(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044857
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】外装部材、電子機器、時計及び外装部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
G04B 19/06 20060101AFI20220311BHJP
G04B 37/22 20060101ALI20220311BHJP
G04B 45/00 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
G04B19/06 M
G04B37/22 B
G04B37/22 S
G04B45/00 V
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150203
(22)【出願日】2020-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】515069473
【氏名又は名称】下出 祐太郎
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下出 祐太郎
(72)【発明者】
【氏名】高梨 知幸
(72)【発明者】
【氏名】天野 正男
(72)【発明者】
【氏名】竹田 茂樹
(57)【要約】
【課題】飾り部材を視認しやすい状態とし意匠性に優れた外装部材、電子機器、時計及び外装部材の製造方法を提供する。
【解決手段】外装部材5に、有色層52と、有色層52に接して設けられ、有色層52よりも透過率の高い第1の透明層53と、第1の透明層53における有色層52に接する面とは逆側の面に設けられる飾り部材54と、を備えた。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有色層と、
前記有色層に接して設けられ、前記有色層よりも透過率の高い第1の透明層と、
前記第1の透明層における前記有色層に接する面とは逆側の面に設けられる飾り部材と、
を備えることを特徴とする外装部材。
【請求項2】
視認側から逆側の面を見通すことの可能な透過率の基材をさらに備え、
前記有色層、前記第1の透明層、及び前記飾り部材は、前記基材における視認側とは逆側の面に配置されることを特徴とする請求項1に記載の外装部材。
【請求項3】
前記第1の透明層を形成する材料は、0.1mPa・S~200Pa・Sの粘性を持つことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の外装部材。
【請求項4】
前記有色層よりも透過率が高く、前記第1の透明層に接して前記飾り部材を前記第1の透明層との間に挟み込む第2の透明層がさらに設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の外装部材。
【請求項5】
前記第2の透明層を形成する材料は、0.1mPa・S~200Pa・Sの粘性を持つことを特徴とする請求項4に記載の外装部材。
【請求項6】
文字板として構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の外装部材。
【請求項7】
ベゼル部材として構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の外装部材。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の外装部材を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の外装部材を備えることを特徴とする時計。
【請求項10】
視認側から逆側の面を見通すことの可能な透過率の基材における視認側とは逆側の面に、1層目の透明層を形成する第1の透明層形成工程と、
前記1層目の透明層の上に飾り部材を配置する飾り部材配置工程と、
前記1層目の透明層に接して前記飾り部材を前記1層目の透明層との間に挟み込む2層目の透明層を形成する第2の透明層形成工程と
前記2層目の透明層に接して、前記1層目の透明層、及び前記2層目の透明層よりも透過率の低い有色層を形成する有色層形成工程と、
を含むことを特徴とする外装部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外装部材、電子機器、時計及び外装部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、時計等の機器の外装に各種の装飾を施すことが行われる。
例えば特許文献1には、基材の上に有色層(特許文献1では、漆層)を設け、その上に金粉等を蒔いたり金箔等を設けて模様を描く等の装飾を施すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の手法のように有色層の上に直接金粉等の飾り部材を配置すると、有色層を形成する液剤が乾く前に飾り部材が有色層の中に埋没してしまい、視認されづらくなるとの問題がある。
【0005】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、飾り部材を視認しやすい状態とし意匠性に優れた外装部材、電子機器、時計及び外装部材の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る外装部材は、
有色層と、
前記有色層に接して設けられ、前記有色層よりも透過率の高い第1の透明層と、
前記第1の透明層における前記有色層に接する面とは逆側の面に設けられる飾り部材と、
を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、飾り部材を視認しやすい状態とし意匠性に優れた外装部材等を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態における外装部材を備える時計の正面図である。
【
図2】外装部材の模式的な要部断面図であり、(a)は、基材の裏面側に装飾を施す場合の外装部材を、視認側を上にして示したものであり、(b)は、(a)に示す外装部材の形成手順を説明するための図である。
【
図3】従来例の外装部材の模式的な要部断面図である。
【
図4】基材の表面側に装飾を施す場合の外装部材の模式的な要部断面図である。
【
図5】基材の表面側に装飾を施す場合の外装部材の従来例を示す模式的な要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1及び
図2(a)、
図2(b)を参照しつつ、本発明に係る外装部材、外装部材を備える電子機器及び外装部材の製造方法の一実施形態について説明する。本実施形態では、電子機器が時計である場合を例示する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0010】
図1は、本実施形態における電子機器としての時計の正面図である。
図1に示すように、本実施形態における時計100は、例えばステンレスやチタン等の金属やセラミック、各種の合成樹脂等で形成されたケース(以下、実施形態において「時計ケース1」とする。)を備えている。なお、時計ケース1を形成する材料はここに例示したものに限定されない。
【0011】
本実施形態の時計ケース1は、中空の短柱形状に形成されており、時計100の表面側(時計における視認側)には、透明なガラス等で形成された風防部材11が取り付けられている。
また、時計100の裏面側には、図示しない裏蓋が取り付けられている。
この時計ケース1の
図1における上下両端部、つまり時計の12時方向側の端部及び6時方向側の端部には、図示しない時計バンドが取り付けられるバンド取付部12が設けられている。
また、時計ケース1の外周部には、時刻合わせの指示などの種々の操作指示が入力される複数の操作ボタン13が設けられている。
【0012】
また、本実施形態の時計ケース1の表面側(時計における視認側)には、風防部材11の周囲を取り巻くようにベゼル部材2が設けられている。なお、ベゼル部材2の形状は図示例に限定されない。例えばベゼル部材2はリング状ではなく、四角形や八角形等、多角形の枠状に形成されていてもよい。
本実施形態においてベゼル部材2は、電子機器である時計100において外部から視認される部分に配置される外装部材5である。
なお、外装部材5としてのベゼル部材2の具体的な構成については後述する。
【0013】
時計ケース1の内部には、図示しない表示部や、各部を動作させるための時計モジュール(図示せず)等が収容されている。
時計ケース1内であって風防部材11の下方には、表示部を構成する文字板3が配置されている。
本実施形態において文字板3は、ベゼル部材2と同様に、電子機器である時計100において外部から視認される部分に配置される外装部材5である。
なお、外装部材5としての文字板3の具体的な構成については後述する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態において文字板3の表面(視認側の面)には、その外周に沿って、時刻を示す時字31が設けられている。時字31は植字として立体的に設けられたものでもよいし、各種の印刷や蒸着等によって設けられた平面的なものであってもよい。なお、文字板3に時字31が設けられることは必須ではなく、ベゼル部材2等に時刻の指標となるものが設けられていてもよい。また、時計100は、文字板3等に時字31等を備えないデザインが採用されたものでもよい。
【0015】
文字板3上には、指針32(
図1では、秒針、分針、時針の3つの指針を図示。)が配置されている。指針32は時計モジュールの動作に従って回転し、その位置や先端部が指し示す時字31等により時刻を示すようになっている。
また本実施形態では、各種の機能表示(例えば曜日の表示やタイマー表示等)を行う機能針を有する小窓部33が設けられている。さらに、文字板3における3時の位置には日付を表示させる日付表示窓34が設けられている。なお、文字板3が小窓部33や日付表示窓34を備えることは必須ではない。文字板3のデザイン・構成等は図示例に限定されず、例えば、液晶表示部等が設けられていてもよい。
【0016】
前述のように、本実施形態においてベゼル部材2及び文字板3は、時計100の外観に現れ、ユーザに視認される外装部材5である。
なお、外装部材5は、ベゼル部材2及び文字板3に限定されず、外観に現れユーザに視認される部分を広く含んでもよい。例えば時計ケース1のバンド取付部12や時計ケース1の側面(外周面)等が外装部材5として後述するような構成を備えていてもよい。
【0017】
ここで、本実施形態における外装部材5の具体的な構成について
図2(a)を参照しつつ説明する。なお、以下において「外装部材5」というときは、本実施形態におけるベゼル部材2及び文字板3の両方を含む。
図2(a)は、外装部材の要部断面図である。なお、
図2(a)では、外装部材5を時計100に実装した場合に視認側(時計100の表面側)となる側が上になるように図示している。
外装部材5は、有色層52、第1の透明層53、飾り部材54を備えている。また、本実施形態において、外装部材5は、基材51、第2の透明層55を含んでいる。
【0018】
本実施形態の外装部材5では、有色層52、第1の透明層53、飾り部材54、第2の透明層55は、基材51における視認側とは逆側の面(裏面)に配置される。本実施形態のように、有色層52、第1の透明層53、飾り部材54、第2の透明層55を基材51の裏面側に設ける場合には、
図2(a)に示すように、外装部材5を時計100に実装した場合の下面側(視認側の逆側)から順に有色層52、第1の透明層53、飾り部材54、第2の透明層55が基材51の裏面側に積層される。
【0019】
本実施形態において、基材51は、外装部材5における最表面(視認側の面)に配置される。
基材51は、視認側から逆側の面を見通すことの可能な、透過率の高い材料で形成されている板状の透明な部材である。
なお、本実施形態において「透明」とは、光をよく通し、透き通って見えることを言うが、光透過性に優れていればよく、完全に無色透明の場合のみに限定されない。例えば、半透明等も含む概念とする。
【0020】
外装部材5がベゼル部材2である場合、ベゼル部材2は、時計100の表面側を縁取るものであるため、傷や摩耗等に耐え得る硬質な材料で形成されることが好ましい。具体的には、ベゼル部材2を構成する基材51を形成する材料としては、例えばサファイヤガラスのような硬質なガラス等、傷等がつきにくいものが好適に用いられる。
また、外装部材5が文字板3である場合には、基材51は例えば透明性が高く比較的軽量であるアクリル樹脂等の合成樹脂で形成されることが好ましい。
なお、外装部材5の基材を形成する材料はここに例示したものに限定されない。
なお、基材51の形状等は特に限定されない。基材51は、平板状のものに限定されず、凹凸やカーブ等を有する立体的な形状に形成されていてもよい。
【0021】
有色層52は、透過率の低い材料により形成される透過率の低い層である。
有色層52を形成する材料は、例えば漆、又は漆の黒(いわゆる「漆黒」)を再現することができるような合成樹脂を主成分とするインク等の液剤、その他透過率の低い層(有色層52)を形成することのできる各種の液剤である。なお、有色層52の色は黒に限定されず、適宜各色を選択可能である。1枚の基材51が複数の色に塗り分けられていてもよい。
有色層52の厚みは特に限定されないが、透過率が十分に低くなるとともに、乾燥した際に割れ等を生じない程度の厚みとする。
【0022】
第1の透明層53は、有色層52に接して設けられ、有色層52よりも透過率が高い層である。
第1の透明層53を形成する材料は、例えば透明な樹脂の液剤である。
後述するように、第1の透明層53は、層を形成した後、硬化させる。このため、第1の透明層53を形成する材料は、例えば透過率が高い樹脂であって、熱で硬化する熱硬化性樹脂や光(例えばUV等)で硬化する光硬化性樹脂等が好適に適用される。なお、第1の透明層53を形成する材料として何を適用するかは、第1の透明層53が設けられる面との相性等により適宜決定されることが好ましい。
なお、第1の透明層53は、乾燥状態(硬化状態)で透明となればよく、例えば塗布したての状態では、透過率の低い状態であってもよい。
【0023】
飾り部材54は、第1の透明層53における有色層52に接する面とは逆側の面に設けられる。
飾り部材54は、例えば蒔絵に用いられるような金粉や銀粉、プラチナ粉、金箔等の各種箔・粉である。なお、飾り部材54はこれらに限定されない。例えば各種貴石の欠片やガラス片、貝殻、ラメ等を広く含む。
【0024】
第2の透明層55は、有色層52よりも透過率が高く、第1の透明層53に接して飾り部材54を第1の透明層53との間に挟み込む。
第2の透明層55を形成する材料は特に限定されないが、後述するように、第1の透明層53は、層を形成した後、硬化させる。このため、第1の透明層53と同様に、例えば透過率が高い樹脂であって、熱で硬化する熱硬化性樹脂や光(例えばUV等)で硬化する光硬化性樹脂等が好適に適用される。
【0025】
なお、第2の透明層55を形成する材料として何を適用するかは、第2の透明層55が設けられる面との相性等により適宜決定されることが好ましい。本実施形態において第2の透明層55は基材51に接して設けられる。このため、第2の透明層55を形成する材料は、基材51との相性(接着しやすさ、接着の強度等)で決定されることが好ましい。
例えば外装部材5がベゼル部材2であるのように、基材51がガラス等で形成されている場合には、第1の透明層53を形成する材料として、透過率の高い熱硬化性樹脂を使うことが好ましい。また、例えば、外装部材5が樹脂の文字板3である場合のように、基材51が樹脂で形成されている場合には、第1の透明層53を形成する材料として、透過率の高い光硬化性樹脂(例えばUV硬化性樹脂)を使うことが好ましい。
なお、第1の透明層53と同様に、第2の透明層55は、乾燥状態(硬化状態)で透明となればよく、例えば塗布したての状態では、透過率の低い状態であってもよい。
【0026】
また本実施形態において第2の透明層55は、基材51の上に設けられ、飾り部材54を基材51の上に定着させるための接着層として機能する。本実施形態のように、第2の透明層55が飾り部材54よりも先に設けられ、飾り部材54を接着する機能を有する場合には、第2の透明層55を形成する材料は、0.1mPa・S~200Pa・Sの粘性を持つことが好ましい。
【0027】
次に、本実施形態における外装部材5の製造方法及びこれを備える時計100の作用について説明する。
【0028】
図2(b)は、
図2(a)に示す外装部材を上下(表裏)逆転させた場合の外装部材の要部断面図である。
図2(b)では、有色層52、第1の透明層53、飾り部材54、第2の透明層55が設けられる基材51を、裏面側を上にした状態で一番下に配置した場合における、各部の積層順を示している。
【0029】
本実施形態の外装部材5を製造する場合には、
図2(b)に示すように、まず基材51を、その裏面(時計100に実装した際に裏面側、下側、非視認側となる面)が上側となるように配置し、基材51の裏面に透明な接着剤等の透過率の高い材料を塗布して1層目の透明層としての第2の透明層55を形成する(第1の透明層形成工程)。
第2の透明層55を形成する手法は特に限定されないが、例えばシルクスクリーン印刷(以下において「シルク印刷」という。)等による。
第2の透明層55を形成する材料は前述のように基材51の材質との相性によって、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等を選択して用いる。
【0030】
第2の透明層55を形成する材料は、前述のように0.1mPa・S~200Pa・Sの粘性を有し、層を形成した時点から徐々に硬化し始める。
本実施形態では、第2の透明層55が完全に硬化する前に、この第2の透明層55の上(基材51と接しているのは逆側、
図2(b)において上側)に飾り部材54を配置する(飾り部材配置工程)。
具体的には、蒔絵の手法のように、金粉等の金属粉、金箔等の箔等の飾り部材54をデザイン等に応じて第2の透明層55の上に置いたり散らしたりする。
第2の透明層55が柔らかすぎて流れやすい状態だと上に配置した飾り部材54が動いたり流れたりして好ましくない。この点、0.1mPa・S~200Pa・Sの粘性を有する液剤で第2の透明層55を形成した場合には、基材51の上で流れ過ぎず、適度に基材51の面上にとどまるとともに、飾り部材54を配置する作業時間程度の時間では完全硬化せずに接着剤として機能する。
【0031】
飾り部材54を配置し終わると、第2の透明層55を形成する材料に応じた手法(熱硬化や光硬化)で第2の透明層55を硬化させる。例えば、第2の透明層55を形成する材料が熱硬化性樹脂である場合には、例えば80度~100度で30分間程度加熱することにより、第2の透明層55を完全硬化させることができる。
なお、次の工程(本実施形態では、第1の透明層53を形成する工程)に行く前に第2の透明層55を完全硬化させることは必須でない。第2の透明層55の上に施された飾り部材54が次の工程において、流れたり剥がれたりしない程度まで硬化して仮固定されれば、完全硬化前に次の工程に進んでもよい。なお、次の工程(第1の透明層53を形成する工程)がシルク印刷等、版を用いるものである場合には、第2の透明層55やその上に施された飾り部材54が版に張り付かない程度に硬化していることを要する。
【0032】
第2の透明層55が硬化(完全硬化又は仮固定程度の硬化)すると、次に透明な樹脂等の透過率の高い材料を塗布することにより、1層目の透明層である第2の透明層55に接して飾り部材54を第2の透明層55との間に挟み込む2層目の透明層としての第1の透明層53を形成する(第2の透明層形成工程)。
第1の透明層53を形成する手法は特に限定されないが、例えば第2の透明層55を形成する場合と同様に、シルク印刷等による。
そして、第1の透明層53を形成する材料に応じた手法(熱硬化や光硬化)で第1の透明層53を硬化させる。この場合の硬化は、第2の透明層55の場合と同様、完全硬化まで至らない仮固定状態であってもよい。
これにより、飾り部材54が2つの透明層(第1の透明層53と第2の透明層55)に挟み込まれた状態となる。
なお、本実施形態では、2層目の透明層(すなわち、第1の透明層53)を形成した後には、飾り部材54の配置等を行わない。このため、1層目の透明層(すなわち、第2の透明層55)を形成する場合と比べて、簡易的に硬化させることができる。また、2層目の透明層(すなわち、第1の透明層53)については1層目の透明層(すなわち、第2の透明層55)と異なり、粘性についても特に限定されるものではない。
【0033】
最後に、2層目の透明層である第1の透明層53に接して透過率の低い材料により有色層52を形成する(有色層形成工程)。
有色層52は、例えばシルク印刷等によって形成される。なお、有色層52を形成する手法は特に限定されない。例えば、インクジェット方式による印刷や、各種塗装、蒸着等の各種製膜技術を用いて有色層52を形成してもよい。
そして、有色層52を形成する材料に応じた手法(熱硬化や光硬化)で有色層52を硬化させる。この場合には、各層が完全硬化するように条件を設定し、基材51上に形成された各層を完全に硬化させ、外装部材5が完成する。
【0034】
なお、1層目の透明層(すなわち、第2の透明層55)と飾り部材54のセットは複数層(複数セット)重ねて設けられてもよい。
例えば、基材51の裏面に1層目の透明層(すなわち、第2の透明層55)を形成し、飾り部材54を配置してから、その上にさらに第2の透明層55を形成し、飾り部材54を配置してもよい。この場合、第2の透明層55についてはすべて上記した1層目の透明層(すなわち、第2の透明層55)と同様の粘性等の条件を満たすようにする。そして、有色層52を形成する前に、第2の透明層55及び飾り部材54と有色層52との間に、第1の透明層53(すなわち、上記の「2層目の透明層」)を設ける。
この場合、いずれの層に配置された飾り部材54も透明層(第1の透明層53又は第2の透明層55)の間に挟み込むことができ、飾り部材54の有色層52への埋没を防ぐことができる。
このように、透明層に挟み込まれた飾り部材54のセットを複数層設けた場合には、漆等で形成される有色層52の上に奥行き感のある立体的なデザインを表現することも可能となり、より意匠性に優れた外装部材5を実現することができる。
【0035】
外装部材5が完成すると、基材51が表面側(時計の視認側)に来るように表裏を裏返して、
図2(a)に示す状態とし、時計ケース1の各位置に配置、実装する。
これにより、
図1に示すような、ベゼル部材2や文字板3に蒔絵のような技法を用いた装飾が施された、意匠性に優れた時計100が完成する。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、外装部材5が、透過率の低い材料により形成される有色層52と、有色層52に接して設けられ、有色層52よりも透過率の高い材料で形成される第1の透明層53と、第1の透明層53における有色層52に接する面とは逆側の面に設けられる飾り部材54と、を備えている。
図3に、漆や黒インク等で形成される有色層62の上に直接金粉等である飾り部材64が配置される外装部材7の例を示す。この場合には、透明な接着剤等で構成される透明層65によって飾り部材64を基材61に接着固定させることはできるが、
図3に示すように、飾り部材64が有色層62の中に埋没してしまったり、有色層62が飾り部材64の視認側に回り込んだりしてしまう。このため、飾り部材64を視認しづらくなり、美しい装飾を実現することができなかった。
この点、本実施形態のように漆や黒インク等で形成される有色層52と、金粉等である飾り部材54との間に透明な層(第1の透明層53)を配置した場合には、飾り部材54が有色層52の中に埋没するのを防止し、有色層52の飾り部材54の視認側への回り込みも防ぐことができる。また、有色層52と飾り部材54との間に介在する層は、透過率の高い材料で形成される透明な層(第1の透明層)であるため、有色層52を背景とした飾り部材54の見栄えを阻害しない。これにより、飾り部材54が有色層52を背景としてくっきりと浮かび上がり、より美しい外観の外装部材5を実現することができる。
【0037】
また本実施形態の外装部材5は、視認側から逆側の面を見通すことの可能な透過率の高い材料で形成された基材51をさらに備え、有色層52、第1の透明層53、及び飾り部材54は、基材51における視認側とは逆側の面に配置される。
このように、装飾を基材51の裏面側から施すことで、外から衝撃を受けても傷付きにくく、劣化を防止することができる。これにより、長く美しい外観の外装部材5を楽しむことができる。
【0038】
また本実施形態では、有色層52よりも透過率の高い材料で形成され、第1の透明層53に接して飾り部材54を第1の透明層53との間に挟み込む第2の透明層55がさらに設けられている。
このため、飾り部材54を透明な層の中に閉じ込めて安定させることができ、長期間製造時の美しい状態を保つことができる。また、飾り部材54を透明な層の中に閉じ込める構成とした場合、例えば貴石やガラス片のようなある程度重量のあるものでも所定の位置に保つことができ、装飾のバリエーションが広がる。
【0039】
また本実施形態の外装部材5において、第2の透明層55を形成する材料は、0.1mPa・S~200Pa・Sの粘性を有している。
本実施形態では第2の透明層55の上に飾り部材54が設けられる。このとき、第2の透明層55が流れやすい状態であると、せっかく配置した飾り部材54が流されて、意図した位置にとどまることができない。この点、一定の粘性を有する材料で第2の透明層55を形成することで、飾り部材54を意図した通りに配置することができる。また、シルク印刷等によって良好に第2の透明層55を形成することができる。さらに、第2の透明層55は形成後、徐々に硬化していくが、飾り部材54を配置する作業中に完全硬化することはなく、作業性にも優れている。
【0040】
また本実施形態のように、外装部材5を文字板3として構成した場合には、時計等において最も目立つ場所において、蒔絵が施されたような美しく、高級感のある外観を実現することができる。
【0041】
また本実施形態のように、外装部材5をベゼル部材2として構成した場合には、文字板3と同様に時計等において最も目立つ場所において、蒔絵が施されたような美しく、高級感のある外観を実現することができる。
【0042】
また本実施形態の外装部材5を電子機器としての時計100に適用した場合には、ベゼル部材2や文字板3といった外装部材5に施された蒔絵等の装飾(飾り部材53)が漆や黒インクで形成された有色層55に埋没することなくはっきりと視認可能となる。
これにより外観が美しく、高級感のある意匠性に優れた時計を実現することができる。
【0043】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0044】
例えば、本実施形態では、
図2(a)に示すように、基材51の裏面側に有色層52、第1の透明層53、飾り部材54、第2の透明層55を設ける場合を例示したが、外装部材の構成はこれに限定されない。
例えば
図4に示すように、外装部材7は、基材71の表面側に有色層72、第1の透明層73、飾り部材74、第2の透明層75が設けられたものであってもよい。
この場合には、
図4に示す下側の層から順に基材71の上に積層して外装部材7を形成する。
【0045】
図5に示すように、漆や黒インク等で形成される有色層82の上に直接金粉等である飾り部材84を配置してその上に透明層83を形成することで外装部材8を構成すると、飾り部材84の設けられている面を透明層83によって保護することはできるが、飾り部材84が有色層82の中に埋没してしまったり、有色層82が飾り部材84の視認側に回り込んだりしてしまう。このため、飾り部材84を視認しづらくなり、美しい装飾を実現することができない。
この点、
図4に示すように漆や黒インク等で形成される有色層72と、金粉等である飾り部材74との間に透明な層(第1の透明層73)を配置した場合には、飾り部材74が有色層72の中に埋没するのを防止し、有色層72の飾り部材74の視認側への回り込みも防ぐことができる。また、有色層72と飾り部材74との間に介在する層は、透過率の高い材料で形成される透明な層(第1の透明層)であるため、有色層72を背景とした飾り部材74の見栄えを阻害しない。これにより、飾り部材74が有色層72を背景としてくっきりと浮かび上がり、より美しい外観の外装部材7を実現することができる。
【0046】
図4に示すように基材の表側に装飾を施す場合には、基材7は透明な部材でなくてもよく、例えば金属板等でもいい。例えば、金属等で形成された時計ケース1のバンド取付部12の表面や、時計ケース1の側面等を基材71とし、この上に有色層72、第1の透明層73、飾り部材74、第2の透明層75を順次重ねて設けてもよい。
金属の基材の上に有色層72等を設けることで、有色層72等が設けられていない部分と異なる質感を創り出すことができる。また、漆や黒インク等の有色層72を設けた上に飾り部材74を配置することで、金属等の上に直接設けるよりもコントラストの際立つ美しい外観を実現することができる。
また、本実施形態で示したベゼル部材2や文字板3についても、基材51の表面側に有色層、第1の透明層、飾り部材、第2の透明層を設けてもよい。
【0047】
なお、このように基材71の表側に装飾を施す場合には、第1の透明層73が飾り部材74よりも先に設けられ、飾り部材74を接着する機能を有する。この場合には、第1の透明層73を形成する材料は、0.1mPa・S~200Pa・Sの粘性を持つことが好ましい。
【0048】
また、本実施形態では、文字板3が時字31を備え指針32によって時刻等を表示させるアナログ方式のものである場合を例示したが、文字板3はアナログ方式のものに限定されず、液晶パネル等を備えるデジタル方式、又はアナログ方式とデジタル方式とが組み合わされたものであってもよい。
【0049】
また、本実施形態では、外装部材5が時計100に設けられる場合を例示したが、外装部材5が設けられる電子機器は時計に限定されない。
例えば、歩数計、心拍数計、高度計、気圧計等や、いわゆるスマートウォッチ等に本発明の外装部材5を適用してもよい。
【0050】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
有色層と、
前記有色層に接して設けられ、前記有色層よりも透過率の高い第1の透明層と、
前記第1の透明層における前記有色層に接する面とは逆側の面に設けられる飾り部材と、
を備えることを特徴とする外装部材。
<請求項2>
視認側から逆側の面を見通すことの可能な透過率の基材をさらに備え、
前記有色層、前記第1の透明層、及び前記飾り部材は、前記基材における視認側とは逆側の面に配置されることを特徴とする請求項1に記載の外装部材。
<請求項3>
前記第1の透明層を形成する材料は、0.1mPa・S~200Pa・Sの粘性を持つことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の外装部材。
<請求項4>
前記有色層よりも透過率が高く、前記第1の透明層に接して前記飾り部材を前記第1の透明層との間に挟み込む第2の透明層がさらに設けられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の外装部材。
<請求項5>
前記第2の透明層を形成する材料は、0.1mPa・S~200Pa・Sの粘性を持つことを特徴とする請求項4に記載の外装部材。
<請求項6>
文字板として構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の外装部材。
<請求項7>
ベゼル部材として構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の外装部材。
<請求項8>
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の外装部材を備えることを特徴とする電子機器。
<請求項9>
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の外装部材を備えることを特徴とする時計。
<請求項10>
視認側から逆側の面を見通すことの可能な透過率の基材における視認側とは逆側の面に、1層目の透明層を形成する第1の透明層形成工程と、
前記1層目の透明層の上に飾り部材を配置する飾り部材配置工程と、
前記1層目の透明層に接して前記飾り部材を前記1層目の透明層との間に挟み込む2層目の透明層を形成する第2の透明層形成工程と
前記2層目の透明層に接して、前記1層目の透明層、及び前記2層目の透明層よりも透過率の低い有色層を形成する有色層形成工程と、
を含むことを特徴とする外装部材の製造方法。
【符号の説明】
【0051】
1 時計ケース
2 ベゼル部材(外装部材)
3 文字板(外装部材)
5 外装部材
51 基材
52 有色層
53 第1の透明層
54 飾り部材
55 第2の透明層
100 時計