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<図1>
  • 特開-触覚転移衣服および処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045240
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】触覚転移衣服および処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20220311BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/01 514
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150822
(22)【出願日】2020-09-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)MITOU2019 Demo Day/2019年度(第26回)未踏IT人材発掘・育成事業 森山多覇が、MITOU2019 Demo Day/2019年度(第26回)未踏IT人材発掘・育成事業に関して公開した。 (2)SIGGRAPH ASIA 2019 Emerging Technologies、Brisbane Convention & Exhibition Centre(BCEC) 森山多覇、高橋哲史、浅津秀行および梶本裕之が、SIGGRAPH ASIA 2019 Emerging Technologies、Brisbane Convention & Exhibition Centre(BCEC)に関して公開した。 (3)第24回日本バーチャルリアリティ学会大会 森山多覇、高橋哲史および梶本裕之が、第24回日本バーチャルリアリティ学会大会に関して公開した。
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(独立行政法人情報処理推進機構 2019年度未踏IT人材発掘・育成事業(指先の触覚を身体の他部位に転移させるデバイスの開発)に関する委託契約、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願)
(71)【出願人】
【識別番号】320008579
【氏名又は名称】森山 多覇
(71)【出願人】
【識別番号】320008096
【氏名又は名称】梶本 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】森山 多覇
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲史
(72)【発明者】
【氏名】梶本 裕之
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555BA38
5E555BB38
5E555BC04
5E555CA41
5E555CB59
5E555DA24
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】 分散された触覚情報を適切に提示する。
【解決手段】 触覚転移衣服1は、後身頃に設けられ、着用者の皮膚に刺激を与える複数のアクチュエータAと、人の指に並べられた複数の圧力センサSのうち、圧力を検知した圧力センサの位置に対応する位置のアクチュエータAを駆動する指示を取得する取得部16を備える。触覚転移衣服1は、人の指の触覚を人の背に転移する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後身頃に設けられ、着用者の皮膚に刺激を与える複数のアクチュエータと、
人の指に並べられた複数の圧力センサのうち、圧力を検知した圧力センサの位置に対応する位置の前記アクチュエータを駆動する指示を取得する取得部を備え、
前記人の指の触覚を人の背に転移する
触覚転移衣服。
【請求項2】
左右の脇側のそれぞれに、複数のアクチュエータが設けられ、
前記取得部は、
親指に並べられた複数の圧力センサのうち圧力を検知した圧力センサの位置に対応する位置の左の脇側のアクチュエータを駆動し、人差し指に並べられた複数の圧力センサのうち圧力を検知した圧力センサの位置に対応する位置の右の脇側のアクチュエータを駆動する指示を取得し、
把持による指の触覚を人の背に転移する
請求項1に記載の触覚転移衣服。
【請求項3】
前記複数のアクチュエータは、所定方向に並ぶ複数の領域に区分され、
前記指示で、駆動するアクチュエータが特定されると、
前記指示で特定されたアクチュエータを所定時間駆動する動作を、領域毎に所定方向にずらしながら行う
請求項1に記載の触覚転移衣服。
【請求項4】
前記圧力センサによる検知が所定時間以上継続する場合、前記取得部は、前記所定時間、前記アクチュエータを駆動した後、前記アクチュエータの駆動を停止する指示を取得する
請求項1に記載の触覚転移衣服。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の触覚転移衣服に指示を入力する処理装置であって、
人の指に並べられた複数の圧力センサのそれぞれから取得した特徴値を含む特徴値データを記憶する記憶装置と、
所定の方向における前記圧力センサの数が、所定の方向におけるアクチュエータの数よりも多い場合、
前記所定の方向に隣接する圧力センサの特徴値の差分の平均値を算出し、算出された平均値の数が前記所定の方向におけるアクチュエータの数に一致するまで、隣接する平均値の平均値を算出する処理を繰り返し、
算出された平均値に従って前記アクチュエータが駆動する指示を生成する変換部
を備える処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚転移衣服および処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
指の触覚を検出するグローブがある(非特許文献1)。非特許文献1は、指を覆うグローブ形状を有し、指の腹側部分に、圧力センサを備える。何らかに指が接触することによる指への圧力を圧力センサが検知することで、指の触覚を記録することが可能になる。1本の指に複数の圧力センサを設けることで、指の触覚に伴う圧力分布を記録することが可能になる。
【0003】
また指の触覚を、指先以外の部位に提示する方法がある(非特許文献2)。非特許文献2に記載の方法では、人差し指に対応する部位として手首の背側を、親指に対応する部位として手首の腹側が適切であることを見いだし、手首の背側および腹側にそれぞれ触覚を転移する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】梶本 裕之、外3名、"感圧導電シートとチップサーミスタを用いたグローブ型圧力・温度分布計測センサの開発"、2019年3月19日、電気学会
【非特許文献2】森山, 西, 櫻木, 中村, 梶本、”先の触角を前腕に提示するウェアラブルデバイスの開発第2報:温度提示の付与”、第22回一般社団法人情報処理学会インタラクション2018, 2018,3, 学術総合センター
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献2は、腕に提示する触覚情報は、各指に対応する力の大きさおよび力の向きに関する。非特許文献1は、触覚が生じた形状およびエッジを転移することができないなど、分散された触覚情報を提示することができない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、分散された触覚情報を適切に提示する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の触覚転移衣服は、後身頃に設けられ、着用者の皮膚に刺激を与える複数のアクチュエータと、人の指に並べられた複数の圧力センサのうち、圧力を検知した圧力センサの位置に対応する位置の前記アクチュエータを駆動する指示を取得する取得部を備え、前記人の指の触覚を人の背に転移する。
【0008】
本発明の一態様の処理装置は、上記触覚転移衣服に指示を入力する処理装置であって、人の指に並べられた複数の圧力センサのそれぞれから取得した特徴値を含む入力データを記憶する記憶装置と、所定の方向における前記圧力センサの数が、所定の方向におけるアクチュエータの数よりも多い場合、前記所定の方向に隣接する圧力センサの特徴値の差分の平均値を算出し、算出された平均値の数が前記所定の方向におけるアクチュエータの数に一致するまで、隣接する平均値の平均値を算出する処理を繰り返し、算出された平均値に従って前記アクチュエータが駆動する指示を生成する変換部する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分散された触覚情報を適切に提示する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る触覚転移衣服と、処理装置の機能ブロックを説明する図である。
図2図2は、触覚転移衣服の内側に設けられる背中心部、左脇部および右脇部を説明する図である。
図3図3は、背中心部におけるマッピングモードの一例を説明する図である。
図4図4は、グローブの圧力センサの配列と背中心部のアクチュエータの配列を一致させる例を説明する図である。
図5図5は、グローブの圧力センサの触覚情報を減らして背中心部のアクチュエータの配列を一致させる例を説明する図である。
図6図6は、アクチュエータの駆動を決定する処理(時間微分)の一例を説明するフローチャートである。
図7図7は、アクチュエータの駆動例(スキャン)を説明する図である。
図8図8は、処理装置に用いられるコンピュータのハードウエア構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付し説明を省略する。本発明の実施の形態において左右は、着用者を基準にして説明する。
【0012】
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る触覚転移衣服1と処理装置2を説明する。触覚転移衣服1は、人の皮膚の触覚を、他の皮膚に転移する。本発明の実施の形態に係る触覚転移衣服1は、人の指の触覚を背に転移する場合を説明するが、これに限らない。
【0013】
触覚転移衣服1は、人が着用する衣服であって、後身頃に複数のアクチュエータAを備える。触覚転移衣服1は、アクチュエータAを駆動して、グローブ3等の触覚検出装置で検出した触覚を、着用者に提示する。処理装置2は、グローブ3で検出した触覚情報を、触覚転移衣服1に設けられたアクチュエータAで実現するための指示を生成する。
【0014】
なお、本発明の実施の形態において、触覚転移衣服1と処理装置2が、それぞれ異なる物である場合を説明するが、これに限らない。例えば処理装置2が触覚転移衣服1に内蔵されても良い。
【0015】
(グローブ)
本発明の実施の形態において、触覚情報を検知するために、非特許文献2に記載のグローブ3を用いる。グローブ3の親指部31および人差し指部32には、指の腹側に与えられた圧力を検出する圧力センサSが設けられる。グローブ3は、圧力センサSに与えられた圧力を時系列で記録する。親指部31および人差し指部32は、縦方向および横方向にそれぞれ複数の圧力センサSが設けることで、指の腹側の面に与えられた触覚を、分散された触覚情報(触覚の分布)として記録することが可能になる。
【0016】
圧力センサSは、人の触覚の精度で触覚情報を記録する場合、人の指の腹側の弁別閾を超えない間隔で、配置される。あるいは弁別閾より狭い間隔で圧力センサSが配置されることで、人の触覚以上の精度の触覚情報を記録することができる。
【0017】
触覚情報は、圧力センサSが、所定値以上の圧力を検知したか否かを示す分布であっても良いし、各圧力センサSが検知した圧力の特徴値の分布であっても良い。
【0018】
なお、図1に示すグローブ3は、親指部31および人差し指部32に、圧力センサSを備える場合を説明するが、これに限らない。圧力センサSを、手のひら全体に設けたり、人差し指または親指のみに設けたりするなど、任意の位置に設けられても良い。また圧力センサSを、手以外の部位に装着することにより、任意の部位の触覚情報を、転移することが可能になる。
【0019】
(触覚転移衣服)
図1に示す触覚転移衣服1は、グローブ3等で取得した触覚情報の転移先を被覆する。本発明の実施の形態に係る触覚転移衣服1は、背中および脇側に触覚情報を転移するための衣服であって、後身頃、右前身頃および左前身頃で形成されるベストである。触覚転移衣服1は、任意の触覚情報を提示する衣服であっても良い。図1は、前開きのベストにおいて、肩の稜線の縫着をほどき、後身頃と、右前身頃および左身頃をそれぞれ脇で縫着した状態を示す。触覚転移衣服1は、触覚情報の転移先を被覆すればよく、転移先の部位は問わない。
【0020】
触覚転移衣服1は、背中心部11、左脇部12および右脇部13を備える。背中心部11は、後身頃に設けられる。左脇部12は、左の脇側、より具体的には、後身頃から左前身頃にかけて脇線近傍に設けられる。右脇部13は、右の脇側、より具体的には、後身頃から右前身頃にかけて脇線近傍に設けられる。
【0021】
背中心部11、左脇部12および右脇部13それぞれに、着用者の皮膚に刺激を与える複数のアクチュエータAが配設される。アクチュエータAは、着用者の肌に近い方に配設されることが好ましい。
【0022】
各アクチュエータAは、取得部16から取得した指示に従って駆動する。この指示は、処理装置2において生成された指示である。本発明の実施の形態において指示は、人の指に並べられた複数の圧力センサSのうち、圧力を検知した圧力センサSの位置に対応する位置のアクチュエータAを駆動する指示である。
【0023】
取得部16は、処理装置2で生成された指示データ23を取得し、各アクチュエータAにその指示を入力する。取得部16は、コンピュータにより実装される。取得部16は、処理装置2およびアクチュエータAとデータを送受信するインタフェースを備えても良い。
【0024】
本発明の実施の形態においてアクチュエータAは、例えば振動子であるが、これに限らない。アクチュエータAは、触覚転移衣服1の着用時に、着用者の皮膚に刺激を与えることができれば、どのようなものが用いられても良い。
【0025】
アクチュエータAの露出を防ぐために、アクチュエータAよりも肌側に、アクチュエータAの振動を阻害しない滑らかな生地が設けられても良い。触覚転移衣服1は、面ファスナー等で締めることで、アクチュエータAと着用者の密着度を向上させ、アクチュエータAが着用者を適切に刺激できる形成されても良い。
【0026】
図2に示すように、背中心部11、左脇部12および右脇部13には、それぞれ縦方向および複数のアクチュエータAが配設される。アクチュエータAは、そのアクチュエータAが設置される位置に対応する皮膚の弁別閾を超えない間隔で、設置されるのが好ましい。
【0027】
本発明の実施の形態において、背中心部11は、横方向に8のアクチュエータAが配設され、縦方向に12のアクチュエータAが配設される。左脇部12および右脇部13は、それぞれ、横方向に4のアクチュエータAが配設され、横方向に6のアクチュエータAが配設される。なお、図2に示すアクチュエータAの配置位置および数は一例であってこれに限るものではない。
【0028】
各アクチュエータAは、圧力センサSが検知した場合に所定の特徴値で駆動する。また触覚情報として、圧力センサSが所定以上の圧力を検知した場合、アクチュエータAは、予め規定されたボリュームで駆動するように形成されても良い。あるいは圧力センサSが検知した特徴値が記録された場合、各アクチュエータAは、その特徴値に対応するボリュームで駆動しても良い。例えば圧力センサSの特徴値が256階調で生成される場合、アクチュエータAの駆動時のボリュームは、256階調となることが好ましい。圧力センサSが検知した圧力の強さが高いほど、アクチュエータAである振動子はより強く振動し、圧力の強さが弱いほど、振動子はより弱く振動する。
【0029】
グローブ3で検出された触覚情報に従って、所定のアクチュエータAを振動させることにより、着用者は、グローブ3で検出された触覚情報を、触覚転移衣服1の着用部分で認識することができる。またグローブ3の圧力センサSと、触覚転移衣服1のアクチュエータAは、それぞれ面形状に配設されるので、指の腹の面の触覚を、背の面に転移させることが可能になる。背面は、人の面のうち比較的大きい面であるので、より多くのアクチュエータを配設して、充分に高い解像度で、触覚情報を転移させることができる。
【0030】
このような触覚転移衣服1は、触覚の知覚能力が衰えた人に、触覚を伝えることが可能になる。例えば、指先の触覚は加齢とともに劇的に低減することが知られており、高齢者が起用な作業が難しくなる一つの要因となる。そこで、本発明の実施の形態に係る触覚転移衣服1を着用し、触覚の残存する部位に触覚を転移することにより、高齢者が、触覚を認識することが可能になる。
【0031】
図3を参照して、本発明の実施の形態に係る触覚転移衣服1のマッピングモードを説明する。
【0032】
図3(a)は、掌全体をマッピングするモードである。掌全体の触覚情報を、背中に転移することにより、広い面積の触覚情報を把握することができる。
【0033】
図3(b)は、一本指をマッピングするモードである。一本の指の触覚情報を、背中に転移することにより、充分な解像度で指の触覚情報を認識することができる。またグローブ3等で指の弁別閾以下の間隔で圧力センサSが設けられ、その圧力情報を記録した場合、一本指をマッピングするモードで、人の指の触覚感覚以上の解像度で、触覚を転移することが可能になる。
【0034】
図3(c)は、二本指をマッピングするモードである。このモードは、把持による指の触覚を人の背に転移する。取得部16は、グローブ3の親指部31と人差し指部32の各圧力センサSに対応する位置に設置された左脇部12と右脇部13のアクチュエータを駆動する指示を取得する。この指示によって、親指部31に並べられた複数の圧力センサSのうち圧力を検知した圧力センサSの位置に対応する位置の左脇部12のアクチュエータAを駆動する。また人差し指部32に並べられた複数の圧力センサSのうち圧力を検知した圧力センサSの位置に対応する位置の右脇部13のアクチュエータAを駆動する。このモードでは、親指の触覚情報を左脇部12に転移し、人差し指の触覚情報を右脇部13に転移する。これにより、背中に、親指と人差し指で把持された物の圧力が加わるような触覚情報が転移されることにより、把持による触覚を直感的に把握することができる。
【0035】
なお図3に示したマッピング方法は一例であって、これに限る物ではない。例えば図3(c)に示す方法において、背中心部11のアクチュエータAを用いて、把持時のパワーを表現することも可能である。駆動するアクチュエータAの数または駆動するアクチュエータAのボリュームで、把持時のパワーを表現する。このように、圧力が生じた部分と、その圧力を、異なる部位で表現することにより、着用者は、アクチュエータAが表現する触覚情報を、より早く認識することが可能になる。
【0036】
(処理装置)
図1を参照して、処理装置2を説明する。処理装置2は、特徴値データ21、変換部22、指示データ23および出力部24を備える。特徴値データ21および指示データ23は、図8のメモリ902またはストレージ903に記憶されるデータである。変換部22および出力部24は、CPU901の実行によって処理装置2に実装される機能部である。
【0037】
特徴値データ21は、グローブ3の圧力センサSの位置と、その圧力センサSの特徴値を対応づけるデータである。特徴値は、所定以上の圧力を検知したことを示すフラグであっても良いし、圧力のボリュームに比例する値であっても良い。また特徴値データ21は、時間毎の特徴値の遷移を示す時系列のデータであっても良い。
【0038】
変換部22は、特徴値データ21を指示データ23に変換する。変換部22は、圧力センサSの配置と、触覚転移衣服1のアクチュエータAの配置を対応づける。また変換部22は、圧力センサSの特徴値を、その圧力センサSに対応するアクチュエータAを駆動する指示データ23に変換する。変換部22の処理は、後に詳述する。
【0039】
指示データ23は、触覚転移衣服1のアクチュエータAを駆動する指示のデータである。指示データ23は、触覚転移衣服1のアクチュエータAの識別子と、そのアクチュエータを駆動する指示を対応づけるデータである。指示は、アクチュエータAを駆動するかしないかの二値の信号であっても良いし、圧力センサSのボリュームに比例するボリュームで駆動する信号であっても良い。また指示は、時間毎のアクチュエータAの駆動の遷移を示す時系列のデータであっても良い。
【0040】
出力部24は。指示データ23を触覚転移衣服1の取得部16に入力する。
【0041】
(変換部)
ここで変換部22の処理を説明する。ここでは、(1)特徴値の対応付け、(2)時間微分、および(3)スキャンについて説明する。
【0042】
まず、(1)対応付けを説明する。変換部22は、圧力センサSと、その圧力センサSの特徴値を反映する触覚転移衣服1のアクチュエータAを対応づける。
【0043】
触覚情報の転移元の圧力センサSの配置と、転移先のアクチュエータAの配置とが同じ場合、圧力センサSにおける検知に従って、圧力センサSの位置に対応する位置のアクチュエータAを駆動させれば良い。ここでは、触覚情報の転移元の圧力センサSの配置と、転移先のアクチュエータAの配置とが異なる場合の対応付けを説明する。
【0044】
まず、圧力センサSとアクチュエータAの配置を同じにする方法を説明する。図4で示す例において、人差し指部32において、横方向に10の圧力センサSが配置され、縦方向に10の圧力センサSが配置される。一方、背中心部11は、横方向に8のアクチュエータAが配設され、縦方向に12のアクチュエータAが配設される。変換部22は、人差し指部32の左右両端の一列の触覚情報を破棄し、背中心部11の上下両端の一列を除くアクチュエータAに触覚転移する指示を生成する。有効な圧力センサSおよびアクチュエータAは、それぞれ横方向8×縦方向10となる。変換部22は、各圧力センサSの検知に従って、その圧力センサSの位置に対応するアクチュエータAを駆動する指示を生成する。
【0045】
次に、圧力センサSの特徴値の数を、アクチュエータAの配置数にあわせる方法を説明する。図5に示す例において、人差し指部32の横方向の圧力センサSの数は10で、背中心部11の横方向のアクチュエータAの数が8の場合を説明する。人差し指部32の圧力センサSから、10の特徴値が検出されるところ、変換部22は、横方向に隣接する圧力センサSの特徴値の差分の平均値を算出する。図5に示す例において、横方向に隣接する圧力センサSの特徴値の差分の平均値は8個で、アクチュエータAの横方向の数に一致するので、変換部22は、各アクチュエータAについて、算出された平均値に従って駆動する指示を生成する。
【0046】
算出された平均値の数が横方向におけるアクチュエータAの数に一致しない場合、変換部22は、算出された平均値の数が横方向におけるアクチュエータAの数に一致するまで、隣接する平均値の平均値を算出する処理を繰り返す。算出された平均値の数が横方向におけるアクチュエータAの数が一致すると、変換部22は、算出された平均値に従ってアクチュエータAが駆動する指示を生成する。
【0047】
なお、所定方向の圧力センサSの数が、所定方向のアクチュエータAの数よりも一つ多い場合、変換部22は、横方向に隣接する圧力センサSの特徴値の差分を算出する。変換部22は、算出された差分に従ってアクチュエータAが駆動する指示を生成する。
【0048】
図5に示す例において、隣接する圧力センサSの特徴値の差分に従ってアクチュエータAが駆動する。一般的に人は、変化量で圧を知覚するので、隣接する圧力センサSの特徴値の差分に従ってアクチュエータAの駆動を決定することにより、圧力センサSが取得した触覚情報を、より精細に転移することが可能になる。
【0049】
所定方向の圧力センサSの数が、所定方向のアクチュエータAの数よりも少ない場合、変換部22は、1つの圧力センサSの特徴量を、隣接する複数のアクチュエータAにそれぞれ対応づける。
【0050】
転移元の圧力センサSの配置と、転移先のアクチュエータAの配置が異なる場合でも、上記の方法により、対応づけることが可能になる。一般的に人の皮膚は、部位毎に、面積、弁別閾等が異なることから、アクチュエータAの配置が異なる場合がある。そのような場合でも、任意の部位に適切にアクチュエータAを配置し、適切に配置された各アクチュエータAに対して、転移元の圧力センサSが検知した触覚情報を転移することが可能になる。
【0051】
次に、(2)時間微分を説明する。人の皮膚は、変化量で圧を知覚するため、アクチュエータAによる刺激を皮膚に与え続けると、皮膚はその刺激を知覚しづらい場合がある。
【0052】
そこで、圧力センサSによる検知が所定時間以上継続する場合、触覚転移衣服1は、処理装置2からの指示で、所定時間、アクチュエータAを駆動した後、アクチュエータの駆動を停止する。変換部22は、所定時間、アクチュエータAを駆動した後、アクチュエータAの駆動を停止する指示を生成し、取得部16に入力する。また変換部22は、アクチュエータAの駆動と停止を周期的に繰り返す指示を生成しても良い。
【0053】
図6を参照して変換部22の処理を、説明する。
【0054】
ステップS1において変換部22は、特徴値データ21を参照して、所定の圧力センサSの特徴値が所定時間継続しているか否かを判定する。この所定時間は、例えば、アクチュエータAが継続して駆動する時間の最大値である。
【0055】
特徴値が所定時間継続する場合、ステップS2において変換部22は、所定時間、アクチュエータの駆動を継続した後、デフォルトに戻す指示を生成する。特徴値が所定時間継続しない場合、ステップS3において変換部22は、センサの特徴値の継続時間、アクチュエータAの駆動を継続する指示を生成する。
【0056】
これにより着用者は、アクチュエータAによる皮膚の刺激を、継続的に認識することができる。
【0057】
最後に、(3)スキャンを説明する。背面などの広い範囲に多数のアクチュエータAが配置される場合、これらのアクチュエータAが一度に駆動したとしても、着用者は、その駆動したアクチュエータAの位置を、即座に認識することはできない。
【0058】
そこで複数のアクチュエータAは、所定方向に並ぶ複数の領域に区分される。触覚転移衣服1は、処理装置2からの指示で、駆動するアクチュエータが特定されると、指示で特定されたアクチュエータを所定時間駆動する動作を、領域毎に所定方向にずらしながら行い、人の指の触覚を人の背に転移する。変換部22は、駆動するアクチュエータが特定されると、指示で特定されたアクチュエータを所定時間駆動する動作を、領域毎に所定方向にずらしながら行う指示を生成し、取得部16に入力する。
【0059】
具体的には変換部22は、転移先のアクチュエータAを、複数の領域に区分し、駆動する領域の順序を定義する。例えば、図7(a)に示すように、横方方向に8個、縦方向に12個のアクチュエータAが配置される領域を、横方向に1個、縦方向に12個の縦長の8個の領域に区分する。ここでは、横方向のみを複数の領域に区分する場合を説明するが、縦方向のみを複数の領域に区分しても良いし、横方向および縦方向をそれぞれ複数の領域に区分しても良い。また変換部22は、各領域を駆動させる順序を決定する。ここでは、左方向から右方向に順に駆動させる。なお、隣接する領域が順次駆動することで、着用者が駆動中の領域を把握しやすくなる。
【0060】
変換部22は、転移先の各アクチュエータAのうち、駆動させるアクチュエータAを特定すると、3秒などの所定周期毎に、領域をずらしながら駆動する指示を生成する。1番目の周期で一番左の列のアクチュエータAを駆動させた後、2番目の周期で左から2番目の列のアクチュエータAを駆動させ、3番目の周期で左から3番目の列のアクチュエータAを所定時間駆動させ・・・と左端の列か右端の列まで、1周期ずつ駆動させる指示を生成する。
【0061】
図7(b)を参照して、大文字のPの形状に、アクチュエータAを駆動する場合を説明する。図7(b)に示す例において、アクチュエータAが配置される位置に矩形を表示する。配置されるアクチュエータAのうち、触覚情報を転移するために駆動するアクチュエータAが配置される位置に、白円を表示する。図7(b)は、1周期目から8周期目を順に表示し、各周期で駆動するアクチュエータAが配置される位置に、黒円が表示される。
【0062】
図7(b)に示す例において、1周期目、2周期目および8周期目は、駆動するアクチュエータAはないが、3周期目から7周期目では、それぞれ黒丸の位置のアクチュエータAが駆動する。周期が進むにつれて、黒丸の列は、順次右側に移動していることがわかる。
【0063】
着用者は、周期単位で駆動するアクチュエータAの位置を認識することを繰り返すことで、転移先全体で駆動したアクチュエータAを認識する。一度に全てのアクチュエータAが駆動する場合と比べて、着用者は、転移先全体で駆動したアクチュエータAをより早く認識することが期待できる。
【0064】
上記説明した本実施形態の処理装置2は、例えば、CPU(Central Processing Unit、プロセッサ)901と、メモリ902と、ストレージ903(HDD:Hard Disk Drive、SSD:Solid State Drive)と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906とを備える汎用的なコンピュータシステムが用いられる。このコンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、処理装置2の各機能が実現される。
【0065】
なお、処理装置2は、1つのコンピュータで実装されてもよく、あるいは複数のコンピュータで実装されても良い。また処理装置2は、コンピュータに実装される仮想マシンであっても良い。
【0066】
処理装置2のプログラムは、HDD、SSD、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD(Compact Disc)、DVD (Digital Versatile Disc)などのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0068】
1 触覚転移衣服
2 処理装置
3 グローブ
11 背中心部
12 左脇部
13 右脇部
16 取得部
21 特徴値データ
22 変換部
23 指示データ
24 出力部
31 親指部
32 人差し指部
901 CPU
902 メモリ
903 ストレージ
904 通信装置
905 入力装置
906 出力装置
A アクチュエータ
S 圧力センサ
図1
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図8