPaである。測定の便宜上、一般的に、第1圧力とは気体成分の圧力を指す。すなわち、分離装置を用いて分離を行う場合には、一般的に、第1圧力とは気体成分が分離装置から放出されるときの出口圧力を指す。
【0072】
本発明の一態様によれば、工程(2-1)における第1温度は、一般的には380℃~470℃であり、好ましくは400℃~440℃である。測定の便宜上、一般的に、第1温度とは液体成分の温度を指す。すなわち、分離装置を用いて分離を行う場合には、一般的に、第1温度とは液体成分が分離装置から放出されるときの出口温度を指す。
【0073】
[工程(2-2)]
第2圧力および第2温度にいて、液体成分から、第2分離産物および第1分離産物をを分離して得る工程。
【0074】
本発明の一態様によれば、工程(2-2)における分離は、本技術分野において周知の任意の方法および任意の方式にて行ってもよい。具体例としては、蒸留、分留が挙げられる(特に、常圧蒸留または加圧蒸留)。分離は、本技術分野において周知の任意の分離装置(常圧蒸留タンク、加圧蒸留塔など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0075】
本発明の一態様によれば、工程(2-2)における第2圧力は、一般的には0.1MPa~5.0MPaであり、好ましくは0.1MPa~4.0MPaである。測定の便宜上、一般的に、第2圧力とは第2分離産物の圧力を指す。すなわち、分離装置を用いて分離を行う場合には、一般的に、第2圧力とは第2分離産物が分離装置から放出されるときの出口圧力を指す。
【0076】
本発明の一態様によれば、工程(2-2)において、第2温度は、一般的には150℃~390℃であり、好ましくは200℃~370℃である。測定の便宜上、一般的に、第2温度とは第1分離産物の温度を指す。すなわち、分離装置を用いて分離を行う場合には、一般的に、第2温度とは第1分離産物が分離装置から放出されるときの出口温度を指す。
【0077】
本発明の一態様によれば、本発明の1つ以上の技術的効果を高めるために、一般的には第1圧力が第2圧力よりも高く、好ましくは第1圧力が第2圧力よりも4MPa~24MPa高く、より好ましくは第1圧力が第2圧力よりも7MPa~19MPa高い。
【0078】
本発明の一態様によれば、工程(2-2)において、本発明の1つ以上の技術的効果を高めるために、分離を経た後に最終的に得られる第1分離産物は、沸点または沸騰範囲が350℃~524℃の成分(以下、特別成分と称する)を、20重量%~60重量%(以下、特定含有量と称する)含んでいる。なおかつ、第2分離産物(または、その任意の構成成分)の終留点は、350℃以下である。
【0079】
本発明の一態様によれば、工程(2-2)における特別成分の特定含有量は、第1分離産物の総重量に対して、一般的には20重量%~60重量%であり、好ましくは25重量%~55重量%である。
【0080】
本発明の一態様によれば、工程(2-2)において、特別成分の沸点または沸騰範囲は、350℃~500℃であってもよい(例えば、380℃~524℃または400℃~500℃)。
【0081】
本発明の一態様によれば、工程(2-2)において、特別成分は、一般的には炭化水素である(特に、複数種類の炭化水素の混合物)。炭化水素とは、基本的に炭素原子および水素原子からなる化合物を指す。炭化水素は、分子中にヘテロ原子(O、N、P、Cl、Sなど)を有していてもよい。本発明では、特別成分の具体的な化学構成を特定することは意図されていない。特別成分は、その含有量および沸点(または沸騰範囲)が上述のいずれかの要件を満たしていればよい。特別成分は、その取得方法から判るように、転化産物または液体成分中に、元来の構成成分として含まれていたものである。そして、分離の後には、特別成分の一部または全部は、第1分離産物の必要構成成分となる。特別成分の特定含有量の測量方法の例としては、第1処理産物を蒸留し、本明細書で規定されているいずれかの沸点(または沸騰範囲)を満たす全留分を留出して、第1処理産物の総重量に対する当該留分の百分率を特定含有量とする方法が挙げられる。
【0082】
本発明の一態様によれば、工程(2-2)において、第1分離産物の初留点は、一般的には300℃以上である(例えば、330℃以上または350℃以上)。
【0083】
本発明の一態様によれば、工程(2-2)において、第1分離産物は、特別成分以外にも、沸点または沸騰範囲が350℃以下の軽質成分をさらに含んでいてもよい。本発明では、第1分離産物中における軽質成分の具体的な含有量を特定することは意図されていない。一例を挙げると、軽質成分の含有量は、第1分離産物の総重量に対して1重量%~10重量%である。
【0084】
本発明の一態様によれば、工程(2-2)において、第1分離産物は、特別成分以外にも、沸点または沸騰範囲が500℃超(好ましくは524℃超)の重質成分をさらに含んでいてもよい。「沸点または沸騰範囲が500℃超」という表現には、重質成分の沸点または沸騰範囲が500℃超である場合と、重質成分が500℃超で熱分解して沸点または沸騰範囲を示さない場合とが含まれる。本発明の1つ以上の技術的効果を高めるために、重質成分は、アスファルト質、アスファルテン、アスファルテン前駆体、またはこれらの組合せを構成成分として含むことが好ましく、特にアスファルト質を構成成分として含むことが好ましい。本発明では、第1分離産物中における重質成分の具体的な含有量を特定することは意図されていない。一例を挙げると、重質成分の含有量は、第1分離産物の総重量における残部であってもよい。
【0085】
本発明の一態様によれば、工程(2-2)において、第1分離産物は、特別成分および軽質成分以外にも、沸点または沸騰範囲が500℃超(好ましくは524℃超)の重質成分をさらに含んでいてもよい。「沸点または沸騰範囲が500℃超」という表現には、重質成分の沸点または沸騰範囲が500℃超である場合と、重質成分が500℃超で熱分解して沸点または沸騰範囲を示さない場合とが含まれる。本発明の1つ以上の技術的効果を高めるために、重質成分は、アスファルト質、アスファルテン、アスファルテン前駆体、またはこれらの組合せを構成成分として含むことが好ましく、特にアスファルト質を構成成分として含むことが好ましい。本発明では、第1分離産物中における重質成分の具体的な含有量を特定することは意図されていない。一例を挙げると、重質成分の含有量は、第1分離産物の総重量における残部であってもよい。
【0086】
本発明の一態様によれば、工程(2-2)において、蒸留塔、フラッシュ蒸留タンク、またはこれらと類似する装置を用いて分離を行う場合、第1分離産物とは塔底の液体またはタンク底の凝縮液を指す。また、第2分離産物とは、塔頂の軽質成分またはタンク頂のフラッシュ蒸留軽質成分を指す。
【0087】
本発明の一態様によれば、転化産物処理工程は、任意構成で、工程(2-3)、工程(2-4)またはこれらの組合せをさらに含んでもよい。
【0088】
[工程(2-3)]
第2処理産物(第2分離産物も含む)から、ナフサおよび常圧軽油を分離して得る工程。
【0089】
本発明の一態様によれば、工程(2-3)における分離は、本技術分野において周知の任意の方法および任意の方式にて行ってもよい。具体例としては、蒸留および分留が挙げられる(特に分留)。分離は、本技術分野において周知の任意の分離装置(分留塔など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0090】
本発明の一態様によれば、工程(2-3)における処理圧力は、一般的には0.05MPa~2.0MPaであり、好ましくは0.10MPa~1.0MPaである。
【0091】
本発明の一態様によれば、工程(2-3)における処理温度は、一般的には50℃~350℃であり、好ましくは150℃~330℃である。
【0092】
[工程(2-4)]
気体成分を工程(1)にリサイクルする工程。
【0093】
本発明の一態様によれば、工程(2-4)において、改質方法における水素ガスを必要とする任意の処理工程(工程(1)など)に、気体成分を水素ガスとしてリサイクルしてもよい。
【0094】
〔工程(3)〕
第1処理産物(第1分離産物も含む)を抽出分離して、改質油および残渣を得る工程(以下、抽出分離工程と称する)。
【0095】
本発明の一態様によれば、工程(3)において、本発明の1つ以上の技術的効果を高めるために(とりわけ、抽出分離工程の稼働安定性を向上させるために)、残渣の軟化点は、一般的には150℃未満である。
【0096】
本発明の一態様によれば、工程(3)は、工程(3-1)を含む抽出分離方法にて行ってもよい。
【0097】
[工程(3-1)]
第3圧力および第3温度にて、第1処理産物(第1分離産物も含む)と溶媒とを接触させて、改質油および残渣を得る工程。
【0098】
本発明の一態様によれば、工程(3-1)における接触は、溶媒によって第1処理産物が充分に抽出され、改質油および残渣を得られるならば、本技術分野において周知の任意の方法および任意の方式にて行ってもよい。接触の具体例としては、向流接触が挙げられる。抽出は、本技術分野において周知の任意の抽出装置(抽出塔など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0099】
本発明の一態様によれば、工程(3-1)における溶媒の例としては、C3-7炭化水素が挙げられる。より具体的な例としては、C3-5アルカンおよびC3-5アルケンが挙げられる(特に、C3-4アルカンおよびC3-4アルケン)。これらの溶媒は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。溶媒(または、溶媒の一部)として、後述の液化ガスを用いてもよい。
【0100】
本発明の一態様によれば、工程(3-1)において、溶媒の第1処理産物(第1分離産物も含む)に対する重量比は、一般的には(1~7):1であり、好ましくは(1.5~5):1である。この重量比を、溶媒比とも称する。
【0101】
本発明の一態様によれば、工程(3-1)における第3圧力は、一般的には3MPa~12MPaであり、好ましくは3.5MPa~10MPaである。
【0102】
本発明の一態様によれば、工程(3-1)における第3温度は、一般的には55℃~300℃であり、好ましくは70℃~220℃である。
【0103】
本発明の一態様によれば、必要に応じて、抽出分離工程は、任意構成である工程(3-2)~工程(3-11)のうち1つ以上をさらに含んでもよい。
【0104】
[工程(3-2)]
任意構成で、改質油を水素化処理して水素化改質油を得る工程。
【0105】
本発明の一態様によれば、工程(3-2)における水素化処理は、本技術分野において周知の任意の方式にて行ってもよく、特に限定されない。水素化処理は、本技術分野において周知の任意の水素化処理装置(固定床式反応器、流動床式反応器など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0106】
本発明の一態様によれば、工程(3-2)における水素ガスの分圧は、本技術分野における慣用知識から選択できる。水素ガスの分圧は、一般的には5.0MPa~20.0MPaであり、好ましくは8.0MPa~15.0MPaである。
【0107】
本発明の一態様によれば、工程(3-2)における反応温度は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応温度は、一般的には330℃~450℃であり、好ましくは350℃~420℃である。
【0108】
本発明の一態様によれば、工程(3-2)において、原料油(改質油を指す)の体積空間速度は、本技術分野における慣用知識から選択できる。体積空間速度は、一般的には0.1h-1~3.0h-1であり、好ましくは0.3h-1~1.5h-1である。
【0109】
本発明の一態様によれば、工程(3-2)において、水素ガスの原料油(改質油を指す)に対する体積比は、本技術分野における慣用知識から選択できる。この体積比は、一般的には300~3000であり、好ましくは800~1500である。
【0110】
本発明の一態様によれば、工程(3-2)における水素化処理は、一般的に、水素化触媒の存在下で行われる。水素化触媒の例としては、本技術分野において水素化のために通常使用される任意の水素化触媒、または、本技術分野において周知の任意の方法で製造された水素化触媒が挙げられる。この工程における水素化触媒の使用量は、本技術分野における慣用知識から選択でき、特に限定されない。具体的には、水素化触媒は、一般的には担体および活性金属成分を含む。活性金属成分の具体例としては、元素周期表における6B族金属、8族非貴金属が挙げられる。とりわけ、ニッケルおよびタングステンの組合せ;ニッケル、タングステンおよびコバルトの組合せ;ニッケルおよびモリブデンの組合せ;コバルトおよびモリブデンの組合せが挙げられる。これらの活性金属成分は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。担体の例としては、アルミナ、シリカ、非晶質シリカ-アルミナが挙げられる。これらの担体は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。本発明では、担体および活性金属成分のそれぞれの含有量は特に限定されず、本技術分野における慣用知識から選択すればよい。
【0111】
[工程(3-3)]
任意構成で、改質油を水素化分解して水素化分解産物を得る工程。
【0112】
本発明の一態様によれば、工程(3-3)における水素化分解は、本技術分野において周知の任意の方式にて行ってもよく、特に限定されない。水素化分解は、本技術分野において周知の任意の水素化分解装置(固定床式反応器、流動床式反応器など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0113】
本発明の一態様によれば、工程(3-3)において、水素化分解産物から、乾性ガス、液化ガス、航空用ケロシン、ディーゼル油および水素化テール油を分離して得る。分離は、本技術分野において周知の任意の方法および任意の方式にて行ってもよい。具体例としては、蒸留、分留が挙げられる(特に分留)。分離は、本技術分野において周知の任意の分離装置(分留塔など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0114】
本発明の一態様によれば、工程(3-3)における水素ガスの分圧は、本技術分野における慣用知識から選択できる。水素ガスの分圧は、一般的には10.0MPa~20.0MPaである。
【0115】
本発明の一態様によれば、工程(3-3)における反応温度は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応温度は、一般的には310℃~420℃である。
【0116】
本発明の一態様によれば、工程(3-3)において、改質油の体積空間速度は、本技術分野における慣用知識から選択できる。体積空間速度は、一般的には0.3h-1~1.2h-1である。
【0117】
本発明の一態様によれば、工程(3-3)において、水素ガスの改質油に対する体積比は、本技術分野における慣用知識から選択できる。この体積比は、一般的には600~1500である。
【0118】
本発明の一態様によれば、工程(3-3)における水素化分解は、一般的に水素化分解触媒の存在下で行われる。水素化分解触媒の例としては、本技術分野において水素化分解に通常使用される任意の水素化分解触媒、または、本技術分野において通常使用される任意の方法で製造された水素化分解触媒が挙げられる。この工程における水素化分解触媒の使用量は、本技術分野における慣用知識から選択でき、特に限定されない。具体的に、水素化分解触媒は、一般的に担体、活性金属成分および分解活性成分を含む。活性金属成分の具体例としては、元素周期表における6B族金属の硫化物、8族卑金属の硫化物、8族貴金属などが挙げられる。特に、Mo硫化物、W硫化物、Ni硫化物、Co硫化物、Fe硫化物、Cr硫化物、Pt、Pdなどが挙げられる。これらの活性金属成分は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。また、分解活性成分の例としては、非晶質シリカ-アルミナ、モレキュラーシーブが挙げられる。これらの分解活性成分は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。担体の例としては、アルミナ、シリカ、酸化チタン、活性炭が挙げられる。これらの担体は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。本発明では、担体、活性金属成分および分解活性成分のそれぞれの含有量は特に限定されず、本技術分野における慣用知識から選択すればよい。
【0119】
[工程(3-4)]
任意構成で、水素化改質油を流体接触分解(FCCと略記する)して、第1触媒分解産物を得る工程。
【0120】
本発明の一態様によれば、工程(3-4)において、第1触媒分解産物から、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油、およびスラリー油をを分離して得てもよい。分離は、本技術分野において周知の任意の方法および任意の方式にて行ってもよい。分離の具体例としては、蒸留、分留が挙げられる(特に分留)。分離は、本技術分野において周知の任意の分離装置(分留塔など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0121】
本発明の一態様によれば、工程(3-4)における接触分解は、本技術分野において周知の任意の方式にて行ってもよく、特に限定されない。接触分解は、本技術分野において周知の任意の接触分解装置(流動床式反応器など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0122】
本発明の一態様によれば、工程(3-4)における反応温度は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応温度は、一般的には450℃~650℃であり、好ましくは480℃~560℃である。
【0123】
本発明の一態様によれば、工程(3-4)における反応圧力は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応圧力は、一般的には0.15MPa~0.4MPaである。
【0124】
本発明の一態様によれば、工程(3-4)における反応時間は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応時間は、一般的には0.1秒間~10秒間であり、好ましくは0.2秒間~4秒間である。
【0125】
本発明の一態様によれば、工程(3-4)において、分解触媒の原料油(水素化改質油を指す)に対する重量比は、本技術分野における慣用知識から選択できる。この重量比は、一般的には3~30であり、好ましくは5~15である。
【0126】
本発明の一態様によれば、工程(3-4)において、水蒸気の原料油(水素化改質油を指す)に対する重量比は、本技術分野における慣用知識から選択できる。この重量比は、一般的には0.05~0.6であり、好ましくは0.05~0.4である。
【0127】
本発明の一態様によれば、工程(3-4)における接触分解は、一般的に、分解触媒の存在下で行われる。分解触媒の例としては、本技術分野において分解に通常使用される任意の分解触媒、または、本技術分野において通常使用される任意の方法で製造された分解触媒が挙げられ、特に限定されない。具体的に、分解触媒は、一般的には固体の酸触媒であり、好ましくは分解活性成分および担体を含む。分解活性成分の具体例としては、ゼオライトが挙げられる。特に、Y型ゼオライト(希土類元素を含んでいてもよい)、HY型ゼオライト(希土類元素を含んでいてもよい)、超安定性Y型ゼオライト(希土類元素を含んでいてもよい)、β型ゼオライト(希土類元素を含んでいてもよい)が挙げられる。これらの分解活性成分は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。担体の例としては、難溶性の無機酸化物、天然粘土、アルミナ、シリカ、非晶質シリカ-アルミナが挙げられる。これらの担体は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。本発明では、分解活性成分および担体のそれぞれの含有量は特に限定されず、本技術分野における慣用知識から選択すればよい。
【0128】
[工程(3-5)]
任意構成で、水素化改質油および常圧軽油を共に接触分解して、第2触媒分解産物を得る工程。
【0129】
本発明の一態様によれば、工程(3-5)における「共に」という用語は、水素化改質油および常圧軽油を組合せて、接触分解に供する原料とすることを指す。したがって、両者を所定の比率に予め混合した後に接触分解してもよいし、両者を所定の比率で同時に接触分解してもよく、これらは特に限定されない。
【0130】
本発明の一態様によれば、工程(3-5)において、第2触媒分解産物から、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油、およびスラリー油を分離して得てもよい。分離は、本技術分野において周知の任意の方法および任意の方式にて行ってもよい。分離の具体例としては蒸留、分留が挙げられる(特に分留)。また、分離は、本技術分野において周知の任意の分離装置(分留塔など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0131】
本発明の一態様によれば、工程(3-5)における接触分解は、本技術分野において周知の任意の方式にて行ってもよく、特に限定されない。また、接触分解は、本技術分野において周知の任意の接触分解装置(流動床式反応器など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0132】
本発明の一態様によれば、工程(3-5)における反応温度は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応温度は、一般的には450℃~650℃であり、好ましくは480℃~560℃である。
【0133】
本発明の一態様によれば、工程(3-5)における反応圧力は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応圧力は、一般的には0.15MPa~0.4MPaである。
【0134】
本発明の一態様によれば、工程(3-5)における反応時間は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応時間は、一般的には0.1秒間~10秒間であり、好ましくは0.2秒間~4秒間である。
【0135】
本発明の一態様によれば、工程(3-5)において、分解触媒の原料油(水素化改質油および常圧軽油を指す)に対する重量比は、本技術分野における慣用知識から選択できる。この重量比は、一般的には3~30であり、好ましくは5~15である。
【0136】
本発明の一態様によれば、工程(3-5)において、水蒸気の原料油(水素化改質油および常圧軽油を指す)に対する重量比は、本技術分野における慣用知識から選択できる。この重量比は、一般的には0.05~0.6であり、好ましくは0.05~0.4である。
【0137】
本発明の一態様によれば、工程(3-5)における接触分解は、一般的に、分解触媒の存在下で行われる。分解触媒の例としては、本技術分野において分解に通常使用される任意の分解触媒、または、本技術分野において通常使用される任意の方法で製造された分解触媒が挙げられ、特に限定されない。具体的に、分解触媒は、一般的には固体の酸触媒であり、好ましくは分解活性成分および担体を含む。分解活性成分の具体例としては、ゼオライトが挙げられる。特に、Y型ゼオライト(希土類元素を含んでいてもよい)、HY型ゼオライト(希土類元素を含んでいてもよい)、超安定性Y型ゼオライト(希土類元素を含んでいてもよい)、β型ゼオライト(希土類元素を含んでいてもよい)が挙げられる。これらの分解活性成分は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。担体の例としては、難溶性の無機酸化物、天然粘土、アルミナ、シリカ、非晶質シリカ-アルミナが挙げられる。これらの担体は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。本発明では、分解活性成分および担体のそれぞれの含有量は特に限定されず、本技術分野における慣用知識から選択すればよい。
【0138】
[工程(3-6)]
任意構成で、水素化改質油および第2分離産物を共に接触分解して、第3触媒分解産物を得る工程。
【0139】
本発明の一態様によれば、工程(3-6)における「共に」という用語は、水素化改質油および第2分離産物を組合せて、接触分解に供する原料とすることを指す。したがって、両者を所定の比率に予め混合した後に接触分解してもよいし、両者を所定の比率で同時に接触分解してもよく、これらは特に限定されない。
【0140】
本発明の一態様によれば、工程(3-6)において、第3触媒分解産物から、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油、およびスラリー油を分離して得てもよい。分離は、本技術分野において周知の任意の方法および任意の方式にて行ってもよい。分離の具体例としては、蒸留、分留が挙げられる(特に分留)。分離は、本技術分野において周知の任意の分離装置(分留塔など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0141】
本発明の一態様によれば、工程(3-6)における接触分解は、本技術分野において周知の任意の方式にて行ってもよく、特に限定されない。接触分解は、本技術分野において周知の任意の接触分解装置(流動床式反応器など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0142】
本発明の一態様によれば、工程(3-6)における反応温度は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応温度は、一般的には450℃~650℃であり、好ましくは480℃~560℃である。
【0143】
本発明の一態様によれば、工程(3-6)における反応圧力は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応圧力は、一般的には0.15MPa~0.4MPaである。
【0144】
本発明の一態様によれば、工程(3-6)における反応時間は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応時間は、一般的には0.1秒間~10秒間であり、好ましくは0.2秒間~4秒間である。
【0145】
本発明の一態様によれば、工程(3-6)において、分解触媒の原料油(水素化改質油および第2分離産物を指す)に対する重量比は、本技術分野における慣用知識から選択できる。この重量比は、一般的には3~30であり、好ましくは5~15である。
【0146】
本発明の一態様によれば、工程(3-6)において、水蒸気の原料油(水素化改質油および第2分離産物を指す)に対する重量比は、本技術分野における慣用知識から選択できる。この重量比は、一般的には0.05~0.6であり、好ましくは0.05~0.4である。
【0147】
本発明の一態様によれば、工程(3-6)における接触分解は、一般的に分解触媒の存在下で行われる。分解触媒の例としては、本技術分野において分解に通常使用される任意の分解触媒、または、本技術分野において通常使用される任意の方法で製造された分解触媒が挙げられ、特に限定されない。具体的に、分解触媒は、一般的には固体の酸触媒であり、好ましくは分解活性成分および担体を含む。分解活性成分の具体例としては、ゼオライトが挙げられる。特に、Y型ゼオライト(希土類元素を含んでいてもよい)、HY型ゼオライト(希土類元素を含んでいてもよい)、超安定性Y型ゼオライト(希土類元素を含んでいてもよい)、β型ゼオライト(希土類元素を含んでいてもよい)が挙げられる。これらの分解活性成分は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。担体の例としては、難溶性の無機酸化物、天然粘土、アルミナ、シリカおよび非晶質シリカ-アルミナが挙げられる。これらの担体は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。本発明では、分解活性成分および担体のそれぞれの含有量は特に限定されず、本技術分野における慣用知識から選択すればよい。
【0148】
[工程(3-7)]
任意構成で、常圧軽油を水素化処理してディーゼル油を得る工程。
【0149】
本発明の一態様によれば、工程(3-7)における水素化処理は、本技術分野において周知の任意の方式にて行ってもよく、特に限定されない。水素化処理は、本技術分野において周知の任意の水素化処理装置(固定床式反応器、流動床式反応器など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0150】
本発明の一態様によれば、工程(3-7)における水素ガスの分圧は、本技術分野における慣用知識から選択できる。水素ガスの分圧は、一般的には7.0MPa~15.0MPaである。
【0151】
本発明の一態様によれば、工程(3-7)における反応圧力は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応圧力は、一般的には8MPa~12MPaである。
【0152】
本発明の一態様によれば、工程(3-7)における反応温度は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応温度は、一般的には340℃~400℃である。
【0153】
本発明の一態様によれば、工程(3-7)において、常圧軽油の体積空間速度は、本技術分野における慣用知識から選択できる。体積空間速度は、一般的には0.6h-1~1.5h-1である。
【0154】
本発明の一態様によれば、工程(3-7)において、水素ガスの常圧軽油に対する体積比は、本技術分野における慣用知識から選択できる。この体積比は、一般的には500~800である。
【0155】
本発明の一態様によれば、工程(3-7)における水素化処理は、一般的に水素化触媒の存在下で行われる。水素化触媒の例としては、本技術分野において水素化に通常使用される任意の水素化触媒、または、本技術分野において周知の任意の方法で製造された水素化触媒が挙げられる。この工程における水素化触媒の使用量は、本技術分野における慣用知識から選択でき、特に限定されない。具体的に、水素化触媒は、一般的には担体および活性金属成分を含む。活性金属成分の具体例としては、元素周期表における6B族金属、および、元素周期表における8族非貴金属が挙げられる。特に、ニッケルおよびタングステンの組合せ;ニッケル、タングステンおよびコバルトの組合せ;ニッケルおよびモリブデンの組合せ;コバルトおよびモリブデンの組合せが挙げられる。これらの活性金属成分は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。担体の例としては、アルミナ、シリカ、非晶質シリカ-アルミナが挙げられる。これらの担体は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。本発明では、担体および活性金属成分のそれぞれの含有量は特に限定されず、本技術分野における慣用知識から選択すればよい。
【0156】
[工程(3-8)]
任意構成で、(i)改質方法における任意の工程にて得られる循環油と、(ii)改質油とを共に水素化処理して、水素化処理油を得る工程。
【0157】
本発明の一態様によれば、工程(3-8)における「共に」という用語は、循環油および改質油を組合せて、水素化処理に供する原料とすることを指す。したがって、両者を所定の比率に予め混合した後に水素化処理してもよいし、両者を所定の比率で同時に水素化処理してもよく、これらは特に限定されない。
【0158】
本発明の一態様によれば、工程(3-8)における水素化処理は、本技術分野において周知の任意の方式にて行ってもよく、特に限定されない。水素化処理は、本技術分野において周知の任意の水素化処理装置(固定床式反応器、流動床式反応器など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0159】
本発明の一態様によれば、工程(3-8)における水素ガスの分圧は、本技術分野における慣用知識から選択できる。水素ガスの分圧は、一般的には5.0MPa~20.0MPaであり、好ましくは8.0MPa~15.0MPaである。
【0160】
本発明の一態様によれば、工程(3-8)における反応温度は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応温度は、一般的には330℃~450℃であり、好ましくは350℃~420℃である。
【0161】
本発明の一態様によれば、工程(3-8)において、原料油(循環油および改質油を指す)の体積空間速度は、本技術分野における慣用知識から選択できる。体積空間速度は、一般的には0.1h-1~3.0h-1であり、好ましくは0.3h-1~1.5h-1である。
【0162】
本発明の一態様によれば、工程(3-8)において、水素ガスの原料油(循環油および改質油を指す)に対する体積比は、本技術分野における慣用知識から選択できる。この体積比は、一般的には300~3000であり、好ましくは800~1500である。
【0163】
本発明の一態様によれば、工程(3-8)における水素化処理は、一般的に、水素化触媒の存在下で行われる。水素化触媒の例としては、本技術分野において水素化に通常使用される任意の水素化触媒、または、本技術分野において通常使用される任意の方法で製造された水素化触媒が挙げられる。この工程における水素化触媒の使用量は、本技術分野における慣用知識から選択でき、特に限定されない。具体的に、水素化触媒は、一般的には担体および活性金属成分を含む。活性金属成分の具体例としては、元素周期表における6B族金属、8族非貴金属が挙げられる。特に、ニッケルおよびタングステンの組合せ;ニッケル、タングステンおよびコバルトの組合せ;ニッケルおよびモリブデンの組合せ;コバルトおよびモリブデンの組合せが挙げられる。これらの活性金属成分は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。担体の例としては、アルミナ、シリカおよび非晶質シリカ-アルミナが挙げられる。これらの担体は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。本発明では、担体および活性金属成分のそれぞれの含有量は特に限定されず、本技術分野における慣用知識から選択すればよい。
【0164】
[工程(3-9)]
任意構成で、水素化処理油および第2分離産物を共に接触分解して、第4触媒分解産物を得る工程。
【0165】
本発明の一態様によれば、工程(3-9)における「共に」という用語は、水素化処理油および第2分離産物を組合せて、接触分解に供する原料とすることを指す。したがって、両者を所定の比率に予め混合した後に接触分解してもよいし、両者を所定の比率で同時に接触分解してもよく、これらは特に限定されない。
【0166】
本発明の一態様によれば、工程(3-9)において、第4触媒分解産物から、乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油、およびスラリー油を分離して得てもよい。分離は、本技術分野において周知の任意の方法および任意の方式にて行ってもよい。具体例としては、蒸留、分留が挙げられる(特に分留)。分離は、本技術分野において周知の任意の分離装置(分留塔など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0167】
本発明の一態様によれば、工程(3-9)における接触分解は、本技術分野において周知の任意の方式にて行ってもよく、特に限定されない。接触分解は、本技術分野において周知の任意の接触分解装置(流動床式反応器など)によって行われてもよく、当業者はこれを合理的に選択できる。
【0168】
本発明の一態様によれば、工程(3-9)における反応温度は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応温度は、一般的には450℃~650℃であり、好ましくは480℃~560℃である。
【0169】
本発明の一態様によれば、工程(3-9)における反応圧力は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応圧力は、一般的には0.15MPa~0.4MPaである。
【0170】
本発明の一態様によれば、工程(3-9)における反応時間は、本技術分野における慣用知識から選択できる。反応時間は、一般的には0.1秒間~10秒間であり、好ましくは0.2秒間~4秒間である。
【0171】
本発明の一態様によれば、工程(3-9)において、分解触媒の原料油(水素化処理油および第2分離産物を指す)に対する重量比は、本技術分野における慣用知識から選択できる。この重量比は、一般的には3~30であり、好ましくは5~15である。
【0172】
本発明の一態様によれば、工程(3-9)において、水蒸気の原料油(水素化処理油および第2分離産物を指す)に対する重量比は、本技術分野における慣用知識から選択できる。この重量比は、一般的には0.05~0.6であり、好ましくは0.05~0.4である。
【0173】
本発明の一態様によれば、工程(3-9)における接触分解は、一般的に分解触媒の存在下で行われる。分解触媒の例としては、本技術分野において分解に通常使用される任意の分解触媒、または、本技術分野において通常使用される任意の方法で製造された分解触媒が挙げられ、特に限定されない。具体的に、分解触媒は、一般的には固体の酸触媒であり、好ましくは分解活性成分および担体を含む。分解活性成分の具体例としては、ゼオライトが挙げられる。特に、Y型ゼオライト(希土類元素を含んでいてもよい)、HY型ゼオライト(希土類元素を含んでいてもよい)、超安定性Y型ゼオライト(希土類元素を含んでいてもよい)、β型ゼオライト(希土類元素を含んでいてもよい)が挙げられる。これらの分解活性成分は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。担体の例としては、難溶性の無機酸化物、天然粘土、アルミナ、シリカ、非晶質シリカ-アルミナが挙げられる。これらの担体は、1種類のみを単独で用いてもよいし、複数種類を任意の比率で組合せて用いてもよい。本発明では、分解活性成分および担体のそれぞれの含有量は特に限定されず、本技術分野における慣用知識から選択すればよい。
【0174】
[工程(3-10)]
任意構成で、改質方法における任意の工程にて得られるスラリー油、および/または、外部から供給されるスラリー油を、工程(1)、工程(2)および/または工程(3)にリサイクルする工程。
【0175】
本発明の一態様によれば、工程(3-10)における「外部から供給されるスラリー油」という用語は、本発明の改質方法における任意の工程に由来するスラリー油ではなく、他の経路に由来するスラリー油を指す(外部から搬入または購入したものなど)。
【0176】
本発明の一態様によれば、工程(3-10)において、上述のようにスラリー油をリサイクルすることにより、少なくとも改質方法の稼働安定性を向上させられる。あるいは、好ましい場合には、少なくとも改質油の収率を向上させられる。
【0177】
本発明の一態様によれば、工程(3-10)におけるスラリー油のリサイクル方式の例としては、スラリー油を工程(1)にリサイクルした後、低品質油と共に改質原料として転化反応に供する方式が挙げられる。あるいは、スラリー油を工程(2)にリサイクルし、転化産物と所定の比率にて混合することにより、転化産物の成分を調整する方式が挙げられる。あるいは、スラリー油を工程(3)にリサイクルすることにより、スラリー油の存在下で抽出分離を行う方式が挙げられる。これらの方式は、1つのみを単独で用いてもよいし、複数を任意に組合せて用いてもよい。
【0178】
[工程(3-11)]
任意構成で、改質方法における任意の工程にて得られる液化ガスを、工程(3)にリサイクルする工程。
【0179】
本発明の一態様によれば、工程(3-11)において、液化ガスを溶媒または溶媒の一部分として、工程(3)(工程(3-1)を含む)にリサイクルする。
【0180】
本発明の一態様によれば、改質方法は、任意構成で、下記工程(4)をさらに含んでもよい。
【0181】
〔工程(4)〕
残渣の全部または一部を工程(1)にリサイクルする工程(以下、残渣リサイクル工程と略称する)。
【0182】
本発明の一態様によれば、工程(4)において、残渣の一部(例えば80重量%超、好ましくは90重量%超、より好ましくは95重量%以上)を工程(1)にリサイクルする。その後、リサイクルした残渣を低品質油と共に改質原料として転化反応に供し、残りの残渣は廃棄してもよい。残渣の全量に対する廃棄する残渣の比率を残渣の廃棄率と称し、単位は重量%である。
【0183】
本発明によれば、改質システムも提供される。この改質システムは、本発明に係る改質方法を専ら実施するように構成されている。そのため、本明細書において具体的に記載または説明していない改質システムの構成、用語、特徴または限定などは全て、改質方法に関連して成された対応する記載または説明を参照して解釈すればよい。また、本明細書において、改質方法に関して開示した1つ以上の態様(または実施形態)と、改質システムに関して開示した1つ以上の態様(または実施形態)とは、互いに任意に組合せられる。このような組合せにより得られる技術的構成(例えば、方法またはシステム)は、本明細書の出願当初の開示の一部に属しており、本発明の範囲に含まれる。
【0184】
本発明の一態様によれば、改質システムは、転化反応ユニット、転化産物処理ユニット、第1制御ユニットおよび抽出分離ユニットを備えている。
【0185】
本発明の一態様によれば、改質システムにおける転化反応ユニットは、水素ガスの存在下(任意構成で、転化触媒の存在下)にて低品質油を転化反応させて、得られる転化産物を放出するように構成されている。転化反応ユニットの具体例としては、水素化-熱転化反応器が挙げられる。
【0186】
本発明の一態様によれば、改質システムにおける転化産物処理ユニットは、転化産物を処理して、得られる第1処理産物を放出するように構成されている。、転化産物処理ユニットの具体例としては、フラッシュ蒸留タンク、分留塔、蒸留塔が挙げられる。
【0187】
本発明の一態様によれば、改質システムにおける第1制御ユニットは、転化産物処理ユニットの処理条件(例えば、処理温度および/または処理圧力)を制御して、沸点または沸騰範囲が350℃~524℃である成分が20重量%~60重量%の含有量で第1処理産物中に含まれるように構成されている。第1制御ユニットの具体例としては、温度制御装置、圧力制御装置が挙げられる。
【0188】
本発明の一態様によれば、改質システムにおける抽出分離ユニットは、第1処理産物を抽出分離して、得られる改質油および残渣を別々に放出するように構成されている。抽出分離ユニットの具体例としては、抽出塔が挙げられる。
【0189】
本発明の一態様によれば、改質システムは、任意構成の残渣処理ユニットをさらに備えている。残渣処理ユニットは、残渣の全部または一部を、転化反応ユニットに運搬するように構成されている。残渣処理ユニットの具体例としては、ポンプ、運搬パイプラインが挙げられる。
【0190】
本発明の一態様によれば、改質システムにおける転化産物処理ユニットは、第1転化産物分離ユニット、第2転化産物分離ユニット、任意構成の第2分離産物分離ユニット、および、任意構成の気体成分運搬ユニットをさらに備えていてもよい。
【0191】
本発明の一態様によれば、改質システムにおける第1転化産物分離ユニットは、転化産物を分離して、得られる気体成分および液体成分を別々に放出するように構成されている。第1転化産物分離ユニットの具体例としては、加圧蒸留塔が挙げられる。
【0192】
本発明の一態様によれば、改質システムにおける第2転化産物分離ユニットは、液体成分を分離して、得られる第2分離産物および第1分離産物を別々に放出するように構成されている。第2転化産物分離ユニットの具体例としては、フラッシュ蒸留タンク、常圧蒸留塔が挙げられる。
【0193】
本発明の一態様によれば、改質システムにおける第2分離産物分離ユニットは、第2分離産物を分離して、得られるナフサおよび常圧軽油を別々に放出するように構成されている。第2分離産物分離ユニットの具体例としては、分留塔が挙げられる。
【0194】
本発明の一態様によれば、改質システムにおける気体成分運搬ユニットは、気体成分を転化反応ユニットに運搬するように構成されている。気体成分運搬ユニットの具体例としては、ガス運搬パイプラインが挙げられる。
【0195】
本発明の一態様によれば、改質システムは、第2制御ユニットおよび第3制御ユニットをさらに備えていてもよい。
【0196】
本発明の一態様によれば、改質システムにおける第2制御ユニットは、第1転化産物分離ユニットの処理圧力を制御するように構成されている。また、第3制御ユニットは、第2転化産物分離ユニットの処理圧力を制御して、第1転化産物分離ユニットの処理圧力を第2転化産物分離ユニットの処理圧力よりも大きくするように構成されている。第2制御ユニットの具体例としては、圧力制御装置およびシステムが挙げられる。また、第3制御ユニットの具体例としては、圧力制御装置およびシステムが挙げられる。
【0197】
本発明の一態様によれば、改質システムにおける第3制御ユニットは、第2転化産物分離ユニットの処理条件(例えば、処理温度および/または処理圧力)を制御して、(i)沸点または沸騰範囲が350℃~524℃である成分が20重量%~60重量%の含有量で第1分離産物中に含まれ、かつ、(ii)第2分離産物(または、その任意の構成成分)が350℃以下の終留点を有するように構成されていてもよい。第3制御ユニットの具体例としては、圧力制御装置およびシステム、温度制御装置およびシステムが挙げられる。
【0198】
本発明の一態様によれば、改質システムにおいて、操作および測定が容易である点から、好ましくは、(i)第2制御ユニットは、第1転化産物分離ユニットの気体成分の出口圧力および/または出口温度を制御するように構成されており、(ii)第3制御ユニットは、第2転化産物分離ユニットの第2分離産物の出口圧力および/または出口温度を制御するように構成されている。
【0199】
本発明の一態様によれば、改質システムにおける抽出分離ユニットは、第1分離産物または第1処理産物を溶媒と接触させ、得られる改質油および残渣を別々に放出するように構成されている。抽出分離ユニットの具体例としては、抽出塔が挙げられる。
【0200】
本発明の一態様によれば、改質システムは、任意構成で、下記のうち1つ以上をさらに備えている。
【0201】
第1水素化ユニットは、改質油を水素化処理して、得られる水素化改質油を放出するように構成されている。第1水素化ユニットの具体例としては、固定床式水素化反応器が挙げられる。
【0202】
第2水素化ユニットは、改質油を水素化分解し、得られる水素化分解産物から、乾性ガス、液化ガス、航空用ケロシン、ディーゼル油および水素化テール油を分離して得るように構成されている。第2水素化ユニットの具体例としては、固定床式水素化分解反応器が挙げられる。
【0203】
第1接触分解ユニットは、水素化改質油を接触分解し、得られる第1触媒分解産物から乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油を分離して得るように構成されている。第1接触分解ユニットの具体例としては、流動床式接触分解反応器が挙げられる。
【0204】
第2接触分解ユニットは、水素化改質油および常圧軽油を共に接触分解し、得られる第2触媒分解産物から乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油を分離して得るように構成されている。第2接触分解ユニットの具体例としては、流動床式接触分解反応器が挙げられる。
【0205】
第3接触分解ユニットは、水素化改質油および第2分離産物を共に接触分解し、得られる第3触媒分解産物から乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油を分離して得るように構成されている。第3接触分解ユニットの具体例としては、流動床式接触分解反応器が挙げられる。
【0206】
第3水素化ユニットは、常圧軽油を水素化処理し、得られるディーゼル油を放出するように構成されている。第3水素化ユニットの具体例としては、固定床式水素化反応器が挙げられる。
【0207】
第4水素化ユニットは、改質システムにおける任意のユニットにて得られる循環油を改質油と共に水素化処理し、得られる水素化処理油を放出するように構成されている。第4水素化ユニットの具体例としては、固定床式水素化反応器が挙げられる。
【0208】
第4接触分解ユニットは、水素化処理油および第2分離産物を共に接触分解し、得られる第4触媒分解産物から乾性ガス、液化ガス、ガソリン、循環油およびスラリー油を分離して得るように構成されている。第4接触分解ユニットの具体例としては、流動床式接触分解反応器が挙げられる。
【0209】
スラリー油運搬ユニットは、改質システムにおける任意のユニットにて得られるスラリー油および/または外部から供給されるスラリー油を、転化反応ユニット、転化産物処理ユニットおよび/または抽出分離ユニットに運搬するように構成されている。スラリー油運搬ユニットの具体例としては、運搬パイプライン、ポンプが挙げられる。
【0210】
液化ガス運搬ユニットは、改質システムにおける任意のユニットにて得られる液化ガスを、抽出分離ユニットに運搬するように構成されている。液化ガス運搬ユニットの具体例としては、ガス運搬パイプラインが挙げられる。
【0211】
以下、図面を参考しながら、本発明に係る改質方法および改質システムをさらに説明する。しかし、本発明はこれには限定されない。
【0212】
図1に示すように、改質原料である低品質油はパイプライン1を流通し;転化触媒はパイプライン2を流通し;リサイクルされた水素ガスはパイプライン3を流通し;新しい水素ガスはパイプライン4を流通し;残渣はパイプライン5を流通して、それぞれ転化反応ユニット7に運搬され、転化反応に供される。転化産物は、パイプライン8を流通して第1転化産物分離ユニット9に運搬され、加圧蒸留される。これにより、気体成分および液体成分に分離される。気体成分は、リサイクルされた水素ガスとして、パイプライン10、パイプライン3、パイプライン6を順に流通して転化反応ユニット7に運搬される。あるいは、パイプライン10、パイプライン11を順に流通して、系外へ引出される。液体成分は、パイプライン12を流通して第2転化産物分離ユニット13に運搬され、急減圧される。これにより、第2分離産物および第1分離産物に分離される。第2分離産物は、パイプライン15を流通して系外へ引出される。第1分離産物は、パイプライン14を流通して抽出分離ユニット16に運搬され、パイプライン17から供給される溶媒と向流接触することにより抽出分離され、改質油および残渣を得る。改質油はパイプライン18を流通して系外へ引出される。残渣は、一部がパイプライン19、パイプライン20を順に流通して廃棄される。残渣の残部は、パイプライン19、パイプライン5、パイプライン6を順に流通して、転化反応ユニット7にて改質原料としてリサイクルされ、低品質油と共に転化反応に供される。あるいは、残渣を全くリサイクルせずに、パイプライン19、パイプライン20を順に流通して廃棄してもよい。
【0213】
図2では、図1の構成に加えて、下記の構成をさらに備えている。
(1)改質油は、パイプライン18を流通して第1水素化ユニット21に運搬され、さらなる水素化処理に供される。これにより、品質がさらに向上した水素化改質油22を得る。
【0214】
図3では、図1の構成に加えて、下記の構成をさらに備えている。
(1)第2分離産物は、パイプライン15を流通して第2分離産物分離ユニットに運搬され、分留されてナフサおよび常圧軽油(AGO)を得る。ナフサは、パイプライン21を流通して系外へ引出される。AGOは、パイプライン22、パイプライン23を流通して第3水素化ユニット24に運搬され、水素化処理されて高品質ディーゼル油(中国国家V指標を満たす)を得る。高品質ディーゼル油は、パイプライン25を流通して系外へ引出される。
(2)改質油は、パイプライン18を流通して第2水素化ユニット26に運搬され、水素化分解反応に供されることにより、水素化分解産物を得る。水素化分解産物は、パイプライン27を流通して分留システム28に運搬され、分離されて、乾性ガス、液化ガス、航空用ケロシン(中国国家標準を満たす)、高品質ディーゼル油、および水素化テール油を得る。乾性ガス、液化ガス、航空用ケロシン(中国国家標準を満たす)、高品質ディーゼル油、および水素化テール油は、それぞれパイプライン29、パイプライン30、パイプライン31、パイプライン32およびパイプライン33を流通して、系外へ引出される。(3)水素化テール油は、水蒸気分解によって製造されるエチレンの原料となりうる。
【0215】
図4では、図1の構成に加えて、下記の構成をさらに備えている。
(1)改質油はパイプライン18を流通し、循環油はパイプライン26を流通して、第4水素化ユニット20に運搬される。これらは、共に水素化処理に供されることにより、品質がさらに改善された水素化処理油を得る。
(2)水素化処理油はパイプライン21、パイプライン22を流通し、第2分離産物はパイプライン15、パイプライン22を流通して、第4接触分解ユニット23に運搬される。これらは、共に接触分解反応に供される。触媒分解産物は、分離されて、乾性ガス、液化ガス、高オクタン価ガソリン、循環油およびスラリー油を得る。
(3)乾性ガスは、パイプライン24を流通して系外へ引出される。液化ガスの一部は、パイプライン28、パイプライン17を流通し、抽出分離ユニット16にて溶媒としてリサイクルされる。液化ガスの残部は、パイプライン28、パイプライン29を流通して系外へ引出される。高オクタン価ガソリンは、パイプライン25を流通し、製品として系外へ引出される。
(4)スラリー油は、パイプライン27、パイプライン6を流通し、転化反応ユニット7にて改質原料としてリサイクルされ、低品質油と共に転化反応に供される。
【実施例0216】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0217】
本発明(下記実施例および比較例を含む)に関連して、各種の測定条件および算出方法は以下の通りある。
重金属(Ni+V換算)の含有量:ASTM D5708に基づく。
アスファルト質の含有量:SH/T 0266-92(1998)に基づく。
低品質油の転化率=(1-残渣の廃棄率)×100%。
残渣の廃棄率=(廃棄する残渣の質量/改質原料の質量)×100%。
改質油の収率=(改質油の質量/改質原料の質量)×100%。
トルエン不溶物の収率=(トルエン不溶物の質量/改質原料の質量)×100%。
ガソリンの収率=(ガソリンの質量/接触分解用原料油の質量)×100%。
航空用ケロシンの収率=(航空用ケロシンの質量/水素化分解用原料油の質量)×100%。
ディーゼル油の収率=(ディーゼル油の質量/水素化分解用原料油の質量)×100%。ディーゼル油のセタン価:中国国家標準GB T386-2010に基づく。
【0218】
改質工程の稼働安定性は、改質システムの安定稼働日数によって評価した。具体的には、次の状況のうちいずれか1つでも改質システムに発生すれば、安定稼働はできないと判断した。
(1)転化反応器内の異なる測定箇所における温度の最大偏差ΔT(絶対値)が、5℃を超える。
(2)通常では黄色または黄緑色を呈する改質油が、黒色を呈した。
【0219】
以下の実施例および比較例は、図面に示したものと同様の実施形式にて行った。
【0220】
以下の実施例および比較例で用いた低品質油は、改質原料Aおよび改質原料Bは減圧残油であり、改質原料Cはベネズエラ産超重質油の減圧残渣であり、改質原料Dは高温コークス炉のコールタールであり、改質原料Eは脱油アスファルトである。これら5種類の低品質油の性質を、表1に示す。
【0221】
【表1】
【0222】
〔実施例1~5〕
中型装置を用い、まず低品質油を転化反応させ、次に転化産物を処理して第1分離産物および第2分離産物を得た。転化反応および転化産物の処理の、具体的条件および結果を表2に示す。
【0223】
【表2】
【0224】
〔実施例6~8〕
中型装置を用い、まず低品質油を転化反応させ、次に転化産物を処理して第1分離産物および第2分離産物を得た。転化反応および転化産物の処理の、具体的条件および結果を表3に示す。
【0225】
【表3】
【0226】
〔実施例9~11〕
中型装置を用い、実施例2、実施例4および実施例7で得た第1分離産物を抽出分離した。抽出分離の具体的条件および結果を、表4に示す。
【0227】
【表4】
【0228】
〔実施例12、13〕
中型装置を用い、まず改質原料である低品質油を転化反応させ、次に転化産物を処理して、第1分離産物および第2分離産物を得た。次に、第1分離産物を抽出分離して、改質油および残渣を得た。残渣の一部は転化反応にリサイクルし、低品質油と混合した後で、共に改質原料として転化反応に供した。残渣の残部は廃棄した。低品質油および残渣に由来する転化産物を処理して、第1分離産物および第2分離産物を得た。次に、第1分離産物を抽出分離して、改質油および残渣を得た。第2分離産物から、ナフサ留分および常圧軽油を分離して得た。各工程の具体的条件および結果を表5に示す。
【0229】
【表5】
【0230】
表4および表5の結果を比較すると、残渣のリサイクルが、低品質油の転化率および改質油の収率の向上に寄与していることが判る。
【0231】
〔実施例14〕
実施例12で得た改質油を水素化処理した。水素化処理の具体的条件および結果を表6に示す。
【0232】
【表6】
【0233】
表6に記載の原料油の性質から判るように、改質油におけるアスファルト質の含有量は0.5%未満、重金属の含有量は2μg/g未満となった。このように、改質原料油は、アスファルト質転化率および金属除去率が高かった。水素化処理後に得た水素化改質油の性質は、FCC原料としての要求水準を満たしている。
【0234】
〔実施例15〕
実施例12で得た改質油を水素化分解した。水素化分解の具体的条件および結果を表7-1および表7-2に示す。
【0235】
【表7-1】
【0236】
航空用ケロシンおよびディーゼル油の性質は、下表の通りである。
【0237】
【表7-2】
【0238】
これらの表の結果から判るように、改質油を水素化分解することにより、高品質航空用ケロシンおよび高品質ディーゼル油が得られた。航空用ケロシンの収率は、38%超であった。
【0239】
〔実施例16〕
実施例14で得た水素化改質油を接触分解した。接触分解の具体的条件および結果を表8に示す。
【0240】
【表8】
【0241】
表8の結果から判るように、水素化改質油を接触分解することにより、高オクタン価ガソリンが得られた。高オクタン価ガソリンの収率は49.40%であった。また、リサーチ・オクタン価は92.1であった。
【0242】
〔実施例17〕
実施例12で得た常圧軽油を、実施例14で得た水素化改質油と共に接触分解した。接触分解の具体的条件および結果を表9に示す。
【0243】
【表9】
【0244】
表9の結果から判るように、水素化改質油を常圧軽油と共に接触分解することにより、高オクタン価ガソリン(オクタン価:92超)を得ることができる。高オクタン価ガソリンの収率は52.62%であった。
【0245】
〔実施例18〕
実施例12で得た常圧軽油を水素化処理した。当該水素化処理の具体的条件および結果を表10に示す。
【0246】
【表10】
【0247】
表10の結果から判るように、常圧軽油を水素化処理することにより、高品質ディーゼル油を得が得られた。この高品質ディーゼル油のセタン価は51超であった。
【0248】
〔実施例19〕
実施例16または実施例17で得た循環油を、実施例12で得た改質油と共に水素化処理し、得られた水素化処理油を接触分解した。水素化処理および接触分解の具体的条件および結果を表11に示す。
【0249】
【表11】
【0250】
表11の結果から判るように、循環油および改質油を共に水素化処理した後で接触分解することにより、高オクタン価(オクタン価:93超)のガソリン成分が得られた。この高オクタン価のガソリン成分の収率は、56.47%にも達した。
【0251】
〔実施例20〕
中型装置を用い、実施例12に基づいて、実施例16で得たスラリー油を転化反応にリサイクルした。具体的には、低品質油とリサイクル残渣とを混合した後、共に改質原料として転化反応に供した。次に、転化産物を処理して、第1分離産物および第2分離産物を得た。次に、第1分離産物を抽出分離して、改質油および残渣を得た。残渣の一部はリサイクルし、残部は廃棄した。各工程の具体的条件および結果を表12に示す。
【0252】
【表12】
【0253】
表12の結果によれば、スラリー油のリサイクルが、低品質油の転化率および改質油の収率の向上に寄与していることが示された。低品質油の転化率は2.0%向上した。改質油の収率は、1.5%向上した。また、トルエン不溶物の収率は25%低減した。安定稼働日数は30日間を超え、改質システムの長期的な安定稼働に有利であった。
【0254】
〔実施例21〕
中型装置を用い、まず改質原料として改質原料Bを転化反応に供し、次に転化産物を処理して、第1分離産物および第2分離産物を得た。次に、第1分離産物を抽出分離して、改質油および残渣を得た(抽出分離の条件は実施例12と同様)。残渣の一部は転化ユニットにリサイクルし、残部は廃棄した。次に、混合原料に由来する転化産物を処理し、第1分離産物および第2分離産物を得た。次に、第1産物を抽出分離して、改質油および残渣を得た(抽出分離の条件は実施例12と同様)。各工程の具体的条件および結果を表13に示す。
【0255】
〔比較例1~4〕
表13に記載の内容に変更した以外は、実施例21と同様に処理した。
【0256】
【表13】
【0257】
表13の結果によれば、特別成分が本発明で規定される要件を満たさない場合には、低品質油の転化率が6~10%低下し、改質油の収率が5~8%低下し、トルエン不溶物の収率が1~2.5%増加することが示された。また、ΔT>5℃であるか、または改質油が黒色を呈したため、改質システムの安定稼働日数は大幅に低下した。
【0258】
本発明に関連して、これまでに、具体的な技術情報を多数開示した。しかし、当業者ならば理解できるであろうことには、本発明はこれらの具体的な技術情報の開示がなくとも実施可能である。本発明のいくつかの態様または実施形態においては、周知の方法、構造および技術の詳細な説明または記載を省略しているが、このことは当業者が本発明を理解する際に何らの影響をも及ぼさない。
【0259】
同じく理解されたいことには、本明細書の記載を簡潔にし、本発明の趣旨を当業者に理解させるために、本発明の改質方法または改質システムに関する説明において、複数の異なる態様(または実施形態)を組合せて実施例また図面に反映させている場合がある。しかし、このことをもって、「クレームされている技術的解決手段は、特許請求の範囲に記載の記載よりも多くの特徴点を有している」と解釈してはならない。具体的に言えば、特許請求の範囲に記載されているように、本発明においてクレームされている技術的解決手段の特徴点は、本明細書に記載の実施例または図面の特徴点よりも少ない。
【0260】
本発明に関連して、「第1」、「第2」などの用語は、単に、一方の対象または処理を、他方の対象または処理と区別するために用いられているに過ぎない。これらの対象または処理の間に、実際にそのような関係または順序が存在することは、要求または示唆されていない。「含む」、「包含する」などの用語は、排他的ではない表現形式である。したがって、このような表現を用いられている工程、方法、物品または装置は、本明細書に明示的に記載されている1つ以上の要素の他に、本明細書では明示的に表現されていない1つ以上の要素を含んでいてもよい(工程、方法、物品または設備に固有の1つ以上の要素など)。
【0261】
本明細書に開示の実施形態は、本発明の実施形態を例示的に説明するため用いられるのであって、本発明を制限するために用いられるものではない。本明細書では、これらの実施形態を参照しながら本発明を詳細に説明した。しかし、理解されたいことには、これらの実施形態に記載の技術的解決手段を改変または変更したり、技術的構成の一部を均等物に置換したりすることは、当業者であれば可能である。このような改変、変更または置換により得られる技術的解決手段もまた、本発明の趣旨を逸脱しておらず、本発明の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4