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特開2022-45212タイル直張り外壁の浮き補修工法及び共浮き抑え治具
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  • 特開-タイル直張り外壁の浮き補修工法及び共浮き抑え治具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045212
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】タイル直張り外壁の浮き補修工法及び共浮き抑え治具
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20220311BHJP
【FI】
E04G23/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150781
(22)【出願日】2020-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】598067784
【氏名又は名称】日本樹脂施工協同組合
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】大塚 毅
(72)【発明者】
【氏名】渡部 秀晴
(72)【発明者】
【氏名】相馬 和博
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA05
2E176BB21
(57)【要約】
【課題】タイル直張り外壁における、コンクリート躯体と張付けモルタル間に発生した浮きによるタイル剥落を防止することを課題とする。
【解決手段】タイル直張り外壁のコンクリート躯体と張付けモルタル間に浮きが生じている領域に位置するタイルの略中央部に、前記コンクリート躯体まで到達する孔部を穿孔する穿孔工程、基端側に雌ねじ部を備える注入口付きアンカーピンを、前記孔部に固定するアンカーピン固定工程、前記注入口付きアンカーピンに、延長管と抑え部材とを有する共浮き抑え治具を、前記抑え部材が前記タイル直張り外壁に接触した状態で固定する共浮き抑え治具固定工程、前記延長管の注入口から注入材を注入し、前記孔部が形成されたタイルよりも広い領域に前記注入材を拡散させ、前記コンクリート躯体と前記張付けモルタルとを接着する接着工程、前記共浮き抑え治具を取り外す解除工程、を備えるタイル直張り外壁の浮き補修工法と、この補修工法に用いる共浮き抑え治具。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイル直張り外壁のコンクリート躯体と張付けモルタル間に浮きが生じている領域に位置するタイルの略中央部に、前記コンクリート躯体まで到達する孔部を穿孔する穿孔工程、
基端側に雌ねじ部を備える注入口付きアンカーピンを、前記孔部に固定するアンカーピン固定工程、
前記注入口付きアンカーピンに、延長管と抑え部材とを有する共浮き抑え治具を、前記抑え部材が前記タイル直張り外壁に接触した状態で固定する共浮き抑え治具固定工程、
前記延長管の注入口から注入材を注入し、前記孔部が形成されたタイルよりも広い領域に前記注入材を拡散させ、前記コンクリート躯体と前記張付けモルタルとを接着する接着工程、
前記共浮き抑え治具を取り外す解除工程、
を備えることを特徴とするタイル直張り外壁の浮き補修工法。
【請求項2】
先端に注入口付きアンカーピンの雌ねじ部と螺合する雄ねじ部、基端側に押圧部を備える延長管と、
前記延長管に設置される抑え部材と、を有し、
注入材の注入時に、前記押圧部により、前記抑え部材の前記延長管軸方向の動きを制限することを特徴とする共浮き抑え治具。
【請求項3】
前記抑え部材が、前記注入口付きアンカーピンと前記延長管との螺合部を視認可能であることを特徴とする請求項2に記載の共浮き抑え治具。
【請求項4】
前記押圧部が、蝶ナットであることを特徴とする請求項2または3に記載の共浮き抑え治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル直張り外壁における、コンクリート躯体とモルタル間に発生した浮きによるタイル剥落を防止するための補修工法と、この補修工法の際に使用する共浮き抑え治具に関する。
【背景技術】
【0002】
タイル直張り工法では、躯体に、張付けモルタルを塗布し、この張付けモルタルでタイルが張り付けられている。
タイル直張り外壁は、躯体成形時に使用する型枠に塗布される剥離剤が躯体表面に付着すること、躯体表面が平滑で微細凹凸が少ないこと、高強度コンクリートでは躯体表面がさらに平滑となること等から、躯体と張付けモルタルとの密着力に劣る場合がある。躯体と張付けモルタル間に剥離(以下、浮きともいう)が生じると、地震等の際にタイルの剥落に繋がり、高所からのタイルの落下により死傷等の大きな事故が起こりかねない。
【0003】
張付けモルタルの浮きを補修するために、タイルを張り替える方法がある。しかし、タイルの張り替えは、撤去されたタイルが大量の産業廃棄物となる。また、従来の色調と同様のタイルを準備することが難しく、建築物の美観が損なわれる場合がある。
その他の方法として、出願人らは、浮きの内部に注入材を注入し、躯体から剥離した張り付けモルタルを接着する落下防止工法を提案している(特許文献1、2参照)。
ここで、注入材を注入すると、注入した孔部を中心として浮きがさらに浮き上がる共浮きと呼ばれる現象が生じる。共浮きは、注入材の注入時の圧力によるものであり、注入材が拡散してその厚みが薄くなることにより次第に収まる。しかし、注入材を浮きの内部に注入する補修工法では、タイルと比較して割れやすい目地の共浮きによる割れを防ぐために、注入を少しずつゆっくりと行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-284937号公報
【特許文献2】特開2011-69160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、タイル直張り外壁の浮き補修時の共浮きを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.タイル直張り外壁のコンクリート躯体と張付けモルタル間に浮きが生じている領域に位置するタイルの略中央部に、前記コンクリート躯体まで到達する孔部を穿孔する穿孔工程、
基端側に雌ねじ部を備える注入口付きアンカーピンを、前記孔部に固定するアンカーピン固定工程、
前記注入口付きアンカーピンに、延長管と抑え部材とを有する共浮き抑え治具を、前記抑え部材が前記タイル直張り外壁に接触した状態で固定する共浮き抑え治具固定工程、
前記延長管の注入口から注入材を注入し、前記孔部が形成されたタイルよりも広い領域に前記注入材を拡散させ、前記コンクリート躯体と前記張付けモルタルとを接着する接着工程、
前記共浮き抑え治具を取り外す解除工程、
を備えることを特徴とするタイル直張り外壁の浮き補修工法。
2.先端に注入口付きアンカーピンの雌ねじ部と螺合する雄ねじ部、基端側に押圧部を備える延長管と、
前記延長管に設置される抑え部材と、を有し、
注入材の注入時に、前記押圧部により、前記抑え部材の前記延長管軸方向の動きを制限することを特徴とする共浮き抑え治具。
3.前記抑え部材が、前記注入口付きアンカーピンと前記延長管との螺合部を視認可能であることを特徴とする2.に記載の共浮き抑え治具。
4.前記押圧部が、蝶ナットであることを特徴とする2.または3.に記載の共浮き抑え治具。
【発明の効果】
【0007】
本発明の補修工法は、共浮き抑え治具により共浮きを防止することができるため、共浮きによるタイル、目地の割れが起こりにくい。本発明の補修工法は、注入材の注入速度を早くすることができ、施工にかかる時間を短くすることができる。本発明の補修工法は、共浮きによるタイル、目地の割れが起こりにくいため、高粘度形の注入材を用いることができる。高粘度形の注入材は、浮きの内部に隙間なく充填されるため、本発明の補修工法が施されたタイル直張り外壁は、剥離強度に優れ、浮きの発生、タイルの剥落を長期間に亘って防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の共浮き抑え治具の一例を示す図。
図2】本発明の浮き補修工法の工程を説明する図。
図3】本発明の浮き補修工法の工程を説明する図。
図4】本発明の浮き補修工法の工程を説明する図。
図5】本発明の浮き補修工法の工程を説明する図。
図6】本発明の浮き補修工法の工程を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、タイル直張り外壁におけるコンクリート躯体と張付けモルタル間に発生した浮きによるタイル剥落を防止するための浮き補修工法と、この浮き補修工法に用いる共浮き抑え治具に関する。
【0010】
「共浮き抑え治具」
図1に、共浮き抑え治具の一例を示す。なお、図1に示す共浮き抑え治具は一例であり、本発明の共浮き抑え治具はこれに限定されない。
一例である共浮き抑え治具10は、延長管11と抑え部材12とを有する。延長管11は、中空軸状であり、先端に雄ねじ部111、基端側に押圧部112を備える。抑え部材12は、内枠121と外枠122、及び内枠と外枠とを接続する8本の支持フレーム123を備える。内枠121には延長管11が挿入される挿入口124と切欠部125が設けられている。切欠部125は、内枠121の支持フレーム123に挟まれた8箇所のうち、一つおきの計4箇所に設けられている。切欠部125は、後述するようにアンカーピンと延長管11との接続箇所を視認するためのものであるが、切欠部125をこのように4箇所に設けることで、複数方向から接続箇所を視認することができる。
【0011】
一例である共浮き抑え治具は、内枠121、外枠122、支持フレーム123の一面(図1では奥側の面)が、外壁に接触する。一例である共浮き抑え治具は、支持フレーム123が縦横斜め方向に伸びているため、馬乗り目地張り、網代張り(矢筈張り)等のタイルが縦方向、横方向の少なくとも一方に整列して張られていない外壁であっても、孔部が穿孔されたタイルとこれに隣接するタイルを確実に抑えることができる。
【0012】
以下、本発明の浮き補修工法の一実施態様と本発明の共浮き抑え治具の使用方法を、その工程順に沿って図2~6を用いながら説明する。なお、本明細書において、同一部材には同一符号を付す。
【0013】
「浮き補修工法」
・穿孔工程
タイル直張り外壁は、躯体1と、張付けモルタル2と、タイル3とを備え、躯体1と張付けモルタル2との間の浮き4が存在する。タイル3は、最も一般的な大きさであり、いわゆる45二丁掛タイルと呼ばれる45mm×95mmの寸法である。また、隣接するタイルの間には目地が存在する。
本発明の補修工法はこの一実施態様に限定されず、例えば、タイルは、45二丁掛タイルに限定されない。また、躯体には、コンクリートの打継ぎ面や型枠の継ぎ目等に生じた凹凸を平滑にするため、部分的に下地調整モルタルにより不陸調整が行われる場合があるが、本発明の補修工法は、躯体と張付けモルタルとの間に、部分的に下地調整モルタルを有することもできる。
【0014】
最初に、テストハンマー等を用いてタイル直張り外壁表面を軽く打診し、躯体1から剥離した張付けモルタル2の浮き4を確認し、浮き領域をマーキングする。また、必要に応じて、内視鏡等により、浮き代(躯体と張付けモルタルとの間隔)の幅を確認する。
浮き領域内で最も浮き代が大きい部分、または、浮き領域の中心に、無振動ドリル等を用いて基準となる孔部5を穿孔する(図2)。さらに、浮き領域内において、この基準となる孔部から上下左右に約30cmの間隔で複数個の孔部をいずれもタイル中央部に穿孔する。この際、浮き領域の端部から孔部の間隔の半分以内の部分、例えば、孔部の間隔が30cmである一実施態様である補修工法では、浮き領域の端部から15cm以内の部分には、孔部を穿孔しないことが好ましい。孔部が浮き領域の端部に近いと、注入材により浮き領域が広がってしまう場合がある。孔部は、躯体内に20mm以上の深さとなるように穿孔する。また、孔部の開口部に、後述する化粧キャップを収容するための、孔部の孔径よりも径が大きい浅い孔を穿つ、いわゆる2段掘を行う。
【0015】
また、浮き領域内の端部等に、エア抜きのための孔を設けることができる。エア抜き用の孔は、注入材注入時に内部の気体を放出するためのものであり、アンカーピンの挿入や、注入材の注入は行われない。エア抜き用の孔は、タイル、目地のどちらに設けてもよいが、施工後の穴埋めが容易であることから、目地に設けることが好ましい。
【0016】
ここで、本発明の補修工法において、隣接する孔部の間隔は、20cm以上35cm以下であることが好ましい。隣接する孔部の間隔が20cm未満では、穿孔する孔部の数が多くなり、施工に手間がかかる。隣接する孔部の間隔が35cmより大きいと、一つの孔部に注入する注入材量が多くなり、孔部を中心とした円形に広がりにくくなる。また、複数個の孔部は、上下左右に四角形の頂点位置となるように設けることが容易ではあるが、このような配置に限定されず、例えば、三角形の頂点位置となるように設けることもできる。
【0017】
・アンカーピン固定工程
孔部5から、接着の妨げとなる粉塵を圧縮空気等で除去した後、孔部5に注入口付きアンカーピン6を挿入する。注入口付きアンカーピン6は、中空軸状であり、先端部は拡開して躯体に食い込む構造である。また、注入口付きアンカーピン6は、側壁の先端部近傍から中程にかけて開口、基端に雌ねじ部を備える。孔部5に挿入した注入口付きアンカーピン6の先端部を、押し込み棒等により拡開し、注入口付きアンカーピン6を躯体1に強固に固定する(図3)。この際、特開2018-40232号公報に記載のアンカーパイプの無音打ち込み方法を用いることもできる。
【0018】
・共浮き抑え治具固定工程
本工程において、共浮き抑え治具を使用する。以下、上記で説明した一例である共浮き抑え治具10を例に説明する。
躯体1に固定した注入口付きアンカーピン6の基端側の雌ねじ部に、延長管11の雄ねじ部111を螺合する。続いて、外壁から突出した延長管11に抑え部材12の挿入口124を挿通して抑え部材12を掛止し、押圧部112により抑え部材12をタイル3に接触した状態で固定する(図4)。一例である共浮き抑え治具10では、押圧部112は、蝶ナットであり、工具を用いることなく作業者が手で押圧部112(蝶ナット)を延長管11の軸方向に移動させることができる。抑え部材は、所定の当接部がタイルに接触すればよい。浮き代が狭くなり注入材が広がりにくくなってしまうため、当接部が接触してから共浮き抑え治具を躯体側に向けてさらに押し付ける必要はない。
【0019】
本発明の共浮き抑え治具において、浮き抑え部材の大きさは、孔部が穿孔されたタイルと、このタイルに隣接するタイルを抑えられる大きさ、形状であればよい。例えば、外枠の形状は、矩形に限定されず、円形、六角形等とすることができる。また、浮き抑え部材の材質は、共浮きを抑えられるだけの強度を有するものであれば特に制限されず、金属、プラスチック、木材等を用いることができる。これらの中で、軽量であり施工場所への運搬が容易であること、万が一落下した際も被害を小さくできることから、プラスチックが好ましい。
【0020】
本発明の浮き補修工法は、共浮き抑え治具を、躯体や足場ではなく、注入口付きアンカーピンに固定するため、共浮き抑え治具を容易に、かつ、短時間で設置することができる。なお、本発明の共浮き抑え治具において、抑え部材の延長管への設置方法は特に制限されない。また、本発明の共浮き抑え治具において、押圧部は、注入材の注入時に抑え部材の延長管軸方向の移動を制限できるものであれば特に制限することなく使用することができ、例えば、ナット、フランジ付きナット等を用いることができる。
【0021】
・接着工程
手動式注入器等を用いて、延長管11の注入口から注入材7を注入する(図5)。注入材7は、延長管11と注入口付きアンカーピン6の内部を通り、さらに開口を通過して浮き内で円形に拡散する。この際、切欠部125から、注入口付きアンカーピン6と延長管11との接続箇所から注入材7の漏れが起きているかを視認することができる。そして、本発明の浮き補修工法は、共浮き抑え治具により外壁の延長管軸方向への動きが制限されているため、注入時の共浮きを防止することができる。
【0022】
注入材としては、揺変性(チキソ性)と、浮き内で流れ落ちないだけの粘度を備えているものであれば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等からなるものを特に制限することなく使用することができ、JIS A6024で規格される高粘度形のものが、浮き内でゆっくりと拡散し、躯体と張付けモルタルとを強固に張り付けることができるため好ましい。また、高粘度形の中でもJIS A6024に準拠するスランプ性が3.0以下のものがより好ましく、スランプ性が1.0以下のものがより好ましく、JIS K6833に準拠する粘度が21000mPa・s以上35000mPa・s以下である(中粘度形は5000~20000mPa・s)ものが、揺変性に優れるため最も好ましい。このような揺変性に優れた高粘度形注入材としては、市販されているものを適宜用いることができる。高粘度形の注入材は拡散が遅いため、注入直後の共浮きが大きくなる傾向があるが、本発明の補修工法は、共浮き抑え治具により共浮きを抑えることができる。
【0023】
本発明は、注入材を孔部が形成されたタイルよりも広い領域に拡散させることを特徴とするが、一実施態様である補修工法では、注入材7は、孔部5を中心として、孔部5の間隔と同一の直径である直径30cmの円形領域を充填できる量だけ注入されている。一実施態様である補修工法では、0.81m=90cm×90cmの浮き領域に対し、30cm間隔で設けられた9個の孔部を中心として直径30cmの領域に注入材が拡散しており、注入材が拡散している注入領域は、0.636m=15cm×15cm×π×9である。そのため、一実施態様である補修工法において、接着比率は78.5%(=0.636/0.81)となる。日本建築学会(JASS)の「建築工事標準仕様書・同解説JASS19 陶磁器質タイル張り工事」の規定に定められている接着比率は60%以上であるから、一実施態様である補修工法により、十分に浮き領域を補修し、タイルの剥落を防ぐことができる。なお、実際には、注入材が存在しない未注入領域が存在することにより、応力集中が緩和されるため、浮き領域の全面に注入材が充填された場合よりも、剥落抑制効果が高い。ただし、施主等の要求に応じて、未注入領域が少なくなるように、例えば、四角形の頂点位置に穿孔された4個の孔部の中心に穿孔し、この孔部から直径10cmほどの円形領域を形成するように注入材を注入し、接着比率をさらに高くすることもできる。
【0024】
・解除工程
注入材7が十分に広がった後に、押圧部112、抑え部材12、延長管11の順で取り外すことにより、共浮き抑え治具を取り外す。
続いて、孔部周辺を清掃し、孔部の開口部にタイルと同系色に焼付けした化粧キャップ8をプラスチックハンマー等を用いて打ち込み装着する(図6)。また、必要に応じてエア抜き孔の埋め戻し等を行う。化粧キャップをタイルと同系色にすることにより、補修工事を実施したことを視認し難くして、建築物の風合、景観を保ち、その資産価値の低下を防止することができる。
【符号の説明】
【0025】
10 共浮き抑え治具 1 躯体
11 延長管 2 張付けモルタル
111 雄ねじ部 3 タイル
112 押圧部 4 浮き
12 抑え部材 5 孔部
121 内枠 6 注入口付きアンカーピン
122 外枠 7 注入材
123 支持フレーム 8 化粧キャップ
124 挿入口
125 切欠部
図1
図2
図3
図4
図5
図6