(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045131
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】放送受信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 1/16 20060101AFI20220311BHJP
【FI】
H04B1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150644
(22)【出願日】2020-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100183760
【弁理士】
【氏名又は名称】山鹿 宗貴
(72)【発明者】
【氏名】松倉 雄二郎
【テーマコード(参考)】
5K061
【Fターム(参考)】
5K061BB01
5K061CD02
5K061FF12
5K061FF13
5K061FF16
5K061HH01
(57)【要約】
【課題】RDSサイマル放送とは別の周波数のRDS信号の受信を必要とする動作を許容しつつ、アンサンブル信号の受信品質の劣化時にDAB-RDSリンクを速やかに実行すること。
【解決手段】放送受信装置を、複数の地点の各々で検出されたデジタル放送信号の受信品質の情報と、各地点の位置情報とを関連付けて保存する保存部と、放送受信装置の現在位置を取得する現在位置取得部と、取得された現在位置および保存部に保存された情報を用いて、デジタル放送信号の受信品質が所定閾値以下に低下するか否かを予測する予測部と、予測部による予測結果に応じて、アナログ放送信号に対する受信動作を、サイマル放送のアナログ放送信号とは別の周波数のアナログ放送信号の受信を必要とする動作に設定する設定部と、を備える構成とした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載されており、デジタル放送信号と、前記デジタル放送信号と放送フォーマットが異なるアナログ放送信号を受信でき、前記デジタル放送信号の受信品質が所定閾値以下に低下した時、再生される放送を、前記デジタル放送信号からサイマル放送の前記アナログ放送信号に自動的に切り替える放送受信装置において、
複数の地点の各々で検出された前記デジタル放送信号の受信品質の情報と、各前記地点の位置情報とを関連付けて保存する保存部と、
前記放送受信装置の現在位置を取得する現在位置取得部と、
前記取得された現在位置および前記保存部に保存された情報を用いて、前記デジタル放送信号の受信品質が前記所定閾値以下に低下するか否かを予測する予測部と、
前記予測部による予測結果に応じて、前記アナログ放送信号に対する受信動作を、前記サイマル放送のアナログ放送信号とは別の周波数のアナログ放送信号の受信を必要とする動作に設定する設定部と、
を備える、
放送受信装置。
【請求項2】
前記設定部は、
前記予測部により前記受信品質が前記所定閾値以下に低下すると予測されると、前記アナログ放送信号に対する受信動作を、前記サイマル放送のアナログ放送信号を受信する動作に設定し、
前記予測部により前記受信品質が前記所定閾値以下に低下しないと予測されると、前記アナログ放送信号に対する受信動作を、前記サイマル放送のアナログ放送信号とは別の周波数のアナログ放送信号の受信を必要とする動作に設定する、
請求項1に記載の放送受信装置。
【請求項3】
前記サイマル放送のアナログ放送信号とは別の周波数のアナログ放送信号の受信を必要とする動作は、受信可能なアナログ放送信号を放送する放送局のリストを更新する動作である、
請求項2に記載の放送受信装置。
【請求項4】
前記現在位置取得部による前記現在位置の取得時の、前記デジタル放送信号の受信品質を取得する受信品質取得部
を更に備え、
前記保存部は、
前記受信品質取得部により前記デジタル放送信号の受信品質が取得されると、取得された受信品質の情報と、前記現在位置取得部により取得された現在位置とを関連付けて保存する、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の放送受信装置。
【請求項5】
前記保存部は、
所定の地図データの前記各地点の位置情報と、前記各地点における前記受信品質の情報とを関連付けて保存し、
前記予測部は、
前記地図データが示す地図上での前記放送受信装置の進行方向および進行速度を推定し、推定された進行方向および進行速度ならびに前記現在位置取得部により取得された現在位置を用いて、前記受信品質が前記所定閾値以下の情報と関連付けられた地点に所定時間内に到達するか否かを判定し、前記所定時間内に到達すると判定される場合に、前記受信品質が前記所定閾値以下に低下すると予測する、
請求項4に記載の放送受信装置。
【請求項6】
前記保存部は、
所定の地図データの前記各地点の位置情報と、前記各地点における前記受信品質の情報とを関連付けて保存し、
前記予測部は、
前記地図データが示す地図上での前記放送受信装置の進行方向を推定し、推定された進行方向および前記現在位置取得部により取得された現在位置を用いて、前記受信品質が前記所定閾値以下の情報と関連付けられた地点が、前記現在位置から前記進行方向沿いの所定距離以内に存在するか否かを判定し、前記所定距離以内に存在すると判定される場合に、前記受信品質が前記所定閾値以下に低下すると予測する、
請求項4に記載の放送受信装置。
【請求項7】
前記地図データは、
ノードとリンクを用いて形成されたネットワーク構造によって記述されたデータであり、
前記保存部は、
前記地図データのリンクと、前記リンクに対応する道路の進行中に前記受信品質取得部にて取得された前記受信品質の情報とを関連付けて保存する、
請求項5又は請求項6に記載の放送受信装置。
【請求項8】
前記受信品質取得部は、
前記デジタル放送信号の受信品質を所定の時間間隔で取得し、
前記保存部は、
前記リンクに対応する道路の進行中に取得された前記受信品質の平均値を前記リンクと関連付けて保存する、
請求項7に記載の放送受信装置。
【請求項9】
前記現在位置取得部は、
GPS(Global Positioning System)受信機と接続されており、前記GPS受信機から前記現在位置を取得する、
請求項1から請求項8の何れか一項に記載の放送受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DAB(Digital Audio Broadcasting)のアンサンブル信号とFM(Frequency Modulation)のRDS(Radio Data System)の放送信号(以下「RDS信号」と記す。)の双方を受信可能な放送受信装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に例示される、この種の放送受信装置では、例えばアンサンブル信号の受信品質が劣化すると、アンサンブル信号による放送サービス(以下「DABサービス」と記す。)のSID(Service Identifier)およびRDS信号によるサイマル放送(以下「RDSサイマル放送」と記す。)を放送する放送局のPI(Program Identifier)に基づいて同一のサービスを放送するサイマル放送への自動追従が行われる。すなわち、アンサンブル信号の受信品質が劣化すると、再生される放送がDABサービスからRDSサイマル放送へ自動的に切り替えられる。以下、説明の便宜上、DABサービスからRDSサイマル放送へ自動的に切り替える動作を「DAB-RDSリンク」と記す。
【0004】
特許文献1に記載の放送受信装置は車両に備えられている。そのため、車両の移動に伴いアンサンブル信号の受信品質が変動する。アンサンブル信号の受信品質はリアルタイムで検出されるものの、この受信品質が、いつ、DABサービスを再生できないレベルまで劣化するかは不明である。アンサンブル信号の受信品質の劣化時にRDSサイマル放送へ速やかに切り替えるためには、RDSサイマル放送を継続的に受信して、アンサンブル信号の受信品質がDABサービスを再生できないレベルまで劣化する事態に備えておく必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
DAB-RDSリンクのため、RDSサイマル放送を継続的に受信すると、RDSチューナの受信周波数がRDSサイマル放送を放送する周波数に固定される。そのため、RDSチューナは、例えば、RDSサイマル放送以外を放送する放送局のリストを更新する動作など、RDSサイマル放送とは別の周波数のRDS信号の受信を必要とする動作を行うことができない。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、RDSサイマル放送とは別の周波数のRDS信号の受信を必要とする動作を許容しつつ、アンサンブル信号の受信品質の劣化時にDAB-RDSリンクを速やかに実行することが可能な放送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係る放送受信装置は、移動体に搭載されており、デジタル放送信号と、デジタル放送信号と放送フォーマットが異なるアナログ放送信号を受信でき、デジタル放送信号の受信品質が所定閾値以下に低下した時、再生される放送を、デジタル放送信号からサイマル放送のアナログ放送信号に自動的に切り替える装置であり、複数の地点の各々で検出されたデジタル放送信号の受信品質の情報と、各地点の位置情報とを関連付けて保存する保存部と、放送受信装置の現在位置を取得する現在位置取得部と、取得された現在位置および保存部に保存された情報を用いて、デジタル放送信号の受信品質が所定閾値以下に低下するか否かを予測する予測部と、予測部による予測結果に応じて、アナログ放送信号に対する受信動作を、サイマル放送のアナログ放送信号とは別の周波数のアナログ放送信号の受信を必要とする動作に設定する設定部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、放送受信装置において、RDSサイマル放送とは別の周波数のRDS信号の受信を必要とする動作を許容しつつ、アンサンブル信号の受信品質の劣化時にDAB-RDSリンクを速やかに実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る放送受信システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態においてMPU(Micro Processing Unit)により実行される収集処理のフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態においてMPUにより実行される、RDSチューナの動作を設定する動作設定処理のフローチャートである。
【
図4】
図3の動作設定処理の説明を補助する図である。
【
図5】本発明の別の一実施形態においてMPUにより実行される、RDSチューナの動作を設定する動作設定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下においては、本発明の一実施形態として、移動体に搭載されており、デジタル放送信号であるDABのアンサンブル信号と、アナログ放送信号であるRDS信号を受信でき、デジタル放送信号の受信品質が所定閾値以下に低下した時、再生される放送を、デジタル放送信号からサイマル放送のアナログ放送信号に自動的に切り替える放送受信装置を備える放送受信システムを例に取り説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る放送受信システム1の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、本実施形態に係る放送受信システム1は、放送受信装置10、オーディオアンプ20、スピーカ30、ナビゲーション装置40およびHMI(Human Machine Interface)50を備える。
【0013】
放送受信装置10は、DABのアンサンブル信号と、アンサンブル信号と放送フォーマットが異なるサイマル放送のRDS信号を受信可能な装置であり、例えば車両に設置されている。なお、放送受信装置10は車載された装置に限らず、例えば、スマートフォン、フィーチャフォン、PHS(Personal Handy phone System)、タブレット端末、ノートPC、PDA(Personal Digital Assistant)、PND(Portable Navigation Device)、携帯ゲーム機等の携帯型端末に備えられるものであってもよい。
【0014】
本実施形態では、放送受信装置10とナビゲーション装置40とを別個独立した装置としているが、別の実施形態では、放送受信装置10は、ナビゲーション装置40を含む装置としてもよい。
【0015】
図1に示されるように、放送受信装置10は、MPU110、通信インタフェース120、DAB信号処理回路130、RDS信号処理回路140、セレクタ150およびフラッシュメモリ160を備える。放送受信装置10(具体的にはセレクタ150)の後段には、オーディオアンプ20およびスピーカ30が接続される。
【0016】
なお、
図1では、本実施形態の説明に必要な主たる構成要素を図示しており、例えば放送受信装置10として必須な構成要素である筐体など、一部の構成要素については、その図示を適宜省略する。
【0017】
例えば車両にエンジンが掛けられると、図示省略されたバッテリから放送受信装置10の各回路に電源ラインを通じて電源供給が行われる。MPU110は電源供給後、内部メモリに格納された制御プログラムを読み出してワークエリアにロードし、ロードされた制御プログラムを実行することにより、放送受信装置10全体の制御を行う。
【0018】
HMI50は、ユーザと放送受信装置10およびナビゲーション装置40とが情報をやり取りするためのインタフェースであり、具体的には、タッチパネルディスプレイおよびその周りに配置されたメカニカルキー、リモートコントローラ等である。
【0019】
MPU110は、通信インタフェース120を介してHMI50と通信可能に接続される。MPU110は、HMI50に対する選局操作に従い、DAB信号処理回路130およびRDS信号処理回路140に受信制御信号を出力する。
【0020】
DAB信号処理回路130は、アンサンブル信号の受信処理を行う回路であり、アンテナ131、DABチューナ132、DABデコーダ133および信号検出部134を備える。
【0021】
アンテナ131は、アンサンブル信号を受信する。DABチューナ132は、MPU110より入力される受信制御信号に従い、アンテナ131にて受信されたアンサンブル信号をRF(Radio Frequency)信号からベースバンド信号に変換して、DABデコーダ133に出力する。
【0022】
DABデコーダ133は、DABチューナ132より入力されるベースバンド信号をOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)復調する。
【0023】
アンサンブル信号は、概略的には、復調の際にフレーム同期に用いられる同期チャンネル、サービス構成情報等が含まれるFIC(Fast Information Channel)、音声サービスやデータサービスが含まれるMSC(Main Service Channel)で構成される。
【0024】
FICは、FIB(Fast Information Block)で構成されており、SID、EID(Ensemble Identifier)、SCIdS(Service Component Identifier within the Service)等の各識別子および該識別子に関連付けられたラベルデータ(例えば放送サービス名(放送番組名)を示すサービスラベル)を含む。FIBは、FIG(Fast Information Group)およびCRC(Cyclic Redundancy Check)を含む。FIGは、その用途によりType 0からType 7の8種類で分類される。
【0025】
FIGには、サービス・リンキング情報が含まれる。サービス・リンキング情報は、DABの何れのSIDとRDSの何れのPIとがリンクしているかを示す情報を含む。MPU110は、このサービス・リンキング情報により、SIDとPIとが一致する放送に限らず、SIDとPIとが一致しない放送であっても、現在受信しているDABの放送局と同一内容のサービスを放送するRDSの放送局を特定することができる。
【0026】
DABデコーダ133は、OFDM復調によって得たFICをMPU110に送信する。MPU110は、このFICの情報に基づいて、アンサンブル信号に多重化された複数のDABサービスの中から、再生するDABサービスを選択する。
【0027】
DABデコーダ133は、MSCに含まれる音声データおよび表示用データであって、MPU110により選択されたDABサービスに対応するサブチャンネルの音声データおよび表示用データをデコードし、デコードされた音声データ(以下「DAB音声信号」と記す。)をセレクタ150に出力するとともに、デコードされた表示用データをHMI50に出力する。
【0028】
信号検出部134は、アンサンブル信号の受信品質の情報(以下「DAB受信品質情報」と記す。)を検出する。DAB受信品質情報は、例えばアンサンブル信号の受信レベルやビットエラーレートで示される情報である。
【0029】
RDS信号処理回路140は、RDS信号の受信処理を行う回路であり、アンテナ141、RDSチューナ142および信号検出部143を備える。
【0030】
アンテナ141は、RDS信号を受信する。RDSチューナ142は、MPU110より入力される受信制御信号に従い、アンテナ141にて受信されたRDS信号をFM変調する。FM変調により選局されるRDSサイマル放送は、DABサービスのSIDと同一PIの放送局が放送するRDSサイマル放送又はサービス・リンキング情報によってDABサービスのSIDと関連付けられたPIの放送局が放送するRDSサイマル放送である。
【0031】
FM変調により、音声信号(以下「RDS音声信号」と記す。)および文字情報データが得られる。FM変調によって得られたRDS音声信号、文字情報データは、それぞれ、オーディオアンプ20、HMI50に出力される。
【0032】
信号検出部143は、RDSサイマル放送の受信品質の情報(以下「RDS受信品質情報」と記す。)を検出する。RDS受信品質情報は、RDSサイマル放送の受信レベルで示される情報である。
【0033】
MPU110は、セレクタ信号をセレクタ150に出力する。セレクタ150は、MPU110より入力されるセレクタ信号に従い、アンサンブル信号の受信品質が劣化した状態にあるとき(すなわち、アンサンブル信号の受信品質が所定閾値以下にあるときであり、例示的には、アンサンブル信号のビットエラーレートが第1の閾値以上のとき)にはRDS音声信号を出力し、アンサンブル信号の受信品質が良好又は改善された状態にあるとき(すなわち、アンサンブル信号の受信品質が所定閾値を超えるときであり、例示的には、アンサンブル信号のビットエラーレートが第1の閾値未満のとき)にはDAB音声信号を出力する。セレクタ150より出力される音声信号は、オーディオアンプ20にて増幅されて、スピーカ30にて再生される。
【0034】
MPU110は、信号検出部134にて検出されたDAB受信品質情報に基づいてアンサンブル信号の受信品質をチェックするとともに、信号検出部143にて検出されたRDS受信品質情報に基づいてRDS信号の受信品質をチェックする。これらの受信品質は、放送受信装置10が設置された車両が受信可能エリアから外れたり建物やトンネル等の遮蔽物の影響を受けたりした場合に劣化する。MPU110は、アンサンブル信号の受信品質が劣化すると、セレクタ信号をセレクタ150に出力して、再生される放送を、DABサービスと同一内容のサービスを放送するRDSサイマル放送へ切り替える。すなわち、MPU110は、DAB-RDSリンクを実行する。
【0035】
DABのステーションリストについて説明する。ステーションリストは、周波数チャンネル、アンサンブルラベル、サービスラベル、SID、SCIdS、種別(Primary, Secondary)、ハードリンク・サービス情報、FI、OE(Other Ensembles)サービス等の各情報を関連付けて保持するリストデータである。
【0036】
例えば、MPU110は、DAB信号処理回路130を制御して、DABのアンサンブル信号を放送する全ての周波数チャンネルをシークする。概説すると、MPU110は、DAB信号処理回路130に受信制御信号を出力して、1つの周波数チャンネルの選局を指示する。DAB信号処理回路130では、MPU110より入力される受信制御信号に従って受信処理が行われる。DAB信号処理回路130にてアンサンブル信号が検出されて復調処理が成功すると、ステーションリスト162の作成に必要なサービス構成情報が得られて、MPU110に出力される。MPU110は、DAB信号処理回路130よりサービス構成情報を取得すると、次の周波数チャンネルの選局をDAB信号処理回路130に指示して、次の周波数チャンネルについても同様にサービス構成情報の取得を試みる。MPU110は、一定時間内にDAB信号処理回路130よりサービス構成情報を取得できなかった場合にも、次の周波数チャンネルの選局をDAB信号処理回路130に指示してサービス構成情報の取得を試みる。MPU110は、このシーク処理を、アンサンブル信号を放送する全ての周波数チャンネルについて行う。
【0037】
MPU110は、アンサンブル信号を放送する全ての周波数チャンネルについてサービス構成情報の取得・取得失敗の結果が得られると、取得されたサービス構成情報に基づいてステーションリスト162を作成し、作成したステーションリスト162をフラッシュメモリ160に格納する。
【0038】
ステーションリスト162が保持するサービスラベルは、例えばHMI50のタッチパネルディスプレイ上に表示される。ユーザは、HMI50のタッチパネルディスプレイ上に表示されたステーションリスト162の中から希望するサービスラベル(言い換えるとDABサービス)をタッチ操作によって選択することができる。ステーションリスト162上のDABサービスが選択操作されると、MPU110は、選択されたDABサービスに関連付けられて記憶されたアンサンブル信号の周波数、EID、SID等に基づいてアンサンブル信号を受信し、受信したアンサンブル信号に含まれる選択局のDABサービスのDAB音声信号をスピーカ30にて再生させるとともに、このDABサービスの表示用データをタッチパネルディスプレイ上に表示させる。
【0039】
なお、HMI50のタッチパネルディスプレイ上には、プリセット操作により登録されたサービスラベル(言い換えるとDABサービス)を表示させることもできる。ユーザは、プリセット登録されたDABサービスに対する選択操作を行い、このDABサービスのDAB音声信号をスピーカ30にて再生させるとともに、このDABサービスの表示用データをタッチパネルディスプレイ上に表示させることもできる。
【0040】
フラッシュメモリ160には、受信可能なRDSサイマル放送を放送する放送局のリスト(以下「RDSリスト164」と記す。)も保存される。RDSリスト164は、周波数チャンネル、PI、PS(Program Service)、PTY(Program Type)等の各情報を関連付けて保持するリストデータである。MPU110は、ステーションリスト162を作成する場合と同様に、RDS信号を放送する全ての周波数チャンネルについてシーク処理を行って各情報を取得し、RDSリスト164を作成する。作成されたRDSリスト164は、フラッシュメモリ160に保存(上書き保存)される。以下、RDS信号に対するシーク処理を行ってRDSリスト164を作成し保存する処理を「RDSリスト更新処理」と記す。
【0041】
図1に示されるように、ナビゲーション装置40は、ナビゲーションECU(Electronic Control Unit)41、GPS受信機42、車両情報取得部43およびメモリ44を備える。
【0042】
メモリ44には、制御プログラムおよびナビゲーションECU41が処理に使用する各種データ(例えば地図データ45やプログラム内での参照値等)が保存されている。例えば車両にエンジンが掛けられると、図示省略されたバッテリからナビゲーション装置40の各回路に電源ラインを通じて電源供給が行われる。ナビゲーションECU41は電源供給後、メモリ44に保存された制御プログラムを読み出してワークエリアにロードし、ロードされた制御プログラムを実行することにより、ナビゲーション装置40全体の制御を行う。
【0043】
GPS受信機42は、複数のGPS衛星より受信したGPS信号に基づいてGPS受信機42の現在位置を測定するモジュールである。GPS受信機42は、所定の時間間隔(例えば1秒間毎)で現在位置を測定し、測定結果をナビゲーションECU41に出力する。
【0044】
なお、放送受信装置10とGPS受信機42は、同じ車両内に近接して設置され、且つ一体的に移動する。そのため、GPS受信機42が測定する現在位置は、厳密には、GPS受信機42の現在位置ではあるが、放送受信装置10の現在位置又は車両の現在位置とみなしても実質的に差し支えない。
【0045】
MPU110は、通信インタフェース120を介してナビゲーション装置40と通信する。GPS受信機42が現在位置を測定する毎に、MPU110とナビゲーション装置40とが通信し、GPS受信機42により測定された現在位置がナビゲーション装置40からMPU110に通知される。
【0046】
すなわち、MPU110は、GPS受信機42と接続されており、GPS受信機42から放送受信装置10の現在位置を取得する現在位置取得部として動作する。
【0047】
ナビゲーションECU41は、メモリ44より読み出された地図データ45をレンダリングしてHMI50のタッチパネルディスプレイに表示させると共にGPS受信機42より測定された現在位置を取得し、自車位置を示すマークを、取得された現在位置であって、タッチパネルディスプレイに表示されている地図の道路上の位置に重ねる(マップマッチングする)。
【0048】
なお、地図データ45は、例えば、ノードとリンクを用いて形成されたネットワーク構造によって記述されたデータである。
【0049】
車両情報取得部43は、例えば、車両の水平面における方位に関する角速度を計測するジャイロセンサや、車両の左右の駆動輪の回転速度を検出する車速センサ等の、DR(Dead Reckoning)センサである。ナビゲーションECU41は、車両情報取得部43より取得される情報から現在位置を推定してもよい。また、ナビゲーションECU41は、GPS受信機42より取得された現在位置と、車両情報取得部43より取得された情報に基づいて推定された現在位置の両方を比較したうえで、最終的な現在位置を決定してもよい。
【0050】
ナビゲーションECU41は、経路案内の実行時には、HMI50のタッチパネルディスプレイに表示されている地図内の経路を強調表示させる。ナビゲーションECU41は、現在位置を定期的に取得し、取得された現在位置とマッチする地図をタッチパネルディスプレイに表示させると共に、経路案内用の音声信号をスピーカ30にて適時に再生させる。現在位置が経路から外れた場合は、ダイクストラ法による経路の再探索および再設定を行う。ナビゲーションECU41はまた、インターネット上の所定の地図サーバに定期的に接続することにより、最新の地図データ45をダウンロードすることができる。
【0051】
放送受信装置10は、移動体である車両に備えられている。そのため、車両の移動に伴い、放送受信装置10にて受信されるアンサンブル信号の受信品質が変動する。アンサンブル信号の受信品質は、信号検出部134によってリアルタイムで検出されるものの、この受信品質が、いつ、DABサービスを再生できないレベルまで劣化するかは不明である。アンサンブル信号の受信品質の劣化時にRDSサイマル放送へ速やかに切り替えるためには、RDSチューナ142の受信周波数をRDSサイマル放送を放送する周波数に固定して、RDSサイマル放送を継続的に受信しておく必要がある。以下、RDSチューナ142の受信周波数をRDSサイマル放送を放送する周波数に固定して、RDSサイマル放送を継続的に受信する動作を「DAB-RDSリンク待機動作」と記す。
【0052】
放送受信装置10のように、RDSチューナ142が1つしか備えられていない放送受信装置では、DAB-RDSリンク待機動作中、例えばRDSリスト更新処理など、RDSサイマル放送とは別の周波数のRDS信号の受信を必要とする動作を行うことができなくなってしまう。以下、RDSサイマル放送とは別の周波数のRDS信号の受信を必要とする動作を「周波数非固定動作」と記す。
【0053】
周波数非固定動作を実行するためには、DAB-RDSリンク待機動作を一時的に中断する必要がある。但し、DAB-RDSリンク待機動作を一時的に中断すると、アンサンブル信号の受信品質が劣化するタイミングによっては、DAB-RDSリンクを速やかに実行できない場合があった。
【0054】
そこで、本実施形態では、RDSサイマル放送とは別の周波数のRDS信号の受信を必要とする動作を許容しつつ、アンサンブル信号の受信品質の劣化時にDAB-RDSリンクを速やかに実行することができるよう、MPU110は、
図2および
図3のフローチャートに示される処理を実行する。
【0055】
図2は、本実施形態においてMPU110により実行される収集処理のフローチャートである。
図2に示される収集処理は、例えば、放送受信装置10の電源がオンされた時点で開始され、放送受信装置10の電源がオフされるまで繰り返し実行される。
【0056】
MPU110には、ナビゲーション装置40から所定の時間間隔(つまりGPS受信機42による測定の間隔)で放送受信装置10の現在位置が通知される。すなわち、MPU110は、ナビゲーション装置40から放送受信装置10の現在位置を所定の時間間隔で取得する(ステップS101)。
【0057】
MPU110は、ステップS101にて放送受信装置10の現在位置を取得すると、その時点で信号検出部134にて検出されるDAB受信品質情報を取得する(ステップS102)。
【0058】
すなわち、MPU110は、現在位置取得部による現在位置の取得時の、デジタル放送信号の受信品質を取得する受信品質取得部として動作する。
【0059】
MPU110は、ステップS101にて取得した放送受信装置10の現在位置と、ステップS102にて取得したDAB受信品質情報とを関連付けて、受信品質DB(Data Base)166に保存する(ステップS103)。
【0060】
本実施形態では、メモリ44に保存されている地図データ45を構成する各リンクが、上記の各地点に対応する。従って、本実施形態では、受信品質DB166には、地図データ45のリンクと、当該リンクに対応する道路の進行中に取得されたDAB受信品質情報とが関連付けて保存される。
【0061】
リンクに関連付けて保存されるDAB受信品質情報は、例えば車両が当該リンクに対応する道路の進行中に取得されたDAB受信品質情報の平均値である。この平均値に代えて、当該リンクに対応する道路の進行中に取得されたDAB受信品質情報の中央値又は最頻値もしくは所定の規則に従って決定された1つのDAB受信品質情報が、当該リンクに関連付けて保存されてもよい。
【0062】
DAB受信品質情報が既に関連付けて保存されているリンクに対して、DAB受信品質情報が新たに取得されると、MPU110は、新たに取得されたDAB受信品質情報を当該リンクに関連付けて上書き保存する。
【0063】
このように、MPU110は、複数の地点の各々で検出されたデジタル放送信号の受信品質の情報と、各地点の位置情報とを関連付けて保存する保存部として動作する。
【0064】
図3は、本実施形態においてMPU110により実行される、RDSチューナ142の動作を設定する動作設定処理のフローチャートである。
図3に示される動作設定処理は、例えば、放送受信装置10の電源がオンされた時点で開始され、放送受信装置10の電源がオフされるまで繰り返し実行される。また、この動作設定処理は、
図2の収集処理と並行して実行される。
【0065】
図4は、
図3の動作設定処理の説明を補助する図である。
図4では、メモリ44に保存されている地図データ45の一部のノードおよびこれらのノードを接続するリンクL1~L10を示している。また、
図4中、符号P1、P2、P3は、それぞれ、リンクL1、L3、L8を進行中の車両(言い換えると、放送受信装置10)を示す。
【0066】
図4では、受信品質DB166において、アンサンブル信号の受信品質が所定閾値を超えるDAB受信品質情報と関連付けられているリンクL1~L9を実線で示す。また、受信品質DB166において、アンサンブル信号の受信品質が所定閾値以下のDAB受信品質情報と関連付けられているリンクL10を破線で示す。以下、便宜上、アンサンブル信号の受信品質が所定閾値を超えるDAB受信品質情報と関連付けられているリンクを「受信品質OKリンク」と記し、アンサンブル信号の受信品質が所定閾値以下のDAB受信品質情報と関連付けられているリンクを「受信品質NGリンク」と記す。
【0067】
符号Aが付された矢印は、リンクL1を進行する車両の進行方向を示す。符号Bが付された矢印は、リンクL3を進行する車両の進行方向を示す。符号Cが付された矢印は、リンクL8を進行する車両の進行方向を示す。
図4の例において、車両がリンクL1を進行しているケース(符号P1および矢印A参照)を「進行例A」と記し、車両がリンクL3を進行しているケース(符号P2および矢印B参照)を「進行例B」と記し、車両がリンクL8を進行しているケース(符号P3および矢印C参照)を「進行例C」と記す。
【0068】
MPU110は、地図データ45が示す地図上での放送受信装置10の進行方向および進行速度を推定する(ステップS201)。この進行方向および進行速度は、例えば、MPU110がナビゲーション装置40より直近で取得した所定数(例えば5つ)の現在位置から推定される。具体的には、直近で取得した所定数の現在位置の時系列での並び順から、放送受信装置10の進行方向が推定される。また、所定の時間間隔で取得されたこれら所定数の現在位置のそれぞれの距離間隔から、放送受信装置10の進行速度が推定される。なお、直近で取得された所定数の現在位置に代えて、ジャイロセンサおよび車速センサの出力に基づいて、若しくは、GPS受信機42の出力に基づいて算出される速度及びこれらセンサの出力に基づいて、放送受信装置10の進行方向および進行速度が推定されてもよい。
【0069】
MPU110は、ステップS201にて推定された進行方向および進行速度に基づいて、放送受信装置10が現在位置から所定時間(例えば30秒)内に到達すると予測されるリンクを検出する(ステップS202)。
【0070】
例えば、進行例Aでは、放送受信装置10が現在位置から所定時間内に到達すると予測されるリンクとして、リンクL1~L6が検出される。また、進行例Bでは、放送受信装置10が現在位置から所定時間内に到達すると予測されるリンクとして、リンクL3~L10が検出される。また、進行例Cでは、放送受信装置10が現在位置から所定時間内に到達すると予測されるリンクとして、リンクL2~L8が検出される。
【0071】
MPU110は、受信品質DB166において、ステップS202にて検出された全てのリンクに対してDAB受信品質情報が関連付けて保存されているか否かを判定する(ステップS203)。
【0072】
ステップS202にて検出された全てのリンクに対してDAB受信品質情報が関連付けて保存されている場合(ステップS203:YES)、MPU110は、ステップS202にて検出されたリンク(すなわち、放送受信装置10が現在位置から所定時間内に到達すると予測されるリンク)の中に受信品質NGリンクが含まれているか否かを判定する(ステップS204)。
【0073】
ステップS204においてYES判定となる場合、すなわち、放送受信装置10が現在位置から所定時間内に到達すると予測されるリンクの中に受信品質NGリンクが含まれている場合、放送受信装置10が進行する経路によっては、アンサンブル信号の受信品質が所定時間内に所定閾値以下に低下する可能性が高い。
【0074】
そこで、受信品質NGリンクが含まれている場合(ステップS204:YES)、MPU110は、アンサンブル信号の受信品質が所定時間内に所定閾値以下に低下すると予測し、この受信品質の低下に備えて、RDSチューナ142の動作をDAB-RDSリンク待機動作に設定する(ステップS205)。
【0075】
一方、ステップS204においてNO判定となる場合、すなわち、放送受信装置10が現在位置から所定時間内に到達すると予測されるリンクの中に受信品質NGリンクが含まれていない(言い換えると、全て受信品質OKリンクである)場合、アンサンブル信号の受信品質が所定時間内に所定閾値以下に低下する可能性が低い。
【0076】
そこで、受信品質NGリンクが含まれていない場合(ステップS204:NO)、MPU110は、アンサンブル信号の受信品質が所定時間内に所定閾値以下に低下しないと予測し、現時点でのDAB-RDSリンク待機動作が不要であるとして、RDSチューナ142の動作をRDSリスト更新処理等の周波数非固定動作に設定する(ステップS206)。
【0077】
図4の進行例Bでは、放送受信装置10が現在位置から所定時間内に到達すると予測されるリンクの中に受信品質NGリンクであるリンクL10が含まれている。放送受信装置10がリンクL10に進むと、アンサンブル信号の受信品質が所定時間内に所定閾値以下に低下する可能性が高い。そのため、進行例Bでは、アンサンブル信号の受信品質の低下に備えて、RDSチューナ142の動作がDAB-RDSリンク待機動作に設定される。
【0078】
一方、
図4の進行例AおよびCでは、放送受信装置10が現在位置から所定時間内に到達すると予測されるリンクの中に受信品質NGリンクが含まれてない。そのため、放送受信装置10が何れの経路に進んでも、アンサンブル信号の受信品質が所定時間内に所定閾値以下に低下する可能性が低い。そのため、進行例AおよびCでは、現時点でのDAB-RDSリンク待機動作が不要であるとして、RDSチューナ142の動作がRDSリスト更新処理等の周波数非固定動作に設定される。
【0079】
このように、MPU110は、現在位置取得部にて取得された現在位置および保存部に保存された情報(受信品質DB166の情報)を用いて、デジタル放送信号の受信品質が所定閾値以下に低下するか否かを予測する予測部として動作する。附言するに、予測部として動作するMPU110は、地図データ45が示す地図上での放送受信装置10の進行方向および進行速度を推定し、推定された進行方向および進行速度ならびに現在位置取得部により取得された現在位置を用いて、デジタル放送信号の受信品質が所定閾値以下の情報と関連付けられた地点(ここでは受信品質NGリンク)に所定時間内に到達するか否かを判定し、所定時間内に到達すると判定される場合に、デジタル放送信号の受信品質が所定閾値以下に低下すると予測する。
【0080】
また、MPU110は、予測部による予測結果に応じて、アナログ放送信号に対する受信動作を、サイマル放送のアナログ放送信号とは別の周波数のアナログ放送信号の受信を必要とする動作(ここでは、周波数非固定動作)に設定する設定部として動作する。附言するに、設定部として動作するMPU110は、予測部によりデジタル放送信号の受信品質が所定閾値以下に低下すると予測されると、アナログ放送信号に対する受信動作を、サイマル放送のアナログ放送信号を受信する動作(ここでは、DAB-RDSリンク待機動作)に設定し、予測部により受信品質が所定閾値以下に低下しないと予測されると、アナログ放送信号に対する受信動作を、サイマル放送のアナログ放送信号とは別の周波数のアナログ放送信号の受信を必要とする動作(ここでは、周波数非固定動作)に設定する。
【0081】
本実施形態では、アンサンブル信号の受信品質が所定閾値以下に低下すると予測されると、アンサンブル信号の受信品質が実際に低下する前に、RDSチューナ142の動作がDAB-RDSリンク待機動作に設定される。そのため、アンサンブル信号の受信品質が実際に低下したときにDAB-RDSリンクを速やかに実行することができる。また、アンサンブル信号の受信品質が所定時間内に所定閾値以下に低下する可能性が低い状況では、DABサービスを再生できないという不調が起こりにくい。そこで、本実施形態では、RDSチューナ142の動作が周波数非固定動作に設定される。すなわち、本実施形態に係る放送受信装置10によれば、RDSサイマル放送とは別の周波数のRDS信号の受信を必要とする動作を許容しつつ、アンサンブル信号の受信品質の劣化時にDAB-RDSリンクを速やかに実行することができる。
【0082】
なお、ステップS202にて検出されたリンクの中に、DAB受信品質情報が関連付けられていないリンクが1つでも含まれている場合(ステップS203:NO)、DAB受信品質情報が関連付けられていないこのリンクが受信品質NGリンクである可能性がある。そこで、この場合、MPU110は、アンサンブル信号の受信品質が低下する可能性に備えて、RDSチューナ142の動作をDAB-RDSリンク待機動作に設定する(ステップS205)。
【0083】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施例等又は自明な実施例等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0084】
上記の実施形態では、周波数非固定動作としてRDSリスト更新処理を例示したが、本発明はこれに限らない。周波数非固定動作は、例えばRDS信号の中からTA(Traffic Announcement)フラグを検出したときにRDSチューナ142の受信周波数をTAフラグにより指定される周波数に変更することを許容する動作であってもよい。
【0085】
アンサンブル信号の受信品質が所定時間内に所定閾値以下に低下しないと予測される場合、MPU110は、TAフラグを検出すると、RDSチューナ142の受信周波数をTAフラグにより指定される周波数に変更する。これに対し、アンサンブル信号の受信品質が所定時間内に所定閾値以下に低下すると予測される場合、MPU110は、TAフラグが検出されたとしても、RDSチューナ142の動作をDAB-RDSリンク待機動作から変更しない。
【0086】
また、上記の実施形態では、放送受信装置10が現在位置から所定時間内に到達すると予測されるリンクの中に受信品質NGリンクが含まれている場合に、RDSチューナ142の動作をDAB-RDSリンク待機動作に設定しているが、本発明はこれに限らない。例えば、現在位置から進行方向沿いの所定距離以内に受信品質NGリンクが含まれている場合に、RDSチューナ142の動作をDAB-RDSリンク待機動作に設定してもよい。この実施形態の動作設定処理のフローチャートを
図5に示す。
【0087】
MPU110は、地図データ45が示す地図上での放送受信装置10の進行方向を推定する(ステップS301)。
【0088】
MPU110は、ステップS301にて推定された進行方向沿いの所定距離(例えば1km)以内のリンクを検出する(ステップS302)。例えば
図4の進行例Aでは、矢印A方向に進行する放送受信装置10がリンクに沿って所定距離移動したときに通るリンクが検出される。
【0089】
MPU110は、受信品質DB166において、ステップS302にて検出された全てのリンクに対してDAB受信品質情報が関連付けて保存されているか否かを判定する(ステップS303)。
【0090】
ステップS302にて検出された全てのリンクに対してDAB受信品質情報が関連付けて保存されている場合(ステップS303:YES)、MPU110は、ステップS302にて検出されたリンク(すなわち、進行方向沿いの所定距離以内のリンク)の中に受信品質NGリンクが含まれているか否かを判定する(ステップS304)。
【0091】
ステップS304においてYES判定となる場合、すなわち、現在位置から進行方向沿いの所定距離以内のリンクの中に受信品質NGリンクが含まれている場合、放送受信装置10が進行する経路によっては、アンサンブル信号の受信品質が程なく所定閾値以下に低下する可能性が高い。
【0092】
そこで、受信品質NGリンクが含まれている場合(ステップS304:YES)、MPU110は、アンサンブル信号の受信品質が所定閾値以下に低下すると予測し、この受信品質の低下に備えて、RDSチューナ142の動作をDAB-RDSリンク待機動作に設定する(ステップS305)。
【0093】
一方、ステップS304においてNO判定となる場合、すなわち、現在位置から進行方向沿いの所定距離以内のリンクの中に受信品質NGリンクが含まれていない(言い換えると、全て受信品質OKリンクである)場合、アンサンブル信号の受信品質が所定閾値以下に低下する可能性が低い。
【0094】
そこで、受信品質NGリンクが含まれていない場合(ステップS304:NO)、MPU110は、アンサンブル信号の受信品質が所定閾値以下に低下しないと予測し、現時点でのDAB-RDSリンク待機動作が不要であるとして、RDSチューナ142の動作をRDSリスト更新処理等の周波数非固定動作に設定する(ステップS306)。
【0095】
このように、予測部として動作するMPU110は、地図データ45が示す地図上での放送受信装置10の進行方向を推定し、推定された進行方向および取得部現在位置取得部により取得された現在位置を用いて、デジタル放送信号の受信品質が所定閾値以下の情報と関連付けられた地点(ここでは受信品質NGリンク)が、現在位置から進行方向沿いの所定距離以内に存在するか否かを判定し、所定距離以内に存在すると判定される場合に、デジタル放送信号の受信品質が前記所定閾値以下に低下すると予測する。
【0096】
本例でも、アンサンブル信号の受信品質が所定閾値以下に低下する可能性が高い状況になると、アンサンブル信号の受信品質が実際に低下する前に、RDSチューナ142の動作がDAB-RDSリンク待機動作に設定される。そのため、アンサンブル信号の受信品質が実際に低下したときにDAB-RDSリンクを速やかに実行することができる。また、アンサンブル信号の受信品質が所定閾値以下に低下する可能性が低い状況では、RDSチューナ142の動作が周波数非固定動作に設定される。すなわち、本例でも、RDSサイマル放送とは別の周波数のRDS信号の受信を必要とする動作を許容しつつ、アンサンブル信号の受信品質の劣化時にDAB-RDSリンクを速やかに実行することができる。
【0097】
なお、ステップS302にて検出されたリンクの中に、DAB受信品質情報が関連付けられていないリンクが1つでも含まれている場合(ステップS303:NO)、
図3の例と同様に、RDSチューナ142の動作がDAB-RDSリンク待機動作に設定される(ステップS305)。
【符号の説明】
【0098】
1 :放送受信システム
10 :放送受信装置
20 :オーディオアンプ
30 :スピーカ
40 :ナビゲーション装置
41 :ナビゲーションECU
42 :GPS受信機
43 :車両情報取得部
44 :メモリ
45 :地図データ
50 :HMI
110 :MPU
120 :通信インタフェース
130 :DAB信号処理回路
131 :アンテナ
132 :DABチューナ
133 :DABデコーダ
134 :信号検出部
140 :RDS信号処理回路
141 :アンテナ
142 :RDSチューナ
143 :信号検出部
150 :セレクタ
160 :フラッシュメモリ
162 :ステーションリスト
164 :RDSリスト
166 :受信品質DB