(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045105
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】検査用ケルビンコンタクト及び検査用ケルビンソケット並びに検査用ケルビンコンタクトの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 13/03 20060101AFI20220311BHJP
H01R 33/76 20060101ALI20220311BHJP
H01R 43/16 20060101ALI20220311BHJP
G01R 1/073 20060101ALI20220311BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20220311BHJP
【FI】
H01R13/03 Z
H01R33/76 502C
H01R43/16
G01R1/073 B
G01R31/26 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150608
(22)【出願日】2020-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000177690
【氏名又は名称】山一電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勝己
(72)【発明者】
【氏名】源馬 亮
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛士
(72)【発明者】
【氏名】久保田 哲也
【テーマコード(参考)】
2G003
2G011
5E024
5E063
【Fターム(参考)】
2G003AA07
2G003AG01
2G003AG03
2G011AA03
2G011AA15
2G011AB06
2G011AB08
2G011AC14
2G011AE02
2G011AF02
5E024CA07
5E024CA09
5E024CB03
5E063GA02
5E063GA07
(57)【要約】
【課題】ケルビン検査を繰り返し行ってもコンタクトと絶縁層とが相対的にずれるおそれが少ない検査用ケルビンコンタクトを提供する。
【解決手段】ICデバイス5の一の電極端子5aに対して上部接点7aが接触するとともに、下部接点7bが検査基板10の電極パッド10aに対して接触する第1コンタクト7Aと、一の電極端子5aに対して上部接点7aが接触するとともに、下部接点7bが検査基板10の電極パッド10aに対して接触する第2コンタクト7Bと、を備え、第1コンタクト7Aと第2コンタクト7Bとは、共通の一の電極端子5aに対して接触可能なように隣接されて配置され、第1コンタクト7A及び第2コンタクト7Bには、上部接点7aを含む上部接点領域及び下部接点7bを含む下部接点領域を除く本体領域の全体を囲繞する絶縁層が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品の一の電極端子に対して一端が接触するとともに、他端が検査基板の基板電極に対して接触する第1コンタクトと、
前記一の電極端子に対して一端が接触するとともに、他端が検査基板の基板電極に対して接触する第2コンタクトと、
を備え、
前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとは、共通の前記一の電極端子に対して接触可能なように隣接されて配置され、
前記第1コンタクト及び前記第2コンタクトの少なくともいずれか一方には、前記一端を含む一端領域及び前記他端を含む他端領域を除く本体領域の少なくとも一部を囲繞する絶縁層が設けられている検査用ケルビンコンタクト。
【請求項2】
前記絶縁層は、前記本体領域の全てにわたって設けられている請求項1に記載の検査用ケルビンコンタクト。
【請求項3】
前記絶縁層は、前記第1コンタクト及び前記第2コンタクトの両方に設けられている請求項1又は2に記載の検査用ケルビンコンタクト。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載された検査用ケルビンコンタクトと、
前記検査用ケルビンコンタクトを収容するコンタクト収容部と、
を備えている検査用ケルビンソケット。
【請求項5】
前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとから構成される1対のコンタクト対と、隣り合う他のコンタクト対との間に、絶縁性を有する仕切板が設けられている請求項4に記載の検査用ケルビンソケット。
【請求項6】
前記第1コンタクト及び/又は前記第2コンタクトは、前記コンタクト収容部に対して交換可能とされている請求項4又は5に記載の検査用ケルビンソケット。
【請求項7】
電子部品の一の電極端子に対して一端が接触するとともに、他端が検査基板の基板電極に対して接触する第1コンタクトと、
前記一の電極端子に対して一端が接触するとともに、他端が検査基板の基板電極に対して接触する第2コンタクトと、
を備え、
前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとは、共通の前記一の電極端子に対して接触可能なように隣接されて配置され、
前記第1コンタクト及び前記第2コンタクトの少なくともいずれか一方には、前記一端を含む一端領域及び前記他端を含む他端領域を除く本体領域の少なくとも一部を囲繞する絶縁層が設けられている検査用ケルビンコンタクトの製造方法であって、
前記第1コンタクト及び/又は前記第2コンタクトの前記一端領域および前記他端領域をマスキングした後に、前記第1コンタクト及び/又は前記第2コンタクトに対して前記絶縁層を形成する検査用ケルビンコンタクトの製造方法。
【請求項8】
電子部品の一の電極端子に対して一端が接触するとともに、他端が検査基板の基板電極に対して接触する第1コンタクトと、
前記一の電極端子に対して一端が接触するとともに、他端が検査基板の基板電極に対して接触する第2コンタクトと、
を備え、
前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとは、共通の前記一の電極端子に対して接触可能なように隣接されて配置され、
前記第1コンタクト及び前記第2コンタクトの少なくともいずれか一方には、前記一端を含む一端領域及び前記他端を含む他端領域を除く本体領域の少なくとも一部を囲繞する絶縁層が設けられている検査用ケルビンコンタクトの製造方法であって、
前記第1コンタクト及び/又は前記第2コンタクトの全体に対して前記絶縁層を形成した後に、前記第1コンタクト及び/又は前記第2コンタクトの前記一端領域および前記他端領域に形成された前記絶縁層をレーザによって除去する検査用ケルビンコンタクトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品のケルビン検査を行う検査用ケルビンコンタクト及び検査用ケルビンソケット並びに検査用ケルビンコンタクトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SOP(Small Outline Package)やQFP(Quad Flat Package)等の半導体パッケージ(電子部品)のリード端子の一つに対して2つのコンタクトを同時に接触させて検査を行うケルビン検査が行われる(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、一対のコンタクトの間に絶縁シートを介在させることによってコンタクト同士の電気的な絶縁を実現している。コンタクトと絶縁シートとは、それぞれに形成された複数の貫通孔に挿通された止めピンによって互いに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、絶縁シートを挟む工程や複数の止めピンを挿通させる工程などによって工程が煩雑化するとともに、部品点数の増加を招くという問題がある。
【0006】
また、ケルビン検査を繰り返し行うと、コンタクトピンと絶縁シートとを止めピンで固定してあるものの、止めピンを挿通する貫通孔が変形してコンタクトピンと絶縁シートとが相対的にずれるおそれがある。コンタクトピンと絶縁シートとが相対的にずれると、コンタクト同士が絶縁シートを乗り越えて電気的に接触するおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ケルビン検査を繰り返し行ってもコンタクトと絶縁層とが相対的にずれるおそれが少ない検査用ケルビンコンタクト及び検査用ケルビンソケット並びに検査用ケルビンコンタクトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る検査用ケルビンコンタクトは、電子部品の一の電極端子に対して一端が接触するとともに、他端が検査基板の基板電極に対して接触する第1コンタクトと、前記一の電極端子に対して一端が接触するとともに、他端が検査基板の基板電極に対して接触する第2コンタクトと、を備え、前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとは、共通の前記一の電極端子に対して接触可能なように隣接されて配置され、前記第1コンタクト及び前記第2コンタクトの少なくともいずれか一方には、前記一端を含む一端領域及び前記他端を含む他端領域を除く本体領域の少なくとも一部を囲繞する絶縁層が設けられている。
【0009】
電子部品の一の電極端子に対して2つのコンタクト(第1コンタクト及び第2コンタクト)を共通して接触させて検査を行う検査用ケルビンコンタクトである。
各コンタクトの一端は電極端子に対して電気的に接触すると共に、各コンタクトの他端は検査基板の基板電極に対して電気的に接触する。
2つのコンタクトの少なくともいずれか一方には、一端を含む領域及び他端を含む領域を除く本体領域の少なくとも一部を囲繞する絶縁層が設けられている。絶縁層が囲繞するように設けられているので、絶縁層が囲繞されたコンタクトと絶縁層とが相対的にずれるそれが少ない。したがって、コンタクトの変位時に仮に隣り合う2つのコンタクトが相対的にずれても、絶縁層が囲繞されたコンタクトと絶縁層がずれるおそれが少ないので、絶縁層が2つのコンタクトの間に確実に位置することとなり、2つのコンタクト同士が絶縁層を越えて電気的に接触することを回避できる。
絶縁層としては、ポリイミドのコーティングなどが好適に用いられる。
【0010】
さらに、本発明の一態様に係る検査用ケルビンコンタクトでは、前記絶縁層は、前記本体領域の全てにわたって設けられている。
【0011】
絶縁層を、コンタクトの一端を含む領域と他端を含む領域を除く本体領域の全てにわたって設けることとしたので、絶縁層がコンタクトに対してずれるおそれを更に回避することができ、また2つのコンタクト同士が電気的に接触することをより確実に回避することができる。
【0012】
さらに、本発明の一態様に係る検査用ケルビンコンタクトでは、前記絶縁層は、前記第1コンタクト及び前記第2コンタクトの両方に設けられている。
【0013】
絶縁層を両方のコンタクトに設けることとしたので、より確実に絶縁を確保することができる。
【0014】
本発明の一態様に係る検査用ケルビンソケットは、上記のいずれかに記載された検査用ケルビンコンタクトと、前記検査用ケルビンコンタクトを収容するコンタクト収容部と、を備えている。
【0015】
上記のいずれかの検査用ケルビンコンタクトをコンタクト収容部に収容することによって、検査用ケルビンソケットが構成される。検査用ケルビンソケットは、検査基板上に設置される。電子部品は、検査時に、検査用ケルビンソケットに設けられた検査用ケルビンコンタクトに電極端子が電気的に接触するように設置される。
【0016】
さらに、本発明の一態様に係る検査用ケルビンソケットでは、前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとから構成される1対のコンタクト対と、隣り合う他のコンタクト対との間に、絶縁性を有する仕切板が設けられている。
【0017】
隣り合うコンタクト対の間に絶縁性を有する仕切板を設けることによって、隣り合うコンタクト対の間の絶縁をより確実に行うことができる。
なお、仕切板を省略して、空間で絶縁性を確保することもできる。
【0018】
さらに、本発明の一態様に係る検査用ケルビンソケットでは、前記第1コンタクト及び/又は前記第2コンタクトは、前記コンタクト収容部に対して交換可能とされている。
【0019】
コンタクトを交換可能とすることとした。これにより、コンタクトに不具合が生じた場合に、ソケットの全体を交換することなくコンタクトのみを交換することで検査を継続することができる。
【0020】
本発明の一態様に係る検査用ケルビンコンタクトの製造方法は、電子部品の一の電極端子に対して一端が接触するとともに、他端が検査基板の基板電極に対して接触する第1コンタクトと、前記一の電極端子に対して一端が接触するとともに、他端が検査基板の基板電極に対して接触する第2コンタクトと、を備え、前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとは、共通の前記一の電極端子に対して接触可能なように隣接されて配置され、前記第1コンタクト及び前記第2コンタクトの少なくともいずれか一方には、前記一端を含む一端領域及び前記他端を含む他端領域を除く本体領域の少なくとも一部を囲繞する絶縁層が設けられている検査用ケルビンコンタクトの製造方法であって、前記第1コンタクト及び/又は前記第2コンタクトの前記一端領域および前記他端領域をマスキングした後に、前記第1コンタクト及び/又は前記第2コンタクトに対して前記絶縁層を形成する。
【0021】
一端領域および他端領域をマスキングした後に絶縁層を形成することによって、コンタクトの一端および他端を電気接点として形成することができる。
【0022】
本発明の一態様に係る検査用ケルビンコンタクトの製造方法は、電子部品の一の電極端子に対して一端が接触するとともに、他端が検査基板の基板電極に対して接触する第1コンタクトと、前記一の電極端子に対して一端が接触するとともに、他端が検査基板の基板電極に対して接触する第2コンタクトと、を備え、前記第1コンタクトと前記第2コンタクトとは、共通の前記一の電極端子に対して接触可能なように隣接されて配置され、前記第1コンタクト及び前記第2コンタクトの少なくともいずれか一方には、前記一端を含む一端領域及び前記他端を含む他端領域を除く本体領域の少なくとも一部を囲繞する絶縁層が設けられている検査用ケルビンコンタクトの製造方法であって、前記第1コンタクト及び/又は前記第2コンタクトの全体に対して前記絶縁層を形成した後に、前記第1コンタクト及び/又は前記第2コンタクトの前記一端領域および前記他端領域に形成された前記絶縁層をレーザによって除去する。
【0023】
コンタクトの全体に対して絶縁層を形成した後に、一端領域および他端領域をレーザによって除去することによって、コンタクトの一端および他端を電気接点として形成することができる。
【発明の効果】
【0024】
コンタクトを囲繞する絶縁層を設けることとしたので、コンタクトと絶縁層とが相対的にずれるおそれが少ない。これにより、繰り返し行っても安定したケルビン検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係るICソケットを示した斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコンタクトとICデバイスと検査基板との位置関係を示した正面図である。
【
図3】
図2の一対のコンタクトを示した側面図である。
【
図4】
図2のコンタクトとICデバイスとの位置関係を示した分解斜視図である。
【
図6】ICソケットのコンタクト収容部に設けられたコンタクトを示した縦断面図である。
【
図7A】コンタクトの上部接点周りを示した部分拡大縦断面図である。
【
図7B】コンタクトの下部接点周りを示した部分拡大縦断面図である。
【
図8】ICデバイスの電極端子をプッシャーによってコンタクトに対して押し込んだ状態を示した正面図である。
【
図10A】複数対のコンタクト間に仕切板を設置した状態を示した縦断面図である。
【
図10B】複数対のコンタクト間に空間を設けた状態を示した縦断面図である。
【
図11】板材からコンタクトを含む母材形状を切り出した状態を示した正面図である。
【
図12A】
図11の母材形状に対してマスキング材を施した状態を示した正面図である。
【
図13】コンタクトの交換方法を示した縦断面図である。
【
図17】コンタクトの形状の変形例を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1には、本実施形態に係るICソケット(検査用ケルビンソケット)1が示されている。
【0027】
ICソケット1は、ICデバイス(電子部品)5のケルビン検査を行う。ICソケット1は、平面視した場合に略正方形を有する直方体形状とされ、本体部2と、本体部2に対して開閉する蓋部3とを備えている。なお、本実施形態において用いる上下方向は
図1に示す上下方向を意味し、本体部2は蓋部3に対して下方に位置し、蓋部3は閉状態にて本体部2の上面を覆う位置関係となる。なお、
図1では、蓋部3が本体部2に対して開いた開状態が示されている。
【0028】
本体部2の中央には、ケルビン検査時にICデバイス5が収納される収納凹部2aが形成されている。ロボットハンド等の把持装置によってICデバイス5が収納凹部2aに挿入され、かつ取り外される。
【0029】
ICデバイス5は、
図1に示した実施形態では表面実装タイプのICパッケージであり、SOP(Small Outline Package)とされている。なお、SOPに限定されるものではなく、QFP(Quad Flat Package)、SON(Small Outline Non leaded)、QFN(Quad Flat Non leaded)等のICパッケージを用いることもできる。
ICデバイス5の両側部には、所定間隔を空けて複数の電極端子5aが並列に設けられている。
【0030】
収納凹部2a内に一端(後述する上部接点7a:
図2参照)が露出するように、複数のコンタクト7が本体部2に設けられている。コンタクト7は、ICデバイス5の電極端子5aに対応する位置に設けられている。
【0031】
ICソケット1は、ケルビン検査を目的としたものであり、1つの電極端子5aに対して2つのコンタクト7が接触可能に配置されている。コンタクト7は、検査時に、ICデバイス5と検査基板10(
図2参照)とを導通する。
【0032】
蓋部3は、本体部2に対してヒンジ部9によって回動可能に結合されている。検査時には蓋部3が本体部2に対して閉じられ、検査終了後やICデバイス5の取り付け及び取り外しの際には本体部2に対して開けられる。
【0033】
図2には、コンタクト7とICデバイス5と検査基板10との位置関係が示されている。下方から順に、検査基板10、コンタクト7及びICデバイス5が位置している。
【0034】
検査時には、コンタクト7の上部接点(一端)7aがICデバイス5の電極端子5aに電気的に接触し、コンタクト7の下部接点(他端)7bが検査基板10の電極パッド(基板電極)10aに電気的に接触する。
【0035】
コンタクト7は、2つで一対とされており、
図2には、手前側に第1コンタクト7A、奥側に第2コンタクト7Bが示されている。第1コンタクト7Aと第2コンタクト7Bとは、下部接点7bの位置が異なるのみで、その他の形状は同様である。したがって、以下では、第1コンタクト7Aと第2コンタクト7Bとを区別して説明する必要がない場合は単に「コンタクト7」と表記して説明する。
【0036】
図3に側面視して示すように、コンタクト7は、板状とされており、既述の通り2つのコンタクト7A,7Bで一対とされている。
図4に示すように、ICデバイス5の一つの電極端子5aに対して一対のコンタクト7A,7Bの上部接点7aが同時に接続されるようになっている。各コンタクト7A,7Bの下部接点7bは、それぞれ異なる電極パッド10aに接続される。
【0037】
図5には,コンタクト7の正面図が示されている。同図では、一方の第1コンタクト7Aが示されている。既述したように、コンタクト7は板状とされており、例えば、母材をワイヤーカットによって切り出した後にメッキが施される。母材としては例えばベリリウム銅が用いられ、メッキとしては例えば金メッキが用いられる。
【0038】
コンタクト7は、中央に中間部7cを備え、上端に上部接点7a、下端に下部接点7bを備えている。中間部7cは、横長の略矩形状とされており、一側(同図において左側)には中央に向かって形成された矩形状の溝部7dが形成されている。中間部7cの他側(同図において右側)には、上側の凸部7eを残して下端側に向かって切り欠かれた切欠部7fが形成されている。
【0039】
図6に示すように、コンタクト7は、ICソケット1の本体部2のコンタクト収容部2bに収容される。このとき、コンタクト7の溝部7dに対して、嵌合ブロック2cの矩形状とされた一端が嵌合される。嵌合ブロック2cは、ICソケット1の本体部2の内壁の一部を構成する内壁ブロック2fの上部に固定される。コンタクト7の切欠部7fは、係合ブロック2dの肩部に係合される。コンタクト7の凸部7eは、係合ブロック2dの上部に取り付けられる係止ブロック2eによって上方及び側方から係止される。このように、コンタクト7の中間部7cは、嵌合ブロック2c、係合ブロック2d及び係止ブロック2eによって、コンタクト収容部2b内に固定されて位置決めされる。
【0040】
図5に示すように、コンタクト7の中間部7cの上部には、上部レバー部7gが接続されている。上部レバー部7gは、中間部7cの上部から上方に立設した基端部7g1と、この基端部7g1に接続されて略直角に曲がり側方(
図5において左方)に延在する腕部7g2と、この腕部7g2に接続されて略直角に曲がり上方に延在する先端部7g3とを有している。先端部7g3の上端に上部接点7aが設けられている。
【0041】
コンタクト7の中間部7cの下部には、下部レバー部7hが接続されている。下部レバー部7hは、中間部7cの下部から下方に延びるとともに側方(
図5において左方)に向けて略円弧状に湾曲する円弧部7h1と、この円弧部7h1に接続されて側方(
図5において左方)に向かって直線状に延在する腕部7h2と、この腕部7h2に接続されて略直角に曲がり下方に向けて延在する先端部7h3とを有している。先端部7h3の下端に下部接点7bが設けられている。
【0042】
コンタクト7の外表面には、上部接点7aを含む上部接点領域(一端領域)と下部接点7bを含む下部接点領域(下端領域)を除く本体領域の全体にわたって、絶縁層が形成されている。すなわち、絶縁層は、コンタクト7の周囲の全体(上部接点領域及び下部接点領域を除く)を囲繞するように被覆している。具体的には、コンタクト7の中間部7cの全体(表裏及び両側面)だけでなく、上部接点領域を除く上部レバー部7gの全体(表裏及び両側面)と下部接点領域を除く下部レバー部7hの全体(表裏及び両側面)に絶縁層が形成されている。
【0043】
絶縁層としては、樹脂系の材料が用いられ、例えばポリイミドが好適に用いられる。ポリイミド以外の樹脂材料としては、アクリルポリマー、エポキシ樹脂、プリプレグなどが挙げられる。
【0044】
図7Aに示すように、上部接点7aを含む上部接点領域は、母材7i(例えばベリリウム銅)上に形成されたメッキ層7j(例えば金メッキ層)の上端面が露出するように形成されている。上部接点7aが形成された上端面よりも下の領域は、絶縁層7kで被覆されている。メッキ層7jが露出する上部接点領域の下端(絶縁層7kの上端)の位置は、上部接点7aの上端からメッキ層7jの厚さの1倍程度とされ、例えば母材7iの厚さ以下とされる。
【0045】
図7Bに示すように、下部接点7bを含む下部接点領域は、母材7i(例えばベリリウム銅)上に形成されたメッキ層7j(例えば金メッキ層)の下端面が露出するように形成されている。下部接点7bが形成された下端面よりも上の領域は、絶縁層7kで被覆されている。メッキ層7jが露出する下部接点領域の上端(絶縁層の下端)の位置は、下部接点7bの下端からメッキ層7jの厚さの1倍程度とされ、例えば母材7iの厚さ以下とされる。
【0046】
図8には、ICデバイス5を収納凹部2a(
図1参照)に収納し、コンタクト7の第1コンタクト7A上に電極端子5aを設置した後に、プッシャー12によって電極端子5aをさらに下方へ押し込んだ状態が示されている。この状態にて、ICデバイス5と検査基板10上の電極パッド10aとの間でコンタクト7によって導通が行われ、ICデバイス5のケルビン検査が行われる。
【0047】
図9には、コンタクト7の第1コンタクト7Aに対して電極端子5aを接触させて設置した設置位置(破線)と、この設置位置から電極端子5aをさらに下方へ押し込んで検査を行う検査位置(実線)とが示されている。同図から分かるように、設置位置から検査位置に至る間に、第1コンタクト7Aと電極端子5aとが接触している位置(A点)がスライドし、寸法W1にわたってワイピングが行われる。ワイピングによって、接触範囲における異物の除去や半田転写の抑制が行われる。
【0048】
図10Aには、複数対のコンタクト7が示されている。2つのコンタクト7A,7Bで一対とされ、各対のコンタクト7はICデバイス5の1つの電極端子5aに対応する。なお、同図では、絶縁層7k(
図7A参照)の表示は省略している。ICデバイス5の一辺に沿って並列された複数の電極端子5aのそれぞれの位置に対応して、コンタクト7の各対が配置される。隣り合う各対のコンタクト7の間には、仕切板14が設けられている。仕切板14は、
図5のようにコンタクト7を平面視した場合に、コンタクト7の全範囲(上部接点領域および下部接点領域を除く。)をカバーするように設けられている(図示せず)。仕切板14は、絶縁性を有し、例えば樹脂が用いられる。各仕切板14は、図示しないがICソケット1の本体部2に対して固定される。
【0049】
図10Bに示すように、隣り合う各対のコンタクト7の間に空間S1を設けて絶縁性を確保できる場合には、仕切板14を省略しても良い。
【0050】
次に、コンタクト7を製造する方法について説明する。
図11に示すように、まず、複数のコンタクト7が連なった初期形状となるように、金属板からワイヤーカットなどで切断する。母材(例えば
図7Aの符号7i)となる材料は、例えばベリリウム銅とされ、母材の厚さは、例えば100μm以上500μm以下とされる。
図11に示した初期形状は、帯状とされたリテーナ16に対して複数のコンタクト7が連続的に接続された形状とされている。リテーナ16は、下方に延在する接続用腕部16aを有している。接続用腕部16aは、帯状とされたリテーナ16の長手方向に沿って並列に複数設けられている。各接続用腕部16aの下端と、各コンタクト7の中間部7cの上縁とが接続されている。接続用腕部16aで安定的にコンタクト7を吊り下げることができるように、それぞれのコンタクト7に対して接続用腕部16aが2つずつ接続されている。
【0051】
そして、
図11に示した初期形状の全面に対して良好な導電性を有する金等のメッキを施し、メッキ層(例えば
図7Aの符号7j)を得る。メッキ層の厚さは、例えば、2μm以上5μm以下とされる。
【0052】
その後、
図12Aに示すように、コンタクト7の上部接点7aを含む上部接点領域と、下部接点7bを含む下部接点領域とを覆うようにテープ状のマスキング材18が貼付される。マスキング材18は、
図12Bに示すように、コンタクト7の表裏の両面にそれぞれ設けられる。このようにマスキング材18を貼付した状態で、絶縁層(例えば
図7Aの符号7k)を形成する。例えば、絶縁層としてポリイミドを用いる場合、電着塗装が用いられる。このようにマスキング材18を施すことによって、上部接点7aを含む上部接点領域および下部接点7bを含む下部接点領域を除く全ての領域に絶縁層を形成することができる。
【0053】
そして、各接続用腕部16aの下端と各コンタクト7の中間部7cの上縁との接続位置をレーザ等によって切断することで、複数のコンタクト7を得ることができる。
【0054】
次に、コンタクト7の交換方法について説明する。
図6を用いて説明したように、ICソケット1の本体部2は、コンタクト7に嵌合される嵌合ブロック2cと、嵌合ブロック2cの下方から支える内壁ブロック2fと、コンタクト7の凸部7eを係止する係止ブロック2eと、係止ブロック2eを下方から支える係合ブロック2dとを備えている。コンタクト7は、これら嵌合ブロック2c、係合ブロック2d及び係止ブロック2eによって固定される。
【0055】
図13に示すように、嵌合ブロック2cは内壁ブロック2fに対して、係止ブロック2eは係合ブロック2dに対して、それぞれ分離することができるようになっている。
コンタクト7を取り外す際には、先ず係止ブロック2eを係合ブロック2dから分離して上方へ移動させる(矢印A1)。そして、複数のコンタクト7に対して嵌合ブロック2cを嵌合させたまま、嵌合ブロック2cを内壁ブロック2fから分離して上方へ移動させる(矢印A2)。これにより、連なる複数のコンタクト7を嵌合ブロック2cに嵌合させた状態で、ひとまとまりとして複数のコンタクト7を取り外すことができる。
その後、新たな複数のコンタクト7を嵌合ブロック2cに嵌合させて、ICソケット1の本体部2に対して取り付ける。このようにして、コンタクト7を容易に交換することができる。
【0056】
以上説明した本実施形態の作用効果は以下の通りである。
コンタクト7の上部接点7aを含む上部接点領域及び下部接点7bを含む下部接点領域を除く本体領域の全体を囲繞するように、絶縁層7kを設けることとした。絶縁層7kが囲繞するように設けられているので、絶縁層7kが囲繞されたコンタクト7と絶縁層7kとが相対的にずれるそれが少ない。したがって、コンタクト7の変位時に仮に隣り合う2つのコンタクト7が相対的にずれても、コンタクト7と絶縁層7kがずれるおそれが少ないので、絶縁層7kが2つのコンタクトの間に確実に位置することとなり、2つのコンタクト同士が絶縁層7kを越えて電気的に接触することを回避できる。
【0057】
図10Aに示したように、対となる隣り合うコンタクト7の間に絶縁性を有する仕切板14を設けることによって、隣り合うコンタクト7の間の絶縁をより確実に行うことができる。
なお、仕切板14を省略して、空間S1で絶縁性を確保することもできる(
図10B参照)。
【0058】
図13に示したように、嵌合ブロック2cと係止ブロック2eを取り外し可能とすることによって、コンタクト7を交換可能とすることとした。これにより、コンタクト7に不具合が生じた場合に、ICソケット1の全体を交換することなくコンタクト7のみを交換することで検査を継続することができる。
【0059】
上述した実施形態は、以下のように変形することができる。
<変形例1>
図13に示したコンタクト7の交換方法に代えて、
図14に示すようにコンタクト7を交換することができる。
図14に示したICソケット1の本体部2’は、
図13の嵌合ブロック2cと内壁ブロック2fとを一体化させた内壁嵌合ブロック2gを備えている。内壁嵌合ブロック2gは、本体部2側に固定されたままであり、取り外し可能とされてない。また、
図14の本体部2’は、
図13の係止ブロック2eと係合ブロック2dとを一体化させた係止係合ブロック2hを備えている。係止係合ブロック2hは、本体部2に対して取り外し可能とされている。
コンタクト7を取り外す際には、先ず係止係合ブロック2hを側方(同図において右方)にスライダした後に上方へ移動させる(矢印A3参照)。その後、コンタクト7を側方(同図において右方)にスライドした後に上方へ移動させる(矢印A4参照)。
新たなコンタクト7を取り付ける場合は、取り外しと逆の手順となり、先ずコンタクト7を内壁嵌合ブロック2gに取り付けた後に、係止係合ブロック2h固定する。
図14に示した変形例では、
図13のように嵌合ブロック2cとともに複数のコンタクト7をまとめて交換するのではなく、コンタクト7を1つずつ交換することができる。
【0060】
<変形例2>
上述した実施形態では、
図12A及び
図12Bに示したように、上部接点7aを含む上部接点領域と下部接点7bを含む下部接点領域とを形成するために、マスキング材18を用いることとした。これに対して、
図15A及び
図15Bに示す変形例では、マスキング材18を用いずに各接点領域を形成することができる。
【0061】
図12Bに示したように上記実施形態では母材形状は平面形状の板状とされていたが、
図15Aに示すように、本変形例では接続用腕部16aに折曲げ部16bを設ける。折曲げ部16bは、
図15Bに示すように、接続用腕部16aの中間位置に設けられ、板厚方向に90°未満の角度範囲で屈曲させられた後に、リテーナ16と平行となるように曲げ戻された形状とされている。折曲げ部16bによって、コンタクト7の上下方向の軸線L1を、この軸線L1に平行なリテーナ16の上下方向の軸線L2に対して寸法W2だけオフセットさせることができる。このようにコンタクト7をリテーナ16に対してオフセットさせることで、リテーナ16によって干渉されることなく、上部接点7aを含む上部接点領域の絶縁層(ポリイミド層)に対応する位置にレーザを軸線L1方向から照射することができる(矢印B1参照)。上部接点領域に被覆された絶縁層(ポリイミド層)は、レーザによって部分的に除去される。下部接点7bを含む下部接点領域の絶縁層(ポリイミド層)は、下方から照射されるレーザ(矢印B2参照)によって部分的に除去される。
【0062】
<変形例3>
上述した実施形態では、
図7A及び
図7Bに示したように、各コンタクト7に対して絶縁層7kを設けることとした。これに対して、
図16に示すように、第1コンタクト7Aにのみ絶縁層7kを形成し、第2コンタクト7Bには絶縁層7kを形成せずにメッキ層7jが全面に露出させたものとしても良い。第1コンタクト7Aと第2コンタクト7Bとを重ね合わせても、第1コンタクト7Aに絶縁層7kが形成されているので、両コンタクト7A,7B間で電気的絶縁を得ることができる。すなわち、一方のコンタクトのみに絶縁層を設ける構成としても良い。
【0063】
<変形例4>
上述した実施形態では、例えば
図2に示したように、表面実装タイプの検査基板10に対応する形状のコンタクト7を用いて説明した。これに対して、
図17に示すように、DIPタイプの検査基板10’に対応する形状のコンタクト7’を用いても良い。コンタクト7’は、鉛直下方に向かって直線状に延在する下部端子7lを備えている。下部端子7lは、検査基板10’に形成されたスルーホールに挿通されることによって下部接点7bとして用いられる。したがって、下部接点7bとなる領域すなわち下部端子7lの側面は、絶縁層(例えば
図7Bの符号7kを参照)が除去されている。
図17に示されているように下部端子7lは4つとされている。下部接点7bの数は、上記実施形態にて
図2を用いて示したように2つでも良く、また本変形例のように3以上であってもよい。
【0064】
また、図示しないが、
図9に示したように積極的にワイピングが行われるコンタクト7とせずに、主として上下に移動して
図9のコンタクト7よりも少ないワイピング量としたコンタクトや、上下のみに移動してほとんどワイピンしないコンタクトとしても良い。
【符号の説明】
【0065】
1 ICソケット(検査用ケルビンソケット)
2,2’ 本体部
2a 収納凹部
2b コンタクト収容部
2c 嵌合ブロック
2d 係合ブロック
2e 係止ブロック
2f 内壁ブロック
2g 内壁嵌合ブロック
2h 係止係合ブロック
3 蓋部
5 ICデバイス(電子部品)
5a 電極端子
7,7’ コンタクト
7A 第1コンタクト
7B 第2コンタクト
7a 上部接点(一端)
7b 下部接点(他端)
7c 中間部
7d 溝部
7e 凸部
7f 切欠部
7g 上部レバー部
7g1 基端部
7g2 腕部
7g3 先端部
7h 下部レバー部
7h1 円弧部
7h2 腕部
7h3 先端部
7i 母材
7j メッキ層
7k 絶縁層
7l 下部端子
9 ヒンジ部
10,10’ 検査基板
10a 電極パッド(基板電極)
12 プッシャー
14 仕切板
16 リテーナ
16a 接続用腕部
16b 折曲げ部
18 マスキング材
S1 空間