(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044876
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】紫外線殺菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 9/20 20060101AFI20220311BHJP
A61L 2/10 20060101ALN20220311BHJP
【FI】
A61L9/20
A61L2/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150242
(22)【出願日】2020-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】520346712
【氏名又は名称】合同会社ベルゲル
(74)【代理人】
【識別番号】100103724
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 正夫
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 実
【テーマコード(参考)】
4C058
4C180
【Fターム(参考)】
4C058AA23
4C058BB06
4C058DD01
4C058DD12
4C058DD16
4C058KK02
4C058KK11
4C058KK22
4C058KK28
4C180AA07
4C180AA10
4C180DD03
4C180HH14
4C180KK02
4C180KK04
4C180KK05
4C180LL04
4C180LL20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】紫外線で室内を効率よく殺菌するとともに、在室する人の眼に、直接紫外線が照射されることを極力防止する紫外線殺菌装置の提供。
【解決手段】紫外線殺菌装置Sは、筒体2が立設された台座1と、筒体の内部に設けられた紫外線発光源3と、紫外線発光源からの紫外線の向きを上方に変更させる反射部材4と、台座に設けられた人感センサ11とを備えている。そして、紫外線発光源からの紫外線の向きを反射部材で上方に変更させて筒体の上端から上方に放出するとともに、人感センサからの検出出力により、紫外線発光源をOFFにするか、または紫外線発光源の出力を低下させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体が立設された台座と、
前記筒体の内部に設けられた紫外線発光源と、
該紫外線発光源からの紫外線の向きを上方に変更させる反射部材と、
前記台座に設けられた人感センサとを備え、
前記紫外線発光源からの紫外線の向きを前記反射部材で上方に変更させて前記筒体の上端から上方に放出するとともに、
前記人感センサは、前記筒体の上端から放出された紫外線の照射範囲内に人が侵入すると反応し、この検出出力により、前記紫外線発光源をOFFにするか、または前記紫外線発光源の出力を低下させることを特徴とする紫外線殺菌装置。
【請求項2】
前記人感センサの検出範囲が、斜め上方であることを特徴とする請求項1記載の紫外線殺菌装置。
【請求項3】
前記紫外線殺菌装置の姿勢を検出する姿勢センサが設けられ、
該姿勢センサが姿勢の異常を検出した際には、前記紫外線発光源をOFFにすることを特徴とする請求項1または2記載の紫外線殺菌装置。
【請求項4】
紫外線の強度を検出するUV強度センサが台座に設けられ、
該UV強度センサからの出力により、前記紫外線発光源の出力を調整するか、または前記紫外線発光源をON・OFF制御することを特徴とする請求項1、2または3記載の紫外線殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内などの空間を殺菌・除菌する紫外線殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線殺菌装置は紫外線を放射して殺菌する。そして、たとえば、紫外線発光源である紫外線ランプの周辺に空気の流れを作り、その空気を殺菌して装置外に放出する。この場合には、殺菌する空気の量を大きくすることで 室内の殺菌速度を速める構造を有している。その為 必然的に形状は大きくなる。
【0003】
また、室内に設置された紫外線ランプから全周に紫外線を放射するものもある。
【0004】
さらに、特許第6607623号公報(特許文献1)には、室内全体に、略水平な方向に紫外線を放出するものが、記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、紫外線発光源の周囲に空気層を設けて、空気を殺菌し、殺菌された空気を装置外に放出する場合には、送風機などが必要となり、構造が大きくなる。また、紫外線発光源から紫外線を水平方向に室内に放出すると、在室する人の眼に、直接紫外線が照射されることになり、人体に悪影響を与える可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の紫外線殺菌装置(S)は、筒体(2)が立設された台座(1)と、前記筒体の内部に設けられた紫外線発光源(3)と、該紫外線発光源からの紫外線の向きを上方に変更させる反射部材(4)と、前記台座に設けられた人感センサ(11)とを備えている。そして、紫外線発光源からの紫外線の向きを前記反射部材で上方に変更させて筒体の上端から上方に放出するとともに、人感センサは、前記筒体の上端から放出された紫外線の照射範囲内に人が侵入すると反応し、この検出出力により、前記紫外線発光源をOFFにするか、または紫外線発光源の出力を低下させる。
【0008】
また、人感センサの検出範囲が、斜め上方であることがある。
さらに、紫外線殺菌装置の姿勢を検出する姿勢センサ(12)が設けられ、姿勢センサが姿勢の異常を検出した際には、紫外線発光源をOFFにすることがある。
【0009】
そして、紫外線の強度を検出するUV強度センサ(13)が台座に設けられ、該UV強度センサからの出力により、紫外線発光源の出力を調整するか、または紫外線発光源をON・OFF制御することがある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、紫外線発光源からの紫外線の向きを反射部材で上方に変更させて筒体の上端から上方に放出しているので、紫外線殺菌装置が設置されている室内に人が居ても、筒体の内部を覗き込もうとしなければ、紫外線殺菌装置からの紫外線が直接人の眼に入射されることは殆どない。また、人感センサが設けられているので、筒体の内部を覗き込もうとして紫外線殺菌装置に近づくと、人感センサが反応し、人感センサからの検出出力により、紫外線発光源をOFFにするか、または紫外線発光源の出力を低下させている。したがって、筒体の内部を覗き込もうとしても、人の眼に、強力な紫外線が入射されることを極力防止することができる。そして、筒体が台座に立設しているので、安定して筒体を立てることができ、筒体の上端から確実に紫外線を上方に放出することができる。
【0011】
また、人感センサの検出範囲が斜め上方である場合には、人が紫外線殺菌装置の横側を離れて通過した際には、人感センサが反応することがなく、紫外線発光源が過剰にON・OFFすることを極力防止することができる。
【0012】
さらに、紫外線殺菌装置の姿勢を検出する姿勢センサが設けられ、姿勢センサが姿勢の異常を検出した際に、紫外線発光源をOFFにする場合には、仮に、紫外線殺菌装置が横倒しになっても、紫外線発光源がOFFになるため、紫外線を水平方向に放出することを防止することができる。そのため、室内に人が居ても、人の眼に入射されることはない。
【0013】
そして、紫外線殺菌装置からの紫外線は天井で反射し減衰するが、天井の反射効率が高い際には、天井で殆ど減衰せずに、強い紫外線が天井から降り注ぐことになる。この天井で反射された紫外線の強度を、UV強度センサで検出し、このUV強度センサからの出力により、紫外線発光源の出力を調整するか、または紫外線発光源をON・OFF制御する場合がある。このような場合には、天井で反射した紫外線の強度が基準値以上になることを極力防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は本発明における紫外線殺菌装置の説明図である。
【
図4】
図4は人感センサの検出範囲の説明図である。
【
図5】
図5は紫外線ランプの制御の入出力図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
紫外線で室内を効率よく殺菌するとともに、在室する人の眼に、直接紫外線が照射されることを極力防止する紫外線殺菌装置を提供するという目的を、台座に筒体を立設し、この筒体の上端から紫外線を上方に放出するとともに、筒体の内部を覗き込もうとする人を人感センサで検出することにより実現した。
【実施例0016】
次に、本発明における紫外線殺菌装置の一実施例について、
図1ないし
図5を用いて説明する。
図1は本発明における紫外線殺菌装置の説明図である。
図2は紫外線の光路の説明図である。
図3は室内の紫外線の強度の説明図である。
図4は人感センサの検出範囲の説明図である。
図5は紫外線ランプの制御の入出力図である。なお、
図1は、紫外線殺菌装置の正面図であるが、内部の構造も分かり易いように実線で図示されている。
【0017】
まず始めに、紫外線殺菌装置Sの構成を
図1で説明する。
台座1には、円筒形の筒体2が立設している。すなわち、筒体2は軸線を上下方向にして配置されている。この筒体2の内部には、紫外線発光源である細長い管状の紫外線ランプ3が、その長手方向を上下方向にして配置されている。紫外線ランプ3を取り囲むように、反射部材としての円錐形状の反射板4が配置されている。反射板4は、上側に行く程広くなる円錐形状で、紫外線ランプ3からの紫外線の向きを上方に変更している。筒体2の上端部は、透明な蓋体6で閉塞されている。蓋体6は上下方向に紫外線を透過させるが、側方に向かっては、反射および透過させることはない。
【0018】
また、台座1には、人感センサ11およびUV強度センサ12が設けられている。人感センサ11は、紫外線殺菌装置Sの筒体2に近づいて筒体2の内部を覗き込もうとする人を検出するためのものである。UV強度センサ12は、紫外線殺菌装置Sから放出された紫外線が天井などで反射された反射光の強度を検出するためのものである。そして、台座1の内部には、姿勢センサ13や、マイコンなどの制御装置14が設けられている。
図5に図示するように、制御装置14の入力側には、人感センサ11、UV強度センサ12や姿勢センサ13が接続されている。一方、出力側には紫外線ランプ3や警報装置16などが接続されており、紫外線ランプ3にはON・OFF信号18やランプ出力強度19を出力している。また、制御装置14はタイマ21を具備している。そして、紫外線殺菌装置Sを稼働させるための電源として、図示しない電源コードや充電池などが設けられている。
【0019】
この様に構成されている紫外線殺菌装置Sは、室内のテーブル上などに載置される。そして、紫外線ランプ3からの紫外線は、反射板4で反射されて、
図2に図示するように、光路(L1,L2,L3)を上向きに変更されている。紫外線殺菌装置Sから放出された上向きの紫外線は、
図3に図示するように、天井で反射して、下向きとなる。そして、紫外線殺菌装置Sから距離が離れるほど、拡散するため、紫外線の強度は低下していく。そして、天井での反射率は一般的に低い(
図3の例では10%程度)ため、紫外線の強度はさらに低下する。紫外線殺菌装置Sから天井までの間では、紫外線の強度は殺菌可能な値となるようにする。一方、天井で反射した紫外線の強度は、床面近くでは、なるべく人体に悪影響を与えない値となるようにする。
【0020】
人感センサ11の検出範囲は、
図4に図示するように、人が紫外線殺菌装置Sの上部を覗き込もうとした時に、その人を検出できるように設定されている。すなわち、紫外線殺菌装置Sからの紫外線は、斜め上方のラインL1よりも上方に放出されており、その範囲に眼が来ると、直接紫外線が眼に入射される。そこで、人感センサ11は、ラインLSよりも紫外線殺菌装置Sに近づくと検出するように、検出範囲が斜め上方に設定されている。
【0021】
紫外線殺菌装置Sを稼働させる際には、図示しない電源スイッチをONにする。その時、操作する人が人感センサ11の検出範囲内にいる場合が想定される。したがって、電源スイッチがONになると、初期のタイムラグが経過してから、紫外線ランプ3は定常の出力となる。それまでは、OFF状態か低出力にして、人体に悪影響を与えないようにしている。初期のタイムラグが経過した後は、人感センサ11が人を検出しない場合は、紫外線ランプ3は点灯状態を維持し、人を検出した場合はOFF状態か低出力にする。
【0022】
紫外線殺菌装置Sが正常に載置されておらず、倒れている状態の場合には、紫外線殺菌装置Sからの紫外線が水平方向に放出される可能性があり、危険である。したがって、姿勢センサ13が紫外線殺菌装置Sの姿勢の異常を検出した際には、紫外線ランプ3をOFF状態にするとともに、警報装置16たとえば、警報ランプの点灯や警報音などにより警告する。
【0023】
また、天井の反射率は、
図3の場合には、10%を想定しているが、飲食店の厨房などでは、天井がアルミ板などの金属板などで構成されることがあり、その反射率が高いことが考えられる。そこで、天井で反射された紫外線の強度をUV強度センサ12で検出し、天井の反射率が想定よりも高い際には、紫外線ランプ3の出力を調整して、低下させる。または、紫外線ランプ3をON・OFF制御している場合には、天井の反射率が基準値よりも高い際には、紫外線ランプ3をOFFにする。そして、警報装置16たとえば、警報ランプの点灯や警報音などにより警告したり、図示しない表示装置にその旨(すなわち、天井の反射率が高いため、危険である旨や、危険がないように出力を低下した旨など)を表示する。
【0024】
さらに、タイマ21で、稼働時間(たとえば、就寝中など)をセットすれば、紫外線ランプ3の点灯の際にも、近くに、電源スイッチをONする人がいる必要がないため、安全である。そのため、紫外線ランプ3は初めから、定常の出力で点灯することができる。
【0025】
前述の様に、紫外線ランプ3からの紫外線は、向きを反射板4で上方に変更されて筒体2の上端部から上方に放出されている。したがって、紫外線殺菌装置Sが設置されている部屋に人が居ても、紫外線殺菌装置Sの上側から覗き込まない限り、紫外線殺菌装置Sからの紫外線が目に入ることを極力防止することができる。
【0026】
人感センサ11が、紫外線殺菌装置Sに近づいて上側から覗き込もうとする人を検出する。したがって、人感センサ11からの検出出力により、紫外線ランプ3をOFFにするか、または紫外線ランプ3の出力を低下させることにより、人に悪影響を与えることを極力防止することができる。
【0027】
姿勢センサ13が、紫外線殺菌装置Sの姿勢を検出している。したがって、紫外線殺菌装置Sが横倒しになった場合には、姿勢センサ13の検出出力により、紫外線ランプ3をOFFにすることができる。その結果、紫外線殺菌装置Sから紫外線が水平に放出されることはなく、紫外線殺菌装置Sからの紫外線が直接目に入ることを極力防止することができる。
【0028】
紫外線殺菌装置Sから天井などに向かって放出された紫外線は、天井で反射して下向きとなる。この天井で反射した紫外線の強度をUV強度センサ12で検出することができる。通常は、天井での反射率は低いので、天井で反射した紫外線の強度は低いが、天井が金属板などで構成され、反射率が高いと、天井から強い強度の紫外線が降り注ぐことになる。天井からの紫外線の強度が高いと、室内に居る人に悪影響を与えることになる。そこで、UV強度センサ12が高い強度の紫外線を検出すると、紫外線ランプ3をOFFにするか、または紫外線ランプ3の出力を低下させることにより、人体に悪影響を与えることを極力防止することができる。
【0029】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例を下記に例示する。
(1)UV強度センサ12や姿勢センサ13は、特許請求の範囲に明記されていないかぎり、必ずしも設ける必要はない。
【0030】
(2)実施例では、多数の機能を盛り込んだため、マイコンなどの制御装置14を採用したが、人感センサ11の検出信号で紫外線ランプ3をON・OFF制御するだけであれば、マイコンなどではなく、通常の人感センサスイッチ回路を採用することができる。
(3)紫外線ランプ3の出力を調整する手段は、適宜選択可能である。たとえば、紫外線ランプ3を複数設け、点灯させる紫外線ランプ3の個数を増減することにより行うことができる。また、紫外線ランプ3に入力する電力を増減することにより行うこともできる。
【0031】
(4)実施例では、筒体2は円筒であるが、その断面形状は適宜変更可能である。また、反射部材は円錐形状の反射板4であるが、紫外線を上方に向きを変更することができれば、適宜変更可能である。
(5)紫外線発光源は、紫外線を発光することができれば、その構造や形状などは適宜選択可能である。
(6)紫外線殺菌装置Sは室内に設置されることが最適であるが、室内に限らず、他の場所に設置することも可能である。
台座に筒体を立設し、この筒体の上端から紫外線を上方に放出するとともに、筒体の内部を覗き込もうとする人を人感センサで検出することができるので、室内などに設置される紫外線殺菌装置に適用することが最適である。