(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045252
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】熱処理炉
(51)【国際特許分類】
F27B 9/14 20060101AFI20220311BHJP
【FI】
F27B9/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150838
(22)【出願日】2020-09-08
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】小牧 毅史
【テーマコード(参考)】
4K050
【Fターム(参考)】
4K050AA02
4K050CD06
4K050CG04
(57)【要約】
【課題】 処理室内に炉体の外部の気体が進入することを抑制する。
【解決手段】この熱処理炉は、炉体12と、搬送装置20と、複数の案内ローラ(22a,22b,22c,24)と、加熱装置(22,26)と、給気装置38と、エアカーテン装置48を備えている。搬送装置は、搬入口15aから搬出口16aまで架け渡される被処理物Wを、搬入口15aから処理室19を通って搬出口16aに搬送する。複数の案内ローラ(22a,22b,22c,24)は、搬送装置によって搬送される被処理物を案内する。加熱装置(22,26)は、処理室内に配置されており、搬送装置によって搬送される被処理物を加熱する。給気装置38は、処理室内に第1の気体を供給する。エアカーテン装置48は、搬入口15aの近傍に設けられ、搬入口15aに向かって第2の気体を噴出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入口と、搬出口と、前記搬入口と前記搬出口との間に配置された処理室と、を備える炉体と、
前記搬入口から前記搬出口まで架け渡される被処理物を、前記搬入口から前記処理室を通って前記搬出口に搬送する搬送装置と、
前記処理室内に配置されており、前記搬送装置によって搬送される前記被処理物を案内する複数の案内ローラと、
前記処理室内に配置されており、前記搬送装置によって搬送される前記被処理物を加熱する加熱装置と、
前記処理室内に第1の気体を供給する第1給気装置と、
前記搬入口の近傍に設けられ、第2の気体を噴出して前記搬入口を遮断するエアカーテン装置と、を備える熱処理炉。
【請求項2】
前記被処理物は、前記搬入口から前記搬出口まで架け渡されるフィルム体であり、
前記エアカーテン装置は、
前記フィルム体の表面側に配置され、前記フィルム体の表面に向かって前記第2の気体を噴出する第1の給気口と、
前記フィルム体の裏面側に配置され、前記フィルム体の裏面に向かって前記第2の気体を噴出する第2の給気口と、
を備えている、請求項1に記載の熱処理炉。
【請求項3】
前記第1の給気口は、前記搬入口の近傍の処理室側に配置されており、
前記第1の給気口から前記第2の気体を噴出する方向は、前記第1の給気口から前記搬入口を通って前記炉体の外部に向かう方向となっており、
前記第2の給気口は、前記搬入口の近傍の処理室側に配置されており、
前記第2の給気口から前記第2の気体を噴出する方向は、前記第2の給気口から前記搬入口を通って前記炉体の外部に向かう方向となっている、請求項2に記載の熱処理炉。
【請求項4】
前記フィルム体の表面に直交し、前記搬入口と前記搬出口を通過する断面で見たときに、
前記第1の給気口から前記第2の気体を噴出する方向と前記フィルム体の表面がなす角度は、0~90度の範囲となっており、
前記第2の給気口から前記第2の気体を噴出する方向と前記フィルム体の裏面がなす角度は、0~90度の範囲となっている、請求項3に記載の熱処理炉。
【請求項5】
前記搬入口は、前記フィルム体の搬送方向に沿って見ると、前記フィルム体の表面に対して平行となる一対の第1の辺と、前記フィルム体の表面に対して直交する一対の第2の辺を有する矩形状を呈しており、
前記前記第1の給気口と前記第2の給気口は、前記第1の辺に沿って配置されている、請求項2~4に記載の熱処理炉。
【請求項6】
前記搬入口の前記第1の辺の長さをLとし、前記第1の給気口の前記第1の辺と平行となる方向の寸法をL1とすると、L≦L1の関係が成立する、請求項5に記載の熱処理炉。
【請求項7】
前記搬入口は、前記フィルム体の搬送方向に沿って見ると、前記フィルム体の表面に対して平行となる一対の第1の辺と、前記フィルム体の表面に対して直交する一対の第2の辺を有する矩形状を呈しており、
前記搬入口の前記第2の辺の寸法を調整する開口幅調整装置をさらに備える、請求項2~6のいずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項8】
前記開口幅調整装置は、
前記フィルム体の表面側に配置される第1の遮蔽板と、
前記フィルム体の裏面側に配置される第2の遮蔽板と、を備えており、
前記第1の遮蔽板は、前記フィルム体の表面と直交する方向に移動可能となっており、
前記第2の遮蔽板は、前記フィルム体の裏面と直交する方向に移動可能となっており、
前記第1の遮蔽板と前記第2の遮蔽板の位置を調整することで、前記搬入口の前記第2の辺の寸法が調整される、請求項7に記載の熱処理炉。
【請求項9】
前記炉体は、前記案内ローラ毎に設けられ、当該案内ローラを回転可能に支持する軸受け部を備えており、
各軸受け部は、当該軸受部と前記処理室との間の空間に、前記第1の気体と前記第2の気体の少なくとも一方を供給する第2給気装置をさらに備えている、請求項1~8のいずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項10】
前記被処理物は、前記複数の案内ローラによって規定される搬送経路を通って前記搬入口から前記搬出口まで搬送され、
前記加熱装置は、前記搬送経路に沿って配置され、赤外領域の電磁波を放射して前記被処理物を加熱する複数のヒータを備えている、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項11】
前記第1給気装置は、前記処理室内であって、前記搬送経路に沿って配置されており、前記被処理物に向かって前記第1の気体を噴出する複数の給気管を備えている、請求項10に記載の熱処理炉。
【請求項12】
前記被処理物は、フィルムと、前記フィルムの表面及び裏面の少なくとも一方に塗布されたペーストと、を備えるフィルム体であり、
前記加熱装置は、前記ペーストに含まれる水分を除去する、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項13】
前記搬送装置は、
前記炉体の外側であって前記搬入口の近傍に配置され、前記被処理物が巻回された搬入口ローラと、
前記炉体の外側であって前記搬出口の近傍に配置され、前記処理室内を搬送された前記被処理物を巻き取る搬出口ローラと、をさらに備えており、
前記搬入口ローラ及び前記搬出口ローラが回転することで、前記搬入口ローラに券回された前記被処理物は、前記搬入口ローラから送り出されて前記処理室内を搬送される、請求項1~12のいずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項14】
前記処理室内の雰囲気は、露点が0℃以下となる不活性ガス雰囲気である、請求項1~13のいずれか一項に記載の熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、被処理物に熱処理を実施する熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示される熱処理炉では、被処理物は搬入口から処理室を通って搬出口まで架け渡される。被処理物は、搬入口から処理室内に搬入され、処理室内を搬送されて、搬出口から搬出される。被処理物は、処理室内に配置された加熱装置により加熱され、処理室内を搬送されている間に被処理物に熱処理が実施される。被処理物の熱処理を効果的に行うためには、処理室内の雰囲気を制御する必要がある。このため、特許文献1の熱処理炉では、給気装置により処理室内に気体を供給し、処理室内の雰囲気を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
上記の熱処理炉では、被処理物が搬入口から処理室を通って搬出口まで架け渡されている。このため、搬入口と搬出口は常に開いており、処理室は搬入口と搬出口を介して炉体の外部と連通している。その結果、搬入口と搬出口を介して炉体の外部の気体が処理室内に進入し、処理室内の雰囲気を悪化させる。特に、搬入口は、被処理物が炉外から処理室内に搬送されるのに伴って、炉体外部の気体が処理室内に進入し易く、搬入口近傍の処理室内の雰囲気が悪化し易いという問題があった。本明細書は、処理室内に炉体の外部の気体が進入することを抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する熱処理炉は、搬入口と、搬出口と、搬入口と搬出口との間に配置された処理室と、を備える炉体と、搬入口から搬出口まで架け渡される被処理物を、搬入口から処理室を通って搬出口に搬送する搬送装置と、処理室内に配置されており、搬送装置によって搬送される被処理物を案内する複数の案内ローラと、処理室内に配置されており、搬送装置によって搬送される被処理物を加熱する加熱装置と、処理室内に第1の気体を供給する第1給気装置と、搬入口の近傍に設けられ、第2の気体を噴出して搬入口を遮断するエアカーテン装置と、を備える。
【0006】
上記の熱処理炉では、搬入口の近傍にエアカーテン装置が設けられ、エアカーテン装置から噴出される第2の気体によって搬入口が遮断される。このため、炉体の外部の気体が処理室内に進入することを抑制することができる。これによって、搬入口近傍の処理室内の雰囲気が悪化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】エアカーテン装置が配置された搬入口近傍を拡大して示す縦断面図。
【
図7】実施例1に係るエアカーテン給気管の断面図。
【
図8】熱処理炉の搬入口近傍に配置された開口幅調整装置を拡大して示す縦断面図。
【
図10】案内ローラの回転軸を支持する軸受け部分を拡大して示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に開示する熱処理炉では、被処理物は、搬入口から搬出口まで架け渡されるフィルム体であってもよい。エアカーテン装置は、フィルム体の表面側に配置され、フィルム体の表面に向かって第2の気体を噴出する第1の給気口と、フィルム体の裏面側に配置され、フィルム体の裏面に向かって第2の気体を噴出する第2の給気口と、を備えていてもよい。このような構成によると、被処理物であるフィルム体の表面側に形成される開口(搬入口の表面側の壁とフィルム体の表面との間に形成される開口)が第1の給気口から噴出する第2の気体によって遮断され、フィルム体の裏面側に形成される開口(搬入口の裏面側の壁とフィルム体の裏面との間に形成される開口)が第2の給気口から噴出する第2の気体によって遮断される。これによって、炉体外部の気体が処理室内に進入することを効果的に抑制することができる。
【0009】
本明細書に開示する熱処理炉では、第1の給気口は、搬入口の近傍の処理室側に配置されていてもよい。第1の給気口から第2の気体を噴出する方向は、第1の給気口から搬入口を通って炉体の外部に向かう方向となっていてもよい。また、第2の給気口は、搬入口の近傍の処理室側に配置されていてもよい。第2の給気口から第2の気体を噴出する方向は、第2の給気口から搬入口を通って炉体の外部に向かう方向となっていてもよい。このような構成によると、処理室内から搬入口を介して炉体の外部に向かって第2の気体を噴出するため、炉体の外部の気体が処理室内に進入することを効果的に抑制することができる。
【0010】
本明細書に開示する熱処理炉では、フィルム体の表面に直交し、搬入口と搬出口を通過する断面で見たときに、第1の給気口から第2の気体を噴出する方向とフィルム体の表面がなす角度は、0~90度の範囲となっていてもよい。また、第2の給気口から第2の気体を噴出する方向とフィルム体の裏面がなす角度は、0~90度の範囲となっていてもよい。このような構成によると、第1の給気口及び第2の給気口から噴出した第2の気体は、フィルム体の表面又は裏面に衝突し、その少なくとも一部がフィルム体の表面に沿って流れる。このような第2の気体の流れによって、炉外の気体が処理室内に進入することを効果的に抑制することができる。
【0011】
本明細書に開示する熱処理炉では、搬入口は、フィルム体の搬送方向に沿って見ると、フィルム体の表面に対して平行となる一対の第1の辺と、フィルム体の表面に対して直交する一対の第2の辺を有する矩形状を呈していてもよい。第1の給気口と第2の給気口は、第1の辺に沿って配置されていてもよい。このような構成によると、一対の第1の辺の一辺(表面側の辺)とフィルム体の表面との間、及び、一対の第1の辺の他の辺(裏面側の辺)とフィルム体の裏面との間のそれぞれを、第1の給気口及び第2の給気口から噴出する第2の気体によって炉外から遮断することができる。
【0012】
本明細書に開示する熱処理炉では、搬入口の第1の辺の長さをLとし、第1の給気口の第1の辺と平行となる方向の寸法をL1とすると、L≦L1の関係が成立してもよい。このような構成によると、第1の辺の長さ以上に第1の給気口が設けられているため、搬入口からの炉外の気体の侵入を効果的に抑制することができる。なお、第1の給気口は、単一の給気口(例えば、スリット状の給気口)から形成されていてもよい。この場合は、単一の給気口の寸法L1をL以上としてもよい。あるいは、第1の給気口は、第1の辺と平行となる方向に間隔を空けて配置された複数の給気口から形成されていてもよい。この場合は、複数の給気口のうち一方の端部に配置された給気口から他方の端部に配置された給気口までの寸法L1をL以上としてもよい。
【0013】
本明細書に開示する熱処理炉では、搬入口は、フィルム体の搬送方向に沿って見ると、フィルム体の表面に対して平行となる一対の第1の辺と、フィルム体の表面に対して直交する一対の第2の辺を有する矩形状を呈していてもよい。熱処理炉は、搬入口の第2の辺の寸法を調整する開口幅調整装置をさらに備えていてもよい。このような構成によると、搬入口の開口幅を調整することで、炉外の気体が処理室内へ進入する程度を調整することができる。
【0014】
本明細書に開示する熱処理炉では、開口幅調整装置は、フィルム体の表面側に配置される第1の遮蔽板と、フィルム体の裏面側に配置される第2の遮蔽板と、を備えていてもよい。第1の遮蔽板は、フィルム体の表面と直交する方向に移動可能となっていてもよい。第2の遮蔽板は、フィルム体の裏面と直交する方向に移動可能となっていてもよい。そして、第1の遮蔽板と第2の遮蔽板の位置を調整することで、搬入口の第2の辺の寸法が調整されてもよい。このような構成によると、2枚の遮蔽板の位置を調整することで、搬入口の開口幅を調整することができる。
【0015】
本明細書に開示する熱処理炉では、炉体は、案内ローラ毎に設けられ、当該案内ローラを回転可能に支持する軸受け部を備えていてもよい。各軸受け部は、当該軸受部と処理室との間の空間に、第1の気体と第2の気体の少なくとも一方を供給する第2給気装置をさらに備えていてもよい。このような構成によると、炉外の気体が軸受部を介して処理室内に進入することを抑制することができる。
【0016】
本明細書に開示する熱処理炉では、被処理物は、複数の案内ローラによって規定される搬送経路を通って搬入口から搬出口まで搬送されてもよい。加熱装置は、搬送経路に沿って配置され、赤外領域の電磁波を放射して被処理物を加熱する複数のヒータを備えていてもよい。このような構成するよると、被処理物は搬送経路を搬送される間に、搬送経路に沿って配置された複数のヒータによって加熱することができる。
【0017】
本明細書に開示する熱処理炉では、第1給気装置は、処理室内であって、搬送経路に沿って配置されており、被処理物に向かって第1の気体を噴出する複数の給気管を備えていてもよい。このような構成によると、搬送経路に沿って配置された複数の給気管によって熱処理炉内の雰囲気を所望の雰囲気に調整することができる。
【0018】
本明細書に開示する熱処理炉では、被処理物は、フィルムと、フィルムの表面及び裏面の少なくとも一方に塗布されたペーストと、を備えるフィルム体であってもよい。加熱装置は、ペーストに含まれる水分を除去してもよい。このような構成によると、処理室内の雰囲気を所望の雰囲気に制御できるため、ペーストに含まれる水分の除去を効果的に行うことができる。
【0019】
本明細書に開示する熱処理炉では、搬送装置は、炉体の外側であって搬入口の近傍に配置され、被処理物が巻回された搬入口ローラと、炉体の外側であって搬出口の近傍に配置され、処理室内を搬送された被処理物を巻き取る搬出口ローラと、をさらに備えていてもよい。搬入口ローラ及び搬出口ローラが回転することで、搬入口ローラに券回された被処理物は、搬入口ローラから送り出されて処理室内を搬送されてもよい。このような構成によると、搬入口ローラに券回された被処理物に連続して熱処理を実施することができる。
【0020】
本明細書に開示する熱処理炉では、処理室内の雰囲気は、露点が0℃以下となる不活性ガス雰囲気であってもよい。このような構成によると、雰囲気ガスに含まれる水分の凝結を抑制することができる。
【実施例0021】
以下、実施例1に係る熱処理炉10について説明する。本実施例の熱処理炉10は、ワークW(被処理物の一例)に含まれる水分を除去する乾燥炉(脱水装置)である。ワークWは、長手方向に連続して伸びるシート体であり、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL、電池などに用いられるフィルム(フィルム体の一例)が該当する。このようなフィルムは、フィルム自体に水分が含まれる場合や、あるいは、フィルムに被覆層が被覆されている場合は当該被覆層に水分が含まれていることがある。このため、まずはフィルムに含まれる水分が除去され、その後、水分が除去されたフィルムを所望の大きさに切断して、最終製品が製造される。本実施例の熱処理炉10は、このようなシート体から水分を除去するために用いることができる。
【0022】
以下、図面を参照して、熱処理炉10の構成を説明する。
図1,2に示すように、熱処理炉10は、直方体形状の炉体12と、炉体12へのワークWの搬入と搬出を行う搬送装置20と、ワークWを加熱する加熱装置(26,28)と、ワークWの表面に冷却ガスを供給する給気装置(38等)を備えている。
【0023】
炉体12は、下壁13と、下壁13に対向する上壁14と、下壁13に一端が接続されると共に上壁14に他端が接続される側壁17,18(
図2参照)と、これらの壁13,14,17,18によって取囲まれる処理室(19a,19b)の端部を閉じる搬入側壁15及び搬出側壁16を備える。
下壁13は、平面視すると矩形状の板材であり、処理室(19a,19b)の下方に配置されている。
図1に示すように、下壁13には、x方向に略一定の間隔を空けて複数の排気口13aが設けられている。複数の排気口13aのうち中央に配置される5個の排気口13aは、後述する案内ローラ24と対向する位置に配置されている。複数の排気口13aのうちx方向の一端に配置される排気口13aは、搬入側壁15に近接する位置に配置されている。複数の排気口13aのうちx方向の他端に配置される排気口13aは、搬出側壁15に近接する位置に配置されている。複数の排気口13aのそれぞれは、排気ファン13bに接続されている。排気ファン13bが運転すると、処理室(19a,19b)内の雰囲気ガスが処理室(19a,19b)外に排気されるようになっている。
上壁14は、下壁13と同一形状の板材であり、処理室(19a,19b)の上方に配置されている。上壁14にも、下壁13と同様に、x方向に略一定の間隔を空けて複数の排気口14aが設けられている。複数の排気口14aのそれぞれは、複数の排気口13aのそれぞれと対向する位置に配置されている。複数の排気口14aのそれぞれは、排気ファン14bに接続されている。排気ファン14bが運転すると、処理室(19a,19b)内の雰囲気ガスが処理室(19a,19b)外に排気されるようになっている。
搬入側壁15には搬入口15aが形成されており、搬出側壁16には搬出口16bが形成されている。搬入口15aと搬出口16bの高さ方向の位置は同一の位置となっており、搬入口15aと搬出口16bは互いに対向している。
図1から明らかなように、処理室(19a,19b)は、搬入口15aと搬出口16bとの間に配置されている。
なお、炉体12を構成する各壁13,14,15,16,17,18の内面(すなわち、処理室(19a,19b)側の面)には、鏡面加工が施されている。その結果、これらの面の赤外領域の電磁波(詳細には、後述するヒータ26,28が放射する電磁波)の反射率は50%以上となっている。これによって、ヒータ26,28が放射する電磁波をワークWへ効率的に照射できるようになっている。
【0024】
搬送装置20は、炉体12の外側であって搬入口15aの近傍に配置される搬入口ローラ21と、炉体12の外側であって搬出口16aの近傍に配置される搬出口ローラ25と、処理室(19a,19b)内に配置される複数の案内ローラ(22a,22b,22c,24)を備えている。
搬入口ローラ21にはワークWが巻回されている。搬入口ローラ21に券回されたワークWは、搬入口15aから処理室(19a,19b)を通って搬出口16aまで架け渡されている。具体的には、ワークWは、搬入口ローラ21から搬入口15aを通って案内ローラ(22a,22b,22c,24)に架け渡され、さらに案内ローラ(22a,22b,22c,24)から搬出口16aを介して搬出口ローラ25に架け渡されている。
搬出口ローラ25は、処理室(19a,19b)から搬出されるワークWを巻き取るローラである。搬出口ローラ25には図示しない駆動装置が接続されており、駆動装置により搬出口ローラ25が回転駆動される。搬出口ローラ25が回転すると、搬入口ローラ21に券回されたワークWが処理室(19a,19b)に送り出される。搬入口ローラ21から送り出されたワークWは、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に案内されて処理室(19a,19b)内の所定の搬送経路を移動し、搬出口16aから処理室(19a,19b)外に送り出されて搬出口ローラ25に巻き取られる。すなわち、案内ローラ(22a,22b,22c,24)は、処理室(19a,19b)内のワークWの搬送経路を規定している。
【0025】
案内ローラ(22a,22b,22c,24)は、上壁14の近傍に配置される複数の上部案内ローラ(22a,22b,22c)と、下壁13の近傍に配置される複数の下部案内ローラ24を備えている。なお、本実施例において、案内ローラ(22a,22b,22c,24)には、ワークWと接触する接触式ローラを用いたが、ワークWを非接触で案内する非接触式ローラを用いることもできる。
上部案内ローラ(22a,22b,22c)は、x方向に一定の間隔を空けて配置されている。具体的には、上部案内ローラ22aは搬入口15aに隣接して配置され、上部案内ローラ22cは搬出口16aに隣接して配置されている。複数の案内ローラ22bは、上部案内ローラ22aと上部案内ローラ22cの間に等間隔で配置されている。上部案内ローラ(22a,22b,22c)のそれぞれの高さ方向の位置は同一となっている。
複数の下部案内ローラ24のそれぞれは、上部案内ローラ(22a,22b,22c)と同様、x方向に一定の間隔を空けて配置されている。隣接する下部案内ローラ24のx方向の間隔は、上部案内ローラ(22a,22b,22c)のx方向の間隔と同一となっている。複数の下部案内ローラ24のx方向の位置は、隣接する上部案内(22a,22b,22c)の中央位置となっている。複数の下部案内ローラ24の高さ方向の位置は同一となっている。
【0026】
上述したように上部案内ローラ(22a,22b,22c)と下部案内ローラ24が配置されているため、搬入口15aからx方向に搬送されるワークWは、上部案内ローラ22aによって下方に向かって搬送され、次いで、下部案内ローラ24によって上方に向かって搬送され、以下、上部案内ローラ22bと下部案内ローラ24によって上下方向に繰り返し搬送される。そして、最も搬出口16a側に配置された下部案内ローラ24から上方に向かって搬送されるワークWは、上部案内ローラ22cによって搬出口16aに向かって搬送される。このように、処理室(19a,19b)内を上下方向に繰り返し搬送することで、処理室(19a,19b)内のスペースを有効に活用でき、ワークWを乾燥させるための処理時間を確保している。なお、
図1から明らかなように、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に架け渡されたワークWによって、処理室(19a,19b)は、上壁14側に設けられる上部処理室19aと、下壁13側に設けられる下部処理室19bとに区分されている。なお、
図2から明らかなように、ワークWがない位置(すなわち、ワークWのY方向の両端の外側の位置)では、上部処理室19aと下部処理室19bは接続されている。
【0027】
加熱装置は、処理室(19a、19b)内に配置され、搬送装置20によって搬送されるワークWを加熱する。加熱装置は、案内ローラ(22a,22b,22c,24)の近傍に配置された第1ヒータ(26a,26b)と、上部案内ローラ(22a,22b,22c)と下部案内ローラ24の間の高さに配置された第2ヒータ28を備えている。
図2に示すように、第1ヒータ(26a,26b)と第2ヒータ28は、案内ローラ(22a,22b,22c,24)の軸線方向に伸びており、ワークWの幅方向(y方向)の全体を加熱可能となっている。
【0028】
図1に示すように、第1ヒータ(26a,26b)は、上部案内ローラ(22a,22b,22c)の上方に配置される複数の第1上部ヒータ26aと、下部案内ローラ24の下方に配置される複数の第1下部ヒータ26bを備えている。第1上部ヒータ26aのそれぞれは、対応する上部案内ローラ(22a,22b,22c)と対向して配置されており、第1下部ヒータ26bのそれぞれは対応する下部案内ローラ24と対向して配置されている。このため、第1上部ヒータ26aと上部案内ローラ(22a,22b,22c)の間にワークWが位置し、ワークWは第1上部ヒータ26aによって直接加熱される。同様に、第1下部ヒータ26bと下部案内ローラ24の間にワークWが位置し、ワークWは第1下部ヒータ26bによって直接加熱される。
【0029】
第2ヒータ28は、上部案内ローラ(22a,22b,22c)のそれぞれの下方に、z方向に間隔を空けて2個配置されている。また、第2ヒータ28は、下部案内ローラ24のそれぞれの上方に、z方向に間隔を空けて2個配置されている。このため、x方向に間隔を空けて11個の第2ヒータ28が並ぶと共に、y方向に間隔を空けて2個の第2ヒータ28が並んで配置されている。図から明らかなように、第2ヒータ28は、上部案内ローラ(22a,22b,22c)と下部案内ローラ24に架け渡されたワークWと対向する位置(すなわち、ワークWの搬送方向に隣接する案内ローラ間の中間位置の近傍)に配置されている。第2ヒータ28が案内ローラ(22a,22b,22c,24)の軸線方向に伸びているため、上部案内ローラ(22a,22b,22c)と下部案内ローラ24に架け渡されたワークWの幅方向の全体が第2ヒータ28によって加熱される。
【0030】
第1ヒータ(26a,26b)は、赤外領域の電磁波を放射する公知の波長制御可能なヒータであり、第1ヒータ(26a,26b)と第2ヒータ28は同一構造を有している。このため、ここでは第2ヒータ28の構造について簡単に説明する。
図3に示すように、第2ヒータ28は、フィラメント30と、フィラメント30を収容する内管32と、内管32を収容する外管34を備えている。フィラメント30は、例えば、タングステン製の発熱体であり、図示しない外部電源から電力が供給されるようになっている。フィラメント30に電力が供給されて所定温度(例えば、1200~1700℃)となると、フィラメント30から赤外線を含む電磁波が放射される。内管32は、フィラメント30から放射される電磁波のうち特定の波長領域(本実施例では、赤外領域)の電磁波のみを透過する赤外線透過材料によって形成されている。内管32を形成する赤外線透過材料を適宜選択することで、フィラメント30から内管32の外部に放射される電磁波の波長を所望の波長に調整することができる。外管34も、内管32と同一の赤外線透過材料によって形成されている。したがって、内管32を透過した電磁波は、外管34を透過して外部に放射される。内管32と外管34の間の空間36は、冷媒(例えば、空気)が流れる冷媒流路となっている。空間36(すなわち、冷媒流路)に冷媒が供給されることで、外管34の温度が高温となり過ぎることが防止されている。これによって、ワークWの過熱が防止される。なお、赤外領域の電磁波を放射する波長制御可能なヒータについては、例えば、特許4790092号に詳細に開示されている。
【0031】
給気装置(第1給気装置の一例)は、処理室(19a,19b)内をy方向に伸びる複数の給気管38と、処理室(19a,19b)外に配置されて複数の給気管38に冷却ガス(第1の気体の一例)を供給する給気ファン(図示省略)を備えている。
図4に示すように、給気管38には、周方向の2か所に噴出孔39a,39bが形成されている。このため、給気ファンから給気管38に供給された冷却ガスは、噴出孔39a,39bから処理室(19a,19b)内に噴射される。本実施例では、噴出孔39a,39bから噴射される冷却ガスの噴出方向がワークWの表面に対して直交するように、給気管38を設置する向きが調整されている。
図4に示すように、噴出孔39a,39bは、給気管38の軸線を挟んで対向する位置に配置されている。このため、給気管38の搬入口15a側と搬出口16a側のそれぞれにワークWが位置する場合、当該給気管38の噴出孔39aから噴射される冷却ガスは一方のワークWに噴射され、当該給気管38の噴出孔39bから噴射される冷却ガスは他方のワークWに噴射される。また、
図2に示すように、給気管38の噴出孔39a,39bは、y方向に間隔を空けて複数形成されている。このため、噴出孔39a,39bから噴射される冷却ガスは、ワークWの幅方向(y方向)の全体に噴射されることになる。
【0032】
図1に示すように、給気管38は、上部案内ローラ(22a,22b,22c)のそれぞれの下方に、z方向に間隔を空けて2個配置されている。また、給気管38は、下部案内ローラ24のそれぞれの上方に、z方向に間隔を空けて2個配置されている。
図1から明らかなように、給気管38は、第1ヒータ(26a,26b)及び第2ヒータ28が配置される位置とは異なる位置に配置されている。具体的には、第2ヒータ28と給気管38はz方向(搬送方向)に等しい間隔を空けて交互に配置されている。また、上述したように、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に架け渡されたワークWによって、処理室(19a,19b)は上部処理室19aと下部処理室19bとに区分されているが、上部処理室19aと下部処理室19bのそれぞれに給気管38が配置されている。
【0033】
給気管38に供給される冷却ガスとしては、例えば、不活性ガス、窒素、Arガス等を用いることができる。処理室(19a,19b)内の雰囲気ガスは、給気管38から処理室(19a,19b)内に噴射されるガスによって調整される。本実施例では、ワークWに含まれる水分を除去するため、処理室(19a,19b)内の雰囲気ガスは、露点が0℃以下となるガスに調整されている。なお、冷却ガスとしては、露点が0℃以下となる大気としてもよい。
【0034】
図1,5,6に示すように、熱処理炉10は、搬入口15aの近傍に設けられたエアカーテン装置50をさらに備えている。エアカーテン装置50は、処理室19b内をy方向に伸びる下部給気管48bと、処理室19a内をy方向に伸びる上部給気管48aと、処理室(19a,19b)外に配置されて上部給気管48a及び下部給気管48bに遮断ガス(第2の気体の一例)を供給する給気ファン(図示省略)を備えている。
【0035】
図5,6に示すように、下部給気管48bは、処理室19b内の搬入側壁15の近傍であって、ワークWの裏面側に配置されている。詳細には、下部給気管48bは、搬入口15aの下辺151bのわずかに下方であって、下辺151bに沿って配置されている。すなわち、搬入口15aは、ワークWの搬送方向に沿って見ると、y方向に伸びる一対の上辺151a及び下辺151b(第1の辺の一例)と、z方向に伸びる一対の側辺152(第2の辺の一例)とを有する矩形状に形成されている。下部給気管48bは、ワークWの裏面に平行な下辺151bに沿って配置されており、その一端は下辺151bの一端(-y方向の端部)より-y方向に位置し、その他端は処理室19bの外にまで伸びている。すなわち、下部給気管48bは、下辺151bの寸法Lよりy方向の寸法が長く、下辺151bの下方の全体に下部給気管48bが配置されている。
【0036】
下部給気管48bには、給気ファンから供給される遮断ガスをワークWの裏面に向かって噴出する給気口49b(第2の給気口の一例)が形成されている(
図7参照)。本実施例では、給気口49bは、下部給気管48bの軸線方向(y方向)に伸びるスリット状に形成されている。スリット状に形成される給気口49bは、
図6に示すL1の範囲に形成されている。したがって、給気口49bのy方向の寸法L1は、搬入口15aの下辺151bの寸法L以上となっている(L≦L1)。また、
図6から明らかなように、給気口49bの一端は下辺151bの一端(-y方向の端部)より-y方向に位置し、その他端は下辺151bの他端(+y方向の端部)より+y方向に位置している。このため、搬入口15aの下方には必ず給気口49bが位置し、給気口49bからの遮断ガスが搬入口15aのy方向の全体に噴出されるようになっている。
なお、本実施例の給気口49bは、y方向に伸びるスリット状の単一の給気口であったが、このような形態に限られない。例えば、給気口49bは、y方向に所定の間隔を空けて配置された複数の給気口から形成されていてもよい。この場合、複数の給気口のうち一方の端部に配置された給気口が下辺151bの一端(-y方向の端部)より-y方向に位置し、他方に配置された給気口が下辺151bの他端(+y方向の端部)より+y方向に位置することで、遮断ガスを搬入口15aの全体に噴出してもよい。
【0037】
図7に示すように、給気口49bは、下部給気管48bの周方向の一ヵ所に形成されている。このため、給気口49bから噴出する遮断ガスは、下部給気管48bの周方向の特定の方向に噴出することになる。本実施例では、
図5に示すように、給気口49bから噴出する遮断ガスの方向(矢印62aの方向)は、遮断ガスが給気口49bから搬入口15aを通って炉体12の外部に向かう方向となっている。
図5から明らかなように、給気口49bから噴出する遮断ガスは、炉体12の外部でワークWの裏面に衝突し、炉外に向かう流れ(矢印62c)と炉内に向かう流れ(矢印62b)とに分かれる。本実施例では、遮断ガスが炉体12の外部でワークWの裏面に衝突することから、炉外に向かう流れ(矢印62c)が炉内に向かう流れ(矢印62b)より強くなる。これによって、炉体12の外部の大気が処理室(19a,19b)内に進入することを効果的に抑制することができる。
【0038】
なお、給気口49bから遮断ガスを噴出する方向は、搬入口15aを遮断できる方向であればよく、
図5に示す方向に限られない。例えば、ワークWの表面(又は裏面)に直交し、搬入口15aと搬出口16aを通過する断面で見たときに(すなわち、
図5に示す断面でみたときに)、給気口49bから遮断ガスを噴出する方向とワークWの裏面がなす角度(
図5のθ
2)が0~90度の範囲となるように、遮断ガスを噴出する方向を設定してもよい。このような構成によっても、遮断ガスがワークWの裏面に衝突することで、炉外に向かう流れが十分に発生し、炉体12の外部の大気が処理室(19a,19b)内に進入することを抑制することができる。
【0039】
一方、上部給気管48aは、処理室19a内の搬入側壁15の近傍であって、ワークWの表面側に配置されている(
図5,6参照)。詳細には、上部給気管48aは、搬入口15aの上辺151aのわずかに上方であって、ワークWの表面に平行な上辺151aに沿って配置されている。上部給気管48aは、下部給気管48bと同様に、その一端が上辺151aの一端(-y方向の端部)より-y方向に位置し、その他端は処理室19aの外にまで伸びている。
【0040】
上部給気管48aには、給気ファンから供給される遮断ガスをワークWの表面に向かって噴出する給気口49a(第1の給気口の一例)が形成されている(
図7参照)。給気口49aは、給気口49bと同様、上部給気管48aの軸線方向(y方向)に伸びるスリット状に形成され、かつ、
図6に示すL1の範囲に形成されている。したがって、給気口49aのy方向の寸法は、給気口49bの寸法L1と同一となり、搬入口15aの上辺151aの寸法L以上となっている(L≦L1)。また、上部給気管48aにおいても、搬入口15aの上方には必ず給気口49aが位置し、給気口49aからの遮断ガスが搬入口15aのy方向の全体に噴出されるようになっている。なお、給気口49aは、給気口49bと同様、y方向に所定の間隔を空けて配置された複数の給気口から形成されていてもよい。
【0041】
図5に示すように、給気口49aから噴出する遮断ガスの方向(矢印60aの方向)は、遮断ガスが給気口49aから搬入口15aを通って炉体12の外部に向かう方向となっている。本実施例では、給気口49aから噴出する遮断ガスは、炉体12の外部でワークWの表面に衝突し、炉外に向かう流れ(矢印60c)と炉内に向かう流れ(矢印60b)とに分かれる。図から明らかなように、炉外に向かう流れ(矢印60c)は、炉内に向かう流れ(矢印60b)より強くなるため、炉体12の外部の大気が処理室(19a,19b)内に進入することを効果的に抑制することができる。
【0042】
なお、
図6から明らかなように、給気口49aから噴出する遮断ガスがワークWと衝突する位置(y方向の位置)と、給気口49bから噴出する遮断ガスがワークWと衝突する位置(y方向の位置)とは、同一の位置となるように設定されている。このため、ワークWがない位置(y方向の位置(
図6参照))では、給気口49aから噴出する遮断ガスと、給気口49bから噴出する遮断ガスとが衝突し、炉外に向かう流れと炉内に向かう流れが形成される。上部給気管48aからの遮断ガスの流れと、下部給気管48bからの遮断ガスの流れを衝突させて炉外に向かう流れを形成することで、炉体12の外部の大気が処理室(19a,19b)内に進入することを効果的に抑制している。
【0043】
また、給気口49aから遮断ガスを噴出する方向は、給気口49bと同様、
図5に示す断面でみたときに、給気口49aから遮断ガスを噴出する方向とワークWの表面がなす角度(
図5のθ
1)が0~90度の範囲となるように、遮断ガスを噴出する方向を設定してもよい。
【0044】
なお、給気口49a,49bから噴射する遮断ガスとしては、給気管38に供給される冷却ガスと同じ気体、例えば、不活性ガス、窒素、Arガス等を用いることができ、あるいは、給気管38に供給される冷却ガスとは異なる気体を使用することもできる。本実施例では、ワークWに含まれる水分を除去するため、処理室(19a,19b)内の雰囲気ガスは、露点が0℃以下となるガスに調整されていることが好ましい。このため、例えば、給気管38からは露点-40℃の不活性ガス又は大気等を供給し、エアカーテン装置50からは露点-60℃又は露点-20℃の不活性ガス又は大気等を供給してもよい。
【0045】
また、上述した説明から明らかなように、搬入口15aのワークWから上辺151aまでの間の開口は給気口49aから噴射される遮断ガスで遮断され、搬入口15aのワークWから下辺151bまでの間の開口は給気口49bから噴射される遮断ガスで遮断される。一方で、図から明らかなように、ワークWから搬入口15aの上辺151aまでの距離は、ワークWから搬入口15aの下辺151bまでの距離よりも短くなっている。このため、本実施例では、給気口49aから噴射される遮断ガスの流量が、給気口49bから噴射される遮断ガスの流量より少なくなるように設定されていてもよい。ただし、給気口49aから噴射される遮断ガスの流量と、給気口49bから噴射される遮断ガスの流量とが同一となるように設定されていてもよい。
【0046】
コントローラ44は、CPU,ROM,RAMを備えたプロセッサによって構成され、搬送装置20と加熱装置(26,28)と給気装置を制御する。具体的には、コントローラ44は、搬送装置20を制御することでワークWの搬送速度及び張力を制御し、加熱装置(26,28)を制御することでワークWの加熱量を制御し、給気装置を制御することで給気管38からワークWに噴射される冷却ガスの流量及び流速を制御する。さらに、コントローラ44は、エアカーテン装置50から噴射される遮断ガスの流量及び流速を制御する。
【0047】
なお、熱処理炉10には、搬入口ローラ21に巻回されたワークWを搬出口ローラ25にセットするための通し装置が設けられている。
図1に示すように、通し装置は、処理室(19a,19b)内と処理室(19a,19b)外を通って循環するチェーン42と、チェーン42を駆動する駆動装置(図示省略)を備えている。チェーン42は、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に架け渡されたワークWと同様に、搬入口15aから上下方向に向きを変えながら搬出口16aまで伸び、搬出口16aから処理室(19a,19b)の外側を通って搬入口15aに戻っている。
図1に示すように、チェーン42が架け渡される経路は、ワークWが架け渡される経路(すなわち、ワークWの搬送経路)と複数個所で交差している。なお、チェーン42が配置される位置は、ワークWの幅方向(y方向)の外側の位置となるため、チェーン42とワークWが干渉することはない(
図2参照)。通し装置によりワークWを搬出口ローラ25にセットするには、まず、チェーン42に設けられた図示しないクランプにより搬入口ローラ21に巻回されたワークWをクランプする。次いで、駆動装置によりチェーン42を循環させ、ワークWを搬入口ローラ21より送り出す。これにより、チェーン42のクランプに保持されたワークWは、処理室(19a,19b)内をチェーン42と共に移動し、搬出口16aまで移動する。搬出口16aまでワークWが移動すると、クランプを操作してチェーン42からワークWを開放し、ワークWを搬出口ローラ25にセットする。最後に、搬出口ローラ25を回転させてワークWに張力を与えることで、ワークWが搬入口15aから案内ローラ(22a,22b,22c,24)を介して搬出口16aまで架け渡される。
【0048】
次に、上述した熱処理炉10を用いてワークWから水分を除去する処理を説明する。まず、給気管38から処理室(19a,19b)内に冷却ガスを供給し、処理室(19a,19b)内を所定の雰囲気に調整する。この際、エアカーテン装置50を作動させ、給気口49a,49bから噴射する遮断ガスによって、搬入口15aを炉体12の外部から遮断する。これによって、炉体12の外部の気体が搬入口15aを通って処理室(19a,19b)内に進入することが抑制される。次いで、コントローラ44は、搬送装置20を駆動することで、ワークWを搬入口15aから処理室(19a,19b)を通って搬出口16aまで搬送する。この際、コントローラ44は、加熱装置(26,28)を制御してワークWに赤外線領域の電磁波を照射すると共に、給気管38からワークWの表面に冷却ガスを噴出する。加熱装置(26,28)から赤外線領域の電磁波が照射されると、ワークWに含まれる水分が照射された電磁波を吸収し、水分が蒸発する。ワークWから蒸発した水分は、給気管38から噴射される冷却ガスによってワークWの表面から除去される。ワークWの表面から除去された水分(ただし、水分には微量の有機溶剤が含まれる)を含んだ雰囲気ガスは、下壁13の排気口13aと、上壁14の排気口14aのそれぞれから処理室(19a,19b)外に排気される。ワークWは、搬入口15aから搬出口16aまで搬送される間に水分が除去される。水分が除去されたワークWは、搬出口ローラ25に巻き取られる。
【0049】
上記の熱処理炉10によると、案内ローラ(22a,22b,22c,24)の近傍で、案内ローラ(22a,22b,22c,24)と対向する第1ヒータ(26a,26b)を備えている。また、上部案内ローラ(22a,22b,22c)と下部案内ローラ24の間に第2ヒータ28を備えている。これらヒータ26a,26b,28のため、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に接触した状態におけるワークWに対する熱収支を制御でき、また、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に接触していない状態におけるワークWに対する熱収支を制御することができる。このため、ワークWの熱収支を好適に制御でき、ワークWから水分を除去する処理の効率を格段に向上することができる。例えば、ワークWが案内ローラ(22a,22b,22c,24)に接触することで、ワークWから案内ローラ(22a,22b,22c,24)に熱が流れてワークWが冷却され過ぎてしまう場合は、第1ヒータ(26a,26b)からワークWに供給する熱量を増加し、ワークWが冷却され過ぎないようにする。これによって、ワークWから水分を除去する効率が低下してしまうことを防止することができる。
【0050】
また、上記の熱処理炉10では、給気管38と第2ヒータ38が搬送方向に交互に配置され、また、給気管38からの冷却ガスはワークWの表面に直交する方向から噴射される。これによって、ワークWの内部から蒸発した水分がワークWの表面から速やかに除去され、ワークWからの水分の除去が促進される。これによっても、ワークWの水分の除去効率を高めることができる。
【0051】
さらに、案内ローラ(22a,22b,22c,24)に架け渡されたワークWによって、処理室(19a,19b)は上部処理室19aと下部処理室19bとに区分されるが、上部処理室19aと下部処理室19bのそれぞれに給気管38と排気口14a,13aが配置されている。このため、上部処理室19aに供給された冷却ガス及び下部冷却室19bに供給された冷却ガスは、除去された水分と共に速やかに処理室(19a,19b)外に排気される。これによっても、処理室(19a,19b)内のガスの流れが好適化され、ワークWの水分除去効率を高めることができる。また、本実施例では、搬入口15aの近傍にエアカーテン装置50が配置され、炉体12の外部の気体が搬入口15aを介して処理室(19a,19b)内に進入することが抑制される。このため、処理室(19a,19b)内の雰囲気が悪化することが抑制され、ワークWの水分除去効率を高めることができる。
【0052】
なお、ヒータ(26a,26b,28)は、内管及び外管を形成する赤外線透過材料を選択することで、放射する赤外線の波長領域を調整することができる。このため、ワークWの特性に応じて放射する電磁波の波長を調整することで、ワークWの熱処理効率を向上することができる。例えば、ワークWとして、固形分(フェノール・エポキシ樹脂、10~90wt%)と、該固形分をスラリー状又はペースト状とする溶媒(水又は溶剤(例えば、IPA(イソプロピルアルコール、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)等)から構成される物質を乾燥する場合を考える。このようなワークWを乾燥する場合、熱処理炉10の前半では近赤外線波長を選択したヒータ(26a,26b,28)により水又は溶剤の乾燥を行い、熱処理炉10の後半では遠赤外線波長を選択したヒータ(26a,26b,28)によるアニーリングを行うようにしてもよい。
【0053】
また、上記の実施例では、ヒータ(26a,26b,28)は、全て同一の波長領域の電磁波を放射したが、このような例に限られない。例えば、ヒータ(26a,26b,28)から放射される電磁波の波長は、搬送経路上の位置に応じて調整されていてもよい。例えば、熱処理炉10によってワークWから水分を除去する場合、ワークWに含まれる水分量は、搬入口15aから搬出口16aに向かって徐々に低下する。このため、ヒータ(26a,26b,28)から放射される電磁波の波長を、搬入口15aから搬出口16aに向かって徐々に長くすることで、水分量に応じた電磁波をワークWに照射することができる。
【0054】
また、上記の実施例では、案内ローラ(22a,22b,22c,24)の近傍に第1ヒータ(26a,26b)を配置し、第1ヒータ(26a,26b)によってワークWを加熱したが、このような例に限られない。例えば、案内ローラの内部に熱媒が流れる流路を設け、案内ローラによってワークWを加熱してもよい。このような構成によっても、案内ローラに接触する状態におけるワークWの熱収支が制御可能となり、ワークWの熱処理効率を向上することができる。
【0055】
また、上記の実施例に係る熱処理炉10においては、搬入口15aの上下方向の開口幅(z方向の寸法)を調整する開口幅調整装置を備えていてもよい。例えば、
図8.9に示すように、開口幅調整装置は、ワークWの表面側に配置される上部遮蔽板52(第1の遮蔽板の一例)と、ワークWの裏面側に配置される下部遮蔽板54(第2の遮蔽板の一例)と、を備えている。上部遮蔽板52は、搬入側壁15の外面であって、搬入口15aの上方に取付けられている。上部遮断板52は、正面視すると矩形状の板材であり、ユーザの操作によって手動で搬入側壁15に対して上下方向に移動可能となっている。下部遮蔽板54は、搬入側壁15の外面であって、搬入口15aの下方に取付けられている。下部遮断板54も、正面視すると矩形状の板材であり、ユーザの操作によって手動で搬入側壁15に対して上下方向に移動可能となっている。このため、ユーザが上部遮蔽板52をワークWの表面に近接した位置まで下方に移動させ、また、下部遮蔽板54をワークWの裏面に近接した位置まで上方に移動させることで、
図8,9に示すように搬入口15aの上下方向の開口幅を小さくすることができる。これによって、炉体12の外部の大気が搬入口15aを介して処理室(19a,19b)内に進入することをより抑制することができ、処理室(19a,19b)内の雰囲気を所望の状態に制御し易くなる。なお、上部遮蔽板52と下部遮蔽板54は、電動モータ等によって上下方向に移動するようにしてもよい。
【0056】
また、上記の実施例に係る熱処理炉10においては、案内ローラ22a,22b,22c,24の軸受け部に、炉体12の外部の気体が処理室(19a,19b)内に進入することを抑制するための構造を備えていてもよい。例えば、
図10に示すように、案内ローラ(22a,22b,22c,24)は回転軸56を備えており、回転軸56は側壁17,18に設けられた軸受け58,59によって回転可能に支持されている。側壁17,18のそれぞれには、処理室側に配置された軸受け59と炉外側に配置された軸受け58の間に位置する空間60と、一端が空間60に開口する一方で他端が炉外に開口する給気通路62(第2給気装置の一例)と、が設けられている。給気通路62の他端には、図示しない給気ファンが接続されている。給気ファンが作動すると、冷却ガス(給気管38に供給されるガス)又は遮断ガス(エアカーテン装置50に供給されるガス)が給気通路62の他端に供給される。その結果、給気通路62の一端から空間60内に冷却ガス又は遮断ガスが供給される。これによって、炉体12の外部の大気が軸受け部58,59を通って処理室(19a,19b)内に進入することを抑制することができる。
【0057】
また、上記の実施例では、処理室(19a,19b)の内部にエアカーテン装置50を設けたが、このような例に限られず、処理室の外部(例えば、搬入側壁15の外面)にエアカーテン装置を設けてもよい。また、上記の実施例では、搬入口15aのみにエアカーテン装置50を設けたが、このような例に限られず、搬出口16aにエアカーテン装置をさらに設けてもよい。
【0058】
また、上記の実施例において、上部給気管48aと下部給気管48bとは、その軸線周りに回転不能であったが、このような例に限られず、例えば、上部給気管48aと下部給気管48bを側壁17又は18に回転可能に支持してもよい。このような構成によると、上部給気管48aと下部給気管48bを軸線周りに回転させることで、遮断ガスを噴出する方向を調整することができる。これによって、エアカーテン装置による搬入口の遮断効果を調整することができる。
【0059】
また、上記の実施例においては、
図6に示すように、搬入口15aの上辺151aに沿って上部給気管48aを配置し、搬入口15aの下辺151bに沿って下部給気管48bを配置したが、このような例に限られない。例えば、搬入口15aの一対の側辺152,152の一方に沿って給気管を配置してもよい。すなわち、給気管をどちらか1つの側辺152に沿ってz方向に伸びるように配置し、この給気管から水平方向に遮断ガスを噴出するようにしてもよい。このような構成によると、ワークWの表面(裏面)と平行に遮断ガスを噴出するため、一対の側辺152の一方にのみ給気管を配置するだけで、搬入口15aの全体を遮断することができる。
【0060】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。