(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045230
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】歯髄組織の保存方法
(51)【国際特許分類】
C12N 1/04 20060101AFI20220311BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20220311BHJP
【FI】
C12N1/04
C12N5/071
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150806
(22)【出願日】2020-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】520239274
【氏名又は名称】株式会社U-Factor
(74)【代理人】
【識別番号】110003018
【氏名又は名称】特許業務法人IPアドバンス
(72)【発明者】
【氏名】上田 実
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065BA12
4B065BD09
4B065CA44
(57)【要約】
【課題】新規な歯髄組織の保存方法の提供。
【解決手段】(1)歯髄組織を含む歯を、2℃~10℃の組織保存液に20分間~60分間浸漬すること、(2)前記組織保存液の温度を-50℃~-10℃に下げて20分間~60分間保持すること、及び、(3)前記組織保存液の温度を-60℃~-100℃に下げて前記歯を保存すること、をこの順で含む歯髄組織の保存方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)歯髄組織を含む歯を、2℃~10℃の組織保存液に20分間~60分間浸漬すること、
(2)前記組織保存液の温度を-50℃~-10℃に下げて20分間~60分間保持すること、及び、
(3)前記組織保存液の温度を-60℃~-100℃に下げて前記歯を保存すること、
を、この順で含む歯髄組織の保存方法。
【請求項2】
前記歯髄組織が乳歯歯髄組織である、請求項1に記載の歯髄組織の保存方法。
【請求項3】
(1)が、歯髄組織を含む歯を、2℃の組織保存液に20分間浸漬することである、請求項1又は請求項2に記載の歯髄組織の保存方法。
【請求項4】
(2)が、前記組織保存液の温度を-30℃に下げて20分間保持することである、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の歯髄組織の保存方法。
【請求項5】
(3)が、前記組織保存液の温度を-80℃に下げて前記歯を保存することである、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の歯髄組織の保存方法。
【請求項6】
(1)が、歯髄組織を含む歯を、2℃の組織保存液に20分間浸漬することであり、
(2)が、前記組織保存液の温度を-30℃に下げて20分間保持することであり、かつ、
(3)が、前記組織保存液の温度を-80℃に下げて前記歯を保存することである、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の歯髄組織の保存方法。
【請求項7】
(1)、(2)及び(3)を、プログラム・フリーザーを用いて行う、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の歯髄組織の保存方法。
【請求項8】
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の歯髄組織の保存方法を含む、歯髄幹細胞の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯髄組織の保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
歯髄幹細胞の培養上清を用いた再生医療は、難病を含む様々な疾患の治療に有効であることが多くの実験的、臨床的研究で確認されている。歯髄幹細胞の培養上清を用いた再生医療を実用化するためには、歯髄幹細胞の培養上清の大量生産が必須であり、その製造のためには、新鮮な歯髄組織を確保することが重要である。
歯髄組織を保存する場合には、従来は、歯科医院等にて抜去された歯を、組織保存液に投入してディープフリーザーにて-80℃で凍結保存する方法が行われていた。
【0003】
例えば、特許文献1には、(1)生体より採取された歯髄組織を最大長が2mm以下になるように細切にする工程、(2)前記細切にした歯髄組織を、凍結保護液に、歯髄組織重量/(歯髄組織重量+凍結保護液重量)が10wt%以上50wt%未満になるように浸漬する工程、(3)前記細切にした歯髄組織と凍結保護液を容器に入れ、-80℃以下の環境で凍結保存する工程、を含む歯髄組織の保存方法が記載されている。
一方、近年には、生体組織を保存する際に、急速凍結せずに段階的に温度を下げる方法が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、新規な歯髄組織の保存方法を提供する。
歯髄幹細胞を得る目的で歯髄組織を含む歯を保存する場合、従来の-80℃に急速冷凍する保存方法及び、他の組織の保存のために行われている段階的に温度を下げる保存方法では歯髄腔内にある歯髄細胞が破壊されて歯髄幹細胞が得られないという問題点があった。
【0006】
歯髄組織を含む歯は、象牙質やエナメル質などの他の生態組織とは異なる成分を含んでいるためであると推測される。保存した歯髄組織を用いて歯髄幹細胞を調製する場合、歯髄組織に含まれる幹細胞の数は少ないため、保存による歯髄細胞の破壊が少ないことは非常に有利である。
本開示の課題は、歯髄組織を含む歯を、歯髄細胞を破壊することなく冷凍保存するための歯髄組織の保存方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の態様を含む。
<1>(1)歯髄組織を含む歯を、2℃~10℃の組織保存液に20分間~60分間浸漬すること、
(2)前記組織保存液の温度を-50℃~-10℃に下げて20分間~60分間保持すること、及び、
(3)前記組織保存液の温度を-60℃~-100℃に下げて前記歯を保存すること、
を、この順で含む歯髄組織の保存方法。
<2> 前記歯髄組織が乳歯歯髄組織である、<1>に記載の歯髄組織の保存方法。
<3> (1)が、歯髄組織を含む歯を、2℃の組織保存液に20分間浸漬することである、<1>又は<2>に記載の歯髄組織の保存方法。
<4> (2)が、前記組織保存液の温度を-30℃に下げて20分間保持することである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の歯髄組織の保存方法。
<5> (3)が、前記組織保存液の温度を-80℃に下げて前記歯を保存することである、<1>~<4>のいずれか1つに記載の歯髄組織の保存方法。
<6> (1)が、歯髄組織を含む歯を、2℃の組織保存液に20分間浸漬することであり、
(2)が、前記組織保存液の温度を-30℃に下げて20分間保持することであり、かつ、
(3)が、前記組織保存液の温度を-80℃に下げて前記歯を保存することである、<1>~<5>のいずれか1つに記載の歯髄組織の保存方法。
<7> (1)、(2)及び(3)を、プログラム・フリーザーを用いて行う、<1>~<6>のいずれか1つに記載の歯髄組織の保存方法。
<8> <1>~<7>のいずれか1つに記載の歯髄組織の保存方法を含む、歯髄幹細胞の製造方法。
<9> (1)の前に、前記歯を1分間~48時間、2℃~30℃の歯用保存液に浸漬することを含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の歯髄組織の保存方法。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、歯髄組織を含む歯を、歯髄細胞を破壊することなく冷凍保存するための歯髄組織の保存方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<歯髄組織の保存方法>
本開示の歯髄組織の保存方法(以下、「本開示の方法」と称することがある)は、(1)歯髄組織を含む歯を、2℃~10℃の組織保存液に20分間~60分間浸漬すること、(2)前記組織保存液の温度を-50℃~-10℃に下げて20分間~60分間保持すること、及び、(3)前記組織保存液の温度を-60℃~-100℃に下げて前記歯を保存すること、をこの順で含む。
本開示の歯髄組織の保存方法によって、歯髄組織が破壊されることなく保存することができ、従って、前記歯髄組織から歯髄幹細胞を得ることが容易になるという利点を有する。
<歯>
本開示において、「歯」は歯髄と歯髄以外の組織とを含む。歯髄以外の組織は、例えば、象牙質、エナメル質、及び/又は歯根膜を挙げることができる。歯髄以外の組織として、1種類を含んでいてもよいし、2種類以上を含んでいてもよい。
例えば、抜歯した歯をそのまま2℃~10℃の組織保存液に浸漬すればよく、あるいは、抜歯した歯を、水、生理食塩水、リン酸緩衝液、組織保存液などで歯の表面を洗浄し、2℃~10℃の組織保存液に浸漬してもよい。あるいは、抜歯後、組織保存液に浸漬するまでの時間が例えば30分以上である場合には、組織保存液に浸漬する前にティースキーパーネオ(ネオ製薬工業株式会社)などの歯用保存液に浸漬してもよい。歯髄組織の鮮度を保つ観点から、歯用保存液への浸漬を行わずに抜歯後の歯を組織保存液に浸漬することが好ましい。
歯は、抜歯する前又は後に歯髄組織の周囲の象牙質を1mm程度の厚みで残すように成形してもよい。本開示において、「歯」は、組織以外の補綴物を含んでいてもよい。
【0010】
<歯用保存液>
歯用保存液は、通常用いられる保存液を用いればよい。歯用保存液は、抜歯後の歯髄組織の乾燥及び歯髄組織の破壊を防ぐために用いられる。例えば、抜歯後に最終的な保存場所への移動に時間を要する場合には、抜歯後に歯用保存液に浸漬して最終的な保存場所に移動し、移動後に本開示の歯髄組織の保存方法を行えばよい。
歯用保存液としては、例えば、牛乳、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水などを用いることができる。ティースキーパーネオ(ネオ製薬工業株式会社)などの市販品を使用してもよい。
【0011】
<組織保存液>
組織保存液は、組織の凍結保存に通常用いられる保存液を用いればよい。
組織保存液としては、市販の組織保存液を用いてもよい。例えば、バンバンカー(日本ジェネティクス社製)、NutriFreez(登録商標)D10 Cryopreservation Medium(Biological Industries社)、CryoStor (登録商標)凍結保存培地(HemaCare社)、CryoNovo(登録商標)(Akron Biotechnology社)、又はcGMPグレード細胞保存液 CryoSolution(登録商標)(Akron Biotechnology社)を使用すればよい。
【0012】
<(1)歯髄組織を含む歯を、2℃~10℃の組織保存液に20分間~60分間浸漬すること:一次冷却>
本開示の方法における一次冷却において、歯は、2℃~10℃の組織保存液に20分間以上60分以下浸漬される。例えば、抜歯した歯を、水、生理食塩水、リン酸緩衝液、組織保存液などで歯の表面を洗浄し、そのまま2℃~10℃の組織保存液に浸漬し、冷蔵庫やフリーザー内に20分間以上60分以下静置すればよい。
組織保存液の温度は、3℃~6℃であることが好ましく、4℃~5℃であることがさらに好ましい。例えば、組織保存液が4℃であることは好適である。
歯を浸漬する時間は、20分間以上40分以下であることが好ましく、20分間以上30分以下であることがより好ましい。例えば、歯を浸漬する時間が20分間であることは好適である。
【0013】
<(2)組織保存液の温度を-50℃~-10℃に下げて20分間~60分間保持すること:二次冷却>
(1)の一次冷却で、2℃~10℃の組織保存液に20分間~60分間浸漬された歯は、-50℃~-10℃に温度を下げて20分間~60分間保持される。例えば、(1)で、2℃~10℃の組織保存液に投入し、冷蔵庫又はフリーザー内に20分間以上60分以下静置した後に、二次冷却として冷蔵庫又はフリーザーの設定温度を-50℃~-10℃に下げて20分間~60分間保持すればよい。
歯の温度は、-40℃~-20℃に保持されることが好ましく、-35℃~-25℃に保持されることがさらに好ましい。例えば、歯の温度が-30℃であることは好適である。
歯を浸漬する時間は、20分間~40分間であることが好ましく、20分間~30分間であることがより好ましい。例えば、歯を浸漬する時間が20分間であることは好適である。歯を浸漬する時間には、降温に要する時間が含まれる。つまり、一次冷却で2℃~10℃に冷却された歯を、温度を下げ始めてから20分間~60分間保持すればよい。温度を下げる速度(つまり、冷却速度)は、例えば、0.1℃~2℃/分、好ましくは0.3℃~1℃/分とすればよい。冷却速度を0.5℃/分とすることは好適である。
歯を含む組織保存液を冷蔵庫又はフリーザー内に保持する場合、組織保存液の温度は、冷蔵庫又はフリーザーの庫内温度と同義である。
【0014】
<(3)組織保存液の温度を-60℃~-100℃に下げて前記歯を保存すること:最終保存>
歯を含む組織保存液は、(2)の二次冷却において、温度を-50℃~-10℃に下げて20分間~60分間保持された後に、-60℃~-100℃で保存される。例えば、(2)で、冷蔵庫又はフリーザーの温度を-50℃~-10℃に下げて20分間~60分間保持した後に、冷蔵庫又はフリーザーの温度を-60℃~-100℃に下げて、組織保存液中の歯を保存すればよい。
歯の保存期間の上限は特に限定されないが、10年以下であることが好ましく、5年以下であることがより好ましく、3年以下であることが特に好ましい。歯の保存期間の上限は特に限定されないが、1日以上であることが好ましい。前記保存期間の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。
歯を含む組織保存液を冷蔵庫又はフリーザー内で保存する場合、組織保存液の温度は、冷蔵庫又はフリーザーの庫内温度と同義である。
【0015】
<予備保存>
歯は、(1)の一次冷却の前に、1分間~48時間、2℃~30℃の歯用保存液に浸漬してもよい。歯用保存液に浸漬する時間は、1分間~24時間であることが好ましく、1分間~10時間であることがより好ましく、1分間~5時間であることが特に好ましい。歯用保存液に浸漬する時間は、歯髄組織の保持の観点から、短時間であることが好ましい。例えば、抜歯を実施する場所と、歯髄組織を含む歯を最終的に保存する場所が異なる場合、抜歯を実施する場所から歯を最終的に保存する場所まで、歯用保存液に浸漬した状態で運搬すればよい。
【0016】
<プログラム・フリーザー>
プログラム・フリーザーは、予め設定した複数段階の温度及び時間の通りに庫内温度を制御できるフリーザーである。
本開示の方法において、前記(1)一次冷却、(2)二次冷却及び(3)最終保存を、プログラム・フリーザーを用いて行うことで、組織保存液に浸漬された歯の温度を、同じ装置内で適切に制御することができる。本開示の方法を正確、且つ、簡易に行うことができるため、プログラム・フリーザーを用いて本開示の方法を行うことが好ましい。
プログラム・フリーザーを用いて本開示の方法を行う場合であって、降温に要する時間がある場合には、一次冷却、二次冷却及び最終保存の時間には、降温に要する時間が含まれる。好適な冷却速度は上述した通りである。
【0017】
プログラム・フリーザーは、市販のものを用いることができ、例えば、CASシステム(株式会社 アビー)、FZ-2000(ストレックス株式会社)、VIA Freeze(登録商標)(株式会社協同インターナショナル)、PF-NP-200(ネッパージーン株式会社)、クライオメド7472~7476(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いることができる。
【0018】
<歯髄組織の解凍>
歯髄組織の解凍方法は特に限定されず、凍結された臓器や組織の解凍に用いられる方法を適用することができる。例えば、-80℃で保存されていた歯を、36℃~38℃のウォーターバスを用いて、歯の大きさに応じて30分間~180分間、好ましくは60分間~120分間かけて振盪しながら解凍すればよい。あるいは、2℃~8℃、好ましくは4℃~6℃の冷蔵庫に6時間~12時間程度静置すればよい。歯髄組織の解凍は、プログラム・フリーザーを用いて行ってもよい。
あるいは、室温に静置して解凍してもよいし、電磁波を用いて解凍してもよい。
【0019】
<歯髄幹細胞の調製>
歯髄幹細胞は、特許6296622号およびProc Natl Acad Sci U S A 2000;97:13625-30又はProc Natl Acad Sci U S A 2003;100:5807-12に記載されている方法によって、脱落または抜歯した乳歯または永久歯の歯髄から調製することができる。
本開示の方法によれば、従来困難であった歯髄組織が破壊されることなく保存することができるため、本開示の方法により保存された歯髄組織から、より安定的に歯髄幹細胞を得ることできる。
【0020】
以下に本開示の実施例について説明するが、これに限定されるものではない。また実施例中の%は、特に断らない限り、重量(質量)基準である。
【実施例0021】
<実施例1>
抜歯したヒト乳歯を25℃のティースキーパーネオ(ネオ製薬工業社製)に60分間浸漬した(つまり、予備保存)。
予備保存した歯を、組織保存液である2℃のバンバンカー(日本ジェネティクス社製)に移し替え、プログラム・フリーザー(株式会社 アビー、CASシステム)の庫内にて、保存温度2℃で20分間静置した(つまり、一次冷却)。
その後、プログラム・フリーザーの温度を-30℃まで下げて20分間静置し(つまり、二次冷却)、さらに、プログラム・フリーザーの温度を-80℃に下げて7日間保存した(つまり、最終保存)。
前記温度の制御はすべてプログラム・フリーザーのプログラムにより行った。冷却速度は-0.5/分とした。降温している期間は、一次冷却、二次冷却及び最終保存の期間に含まれる。つまり、例えば、一次冷却の温度である2℃から-0.5/分の冷却速度で降温を開始してから20分後までが、二次冷却の20分間に相当する。
【0022】
<比較例1~3>
一次冷却及び二次冷却の期間を表1の通り変更した以外は実施例1と同様に歯の保存を行った。
【表1】
【0023】
<比較例4>
抜歯したヒト乳歯を25℃のティースキーパーネオ(ネオ製薬工業社製)に60分間浸漬し(つまり、予備保存)、組織保存液である2℃のバンバンカー(日本ジェネティクス社製)に移し替えて、直後に-80℃のプログラム・フリーザー(株式会社 アビー、CASシステム)の庫内に静置し、そのまま7日間保存した。
【0024】
<生存細胞の有無>
実施例1及び比較例1~4で最終保存(-80℃で7日間凍結保存)した歯を、4℃の冷蔵庫内に120分間静置して解凍した。解凍した歯から歯髄を採取し、3mg/mLのI型コラゲナーゼ及び4mg/mLのディスパーゼの溶液中で37℃にて1時間消化した。70mmの細胞ストレーナ(Falcon; BD Labware, Franklin Lakes, NJ)を用いて濾過した後、20%の間葉系細胞成長サプリメント(Lonza Inc, Walkersville, MD)及び抗生物質(100U/mLのペニシリン、100mg/mLのストレプトマイシン、及び0.25mg/mLのアムホテリシンB;GIBCO社製)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;GIBCO, Rockville, MD)中で37℃、5%CO2下にて細胞を平面培養した。
細胞生存の有無は平面培養による細胞増殖状態にて評価した。培養器の底面に目視によって接着細胞の増殖が認められた場合に細胞生存が有ると判定した。
【0025】
実施例1では培養器底面に接着して増殖する細胞が確認され、生細胞が有ることが確認されたが、比較例1~4では細胞の増殖を確認することができなかった。
【0026】
<FACSによる分析>
平面培養された実施例1の培養器から培養上清を除去し、培養器に0.25%トリプシンを含む培養液を加え、37℃で10分間酵素処理して回収した。回収した細胞にリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を加え、300gで5分間遠心分離を行い、上清を廃棄してペレットをPBSに再懸濁し、細胞数を1×107個/mLに調製してFACS用試料とした。
【0027】
調製した試料を小分け分注して300gで5分間遠心分離を行い、上清を廃棄した。それぞれのペレットを、4℃に冷却されたAllophycocyanin(APC)で標識された抗CD13抗体を含む染色用緩衝液、抗CD73抗体を含む染色用緩衝液、PerCPで標識された抗CD45抗体を含む染色用緩衝液、又はFITCで標識された抗CD31抗体を含む染色用緩衝液に再懸濁してサンプルとした。各サンプルをFACSを用いて解析した結果、実施例1で調製された細胞は、CD13及びCD73を発現し、CD45及びCD31を発現していなかった。プロファイルは、歯髄由来幹細胞の特性と一致していた。