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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045146
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/00 20160101AFI20220311BHJP
   B60K 6/442 20071001ALI20220311BHJP
   B60W 20/20 20160101ALI20220311BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20220311BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20220311BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20220311BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20220311BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20220311BHJP
   B60K 6/52 20071001ALI20220311BHJP
   F16H 3/089 20060101ALI20220311BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20220311BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20220311BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20220311BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
B60W20/00 900
B60K6/442 ZHV
B60W20/20
B60W10/10 900
B60W10/08 900
B60K6/547
B60W10/06 900
B60K6/445
B60K6/52
F16H3/089
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/10
B60L15/20 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150664
(22)【出願日】2020-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】加藤 光彦
(72)【発明者】
【氏名】高橋 涼太
【テーマコード(参考)】
3D202
3J528
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA02
3D202AA03
3D202BB01
3D202BB14
3D202BB15
3D202BB33
3D202BB53
3D202CC73
3D202FF02
3D202FF08
3D202FF15
3J528EA21
3J528EB62
3J528EB63
3J528FB05
3J528FC32
3J528FC42
3J528FC47
3J528GA01
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA04
5H125BE05
5H125CA02
5H125CA08
5H125CB02
5H125DD11
(57)【要約】
【課題】アップシフトを伴う動作モードの切り替えの際に、第2回転電機の駆動力を十分に確保することが容易な車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】制御装置は、変速機が第1変速段を形成し、少なくとも内燃機関が第1出力部材に駆動力を伝達する第1モードから、変速機が第1変速段よりも変速比が小さい第2変速段を形成し、少なくとも内燃機関が第1出力部材に駆動力を伝達する第2モードに、動作モードを切り替える場合に、第1モードにて第2回転電機の駆動力を増加させた後、変速機の状態を、第1変速段を形成した状態から、複数の変速段のいずれも形成しないニュートラル状態を経て、第2変速段を形成した状態とし、第2モードにて第2回転電機の駆動力を減少させる変速制御を実行し、変速制御では、内燃機関の駆動力により第1回転電機に発電を行わせ、当該発電により得られた電力の少なくとも一部を第2回転電機に供給する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
第1車輪に駆動連結される第1出力部材と、
前記入力部材に駆動連結された第1回転電機と、
前記入力部材に駆動連結された変速入力部材、及び前記第1出力部材に駆動連結された変速出力部材を備えた変速機と、
前記変速機を介することなく前記第1出力部材に駆動連結され、又は、前記第1車輪とは異なる第2車輪に駆動連結される第2出力部材に、前記第1出力部材を介することなく駆動連結された第2回転電機と、
前記内燃機関、前記第1回転電機、前記第2回転電機、及び前記変速機を制御する制御装置と、を備え、
前記変速機は、第1変速段と、当該第1変速段よりも変速比が小さい第2変速段と、を含む複数の変速段を形成可能に構成され、当該複数の変速段のうちの形成された変速段に応じた変速比で前記変速入力部材の回転を変速して、前記変速出力部材に伝達し、
前記制御装置は、
前記変速機が前記第1変速段を形成し、少なくとも前記内燃機関が前記第1出力部材に駆動力を伝達する第1モードから、前記変速機が前記第2変速段を形成し、少なくとも前記内燃機関が前記第1出力部材に駆動力を伝達する第2モードに、動作モードを切り替える場合に、
前記第1モードにて前記第2回転電機の駆動力を増加させた後、前記変速機の状態を、前記第1変速段を形成した状態から、複数の前記変速段のいずれも形成しないニュートラル状態を経て、前記第2変速段を形成した状態とし、前記第2モードにて前記第2回転電機の駆動力を減少させる変速制御を実行し、
前記変速制御では、前記内燃機関の駆動力により前記第1回転電機に発電を行わせ、当該発電により得られた電力の少なくとも一部を前記第2回転電機に供給する、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記変速制御において、前記変速機が前記ニュートラル状態である間、前記第1回転電機の回生トルクにより前記変速入力部材の回転速度を低下させる、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記変速制御において、前記第1回転電機の回転速度を制御することにより、前記変速入力部材の回転速度を、前記第2変速段に対応する回転速度に同期させる、請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記変速制御において、前記変速入力部材の回転速度の低下に応じて、前記内燃機関の駆動力を増加させる、請求項2又は3に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記第1回転電機及び前記第2回転電機と電気的に接続された蓄電装置を更に備え、
前記制御装置は、前記変速制御において、前記蓄電装置に蓄えられた電力の少なくとも一部を前記第2回転電機に供給する、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、複数の変速段を形成可能に構成された変速機と、第1回転電機及び第2回転電機と、それらを制御する制御装置と、を備えた車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような車両用駆動装置の一例が、下記の特許文献1に開示されている。以下、「背景技術」及び「発明が解決しようとする課題」の説明では、特許文献1における符号を括弧内に引用する。
【0003】
特許文献1の車両用駆動装置は、変速機(1)が第1変速段を形成し、少なくとも内燃機関(ICE)が出力部材(18)に駆動力を伝達する第1モードと、変速機(1)が第1変速段よりも変速比が小さい第2変速段を形成し、少なくとも内燃機関(ICE)が出力部材(18)に駆動力を伝達する第2モードと、を含む複数の動作モードを備えている。この車両用駆動装置の制御装置は、動作モードを第1モードから第2モードに変更する場合、つまり、アップシフトを伴う動作モードの切り替えを行う場合に、第1モードにて第2回転電機(MG1)の駆動力を増加させた後、変速機(1)の変速段を第1変速段から第2変速段に切り替えている(特許文献1の図11等参照)。
【0004】
これにより、上記の変速の際に、内燃機関(ICE)の駆動力が車輪(19)に伝達されなくなった場合であっても、第2回転電機(MG1)の増加後の駆動力を車輪(19)に伝達させることができる。こうして、アップシフトを伴う動作モードの切り替えの際に、内燃機関(ICE)と車輪(19)との間の動力伝達経路が遮断されることに起因して運転者が感じる違和感を低減することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-1511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1の車両用駆動装置では、第2回転電機(MG1)の駆動力を増加させるためには、当該駆動力の増加に必要な電力を蓄電装置(3)から第2回転電機(MG1)に供給する必要がある。しかし、充電量が低下している場合等、蓄電装置(3)の状態によっては、第2回転電機(MG1)に電力を十分に供給できず、第2回転電機(MG1)が駆動力を十分に増加させることができない場合があった。
【0007】
そこで、アップシフトを伴う動作モードの切り替えの際に、第2回転電機の駆動力を十分に確保することが容易な車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記に鑑みた、車両用駆動装置の特徴構成は、
内燃機関に駆動連結される入力部材と、
第1車輪に駆動連結される第1出力部材と、
前記入力部材に駆動連結された第1回転電機と、
前記入力部材に駆動連結された変速入力部材、及び前記第1出力部材に駆動連結された変速出力部材を備えた変速機と、
前記変速機を介することなく前記第1出力部材に駆動連結され、又は、前記第1車輪とは異なる第2車輪に駆動連結される第2出力部材に、前記第1出力部材を介することなく駆動連結された第2回転電機と、
前記内燃機関、前記第1回転電機、前記第2回転電機、及び前記変速機を制御する制御装置と、を備え、
前記変速機は、第1変速段と、当該第1変速段よりも変速比が小さい第2変速段と、を含む複数の変速段を形成可能に構成され、当該複数の変速段のうちの形成された変速段に応じた変速比で前記変速入力部材の回転を変速して、前記変速出力部材に伝達し、
前記制御装置は、
前記変速機が前記第1変速段を形成し、少なくとも前記内燃機関が前記第1出力部材に駆動力を伝達する第1モードから、前記変速機が前記第2変速段を形成し、少なくとも前記内燃機関が前記第1出力部材に駆動力を伝達する第2モードに、動作モードを切り替える場合に、
前記第1モードにて前記第2回転電機の駆動力を増加させた後、前記変速機の状態を、前記第1変速段を形成した状態から、複数の前記変速段のいずれも形成しないニュートラル状態を経て、前記第2変速段を形成した状態とし、前記第2モードにて前記第2回転電機の駆動力を減少させる変速制御を実行し、
前記変速制御では、前記内燃機関の駆動力により前記第1回転電機に発電を行わせ、当該発電により得られた電力の少なくとも一部を前記第2回転電機に供給する点にある。
【0009】
この特徴構成によれば、動作モードを第1モードから第2モードに変更する場合に、第1モードにて第2回転電機の駆動力を増加させた後、変速機の状態を、第1変速段を形成した状態からニュートラル状態を経て第2変速段を形成した状態とし、第2モードにて第2回転電機の駆動力を減少させる変速制御を実行する。これにより、変速機がニュートラル状態となることに伴って、内燃機関の駆動力が第1車輪に伝達されなくなった場合であっても、第2回転電機の増加後の駆動力を第1車輪又は第2車輪に伝達させることができる。したがって、アップシフトを伴う動作モードの切り替えの際に、内燃機関と第1車輪との間の動力伝達経路が遮断されることに起因して運転者が感じる違和感を低減することができる。
更に、本特徴構成によれば、変速制御において、内燃機関の駆動力により第1回転電機に発電を行わせ、当該発電により得られた電力の少なくとも一部を第2回転電機に供給する。これにより、アップシフトを伴う動作モードの切り替えの際に、第2回転電機に十分な電力を供給し、第2回転電機の駆動力を十分に確保することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施形態に係る車両用駆動装置の軸方向に沿う断面図
図2】第1の実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
図3】第1の実施形態に係る車両用駆動装置における要部拡大断面図
図4】第1の実施形態に係る車両用駆動装置の制御ブロック図
図5】第1の実施形態に係る車両用駆動装置の各動作モードにおける各要素の状態を示す図
図6】制御装置による変速制御を示すフローチャート
図7】制御装置による変速制御の一例を示すタイムチャート
図8】第2の実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
図9】第2の実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
図10】第2の実施形態に係る車両用駆動装置の各動作モードにおける係合装置の状態を示す図
図11】第3の実施形態に係る車両用駆動装置のスケルトン図
図12】第3の実施形態に係る車両用駆動装置の各動作モードにおける各要素の状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.第1の実施形態
以下では、第1の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。図1及び図2に示すように、車両用駆動装置100は、内燃機関EGに駆動連結される入力部材Iと、第1車輪W1に駆動連結される第1出力部材O1と、入力部材Iに駆動連結された変速入力部材Ti、及び第1出力部材O1に駆動連結された変速出力部材Toを備えた変速機TMと、第1回転電機MG1と、第2回転電機MG2と、を備えている。本実施形態では、車両用駆動装置100は、アイドラギヤIGと、第1差動歯車機構4と、第1カウンタギヤ機構6と、を更に備えている。また、本実施形態では、車両用駆動装置100を構成する上記の要素は、ケースCS(図1参照)に収容されている。
【0012】
ここで、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。
【0013】
本実施形態では、入力部材I、及び変速機TMの変速入力部材Tiが、それらの回転軸心としての第1軸X1上に配置されている。また、変速機TMの変速出力部材Toが、その回転軸心としての第2軸X2上に配置されている。また、第1回転電機MG1が、その回転軸心としての第3軸X3上に配置されている。また、アイドラギヤIGが、その回転軸心としての第4軸X4上に配置されている。また、第2回転電機MG2が、その回転軸心としての第5軸X5上に配置されている。また、第1カウンタギヤ機構6が、その回転軸心としての第6軸X6上に配置されている。また、第1差動歯車機構4が、その回転軸心としての第7軸X7上に配置されている。
【0014】
本例では、上記の軸X1~X7は、互いに平行に配置されている。以下の説明では、上記の軸X1~X7に平行な方向を、車両用駆動装置100の「軸方向L」とする。そして、軸方向Lにおいて、内燃機関EGに対して入力部材Iが配置される側を「軸方向第1側L1」とし、その反対側を「軸方向第2側L2」とする。また、上記の軸X1~X7のそれぞれに直交する方向を、各軸を基準とした「径方向R」とする。なお、どの軸を基準とするかを区別する必要がない場合や、どの軸を基準とするかが明らかである場合には、単に「径方向R」と記す場合がある。
【0015】
本実施形態では、入力部材Iは、軸方向Lに沿って延在する入力軸3である。入力軸3は、伝達されるトルクの変動を減衰するダンパ装置DPを介して、内燃機関EGの出力軸Eoに駆動連結されている。内燃機関EGは、燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す原動機(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等)である。
【0016】
第1差動歯車機構4は、当該第1差動歯車機構4の入力要素である第1差動入力ギヤ41を備えている。第1差動歯車機構4は、第1差動入力ギヤ41の回転を、それぞれが第1車輪W1に駆動連結された一対の第1ドライブシャフトDS1に分配する。本実施形態では、第1差動入力ギヤ41が第1出力部材O1として機能する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態では、第1差動歯車機構4は、上記の第1差動入力ギヤ41に加えて、差動ケース42と、一対のピニオンギヤ43と、一対のサイドギヤ44と、を備えている。ここでは、一対のピニオンギヤ43、及び一対のサイドギヤ44は、いずれも傘歯車である。
【0018】
差動ケース42は、第1差動入力ギヤ41と一体的に回転するように連結されている。具体的には、差動ケース42から径方向Rの外側に第1差動入力ギヤ41が突出するように、それらが一体的に連結されている。差動ケース42は、一対のピニオンギヤ43と、一対のサイドギヤ44と、を収容する中空の部材である。
【0019】
一対のピニオンギヤ43は、第7軸X7を基準とした径方向Rに沿って互いに間隔を空けて対向するように配置されている。そして、一対のピニオンギヤ43のそれぞれは、差動ケース42と一体的に回転するように支持されたピニオンシャフト43aに取り付けられている。一対のピニオンギヤ43のそれぞれは、ピニオンシャフト43aを中心として回転(自転)自在、かつ、第7軸X7を中心として回転(公転)自在に構成されている。
【0020】
一対のサイドギヤ44は、第1差動歯車機構4における駆動力の分配後の回転要素である。一対のサイドギヤ44は、互いに軸方向Lに間隔を空けて、一対のピニオンシャフト43aを挟んで対向するように配置されている。一対のサイドギヤ44は、一対のピニオンギヤ43に噛み合っている。一対のサイドギヤ44のそれぞれは、第1ドライブシャフトDS1と一体的に回転するように連結されている。
【0021】
変速機TMは、第1変速段と、当該第1変速段よりも変速比が小さい第2変速段と、を含む複数の変速段を形成可能に構成されている。そして、変速機TMは、複数の変速段のうちの形成された変速段に応じた変速比で変速入力部材Tiの回転を変速して、変速出力部材Toに伝達する。
【0022】
図2に示すように、本実施形態では、変速機TMは、第1軸部材1及び第2軸部材2と、第1ギヤG1~第10ギヤG10と、を備えている。
【0023】
第1軸部材1は、入力部材Iとの間の動力伝達経路の変速比が一定となるように、入力部材Iに駆動連結されている。つまり、第1軸部材1と入力部材Iとの間の動力伝達経路には、当該動力伝達経路の変速比を切り替える要素(例えば、有段変速機や無段変速機等)が設けられていない。また、本実施形態では、第1軸部材1と入力部材I(ここでは、入力軸3)との間には、クラッチ等の係合要素も設けられていない。つまり、第1軸部材1は、入力部材I(ここでは、入力軸3)と一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、第1軸部材1は、入力軸3と一体的に形成されている。本実施形態では、第1軸部材1は、第1軸X1上に配置されている。
【0024】
第2軸部材2は、第1出力部材O1との間の動力伝達経路の変速比が一定となるように、第1出力部材O1に駆動連結されている。つまり、第2軸部材2と第1出力部材O1との間の動力伝達経路には、当該動力伝達経路の変速比を切り替える要素(例えば、有段変速機や無段変速機等)が設けられていない。また、本実施形態では、第2軸部材2と第1出力部材O1(ここでは、第1差動入力ギヤ41)との間には、クラッチ等の係合要素も設けられていない。本実施形態では、第2軸部材2は、第2軸X2上に配置されている。
【0025】
第1ギヤG1と第2ギヤG2とは、互いに噛み合っている。本実施形態では、第1ギヤG1は、第1軸部材1に対して相対的に回転するように支持されている。そして、第2ギヤG2は、第2軸部材2に対して相対的に回転するように支持されている。
【0026】
第3ギヤG3と第4ギヤG4とは、互いに噛み合っている。本実施形態では、第3ギヤG3は、第1軸部材1に対して相対的に回転するように支持されている。そして、第4ギヤG4は、第2軸部材2と一体的に回転するように連結されている。また、本実施形態では、第3ギヤG3は、第1ギヤG1よりも軸方向第2側L2に配置されている。そして、第4ギヤG4は、第2ギヤG2よりも軸方向第2側L2に配置されている。
【0027】
第5ギヤG5と第6ギヤG6とは、互いに噛み合っている。本実施形態では、第5ギヤG5は、第1軸部材1と一体的に回転するように連結されている。そして、第6ギヤG6は、第2軸部材2に対して相対的に回転するように支持されている。また、本実施形態では、第5ギヤG5は、第1ギヤG1よりも軸方向第1側L1に配置されている。そして、第6ギヤG6は、第2ギヤG2よりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0028】
第7ギヤG7と第8ギヤG8とは、互いに噛み合っている。本実施形態では、第7ギヤG7は、第1軸部材1と一体的に回転するように連結されている。そして、第8ギヤG8は、第2軸部材2に対して相対的に回転するように支持されている。また、本実施形態では、第7ギヤG7は、第3ギヤG3よりも軸方向第2側L2に配置されている。そして、第8ギヤG8は、第4ギヤG4よりも軸方向第2側L2に配置されている。
【0029】
第9ギヤG9と第10ギヤG10とは、互いに噛み合っている。本実施形態では、第9ギヤG9は、第1軸部材1と一体的に回転するように連結されている。そして、第10ギヤG10は、第2軸部材2に対して相対的に回転するように支持されている。また、本実施形態では、第9ギヤG9は、第7ギヤG7よりも軸方向第2側L2に配置されている。そして、第10ギヤG10は、第8ギヤG8よりも軸方向第2側L2に配置されている。
【0030】
第1ギヤG1と第2ギヤG2との間の動力伝達経路の変速比と、第3ギヤG3と第4ギヤG4との間の動力伝達経路の変速比と、第5ギヤG5と第6ギヤG6との間の動力伝達経路の変速比と、第7ギヤG7と第8ギヤG8との間の動力伝達経路の変速比と、第9ギヤG9と第10ギヤG10との間の動力伝達経路の変速比とは、互いに異なっている。つまり、第1ギヤG1と、第3ギヤG3と、第5ギヤG5と、第7ギヤG7と、第9ギヤG9との歯数が互いに異なっている。そして、第2ギヤG2と、第4ギヤG4と、第6ギヤG6と、第8ギヤG8と、第10ギヤG10との歯数が互いに異なっている。本実施形態では、第9ギヤG9、第7ギヤG7、第5ギヤG5、第1ギヤG1、第3ギヤG3の順に歯数が多くなっている。そして、第10ギヤG10、第8ギヤG8、第6ギヤG6、第2ギヤG2、第4ギヤG4の順に歯数が少なくなっている。そのため、本実施形態では、第10ギヤG10に対する第9ギヤG9の歯数比、第8ギヤG8に対する第7ギヤG7の歯数比、第6ギヤG6に対する第5ギヤG5の歯数比、第2ギヤG2に対する第1ギヤG1の歯数比、第4ギヤG4に対する第3ギヤG3の歯数比の順に小さくなっている。
【0031】
本実施形態では、第2軸部材2と同軸に、第1差動歯車機構4の第1差動入力ギヤ41に噛み合う差動用駆動ギヤDGが設けられている。本実施形態では、差動用駆動ギヤDGは、第2軸部材2と一体的に回転するように連結されている。図1に示す例では、差動用駆動ギヤDGは、第2軸部材2と一体的に形成されている。また、本実施形態では、差動用駆動ギヤDGは、第10ギヤG10よりも軸方向第2側L2に配置されている。
【0032】
本実施形態では、第1ギヤG1、第3ギヤG3、第5ギヤG5、第7ギヤG7、及び第9ギヤG9のいずれかが、変速入力部材Tiに相当する。また、差動用駆動ギヤDGが、変速出力部材Toに相当する。
【0033】
第1回転電機MG1は、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。具体的には、第1回転電機MG1は、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置BT(図4参照)と電気的に接続されている。そして、第1回転電機MG1は、蓄電装置BTに蓄えられた電力により力行して駆動力を発生する。また、第1回転電機MG1は、内燃機関EGの駆動力、又は第1出力部材O1の側から伝達される駆動力により発電を行って蓄電装置BTを充電する。
【0034】
第1回転電機MG1は、入力部材Iに駆動連結されている。第1回転電機MG1は、第1ステータST1と、第1ロータRT1と、を備えている。第1ステータST1は、非回転部材(ここでは、ケースCS)に固定された第1ステータコアSTC1を有している。第1ロータRT1は、第1ステータST1に対して回転可能な第1ロータコアRTC1を有している。
【0035】
本実施形態では、第1回転電機MG1は、インナロータ型の回転電機であるため、第1ステータコアSTC1よりも径方向Rの内側に第1ロータコアRTC1が配置されている。
【0036】
また、本実施形態では、第1回転電機MG1は回転界磁型の回転電機である。そのため、第1ステータコアSTC1には、当該第1ステータコアSTC1から軸方向Lの両側(軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2)にそれぞれ突出するコイルエンド部が形成されるように第1ステータコイルC1が巻装されている(図1参照)。また、第1ロータコアRTC1には、永久磁石(図示を省略)が設けられている。
【0037】
本実施形態では、第1ロータRT1には、軸方向Lに沿って延在するように形成された第1ロータ軸RS1を介して、第1ロータギヤRG1が一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第1ロータギヤRG1は、第1ロータRT1よりも軸方向第1側L1に配置されている。図1に示す例では、第1ロータ軸RS1は、第1ロータコアRTC1から軸方向Lの両側(軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2)に突出するように形成されている。そして、第1ロータ軸RS1における第1ロータコアRTC1から軸方向第1側L1に突出した部分において、第1ロータギヤRG1が第1ロータ軸RS1と一体的に形成されている。
【0038】
本実施形態では、第1ロータギヤRG1は、アイドラギヤIGを介して、第1ギヤG1と駆動連結されている。具体的には、第1ロータギヤRG1は、第1ギヤG1に噛み合うアイドラギヤIGの周方向における第1ギヤG1とは異なる位置で、アイドラギヤIGに噛み合っている。ここで、後述するように、変速機TMに特定の変速段が形成された場合に、第1ギヤG1は、入力部材Iと一体的に回転するように連結された第1軸部材1と一体的に回転する。このように、第1回転電機MG1は、入力部材Iに駆動連結されている。
【0039】
第2回転電機MG2は、第2ステータST2と、第2ロータRT2と、を備えている。第2ステータST2は、非回転部材(ここでは、ケースCS)に固定された第2ステータコアSTC2を有している。第2ロータRT2は、第2ステータST2に対して回転可能な第2ロータコアRTC2を有している。
【0040】
本実施形態では、第2回転電機MG2は、インナロータ型の回転電機であるため、第2ステータコアSTC2よりも径方向Rの内側に第2ロータコアRTC2が配置されている。
【0041】
また、本実施形態では、第2回転電機MG2は回転界磁型の回転電機である。そのため、第2ステータコアSTC2には、当該第2ステータコアSTC2から軸方向Lの両側(軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2)にそれぞれ突出するコイルエンド部が形成されるように第2ステータコイルC2が巻装されている(図1参照)。また、第2ロータコアRTC2には、永久磁石(図示を省略)が設けられている。
【0042】
本実施形態では、第2ロータRT2には、軸方向Lに沿って延在するように形成された第2ロータ軸RS2を介して、第2ロータギヤRG2が一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第2ロータギヤRG2は、第2ロータRT2よりも軸方向第2側L2に配置されている。図1に示す例では、第2ロータ軸RS2は、第2ロータコアRTC2から軸方向Lの両側(軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2)に突出するように第2ロータコアRTC2に連結された第1部分と、当該第1部分における第2ロータコアRTC2から軸方向第2側L2に突出した部分と一体的に回転するように連結された筒状の第2部分と、を有している。そして、第2ロータギヤRG2が、第2ロータ軸RS2の第2部分から径方向Rの外側に突出するように、当該第2部分と一体的に形成されている。
【0043】
本実施形態では、第2ロータギヤRG2は、第1カウンタギヤ機構6を介して、第1出力部材O1と駆動連結されている。このように、本実施形態では、第2回転電機MG2は、変速機TMを介することなく、第1出力部材O1に駆動連結されている。
【0044】
第1カウンタギヤ機構6は、第2ロータギヤRG2に噛み合う第1カウンタ入力ギヤ61と、第1出力部材O1としての第1差動入力ギヤ41に噛み合う第1カウンタ出力ギヤ62と、これらのギヤ61,62を一体的に回転するように連結する第1カウンタ軸63と、を備えている。
【0045】
本実施形態では、第1カウンタ出力ギヤ62は、第1カウンタ入力ギヤ61よりも軸方向第1側L1に配置されている。また、第1カウンタ出力ギヤ62は、第1カウンタ入力ギヤ61よりも小径に形成されている。
【0046】
図3に示すように、本実施形態では、変速機TMは、第1係合装置51~第6係合装置56を更に備えている。
【0047】
第1係合装置51は、第1軸部材1と第1ギヤG1との間の動力伝達を断接するように構成されている。本実施形態では、第1係合装置51は、第1軸部材1の径方向Rの外側を覆うように形成された筒状の第1切替部材S1によって、係合状態と解放状態とを切り替え可能に構成された噛み合い係合装置(ドグクラッチ)である。第1切替部材S1の内周面には、第1切替歯S1aが形成されている。第1切替歯S1aは、第1係合歯51aに係合するように形成されている。第1係合歯51aは、第1ギヤG1と一体的に回転するように、第1ギヤG1に対して軸方向第2側L2に隣接して配置されている。第1切替歯S1aと第1係合歯51aとは、互いに軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合するように形成されている。そのため、第1切替部材S1が第1軸部材1に対して軸方向Lに相対移動して、第1切替歯S1aと第1係合歯51aとが互い係合することで第1係合装置51が係合状態となり、第1切替歯S1aと第1係合歯51aとが互いに軸方向Lに離間することで第1係合装置51が解放状態となる。
【0048】
第2係合装置52は、第2軸部材2と第2ギヤG2との間の動力伝達を断接するように構成されている。本実施形態では、第2係合装置52は、第2軸部材2の径方向Rの外側を覆うように形成された筒状の第2切替部材S2によって、係合状態と解放状態とを切り替え可能に構成された噛み合い係合装置(ドグクラッチ)である。第2切替部材S2の内周面には、第2切替歯S2aが形成されている。第2切替歯S2aは、第2係合歯52aに係合するように形成されている。第2係合歯52aは、第2ギヤG2と一体的に回転するように、第2ギヤG2に対して軸方向第1側L1に隣接して配置されている。第2切替歯S2aと第2係合歯52aとは、互いに軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合するように形成されている。そのため、第2切替部材S2が第2軸部材2に対して軸方向Lに相対移動して、第2切替歯S2aと第2係合歯52aとが互い係合することで第2係合装置52が係合状態となり、第2切替歯S2aと第2係合歯52aとが互いに軸方向Lに離間することで第2係合装置52が解放状態となる。
【0049】
第3係合装置53は、第1軸部材1と第3ギヤG3との間の動力伝達を断接するように構成されている。本実施形態では、第3係合装置53は、第1切替部材S1によって、係合状態と解放状態とを切り替え可能に構成された噛み合い係合装置(ドグクラッチ)である。第1切替部材S1の第1切替歯S1aは、上記の第1係合歯51aに加えて、第3係合歯53aにも係合可能に形成されている。第3係合歯53aは、第3ギヤG3と一体的に回転するように、第3ギヤG3に対して軸方向第1側L1に隣接して配置されている。第1切替歯S1aと第3係合歯53aとは、互いに軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合するように形成されている。そのため、第1切替部材S1が第1軸部材1に対して軸方向Lに相対移動して、第1切替歯S1aと第3係合歯53aとが互い係合することで第3係合装置53が係合状態となり、第1切替歯S1aと第3係合歯53aとが互いに軸方向Lに離間することで第3係合装置53が解放状態となる。
【0050】
このように、本実施形態では、第1係合装置51と第3係合装置53とで、第1切替部材S1が共用されている。そのため、本実施形態では、第1係合装置51と第3係合装置53とが、第1切替部材S1を備えた第1噛み合い式係合装置DC1を構成している。第1噛み合い式係合装置DC1では、第1切替歯S1aと第1係合歯51aとが互い係合して第1係合装置51が係合状態となると、第1切替歯S1aと第3係合歯53aとが互いに軸方向Lに離間して第3係合装置53が解放状態となる。一方、第1切替歯S1aと第3係合歯53aとが互い係合して第3係合装置53が係合状態となると、第1切替歯S1aと第1係合歯51aとが互いに軸方向Lに離間して第1係合装置51が解放状態となる。また、第1噛み合い式係合装置DC1は、第1係合装置51及び第3係合装置53の双方を解放状態とすることができるように構成されている。
【0051】
第4係合装置54は、第2軸部材2と第6ギヤG6との間の動力伝達を断接するように構成されている。本実施形態では、第4係合装置54は、第2切替部材S2によって、係合状態と解放状態とを切り替え可能に構成された噛み合い係合装置(ドグクラッチ)である。第2切替部材S2の第2切替歯S2aは、上記の第2係合歯52aに加えて、第4係合歯54aにも係合可能に形成されている。第4係合歯54aは、第6ギヤG6と一体的に回転するように、第6ギヤG6に対して軸方向第2側L2に隣接して配置されている。第2切替歯S2aと第4係合歯54aとは、互いに軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合するように形成されている。そのため、第2切替部材S2が第2軸部材2に対して軸方向Lに相対移動して、第2切替歯S2aと第4係合歯54aとが互い係合することで第4係合装置54が係合状態となり、第2切替歯S2aと第4係合歯54aとが互いに軸方向Lに離間することで第4係合装置54が解放状態となる。
【0052】
このように、本実施形態では、第2係合装置52と第4係合装置54とで、第2切替部材S2が共用されている。そのため、本実施形態では、第2係合装置52と第4係合装置54とが、第2切替部材S2を備えた第2噛み合い式係合装置DC2を構成している。第2噛み合い式係合装置DC2では、第2切替歯S2aと第2係合歯52aとが互い係合して第2係合装置52が係合状態となると、第2切替歯S2aと第4係合歯54aとが互いに軸方向Lに離間して第4係合装置54が解放状態となる。一方、第2切替歯S2aと第4係合歯54aとが互い係合して第4係合装置54が係合状態となると、第2切替歯S2aと第2係合歯52aとが互いに軸方向Lに離間して第2係合装置52が解放状態となる。また、第2噛み合い式係合装置DC2は、第2係合装置52及び第4係合装置54の双方を解放状態とすることができるように構成されている。
【0053】
第5係合装置55は、第2軸部材2と第8ギヤG8との間の動力伝達を断接するように構成されている。本実施形態では、第2係合装置52は、第2軸部材2の径方向Rの外側を覆うように形成された筒状の第3切替部材S3によって、係合状態と解放状態とを切り替え可能に構成された噛み合い係合装置(ドグクラッチ)である。第3切替部材S3の内周面には、第3切替歯S3aが形成されている。第3切替歯S3aは、第5係合歯55aに係合するように形成されている。第5係合歯55aは、第8ギヤG8と一体的に回転するように、第8ギヤG8に対して軸方向第2側L2に隣接して配置されている。第3切替歯S3aと第5係合歯55aとは、互いに軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合するように形成されている。そのため、第3切替部材S3が第2軸部材2に対して軸方向Lに相対移動して、第3切替歯S3aと第5係合歯55aとが互い係合することで第5係合装置55が係合状態となり、第3切替歯S3aと第5係合歯55aとが互いに軸方向Lに離間することで第5係合装置55が解放状態となる。
【0054】
第6係合装置56は、第2軸部材2と第10ギヤG10との間の動力伝達を断接するように構成されている。本実施形態では、第6係合装置56は、第3切替部材S3によって、係合状態と解放状態とを切り替え可能に構成された噛み合い係合装置(ドグクラッチ)である。第3切替部材S3の第3切替歯S3aは、上記の第5係合歯55aに加えて、第6係合歯56aにも係合可能に形成されている。第6係合歯56aは、第10ギヤG10と一体的に回転するように、第10ギヤG10に対して軸方向第1側L1に隣接して配置されている。第3切替歯S3aと第6係合歯56aとは、互いに軸方向Lに相対移動可能、かつ、周方向に相対回転不能に係合するように形成されている。そのため、第3切替部材S3が第2軸部材2に対して軸方向Lに相対移動して、第3切替歯S3aと第6係合歯56aとが互い係合することで第6係合装置56が係合状態となり、第3切替歯S3aと第6係合歯56aとが互いに軸方向Lに離間することで第6係合装置56が解放状態となる。
【0055】
このように、本実施形態では、第5係合装置55と第6係合装置56とで、第3切替部材S3が共用されている。そのため、本実施形態では、第5係合装置55と第6係合装置56とが、第3切替部材S3を備えた第3噛み合い式係合装置DC3を構成している。第3噛み合い式係合装置DC3では、第3切替歯S3aと第5係合歯55aとが互い係合して第5係合装置55が係合状態となると、第3切替歯S3aと第6係合歯56aとが互いに軸方向Lに離間して第6係合装置56が解放状態となる。一方、第3切替歯S3aと第6係合歯56aとが互い係合して第6係合装置56が係合状態となると、第3切替歯S3aと第5係合歯55aとが互いに軸方向Lに離間して第5係合装置55が解放状態となる。また、第3噛み合い式係合装置DC3は、第5係合装置55及び第6係合装置56の双方を解放状態とすることができるように構成されている。
【0056】
図4に示すように、車両用駆動装置100は、内燃機関EG、第1回転電機MG1、第2回転電機MG2、及び変速機TMを制御する制御装置10を備えている。本実施形態では、制御装置10は、主制御部11と、内燃機関EGを制御する内燃機関制御部12と、第1回転電機MG1を制御する第1回転電機制御部13と、第2回転電機MG2を制御する第2回転電機制御部14と、変速機TMの第1係合装置51~第6係合装置56の係合の状態を制御する係合制御部15と、を備えている。
【0057】
主制御部11は、内燃機関制御部12、第1回転電機制御部13、第2回転電機制御部14、及び係合制御部15のそれぞれに対して、各制御部が担当する装置を制御する指令を出力する。
【0058】
内燃機関制御部12は、内燃機関EGが、主制御部11から指令された目標トルクを出力するように、或いは、主制御部11から指令された目標回転速度となるように内燃機関EGを制御する。
【0059】
第1回転電機制御部13は、第1回転電機MG1が、主制御部11から指令された目標トルクを出力するように、或いは、主制御部11から指令された目標回転速度となるように、第1回転電機MG1に接続された第1インバータINV1を制御する。本実施形態では、直流交流変換を行う第1インバータINV1を介して、第1回転電機MG1と蓄電装置BTとが電気的に接続されている。
【0060】
第2回転電機制御部14は、第2回転電機MG2が、主制御部11から指令された目標トルクを出力するように、或いは、主制御部11から指令された目標回転速度となるように、第2回転電機MG2に接続された第2インバータINV2を制御する。本実施形態では、直流交流変換を行う第2インバータINV2を介して、第2回転電機MG2と蓄電装置BTとが電気的に接続されている。
【0061】
係合制御部15は、第1係合装置51~第6係合装置56のそれぞれが、主制御部11から指令された係合の状態となるように、第1係合装置51~第6係合装置56を動作させるためのアクチュエータを制御する。本実施形態では、係合制御部15は、第1噛み合い式係合装置DC1~第3噛み合い式係合装置DC3の第1切替部材S1~第3切替部材S3を制御する。
【0062】
また、主制御部11は、車両用駆動装置100が搭載される車両の各部の情報を取得するために、当該車両の各部に設けられたセンサからの情報を取得可能に構成されている。本実施形態では、主制御部11は、SOCセンサSe1、車速センサSe2、アクセル操作量センサSe3、ブレーキ操作量センサSe4、及びシフト位置センサSe5からの情報を取得可能に構成されている。
【0063】
SOCセンサSe1は、蓄電装置BTの状態を検出するためのセンサである。SOCセンサSe1は、例えば、電圧センサや電流センサ等により構成されている。主制御部11は、SOCセンサSe1から出力される電圧値や電流値等の情報に基づいて、蓄電装置BTの充電量(SOC:State of Charge)を算出する。
【0064】
車速センサSe2は、車両用駆動装置100が搭載される車両の走行速度(車速)を検出するためのセンサである。本実施形態では、車速センサSe2は、第1出力部材O1の回転速度を検出するためのセンサである。主制御部11は、車速センサSe2から出力される上記回転速度の情報に基づいて、第1出力部材O1の回転速度(角速度)を算出する。第1出力部材O1の回転速度は車速に比例するため、主制御部11は、車速センサSe2の検出信号に基づいて車速を算出する。
【0065】
アクセル操作量センサSe3は、車両用駆動装置100が搭載される車両に設けられたアクセルペダルの運転者による操作量を検出するためのセンサである。主制御部11は、アクセル操作量センサSe3の検出信号に基づいて、運転者によるアクセルペダルの操作量を算出する。
【0066】
ブレーキ操作量センサSe4は、車両用駆動装置100が搭載される車両に設けられたブレーキペダルの運転者による操作量を検出するためのセンサである。主制御部11は、ブレーキ操作量センサSe4の検出信号に基づいて、運転者によるブレーキペダルの操作量を算出する。
【0067】
シフト位置センサSe5は、車両用駆動装置100が搭載される車両の運転者により操作されるシフトレバーの選択位置(シフト位置)を検出するためのセンサである。主制御部11は、シフト位置センサSe5の検出信号に基づいてシフト位置を算出する。シフトレバーは、パーキングレンジ(Pレンジ)、後進走行レンジ(Rレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、前進走行レンジ(Dレンジ)等を選択可能に構成されている。
【0068】
主制御部11は、上記のセンサSe1~Se5からの情報に基づいて、車両用駆動装置100における複数の動作モードの選択を行う。主制御部11は、係合制御部15を介して、第1係合装置51~第6係合装置56のそれぞれを、選択した動作モードに応じた係合の状態に制御することにより、当該選択した動作モードへの切り替えを行う。そして、主制御部11は、選択した動作モードに応じて、内燃機関制御部12、第1回転電機制御部13、及び第2回転電機制御部14を介して、内燃機関EG、第1回転電機MG1、及び第2回転電機MG2の動作状態を協調制御する。
【0069】
図5に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、動作モードとして、第1EVモード及び第2EVモードと、充電モードと、シリーズモードと、第1パラレルモード~第5パラレルモードと、を備えている。
【0070】
図5に、本実施形態の車両用駆動装置100の各動作モードにおける、噛み合い式係合装置DC1,DC2,DC3と、内燃機関EGと、回転電機MG1,MG2との状態を示す。なお、図5における噛み合い式係合装置DC1,DC2,DC3の欄において、「N」は、対象の噛み合い式係合装置を構成する一対の係合装置の双方が解放状態(ニュートラル状態)であることを示している。また、「L1」は、対象の噛み合い式係合装置を構成する一対の係合装置のうち、軸方向第1側L1の係合装置が係合状態であり、「L2」は、対象の噛み合い式係合装置を構成する一対の係合装置のうち、軸方向第2側L2の係合装置が係合状態であることを示している。
【0071】
第1EVモードは、内燃機関EG、第1回転電機MG1、及び第2回転電機MG2のうち、第2回転電機MG2のみの駆動力により車両を走行させる動作モードである。第1EVモードでは、第1噛み合い式係合装置DC1を構成する第1係合装置51と第3係合装置53との双方が解放状態となり、第2噛み合い式係合装置DC2を構成する第2係合装置52と第4係合装置54との双方が解放状態となり、第3噛み合い式係合装置DC3を構成する第5係合装置55と第6係合装置56の双方が解放状態となるように制御される。そして、内燃機関EG及び第1回転電機MG1が停止状態となり、第2回転電機MG2が車両の走行状態に応じて力行状態又は発電状態となるように制御される。なお、オイルポンプや補器類の駆動等のために、第1回転電機MG1及び内燃機関EGの少なくとも一方が駆動状態となるように制御されても良い。また、第1EVモードでは、第1噛み合い式係合装置DC1を構成する第1係合装置51と第3係合装置53との双方を解放状態とすることなく、それらのいずれか一方を係合状態としても良い。この場合において、第1係合装置51を係合状態とする場合には、内燃機関EG及び第1回転電機MG1を停止状態とすると良い。また、第3係合装置53を係合状態とする場合には、内燃機関EG及び第1回転電機MG1のうちの少なくとも内燃機関EGを停止状態とすると良い。
【0072】
第2EVモードは、内燃機関EG、第1回転電機MG1、及び第2回転電機MG2のうち、第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2の駆動力により車両を走行させる動作モードである。第2EVモードでは、第1噛み合い式係合装置DC1を構成する第1係合装置51と第3係合装置53との双方が解放状態となり、第2噛み合い式係合装置DC2を構成する第2係合装置52が係合状態となり、第3噛み合い式係合装置DC3を構成する第5係合装置55と第6係合装置56の双方が解放状態となるように制御される。そして、内燃機関EGが停止状態となり、第1回転電機MG1及び第2回転電機MG2の双方が車両の走行状態に応じて力行状態又は発電状態となるように制御される。
【0073】
充電モードは、内燃機関EGの駆動力により第1回転電機MG1に発電を行わせる動作モードである。充電モードでは、第1噛み合い式係合装置DC1を構成する第1係合装置51が係合状態となり、第2噛み合い式係合装置DC2を構成する第2係合装置52と第4係合装置54との双方が解放状態となり、第3噛み合い式係合装置DC3を構成する第5係合装置55と第6係合装置56との双方が解放状態となるように制御される。そして、内燃機関EGが駆動状態となり、第1回転電機MG1が内燃機関EGから伝達される駆動力によって発電状態となり、第2回転電機MG2が停止状態となるように制御される。
【0074】
シリーズモードは、第2回転電機MG2の駆動力により車両を走行させつつ、内燃機関EGの駆動力により第1回転電機MG1に発電を行わせる動作モードである。充電モードにおいて第2回転電機MG2を力行状態とすることで、動作モードをシリーズモードに切り替えることができる。反対に、シリーズモードにおいて第2回転電機MG2を停止状態とすることで、動作モードを充電モードに切り替えることができる。なお、シリーズモードにおいても、第2回転電機MG2は、走行状態に応じて、例えば車両の減速中等は発電状態となる。
【0075】
第1パラレルモード~第5パラレルモードは、内燃機関EG、第1回転電機MG1、及び第2回転電機MG2の駆動力を第1車輪W1に伝達する動作モードである。
【0076】
第1パラレルモードでは、第1噛み合い式係合装置DC1を構成する第1係合装置51が係合状態となり、第2噛み合い式係合装置DC2を構成する第2係合装置52と第4係合装置54との双方が解放状態となり、第3噛み合い式係合装置DC3を構成する第6係合装置56が係合状態となるように制御される。そして、内燃機関EGが駆動状態となり、第1回転電機MG1が基本的に発電状態となり、第2回転電機MG2が基本的に力行状態となるように制御される。第1パラレルモードでは、第9ギヤG9が変速入力部材Tiとして機能する。なお、車両の走行状態に応じて、第1回転電機MG1が力行状態となる場合や、第2回転電機MG2が発電状態となる場合がある。これは、第2~第5パラレルモードにおいても同様である。
【0077】
第2パラレルモードでは、第1噛み合い式係合装置DC1を構成する第1係合装置51が係合状態となり、第2噛み合い式係合装置DC2を構成する第2係合装置52と第4係合装置54との双方が解放状態となり、第3噛み合い式係合装置DC3を構成する第5係合装置55が係合状態となるように制御される。そして、内燃機関EGが駆動状態となり、基本的に第1回転電機MG1が発電状態となり、基本的に第2回転電機MG2が力行状態となるように制御される。第2パラレルモードでは、第7ギヤG7が変速入力部材Tiとして機能する。
【0078】
第3パラレルモードでは、第1噛み合い式係合装置DC1を構成する第1係合装置51が係合状態となり、第2噛み合い式係合装置DC2を構成する第4係合装置54が係合状態となり、第3噛み合い式係合装置DC3を構成する第5係合装置55と第6係合装置56の双方が解放状態となるように制御される。そして、内燃機関EGが駆動状態となり、基本的に第1回転電機MG1が発電状態となり、基本的に第2回転電機MG2が力行状態となるように制御される。第3パラレルモードでは、第5ギヤG5が変速入力部材Tiとして機能する。
【0079】
第4パラレルモードでは、第1噛み合い式係合装置DC1を構成する第1係合装置51が係合状態となり、第2噛み合い式係合装置DC2を構成する第2係合装置52が係合状態となり、第3噛み合い式係合装置DC3を構成する第5係合装置55と第6係合装置56との双方が解放状態となるように制御される。そして、内燃機関EGが駆動状態となり、基本的に第1回転電機MG1が発電状態となり、基本的に第2回転電機MG2が力行状態となるように制御される。第4パラレルモードでは、第1ギヤG1が変速入力部材Tiとして機能する。
【0080】
第5パラレルモードでは、第1噛み合い式係合装置DC1を構成する第3係合装置53が係合状態となり、第2噛み合い式係合装置DC2を構成する第2係合装置52が係合状態となり、第3噛み合い式係合装置DC3を構成する第5係合装置55と第6係合装置56との双方が解放状態となるように制御される。そして、内燃機関EGが駆動状態となり、基本的に第1回転電機MG1が発電状態となり、基本的に第2回転電機MG2が力行状態となるように制御される。第5パラレルモードでは、第3ギヤG3が変速入力部材Tiとして機能する。なお、第5パラレルモードにおいて、第2噛み合い式係合装置DC2を構成する第2係合装置52と第4係合装置54との双方を解放状態とすると共に、第1回転電機MG1を停止状態としても良い。
【0081】
上述したように、本実施形態では、第10ギヤG10に対する第9ギヤG9の歯数比、第8ギヤG8に対する第7ギヤG7の歯数比、第6ギヤG6に対する第5ギヤG5の歯数比、第2ギヤG2に対する第1ギヤG1の歯数比、第4ギヤG4に対する第3ギヤG3の歯数比の順に小さくなっている。そのため、第1パラレルモードでは、最も変速比が大きい変速段(1速)が形成される。第2パラレルモードでは、第1パラレルモードと比べて変速比が小さい変速段(2速)が形成される。第3パラレルモードでは、第2パラレルモードと比べて変速比が小さい変速段(3速)が形成される。第4パラレルモードでは、第3パラレルモードと比べて変速比が小さい変速段(4速)が形成される。第5パラレルモードでは、第4パラレルモードと比べて変速比が小さい変速段(5速)が形成される。
【0082】
以下では、制御装置10による制御処理について説明する。制御装置10は、動作モードを第1モードから第2モードに切り替える場合に、変速制御を実行する。
【0083】
第1モードは、変速機TMが第1変速段を形成し、少なくとも内燃機関EGが第1出力部材O1に駆動力を伝達するモードである。また、第2モードは、変速機TMが第1変速段よりも変速比が小さい第2変速段を形成し、少なくとも内燃機関EGが第1出力部材O1に駆動力を伝達するモードである。本実施形態では、第1パラレルモード~第4パラレルモードのいずれかが第1モードに相当し、第2パラレルモード~第5パラレルモードのいずれかが第2モードに相当する。例えば、第2パラレルモードが第1モードである場合、第3パラレルモード、第4パラレルモード、又は第5パラレルモードが第2モードとなる。また、例えば、第4パラレルモードが第1モードである場合、第5パラレルモードが第2モードとなる。
【0084】
変速制御は、第1モードにて第2回転電機MG2の駆動力を増加させた後、変速機TMの状態を、第1変速段を形成した状態から、複数の変速段のいずれも形成しないニュートラル状態を経て、第2変速段を形成した状態とし、第2モードにて第2回転電機MG2の駆動力を減少させる制御である。変速制御では、制御装置10は、内燃機関EGの駆動力により第1回転電機MG1に発電を行わせ、当該発電により得られた電力の少なくとも一部を第2回転電機MG2に供給する。
【0085】
図6は、制御装置10による変速制御を示すフローチャートである。図6に示すように、制御装置10は、まず、動作モードを第1モードとする(ステップ#1)。本実施形態では、係合制御部15が、変速機TMに第1変速段が形成されるように、第1噛み合い式係合装置DC1~第3噛み合い式係合装置DC3の第1切替部材S1~第3切替部材S3を制御する。更に、内燃機関EGが第1出力部材O1に駆動力を伝達するように、内燃機関制御部12が内燃機関EGを駆動させる。
【0086】
次に、制御装置10は、内燃機関EGの駆動力により第1回転電機MG1に発電を行わせる(ステップ#2)。そして、制御装置10は、その発電により得られた電力の少なくとも一部を第2回転電機MG2に供給する。本実施形態では、第1回転電機制御部13が、第1回転電機MG1に回生トルクを出力させる。
【0087】
そして、制御装置10は、第2回転電機MG2の駆動力を増加させる(ステップ#3)。本実施形態では、第2回転電機制御部14が第2回転電機MG2の駆動力を増加させる。
【0088】
その後、制御装置10は、変速機TMの状態を、第1変速段を形成した状態から、複数の変速段のいずれも形成しないニュートラル状態とする(ステップ#4)。本実施形態では、係合制御部15が、変速機TMがニュートラル状態となるように、第1噛み合い式係合装置DC1~第3噛み合い式係合装置DC3の第1切替部材S1~第3切替部材S3を制御する。
【0089】
続いて、制御装置10は、変速機TMをニュートラル状態から第2変速段を形成した状態として、動作モードを第2モードとする(ステップ#5)。本実施形態では、係合制御部15が、変速機TMに第2変速段が形成されるように、第1噛み合い式係合装置DC1~第3噛み合い式係合装置DC3の第1切替部材S1~第3切替部材S3を制御する。
【0090】
最後に、制御装置10は、第2回転電機MG2の駆動力を減少させる(ステップ#6)。本実施形態では、第2回転電機制御部14が第2回転電機MG2の駆動力を減少させる。
【0091】
図7は、本実施形態に係る制御装置10による変速制御の一例を示すタイムチャートである。なお、図7において、「車速」は、車両用駆動装置100が搭載された車両の走行速度(km/h)を表している。また、「走行用出力」は、内燃機関EG及び第2回転電機MG2の出力のうち、車両の走行に利用される出力(kW)を表している。また、「出力」は、内燃機関EG、第1回転電機MG1、第2回転電機MG2、及び蓄電装置BTのそれぞれの出力(kW)を表している。また、「トルク」は、内燃機関EG、第1回転電機MG1、及び第2回転電機MG2のそれぞれの駆動力(Nm)を表している。また、「回転速度」は、図7に「EG」で示された、内燃機関EGに駆動連結された変速入力部材Tiの回転速度(rpm)と、図7に「MG1」で示された、第1回転電機MG1の第1ロータRT1の回転速度(rpm)と、図7に「MG2」で示された、第2回転電機MG2の第2ロータRT2の回転速度(rpm)を表している。また、「ST1」で示された直線は、第1変速段に対応する回転速度を表し、「ST2」で示された直線は、第2変速段に対応する回転速度を表している。
【0092】
図7に示す例では、第1モードが第2パラレルモードであり、第2モードが第3パラレルモードである。なお、図7に示す例では、総出力が50kWで、運転者によるアクセルペダルの操作量(アクセル開度)が50%の状態で車両が走行しているものとする。
【0093】
図7に示すように、制御装置10は、時刻t1から時刻t2にかけて、第2回転電機MGの駆動力をゼロから増加させる。
【0094】
そして、制御装置10は、時刻t2において、変速機TMの状態を、第1変速段を形成した状態からニュートラル状態とする。本例では、制御装置10は、時刻t2において、動作モードを、第2パラレルモードからシリーズモードに切り替える。ここで、本例では、第1変速段を形成した状態とは、第1噛み合い式係合装置DC1を構成する第1係合装置51が係合状態となり、第2噛み合い式係合装置DC2を構成する第2係合装置52と第4係合装置54との双方が解放状態となり、第3噛み合い式係合装置DC3を構成する第5係合装置55が係合状態となった状態である。また、ニュートラル状態とは、第1噛み合い式係合装置DC1を構成する第1係合装置51が係合状態となり、第2噛み合い式係合装置DC2を構成する第2係合装置52と第4係合装置54との双方が解放状態となり、第3噛み合い式係合装置DC3を構成する第5係合装置55と第6係合装置56との双方が解放状態となった状態である。そのため、本例では、制御装置10は、時刻t2において、第3噛み合い式係合装置DC3を構成する第5係合装置55を係合状態から解放状態とすることで、動作モードを第2パラレルモードからシリーズモードに切り替える。
【0095】
続いて、制御装置10は、時刻t3において、変速機TMの状態を、ニュートラル状態から第2変速段を形成した状態とする。本例では、制御装置10は、時刻t3において、動作モードを、シリーズモードから第3パラレルモードに切り替える。ここで、本例では、第2変速段を形成した状態とは、第1噛み合い式係合装置DC1を構成する第1係合装置51が係合状態となり、第2噛み合い式係合装置DC2を構成する第4係合装置54が係合状態となり、第3噛み合い式係合装置DC3を構成する第5係合装置55と第6係合装置56の双方が解放状態となった状態である。そのため、本例では、制御装置10は、時刻t3において、第2噛み合い式係合装置DC2を構成する第4係合装置54を解放状態から係合状態とすることで、動作モードをシリーズモードから第3パラレルモードに切り替える。
【0096】
最後に、制御装置10は、時刻t3から時刻t4にかけて、第2回転電機MGの駆動力をゼロまで減少させている。
【0097】
上記のような変速制御において、制御装置10は、時刻t1から時刻t4にかけて、第1回転電機MG1に回生トルクを出力させることで、内燃機関EGの駆動力により第1回転電機MG1に発電を行わせる。そして、制御装置10は、その発電により得られた電力の少なくとも一部を第2回転電機MG2に供給する。
【0098】
本例では、制御装置10は、時刻t2から時刻t3にかけて、第1回転電機MG1の回生トルクにより内燃機関EGの回転速度を低下させる。ここで、上述したように、第2パラレルモードでは、第7ギヤG7が変速入力部材Tiとして機能する。そして、変速入力部材Tiとしての第7ギヤG7は、入力部材Iを介して内燃機関EGに駆動連結された第1軸部材1と一体的に回転するように連結されている。このように、制御装置10は、変速制御において、変速機TMがニュートラル状態である間(ここでは、時刻t2~t3)、第1回転電機MG1の回生トルクにより変速入力部材Tiの回転速度を低下させる。
【0099】
この構成によれば、内燃機関EGの駆動力により発電を行う第1回転電機MG1の回生トルクにより、入力部材Iを介して内燃機関EGに駆動連結された変速入力部材Tiの回転速度が低下される。したがって、変速制御において、変速機TMがニュートラル状態である間、第1回転電機MG1に適切に発電を行わせつつ、第1変速段から第2変速段へのアップシフトのための内燃機関EGの回転速度の低下を適切に行わせることができる。
【0100】
図7に示す例では、時刻t2から時刻t3にかけて、内燃機関EGの出力はP1[kW]であり、第1回転電機MG1の出力は-P3[kW]である(P1<P3)。そのため、第1回転電機MG1の出力である-P3[kW]のうち、内燃機関EGの出力であるP1[kW]に対応する-P1[kW]が発電に利用され、残りの-(P3-P1)[kW]が内燃機関EGの回転速度の低下に利用される。
【0101】
本例では、制御装置10は、時刻t2から時刻t3にかけて、第1回転電機MG1の回転速度を制御することにより、内燃機関EGに駆動連結された変速入力部材Tiの回転速度を、第2変速段に対応する回転速度に同期させる。つまり、制御装置10は、変速制御において、変速機TMがニュートラル状態である間(ここでは、時刻t2~t3)、第1回転電機MG1の回転速度を制御することにより、変速入力部材Tiの回転速度を、第2変速段に対応する回転速度に同期させる。
【0102】
この構成によれば、変速制御において、変速機TMの変速段を第1変速段から第2変速段に切り替える際に変速出力部材Toに伝達される振動を低減することができる。
【0103】
本例では、制御装置10は、時刻t2から時刻t3にかけて、内燃機関EGの回転速度の低下に応じて、内燃機関EGの駆動力を増加させる。つまり、制御装置10は、変速制御において、変速機TMがニュートラル状態である間(ここでは、時刻t2~t3)、変速入力部材Tiの回転速度の低下に応じて、内燃機関EGの駆動力を増加させる。
【0104】
この構成によれば、変速制御において、変速機TMがニュートラル状態である間、内燃機関EGの出力の低下を抑制することができる。したがって、内燃機関EGの駆動力により発電を行う第1回転電機MG1の発電量を十分に確保することが容易となる。その結果、第2回転電機MG2に十分な電力を供給し、第2回転電機MG2の駆動力を十分に確保することが更に容易となる。
【0105】
また、本例では、制御装置10は、変速制御において、蓄電装置BTに蓄えられた電力の少なくとも一部を第2回転電機MG2に供給する。ここでは、制御装置10は、時刻t1から時刻t3にかけて、蓄電装置BTの出力はP2[kW]である。そして、この蓄電装置BTの出力であるP2[kW]が、第2回転電機の駆動に利用される。なお、本例では、P1+P2=50である。
【0106】
この構成によれば、第1回転電機MG1の発電により得られた電力と、蓄電装置BTに蓄えられた電力との双方を、第2回転電機MG2に供給することができる。したがって、蓄電装置BTの容量を小さく抑えることができる
【0107】
また、本例では、制御装置10は、時刻t1から時刻t2にかけて、内燃機関EG及び第1回転電機MG1の駆動力を減少させる。これにより、第3噛み合い式係合装置DC3を構成する第5係合装置55を係合状態から解放状態とすること、つまり、変速機TMを、第1変速段を形成した状態からニュートラル状態とすることが容易となっている。
【0108】
2.第2の実施形態
以下では、第2の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。本実施形態では、主に、変速機TMの構成、及び第2回転電機MG2が駆動対象とする車輪が、上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0109】
図8及び図9に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、一対の第1車輪W1を駆動する第1駆動ユニット100Aと、一対の第2車輪W2を駆動する第2駆動ユニット100Bと、を備えている。本実施形態では、第1車輪W1は車両の前輪であり、第2車輪W2は車両の後輪である。
【0110】
図8に示すように、第1駆動ユニット100Aは、上記の入力部材I、第1出力部材O1、変速機TM、第1回転電機MG1、及び第1差動歯車機構4に加えて、分配用差動歯車機構SPと、第7係合装置CL1と、第8係合装置CL2と、を備えている。
【0111】
分配用差動歯車機構SPは、サンギヤS1とキャリヤC1とリングギヤR1とを備えた遊星歯車機構である。本例では、分配用差動歯車機構SPは、ピニオンギヤP1を支持するキャリヤC1と、ピニオンギヤP1に噛み合うサンギヤS1と、当該サンギヤS1に対して径方向Rの外側に配置されてピニオンギヤP1に噛み合うリングギヤR1と、を備えたシングルピニオン型の遊星歯車機構である。
【0112】
本実施形態では、変速機TMは、第11ギヤG11~第14ギヤG14と、第9係合装置CL3と、を備えている。
【0113】
第11ギヤG11と第12ギヤG12とは、同軸に配置されている。第11ギヤG11は、分配用差動歯車機構SPの第1リングギヤR1と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第11ギヤG11は、アイドラギヤIGに噛み合っている。第12ギヤG12は、分配用差動歯車機構SPのキャリヤC1と一体的に回転するように連結されている。本実施形態では、第11ギヤG11及び第12ギヤG12のいずれかが、変速入力部材Tiに相当する。
【0114】
第13ギヤG13と第14ギヤG14とは、同軸に配置されている。第13ギヤG13は、第11ギヤG11に噛み合っている。本実施形態では、第13ギヤG13は、第11ギヤG11の周方向におけるアイドラギヤIGとは異なる位置で、第11ギヤG11に噛み合っている。第14ギヤG14は、第12ギヤG12に噛み合っている。
【0115】
第11ギヤG11と第12ギヤG12とは、互いに歯数が異なっている。つまり、第11ギヤG11の外径と第12ギヤG12の外径とが異なっている。そして、上述したように、第11ギヤG11と第12ギヤG12とが同軸上に配置されていると共に、第11ギヤG11に噛み合う第13ギヤG13と第12ギヤG12に噛み合う第14ギヤG14とが同軸上に配置されている。そのため、第12ギヤG12の外径が第11ギヤG11の外径よりも小さい場合には、第14ギヤG14の外径が第13ギヤG13の外径よりも大きい。一方、第12ギヤG12の外径が第11ギヤG11の外径よりも大きい場合には、第14ギヤG14の外径が第13ギヤG13の外径よりも小さい。したがって、第12ギヤG12に対する第14ギヤG14の歯数比と、第11ギヤG11に対する第13ギヤG13の歯数比とが異なっている。本実施形態では、第12ギヤG12の外径が第11ギヤG11の外径よりも小さく、第12ギヤG12の歯数は第11ギヤG11の歯数よりも少ない。そのため、本実施形態では、第14ギヤG14の外径が第13ギヤG13の外径よりも大きく、第14ギヤG14の歯数は第13ギヤG13の歯数よりも多い。したがって、第12ギヤG12に対する第14ギヤG14の歯数比は、第11ギヤG11に対する第13ギヤG13の歯数比よりも大きい。
【0116】
第9係合装置CL3は、第13ギヤG13及び第14ギヤG14のいずれかを、差動用駆動ギヤDGに対して選択的に連結する係合装置である。上述したように、本実施形態では、第12ギヤG12に対する第14ギヤG14の歯数比は、第11ギヤG11に対する第13ギヤG13の歯数比よりも大きい。そのため、第9係合装置CL3が第14ギヤG14を差動用駆動ギヤDGに連結させた場合には、変速比が比較的大きい変速段である低速段が形成される。一方、第9係合装置CL3が第13ギヤG13を差動用駆動ギヤDGに連結させた場合には、変速比が比較的小さい変速段である高速段が形成される。また、本実施形態では、第9係合装置CL3は、いずれの変速段も形成しないニュートラル状態に切り替え可能に構成されている。本例では、第9係合装置CL3は、ソレノイド、電動機、油圧シリンダ等のアクチュエータによって係合状態と解放状態とを切り替え可能に構成された噛み合い式係合装置(ドグクラッチ)である。
【0117】
第7係合装置CL1は、入力部材Iと分配用差動歯車機構SPのサンギヤS1との間の動力伝達を断接する係合装置である。本例では、第7係合装置CL1は、一対の摩擦部材を備え、当該一対の摩擦部材同士の係合の状態が油圧によって制御される摩擦係合装置である。これにより、第7係合装置CL1を滑り係合状態として、第7係合装置CL1の伝達トルク容量を制御することができる。したがって、第1回転電機MG1の駆動力を利用して内燃機関EGを始動する場合に、第1回転電機MG1から内燃機関EGに伝達されるトルクを制御することができるため、第1回転電機MG1を一旦停止する必要がない。ここで、「滑り係合状態」とは、摩擦係合装置の一対の摩擦部材間に回転速度差(滑り)がある係合状態である。
【0118】
第8係合装置CL2は、分配用差動歯車機構SPにおけるキャリヤC1とリングギヤR1との間の動力伝達を断接する係合装置である。本例では、第8係合装置CL2は、ソレノイド、電動機、油圧シリンダ等のアクチュエータによって係合状態と解放状態とを切り替え可能に構成された噛み合い式係合装置(ドグクラッチ)である。
【0119】
図9に示すように、第2駆動ユニット100Bは、内燃機関EG及び第1回転電機MG1が駆動連結された第1車輪W1とは異なる第2車輪W2に駆動連結されている。この第2駆動ユニット100Bは、第2回転電機MG2と、第2カウンタギヤ機構7と、第2差動歯車機構8と、第2車輪W2に駆動連結される第2出力部材O2と、を備えている。
【0120】
第2カウンタギヤ機構7は、第2回転電機MG2の第2ロータギヤRG2に噛み合う第2カウンタ入力ギヤ71と、当該第2カウンタ入力ギヤ71と一体的に回転する第2カウンタ出力ギヤ72と、これらのギヤ71,72を連結する第2カウンタ軸73と、を備えている。
【0121】
第2差動歯車機構8は、当該第2差動歯車機構8の入力要素である第2差動入力ギヤ81を備えている。第2差動歯車機構8は、第2差動入力ギヤ81の回転を、それぞれが第2車輪W2に駆動連結された一対の第2ドライブシャフトDS2に分配する。本実施形態では、第2差動入力ギヤ81が第2出力部材O2として機能する。
【0122】
本実施形態では、第2差動入力ギヤ81は、第2カウンタギヤ機構7の第2カウンタ出力ギヤ72に噛み合っている。そのため、本実施形態では、第2回転電機MG2は、第2カウンタギヤ機構7を介して、第2出力部材O2(ここでは、第2差動入力ギヤ81)と駆動連結されている。このように、本実施形態では、第2回転電機MG2は、第1車輪W1とは異なる第2車輪W2に駆動連結される第2出力部材O2に、第1出力部材O1を介することなく駆動連結されている。
【0123】
図10に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、動作モードとして、電気式トルクコンバータモード(以下、「eTCモード」と記す)と、低速EVモードと、高速EVモードと、低速パラレルモードと、高速パラレルモードと、充電モードと、シリーズモードと、を備えている。
【0124】
図10に、本実施形態の車両用駆動装置100の各動作モードにおける、第7係合装置CL1、第8係合装置CL2、及び第9係合装置CL3の状態を示す。なお、図10における第7係合装置CL1及び第8係合装置CL2の欄において、「〇」は対象の係合装置が係合状態であることを示し、「×」は対象の係合装置が解放状態であることを示している。また、図10における第9係合装置CL3の欄において、「Lo」は第9係合装置CL3が低速段を形成している状態であることを示し、「Hi」は第9係合装置CL3が高速段を形成している状態であることを示し、「N」は第9係合装置CL3がニュートラル状態であることを示している。
【0125】
eTCモードは、分配用差動歯車機構SPを介して第1回転電機MG1の駆動力と内燃機関EGの駆動力とを合わせてキャリヤC1から第1出力部材O1に出力するモードである。このモードは、内燃機関EGのトルクを増幅して第1出力部材O1に伝達することができるため、所謂、電気式トルクコンバータモードと称される。
【0126】
図10に示すように、eTCモードでは、第7係合装置CL1が係合状態であり、第8係合装置CL2が解放状態であり、第9係合装置CL3が低速段を形成した状態となるように制御される。eTCモードでは、分配用差動歯車機構SPが、第1回転電機MG1のトルクと内燃機関EGのトルクとを合わせて、内燃機関EGのトルクよりも大きいトルクをキャリヤC1から出力する。そして、キャリヤC1の回転が、変速機TMにおいて低速段に応じた変速比で変速されて差動用駆動ギヤDGに伝達される。
【0127】
低速EVモードでは、第7係合装置CL1が解放状態となり、第8係合装置CL2が係合状態となり、第9係合装置CL3が低速段を形成した状態となるように制御される。一方、高速EVモードでは、第7係合装置CL1が解放状態となり、第8係合装置CL2が係合状態となり、第9係合装置CL3が高速段を形成した状態となるように制御される。
【0128】
低速EVモード及び高速EVモードでは、第7係合装置CL1が解放状態とされることによって内燃機関EGが分配用差動歯車機構SPから分離されると共に、第8係合装置CL2が係合状態とされることによって分配用差動歯車機構SPにおけるサンギヤS1とキャリヤC1とリングギヤR1とが互いに一体的に回転する状態となる。その結果、第1回転電機MG1の回転は、そのまま変速機TMの第11ギヤG11及び第12ギヤG12に伝達される。そして、変速機TMに伝達された回転は、第9係合装置CL3の状態に応じて、低速EVモードでは低速段の変速比、高速EVモードでは高速段の変速比で変速されて差動用駆動ギヤDGに伝達される。
【0129】
低速パラレルモードでは、第7係合装置CL1及び第8係合装置CL2の双方が係合状態となり、第9係合装置CL3が低速段を形成した状態となるように制御される。一方、高速パラレルモードでは、第7係合装置CL1及び第8係合装置CL2の双方が係合状態となり、第9係合装置CL3が高速段を形成した状態となるように制御される。
【0130】
低速パラレルモード及び高速パラレルモードでは、第7係合装置CL1が係合状態とされることによって内燃機関EGが分配用差動歯車機構SPに連結されると共に、第8係合装置CL2が係合状態とされることによって分配用差動歯車機構SPにおけるサンギヤS1とキャリヤC1とリングギヤR1とが互いに一体的に回転する状態となる。その結果、内燃機関EGの回転、及び第1回転電機MG1の回転は、そのまま変速機TMの第11ギヤG11及び第12ギヤG12に伝達される。そして、変速機TMに伝達された回転は、第9係合装置CL3の状態に応じて、低速パラレルモードでは低速段の変速比、高速パラレルモードでは高速段の変速比で変速されて差動用駆動ギヤDGに伝達される。
【0131】
本実施形態の充電モード及びシリーズモードでは、第7係合装置CL1及び第8係合装置CL2の双方が係合状態となり、第9係合装置CL3がニュートラル状態となるように制御される。そのため、充電モード及びシリーズモードでは、内燃機関EGと第1回転電機MG1との間での動力伝達が行われる状態となり、内燃機関EGから伝達される駆動力により第1回転電機MG1が発電を行う。
【0132】
本実施形態では、低速パラレルモードが第1モードに相当し、高速パラレルモードが第2モードに相当する。本実施形態の変速制御においては、制御装置10は、第9係合装置CL3を低速段が形成された状態からニュートラル状態とすることで、動作モードを低速パラレルモードからシリーズモードに切り替え、その後、第9係合装置CL3をニュートラル状態から高速段が形成された状態とすることで、動作モードをシリーズモードから高速パラレルモードに切り替える。そして、このように動作モードを切り替える場合に、上述した変速制御を実行する。
【0133】
3.第3の実施形態
以下では、第3の実施形態に係る車両用駆動装置100について、図面を参照して説明する。本実施形態では、主に、変速機TMの構成が、上記第1の実施形態のものとは異なっている。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第1の実施形態と同様とする。
【0134】
図11に示すように、本実施形態では、変速機TMは、第15ギヤG15~第18ギヤG18と、第10係合装置CL4と、を備えている。
【0135】
第15ギヤG15と第16ギヤG16とは、同軸に配置されている。第15ギヤG15及び第16ギヤG16のそれぞれは、入力軸3に対して相対的に回転するように支持されている。本実施形態では、第15ギヤG15は、第16ギヤG16に対して軸方向第1側L1に隣接して配置されている。本実施形態では、第15ギヤG15及び第16ギヤG16のいずれかが、変速入力部材Tiに相当する。
【0136】
第17ギヤG17と第18ギヤG18とは、同軸に配置されている。第17ギヤG17は、第15ギヤG15に噛み合っている。第18ギヤG18は、第16ギヤG16に噛み合っている。
【0137】
第15ギヤG15と第16ギヤG16とは、互いに歯数が異なっている。つまり、第15ギヤG15の外径と第16ギヤG16の外径とが異なっている。そして、上述したように、第15ギヤG15と第16ギヤG16とが同軸上に配置されていると共に、第15ギヤG15に噛み合う第17ギヤG17と第16ギヤG16に噛み合う第18ギヤG18とが同軸上に配置されている。そのため、第16ギヤG16の外径が第15ギヤG15の外径よりも大きい場合には、第18ギヤG18の外径が第17ギヤG17の外径よりも小さい。一方、第16ギヤG16の外径が第15ギヤG15の外径よりも小さい場合には、第18ギヤG18の外径が第17ギヤG17の外径よりも大きい。したがって、第16ギヤG16に対する第18ギヤG18の歯数比と、第15ギヤG15に対する第17ギヤG17の歯数比とが異なっている。本実施形態では、第16ギヤG16の外径が第15ギヤG15の外径よりも大きく、第16ギヤG16の歯数は第15ギヤG15の歯数よりも多い。そのため、本実施形態では、第18ギヤG18の外径が第17ギヤG17の外径よりも小さく、第18ギヤG18の歯数は第17ギヤG17の歯数よりも少ない。したがって、第16ギヤG16に対する第18ギヤG18の歯数比は、第15ギヤG15に対する第17ギヤG17の歯数比よりも小さい。
【0138】
第10係合装置CL4は、第15ギヤG15及び第16ギヤG16のいずれかを、入力軸3に対して選択的に連結する係合装置である。上述したように、本実施形態では、第16ギヤG16に対する第18ギヤG18の歯数比は、第15ギヤG15に対する第17ギヤG17の歯数比よりも小さい。そのため、第10係合装置CL4が第17ギヤG17を入力軸3に連結させた場合には、変速比が比較的大きい変速段である低速段が形成される。一方、第10係合装置CL4が第18ギヤG18を入力軸3に連結させた場合には、変速比が比較的小さい変速段である高速段が形成される。また、本実施形態では、第10係合装置CL4は、いずれの変速段も形成しないニュートラル状態に切り替え可能に構成されている。本例では、第10係合装置CL4は、ソレノイド、電動機、油圧シリンダ等のアクチュエータによって係合状態と解放状態とを切り替え可能に構成された噛み合い式係合装置(ドグクラッチ)である。
【0139】
本実施形態では、車両用駆動装置100は、上記の入力部材I、第1出力部材O1、変速機TM、第1回転電機MG1、第2回転電機MG2、第1差動歯車機構4、及び第1カウンタギヤ機構6に加えて、第11係合装置CL5を備えている。
【0140】
本実施形態では、第1カウンタギヤ機構6の第1カウンタ入力ギヤ61が、第1カウンタ軸63に対して相対的に回転するように支持されている。そして、第11係合装置CL5は、第1カウンタ入力ギヤ61を第1カウンタ軸63に対して選択的に連結するように構成されている。本例では、第10係合装置CL4は、ソレノイド、電動機、油圧シリンダ等のアクチュエータによって係合状態と解放状態とを切り替え可能に構成された噛み合い式係合装置(ドグクラッチ)である。
【0141】
また、本実施形態では、入力軸3と同軸に、第1回転電機MG1の第1ロータギヤRG1に噛み合う伝達ギヤTGが設けられている。伝達ギヤTGは、入力軸3と一体的に回転するように連結されている。
【0142】
図12に示すように、本実施形態では、車両用駆動装置100は、動作モードとして、EVモードと、低速パラレルモードと、高速パラレルモードと、充電モードと、シリーズモードと、を備えている。
【0143】
図12に、本実施形態の車両用駆動装置100の各動作モードにおける、第10係合装置CL4と、第11係合装置CL5と、内燃機関EGと、回転電機MG1,MG2との状態を示す。なお、図12における第10係合装置CL4の欄において、「Lo」は第10係合装置CL4が低速段を形成している状態であることを示し、「Hi」は第10係合装置CL4が高速段を形成している状態であることを示し、「N」は第10係合装置CL4がニュートラル状態であることを示している。また、図12における第11係合装置CL5の欄において、「〇」は第11係合装置CL5が係合状態であることを示し、「×」は第11係合装置CL5が解放状態であることを示している。
【0144】
EVモードは、内燃機関EG、第1回転電機MG1、及び第2回転電機MG2のうち、第2回転電機MG2のみの駆動力により車両を走行させる動作モードである。EVモードでは、第10係合装置CL4がニュートラル状態となり、第11係合装置CL5が係合状態となるように制御される。そして、内燃機関EG及び第1回転電機MG1の双方が停止状態となり、第2回転電機MG2が基本的に力行状態となるように制御される。なお、車両の走行状態に応じて、第2回転電機MG2が発電状態となる場合がある。
【0145】
本実施形態の低速パラレルモードでは、第10係合装置CL4が低速段を形成した状態となり、第11係合装置CL5が係合状態となるように制御される。そして、内燃機関EGが駆動状態となり、第1回転電機MG1が基本的に発電状態となり、第2回転電機MG2が基本的に力行状態となるように制御される。なお、車両の走行状態に応じて、第1回転電機MG1が力行状態となる場合や、第2回転電機MG2が発電状態となる場合がある。また、低速パラレルモードにおいて、第11係合装置CL5が解放状態となるように制御し、第2回転電機MG2を停止させても良い。
【0146】
本実施形態の高速パラレルモードでは、第11係合装置CL5が高速段を形成した状態となり、第11係合装置CL5が係合状態となるように制御される。そして、内燃機関EGが駆動状態となり、第1回転電機MG1が基本的に発電状態となり、第2回転電機MG2が基本的に力行状態となるように制御される。なお、車両の走行状態に応じて、第1回転電機MG1が力行状態となる場合や、第2回転電機MG2が発電状態となる場合がある。また、高速パラレルモードにおいて、第11係合装置CL5が解放状態となるように制御し、第2回転電機MG2を停止させても良い。
【0147】
本実施形態の充電モードでは、第10係合装置CL4がニュートラル状態となり、第11係合装置CL5が解放状態となるように制御される。そして、内燃機関EGが駆動状態となり、第1回転電機MG1が内燃機関EGから伝達される駆動力によって発電状態となり、第2回転電機MG2が停止状態となるように制御される。
【0148】
本実施形態のシリーズモードでは、第10係合装置CL4がニュートラル状態となり、第11係合装置CL5が係合状態となるように制御される。そして、内燃機関EGが駆動状態となり、第1回転電機MG1が内燃機関EGから伝達される駆動力によって発電状態となり、第2回転電機MG2が基本的に力行状態となるように制御される。なお、車両の走行状態に応じて、第2回転電機MG2が発電状態となる場合がある。
【0149】
本実施形態では、低速パラレルモードが第1モードに相当し、高速パラレルモードが第2モードに相当する。本実施形態の変速制御においては、制御装置10は、第10係合装置CL4を低速段が形成された状態からニュートラル状態とすることで、動作モードを低速パラレルモードからシリーズモードに切り替え、その後、第10係合装置CL4をニュートラル状態から高速段が形成された状態とすることで、動作モードをシリーズモードから高速パラレルモードに切り替える。
【0150】
4.その他の実施形態
(1)上記の実施形態では、制御装置10が、変速制御において、変速機TMがニュートラル状態である間、変速入力部材Tiの回転速度の低下に応じて、内燃機関EGの駆動力を増加させる構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、制御装置10が、変速制御において、変速機TMがニュートラル状態である間、内燃機関EGの駆動力を一定に維持する構成としても良い。
【0151】
(2)上記の実施形態では、制御装置10が、変速制御において、蓄電装置BTに蓄えられた電力の少なくとも一部を第2回転電機MG2に供給する構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、制御装置10が、変速制御において、蓄電装置BTに蓄えられた電力を第2回転電機MG2に供給しない構成としても良い。この場合、第2回転電機MG2に供給される電力は、第1回転電機MG1の発電により得られた電力のみとなる。
【0152】
(3)上記第1の実施形態では、第1係合装置51と第3係合装置53とが第1噛み合い式係合装置DC1を構成する形態を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1係合装置51と第3係合装置53とが、互いに独立した係合装置であっても良い。なお、第2噛み合い式係合装置DC2を構成する第2係合装置52及び第4係合装置54、並びに、第3噛み合い式係合装置DC3を構成する第5係合装置55及び第6係合装置56についても同様である。
【0153】
(4)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。したがって、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0154】
本開示に係る技術は、内燃機関に駆動連結される入力部材と、車輪に駆動連結される出力部材と、複数の変速段を形成可能に構成された変速機と、第1回転電機及び第2回転電機と、それらを制御する制御装置と、を備えた車両用駆動装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0155】
100:車両用駆動装置、I:入力部材、O1:第1出力部材、O2:第2出力部材、MG1:第1回転電機、MG2:第2回転電機、TM:変速機、Ti:変速入力部材、To:変速出力部材、EG:内燃機関、W1:第1車輪、W2:第2車輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12