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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044965
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】ノブナット本体
(51)【国際特許分類】
   F16B 37/14 20060101AFI20220311BHJP
【FI】
F16B37/14 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150384
(22)【出願日】2020-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】506366046
【氏名又は名称】株式会社大里
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(72)【発明者】
【氏名】東江 楡人
(57)【要約】
【課題】丸棒部材に既に取り付けられた状態のナット部材に後付けして、ナット部材と組み合わせてノブナットを構成することが可能なノブナット本体を提供する。
【解決手段】
ノブナット本体1は、第1のノブナット本体半部3と第2のノブナット本体半部3′を備えている。第1のノブナット本体半部3と第2のノブナット本体半部3′は、それぞれ丸棒部材に長手方向と直交する直交方向から嵌合される嵌合溝11,11′を備えて且つナットに対して丸棒部材の長手方向の両側に配置された状態から互いに近づけられると分離不能に係合することによりナット収納部2を形成する構造を有している。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面の輪郭形状が多角形状をなし、雄ねじが形成された丸棒部材の前記雄ねじが螺合する雌ねじが内周面に形成され、前記外周面と前記内周面との間に座面及び該座面と対向する座面対向面を有するナットを収納するナット収納部が形成され、前記ナットと組み合わされてノブナットを構成するノブナット本体であって、
前記雄ねじに螺合された前記ナットに後付けで嵌め合わされて前記ノブナットを構成する第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部を備え、
前記第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部は、それぞれ前記丸棒部材に長手方向と直交する直交方向から嵌合される嵌合溝を備えて且つ前記ナットに対して前記丸棒部材の前記長手方向の両側に配置された状態から互いに近づけられると分離不能に係合することにより前記ナット収納部を形成する構造を有していることを特徴とするノブナット本体。
【請求項2】
前記第1のノブナット本体半部は、前記ナットの前記座面と対向し前記嵌合溝を有する第1の対向壁部と該第1の対向壁部から起立して前記ナットの前記外周面の一部と係合する第1の係合壁部を有し、
前記第2のノブナット本体半部は、前記ナットの前記座面対向面と対向し前記嵌合溝を有する第2の対向壁部と該第2の対向壁部から起立して前記ナットの前記外周面の一部と係合する第2の係合壁部を有し、
前記第1のノブナット本体半部及び前記第2のノブナット本体半部は、前記ナットと組み合わされた状態で分離不能に係合する係合構造を構成する係合構造部と被係合構造部をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項1に記載のノブナット本体。
【請求項3】
前記第1のノブナット本体半部は、前記第1の対向壁部及び前記第1の係合壁部の少なくとも一方に、前記係合構造部が設けられており、
前記第2のノブナット本体半部は、前記第2の対向壁部及び前記第2の係合壁部の少なくとも一方に、前記被係合構造部が設けられている請求項2に記載のノブナット本体。
【請求項4】
前記第1のノブナット本体半部の前記係合構造部及び前記第2のノブナット本体半部の前記被係合構造部は、前記長手方向に前記第1のノブナット本体半部と前記第2のノブナット本体半部を互いに近づけて両者を係合するように構成されている請求項2または3に記載のノブナット本体。
【請求項5】
前記第1のノブナット本体半部の前記第1の対向壁部には、前記長手方向と前記直交方向の一方の方向に開口する第1の嵌合溝が形成されており、
前記第2のノブナット本体半部の前記第2の対向壁部には、前記長手方向と前記直交方向の他方の方向に開口する第2の嵌合溝が形成されている請求項2乃至4のいずれか1項に記載のノブナット本体。
【請求項6】
前記第1のノブナット本体半部の前記係合構造部は、複数の係合部から構成され、
前記複数の係合部は、前記ナット収納部の中心部を仮想中心とし、前記仮想中心と前記第1の嵌合溝の開口端の中心を通る仮想線を0°とした場合に、360°/n間隔(ただし、nは2以上の整数)で配置されている請求項2乃至5のいずれか1項に記載のノブナット本体。
【請求項7】
前記第1のノブナット本体半部と前記第2のノブナット本体半部は、同一形状・同一寸法の部品である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のノブナット本体。
【請求項8】
外周面の輪郭形状が多角形状をなし、雄ねじが形成された丸棒部材の前記雄ねじが螺合する雌ねじが内周面に形成され、前記外周面と前記内周面との間に座面及び該座面と対向する座面対向面を有するナットを収納するナット収納部が形成され、前記ナットと組み合わされてノブナットを構成するノブナット本体であって、
前記雄ねじに螺合された前記ナットに後付けで嵌め合わされて前記ノブナットを構成する第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部を備え、
前記第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部は、それぞれ前記丸棒部材に長手方向と直交する直交方向から嵌合される嵌合溝を備えて且つ前記ナットに対して前記丸棒部材の前記直交方向の両側に配置された状態から互いに近づけられると分離不能に係合することにより前記ナット収納部を形成する構造を有していることを特徴とするノブナット本体。
【請求項9】
第1のノブナット本体半部は、前記ナットの前記座面と対向し第1の嵌合溝半部を有する第1の対向壁部半部と前記座面対向面と対向し第2の嵌合溝半部を有する第2の対向壁部半部と、前記第1の対向壁部半部と前記第2の対向壁部半部とを連結し前記ナットの前記外周面の一部と係合する第1の係合壁部を有し、
第2のノブナット本体半部は、前記ナットの前記座面と対向し第3の嵌合溝半部を有する第3の対向壁部半部と前記座面対向面と対向し第4の嵌合溝半部を有する第4の対向壁部半部と、前記第3の対向壁部半部と前記第4の対向壁部半部とを連結し前記ナットの前記外周面の一部と係合する第2の係合壁部を有し、
前記第1のノブナット本体半部の前記第1の嵌合溝半部及び前記第2の嵌合溝半部とが組み合わされて1つの前記嵌合溝が構成され、
前記第2のノブナット本体半部の前記第3の嵌合溝半部及び前記第4の嵌合溝半部とが組み合わされて別の1つの前記嵌合溝が構成され、
前記第1のノブナット本体半部及び前記第2のノブナット本体半部は、前記ナットと組み合わされた状態で分離不能に係合する係合構造を構成する係合構造部と被係合構造部をそれぞれ備えていることを特徴とする請求項8に記載のノブナット本体。
【請求項10】
前記第1のノブナット本体半部と前記第2のノブナット本体半部は、同一形状・同一寸法の部品である請求項8または9に記載のノブナット本体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナットと組み合わされてノブナットを構成するノブナット本体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、雄ねじが形成された丸棒部材と、丸棒部材に取り付けられたナット(多くの場合、六角ナット)との組み合わせからなる、いわゆるアジャスターボルトが知られている。アジャスターボルトは、対象物の高さ調整等に用いられている。例えば、椅子の脚の内部等に設けられたアジャスターボルト受け(ナット部材)に螺合された丸棒部材を回転させて高さ調整をしてから、ナットを用いて丸棒部材を固定するようになっている。このナットは、レンチ等の工具を用いて締め付ける必要があり、工具を用いずに、ナットを手締めできれば便利である。
【0003】
そこで、ナットを手締め可能なノブナットに変更することが考えられる。例えば、意匠登録第1352853号公報(特許文献1)や特開2019-86014号公報(特許文献2)に記載のようなノブナット本体を用いれば、六角ナットを用いて、ノブナットを作成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】意匠登録第1352853号公報
【特許文献2】特開2019-86014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のノブナット本体を用いて作成可能なノブナットは、ノブナット本体内に収納したナットをキャップで押さえ付けるように構成された、丸棒部材がノブナットを貫通しない袋状のノブナットである。そのため、上記のようにノブナットを丸棒部材が貫通しなければならないアジャスターボルトに用いることができない。当然、丸棒部材に既に取り付けられた状態のナット部材に取り付けることはできない。
【0006】
また、特許文献2に記載のノブナット本体は、特許文献1に記載の課題は無いが、丸棒部材に既に取り付けられた状態のナット部材に取り付けることはできない。
【0007】
本発明の目的は、丸棒部材に既に取り付けられた状態のナット部材に後付けして、ナット部材と組み合わせてノブナットを構成することが可能なノブナット本体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、外周面の輪郭形状が多角形状をなし、雄ねじが形成された丸棒部材の雄ねじが螺合する雌ねじが内周面に形成され、外周面と内周面との間に座面及び該座面と対向する座面対向面を有するナットを収納するナット収納部が形成され、ナットと組み合わされてノブナットを構成するノブナット本体に関するものである。
【0009】
本発明のノブナット本体は、雄ねじに螺合されたナットに後付けで嵌め合わされてノブナットを構成する第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部を備えている。そして第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部は、それぞれ丸棒部材に長手方向と直交する直交方向から嵌合される嵌合溝を備えて且つナットに対して丸棒部材の長手方向の両側に配置された状態から互いに近づけられると分離不能に係合することによりナット収納部を形成する構造を有している。
【0010】
このように本発明のノブナット本体では、第1のノブナット本体半部と、第2のノブナット本体半部がそれぞれ嵌合溝を有しており、分離不能に係合するため、丸棒部材に既にに取り付けられた状態のナット部材に後付けして、ナット部材と組み合わせてノブナットを構成することが可能である。
【0011】
第1のノブナット本体半部と、第2のノブナット本体半部の構成の詳細は任意である。例えば、第1のノブナット本体半部は、ナットの座面と対向し嵌合溝を有する第1の対向壁部と該第1の対向壁部から起立してナットの外周面の一部と係合する第1の係合壁部を有する構造とする。また第2のノブナット本体半部は、ナットの座面対向面と対向し嵌合溝を有する第2の対向壁部と該第2の対向壁部から起立してナットの外周面の一部と係合する第2の係合壁部を有する構造とする。そして第1のノブナット本体半部及び第2のノブナット本体半部は、ナットと組み合わされた状態で分離不能に係合する係合構造を構成する係合構造部と被係合構造部をそれぞれ備えるように構成する。
【0012】
このように第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部を構成すれば、簡易な作業でナット部材を確実にノブナット本体内に収納できる。
【0013】
第1のノブナット本体半部の係合構造部及び第2のノブナット本体半部の被係合構造部の構成も任意である。例えば、第1のノブナット本体半部には、第1の対向壁部及び第1の係合壁部の少なくとも一方に、係合構造部が設けられており、第2のノブナット本体半部には、第2の対向壁部及び第2の係合壁部の少なくとも一方に、被係合構造部が設けられている構造にしてもよい。このように第1のノブナット本体半部の係合構造部及び第2のノブナット本体半部の被係合構造部を構成すれば、別の構成部材を用いることなく、ノブナット本体を小型に構成することができる。
【0014】
また第1のノブナット本体半部の係合構造部及び第2のノブナット本体半部の被係合構造部は、長手方向に第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部を互いに近づけて両者を係合するように構成することもできる。このように係合構造部及び被係合構造部を構成すれば、第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部を互いに近づけるという操作の中で、第1のノブナット本体半部の係合構造部及び第2のノブナット本体半部の被係合構造部が係合するので、別途係合作業を要することなく、簡易な操作にて、第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部を係合することができる。
【0015】
また第1のノブナット本体半部の第1の対向壁部には、長手方向と直交方向の一方の方向に開口する第1の嵌合溝が形成されており、第2のノブナット本体半部の第2の対向壁部には、長手方向と直交方向の他方の方向に開口する第2の嵌合溝が形成されていることが好ましい。
【0016】
また第1のノブナット本体半部の係合構造部は、複数の係合部から構成され、複数の係合部は、ナット収納部の中心部を仮想中心とし、仮想中心と第1の嵌合溝の開口端の中心を通る仮想線を0°とした場合に、360°/n間隔(ただし、nは2以上の整数)で配置される構成としてもよい。この場合、もちろん、第2のノブナット本体半部の被係合構造部は、第1のノブナット本体半部の係合構造部と対応するように構成する。
【0017】
このように構成することで、第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部が間隔をあけた複数箇所で係合され、強固に係合することが可能となる。
【0018】
第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部は、それぞれ別々の部材として製造するものでもよいが、上記条件を満たす同一形状・同一寸法の部品とするのが好ましい。このようにすれば、1種類の部材だけを製造すればよく、製造面、また、コスト面で有利である。また、ノブナット本体を使用する側としても、2つのノブナット本体半部を区別することなく使用できるので、使いやすいという効果が得られる。
【0019】
上記の第1のタイプの本発明のノブナット本体では、第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部を、ナットに対して丸棒部材の長手方向の両側に配置された状態から互いに近づけられると分離不能に係合することによりナット収納部を形成する構造(第1のタイプ)とした。しかしながら、これとは異なり、第2のタイプの本発明のノブナット本体では、第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部を、ナットに対して丸棒部材の直交方向の両側に配置された状態から互いに近づけられると分離不能に係合することによりナット収納部を形成する構造(第2のタイプ)とすることもできる。
【0020】
このようにしても、第1のノブナット本体半部と、第2のノブナット本体半部がそれぞれ嵌合溝を有しており、分離不能に係合するため、丸棒部材に既に取り付けられた状態のナット部材に後付けして、ナット部材と組み合わせてノブナットを構成することが可能である。
【0021】
第2のタイプのノブナット本体も、第1のノブナット本体半部と、第2のノブナット本体半部の構成の詳細は任意である。例えば、第1のノブナット本体半部は、ナットの座面と対向し第1の嵌合溝半部を有する第1の対向壁部半部と座面対向面と対向し第2の嵌合溝半部を有する第2の対向壁部半部と、第1の対向壁部半部と第2の対向壁部半部とを連結しナットの外周面の一部と係合する第1の係合壁部を有する構造とする。また第2のノブナット本体半部は、ナットの座面と対向し第3の嵌合溝半部を有する第3の対向壁部半部と座面対向面と対向し第4の嵌合溝半部を有する第4の対向壁部半部と、第3の対向壁部半部と第4の対向壁部半部とを連結しナットの外周面の一部と係合する第2の係合壁部を有する構造とする。その上で、第1のノブナット本体半部の第1の嵌合溝半部及び第2の嵌合溝半部とが組み合わされて1つの嵌合溝が構成され、第2のノブナット本体半部の第3の嵌合溝半部及び第4の嵌合溝半部とが組み合わされて別の1つの嵌合溝が構成されるようにする。そして第1のノブナット本体半部及び第2のノブナット本体半部は、ナットと組み合わされた状態で分離不能に係合する係合構造を構成する係合構造部と被係合構造部をそれぞれ備えるようにしてもよい。
【0022】
第2のタイプの場合でも、第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部は、上記条件を満たす同一形状・同一寸法の部品とするのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(A)は、ナット部材である六角ナットNに本実施の形態のノブナット本体を組み合わせたノブナットの状態を示す斜視図であり、(B)は、ノブナット本体を分解した状態の分解斜視図である。
図2】(A)は、第1のノブナット本体半部の正面図、(B)は、平面図、(C)は、背面図、(D)は、底面図、(E)は、右側面図、(F)は、左側面図である。
図3】(A)乃至(C)は、丸棒部材に既に取り付けられた状態の六角ナットにノブナット本体を装着して、ノブナットとして機能させる際の工程を示す図である。
図4】第2の実施の形態のノブナット本体を示す図である。
図5】(A)及び(B)は、六角ナットの代わりに用いることが可能な組み合わせナット部材の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明のノブナット本体の実施の形態を詳細に説明する。
【0025】
<第1の実施の形態(第1のタイプのノブナット本体)>
図1(A)は、ナット部材である六角ナットNに本実施の形態のノブナット本体1を組み合わせたノブナットの状態を示す斜視図であり、図1(B)は、ノブナット本体1を分解した状態の分解斜視図であり、図2(A)は、第1のノブナット本体半部の正面図、(B)は、平面図、(C)は、背面図、(D)は、底面図、(E)は、右側面図、(F)は、左側面図である。
【0026】
本実施の形態では、ノブナット本体1は、66ナイロン等の合成樹脂により一体に成形された第1のノブナット本体半部3と第2のノブナット本体半部3′とから構成されている。本実施の形態では、第1のノブナット本体半部3と第2のノブナット本体半部3′は、同一形状・同一寸法の部品であり、一方の部品に対して、他方の部品を上下逆さ且つ、180度回転させた状態で組み合わせて使用している。そのため、第2のノブナット本体半部3′については、第1のノブナット本体半部3の符号に「′」の記号を付加して詳細な説明を省略する。なお、以下(特に、図2(A)乃至(F))においては、第1のノブナット本体半部3の部材名及び符号を用いて説明を行い、対応する第2のノブナット本体半部3′の部材については括弧書きで部材名及び第1のノブナット本体半部の符号に「′」の記号を付した符号を記入して説明に代えることがある。
【0027】
[ノブナット本体半部の構成]
図1(A)及び(B)並びに図2(A)乃至(F)に示すように、第1のノブナット本体半部3(第2のノブナット本体半部3′)は、第1の対向壁部5(第2の対向壁部5′)と、第1の係合壁部7(第2の係合壁部7′)と、係合構造部9(被係合構造部9′)を有している。
【0028】
第1の対向壁部5(第2の対向壁部5′)は、六角ナットNの座面と対向する部分であり、第1の嵌合溝11(第2の嵌合溝11′)を有する。第1の嵌合溝11(第2の嵌合溝11′)は、後述の丸棒部材CRが延びる長手方向と、長手方向に直交する直交方向の一方の方向に開口している。
【0029】
第1の係合壁部7(第2の係合壁部7′)は、第1の対向壁部5(第2の対向壁部5′)から起立して六角ナットNの外周面の一部と係合する。本実施の形態では、第1の係合壁部7(第2の係合壁部7′)は、六角ナットNの外周面の半周分と一致する形状を有していて、2つ組み合わせると六角ナットNの外周面を取り囲むことができる。
【0030】
第1の対向壁部5及び第1の係合壁部7によりナット収納部の一方の半部が形成され、第2の対向壁部5′及び第2の係合壁部7′によりナット収納部の他方の半部が形成され、第1のノブナット本体半部3と第2のノブナット本体半部3′が組み合わされることで、ノブナット本体1の内部に六角ナットNを取り囲むナット収納部2が形成される。
【0031】
係合構造部9(被係合構造部9′)は、複数(本実施の形態では具体的には6つ)の係合部から構成されている。6つの係合部は、ナット収納部2の中心部を仮想中心ICとし、仮想中心と第1の嵌合溝(第2の嵌合溝11′)の開口端11A(開口端11A′)の中心を通る仮想線ILを0°とした場合に、60°(=360°/6)間隔で配置されている。本実施の形態では、6つの係合部は、第1の対向壁部5(第2の対向壁部5′)から延びる第1の一対の嵌合壁部13,13(第2の一対の嵌合壁部13′,13′)に形成された第1の一対の係合孔15,15(第2の一対の係合孔15′,15′)と、第1の係合壁部7(第2の係合壁部7′)から延びる第1の一対の係合爪部17,17(第2の一対の係合爪部17′,17′)と、相手方の嵌合溝内に収まる第1の突出部19(第2の突出部19′)と、第1の嵌合溝11(第2の嵌合溝11′)である。第1のノブナット本体半部3と第2のノブナット本体半部3′が組み合わされることで、第1の一対の嵌合壁部13,13及び第2の一対の嵌合壁部13′,13′並びに第1の突出部19及び第2の突出部19′の外周部がノブナット本体1の外周部となり、使用者が把持しやすいハンドル型の指掛け部になるようになっている。
【0032】
第1のノブナット本体半部3(第2のノブナット本体半部3′)の第1の対向壁部5(第2の対向壁部5′)の外壁部には、第1の嵌合溝11(第2の嵌合溝11′)の周囲を囲み突出するU字状の凸部21(凸部21′)が形成されている。また、突出部19(突出部19′)には、凸部21(凸部21′)と反対方向に突出する凸部23(凸部23′)が形成されている。第1のノブナット本体半部3と第2のノブナット本体半部3′が組み合わされると、凸部21と凸部23′が1つの平坦面を形成し、凸部21′と凸部23が1つの平坦面を形成する。この平坦面はそれぞれナットの座面としての機能を果たし、被締結面と接触する。締結した状態では凸部21と凸部23′(または、凸部21′と凸部23)のみが被締結面と接触するようになっているため、その他の部分が被締結面と対向する場合、被締結面との間に隙間が生じるようになっており、締結作業がしやすく、また、被締結面を傷つけることがない。
【0033】
[六角ナットへの取り付け]
図3(A)乃至(C)は、丸棒部材CRに既に取り付けられた状態の六角ナットNにノブナット本体1を装着して、ノブナットとして機能させる際の工程を示す図である。丸棒部材CRが延びる長手方向が上下方向である。
【0034】
まず、丸棒部材CRの長手方向の六角ナットNよりも高い位置に、凸部21が上方向に向いた姿勢で、第1の嵌合溝11の開口端11Aが丸棒部材CRに対向するように第1のノブナット本体半部3を用意する。また、丸棒部材CRの長手方向の六角ナットNよりも低い位置に、凸部21′が下方向に向いた姿勢で、第2の嵌合溝11′の開口端11A′が丸棒部材CRに対向するように第2のノブナット本体半部3′を用意する(図3(A)の状態)。
【0035】
次に、丸棒部材CRに第1のノブナット本体半部3の第1の嵌合溝11を嵌合させ、且つ、第2のノブナット本体半部3′の第2の嵌合溝11′を嵌合させ、その上で、第1のノブナット本体半部3と第2のノブナット本体半部3′を仮想中心ICを中心に回転させて、第1のノブナット本体半部3の係合構造部9と第2のノブナット本体半部3′の被係合構造部9′が係合する位置にくるように調整する(図3(B))。具体的には、第1の一対の係合孔15,15と第2の一対の係合爪部17′,17′、第1の一対の係合爪部17,17と第2の一対の係合孔15′,15′、第1の突出部19と第2の嵌合溝11′、及び、第1の嵌合溝11と第2の突出部19′が係合する位置にくるように調整を行う。
【0036】
この状態で、第1のノブナット本体半部3と第2のノブナット本体半部3′を近づけ、係合構造部9と被係合構造部9′を係合させ、ナット収納部2内に六角ナットNを収納し、ノブナットを形成する(図3(C))。
【0037】
なお、実際の作業としては、図3(B)の状態で先に第2のノブナット本体半部3′を六角ナットNに近づけ、六角ナットNの外周面の一部が第2の係合壁部7′に沿うように位置調整した上で、第1のノブナット本体半部3を第2のノブナット本体半部3′を近づけ、係合構造部9と被係合構造部9′を係合させるようにすると、スムーズに取り付けが可能である。
【0038】
<第2の実施の形態(第2のタイプのノブナット本体)>
図4は、第2の実施の形態のノブナット本体を示す図である。第1の実施の形態と共通する部分については、図1乃至図3に付した符号に100を加えた数の符号を付して、その説明を省略する。
【0039】
第2の実施の形態のノブナット本体は、第1のノブナット本体半部103と第2のノブナット本体半部103′を、六角ナットNに対して丸棒部材CRの直交方向の両側に配置された状態から互いに近づけられると分離不能に係合することによりナット収納部102を形成する構造(第2のタイプ)である。
【0040】
本実施の形態でも、第1のノブナット本体半部3と第2のノブナット本体半部3′は、同一形状・同一寸法の部品であり、第2のノブナット本体半部103′については、第1のノブナット本体半部103の符号に「′」の記号を付加して詳細な説明を省略することがある。
【0041】
第1のノブナット本体半部103は、六角ナットNの座面と対向し第1の嵌合溝半部111Aを有する第1の対向壁部半部105Aと、座面対向面と対向し第2の嵌合溝半部111Bを有する第2の対向壁部半部と105Bと、第1の対向壁部半部105Aと第2の対向壁部半部105Bとを連結し六角ナットNの外周面の一部と係合する第1の係合壁部107を有している。
【0042】
第2のノブナット本体半部103′は、六角ナットNの座面と対向し第3の嵌合溝半部111A′を有する第3の対向壁部半部105A′と、座面対向面と対向し第4の嵌合溝半部111B′を有する第4の対向壁部半部105B′と、第3の対向壁部半部105A′と第4の対向壁部半部105B′とを連結し六角ナットNの外周面の一部と係合する第2の係合壁部107′を有している。
【0043】
第1のノブナット本体半部103の第1の嵌合溝半部111A及び第2の嵌合溝半部111Bとが組み合わされて1つの嵌合溝が構成され、第2のノブナット本体半部103′の第3の嵌合溝半部111A′及び第4の嵌合溝半部111B′とが組み合わされて別の1つの嵌合溝が構成されている。
【0044】
第1のノブナット本体半部103は、係合構造を構成する係合構造部109を備え、第2のノブナット本体半部103′は、係合構造を構成する被係合構造部109′を備えており、これにより、六角ナットNと組み合わされた状態で分離不能に係合する。
【0045】
係合構造部109(被係合構造部109′)は、上下に離れて対向する第1の一対の係合爪部117,117(第2の一対の係合爪部117′,117′)と、係合爪部が係合する第1の一対の被係合部115,115(第2の一対の被係合部115′,115′)と、第1の一対の被係合部115,115(第2の一対の被係合部115′,115′)の間から径方向に突出する第1の突起部116(第2の突起部116′)と、第1の突起部116(第2の突起部116′)が係合する第1の一対の係合爪部117,117(第2の一対の係合爪部117′,117′)の間に形成された第1の孔部118(第2の孔部118′)とから構成されている。
【0046】
この第2のタイプのノブナット本体101でも、第1のタイプと同様、丸棒部材CRに既に取り付けられた状態の六角ナットNにノブナット本体101を装着して、ノブナットとして機能させることが可能である。
【0047】
<その他>
図5(A)及び(B)は、六角ナットNの代わりに用いることが可能な組み合わせナット部材N1の一例である。組み合わせナット部材N1は、第1のナット部材半部N3と、第2のナット部材半部N5から構成されている。図5(A)は、第1のナット部材半部N3の内周面が見える状態で第1のナット部材半部N3と第2のナット部材半部N5とを対向させた状態の斜視図であり、(B)は、第2のナット部材半部N5の内周面が見える状態で第1のナット部材半部N3と第2のナット部材半部N5とを対向させた状態の斜視図である。
【0048】
第1のナット部材半部N3及び第2のナット部材半部N5のぞれぞれは、外周面が六角ナットの3面を構成しており、内周面に丸棒部材の雄ねじと螺合する雌ねじの半周分が形成されている。
【0049】
第1のナット部材半部N3の第2のナット部材半部N5と接触する一対の対向壁部N7,N7には、一対の孔部N9,N9が形成されており、第2のナット部材半部N5の第1のナット部材半部N3と接触する一対の対向壁部N11,N11には、径方向に突出し、一対の孔部N9,N9に係合する一対の突起部N13,N13が形成されている。
【0050】
第1のナット部材半部N3の一対の対向壁部N7,N7と、第2のナット部材半部N5の一対の対向壁部N11,N11を対向させ、一対の孔部N9,N9に一対の突起部N13,N13を係合させることで、組み合わせナット部材N1が六角ナットとして使えるようになる。この構成により、丸棒部材CRの任意の箇所に六角ナットを取り付けることができる。さらに、本発明のノブナット本体を取り付ければ、丸棒部材CRの任意の箇所に手締め可能なノブナットを取り付けることができる。特に第1のタイプのノブナット本体1と組み合わせれば、ノブナット本体1により組み合わせナット部材N1が横方向に広がって分離しようとする力を押さえ込めるため、より有利である。
【0051】
上記実施の形態は、一例として記載したものであり、その要旨を逸脱しない限り、本発明は本実施例に限定されるものではない。
【0052】
例えば、上記例では、第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部は、同一形状・同一寸法の部材であったが、第1のノブナット本体半部と第2のノブナット本体半部の形状・寸法が異なるものであってもよいのはもちろんである。また、ナットは六角ナットに限られるものではなく、四角ナット等、他の形状のナットに適合するようにノブナット本体を構成してもよいのはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、丸棒部材に既に取り付けられた状態のナット部材に後付けして、ナット部材と組み合わせてノブナットを構成することが可能なノブナット本体を提供することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 ノブナット本体
2 ナット収納部
3 第1のノブナット本体半部
5 第1の対向壁部
7 第1の係合壁部
9 係合構造部
11 第1の嵌合溝
11A 開口端
13,13 第1の一対の嵌合壁部
15,15 第1の一対の係合孔
17,17 第1の一対の係合爪部
19 第1の突出部
21 凸部
23 凸部
3′ 第2のノブナット本体半部
5′ 第2の対向壁部
7′ 第2の係合壁部
9′ 被係合構造部
11′ 第2の嵌合溝
11A′ 開口端
13′,13′ 第2の一対の嵌合壁部
15′,15′ 第2の一対の係合孔
17′,17′ 第2の一対の係合爪部
19′ 第2の突出部
21′ 凸部
23′ 凸部
N 六角ナット
CR 丸棒部材
図1
図2
図3
図4
図5