(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045219
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】補強木質建材
(51)【国際特許分類】
E04C 3/14 20060101AFI20220311BHJP
B27M 3/00 20060101ALI20220311BHJP
B27D 1/04 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
E04C3/14
B27M3/00 C
B27D1/04 E
B27D1/04 F
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150791
(22)【出願日】2020-09-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】507403160
【氏名又は名称】株式会社中東
(74)【代理人】
【識別番号】100148792
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 大智
(72)【発明者】
【氏名】小坂 勇治
【テーマコード(参考)】
2B200
2B250
2E163
【Fターム(参考)】
2B200AA01
2B200BA01
2B200BA11
2B200BB02
2B200CA09
2B200DA04
2B200DA27
2B200ED10
2B250AA01
2B250BA04
2B250CA11
2B250DA04
2B250EA02
2B250FA13
2B250FA31
2B250FA41
2B250GA03
2B250GA07
2E163FA02
2E163FA12
2E163FC03
2E163FC05
2E163FC38
(57)【要約】
【課題】 単位木材に補強筋埋設用溝を刻設する等の加工を施す必要がなく、プレス機による作業だけで補強筋を効果的に内在させることができる補強構造を備えた補強木質建材の提供。
【解決手段】 本発明に係る補強木質建材1は、単位木材2を幅接ぎした木材層3を積層して成り、該積層方向の上端と下端にそれぞれ存し、同積層方向の全厚の1/8以内の厚さの外層部3Aと、該各外層部3Aの間に存する内層部3Bとを備え、上記外層部3A及び/又は上記内層部3Bを構成する木材層3の一部又は全部を補強層4とし、該補強層4は、単位木材2の幅接ぎ方向を当該木質建材1の長手方向に直交する方向とすると共に幅接ぎ目地内に補強筋5を配設した構造を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位木材を幅接ぎした木材層を積層して成り、該積層方向の上端と下端にそれぞれ存し、同積層方向の全厚の1/8以内の厚さの外層部と、該各外層部の間に存する内層部とを備え、上記外層部及び/又は上記内層部を構成する木材層の一部又は全部を補強層とし、該補強層は、単位木材の幅接ぎ方向を当該木質建材の長手方向に直交する方向とすると共に幅接ぎ目地内に補強筋を配設した構造を備えることを特徴とする補強木質建材。
【請求項2】
上記補強筋は鋼製又は合成樹脂製であることを特徴とする請求項1記載の補強木質建材。
【請求項3】
上記補強層は一部又は全ての幅接ぎ目地内に上記補強筋を配設した構造を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の補強木質建材。
【請求項4】
上記補強筋は、上記幅接ぎ目地に嵌合して配設されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の補強木質建材。
【請求項5】
上記補強筋は、上記幅接ぎ目地内に接着剤を介して埋設されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の補強木質建材。
【請求項6】
上記補強筋は、該補強筋の長手方向に沿う凹部を備えることを特徴とする請求項5記載の補強木質建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内在する補強筋によって補強を施した木質建材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、木質建材は構造材としても利用されることが増え、それに伴い、どのように補強するかが重要な課題となっている。
【0003】
合板、LVL(Laminated Veneer Lumber、単板積層材)、CLT(Cross Laminated Timber)、集成材、接着重ね梁等に代表される木質建材は、ラミナ等の板状単位木材やエレメント等の角柱状単位木材を幅接ぎした単位木材層の単層構造又は積層構造を有しており、組み合わせた複数の単位木材をプレス機で加圧しながら接着し一体化して構成される。
【0004】
よって、木質建材においては、プレス機を利用して複数の単位木材を一体化する際に、同時に補強筋を内在させるのが最も効率が良く且つ確実な補強方法兼製造方法である。
【0005】
たとえば、木質建材に補強筋を内在させる補強構造として、下記特許文献1,2の補強木質建材の構造が既知である。
【0006】
下記特許文献1,2の補強木質建材は、何れも、単位木材たるラミナに補強筋配設用溝を刻設し、該補強筋埋設用溝内に接着剤を介して補強筋を埋設する補強構造を有しており、プレス機を利用して複数の単位木材を接着する際に、同時に補強筋を埋設することができ、容易且つ確実に補強筋を内在させた補強構造を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-1431号公報
【特許文献2】特開2009-30299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1,2の補強木質建材にあっては、プレス機によって製造できるとしても、当然に単位木材に補強筋埋設用溝を刻設する工程が必須であり、結局、プレス機による作業以外に単位木材を加工する作業が必要となる。
【0009】
構造材としても多用されることになった木質建材において、単位木材に加工を施すことなく、単位木材と補強筋をそれぞれセットし、プレス機によって圧縮接着するだけで補強筋を内在させた補強構造が実現できる補強木質建材は強く要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、単位木材に補強筋埋設用溝を刻設する等の加工を施す必要がなく、プレス機による作業だけで補強筋を効果的に内在させることができる補強構造を備えた補強木質建材を提供する。
【0011】
要述すると、本発明に係る補強木質建材は、単位木材を幅接ぎした木材層を積層して成り、該積層方向の上端と下端にそれぞれ存し、同積層方向の全厚の1/8以内の厚さの外層部と、該各最外層部の間に存する内層部とを備え、上記外層部及び/又は上記内層部を構成する木材層の一部又は全部を補強層とし、該補強層は、単位木材の幅接ぎ方向を当該木質建材の長手方向に直交する方向とすると共に幅接ぎ目地内に補強筋を配設した構造を備えたことにより、プレス機による作業だけで製造することができると共に、容易且つ確実に補強筋を内在させて補強を図ることができる。
【0012】
好ましくは、上記補強筋は鋼製又は合成樹脂製とし、重量等を調整しつつ確実な補強を図る。
【0013】
また、上記補強層は一部又は全ての幅接ぎ目地内に上記補強筋を配設した構造を備えることにより、補強強度や補強箇所等に基づいて、適宜、上記補強筋を配設する上記幅接ぎ目地を選択することができる。
【0014】
また、上記補強筋は、上記幅接ぎ目地に嵌合して配設されることにより、接着剤等を介すことのない簡便な配設が可能となる。
【0015】
又は、上記補強筋は、上記幅接ぎ目地内に接着剤を介して埋設されることにより、強固に固定された状態での配設が可能となる。好ましくは、上記補強筋は、該補強筋の長手方向に沿う凹部を備える構成とし、該凹部に接着剤を受け入れることによって、より強固に固定されることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る補強木質建材は、単位木材の幅接ぎ目地内に補強筋を配設することにより、プレス機による加圧接着のみで製造することができる。
【0017】
また、本発明に係る補強木質建材は、外層部及び内層部の双方に補強筋を配設すれば、全体的な補強ができ、引張力や圧縮力が加わる外層部に限定して補強筋を配設すれば、曲げ強度やヤング係数を高める補強ができ、外層部で挟まれた内層部に限定して補強筋を配設すれば、中心軸部分において有効に補強効果を発揮することができる。いずれにしても、必要な補強の強度や補強箇所等によって、適宜、外層部及び/又は内層部を構成する木材層の全部又は一部を補強層とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例1に係る補強木質建材の斜視図である。
【
図2】実施例2に係る補強木質建材の斜視図である。
【
図3】実施例3に係る補強木質建材の斜視図である。
【
図4】補強層を拡大して示す説明図であり、(A)は板状の補強筋を配設した例を示す説明図、(B)は棒状の補強筋を配設した例を示す説明図である。
【
図5】板状の補強筋の他例を示す斜視図であり、(A)は幅狭の凹部を複数設けた例を示す斜視図、(B)は幅広の凹部を設けた例を示す斜視図である。
【
図6】実施例4に係る補強木質建材の斜視図である。
【
図7】単位木質建材を二次接着して本発明に係る補強木質建材を製造する例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る補強木質建材の最適な実施例について、
図1乃至
図7に基づき、説明する。
【0020】
〈基本構成〉
図1乃至
図3,
図6に示すように、本発明に係る補強木質建材1は、梁や柱等の構造材として利用することを前提としたものであり、複数の単位木材2を幅接ぎした木材層3を積層接着して成り、積層方向の上端と下端にそれぞれ存し、同積層方向の全厚(補強木質建材の高さ)Hの1/8以内の厚さhの外層部3Aと、該各外層部3Aの間に存する内層部3Bとを備える基本構造を有している。
【0021】
本発明における単位木材2は、カラマツ、ベイマツ、スギ、ヒノキ、ヒバ等の木質建材の単位部材として既に利用されている木材を加工したものを用いることができる。なお、後述する各実施例においては、単位木材2を板状として示しているが、これに限らず、角柱状とすることも、実施に応じ任意である。
【0022】
また、本発明において、単位木材2の幅接ぎ接着、後述する補強筋5の埋設及び単位木質建材6の積層接着に用いる接着剤は、レゾルシノール系接着剤、フェノール系接着材やレゾルシノール・フェノール系接着材に代表される既知の木質建材用の接着剤である。
【0023】
〈実施例1〉
実施例1に係る補強木質建材1にあっては、
図1に示すように、外層部3Aを構成する木材層3の全部と、内層部3Bを構成する木材層3の全部を補強層4とし、該補強層4は、単位木材2の幅接ぎ方向を当該木質建材1の長手方向に直交する方向とすると共に幅接ぎ目地3a内に補強筋5を配設した構造を備える。このように、外層部3Aにも内層部3Bにも補強層4を設けることにより、補強木質建材1の外側部分も中心軸部分も補強することができる。
【0024】
また、補強筋5としては、
図4(A)に示すように、金属製又は炭素繊維強化プラスチック、アラミド繊維強化プラスチック等の合成樹脂製の細板状体を使用することができる。又は、
図4(B)に示すように、補強筋5として、金属製又は合成樹脂製の小径棒状体を使用することができる。小径棒状体の補強筋5を用いる時には、
図4(B)に示すように、複数本の補強筋5を配設しても良い。
【0025】
本発明にあっては、補強筋5は幅接ぎ目地3a内に配設するために、10mm以内の幅とすることが望ましく、また、小径棒状体よりも細板状体の補強筋5の方が幅接ぎ目地3a内を効率的に埋めることができるため、好ましい。
【0026】
補強層4において、補強筋5は幅接ぎ目地3aに嵌合して配設される。すなわち、隣接する一対の単位木材2で補強筋5を挾持することにより配設することができる。これにより、接着剤等を介すことのない簡便な配設が可能となる。特に、補強層4が内層部3Bにある場合には、内層部3Bは外層部3A間において強固に積層接着されている部分であるから、補強筋5の幅接ぎ目地3aへの配設に接着剤を用いないとしても、当該補強筋5の固定が解除されてしまうおそれはない。
【0027】
又は、補強筋5は幅接ぎ目地3a内に接着剤を介して埋設される。これにより、強固に固定された状態での配設が可能となる。このように、接着剤を介して補強筋5を配設する場合、
図5(A)・(B)に示すように、補強筋5を当該補強筋5の長手方向に沿う凹部5aを備える構成とし、該凹部5aに接着剤を受け入れることによって、より強固に固定されることができる。該凹部5aは、
図5(A)に示すように、幅狭の凹部5aとして複数設けても良いし、
図5(B)に示すように、幅広の凹部5aとして設けても良い。また、該凹部5aは補強筋5の長手方向に沿っていれば、連続しているか又は不連続であるかは問わない。
【0028】
なお、本発明においては、補強筋5は補強層4における全ての幅接ぎ目地3aに配設する必要はなく、一部の幅接ぎ目地3aにのみ配設することもできる。
【0029】
〈実施例2〉
実施例2に係る補強木質建材1にあっては、
図2に示すように、内層部3Bを構成する木材層3の一部を補強層4とし、該補強層4は、単位木材2の幅接ぎ方向を当該木質建材1の長手方向に直交する方向とすると共に幅接ぎ目地3a内に補強筋5を配設した構造を備える。すなわち、本実施例の補強木質建材1が実施例1とは異なるのは、内層部3Bに限定して補強層4を設けた点と、内層部3Bの一部の木材層3のみを補強層4とした点にある。
【0030】
このように、内層部3Bのみに補強層4を設けることにより、補強木質建材1の中心軸部分を補強することができる。また、内層部3Bは外層部3A間において強固に積層接着されている部分であるから、補強筋5を介在させることによる積層接着強度の低下を考慮する必要がない
【0031】
また、本実施例における補強筋5の形態及び配設方法は実施例1と同様であるので、ここでは説明を割愛する。
【0032】
〈実施例3〉
実施例3に係る補強木質建材1にあっては、
図3に示すように、外層部3Aを構成する木材層3の全部を補強層4とし、該補強層4は、単位木材2の幅接ぎ方向を当該木質建材1の長手方向に直交する方向とすると共に幅接ぎ目地3a内に補強筋5を配設した構造を備える。すなわち、本実施例の補強木質建材1が実施例1とは異なるのは、外層部3Aに限定して補強層4を設けた点にある。
【0033】
このように、外層部3Aのみに補強層4を設けることにより、引張力や圧縮力が加わる部分に限定して補強することができる。
【0034】
また、本実施例においても、補強筋5の形態及び配設方法は実施例1と同様である。
【0035】
〈実施例4〉
実施例4に係る補強木質建材1は、
図6に示すように、単位木材2の幅接ぎ方向が木材層3ごとに互いに直交する構成となっており、外層部3Aと内層部3Bを構成する木材層3の一部を補強層4とする構成となっている。
【0036】
また、補強層4とする木材層3は、その幅接ぎ目地3aが、補強木質建材1の長手方向に沿うものであれば、いずれの幅接ぎ目地3aであっても補強筋5を配設することができる。本実施例においては、外層部3A及び内層部3Bを構成する木材層3の内、幅接ぎ方向が補強木質建材1の長手方向に直交する方向である木材層3の全てを補強層4とし、当該補強層4の全ての幅接ぎ目地3aに補強筋を配設した点が特筆すべき点である。
【0037】
また、本実施例においても、補強筋5の形態及び配設方法は実施例1と同様である。
【0038】
〈二次接着例〉
図7は単位木材2を一次接着して単位木質建材6を製造し、複数の単位木質建材6を二次接着して大断面の補強木質建材1を製造する例を示している。この場合も、予め製品となった際に内層部3Bとなる部分の木材層3の幅接ぎ目地3aに限定して補強筋5を配設し、補強層4とすることができる。また、本実施例においても、補強筋5の形態及び配設方法は実施例1と同様である。
【0039】
以上のとおり、本発明に係る補強木質建材1には、単位木材2の幅接ぎ目地3a内に補強筋5を配設することにより、プレス機による加圧接着のみで製造することができる。
【0040】
また、本発明に係る補強木質建材1は、外層部3A及び内層部3Bの双方に補強筋5を配設すれば、全体的な補強ができ、引張力や圧縮力が加わる外層部3Aに限定して補強筋5を配設すれば、曲げ強度やヤング係数を高める補強ができ、外層部3Aで挟まれた内層部3Bに限定して補強筋5を配設すれば、中心軸部分において有効に補強効果を発揮することができる。
【0041】
加えて、補強層4における幅接ぎ目地3aの一部に補強筋5を配することも、全部に補強筋5を配することもできる。
【0042】
いずれにしても、必要な補強の強度や補強箇所等によって、適宜、外層部3A及び/又は内層部3Bを構成する木材層3の全部又は一部を補強層4とすることができ、補強層4における幅接ぎ目地3aであれば、どの幅接ぎ目地3a内にも補強筋を配設することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…補強木質建材、2…単位木材、3…木材層、3A…外層部、3B…内層部、3a…幅接ぎ目地、4…補強層、5…補強筋、5a…凹部、6…単位木質建材、H…木質建材の厚さ、h…外層部の厚さ。