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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022044983
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】コーヒー風味飲食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20220311BHJP
   A23L 29/30 20160101ALI20220311BHJP
   A23L 27/30 20160101ALI20220311BHJP
   A23F 5/24 20060101ALN20220311BHJP
【FI】
A23L27/00 101Z
A23L29/30
A23L27/30 Z
A23F5/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150410
(22)【出願日】2020-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000231453
【氏名又は名称】日本食品化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(72)【発明者】
【氏名】早川 忠良
(72)【発明者】
【氏名】谷 美生夏
(72)【発明者】
【氏名】影嶋 富美
【テーマコード(参考)】
4B027
4B041
4B047
【Fターム(参考)】
4B027FB24
4B027FC02
4B027FK02
4B027FK04
4B027FK10
4B027FK18
4B027FQ19
4B041LC01
4B041LD01
4B041LH10
4B041LK05
4B041LK07
4B041LK09
4B041LK11
4B041LK21
4B041LP01
4B041LP16
4B047LB08
4B047LE01
4B047LF07
4B047LF09
4B047LG05
4B047LG27
(57)【要約】
【課題】呈味(味の厚み)が改善された、高甘味度甘味料含有コーヒー風味飲食品の提供。
【解決手段】本発明によれば、高甘味度甘味料と分岐グルカンまたはその還元物とを含有するコーヒー風味飲食品が提供される。前記分岐グルカンは、好ましくは、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が4~6の分岐グルカンである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高甘味度甘味料と分岐グルカンまたはその還元物とを含有するコーヒー風味飲食品。
【請求項2】
分岐グルカンが、非還元末端にα-1,6-グルコシド結合の分岐構造を有するグルカンである、請求項1に記載のコーヒー風味飲食品。
【請求項3】
分岐グルカンが、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が4~6の分岐グルカンである、請求項1または2記載のコーヒー風味飲食品。
【請求項4】
α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する重合度が4~6の分岐グルカンまたはその還元物を20質量%以上含有し、かつ、ヨード呈色値(ヨード呈色試験における波長660nmの吸光度)が0.05以下である糖組成物を含有してなる、請求項1~3のいずれか一項に記載のコーヒー風味飲食品。
【請求項5】
前記糖組成物を飲食品全体に対して0.01~5.0質量%で含有してなる、請求項4に記載のコーヒー風味飲食品。
【請求項6】
分岐グルカンまたはその還元物を有効成分とする、高甘味度甘味料を含有するコーヒー風味飲食品用呈味向上剤。
【請求項7】
分岐グルカンまたはその還元物を配合することを含んでなる、高甘味度甘味料を含有するコーヒー風味飲食品の呈味向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコーヒー風味飲食品に関するものであり、詳細には高甘味度甘味料を含有するコーヒー風味飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーやカフェオレに代表されるコーヒー風味飲食品において、そのカロリーの低減手段として砂糖等の糖類を高甘味度甘味料に代替する技術が知られている。しかし、コーヒー風味飲食品の糖類を高甘味度甘味料で代替すると、味の厚みが低下するという課題がある。このため、その味質を維持した上で糖類を減じたコーヒー風味飲食品を提供するには、高甘味度甘味料で甘味を補った上で新たな素材で不足する味の厚みを補う必要がある。
【0003】
イソマルトオリゴ糖に代表される分岐オリゴ糖をコーヒー風味飲食品に配合する技術も報告例がある。特許文献1には、アルロース、オリゴ糖およびコーヒー抽出物を含むコーヒー飲料が記載されており、オリゴ糖としてイソマルトオリゴ糖を配合したコーヒー飲料が記載されている。特許文献2には、特定性状の分岐グルカンとパノースを一定比率で配合する乳風味飲食品が記載されており、乳風味飲食品としてカフェオレが記載されている。しかし、特許文献1は他の糖による砂糖の甘味の代替を目的とし、特許文献2は乳風味の向上を目的とするものであり、コーヒー風味飲食品の糖類を高甘味度甘味料で代替する際の味質の改善については一切検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2020-500507号公報
【特許文献2】特開2020-18190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、呈味(味の厚み)が改善された、高甘味度甘味料含有コーヒー風味飲食品の提供を目的とする。本発明はまた、コーヒー風味飲食品用呈味向上剤と、コーヒー風味飲食品の呈味向上方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]高甘味度甘味料と分岐グルカンまたはその還元物とを含有するコーヒー風味飲食品。
[2]分岐グルカンが、非還元末端にα-1,6-グルコシド結合の分岐構造を有するグルカンである、上記[1]に記載のコーヒー風味飲食品。
[3]分岐グルカンが、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が4~6の分岐グルカンである、上記[1]または[2]に記載のコーヒー風味飲食品。
[4]α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する重合度が4~6の分岐グルカンまたはその還元物を20質量%以上含有し、かつ、ヨード呈色値(ヨード呈色試験における波長660nmの吸光度)が0.05以下である糖組成物を含有してなる、上記[1]~[3]のいずれかに記載のコーヒー風味飲食品。
[5]前記糖組成物を飲食品全体に対して0.01~5.0質量%で含有してなる、上記[4]に記載のコーヒー風味飲食品。
[6]分岐グルカンまたはその還元物を有効成分とする、高甘味度甘味料を含有するコーヒー風味飲食品用呈味向上剤。
[7]分岐グルカンまたはその還元物を配合することを含んでなる、高甘味度甘味料を含有するコーヒー風味飲食品の呈味向上方法。
【0007】
本発明によれば、カロリーを低減しつつ風味の優れたコーヒー風味飲食品を得ることができる。また、砂糖等の糖類を低減することで製造コストを低減しつつ風味の優れたコーヒー風味飲食品を得ることができる点でも有利である。
【発明の具体的説明】
【0008】
<<分岐グルカン>>
本発明において「分岐グルカン」とは、少なくともそのグルカン鎖の非還元末端グルコース残基がα-1,4-グルコシド結合以外のグルコシド結合により結合した分岐構造を有するグルカンを意味する。本発明において分岐グルカンは、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有するグルカンとすることができる。本発明において、「直鎖状グルカン」とは単一のグルコシド結合によりグルコース分子が結合して構成された直鎖状のグルカンを意味する。
【0009】
本発明において、α-1,4-グルコシド結合以外のグルコシド結合としては、α-1,6-グルコシド結合、α-1,3-グルコシド結合、α-1,2-グルコシド結合が挙げられる。本発明において分岐グルカンは、非還元末端にα-1,6-グルコシド結合の分岐構造を有するグルカン、すなわち、グルカン鎖の非還元末端グルコース残基がα-1,6-グルコシド結合により結合した分岐構造を有しているグルカンが好ましい。
【0010】
本発明の分岐グルカンにおいて、分岐構造のグルカン残基を構成するグルコース残基の個数は、本発明の分岐グルカンの重合度を満たす限り特に限定されないが、好ましくは1~数個、より好ましくは1~3個、1~2個または1個とすることができる。
【0011】
本発明において、「還元末端」とは還元性を示す糖残基を意味し、「非還元末端」とは還元性を示さない糖残基、すなわち「還元末端」以外の末端糖残基を意味する。
【0012】
本発明において「重合度」(DP)とは、グルカンを構成するグルコース残基の個数を指し、直鎖状グルカンを構成するグルコース残基の個数のみならず、分岐構造を構成するグルコース残基の個数を含む。分岐糖類の重合度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって測定することができる。
【0013】
本発明において「還元物」とは、糖の還元末端のグルコシル基のアルデヒド基が還元され、水酸基となっているものをいう。糖の還元物を得る方法は当業者に周知であり、使用可能な還元方法を例示すれば、ヒドリド還元剤を用いる方法、プロトン性溶媒中の金属を用いる方法、電解還元方法、接触水素化反応方法等が挙げられる。本発明においては、少量の還元物を調製する場合にはヒドリド還元剤を用いる方法が簡便且つ特殊な装置を必要とせず便利であり、一方で、工業的に大規模に実施する場合には、経済性に優れ、副生成物も少ないという点から、接触水素化反応を用いる方法が好ましい。なお、本明細書において「分岐グルカン」や「糖組成物」という場合には分岐グルカンの還元物を含むものとする。
【0014】
本発明に用いる分岐グルカンとしては、例えば、非還元末端にα-1,6-グルコシド結合でグルコースが結合したオリゴ糖であるイソマルトオリゴ糖(イソマルトース、イソマルトトリオース、パノース、イソマルトテトラオース等)が挙げられる。イソマルトオリゴ糖は、周知の手法に従って得ることができ、例えば澱粉分解物に糖転移酵素を作用させることで製造することができる。
【0015】
本発明に用いる分岐グルカンはまた、実施例に示されたとおりその効果の点から、「α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する重合度が4~6の分岐グルカン(以下、「本発明の特定重合度分岐グルカン」ということがある)」であることが好ましい。本発明に用いる分岐グルカンはまた、「α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する重合度が4~6の分岐グルカンまたはその還元物を20質量%以上含有し、かつ、ヨード呈色値(ヨード呈色試験における波長660nmの吸光度)が0.05以下の糖組成物」(以下、「本発明の糖組成物」ということがある)で使用することが好ましい。上記分岐グルカンは、非還元末端に導入された分岐構造がα-1,6-グルコシド結合により結合した分岐構造であることが特に好ましい。
【0016】
本発明において、「ヨード呈色値」とは、ヨード呈色試験、すなわち5.0質量%(固形分濃度)の糖組成物水溶液1mLに0.05Mヨウ素水溶液100μLを加え、よく撹拌した後の波長660nmの吸光度をいう。ヨード呈色値はマスキングの指標となる値であり、この値が大きいほどマスキング効果が高く、この値が小さいほどマスキング効果は低く本発明による呈味向上効果がより発揮されることとなる。
【0017】
本発明の分岐グルカンは特定糖質の純品の形態で使用することができ、あるいは糖混合物(糖組成物)の形態で使用することもできる。また、使用の際の性状も特に制限はなく、粉末状で使用することもでき、あるいはシラップ状で使用することもできる。
【0018】
本発明の糖組成物中の重合度4~6の分岐グルカン(本発明の特定重合度分岐グルカン)の含有量は、その下限値(以上または超える)を20質量%、22質量%、25質量%、27質量%または34質量%とすることができ、その上限値(以下または下回る)を100質量%、99質量%、90質量%、80質量%、70質量%または67質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記含有量の範囲は、例えば、20~100質量%、25~80質量%または34~67質量%とすることができる。
【0019】
本発明の糖組成物中における重合度4~6の分岐グルカン(本発明の特定重合度分岐グルカン)の含有量は、糖組成物をβ-アミラーゼで処理した後、残存した4糖~6糖の含有量としてHPLC分析で測定することができる。前記糖組成物中の分岐グルカンの具体例としては、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、その直鎖状グルカンの非還元末端のみに導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度4~6の分岐オリゴ糖が挙げられる。
【0020】
本発明の糖組成物の糖組成は、所定の効果を奏する限り特に制限はないが、例えば、重合度1~3の糖質の含有量の下限値(以上または超える)を0質量%、0.5質量%、1質量%、5質量%または10質量%とすることができ、その上限値(以下または下回る)を60質量%、58質量%、55質量%、50質量%または45質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、重合度1~3の糖質の含有量の範囲は、例えば、0~60質量%、0.5~58質量%、1~55質量%、5~50質量%または10~45質量%とすることができる。本発明の糖組成物の糖組成はまた、重合度1の糖質の含有量を20質量%以下(好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下)とすることができ、重合度2の糖質の含有量を25質量%以下(好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下)とすることができ、重合度3の糖質の含有量を25質量%以下(好ましくは20質量%以下、より好ましくは19質量%以下)とすることができる。本発明の糖組成物の糖組成はまた、重合度7以上の糖質の含有量の下限値(以上または超える)を0質量%、0.5質量%、1質量%、5質量%または7質量%とすることができ、その上限値(以下または下回る)を50質量%、48質量%、45質量%、40質量%または35質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、重合度7以上の糖質の含有量の範囲は、例えば、0~50質量%、0.5~48質量%、1~45質量%、5~40質量%、5~35質量%または7~35質量%とすることができる。本発明の糖組成物の糖組成はまた、重合度4~6の糖質の含有量の下限値(以上または超える)を20質量%、25質量%、30質量%または35質量%とすることができ、その上限値(以下または下回る)を100質量%、90質量%、80質量%、70質量%または60質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、重合度4~6の糖質の含有量の範囲は、例えば、20~100質量%、25~90質量%または30~80質量%とすることができる。なお、本発明において糖組成物や呈味向上剤中の糖成分に関して言及する場合は、いずれも固形分当たり(固形分換算)の含有量を意味する。
【0021】
本発明の糖組成物のヨード呈色値は、0.04以下であることが好ましく、0.03以下であることがより好ましく、0.02以下であることが特に好ましい。ヨウ素は直鎖状のグルカン鎖のらせん構造内に包接されることで呈色を示す。以下の理論に拘束されるものではないが、ヨード呈色値が0.05を上回る糖組成物は、高分子成分が多いなどの理由によりグルカン鎖の包接能が高く、飲食品中の風味成分を包接し、マスキングしてしまうため呈味向上効果に劣ると考えられる。すなわち、本発明においてヨード呈色値はマスキング効果の指標として用いることができる。
【0022】
本発明の特定重合度分岐グルカンおよびそれを含む本発明の糖組成物は、その製造方法に特に制限はないが、澱粉分解物に糖転移酵素を作用させることで安価かつ効率的に製造可能である。具体的には、澱粉分解物の5~50%溶液に糖転移酵素を添加し、使用酵素に応じた好適なpH、温度で反応させる。反応は通常、pH4~9の範囲で実施することができ、好適な反応pHはpH5~7の範囲である。反応は通常、70℃付近までの温度範囲で実施することができ、好適な反応温度は40~60℃の範囲である。酵素の使用量と反応時間とは密接に関係しており、目的とする酵素反応の進行により適宜反応時間を調節することができ、通常は15~96時間程度反応させる。目的組成物の生成を確認後、必要に応じてろ過、脱塩、脱色等の精製を行い、製品形態に応じて濃縮または粉末化してもよい。
【0023】
ここで、糖転移作用を有する酵素は、例えば、α-グルコシダーゼ、6-α-グルコシルトランスフェラーゼ、デキストリンデキストラナーゼおよび環状マルトシルマルトース生成酵素から選択することができる。α-グルコシダーゼは、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)またはアクレモニウム・エスピー(Acremonium sp.)由来のものを使用することができる。
【0024】
糖転移作用を有する酵素としてα-グルコシダーゼを使用する場合、前記酵素反応に用いられるα-グルコシダーゼの添加量は、反応効率および製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり0.01~30単位とすることができる。ここで、α-グルコシダーゼ1単位とは後述するα-グルコシダーゼの活性測定方法の条件下において、1分間に1μmolのマルトースを加水分解するのに必要な酵素量をいう。
【0025】
本発明の特定重合度分岐グルカンおよびそれを含む本発明の糖組成物はまた、アミラーゼと糖転移作用を有する酵素とを組み合わせてデンプン分解物に作用させることによってより効率的に製造することができる。前記アミラーゼとしては、例えば、シクロデキストリン生成酵素やα-アミラーゼが挙げられる。
【0026】
ここで、シクロデキストリン生成酵素は、パエニバチルス・エスピー(Paenibacillus sp.)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、およびバチルス・マゼランス(Bacillus macerans)由来のものから選択することができる。また、α-アミラーゼは、市販のα-アミラーゼであるクライスターゼL-1およびクライスターゼT-5(いずれも天野エンザイム社)から選択することができる。
【0027】
アミラーゼとしてシクロデキストリン生成酵素を使用する場合、前記酵素反応に用いられるシクロデキストリン生成酵素の添加量は、反応効率および製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり0.1~10単位とすることができる。ここで、シクロデキストリン生成酵素1単位とは後述するシクロデキストリン生成酵素の活性測定方法の条件下において、1分間に1mgのβ-シクロデキストリンを生成するのに必要な酵素量をいう。
【0028】
アミラーゼとしてα-アミラーゼを使用する場合、前記酵素反応に用いられるα-アミラーゼの添加量は、反応性および製造コストの観点から、対基質(固形)当たり0.0005~0.1質量%とすることができる。
【0029】
本発明の特定重合度分岐グルカンおよびそれを含む本発明の糖組成物はさらに、アミラーゼと糖転移作用を有する酵素に加えて、枝切り酵素をさらに組み合わせてデンプン分解物作用させることによって製造することができる。枝切り酵素は、アミラーゼおよび糖転移作用を有する酵素と一緒に、デンプン分解物に作用させることが好ましい。
【0030】
ここで、枝切り酵素は、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択して使用することができ、より好ましい態様では、マイロイデス・オドラータス(Myroides odoratus)由来イソアミラーゼ、シュードモナス・アミロデラモサ(Pseudomonas amyloderamosa)由来イソアミラーゼ、およびクレブシエラ・プネウモニアエ(Klebsiella pneumoniae)由来プルラナーゼ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0031】
枝切り酵素としてイソアミラーゼを使用する場合、前記酵素反応に用いられるイソアミラーゼの添加量は、反応効率および製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり10~1000単位とすることができる。前記製造方法の酵素反応に用いられる枝切り酵素のうちプルラナーゼの添加量は、反応性および製造コストの観点から、対基質(固形)当たり0.001~0.1質量%とすることができる。ここで、イソアミラーゼ1単位とは、後述するイソアミラーゼの活性測定方法の条件下において610nmの吸光度を0.01増加させる酵素力価である。
【0032】
本発明の特定重合度分岐グルカンを糖組成物の形態で得る場合には、必要に応じて生成物の必要画分を分画することで糖組成物中の重合度4~6の分岐グルカン含有量を20質量%以上とすることができる。また、生成物の高重合度の画分を除去することで糖組成物の前記ヨード呈色値を0.05以下とすることができる。除去方法としては分画、あるいは酵素で分解する方法が挙げられる。前記の分画を行う方法に特に制限は無く、膜分画、クロマト分画、沈殿分画等を例示することができる。酵素で分解する際に使用する酵素にも特に制限は無く、α-アミラーゼ等を例示することができる。
【0033】
<<コーヒー風味飲食品>>
本発明においてコーヒー風味飲食品とは、コーヒーの風味を有する飲食品を意味し、例えば、ホットコーヒー、アイスコーヒー、カフェオレ、カフェラテ、ソイラテ、コーヒー牛乳等のコーヒー風味飲料、コーヒーゼリー、コーヒーアイス、コーヒーキャンディー、コーヒーチョコ、コーヒークッキーが挙げられる。なお、本発明のコーヒー風味飲食品は、コーヒー成分(コーヒー豆抽出物等のコーヒー豆由来成分)を含有する飲食品に限定されず、コーヒー成分は実質的に含まないものの、香料や苦味料等でコーヒーの風味を模した飲食品をも含むものとする。
【0034】
本発明のコーヒー風味飲食品は、その風味(甘味および味の厚み)と乳の風味の相性の点から牛乳、脱脂粉乳、豆乳等の乳成分を含有する乳含有コーヒー風味飲食品であってもよく、乳含有コーヒー風味飲料が好ましい。本発明のコーヒー風味飲食品はまた、ホットベンダー等で加温販売されるものであっても、冷蔵ショーケース等で冷蔵販売されるものであってもよいが、砂糖等の糖類のメイラード反応やカラメル化反応による風味劣化を本発明で軽減できることを考慮すると加温販売されるものであることが好ましい。
【0035】
本発明のコーヒー風味飲食品はまた、砂糖のような糖類の代替として高甘味度甘味料を含有するものである。本発明に用いる高甘味度甘味料は、飲食品に配合できるものであれば特に制限はなく、例えば、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア、ソーマチン、サッカリン、サッカリンナトリウム、シクラメート、ネオテームおよびアリテームから選ばれる1種または2種以上が挙げられる。その味質の点から、アセスルファムカリウムが好ましく、アセスルファムカリウムおよびスクラロースの併用がより好ましい。高甘味度甘味料の配合量に関しても、飲食品の種類やニーズに合わせて求められる甘味が達成できるように適宜調整することができるが、例えば0.0001~0.1質量%とすることができ、アセスルファムカリウムおよびスクラロースを併用する場合は、アセスルファムカリウムの配合量を0.0005~0.05質量%としスクラロースの配合量を0.0001~0.02質量%とすることができる。
【0036】
本発明のコーヒー風味飲食品における分岐グルカンの含有量に特に制限はなく、飲食品に求められる甘味等を考慮して高甘味度甘味料の含有量と併せて適宜調整すればよい。その呈味向上効果に加え飲食品のカロリー低減という本発明の趣旨を考慮すると、本発明のコーヒー風味飲食品における分岐グルカンの含有量の下限値(以上または超える)は0.01質量%、0.03質量%、0.05質量%または0.06質量%とすることができ、その上限値(以下または下回る)は5.0質量%、3.0質量%、2.0質量%または1.0質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、本発明のコーヒー風味飲食品における分岐グルカンの含有量の範囲は、例えば0.01~5.0質量%、0.03~3.0質量%、0.05~2.0質量%または0.06~1.0質量%とすることができる。また、本発明のコーヒー風味飲食品における本発明の特定重合度分岐グルカンの含有量の下限値(以上または超える)は0.001質量%、0.005質量%、0.01質量%または0.02質量%とすることができ、その上限値(以下または下回る)は1.0質量%、0.7質量%、0.5質量%または0.3質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、本発明のコーヒー風味飲食品における特定重合度分岐グルカンの含有量の範囲は、例えば0.001~1.0質量%、0.005~0.7質量%、0.01~0.5質量%、0.02~0.3質量%とすることができる。なお、本発明の分岐グルカンを液糖(水溶液)で含有させる場合、上記含有量は固形分換算の値を意味する。
【0037】
本発明のコーヒー風味飲食品における本発明の糖組成物の含有量の下限値(以上または超える)は0.01質量%、0.03質量%、0.05質量%または0.06質量%とすることができ、その上限値(以下または下回る)は5.0質量%、3.0質量%、2.0質量%または1.0質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、本発明のコーヒー風味飲食品における本発明の糖組成物の含有量の範囲は、例えば0.01~5.0質量%、0.03~3.0質量%、0.05~2.0質量%または0.06~1.0質量%とすることができる。なお、本発明の分岐グルカンや本発明の糖組成物を液糖(水溶液)で含有させる場合、上記含有量は固形分換算の値を意味する。
【0038】
本発明のコーヒー風味飲食品は、高甘味度甘味料および分岐グルカンを含有する以外は、その原料に制限はなく、例えば、動物性乳(牛乳、脱脂粉乳等)や植物性乳(豆乳、アーモンドミルク等)のような乳成分、砂糖、ブドウ糖、水飴、異性化糖等の甘味料、香料、乳化剤、安定化剤、デキストリンが挙げられる。砂糖を配合する場合、砂糖の配合量には特に制限はなく製品のニーズに応じて適宜配合量を決定すればよいが、その呈味向上効果に加え飲食品のカロリー低減という本発明の趣旨を考慮すると、砂糖の含有量は2.5質量%以下とすることが好ましく、2.0質量%以下とすることがより好ましい。本発明のコーヒー風味飲食品は、当然ながら砂糖を含まないものや砂糖を実質的に含まないもの(例えば、無糖コーヒー風味飲食品、糖類ゼロコーヒー風味飲食品、糖類オフコーヒー風味飲食品)であってもよく、また、カロリーが低減されたもの(例えば、カロリーオフコーヒー風味飲食品、低カロリーコーヒー風味飲食品、特に、カロリーが20kcal/100mL未満であるコーヒー風味飲料)であってもよい。
【0039】
本発明においては、高甘味度甘味料を含有するコーヒー風味飲食品に分岐グルカンを配合することで、その呈味を向上することができる。すなわち、本発明において「呈味向上」とは、砂糖等の糖類を高甘味度甘味料で代替することにより低下する「味の厚み」を補うことを意味する。より具体的には、本発明によれば、後述の実施例に示された通り、コーヒー風味飲食品に分岐グルカンを配合することで前半の味の厚みおよび後半の味の厚みの両方を増強することができる。なお、本発明において「前半の味の厚み」とはトップ~ミドルまでの甘味を中心とした様々な味の量感を意味し、「後半の味の厚み」とはミドル~ラストまでの甘味を中心とした様々な味の量感を意味する。
【0040】
本発明の上記特徴により、味の厚みを損なうことなく、コーヒー風味飲食品に含まれる砂糖等の甘味料の一部または全てを高甘味度甘味料に代替できるため、その風味を大きく損なうことなくカロリーを低減することができる。また、砂糖等の配合量を減らすことができるため、その製造コストの削減も可能となる。
【0041】
本発明によれば、分岐グルカンまたはその還元物を有効成分とする、高甘味度甘味料を含有するコーヒー風味飲食品用呈味向上剤が提供される。本発明の呈味向上剤は、本発明のコーヒー風味飲食品に関する記載に従って実施することができる。
【0042】
本発明によれば、分岐グルカンまたはその還元物を配合することを含んでなる、高甘味度甘味料を含有するコーヒー風味飲食品の呈味向上方法が提供される。本発明の呈味向上方法は、本発明のコーヒー風味飲食品に関する記載に従って実施することができる。
【実施例0043】
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、本明細書において「固形分」当たりの割合や「固形分」の含有割合に言及した場合には、固形成分の質量に基づいて定められた割合を意味するものとする。
【0044】
糖組成分析
糖組成分析は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して行った。分析カラムはMCI GEL CK04S(三菱ケミカル)を用い、超純水を溶離液として流速0.4mL/分、カラム温度70℃で分析を行った。検出には示差屈折率検出器(RID-10A、島津製作所)を使用し、分析時間は35分とした。得られるクロマトグラムのピーク面積より各重合度成分の含有量を求めた。
【0045】
重合度4~6の分岐グルカン含有量の定量
分岐グルカンの含有量を次の方法で確認した。5質量%に調整した糖液1mLに1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)に溶解した10mg/mL β-アミラーゼ#1500(ナガセケムテックス)50μLを添加し、55℃にて1時間作用させ、煮沸失活させた。これをアンバーライトMB4(オルガノ)にて脱塩した後、0.45μmフィルターにてろ過したものを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供した。酵素処理後に残存する重合度4~6の糖質を重合度4~6の分岐グルカンとした。
【0046】
β-シクロデキストリン生成酵素の活性測定
酵素反応は、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に溶解した1%可溶性デンプン(ナカライテスク)0.9mlに適宜水で希釈した酵素溶液0.1mlを添加し、40℃に10分間保持した。これに40mM水酸化ナトリウム水溶液を2.5ml添加して反応を停止した。生成したβ-シクロデキストリンをフェノールフタレイン法により測定した。具体的には、0.1mg/mlフェノールフタレインおよび2.5mM炭酸ナトリウムからなる溶液0.3mlを前記溶液に添加し、攪拌後550nmの吸光度を測定した。0~0.1mg/mlの範囲で作成したβ-シクロデキストリンの標準曲線に基づき生成したβ-シクロデキストリン量を求めた。
【0047】
α-グルコシダーゼの活性測定
酵素反応は、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.2)に溶解した0.25%マルトース80μlに0.05%トリトンX-100を含む10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.2)で適宜希釈した酵素溶液20μlを添加し、37℃に10分間保持した。反応10分で反応液50μlを抜き出し、2Mトリス塩酸緩衝液(pH7.0)100μlと混合して反応を停止した。これにグルコースCII-テストワコー(富士フイルム和光純薬)を40μl添加した後、室温に1時間保持して発色させ、490nmの吸光度を測定した。生成したグルコース量は0~0.01%の範囲で作成したグルコースの標準曲線に基づき算出した。
【0048】
イソアミラーゼの活性測定
酵素反応は、20mM塩化カルシウムを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)100μlに5mg/mlワキシーコーンスターチ(日本食品化工)350μlを添加し、45℃に5分間保持したものに同緩衝液にて適宜希釈した酵素溶液100μl添加して45℃に15分間保持した。これに反応失活用ヨウ素液(6.35mg/mlヨウ素および83mg/mlヨウ化カリウムからなる溶液2mlと0.1N塩酸8mlを混合したもの)500μlを添加して反応を停止した。この反応停止液を室温に15分間保持し、これに純水10ml添加したものの610nmの吸光度を測定した。
【0049】
ヨード呈色試験
固形分濃度5.0%の糖組成物水溶液1mLに0.05Mヨウ素水溶液100μLを加え、よく撹拌した後に1cm石英セルにいれ、660nmの吸光度を分光光度計(U-2900、日立ハイテクサイエンス)で測定した。得られた吸光度から、超純水を試験溶液として同様に測定して得た吸光度を減じたものを、その糖組成物のヨード呈色値とした。
【0050】
製造例1:糖組成物1の製造
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにパエニバシルス・エスピーのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり0.3単位、マイロイデス・オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり200単位、プルラナーゼ「アマノ」3(天野エンザイム)を対固形分1g当たり0.2mg、トランスグルコシダーゼL「アマノ」(天野エンザイム)を対固形分1g当たり3.75単位、クライスターゼL-1(天野エンザイム)を対固形分1g当たり0.06mg添加して50時間糖化した。これを80℃に加温し、クライスターゼL-1を対固形分1g当たり0.15mg添加して1時間作用させた。続いて、定法に従い精製、濃縮した。得られた糖組成物(糖組成物1)中のDP4~6の分岐グルカン含有量を測定したところ、33.7%であった。なお、パエニバシルス・エスピーのシクロデキストリン生成酵素はAgr. Biol. Chem., 40(9), 1785-1791(1976)の記載に従って調製し、マイロイデス・オドラータスのイソアミラーゼは特開平5-227959号公報に従って調製した。
【0051】
実施例1:分岐グルカンの呈味改良効果の検討
表1に示した分量(質量部)で各原料を配合した。グラニュー糖、スクラロース、アセスルファムカリウムおよび乳化剤の混合物を水に加え、加熱溶解した。さらに各種原料を加え、缶に分注して121℃で20分間レトルト殺菌を行い、レトルト殺菌後に急冷することでコーヒー飲料を調製した。なお、アセスルファムカリウムおよびスクラロースは、甘味度比1:1となるように配合し、アセスルファムカリウムおよびスクラロースの甘味をそれぞれ砂糖の200倍および600倍としていずれのコーヒー飲料も甘味度が同一となるように調整した。また、シラップ状の各分岐グルカンおよびマルトオリゴ糖は、固形分換算の配合量を記載した。
【0052】
使用した各分岐グルカンの糖組成、DP4~6の分岐グルカン含有量およびヨード呈色値を表2に示した。なお、分岐グルカン1は、分岐グルカン2よりも低分子のイソマルトオリゴ糖であり、その糖組成よりDP4~6の分岐グルカン含有量およびヨード呈色値は分岐グルカン2の値と同程度であることは明らかなため、一部データ取得を省略した。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
得られたコーヒー飲料を60℃に加温し、コーヒー飲料の前半および後味の呈味(味の厚み)について、比較区を0点として0~3点の4段階で4名のパネラーによる官能評価を実施した。前半の味の厚みおよび後半の味の厚みとは、以下に定義される。
前半の味の厚み:トップ~ミドルまで(口に含んでから飲み込むまで)の甘味を中心とした様々な味の量感
後半の味の厚み:ミドル~ラストまで(飲み込んでから口に残った風味が消えるまで)の甘味を中心とした様々な味の量感
【0056】
評価結果(評価点の平均値)を表3に示した。
【表3】
【0057】
分岐グルカンを配合したコーヒー飲料(試験区1-1~試験区1-4)は、いずれも比較区1のコーヒー飲料に比べ前半および後半のいずれも味の厚みが増しており、呈味が向上していた。特に、試験区1-4は、前半および後半のいずれも味向上効果がグラニュー糖(砂糖)を配合した参考区1を上回っており、特に顕著な効果が確認された。一方で、直鎖グルカンであるマルトオリゴ糖やデキストリンを配合したコーヒー飲料(試験区1-5および1-6)は、前半または後半のいずれか一方の味の厚みは向上するが、もう一方は比較区1と同等であり十分な呈味向上効果が確認されなかった。なお、試験区1-1~試験区1-4のコーヒー飲料は、いずれもカロリーオフ表示が可能なものであった。
【0058】
実施例2:分岐グルカンの配合量の検討
表4に示した分量(質量部)で各原料を配合した以外は実施例1と同様にコーヒー飲料を調製し、官能評価を行った。その結果を表5に示した。
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
分岐グルカン4を配合したコーヒー飲料(試験区2-1~試験区2-4)は、いずれも比較区2のコーヒー飲料に比べ前半および後半のいずれも味の厚みが増しており、呈味が向上していた。特に、試験区2-3および試験区2-4は、前半および後半のいずれも味の厚みがグラニュー糖(砂糖)を配合した参考区2と同等以上であり、特に顕著な効果が確認された。なお、試験区2-1~試験区2-4のコーヒー飲料は、いずれもカロリーオフ表示が可能なものであった。
【0062】
実施例3:特許文献5に記載の分岐グルカンとの比較検討
分岐グルカン4(糖組成物1)と特許文献5(特開2020-18190号公報)に開示された分岐グルカン組成物(ブランチオリゴ(日本食品化工)とパノリッチ(日本食品化工)の混合糖液(固形分換算で1:1))の呈味向上効果の比較を行った。
【0063】
表6に示した分量(質量部)で各原料を配合した以外は実施例1と同様にコーヒー飲料を調製し、官能評価を行った。その結果を表7に示した。また、試験区3-2に用いた分岐グルカン(ブランチオリゴ(日本食品化工)とパノリッチ(日本食品化工)の混合糖液(固形分換算で1:1))の糖組成等の分析結果を表8に示した。
【0064】
【表6】
【0065】
【表7】
【0066】
【表8】
【0067】
分岐グルカンを配合した試験区3-1および試験区3-2はいずれも比較区3に比べ前半および後半の味の厚みが向上していたが、分岐グルカン4を配合した試験区3-1が特に顕著な効果を示した。なお、試験区3-1および試験区3-2のコーヒー飲料は、いずれもカロリーオフ表示が可能なものであった。
【0068】
実施例4:コーヒー風味食品における呈味向上効果の確認
コーヒー飲料以外のコーヒー風味飲食品においても本発明の効果が発揮されることを確認するために、コーヒー風味食品としてコーヒーゼリーを調製した。
【0069】
表9に示した分量(質量部)でコーヒーパウダーおよび高甘味度甘味料以外の粉末を混合し、粉混合物を鍋に投入し、水、高甘味度甘味料、分岐グルカン4(糖組成物1)を加えた。攪拌しながら95℃まで加温し、80℃まで冷却した。その後、コーヒーパウダーを投入し攪拌して溶化した後、レトルトバックに封入して一旦常温まで水冷し、85℃の湯浴で30分間加熱殺菌した。湯浴に水を加えて徐々に冷やし、常温程度に冷却されたのち冷蔵した。なお、アセスルファムカリウムおよびスクラロースは、甘味度比1:1となるように配合し、アセスルファムカリウムおよびスクラロースの甘味をそれぞれ砂糖の200倍および600倍としていずれのコーヒーゼリーも甘味度が同一となるように調整した。
【0070】
【表9】
【0071】
得られたコーヒーゼリーについて、4名のパネラーにより実施例1と同様の基準で官能評価を実施した。評価結果(評価点の平均値)を表10に示した。
【0072】
【表10】
【0073】
グラニュー糖(砂糖)の半量を高甘味度甘味料および分岐グルカンで代替したコーヒーゼリー(試験区4)は、分岐グルカン無添加区(比較区4)に比べ前半・後半の味の厚みが顕著に向上しており、グラニュー糖(砂糖)のみを配合したコーヒーゼリー(参考区4)を上回るものであった。