(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045224
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】保温シート
(51)【国際特許分類】
A45C 11/20 20060101AFI20220311BHJP
【FI】
A45C11/20 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150796
(22)【出願日】2020-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】延壽 和魂
(72)【発明者】
【氏名】南部 元俊
【テーマコード(参考)】
3B045
【Fターム(参考)】
3B045BA13
3B045CB03
3B045CC04
3B045CE04
3B045CE07
3B045DA41
3B045FC04
(57)【要約】
【課題】簡素で安価な構成でありながら高い汎用性をもって任意の弁当箱等の加温と保温が可能であるとともに、ユーザの不在などによって弁当箱等の加温と保温が不要であると想定される場合の電力の浪費を防ぐことができる保温シートを提供すること。
【解決手段】伸縮性および屈曲性のある基材によって形成されているPTCヒーターシート11と、電子機器から開始時刻情報と終了時刻情報とを受信する通信モジュール121と、PCTヒーターシート11への通電のオンまたはオフする制御部122とを備える保温シート1において、制御部122は、通信モジュール121が電子機器との間での通信が可能であることが認識できたことを条件として、PTCヒーターシート11への通電をオンする構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性および屈曲性のある基材によって形成されているPTCヒーターシートと、
予めペアリングされた電子機器との間で通信を行い、前記電子機器において設定された開始時刻情報と終了時刻情報とを受信する通信モジュールと、
前記開始時刻情報に基づいて前記PTCヒーターシートへの通電のオンし、前記終了時刻情報に基づいて前記PTCヒーターシートへの通電をオフする制御部と、
外部からの給電を受けるための給電用接続部と、
を備える保温シートであって、
前記通信モジュールと前記制御部は、
前記給電用接続部が受けた外部からの給電によって動作し、
前記制御部は、
前記通信モジュールが前記電子機器との間での通信が可能であることが認識できたことを条件として、前記PTCヒーターシートへの通電をオンすることを特徴とする保温シート。
【請求項2】
前記PTCヒーターシートの一方の面上に、磁力シートが貼付されていることを特徴とする請求項1に記載の保温シート。
【請求項3】
前記磁力シートは、複数のピースであることを特徴とする請求項2に記載の保温シート。
【請求項4】
前記給電用接続部が電気コネクタであり、
前記電気コネクタが防水性を備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の保温シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、保温シートに関するものである。より詳細には、伸縮性と屈曲性を有し、保温する対象物に対して柔軟に変形可能な態様の保温シートであって、弁当箱の加熱や保温、あるいは、冷凍されている飲食物の解凍に好適なものであり、さらには、足膝の暖房補助としても使用可能な保温シートに関する。
【背景技術】
【0002】
日本の会社員などのうち、職場等へ弁当を持参する者が3割以上に及ぶと言われている。このような事情を背景として、様々な材質やデザインの弁当箱が各社から発売され、例えば、女性の間で木製の曲げわっぱの弁当箱が人気となるなど、弁当箱そのもののデザイン性や材料の質感等を楽しむ文化が生まれている。また、欧米諸国でも、日本語の「弁当」と同音の「BENTO」との呼称が定着しつつあり、日本式の弁当箱の人気が高まっている。
【0003】
一般に、会社員が出勤する前の朝に作られた弁当は、昼食時には冷めてしまう。そのため、温かい状態で食べることを望む場合には、職場に設置してある電子レンジ等で加熱する必要が生じる。しかしながら、多くの場合、そのような電子レンジは同職場内の複数の社員間で共用することが前提であり、電子レンジが設置されている場所までの移動時間、あるいは、電子レンジを使用する順番待ちの時間など、加熱するための時間が発生してしまう。
【0004】
このような状況に対応するべく、例えば、引用文献1には、弁当箱にヒーターを配設するとともに、当該ヒーターの電源及び導通制御回路を内蔵したケースを着脱自在とした上で、タイマーによって当該ヒーターの導通を制御可能に構成した弁当加温装置が提案されている。
【0005】
なお、電子レンジによる加熱を行わなくても温かい弁当を食べることができる弁当箱として、保温性能を重視した弁当箱が挙げられるが、そのような弁当箱の選択肢は、現時点ではランチジャーに限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したとおり、昨今、弁当箱そのもののデザイン性や材料の質感等を楽しみたいという要求が増大している。一般に、アルミニウムや木製の弁当箱は、電子レンジでの加熱には不適であり、電子レンジによる加熱を前提としていては、このような要求が十分に満たされることはない。同様の観点から見れば、特許文献1に開示されている弁当加温装置における課題は、当該装置の構成に適合する専用の弁当箱にしか適用できない点、すなわち、汎用性に欠ける点にある。そのため、既に所有している弁当箱や、新しい弁当箱を自由に選択して使用することができない。上述の要求、すなわち、弁当箱のデザイン性や質感等を楽しむためには、高い汎用性をもって、様々な形状、寸法、材質の弁当箱等を加温および保温可能であることが求められる。
【0008】
また、特許文献1に開示されている弁当加温装置は、単にタイマーによってヒーターの導通を制御する構成であるため、ユーザが不在の場合であってもタイマーの設定に基づいてヒーターをオンするものである。したがって、ユーザの外出等によって不意に弁当による食事が不要となった場合であっても、電力を消費してしまう。
【0009】
本願発明は、このような課題を鑑みてなされたものであって、簡素で安価な構成でありながら、高い汎用性をもって任意の弁当箱等の加温と保温が可能であること、および、ユーザの不在などによって弁当の加温と保温が不要であると想定される場合の電力の浪費を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本願発明による保温シートは、伸縮性および屈曲性のある基材によって形成されているPTCヒーターシートと、予めペアリングされた電子機器との間で通信を行い、前記電子機器において設定された開始時刻情報と終了時刻情報とを受信する通信モジュールと、前記開始時刻情報に基づいて前記PTCヒーターシートへの通電のオンし、前記終了時刻情報に基づいて前記PTCヒーターシートへの通電をオフする制御部と、外部からの給電を受けるための給電用接続部とを備え、前記通信モジュールと前記制御部は、前記給電用接続部が受けた外部からの給電によって動作し、前記制御部は、前記通信モジュールが前記電子機器との間での通信が可能であることが認識できたことを条件として、前記PTCヒーターシートへの通電をオンすることを特徴とする。
【0011】
本願発明による保温シートを用いることで、職場等で自席における弁当箱の加熱と保温が可能となり、電子レンジが設置されている場所までの移動時間、あるいは、電子レンジの順番待ちの時間などの時間を省くことができる。また、プラスチック等に加えて、アルミニウム等の金属製あるいは木製など、電子レンジでは加熱できない材質の弁当箱を加熱することが可能となるとともに、PTCヒーターシートが伸縮性および屈曲性のある基材によって形成されていることで、弁当箱を包むときに様々な形状の弁当箱にフィットして包みやすく、さらには、このような使用に伴う屈曲への耐久性を確保することができる。
【0012】
また、通信モジュールが電子機器との間での通信が可能であることが認識できたことを条件としてPTCヒーターシートへの通電をオンすることとしたため、電子機器と保温シートとの間での通信ができない程度に相互間の距離が離れている場合、すなわち、電子機器を持っているユーザが保温シートの周囲に存在しておらず、弁当の加温と保温が不要である可能性が高いと想定される場合には、通電をオンしないことで電力の浪費を防ぐことができる。
【0013】
本願発明による保温シートにおいて、前記PTCヒーターシートの一方の面上に、磁力シートが貼付されている態様であってよい。
【0014】
前記PTCヒーターシートの一方の面上に磁力シートを貼付したことで、金属製の机や壁等の平面部に対して磁力によって貼り付けることで収納することができる。また、例えば、机の下面等に貼り付けて使用することで、寒冷期における弁当箱の加温で使用する以外の時間帯に、机下の足膝部分を保温する暖房補助器具としても使用することができる。
【0015】
また、本願発明による保温シートにおいて、前記磁力シートは、複数のピースである態様であってよい。
【0016】
磁力シートを複数のピースとしたことで、保温シートの使用に伴うPTCヒーターシートの伸縮や屈曲に柔軟に追従することができ、PTCヒーターシートが柔軟に変形することを妨げることがない
【0017】
また、本願発明による保温シートにおいて、前記給電用接続部が電気コネクタであり、前記電気コネクタが防水性を備える態様であってよい。
【0018】
PTCヒーターシートと、外部から電源供給を受けるための給電ケーブルとの間の給電用接続部を電気コネクタとしたことで、屈曲への耐久性を確保できるとともに、当該電気コネクタが防水性を備えていることで、弁当箱から水分が漏出した場合の不具合を未然に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
本願発明によれば、簡素で安価な構成でありながら高い汎用性をもって任意の弁当箱の加温と保温が可能であること、および、ユーザの不在などによって弁当の加温と保温が不要であると想定される場合の電力の浪費を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本願発明に係る保温シートの実施例の概観図である。
【
図2】本願発明に係る保温シートの実施例の一方の面を平面視した図である。
【
図3】本願発明に係る保温シートの実施例によって弁当箱を包み込んだ状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本願発明に係る保温シートの実施例について、
図1ないし
図3を用いて説明する。
図1は、本願発明に係る保温シート1の実施例の概観図、
図2は、
図1に示す実施例の一方の面の平面図、
図3は、
図1に示す実施例によって弁当箱を包み込んだ状態を示す図である。
【0022】
図1に示すように、本願発明に係る保温シート1は、PTCヒーターシート11、回路基板12に実装されている通信モジュール121および制御部122、給電用接続部13によって構成される。
【0023】
PTCヒーターシート11は、その基材として、例えば、シリコンなど、十分な柔軟性があり、伸縮性と屈曲性に優れた材料を用いて形成されている。そのため、
図3に示すような態様で弁当箱5を包む場合、様々な形状の弁当箱に柔軟にフィットして包みやすいとともに、加温、保温の効率を高めることができる。さらには、使用に伴うPTCヒーターシート11の屈曲への耐久性を確保することができる。
【0024】
なお、本願発明に係る保温シート1は、母乳フリーザーパックや食品の冷凍パックなど、冷凍されている飲食物の解凍および加温と保温する目的にも好適に使用することができる。中に飲食物が入っているフリーザーパックや冷凍パックは、冷凍庫内で、他の冷凍保存品との接触によって様々な形状に変形した状態で凝固する。このような状態のフリーザーパックや冷凍パックであっても、本願発明に係る保温シート1は柔軟に密着して包み込むことができるため、加温、保温の効率が高まり、その結果、解凍時間の短縮が可能となる。
【0025】
本実施例では、PTCヒーターシート11と給電用ケーブル4との間を接続して外部からの給電を受ける給電用接続部としてUSBコネクタ13を用いている。給電用ケーブル4の他端は、モバイルバッテリー2、または、家庭内コンセントに接続される給電用のACアダプター3と接続される。USBコネクタ13は防水機能を備えており、弁当箱の中の食べ物から水分や油分が漏出した場合であっても、電気的導通に係る不具合を未然に防ぐことができる。
【0026】
なお、USBコネクタ13等の給電用接続部を用いずに、PTCヒーターシート11と給電用ケーブル4との間をリベット止め等の方法で直接に接続する態様の場合、保温シート1の使用に伴う接続部分の屈曲や引っ張りが生じることで断線や破損が生じ易い欠点があるが、USBコネクタ13を用いることで、このような欠点が解消される。加えて、外部から電源供給を受けるための給電用ケーブル4として、広く普及しているUSB接続用ケーブルを用いることができる。
【0027】
回路基板12は、PTCヒーターシート11と電気的に接続された状態でPTCヒーターシート11の隅部に配設されている。回路基板11の主面上には、通信モジュール121と制御部122とが実装されている。回路基板12は、USBコネクタ13と電気的に接続されており、USBコネクタ13から、通信モジュール121と制御部122が動作するための電源が供給される。
【0028】
通信モジュール121は、Bluetooth(“Bluetooth”は登録商標である)による通信を行うためのものであって、予めペアリングされたスマートフォン等のBluetooth通信に対応した電子機器(図示しない)との間で情報を送受信可能である。通信モジュール121は、USBコネクタ13が給電ケーブル4から受けた外部からの給電によって動作し、電子機器から、少なくとも保温シート1による保温の開始時刻情報と終了時刻情報とを受信することができる。なお、通信モジュール121と制御部122とは、1つのマイクロコントローラと周辺回路によって統合的に構成されてもよい
【0029】
保温シート1による保温の開始時刻と終了時刻は、スマートフォン等の電子機器に予めインストールされている専用アプリケーションを用いて、ユーザが任意に設定する。ユーザの所望する開始時刻と終了時刻とを予め設定しておくことで、所望する時刻に通電をオンにすること、あるいはオフにすることを忘れてしまうことを防ぐことができる。
【0030】
制御部122は、通信モジュール121と電気的に接続されており、PTCヒーターシート11への通電をオンまたはオフするための回路を含んでいる。制御部122は、USBコネクタ13が給電ケーブル4から受けた外部からの給電によって動作し、スマートフォン等の電子機器から通信モジュール121が受信した開始時刻情報に基づいてPTCヒーターシート11への通電のオンし、通信モジュール121が受信した終了時刻情報に基づいてPTCヒーターシート11への通電をオフする。
【0031】
また、制御部122は、通信モジュール121がスマートフォン等の電子機器との間での通信が可能であることが認識できたことを条件として、PTCヒーターシート11への通電をオンする。
【0032】
上述した特許文献1に開示されているような単純なタイマーによって通電をオンまたはオフする構成の場合は、ユーザが不在の場合であってもタイマーの設定に基づいてヒーターをオンする。すなわち、ユーザの外出等によって不意に弁当による食事が不要となった場合、あるいは、弁当を持参していない場合や休日等の場合など、保温シートを使用しないにもかかわらず給電ケーブルを抜去することを忘れた際に、保温シートを使用する必要がなくても、予め設定した時間になると通電がオンしてしまい、無用に電力を消費してしまう。
【0033】
この点、本実施例では、通信モジュール121がスマートフォン等の電子機器との間での通信が可能であることが認識できたことを条件としてPTCヒーターシート11への通電をオンすることとしたため、通信モジュール121の通信相手となる電子機器と保温シート1との間が、Bluetoothによる通信ができない程度の距離に離れていて、通信モジュール121と電子機器との間で通信が不可能な状態の場合には、PTCヒーターシート11への通電をオンしない。電子機器を持っているユーザが保温シート1の周囲に存在していない場合は、弁当の加温と保温が不要である可能性が高いと想定されるため、このような場合に通電をオンしないことで、電力の浪費を防ぐことができる。
【0034】
図2に示すように、本願発明の保温シート1の裏面には、矩形の小片からなる複数のピースに形成され、一定の適度な間隔を空けて連続的に配設した磁力シート14が貼付されている。この磁力シート14によって、保温シート1を使用しない間、例えば、金属製の机や壁等の平面部に貼り付けて収納することができる。また、机の下面等に貼り付けて使用することで、机下の足膝部分を保温する暖房補助器具としても使用することができる。また、磁力シート14を複数のピースとしたことで、保温シート1の使用に伴うPTCヒーターシート11の伸縮や屈曲に柔軟に追従することができ、PTCヒーターシートが11柔軟に変形することを妨げることがない。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本願発明に係る保温シートは、弁当箱の加熱や保温、あるいは、冷凍されている飲食物の解凍のために好適に利用可能であるとともに、足膝の暖房補助としても利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 保温シート
11 PTCヒーターシート
12 回路基板
121 通信モジュール
122 制御部
13 USBコネクタ(給電用接続部)
14 磁力シート
2 モバイルバッテリー
3 ACアダプター
4 給電用ケーブル
5 弁当箱