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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044977
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】マスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220311BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
A41D13/11 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150400
(22)【出願日】2020-09-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (イ) 公開者:浜口ウレタン株式会社 販売開始日:2020年7月1日 販売場所:浜口ウレタン株式会社(静岡県浜松市西区西山町1961番地)
(71)【出願人】
【識別番号】398008099
【氏名又は名称】浜口ウレタン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】浜口 弘睦
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】装着時においても呼吸が楽に行えることで発話や装着の不快感を軽減することができるマスクを提供する。
【解決手段】マスク100は、マスク本体部101と耳掛け部110とを備えている。マスク本体部101は、使用者Uの口、鼻およびこれらの周囲を覆うポリウレタンフォーム製のシート体で構成されており、横断密着部103、空間形成部104および連通部形成部105を備えている。横断密着部103は、顔面における左右の頬骨突起間の肌に対して連続的に密着するように形成されている。空間形成部104は、使用者Uの口の前方に空間Sを形成するように膨出して形成されている。連通部形成部105は、空間形成部104の下端部分に顔面の左右方向に沿って帯状に延びて形成されており、顔面に対して接触しないことで顔面との間に連通部106を形成する。連通部106は、マスク100の外側の外気と空間Sとを直接連通させる。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面における少なくとも口およびその周囲を覆う大きさのシート状に形成されたマスク本体部と、
前記マスク本体部から左右方向にそれぞれ延びて使用者の耳に掛けられることで前記マスク本体部を前記顔面に押し付ける耳掛け部とを備えたマスクであって、
前記マスク本体部は、
前記顔面における前記口よりも上側かつ目よりも下側の部分で少なくとも左右の頬骨突起間の肌に連続的に押し付けられる横断密着部と、
前記口の前方部分に空間を形成する空間形成部と、
前記マスク本体部の下端部側に形成されて前記口よりも下側の肌に対して密着することなく離隔して前記空間と外気とを連通させる連通部を形成する連通部形成部とを備えることを特徴とするマスク。
【請求項2】
請求項1に記載したマスクにおいて、
前記連通部形成部は、
前記マスク本体部の下端部に前記使用者の肌側に突出する突起体を備えていることを特徴とするマスク。
【請求項3】
請求項2に記載したマスクにおいて、
前記突起体は、
前記口の真下部分に設けられていることを特徴とするマスク。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載したマスクにおいて、
前記突起体は、
筒状に形成されていることを特徴とするマスク。
【請求項5】
請求項4に記載したマスクにおいて、
前記突起体は、
少なくとも径方向に弾性変形可能に形成されていることを特徴とするマスク。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載したマスクにおいて、さらに、
前記筒状に形成された突起体内に着脱自在に嵌合する筒状の連通筒を備えることを特徴とするマスク。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5のうちのいずれか1つに記載したマスクにおいて、
前記突起体は、
前記マスク本体部の下端部から下方に張り出さないように形成されていることを特徴とするマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔面における少なくとも口を覆うように装着される衛生用品としてのマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、呼吸が楽に行えるように工夫した衛生用マスクがある。例えば、下記特許文献1には、使用者の口の前方に空間を形成するための当て具を備えたマスクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-44784号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載したマスクにおいては、マスクの外縁部が肌に密着しているため、息苦しさの解消には自ずと限界があった。また、昨今、衛生マスクは、COVID-19の感染拡大を防止するために着用が強く求められているが、発話のし難さや、高温多湿環境下における蒸れ、ベタツキまたは籠りなどの不快感によって着用が敬遠されがちであるという問題があった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、装着時においても呼吸が楽に行えることで発話や装着の不快感を軽減することができるマスクを提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、顔面における少なくとも口およびその周囲を覆う大きさのシート状に形成されたマスク本体部と、マスク本体部から左右方向にそれぞれ延びて使用者の耳に掛けられることでマスク本体部を顔面に押し付ける耳掛け部とを備えたマスクであって、マスク本体部は、顔面における口よりも上側かつ目よりも下側の部分で少なくとも左右の頬骨突起間の肌に連続的に押し付けられる横断密着部と、口の前方部分に空間を形成する空間形成部と、マスク本体部の下端部側に形成されて口よりも下側の肌に対して密着することなく離隔して空間と外気とを連通させる連通部を形成する連通部形成部とを備えることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、マスクは、マスク本体部における下端部側が連通部を介して外気に直接連通しているため、呼気を顎の下方に排出して顔面の前方に積極的に飛散することを抑えながら呼吸を楽に行えることで発話や装着時の不快感を軽減することができる。なお、本願発明のマスクは、マスク本体部の下端部側が外気に直接連通していることで細菌またはウイルスの侵入を防止する機能は通常のマスクに比べて低いが、前方から飛散する飛沫を直接吸い込むこと、または呼気を前方に飛散させることを抑制することで伝染病の感染拡大の抑制とマスク着用の弊害とを両立させようとするものである。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記マスクにおいて、連通部形成部は、マスク本体部の下端部に使用者の肌側に突出する突起体を備えていることにある。
【0009】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、マスクは、連通部形成部がマスク本体部の下端部に使用者の肌側に突出する突起体を有して構成されているため、使用者の吸気、使用者の運動時、自転車での走行時、顔面の姿勢、動きまたは風などによってマスク本体の下端部側が使用者の肌に接触して連通部を塞ぐことを効果的に防止することができる。なお、この突起体は、マスク本体部に対して着脱自在に構成してもよいし、着脱不能に固定的に構成してもよい。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記マスクにおいて、突起体は、口の真下部分に設けられていることにある。
【0011】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、マスクは、突起体が使用者の口の真下部分に設けられているため、突起体の左右、すなわち、顔面の左側および右側にそれぞれ通気口を設けることができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記マスクにおいて、突起体は、筒状に形成されていることにある。
【0013】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、マスクは、突起体が筒状に形成されているため、筒状の突起体を介して呼吸を確保、すなわち、突起体の筒内を連通部にすることができ連通部の位置および大きさを任意の位置および大きさに設定し易くすることができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記マスクにおいて、突起体は、少なくとも径方向に弾性変形可能に形成されていることにある。
【0015】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、マスクは、突起体が少なくとも径方向に弾性変形可能に形成されているため、筒状の突起体を径方向に押し潰すことで使用者の肌への密着力を向上させることができる。また、マスクは、突起体の肌への密着の程度によって突起体の内径を狭くして空気の流通量を調整することができるとともに、後述する連通筒の保持力を高めることができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記マスクにおいて、さらに、筒状に形成された突起体内に着脱自在に嵌合する筒状の連通筒を備えることにある。
【0017】
このように構成した本発明の特徴によれば、マスクは、さらに、筒状に形成された突起体内に着脱自在に嵌合する筒状の連通筒を備えているため、連通筒の内径に応じた通気部を自由に形成することができる。また、マスクは、突起体が弾性体で構成されている場合には、突起体が潰れるなどの変形を連通筒によって防止して通気性を確保することができる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記マスクにおいて、突起体は、マスク本体部の下端部から下方に張り出さないように形成されていることにある。
【0019】
このように構成した本発明の特徴によれば、マスクは、突起体がマスク本体部の下端部から下方に張り出さないように形成されているため、マスクの使用時および保管時において突起体が他の物体に接触することによる汚損を防止できるとともにマスク全体の美観を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係るマスクの外観構成の概略を示す側面図である。
図2図2は、図1に示すマスクを開いて使用者の顔面に装着した状態を使用者の図示を省略して示す斜視図である。
図3図1に示すマスクを使用者の顔面に装着した状態を示す側面図である。
図4図3に示すマスクの左半分側のマスク本体部および耳掛け部の図示を省略した装着状態を示す側面断面図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るマスクの内側の構造を示すためにマスクの左側半分の図示を省略してマスク本体部の一部を拡大して示す部分拡大分解図である。
図6図5に示すマスク本体に取り付けられる突起体の外観構成を示す斜視図である。
図7図5に示すマスクの左半分側のマスク本体部および耳掛け部の図示を省略した装着状態を示す側面断面図である。
図8】本発明の第3実施形態に係るマスクの内側の構造を示すためにマスクの左側半分の図示を省略してマスク本体部の一部を拡大して示す部分拡大分解図である。
図9図8に示すマスク本体部に設けられる突起体内に装着される連通筒の外観構成を示す斜視図である。
図10図9に示す連通筒を広げて板状にした状態の外観構成を示す斜視図である。
図11図8に示すマスクの左半分側のマスク本体部および耳掛け部の図示を省略した装着状態を示す側面断面図である。
図12】本発明の変形例に係るマスクを使用者の顔面に装着した状態を示す側面図である。
図13】本発明の他の変形例に係るマスクの左半分側のマスク本体部および耳掛け部の図示を省略した装着状態を示す側面断面図である。
図14】本発明の他の変形例に係るマスクの左半分側のマスク本体部および耳掛け部の図示を省略した装着状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るマスクの第1実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るマスク100の外観構成の概略を示す側面図である。また、図2は、図1に示すマスク100を開いて使用者Uの顔面に装着した状態を使用者Uの図示を省略して示す斜視図である。また、図3は、図1に示すマスク100を使用者Uの顔面に装着した状態を示す側面図である。また、図4は、図3に示すマスク100における使用者Uの左側半分のマスク本体部101および耳掛け部110の図示を省略した側面断面図である。このマスク100は、使用者Uの口、鼻およびそれらの周辺部分を覆うように装着されて使用者Uの飛沫が前方に飛散することを防止するための衛生用具である。
【0022】
(マスク100の構成)
マスク100は、シート状の低反発ウレタンフォームに、主として、マスク本体部101および耳掛け部110がそれぞれ形成されて構成されている。ここで、低反発ウレタンフォームは、伸縮性を有しているとともに連続気泡構造によって厚さ方向に通気性を有して構成されている。本実施形態においては、低反発ウレタンフォームは、厚さが2mm~4mmのポリエーテル系ウレタンによって構成されている。
【0023】
マスク本体部101は、使用者Uの顔面における口、鼻およびこれらの周囲を覆う部分であり、使用者Uにおける口、鼻、顎および頬を覆うことができる大きさに形成されている。具体的には、マスク本体部101は、2つの低反発ウレタンフォーム製シート体における各一方の端部同士を互いに接合することでこの接合された2つの低反発ウレタンフォーム製シート体における他方の2つの端部側を互いに離隔させて開くことでドーム状に形成される。本実施形態においては、互いに接合されて接合部102を形成する2つの低反発ウレタンフォーム製シート体における前記一方の端部がマスク100の外側に向かって張り出す円弧状に形成されている。
【0024】
このマスク本体部101は、主として、横断密着部103、空間形成部104および連通部形成部105をそれぞれ備えて構成されている。
【0025】
横断密着部103は、使用者Uの顔面に対して左右方向に沿って連続的に密着する部分であり、顔面の左右方向に沿って帯状に延びて形成されている。この場合、横断密着部103は、顔面における左右の頬骨突起間の肌に対して連続的に密着するように形成されている。本実施形態においては、横断密着部103は、上下方向が鼻尖から鼻背の幅(換言すれば、鼻尖から鼻根の直前部分までの幅)で左右の頬骨突起間に延びて形成されている。なお、横断密着部103は、必ずしも左右の頬骨突起を覆う必要はなく、頬骨突起を覆わない場合(例えば、頬骨突起よりも下側)であっても左右の頬骨突起間に延びて形成されていればよい。
【0026】
また、横断密着部103は、側面視において、使用者Uの顔面における鼻尖から鼻背の上端部(鼻根の直前部分)までの範囲に対向する部分が前方に対して凸状に張り出す円弧状に形成されて接合部102の一部を形成するとともに、上縁部103aが前記鼻背の上端部から左右の頬骨突起まで凹状の円弧状に延びて形成されている。なお、横断密着部103の肌との間の密着は、実質的に呼吸が困難または不可能である程度に横断密着部103が肌に接触している状態であって、必ずしも通気性を一切許容しないほど横断密着部103が肌に接触している状態のみを意味するものではない。
【0027】
空間形成部104は、使用者Uの顔面における口の前方に空間Sを形成するための部分であり、顔面の左右方向に沿って帯状に延びて形成されている。ここで、空間Sは、マスク本体部101の内側面が使用者Uの口および外鼻孔を塞がないようにマスク本体部101の内側面と口および外鼻孔との間に形成された何も存在しない三次元領域である。したがって、空間形成部104は、マスク100を使用者Uの顔面に装着した際に使用者Uの口の前方に膨出するように形成されている。
【0028】
すなわち、空間形成部104は、側面視において、使用者Uの顔面における鼻尖から顎までの範囲に対向する部分が前方に対して凸状に張り出す円弧状に形成されて接合部102の他の一部を形成している。なお、この場合、空間形成部104における左右の両端側は使用者Uの顔面における頬に密着している。
【0029】
連通部形成部105は、使用者Uの顔面における顎部分に連通部106を形成するための部分であり、空間形成部104の下端部分に顔面の左右方向に沿って帯状に延びて形成されている。この場合、連通部形成部105は、使用者Uの顎のラインの下方まで延びて形成さているが、マスク100の装着時において顎の下面(下方に面して喉に繋がっている部分)を覆うまたは接触することがないように余裕を持って形成されている。すなわち、マスク本体部101は、下方に向かって開口するように形成されている。これにより、連通部形成部105には、使用者Uの顔面との間に連通部106が形成される。
【0030】
連通部106は、マスク100の外部の外気と空間Sと直接連通させる空間部分である。本実施形態においては、連通部106は、マスク本体部101の内側面と使用者Uの顎のラインとの間に底面視でU字状またはV字状に形成されている。
【0031】
耳掛け部110は、使用者Uの耳に引っ掛けられることでマスク本体部101を使用者Uの顔面に押し付けるための部分であり、マスク本体部101における接合部102に対して左側部分および右側部分にそれぞれ接合部102から離隔する方向に延びて形成されている。これら左右一対の耳掛け部110には、使用者Uの左右の耳にそれぞれ掛けられる貫通孔状の引掛け部111が形成されている。本実施形態においては、引掛け部111は、使用者Uの頬から耳の後部まで延びる長孔状に形成されている。この耳掛け部110における全体の長さおよび引掛け部111の形成位置は、マスク100が使用者Uの顔面に装着された場合に横断密着部103を使用者Uの顔面に押し付けて密着させることができるように形成されている。
【0032】
このマスク100は、マスク本体部101と耳掛け部110とが互いに隣接して一体的に形成された互いに同一形状の2つの低反発ウレタンフォーム製シート体を前記接合部102で接合することで製造される。この場合、2つの低反発ウレタンフォーム製シート体は、熱溶着、接着剤またはステープラなどの接合方法によって接合される。なお、マスク100は、1つのマスク本体部101と2つの耳掛け部110とが連続的に繋がって全体が一体的に形成されていてもよい。また、マスク100は、互いに別々に成形したマスク本体部101と耳掛け部110とを互いに接合することで製造することもできる。
【0033】
(マスク100の作動)
次に、このように構成したマスク100の作動について説明する。マスク100を使用する使用者Uは、マスク100を用意して顔面に装着する。具体的には、使用者Uは、マスク100におけるマスク本体部101を自らの口および鼻の前方に配置した状態で左右一対の引掛け部111を左右の両耳にそれぞれ引っ掛ける。これにより、マスク100は、マスク本体部101が使用者Uの顔面における口および鼻の周囲を覆った状態で装着される。
【0034】
この場合、マスク100は、マスク本体部101における横断密着部103が使用者Uの顔面における左右の頬骨突起間の肌に対して連続的に密着する。また、マスク100は、マスク本体部101における空間形成部104と使用者Uの顔面における口の前方に空間Sを形成する。また、マスク100は、マスク本体部101の下端部である連通部形成部105と使用者Uの顎との間に連通部106を形成する。
【0035】
したがって、使用者Uは、連通部106を介して呼吸を行うことができる(図4における破線矢印参照)。すなわち、マスク100は、マスク本体部101の内側面における上部側が横断密着部103によって塞がれているとともに使用者Uの口の左右の両側が空間形成部104の左右の両端部によって塞がれている。このため、使用者Uは、外気の吸引および呼気の外気への排気の殆どを外気に直接連通する連通部106を介して行うことになる。
【0036】
この場合、連通部106は、マスク本体部101の下端部に下方に向かって開口して形成されている。これにより、マスク100は、使用者Uの呼気を使用者Uの顔面の下方に排出して前方に飛散させることを防止しながら使用者Uの楽な呼吸を確保することができる。また、使用者Uは、マスク100の装着時においては、連通部106から空間S内に手を容易に挿し込むことができ、口、鼻またはそれらの周囲をケアすることができる。例えば、使用者Uは、連通部106からティッシュペーパを挿し入れることで口または鼻を拭くことができる。
【0037】
次に、使用者Uは、マスク100の使用を中断する際には、マスク100を顔面から取り外す。具体的には、使用者Uは、両耳からそれぞれ引掛け部111を外すことでマスク100を顔面から取り外すことができる。この場合、使用者Uは、連通部106を介して空間S内に手を挿し込んでマスク100を取り外すことで、マスク本体部101における空間形成部104および連通部形成部105の各内側面が顔面に接触することを防止することができる。なお、使用者Uは、マスク100の装着時においても口元に手を当てた状態でマスク100を装着した後に連通部106を介して手を引き抜くことで空間形成部104および連通部形成部105の各内側面が顔面に接触することを防止することができる。
【0038】
上記作動説明からも理解できるように、上記第1実施形態によれば、マスク100は、マスク本体部101における下端部側が連通部106を介して外気に直接連通しているため、呼気を顎の下方に排出して顔面の前方に積極的に飛散することを抑えながら呼吸を楽に行えることで発話や装着の不快感を軽減することができる。
【0039】
(第2実施形態)
次に、本発明に係るマスク100の第2実施形態について図5ないし図7を用いて説明する。この第2実施形態の説明においては、主として、上記第1実施形態と異なる部分について説明し、共通する部分については共通の符号を付してそれらの説明は適宜省略する。この第2実施形態に係るマスク100は、上記第1実施形態に係るマスク100に対して突起体120を備えている点において相違している。
【0040】
突起体120は、マスク本体部101における連通部形成部105の内側面と使用者Uの肌との間に連通部106を形成するための部品であり、連通部形成部105の内周面から内側(使用者Uの肌側)に突出した状態で設けられている。この突起体120は、主として、接触部121と取付部122とを備えて小片状に構成されている。
【0041】
接触部121は、使用者Uの肌に接触する部分であり、連通部形成部105から突出するように形成されている。本実施形態においては、接触部121は、図5において右側(図6において上方)に向かって円弧状に張り出す曲面で構成されている。取付部122は、突起体120をマスク本体部101に取り付ける部分であり、接触部121の裏側(図5において左側、図6において下方)に平坦面状に形成されている。そして、これらの接触部121および取付部122で構成される突起体120は、本実施形態においては、マスク100と同じ低反発ウレタンフォームで構成されている。
【0042】
この突起体120は、マスク本体部101の内側面における連通部形成部105に取り付けられている。本実施形態においては、突起体120は、連通部形成部105における左右方向の中央部分(換言すれば、接合部102の裏側部分)に接触部121が上下方向に沿って延びる向きで取付部122が連通部形成部105に図示しない両面テープまたは接着剤によって貼り付けられている。
【0043】
このように構成したマスク100の使用に際しては、使用者Uは、マスク100および突起体120をそれぞれ用意した後、突起体120をマスク100に取り付ける。具体的には、使用者Uは、突起体120における取付部122に両面テープまたは接着剤を設けて連通部形成部105に貼り付けて取り付けることができる。この場合、使用者Uは、自分の顔面における所望する位置に突起体120が位置するように突起体120を連通部形成部105に取り付けることができる。
【0044】
次に、使用者Uは、マスク100を上記第1実施形態と同様の手順で顔面に装着することができる。この場合、マスク100は、マスク本体部101の内側面における連通部形成部105に突起体120が設けられている。このため、マスク100は、図7に示すように、突起体120が使用者Uの顎に接触することで連通部形成部105との間に連通部106が形成される。これにより、マスク100は、使用者Uの呼気を使用者Uの顔面の前方に飛散させることを防止しながら使用者Uの楽な呼吸を確保することができる。
【0045】
なお、使用者Uは、突起体120の接触の位置または向きに違和感を覚える場合には、一旦マスク100を取り外した後、同じ突起体120または新品の突起体120を付け替えて再度マスク100を装着することができる。
【0046】
このような上記第2実施形態に係るマスク100によれば、連通部形成部105がマスク本体部101の下端部に使用者Uの肌側に突出する突起体120を有して構成されているため、使用者Uの吸気、使用者Uの運動時、自転車での走行時、顔面の姿勢または風などによってマスク本体部101の下端部側が使用者Uに肌に接触して連通部106を塞ぐことを効果的に防止することができる。なお、この突起体120は、マスク本体部101に対して着脱自在に構成してもよいし、着脱不能に固定的に構成してもよい。
【0047】
(第3実施形態)
次に、本発明に係るマスク100の第3実施形態について図8ないし図11を用いて説明する。この第3実施形態の説明においては、主として、上記第1実施形態および上記第2実施形態と異なる部分について説明し、共通する部分については共通の符号を付してそれらの説明は適宜省略する。この第3実施形態に係るマスク100は、上記第2実施形態に係るマスク100に対して突起体120に代えて突起体130および連通筒140をそれぞれ備えている点において相違している。
【0048】
突起体130は、マスク本体部101における連通部形成部105の内側面と使用者Uの肌との間に連通部106を形成するとともに連通筒140を保持するための部品であり、連通部形成部105の内周面から内側(使用者Uの肌側)に突出した状態で設けられている。この突起体130は、筒状に形成されている。より具体的には、突起体130は、マスク100と同じ低反発ウレタンフォームを帯状に形成したシート体を丸めて円筒状に形成して構成されている。
【0049】
この場合、突起体130の内径は、後述する連通筒140が形成される最小の直径よりも小さい内径に形成される。この筒状の突起体130は、マスク本体部101の連通部形成部105における左右方向の中央部分(換言すれば、接合部102の裏側部分)に上下方向に沿って延びる向きで両面テープまたは接着剤によって貼り付けられている。
【0050】
連通筒140は、図9に示すように、突起体130内に取り付けられてマスク100の外側の外気と空間Sとを直接連通するための部品であり、ポリプロピレンまたは塩化ビニルなどの樹脂材を筒状に形成して構成されている。より具体的には、連通筒140は、図10に示すように、可撓性を有して帯状に延びる樹脂製の板状体を筒状に丸めることで構成されている。この場合、連通筒140の筒の長さは、筒状の突起体130の筒の長さよりも長く形成してもよいが、突起体130と同じ長さまたは同突起体130よりも短い長さに形成するとよい。また、連通筒140を構成する樹脂材は、着色されていてもよいが、透明または半透明に形成することで汚損の状態を確認し易くすることができる。なお、図8は、丸められた連通筒140が突起体130内に嵌合した状態を示している。
【0051】
このように構成したマスク100の使用に際しては、使用者Uは、マスク100、シート状の突起体130および板状の連通筒140をそれぞれ用意した後、突起体130をマスク100に取り付ける。具体的には、使用者Uは、シート状の突起体130を筒状に丸めて両面テープまたは接着剤を介して連通部形成部105に貼り付けて取り付けることができる。この場合、使用者Uは、自分の顔面における所望する位置に突起体130が位置するように突起体130を連通部形成部105に取り付けることができる。
【0052】
次に、使用者Uは、連通筒140を突起体130に取り付ける。具体的には、使用者Uは、板状の連通筒140を筒状に丸めて突起体130内に挿し込むことで取り付けることができる。これにより、連通筒140は、元の平板状に戻ろうとする復元力によって突起体130内に保持される。そして、この場合、突起体130の内径は最小の大きさの連通筒140よりも小さい内径に形成されているが、伸縮性を有する低反発ウレタンフォームによって構成されている。したがって、使用者Uは、確保したい通気性に応じた直径の連通筒140を形成して突起体130内に装着することができる。
【0053】
次に、使用者Uは、マスク100を上記第1実施形態および上記第2実施形態と同様の手順で顔面に装着することができる。この場合、マスク100は、マスク本体部101の内側面における連通部形成部105に突起体130が設けられているとともに、この突起体130内に連通筒140が設けられている。このため、マスク100は、図11に示すように、突起体130が使用者Uの顎に接触した場合には連通筒140内に連通部106が形成される。これにより、マスク100は、使用者Uの呼気を使用者Uの顔面の前方に飛散させることを防止しながら使用者Uの楽な呼吸を確保することができる(図11における破線矢印参照)。
【0054】
なお、使用者Uは、突起体130の接触の位置、向きまたは連通筒140の通気性に違和感を覚える場合には、一旦マスク100を取り外した後、同じ突起体130または新品の突起体130を付け替えてまたは連通筒140の大きさを変えて再度マスク100を装着することができる。また、使用者Uは、連通筒140を突起体130内に装着することなくマスク100を使用することもできる。この場合、マスク100は、使用者Uの顔面に装着されることで筒状の突起体130が顎との接触で押し潰されるが、この押し潰された突起体130の内部および/または両側に連通部106を形成することができる。
【0055】
このような上記第3実施形態に係るマスク100によれば、マスク100は、筒状に形成された突起体130内に着脱自在に嵌合する筒状の連通筒140を備えているため、連通筒140の内径に応じた連通部106を自由に形成することができる。また、マスク100は、突起体130が弾性体で構成されているため、突起体130が潰れるなどの変形を連通筒140によって防止して通気性を確保することができる。
【0056】
また、使用者Uは、マスク100の使用を中断する場合には、上記第1実施形態と同様の手順でマスク100を顔面から取り外すことができる。そして、使用者Uは、マスク100を保管する場合には、突起体130内に連通筒140を留置した状態でマスク100を保管してもよいが、突起体130内から連通筒140を抜き取ることでマスク本体部101を二つ折りにして保管することができる。この場合、突起体130は、弾性変形可能に形成されているため、径方向に潰れることでマスク本体部101を薄く折り畳むことができる。また、連通筒140は、板状に戻されることでコンパクトに保管することができる。
【0057】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0058】
例えば、上記第1実施形態においては、マスク本体部101は、連通部形成部105がマスク100の装着時において顎の下面(下方に面して喉に繋がっている部分)を覆うまたは接触することがないように余裕を持って形成されている。しかし、マスク本体部101は、図12に示すように、下端部から上方に向かって切込み150を設けることで連通部形成部105がマスク100の装着時において顎の下面を覆うまたは接触することがないように余裕を持って形成することができる。この場合、切込み150は、連通部形成部105にのみ形成してもよいし空間形成部104まで延びて形成することもできる。また、切込み150は、第2実施形態および第3実施形態における各マスク本体部101に形成することもできる。
【0059】
また、上記第2実施形態および上記第3実施形態においては、突起体120,130は、連通部形成部105における左右方向の中央部分(換言すれば、接合部102の裏側部分)に接触部121が上下方向に沿って延びる向きで取り付けた。すなわち、突起体120,130は、使用者Uの口の真下部分に設けた。しかし、突起体120,130は、連通部106を形成することができれば取付位置、向きおよび数は上記各実施形態に限定されるものではない。
【0060】
したがって、例えば、突起体120は、図13に示すように、マスク本体部101における左右方向の中央部分(換言すれば、接合部102の裏側部分)の左右両側の各連通部形成部105にマスク本体部101の下端部に沿ってそれぞれ左右一対で設けることもできる。また、例えば、突起体130は、マスク本体部101における左右方向の中央部分(換言すれば、接合部102の裏側部分)の左右両側の各連通部形成部105に上下方向に沿って左右一対で設けることもできる。これらによれば、マスク100は、左右一対の突起体120または突起体130によって使用者Uの顎を左右の両側から挟むため、マスク本体部101を安定的に顔面に固定することができる。
【0061】
また、上記第2実施形態においては、突起体120は、接触部121を凸状の曲面で構成した。しかし、突起体120は、連通部106を形成することができれば、どのような形状であってもよい。したがって、突起体120は、例えば、接触部121を凹状の曲面で構成できるほか、突起体120の全体として直方体状、球状(だ円形を含む)、円柱状または錐状などの各種立体形状に形成することができる。
【0062】
また、上記第2実施形態および上記第3実施形態においては、突起体120,130は、低反発ウレタンフォームによって弾性変形および伸縮性を有するように構成した。しかし、突起体120,130は、低反発ウレタンフォームによって弾性変形および伸縮性を有しない剛体で構成することもできる。
【0063】
また、上記第2実施形態および上記第3実施形態においては、突起体120、突起体130および連通筒140は、マスク本体部101の下端部から張り出さないように構成した。しかし、突起体120、突起体130および連通筒140は、マスク本体部101の下端部から張り出すように構成することもできる。したがって、例えば、連通筒140は、使用者Uの顎から胸部まで届く長さ以上の長さに形成することで連通筒140の先端部(自由端)を自由な位置に位置させることができ、使用者Uの好みの空間に対して呼吸を行うことができる。
【0064】
また、上記第2実施形態および第3実施形態においては、マスク本体部101は、連通部形成部105がマスク100の装着時において顎の下面(下方に面して喉に繋がっている部分)を覆うまたは接触することがないように余裕を持って形成されている。すなわち、マスク本体部101は、下方に向かって開口するように形成されている。しかし、マスク本体部101は、突起体120または突起体130を備えることで連通部106を形成すルことができる。したがって、上記第2実施形態および第3実施形態においては、例えば、図14に示すように、マスク本体部101は、連通部形成部105がマスク100の装着時において顎の下面(下方に面して喉に繋がっている部分)を覆うまたは接触するように形成することもできる。
【0065】
また、上記第3実施形態においては、連通筒140は、シート体を丸めて構成するようにした。しかし、連通筒140は、当初から筒状の形状に形成して構成することもできる。また、連通筒140は、円筒以外の形状、例えば、断面形状が楕円形のほか、三角形、四角形または六角形などの多角形状に形成することもできる。
【0066】
また、上記第3実施形態においては、連通筒140は、突起体130に対して着脱自在に構成した。しかし、連通筒140は、突起体130に対して着脱自在な固定状態で設けることもできる。
【0067】
また、上記各実施形態においては、マスク100は、連続気泡の低反発ウレタンフォームによって構成した。しかし、マスク100は、独立気泡のウレタンフォーム、高反発ウレタンフォームのほか、布材または不織布などの各種材料で構成することができる。
【0068】
また、上記各実施形態においては、マスク本体部101は、使用者Uの口、鼻およびこれらの周囲を覆う大きさに形成した。しかし、マスク本体部101は、顔面における少なくとも口およびその周囲を覆う大きさのシート状に形成されていればよい。したがって、マスク本体部101は、例えば、口呼吸しか行わないのであれば、鼻が露出する大きさおよび形状に形成することもできる。
【0069】
また、上記各実施形態においては、マスク100は、マスク本体部101と耳掛け部110とを同一の材料で一体的に形成した。しかし、マスク100は、マスク本体部101と耳掛け部110とを別々の材料で構成することもできる。例えば、マスク100は、ウレタン製のマスク本体部101に対してゴム紐製の耳掛け部110を連結して構成することもできる。
【符号の説明】
【0070】
U…使用者、S…空間、
100…マスク、101…マスク本体部、102…接合部、103…横断密着部、103a…上縁部、104…空間形成部、105…連通部形成部、106…連通部、
110…耳掛け部、111…引掛け部、
120…突起体、121…接触部、122…取付部、
130…突起体、
140…連通筒、
150…切込み。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14