(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045337
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】固体金属有機源の集中供給システム
(51)【国際特許分類】
C23C 16/44 20060101AFI20220311BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20220311BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
C23C16/44 B
C23C16/455
H01L21/205
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021139692
(22)【出願日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】202010934991.6
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】521382964
【氏名又は名称】呂 寶源
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】呂 寶源
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030AA16
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4K030EA01
4K030HA01
4K030KA45
5F045AA04
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5F045EE15
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(57)【要約】
【課題】有機金属化学蒸着(MOCVD)および原子層堆積(ALD)プロセス装置に適用される固体金属有機源の集中供給システムを提供する。
【解決手段】固体金属有機源の集中供給システムは、貯蔵タンクと、固体金属有機源と、加熱システムと、キャリアガス供給源と、コンプレッサーと、第1の輸送パイプラインと、第2の輸送パイプラインと、第3の輸送パイプラインと、第4の輸送パイプラインと、第5の輸送パイプラインと、複数のバルブ、および単一または複数の有機金属化学蒸着または原子層堆積プロセス装置を備える。本発明が上記プロセス装置に適用する場合、高圧ガスボンベで固体金属有機源を格納する欠点を避け、固体有機金属源の使用における不安定な蒸気圧の問題を根本的に解決することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵タンクと、固体金属有機源と、加熱システムと、キャリアガス供給源と、コンプレッサーと、第1の輸送パイプラインと、第2の輸送パイプラインと、第3の輸送パイプラインと、第4の輸送パイプラインと、第5の輸送パイプラインと、複数のバルブ、および単一または複数の有機金属化学蒸着または原子層堆積プロセス装置を備える固体金属有機源の集中供給システムであって、
前記貯蔵タンクは、有機化学気相蒸着プロセスのために予め混合された混合ガスを貯蔵するために使用され、且つ前記第1の輸送パイプライン及び前記第2の輸送パイプラインに接続され、前記第1の輸送パイプラインの端部は、複数の前記第3の輸送パイプラインに分岐し、複数の前記第3の輸送パイプラインは、複数の有機金属化学蒸着または原子層堆積プロセス装置を接続するために使用され、前記第2の輸送パイプラインは前記コンプレッサーに接続され、
前記加熱システムに前記固体金属有機源を設置し、加熱により前記固体金属有機源を気化させ、前記加熱システムは、前記第4の輸送パイプラインを介して前記コンプレッサーに接続され、
前記キャリアガス供給源は、前記第5の輸送パイプラインを介して前記加熱システムに接続され、且つ不活性ガスを前記加熱システム供給することができ、前記不活性ガスが前記固体金属有機源のキャリアとして機能し、前記混合ガスを形成し、
前記コンプレッサーは前記混合ガスを圧縮した後、前記第2の輸送パイプラインを介して前記貯蔵タンクに輸送して貯蔵し、
前記複数のバルブは、前記第1の輸送パイプライン、第2の輸送パイプライン、および第5の輸送パイプラインに配置され、対応するガスを開閉するために使用され、使用しない場合は、前記第1の輸送パイプライン、第2の輸送パイプライン、および第5の輸送パイプラインのうちの1つまたは複数のバルブを閉じ、後で使用するために前記混合ガスを前記貯蔵タンクに貯蔵することを特徴とする、固体金属有機源の集中供給システム。
【請求項2】
前記第1の輸送パイプラインの端部が分岐して形成された複数の前記第3の輸送パイプラインは、並列分岐であることを特徴とする、請求項1に記載の固体金属有機源の集中供給システム。
【請求項3】
前記貯蔵タンクの容積は、44L高圧ガスボンベまたは200~1000Lガスタンクであることを特徴とする、請求項1または2に記載の固体金属有機源の集中供給システム。
【請求項4】
前記貯蔵タンクは、前記貯蔵タンク内の圧力を測定し、前記混合ガスの総量を判断する圧力計を更に含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の固体金属有機源の集中供給システム。
【請求項5】
前記固体金属有機源の集中供給システムには、各前記バルブに接続された自動制御モジュールが含まれ、前記自動制御モジュールは、各前記バルブを自動的に開閉して、各ガスの流出を制御するように使用されることを特徴とする、請求項1または2に記載の固体金属有機源の集中供給システム。
【請求項6】
前記圧力計は、表示パネル制御ユニットを更に含み、前記表示パネル制御ユニットは、前記圧力計の値を表示するように使用され、前記加熱システム、前記キャリアガス供給源、前記コンプレッサー、および前記自動制御モジュールと連動してその動作を制御することを特徴とする、請求項5に記載の固体金属有機源の集中供給システム。
【請求項7】
前記固体金属有機源において、
前記有機金属化学蒸着プロセス装置で使用される前記固体金属有機化合物は、次のいずれかを含み:トリメチルインジウムTMIn、マグネシウムセロセンCp2Mg、四臭化炭素CBr4、
前記原子層堆積プロセス装置で使用される前記固体金属有機化合物は、次のいずれかを含み:ペンタ(テトラジメチルアミノ)タンタルPDMAT、ターシャリーブチルアセチレンジコバルトヘキサカルボニルCCTBA、テトラ(エチルメチルアンモニア)ハフニウム(ジルコニウム)TEMAHf(Zr)、
請求項1に記載の固体金属有機源の集中供給システム。
【請求項8】
前記固体金属有機源は希土類元素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の固体金属有機源の集中供給システム。
【請求項9】
前記固体金属有機源は、タングステン、モリブデン、ルテニウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、コバルト、ニッケル、スカンジウムのいずれかを含むことを特徴とする、請求項1に記載の固体金属有機源の集中供給システム。
【請求項10】
前記不活性ガスは、水素、窒素、及びアルゴンのいずれかを含むことを特徴とする、請求項1に記載の固体金属有機源の集中供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属化学蒸着(MOCVD)または原子層堆積(ALD)技術の供給システムに関わり、具体的には、有機金属気相成長技術に適用されるプロセス装置の固体金属有機源の集中供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、化合物半導体(LED、太陽エネルギー、光通信、パワーデバイス、高周波マイクロ波デバイスなど)産業は急速な発展を遂げており、エピタキシャルチップの需要は飛躍的に高まっている。
【0003】
超大規模集積回路の普及に伴い、28nm以下のプロセスが主流となり、そのプロセスには原子層堆積(ALD)技術が広く使用されている。また、原子層堆積装置は、主にタンタル、タングステン、コバルト、ジルコニウム、ハフニウム、および他の多くの遷移金属元素の有機源など、多数の固体金属有機源を使用する。
【0004】
装置およびプロセス条件により、固体金属有機源(略してMO源)は、輸送、保管、および使用中に凝集(固まる)、チャネリングなどの影響を受けやすくなる。蒸気圧が不安定でチップの歩留まりが低下するため、特別に設計されたパッケージ容器(316Lステンレス鋼ボンベ)を使用しても、固体MO源は液体MO源のように高い利用効率を得ることが困難である。
【0005】
MO源は、高純度の金属有機化合物、または化合物半導体微細構造材料で呼ばれ、高度な有機金属化学蒸着(略してMOCVD)、金属有機分子線エピタキシー(略してMOMBE)および原子層堆積(略してALD)などの技術における半導体微細構造材料を成長させるサポート材料である。その優れた電気的、光学的、磁気的特性は、半導体と集積回路をより高い周波数、より高速、より低いノイズ、より高い出力に押し上げることができる。
【0006】
したがって、MO源の集中供給は、半導体産業の発展にとって非常に重要である(半導体ICチップのCVDプロセスでは、テトラエトキシシリコンTEOS等、使用量の大きい有機金属源の集中供給を使用する例が挙げられる)。したがって、上記の問題に対するさらなる解決策を提案する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術の欠点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、主に以下の2点である:
【0008】
(1)使用量の大きいMO源について、トリメチルインジウムは代表として最も使用されている。その作業容器(ボンベ)の設計において、蒸気圧を安定させ、使用効率を向上させるために、さまざまなサプライヤーが多額の費用を払い、数多くの(数世代の製品)ボンベが設計されている。これらの設計は、基本的に、飽和蒸気圧に達するために、キャリアガスが固体MO源を通過する経路を長くするものである。例えば:マルチキャビティ(ボディ)ボンベと直列型ボンベの使用。また、使用中に固体MO源が固まり、チャネリングが形成されるのを防ぐため、ボンベなどに各種フィラーを添加している。これは間違いなく、ボトリング時にMO源の供給者に多くの問題をもたらし、ボトリング時間を長くし、製品の品質に潜在的なリスクを引き起こす(水と酸素の指標が基準を超える原因となる)。しかし、固体MO源の特性を根本的に変えることは依然として不可能であり、ボンベのコストはますます高くなっており、使用されたボンベは廃棄物として処分するしかなく、結果として莫大な資源の浪費と生産コストの上昇となる。
【0009】
(2)使用量が少ないMO源について、
A.マグネソセン(ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム)が代表として、ドーピング源としての使用量が少ない(ドーピング濃度10-1X)ため、長期にわたってパッケージングの研究に投資してきたサプライヤーはほとんどない。一本のマグネソセンのボンベは、MOCVDマシンで数年間使用できるため、エンジニアからは「万年ボンベ」と呼ばれている。現在、国内外のサプライヤーが50グラムのマグネソセンを含む200mLのボンベを作業ボンベとして提供している(欧米と他の国では100グラムが使用されている)。一定期間使用すると、必然的に固体の固まりとチャネリングが発生するので、蒸気圧が低下し、ドーピングの溶解度が不十分になる。
【0010】
当業者は、長い時間を経て発生する不具合を認識し、1年の使用後に不具合の有無にかかわらず交換を行う体制を確立したところで、ほとんどのマグネソセンが残留したままメーカーに返却されることになる。このような状況で、当業者は瓶詰めの体積を当初の50グラムから25~30グラムに減らすことを提案したが、その結果、瓶詰めの高さが半分になり、蒸気圧が不安定になるという問題が発生した。近年、MOCVD装置の大型化に伴い、各社とも2インチ128セル相当の4インチ32セル装置を導入した。各種の有機金属化合物源(MO源)の使用量が増加し、コストを節約するために、瓶詰めの量を減らすことで蒸気圧が下がり、不安定になった。
【0011】
B.ALD技術で使用される固体有機金属源のほとんどは高価で、使用量が少なく、種類も多く、基本的には1ボンベあたり200グラム以下でパッケージされ、さまざまなソースは異なる包装容器(スチールボンベ)が使用される。それにもかかわらず、ほぼすべての固体金属源は大量の余剰が残した状態でサプライヤーに返され、浪費になる。
【0012】
本発明は主に、使用過程における様々な理由による固体金属有機源の蒸気圧が不安定性の問題を解決することであり、固体金属有機源と不活性ガスを一定濃度の標準ガスに調合するという手段を採用する。このように、複数の装置を同時に使用して、集中供給を実現できる。
【0013】
混合ガスを準備するステップは、現場で実行でき、例えば、比較的大量に使用されるトリメチルインジウムTMInなどの固体金属有機源の場合、また、44Lボンベなど、メーカーで事前に準備された高圧混合ガスボンベでも、複数機の同時使用の目的を達成でき、お客様にとってより便利に利用できる。
【0014】
本発明の目的は、上述した技術的課題に限定されるものではなく、以下の説明により、当業者は、未記載または他の目的を明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の問題を完全に理解した後、本発明は、作業不活性ガス(通常は水素および窒素)で特定の濃度の標準ガスに調合し、MOCVDまたはALDデバイスでさまざまなタイプのエピタキシー(エピタキシャル)または薄膜成長に直接使用されることを提案して、固体MO源の集中供給と、固体MO源の使用におけるさまざまな問題を解決できる。
【0016】
過去には、混合ガスを準備するこの方法は、主に半導体へのイオン注入のための気体または液体ドーピングまたはMO源で使用されている。例えば:III-V族化合物半導体のN型ドーピングのためのSiH4(シラン)ガスと水素の混合ガス、液体DETeまたはDiPTe(ジエチルテルルまたはジイソプロピルテルリウム)と水素ガスの混合ガス200ppm(0.02%)、AsH3(ヒ素)と水素ガスの混合ガスなど。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明が採用する技術的解決策は次のとおりである:
【0018】
貯蔵タンクと、固体金属有機源と、加熱システムと、キャリアガス供給源と、コンプレッサーと、第1の輸送パイプラインと、第2の輸送パイプラインと、第3の輸送パイプラインと、第4の輸送パイプラインと、第5の輸送パイプラインと、複数のバルブ、および単一または複数の有機金属化学蒸着または原子層堆積プロセス装置を備える固体金属有機源の集中供給システムであって、前記貯蔵タンクは、有機化学気相蒸着プロセスのために予め混合された混合ガスを貯蔵するために使用され、且つ前記第1の輸送パイプライン及び前記第2の輸送パイプラインに接続され、前記第1の輸送パイプラインの端部は、複数の前記第3の輸送パイプラインに分岐し、複数の前記第3の輸送パイプラインは、複数の有機金属化学蒸着または原子層堆積プロセス装置を接続するために使用され、前記第2の輸送パイプラインは前記コンプレッサーに接続され、前記加熱システムに前記固体金属有機源を設置し、加熱により前記固体金属有機源を気化させ、前記加熱システムは、前記第4の輸送パイプラインを介して前記コンプレッサーに接続され、前記キャリアガス供給源は、前記第5の輸送パイプラインを介して前記加熱システムに接続され、且つ不活性ガスを前記加熱システム供給することができ、前記不活性ガスが前記固体金属有機源のキャリアとして機能し、前記混合ガスを形成し、前記コンプレッサーは前記混合ガスを圧縮した後、前記第2の輸送パイプラインを介して前記貯蔵タンクに輸送して貯蔵する。前記貯蔵タンクの容積は、44L高圧ガスボンベまたは200~1000Lガスタンクである。前記複数のバルブは、前記第1の輸送パイプライン、第2の輸送パイプライン、および第5の輸送パイプラインに配置され、対応するガスを開閉するために使用され、使用しない場合は、前記第1の輸送パイプライン、第2の輸送パイプライン、および第5の輸送パイプラインのうちの1つまたは複数のバルブを閉じ、後で使用するために前記混合ガスを前記貯蔵タンクに貯蔵する。
【0019】
前記有機金属化学蒸着(MOCVD)プロセス装置で使用される前記固体金属有機化合物は、次のいずれかを含む:トリメチルインジウムTMIn、マグネシウムセロセンCp2Mg、四臭化炭素CBr4など。
【0020】
前記原子層堆積(ALD)プロセス装置で使用される前記固体金属有機化合物は、次のいずれかを含む:ペンタ(テトラジメチルアミノ)タンタルPDMAT、ターシャリーブチルアセチレンジコバルトヘキサカルボニルCCTBA、テトラ(エチルメチルアンモニア)ハフニウム(ジルコニウム)TEMAHf(Zr)、または他の固体金属有機源、例えば、タングステン、モリブデン、ルテニウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、コバルト、ニッケル、スカンジウムおよび希土類など。
【0021】
本発明は、液体金属有機源にも適用されることができる。
【0022】
前記不活性ガスは、水素、窒素、及びアルゴンのいずれかを含む。
【0023】
更に、前記第1の輸送パイプラインの端部が分岐して形成された複数の前記第3の輸送パイプラインは並列分岐である。
【0024】
更に、混合ガスの調合およびコンプレッサーの作動を起動または停止するように、前記貯蔵タンクは、前記貯蔵タンク内の圧力を測定し、前記混合ガスの総量を判断する圧力計を含む。
【0025】
更に、前記バルブは自動制御モジュールで接続され、前記自動制御モジュールを介して各前記バルブの開閉を自動的制御する。
【0026】
更に、前記圧力計は、表示パネル制御ユニットを更に含み、前記表示パネル制御ユニットは、前記圧力計の値を表示するように使用され、前記加熱システム、前記キャリアガス供給源、前記コンプレッサー、および前記自動制御モジュールと連動してその動作を制御する。
【発明の効果】
【0027】
上記の固体金属有機源の集中供給システムを使用することは以下の利点がある:
【0028】
(1)現在のMOCVD装置は大規模開発の方向に進んでおり、MO源の量も大幅に増加しており、必然的にMOCVD装置内のMO源(恒温装置を含む)の収納スペースの拡大が必要となり、装置の大型化が進む。このシステムを採用することで、装置がよりコンパクトになり、各種MO源や恒温装置を配置するための広い収納スペースを配慮する必要がなくなる。
【0029】
(2)蒸気圧の安定性を心配する必要がなく、従来の恒温装置の温度チェック(蒸気圧は温度の関数logP=A+B/Tであるため、Pは圧力、Tは温度、AとBは定数である)からMO源や特殊ガスの流量のみを考慮して使用するため、装置の投資や、エネルギーの消費を減らすことで、製造コストを削減することができる。
【0030】
(3)MO源供給業者にとっては、大量のボンベの製造コストが節約される。大型の機械が次々と導入されることを考えると、ユーザーが固体MO源(例えば、トリメチルインジウム、マグネソセン)を使用する場合、蒸気圧を安定させる目的を達成するために、4つのボンベ(2本を直列に接続してから並列に使用)を使う必要がある。一方、MO源サプライヤーの場合、調達のために、売上高の2.5~3倍のボンベが必要であり、固定資産としてのボンベのコストは非常に高額である。
【0031】
(4)複数機が一つの固体金属有機源の集中供給システムを共用することが可能にし、例えば、現在使用されているキャリアガス(水素、窒素)、高純度アンモニア、シラン、アルシン、ホスホラン等。
【0032】
(5)安全上のリスクが大幅に削減される。一般的に、MO源が使い果たされ、または蒸気圧が不安定な場合は、ボンベを交換する必要がある。現在、MOCVD装置で主に使用されているMO源は:トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、トリエチルガリウム、トリメチルアルミニウム、マグネソセンを含み、そして、各タイプのMO源は2~4本のボンベを使う。これらのMO源は4類の危険物に分類されるため、化学活性が高く、水にさらされると爆発し、空気にさらされると燃焼する。ボンベを交換する場合、操作ミスにより小規模な発煙、発火、さらには爆発が発生する場合がある。したがって、日本やアメリカのカリフォルニアなどの一部の国では、ワークショップ毎に配置できるMO源の総量に制限が定められている。MO源の集中供給方式(液体MO源の集中供給システムについては特許を取得しており、その他の参照および参照用の特許がある)を採用することで、MOCVD装置から多数のMO源を分離し、工場システムに均一に設置されたガスキャビネットに配置することができ、革新的な変化をもたらし、潜在的な安全上の問題を大幅に削減することができる。
【0033】
さらに、本発明は、液体金属有機源、例えば使用量が少ない四塩化炭素CCl4、ジエチルテルルDETeまたはジイソプロピルテルルDiPTe、トリメチルアンチモンTMSbまたはトリエチルアンチモンTESb、ジメチル亜鉛DMZnまたはジエチル亜鉛DEZnなどに適用することができる。
【0034】
本発明は、大量の固体金属有機源に対して、現場準備及び混合ガス集中供給方式を採用する。ALDプロセスにおけるドーピング源および少量の有機金属源については、標準混合ガス缶を工場で製造し、一般的に使用されている44Lの標準高圧ガス高圧ガスボンベに詰めて、お客様が使いやすいようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の固体金属有機源の集中供給システムの構造概略図である。
【
図2】本発明の固体金属有機源の集中供給システムの構造概略図である。
【
図3】本発明の固体金属有機源の集中供給システムにおいて、貯蔵タンク上に圧力計を設置する構造概略図である。
【
図4】本発明の固体金属有機源の集中供給システムにおいて、バルブに自動制御モジュールを設置し、且つ圧力計に表示パネル制御ユニットを設置する構造概略図である。
【
図5】本発明の固体金属有機源の集中供給システムにおいて、バルブに自動制御モジュールを設置し、且つ圧力計に表示パネル制御ユニットを設置する構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。本発明の利点と特徴、およびそれらを実現するための方法は、添付図面および以下に詳細に説明する実施形態によって明らかにすることができる。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態で実施することができ、本実施形態は、本発明を完全に開示し、当業者を本発明の範囲を十分に理解されることができ、且つ本発明の範囲は本発明の特許請求の範囲によって決定される。本明細書において、同一の参照符号は同一の構成要素を示す。
【0037】
本明細書で使用する用語(技術用語、科学用語を含む)は、明確な特別な定義のない限り、本発明の技術分野における一般知識を有する者が共通に理解できる意味で使用することができる。また、辞書に定義されている一般的に使用される用語は、明確な特別な定義がなく場合、異常、過度に解釈されることもない。
【0038】
図1および
図2に示すように、本発明は、貯蔵タンク1、固体金属有機源2、加熱システム3、キャリアガス供給源4、コンプレッサー5、第1の輸送パイプライン6、第2の輸送パイプライン7、第3の輸送パイプライン8、第4の輸送パイプライン9、第5の輸送パイプライン10、複数のバルブ11、および複数の金属有機化学蒸着プロセス装置12または原子層堆積プロセス装置13を含む固体金属有機源の集中供給システム100を提供する。
【0039】
図1および
図2は、3つの金属有機化学蒸着プロセス装置12または原子層堆積プロセス装置13を例示的に示しているが、金属有機化学蒸着プロセス装置12または原子層堆積プロセス装置13は、少なくとも1つ以上、例えば2つ、3つ、4つまたはそれ以上に配置できることを先に説明しておきたい。
【0040】
前記貯蔵タンク1は、有機化学気相蒸着プロセスのために予め混合された混合ガスを貯蔵するために使用され、且つ前記第1の輸送パイプライン6及び前記第2の輸送パイプライン7に接続され、前記第1の輸送パイプライン6の端部は、複数の前記第3の輸送パイプライン8に分岐し、複数の前記第3の輸送パイプライン8は、複数の金属有機化学蒸着プロセス装置12を接続するために使用され、前記第2の輸送パイプライン7は前記コンプレッサー5に接続され、前記加熱システム3に前記固体金属有機源2を設置し、加熱により前記固体金属有機源2を気化させ、前記加熱システム3は、前記第4の輸送パイプライン9を介して前記コンプレッサー5に接続され、前記キャリアガス供給源4は、前記第5の輸送パイプライン10を介して前記加熱システム3に接続され、且つ不活性ガスを前記加熱システム3供給することができ、前記不活性ガスが前記固体金属有機源2のキャリアとして機能し、前記混合ガスを形成し、前記コンプレッサー5は前記混合ガスを圧縮した後、前記第2の輸送パイプライン7を介して前記貯蔵タンク1に輸送して貯蔵する。前記貯蔵タンク1の容積は、44L高圧ガスボンベまたは200~1000Lガスタンクである。前記複数のバルブ11は、前記第1の輸送パイプライン6、第2の輸送パイプライン7、および第5の輸送パイプライン10に配置され、対応するガスを開閉するために使用され、後で使用するために前記混合ガスを前記貯蔵タンク1に貯蔵する。前記第3の輸送パイプラインは一つまたは複数の前記金属有機化学蒸着プロセス装置12または原子層堆積プロセス装置13に接続することができる。前記金属有機化学蒸着プロセス装置12または原子層堆積プロセス装置13は、装置の質量流量計(MFC)を工程要件に応じて必要な値に設定して工程を遂行することができる。
【0041】
前記第1の輸送パイプライン6の端部が分岐して形成された複数の前記第3の輸送パイプライン8は並列分岐である。並列分岐法は、混合ガスを対応するプロセスの1つまたは複数の金属有機化学蒸着プロセス装置12または原子層堆積プロセス装置13のに同時に供給することができ、混合ガスを集中的に供給する目的を達成し、前記固体金属有機源の集中供給システム100の柔軟な使用ができる。
【0042】
前記固体有機金属源2は、有機金属化学蒸着プロセスで一般的に使用される有機金属化合物をソースとして選択することができ、例えば、トリメチルインジウムTMIn、マグネシウムセレンCp2Mg、四臭化炭素CBr4など。原子層堆積(ALD)プロセス装置で使用される一般的な固体金属有機化合物は、ペンタ(テトラジメチルアミノ)タンタルPDMAT、ターシャリーブチルアセチレンジコバルトヘキサカルボニルCCTBA、テトラ(エチルメチルアンモニア)ハフニウム(ジルコニウム)TEMAHf(Zr)などから選択することができる。また、有機金属化学蒸着プロセスで使用される他の固体金属有機源を使用することができ、例えば、タングステン、モリブデン、ルテニウム、ストロンチウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、コバルト、ニッケル、スカンジウムおよび希土類など、これらに限定されない。
【0043】
固体金属有機源2のキャリアとして使用される不活性ガスは、有機金属化学蒸着または原子層堆積プロセスで一般的に使用される不活性ガスであり得る。例えば、水素、窒素、アルゴン、また、有機金属化学気相成長または原子層堆積プロセスで使用される他の不活性ガスを固体金属有機源のキャリアガスとして使用できるが、これに限定されない。
【0044】
図3に示すように、前記固体金属有機源の集中供給システム100の貯蔵タンク1の上部には、圧力計14がさらに含まれる。前記圧力計14は、貯蔵タンク1内の圧力を測定して混合ガスの総量を求めることができる。前記金属有機化学蒸着プロセス装置12または原子層堆積プロセス装置13が作動している場合、混合ガスの使用により貯蔵タンク1の圧力が低下すると、圧力計14の値を介して貯蔵タンク1内の圧力が設定圧力よりも低いかどうかを判断することができる。圧力が設定圧力よりも低い場合、前記第5の輸送パイプライン10と前記第2の輸送パイプライン7のバルブ11が開けられ、前記キャリアガス供給源4は前記第5の輸送パイプライン10を介して不活性ガスを加熱システム3に送られる。前記加熱システム3が前記固体金属有機源2を加熱して気化させ、キャリアガスとしての不活性ガスと混合して混合ガスを形成した後、混合ガスは、前記第4の輸送パイプライン9を介してコンプレッサー5に送られ、圧縮された後、前記第2の輸送パイプライン7を介して貯蔵タンク1に送られる。貯蔵タンク1内の圧力が設定圧力に達していることを圧力計14で確認し、前記設定圧力に達した時点で混合ガスの生成を停止し、かつ前記第2の輸送パイプライン7のバルブ11を閉じ、前記混合ガスを貯蔵タンク1に貯蔵される。
【0045】
図4および
図5に示すように、前記固体金属有機源の集中供給システム100のバルブ11は、各前記バルブ11を接続するための自動制御モジュール15をさらに含むことができる。前記自動制御モジュール15は、前記バルブを自動的に開閉するために使用される。
【0046】
また、前記圧力計14は、表示パネル制御ユニット16をさらに備え、前記表示パネル制御ユニット16は、前記圧力計14の値を表示するために使用され、且つ前記加熱システム3、前記キャリアガス供給源4、前記コンプレッサー5、および前記自動制御モジュール15に接続されている。作業員は、前記表示パネル制御ユニット16から前記貯蔵タンク1内の混合ガスの総量を直接視認することができる。前記貯蔵タンク1内の圧力が設定圧力より低い場合、作業員は前記表示パネル制御ユニット16を直接操作して、前記加熱システム3、前記キャリアガス供給源4、前記コンプレッサー5および自動制御モジュール15を作動することができ、前記混合ガスを前記貯蔵タンク1に充填する。設定圧力に達すると、前記表示パネル制御ユニット16は設定圧力に達したことを表示し、作業員は前記表示パネル制御ユニット16を制御して、前記加熱システム3、前記キャリアガス供給源4、前記コンプレッサー5および前記自動制御モジュール15の作動を停止することができるため、前記混合ガスを貯蔵タンク1に充填する操作ステップをより簡単にすることができる。
【0047】
あるいは、前記表示パネル制御ユニット16に自動制御プログラムをインストールして、前記貯蔵タンク1への前記混合ガスの充填作業を自動化することもできる。前記混合ガスを前記貯蔵タンク1に充填するプロセス全体は、作業員の制御を必要とせずに、前記自動制御プログラムによって制御される。作業員は、前記表示パネル制御ユニット16が表示する前記貯蔵タンク1内の混合ガスの圧力値を確認するだけで、前記混合ガスを前記貯蔵タンク1に充填する作業がより簡略化される。
【0048】
要約すると、本発明の固体金属有機源の集中供給システム100は、単純な全体構造、便利な製造、設置、または輸送という利点を有する。さらに、本発明の主要な特徴は、本発明が元の有機金属化学蒸着プロセス装置の使用習慣を変えることなく適用できることである。本発明によって設計されたシステムは、使用者の有機金属化学蒸着または原子層堆積プロセス装置および作業環境に何ら変更も必要としない。標準的な有機金属源混合ガスを供給できるため、従来の固体源使用時の蒸気圧不安定による製品の歩留まり低下や廃棄の心配がなくなる。長期間で有機金属源を交換する必要がないため、使用済みの有機金属源ボンベを交換することによる非生産時間を短縮し、生産効率を向上させ、生産コストを削減するという目的を達成できる。さらに、本発明の固体金属有機源の集中供給システム100は、1対多の方式で供給できるため、より広い範囲の応用を提供することができる。
【0049】
当業者は、特許請求の範囲によって定義される本発明の概念の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更を上記の実施形態に加えることができることを理解するであろう。例示的な実施形態は、限定の目的ではなく、例示の目的でのみ考慮されるべきである。したがって、本発明の範囲は、例示的な実施形態の詳細な説明ではなく、特許請求の範囲によって定義され、その範囲内のすべての相違点は、本発明の概念に含まれると解釈される。
【符号の説明】
【0050】
1:貯蔵タンク
2:固体金属有機源
3:加熱システム
4:キャリアガス供給源
5:コンプレッサー
6:第1の輸送パイプライン
7:第2の輸送パイプライン
8:第3の輸送パイプライン
9:第4の輸送パイプライン
10:第5の輸送パイプライン
11:バルブ
12:金属有機化学蒸着プロセス装置
13:原子層堆積プロセス装置
14:圧力計
15:自動制御モジュール
16:表示パネル制御ユニット
100:固体金属有機源の集中供給システム