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特開2022-45343ワーク姿勢制御装置とそれを備えたワーク供給システムとワーク姿勢制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045343
(43)【公開日】2022-03-18
(54)【発明の名称】ワーク姿勢制御装置とそれを備えたワーク供給システムとワーク姿勢制御方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/14 20060101AFI20220311BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20220311BHJP
   B65G 27/08 20060101ALI20220311BHJP
   B65G 27/32 20060101ALI20220311BHJP
【FI】
B65G47/14 101Z
B25J13/08 A
B65G27/08
B65G27/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021143152
(22)【出願日】2021-09-02
(31)【優先権主張番号】P 2020150878
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】392017705
【氏名又は名称】アラインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】田中 克弘
(72)【発明者】
【氏名】隅田 章
(72)【発明者】
【氏名】上田 文雄
【テーマコード(参考)】
3C707
3F037
3F080
【Fターム(参考)】
3C707AS04
3C707BS15
3C707KT01
3C707KT06
3C707KT11
3F037AA08
3F037BA01
3F037CB02
3F037CC02
3F080BA02
3F080BC07
3F080CB02
3F080CB16
3F080CE11
3F080CG04
3F080DA15
3F080EA09
3F080FB05
(57)【要約】
【課題】搬送路によって運搬されたワークが密集して、接触したり重なり合ったりする現象を解消することでロボットによるピッキングを高精度に短時間で実行するためのワーク姿勢制御装置とそれを備えたワーク供給システムとワーク姿勢制御方法を提供する。
【解決手段】ワーク姿勢制御装置1は、可撓性を備えた矩形プレート2と、この矩形プレート2の4隅の下面に固定配置され、上下振動を印加する第1のアクチュエータ3a-3dと、矩形プレート2上に設定される複数のエリアを撮像するカメラ11と、このカメラ11で撮像された画像を解析することで複数のエリアに存在するワークを認識し、ワークがエリア内で占める割合を演算し、この割合に基づいて第1のアクチュエータ3a-3dを制御する制御装置20を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された複数のワークを支持する可撓性を備えた矩形プレートと、この矩形プレートの4隅の下面に固定配置され、それぞれ独立して前記矩形プレートに上下振動を印加する第1のアクチュエータと、前記矩形プレート上に設定される複数のエリアを撮像するカメラと、このカメラで撮像された画像を解析することで複数の前記エリアに存在する前記ワークを認識し、前記ワークが所望に設定されるピッキング可能ワーク数よりも少ない場合に前記ワークが前記エリア内で占める面積の割合を演算し、この割合に基づいて前記4隅に配置された前記第1のアクチュエータを制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記第1のアクチュエータによって印加される上下振動によって振動する前記矩形プレート上面の振幅の中心を、振動しない前記第1のアクチュエータが配置された位置の前記矩形プレート上面よりも上側に位置するように上下振動を印加するように制御することを特徴とするワーク姿勢制御装置。
【請求項2】
前記エリアは、前記矩形プレートの4辺のそれぞれの辺部を含む4つの辺部エリアと、これらの4つの辺部エリアに含まれない中央エリアとに区分けされ、前記制御装置は、4つの前記辺部エリアのうち最も高い前記割合を得た前記辺部エリアにおける前記割合が所望に設定される第1のしきい値を超えるという第1条件を満足する場合には、最も高い前記割合を得た前記辺部エリアに含まれる前記辺部の両端に存在する前記第1のアクチュエータを起動して上下振動を印加する第1制御を実行し、前記第1条件を満足せず、前記辺部エリア全体で演算される前記割合が前記中央エリアの前記割合よりも高く所望に設定される第2のしきい値を超えるという第2条件を満足する場合には、対角に存在する一方の一対2隅の前記矩形プレート下面に配置される前記第1のアクチュエータを起動して第1の上下振動を印加した後に、対角に存在する他方の一対2隅の前記第1のアクチュエータを起動して第2の上下振動を印加する第2制御を実行することを特徴とする請求項1記載のワーク姿勢制御装置。
【請求項3】
前記矩形プレートの下部に移動可能に配置され、前記矩形プレートに打撃を印加する第2のアクチュエータを有し、前記制御装置は、前記第1条件及び前記第2条件を満足しない場合は、前記ワークが重なるか又は接触することで孤立していない状態にある密集ワークの面積を演算し、この演算された面積が所望に設定される第3のしきい値を下回るという第3条件を満足する場合には、前記第2のアクチュエータを前記密集ワークの位置まで移動させ打撃を印加する第3制御を実行し、前記面積が前記第3のしきい値以上であるという第4条件を満足する場合には、4つすべての前記第1のアクチュエータを起動して上下振動を印加する第4制御を実行することを特徴とする請求項2記載のワーク姿勢制御装置。
【請求項4】
前記エリアは、前記矩形プレートの4辺のそれぞれの辺部を含む4つの辺部エリアと、これらの4つの辺部エリアに含まれない中央エリアとに区分けされ、前記矩形プレートの下部に移動可能に配置され、前記矩形プレートに打撃を印加する第2のアクチュエータを有し、前記制御装置は、4つの前記辺部エリア又は前記中央エリアにおける前記割合が所望に設定される第4のしきい値を超えるという第5条件を満足する場合には、前記第4のしきい値を超えた前記割合を得た前記辺部エリア又は前記中央エリアの下方に前記第2のアクチュエータを移動させ打撃を印加する第5制御を実行することを特徴とする請求項1記載のワーク姿勢制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のワーク姿勢制御装置の上流に前記ワークを前記矩形プレートの上面に搬送するために設けられる搬送装置と、前記矩形プレート上の前記ワークをピッキングするロボットと、前記ロボットがピッキングした前記ワークを受け取る受取装置と、を有することを特徴とするワーク供給システム。
【請求項6】
供給された複数のワークを支持する可撓性を備えた矩形プレートと、この矩形プレートの4隅の下面に固定配置され、それぞれ独立して前記矩形プレートに上下振動を印加する第1のアクチュエータと、前記矩形プレート上に設定される複数のエリアを撮像するカメラと、を用いて前記ワークの姿勢を制御する方法であって、
前記カメラで撮像された画像を解析することで複数の前記エリアに存在する前記ワークを認識し、前記ワークが所望に設定されるピッキング可能ワーク数よりも少ない場合に前記ワークが前記エリア内で占める面積の割合を演算する工程と、この割合に基づいて前記4隅に配置された前記第1のアクチュエータを起動して上下振動を印加する工程と、を有し、前記第1のアクチュエータを起動して上下振動を印加する工程は、前記第1のアクチュエータによって印加される上下振動によって振動する前記矩形プレート上面の振幅の中心を、振動しない前記第1のアクチュエータが配置された位置の前記矩形プレート上面よりも上側に位置するように上下振動を印加する工程であることを特徴とするワーク姿勢制御方法。
【請求項7】
前記エリアは、前記矩形プレートの4辺のそれぞれの辺部を含む4つの辺部エリアと、これらの4つの辺部エリアに含まれない中央エリアとに区分けされ、4つの前記辺部エリアのうち最も高い前記割合を得た前記辺部エリアにおける前記割合が所望に設定される第1のしきい値を超えるという第1条件を満足する場合には、最も高い前記割合を得た前記辺部エリアに含まれる前記辺部の両端に存在する前記第1のアクチュエータを起動して上下振動を印加する第1制御を実行する工程と、前記第1条件を満足せず、前記辺部エリア全体で演算される前記割合が前記中央エリアの前記割合よりも高く所望に設定される第2のしきい値を超えるという第2条件を満足する場合には、対角に存在する一方の一対2隅の前記矩形プレート下面に配置される前記第1のアクチュエータを起動して第1の上下振動を印加した後に、対角に存在する他方の一対2隅の前記第1のアクチュエータを起動して第2の上下振動を印加する第2制御を実行する工程と、を有することを特徴とする請求項6記載のワーク姿勢制御方法。
【請求項8】
前記矩形プレートの下部に移動可能に配置され、前記矩形プレートに打撃を印加する第2のアクチュエータを加えて前記ワークの姿勢を制御する方法であって、前記第1条件及び前記第2条件を満足しない場合は、前記ワークが重なるか又は接触することで孤立していない状態にある密集ワークの面積を演算し、この演算された面積が所望に設定される第3のしきい値を下回るという第3条件を満足する場合には、前記第2のアクチュエータを前記密集ワークの位置まで移動させ打撃を印加する第3制御を実行する工程と、前記面積が前記第3のしきい値以上であるという第4条件を満足する場合には、4つすべての前記第1のアクチュエータを起動して上下振動を印加する第4制御を実行する工程と、を有することを特徴とする請求項7記載のワーク姿勢制御方法。
【請求項9】
前記矩形プレートの下部に移動可能に配置され、前記矩形プレートに打撃を印加する第2のアクチュエータを加えて前記ワークの姿勢を制御する方法であって、前記エリアは、前記矩形プレートの4辺のそれぞれの辺部を含む4つの辺部エリアと、これらの4つの辺部エリアに含まれない中央エリアとに区分けされ、4つの前記辺部エリア又は前記中央エリアにおける前記割合が所望に設定される第4のしきい値を超えるという第5条件を満足する場合には、前記第4のしきい値を超えた前記割合を得た前記辺部エリア又は前記中央エリアの下方に前記第2のアクチュエータを移動させ打撃を印加する第5制御を実行する工程を有することを特徴とする請求項6記載のワーク姿勢制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送路によって運搬されたワーク(部品)が密集したり、表裏の反転や重なり合う現象を解消してロボットによるピッキングを高精度に短時間で効率的に実行するために用いられるワーク姿勢制御装置とそれを備えたワーク供給システムとワーク姿勢制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレクトロニクス分野における半導体チップの生産ラインや各種産業における生産ラインにおいて、ワークを供給するためのワーク供給装置が設置され、カメラを用いてワークの状態を画像処理し、その結果を用いてワークの表裏反転や重なりを無くしたり向きを調整する制御を行うことが一般的となっている。それによって、ワークの確実なピッキング(取り出し)を可能とし、さらにはピッキングに要する時間を短縮することが可能となり、ピッキングの精度や効率を高めてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、「部品ピックアップ方法及び部品供給装置」という名称で、可動トレイ上に置かれた複数の部品を撮影し、その画像を用いて部品の一つをロボットハンドでピックアップする部品供給装置が開示されている。また、この発明では部品の重なりが発見されるとアクチュエータを駆動させて可動トレイを傾斜させることで重なりを解消することが可能である。
【0004】
また、特許文献2には、「物品ピックアップ装置」という名称で、ボルト群をトレイの載置面上に供給し、視覚センサを用いて孤立ボルトを探索し、孤立ボルトがなくボルトに重なりが発見された場合には、加振装置を動作させて重なり状態をほぐしてボルトの孤立状態をつくってピッキングする技術が開示されている。ほぐすための装置は加振装置のみならず、気体噴流やボルトの山を崩す用具を支持したロボットを使用してもよい。この発明では、孤立ボルトが存在しない場合にボルトの重なりをほぐすための装置を用いて孤立ボルトの状態にしてボルトを容易にピッキングすることが可能である。
【0005】
特許文献3には、「衝撃式パーツフィーダ」という名称で、支持部で支持される膜上に供給されるパーツをマシンビジョンシステムによって検出、画像解析し、姿勢の並べ替えを行いたい箇所へ衝撃生成器を移動させるかあるいは予め分布させておいて、膜を下方から打撃することで衝撃を膜に加えてパーツの姿勢を変化させる技術が開示されている。
【0006】
特許文献4には、「構成部品を供給するためのシステム」という名称で、プレート上で構成部品を把持するハンドリングアームを備えるロボットにおいて、プレート上の構成部品に対してハンドリングアームによる把持に備えて正しく配向させるように振動アクチュエータを用いて3次元(3自由度)で振動を加える発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-8343号公報
【特許文献2】特開平11-300670号公報
【特許文献3】特開平11-180538号公報
【特許文献4】特許第5746637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示される技術は、アクチュエータによって傾斜させるのみであることから、部品によっては表裏の反転や重なりを解消させることが難しい場合が生じる可能性があるという課題があった。また、傾斜させたり傾斜を戻したりする動作に時間がかかり迅速で効率的なワーク姿勢の矯正が困難であるという課題があった。
また、特許文献2に開示される技術では、加振装置がトレイ全体を加振するため、すべてのワークに振動が伝わり孤立していたワークが接触したり、さらにはワーク同士がこすれ等によってワーク表面が傷つきやすいという課題があった。
特許文献3に開示される技術では、マシンビジョンシステムでパーツを認識して膜の下面に打撃を加えるものの、打撃を加えるだけではパーツが拡がるように作用して中央に寄せることができず、ロボットによるピッキングの効率が悪くなってしまうという課題があった。
さらに、特許文献4に開示される技術では、3次元的に振動を加えることによって構成部品に対して様々な動きを与えることができるものの、構成部品に対して連続振動を与えるため、構成部品同士の接触やこすれ等が生じて微細構造を備えた部品や傷つきやすい部品は扱えないという課題があった。また、3次元で振動を与えるため複雑となり部品に合った最適な振動を見つけるのが難しく、部品毎に振動の与え方についての検討に時間がかかり多種類の部品を扱うのが困難であるという課題があった。
【0009】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、搬送路によって運搬されたワーク(部品)が密集して、接触したり、表裏の反転や重なり合ったりする現象を解消することでロボットによるピッキングを高精度に短時間で実行するために、ワークが搬送される可撓性を備えた矩形プレートの4隅の下面にアクチュエータを固定配置し、矩形プレート上に分布するワークを把握しながら、それぞれ独立して矩形プレートに上下振動を印加するように制御するとともに矩形プレート面の下方に移動可能に配置されたアクチュエータで矩形プレートに打撃による振動を印加するように制御するワーク姿勢制御装置と、それを備えたワーク供給システムとワーク姿勢制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、第1の発明であるワーク姿勢制御装置は、供給された複数のワークを支持する可撓性を備えた矩形プレートと、この矩形プレートの4隅の下面に固定配置され、それぞれ独立して前記矩形プレートに上下振動を印加する第1のアクチュエータと、前記矩形プレート上に設定される複数のエリアを撮像するカメラと、このカメラで撮像された画像を解析することで複数の前記エリアに存在する前記ワークを認識し、前記ワークが所望に設定されるピッキング可能ワーク数よりも少ない場合に前記ワークが前記エリア内で占める面積の割合を演算し、この割合に基づいて前記4隅に配置された前記第1のアクチュエータを制御する制御装置と、を有し、前記制御装置は、前記第1のアクチュエータによって印加される上下振動によって振動する前記矩形プレート上面の振幅の中心を、振動しない前記第1のアクチュエータが配置された位置の前記矩形プレート上面よりも上側に位置するように上下振動を印加するように制御することを特徴とするものである。
上記構成のワーク姿勢制御装置では、制御装置が、カメラによって撮像された画像を解析して各エリアに存在するワークを認識し、エリア内でワークが占める面積の割合を演算して、その割合に基づいて第1のアクチュエータが可撓性を備えた矩形プレートに下面から上下振動を印加するように作用する。そして、この制御装置は可撓性を有する矩形プレートと相俟って、第1のアクチュエータの上下振動によって振動する矩形プレート上面の振幅の中心を、振動しない前記第1のアクチュエータが配置された位置の矩形プレート上面よりも上側に位置するように制御し、上下振動の印加のみで上下振動中の平均として傾斜が形成されるように作用する。すなわち、可撓性の矩形プレートを採用することで、矩形プレートを撓ませて傾斜を形成させワークを移動させるという作用、また、第1のアクチュエータによる上下振動が矩形プレート上を容易に伝播するという作用を有する。この制御装置による第1のアクチュエータの上下振動の印加の矩形プレート上面の位置の制御は、第2-第5の発明において共通である。
なお、本願におけるワークに対する「認識」とは、カメラによるワークの撮像データを解析して、ワークの矩形プレート上での位置、姿勢(向き及び表裏あるいはワークの形状によっては側面が上を向いている状態の判別)、数量、面積(総面積)に関するデータを取得することを意味する。
【0011】
また、第2の発明であるワーク姿勢制御装置は、第1の発明において、前記エリアは、前記矩形プレートの4辺のそれぞれの辺部を含む4つの辺部エリアと、これらの4つの辺部エリアに含まれない中央エリアとに区分けされ、前記制御装置は、4つの前記辺部エリアのうち最も高い前記割合を得た前記辺部エリアにおける前記割合が所望に設定される第1のしきい値を超えるという第1条件を満足する場合には、最も高い前記割合を得た前記辺部エリアに含まれる前記辺部の両端に存在する前記第1のアクチュエータを起動して上下振動を印加する第1制御を実行し、前記第1条件を満足せず、前記辺部エリア全体で演算される前記割合が前記中央エリアの前記割合よりも高く所望に設定される第2のしきい値を超えるという第2条件を満足する場合には、対角に存在する一方の一対2隅の前記矩形プレート下面に配置される前記第1のアクチュエータを起動して第1の上下振動を印加した後に、対角に存在する他方の一対2隅の前記第1のアクチュエータを起動して第2の上下振動を印加する第2制御を実行することを特徴とするものである。
上記構成のワーク姿勢制御装置では、第1の発明の作用に加えて、矩形プレートを辺部エリアと中央エリアに区分けして、辺部エリアと中央エリアにおけるエリア内で占める面積の割合(ワーク密度)に応じてピッキングロボットが効率的かつ高精度にピッキング可能となるように中央エリアに近いエリアにワークを移動させるように作用する。
また、制御装置は、第1条件と第2条件を設け、第1条件ではいずれかの辺部エリアに密集していると考えられるワークを中央エリアに移動させ、第2条件では辺部エリア全体に分散していると考えられるワークを二対の2隅に存在する第1のアクチュエータを交互に起動させることで中央エリアに移動させるように作用する。
【0012】
そして、第3の発明であるワーク姿勢制御装置は、第2の発明において、前記矩形プレートの下部に移動可能に配置され、前記矩形プレートに打撃を印加する第2のアクチュエータを有し、前記制御装置は、前記第1条件及び前記第2条件を満足しない場合は、前記ワークが重なるか又は接触することで孤立していない状態にある密集ワークの面積を演算し、この演算された面積が所望に設定される第3のしきい値を下回るという第3条件を満足する場合には、前記第2のアクチュエータを前記密集ワークの位置まで移動させ打撃を印加する第3制御を実行し、前記面積が前記第3のしきい値以上であるという第4条件を満足する場合には、4つすべての前記第1のアクチュエータを起動して上下振動を印加する第4制御を実行することを特徴とするものである。
上記構成のワーク姿勢制御装置では、第2の発明の作用に加えて、第1の条件及び第2の条件を満足しない場合には密集するワークが点在していると判断して、制御装置は密集ワークの面積を演算し、その密集ワークの面積が第3のしきい値よりも小さい場合には第2のアクチュエータをその密集ワークの位置まで移動させて打撃を印加してワークを分散又は反転させるように作用し、密集ワークの面積が第3のしきい値よりも大きい場合には第1のアクチュエータ全体を起動して上下振動を印加してワークを分散又は反転させるように作用する。また、この第2のアクチュエータの打撃による振動も、可撓性を有する矩形プレートを採用することで矩形プレート上を容易に伝播するように作用する。
【0013】
第4の発明であるワーク姿勢制御装置は、第1の発明において、前記エリアは、前記矩形プレートの4辺のそれぞれの辺部を含む4つの辺部エリアと、これらの4つの辺部エリアに含まれない中央エリアとに区分けされ、前記矩形プレートの下部に移動可能に配置され、前記矩形プレートに打撃を印加する第2のアクチュエータを有し、前記制御装置は、4つの前記辺部エリア又は前記中央エリアにおける前記割合が所望に設定される第4のしきい値を超えるという第5条件を満足する場合には、前記第4のしきい値を超えた前記割合を得た前記辺部エリア又は前記中央エリアの下方に前記第2のアクチュエータを移動させ打撃を印加する第5制御を実行することを特徴とするものである。
上記構成のワーク姿勢制御装置では、第1の発明の作用に加えて、辺部エリアのいずれかあるいは中央エリアにおけるワーク密度が第4のしきい値を超える場合に第2のアクチュエータがそのエリアの下方に移動して打撃を印加し、ワークを分散又は反転させるように作用する。
【0014】
第5の発明であるワーク供給システムは、第1乃至第4のワーク姿勢制御装置のいずれか1つのワーク姿勢制御装置の上流に前記ワークを前記矩形プレートの上面に搬送するために設けられる搬送装置と、前記矩形プレート上の前記ワークをピッキングするロボットと、前記ロボットがピッキングした前記ワークを受け取る受取装置と、を有することを特徴とするものである。
上記構成のワーク供給システムにおいては、第1乃至第4のワーク姿勢制御装置を備えてそれぞれの作用を発揮し、さらに、搬送装置がワークをワーク姿勢制御装置に供給し、ロボットがワーク姿勢制御装置の矩形プレート上で効率的に高精度にワークをピッキングし、受取装置はピッキングされたワークを受け取るように作用する。
なお、本願における「ピッキング」とは、ロボットのハンド(エンドエフェクタ)等によるワークの把持、吸着の動作と受取装置までの移動の動作を意味する。
【0015】
第6の発明であるワーク姿勢制御方法は、供給された複数のワークを支持する可撓性を備えた矩形プレートと、この矩形プレートの4隅の下面に固定配置され、それぞれ独立して前記矩形プレートに上下振動を印加する第1のアクチュエータと、前記矩形プレート上に設定される複数のエリアを撮像するカメラと、を用いて前記ワークの姿勢を制御する方法であって、前記カメラで撮像された画像を解析することで複数の前記エリアに存在する前記ワークを認識し、前記ワークが所望に設定されるピッキング可能ワーク数よりも少ない場合に前記ワークが前記エリア内で占める面積の割合を演算する工程と、この割合に基づいて前記4隅に配置された前記第1のアクチュエータを起動して上下振動を印加する工程と、を有し、前記第1のアクチュエータを起動して上下振動を印加する工程は、前記第1のアクチュエータによって印加される上下振動によって振動する前記矩形プレート上面の振幅の中心を、振動しない前記第1のアクチュエータが配置された位置の前記矩形プレート上面よりも上側に位置するように上下振動を印加する工程であることを特徴とするものである。
上記構成のワーク姿勢制御方法は、第1の発明を方法発明として捉えたものであるので、その作用は第1の発明の作用と同様である。なお、第1のアクチュエータを起動して上下振動の印加による矩形プレート上面の位置の制御は、第7-第9の発明において共通である。
【0016】
第7の発明であるワーク姿勢制御方法は、第6の発明において、前記エリアは、前記矩形プレートの4辺のそれぞれの辺部を含む4つの辺部エリアと、これらの4つの辺部エリアに含まれない中央エリアとに区分けされ、4つの前記辺部エリアのうち最も高い前記割合を得た前記辺部エリアにおける前記割合が所望に設定される第1のしきい値を超えるという第1条件を満足する場合には、最も高い前記割合を得た前記辺部エリアに含まれる前記辺部の両端に存在する前記第1のアクチュエータを起動して上下振動を印加する第1制御を実行する工程と、前記第1条件を満足せず、前記辺部エリア全体で演算される前記割合が前記中央エリアの前記割合よりも高く所望に設定される第2のしきい値を超えるという第2条件を満足する場合には、対角に存在する一方の一対2隅の前記矩形プレート下面に配置される前記第1のアクチュエータを起動して第1の上下振動を印加した後に、対角に存在する他方の一対2隅の前記第1のアクチュエータを起動して第2の上下振動を印加する第2制御を実行する工程と、を有することを特徴とするものである。
上記構成のワーク姿勢制御方法は、第2の発明を方法発明として捉えたものであるので、その作用は第2の発明の作用と同様である。
【0017】
第8の発明であるワーク姿勢制御方法は、第7の発明において、前記矩形プレートの下部に移動可能に配置され、前記矩形プレートに打撃を印加する第2のアクチュエータを加えて前記ワークの姿勢を制御する方法であって、前記第1条件及び前記第2条件を満足しない場合は、前記ワークが重なるか又は接触することで孤立していない状態にある密集ワークの面積を演算し、この演算された面積が所望に設定される第3のしきい値を下回るという第3条件を満足する場合には、前記第2のアクチュエータを前記密集ワークの位置まで移動させ打撃を印加する第3制御を実行する工程と、前記面積が前記第3のしきい値以上であるという第4条件を満足する場合には、4つすべての前記第1のアクチュエータを起動して上下振動を印加する第4制御を実行する工程と、を有することを特徴とするものである。
上記構成のワーク姿勢制御方法は、第3の発明を方法発明として捉えたものであるので、その作用は第3の発明の作用と同様である。
【0018】
第9の発明であるワーク姿勢制御方法は、第6の発明において、前記矩形プレートの下部に移動可能に配置され、前記矩形プレートに打撃を印加する第2のアクチュエータを加えて前記ワークの姿勢を制御する方法であって、前記エリアは、前記矩形プレートの4辺のそれぞれの辺部を含む4つの辺部エリアと、これらの4つの辺部エリアに含まれない中央エリアとに区分けされ、4つの前記辺部エリア又は前記中央エリアにおける前記割合が所望に設定される第4のしきい値を超えるという第5条件を満足する場合には、前記第4のしきい値を超えた前記割合を得た前記辺部エリア又は前記中央エリアの下方に前記第2のアクチュエータを移動させ打撃を印加する第5制御を実行する工程を有することを特徴とするものである。
上記構成のワーク姿勢制御方法は、第4の発明を方法発明として捉えたものであるので、その作用は第4の発明の作用と同様である。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明に係るワーク姿勢制御装置では、第1のアクチュエータの上下振動による矩形プレートの振動側の上面の振動の振幅の中心が、振動していない第1のアクチュエータが配置される位置の矩形プレート上面よりも上側に存在することで、振動している第1のアクチュエータ側の矩形プレートから振動していない第1のアクチュエータ側の矩形プレートに上下振動中の平均として傾斜を形成させることができる。したがって、振動以外の要素を用いて傾斜を構成する必要がないため、第1のアクチュエータの構造の簡素化を図りながら、エリア内でワークが占める面積の割合に基づく第1のアクチュエータの上下振動のみによって、振動している第1のアクチュエータ側から振動していない第1のアクチュエータ側に移動させることができる。さらに、その移動と同時にワークを効果的に分散又は反転させることができる。
【0020】
第2の発明に係るワーク姿勢制御装置では、第1の発明の効果に加えて、中央エリア以外のいずれかの辺部エリアでのワークの密集、あるいは辺部エリア全体への分散又は反転が考えられる場合に、ピッキングが効率的かつ高精度に可能な中央エリアへ移動させることが可能である。
【0021】
第3の発明に係るワーク姿勢制御装置では、第2の発明の効果に加えて、密集ワークが点在している場合に、その密集ワークの面積の大小に応じて、第2のアクチュエータをその密集ワークの位置まで移動させて打撃を印加するか、あるいは第1のアクチュエータ全体を起動して上下振動を印加することで、点在する密集ワークを分散又は反転させることができる。
【0022】
第4の発明に係るワーク姿勢制御装置では、第1の発明の効果に加えて、各辺部エリア又は中央エリア毎に密集ワークを分散又は反転させることが可能である。
【0023】
第5の発明に係るワーク供給システムでは、密集するワークを効率的かつ高精度に分散又は反転させることができるワーク姿勢制御装置を採用することから、このワーク姿勢制御装置にワークを搬出し、ロボットによってワークをピッキングし、受取システムによってワークを受け取る一連の作業の効率と精度を向上させることが可能となる。
【0024】
第6の発明に係るワーク姿勢制御方法は、第1の発明と同様の効果を発揮することが可能である。
【0025】
第7の発明に係るワーク姿勢制御方法は、第2の発明と同様の効果を発揮することが可能である。
【0026】
第8の発明に係るワーク姿勢制御方法は、第3の発明と同様の効果を発揮することが可能である。
【0027】
第9の発明に係るワーク姿勢制御方法は、第4の発明と同様の効果を発揮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るワーク姿勢制御装置の概念図である。
図2】本発明の第2の実施の形態に係るワーク供給システムの概念図である。
図3】第1の実施の形態に係るワーク姿勢制御装置と第2の実施の形態に係るワーク供給システムのシステム構成図である。
図4】第1の実施の形態に係るワーク姿勢制御装置の動作フロー図であり、第3の実施の形態に係るワーク姿勢制御方法の概念図でもある。
図5】第1の実施の形態に係るワーク姿勢制御装置の矩形プレート上に設定されるエリアの区分概念図である。
図6】第1の実施の形態に係るワーク姿勢制御装置の矩形プレート上に設定されるエリアの区分概念図である。
図7】(a)-(c)は時間の経過に沿っており、それぞれ上流側に密集したワークが第1の実施の形態に係るワーク姿勢制御装置の振動アクチュエータ及び打撃アクチュエータによって分散される状態を説明するための概念図である。
図8】(a)は密集したワークがワーク姿勢制御装置の打撃アクチュエータの打撃によって分散される状態を説明するための概念図であり、(b)は密集したワークが振動アクチュエータによる上下振動の印加によって移動しながら分散される状態を説明するための概念図であり、(c)はある程度大きな密集ワークが振動アクチュエータ全体による上下振動の印加によって分散される状態を説明するための概念図である。
図9】第1の実施の形態に係るワーク姿勢制御装置の振動アクチュエータによって印加される上下振動によるその振動アクチュエータが配置されている側の矩形プレート上面の高さの変化と上下振動することなく矩形プレートに固定されている振動アクチュエータが配置されている側の矩形プレート上面の高さの関係を示す概念図である。
図10】(a)-(c)は時間の経過に沿っており、それぞれ右側に密集したワークが第1の実施の形態に係るワーク姿勢制御装置の振動アクチュエータ及び打撃アクチュエータによって分散される状態を説明するための概念図である。なお、本願ではワークが供給される上流側から見て左右としているため、図面の正面視の際の左右とは逆となる。
図11】(a)-(d)は時間の経過に沿っており、それぞれ辺部に分散したワークが第1の実施の形態に係るワーク姿勢制御装置の振動アクチュエータ及び打撃アクチュエータによって分散される状態を説明するための概念図である。
図12】(a)-(c)は時間の経過に沿っており、それぞれ点在する密集ワークが第1の実施の形態に係るワーク姿勢制御装置の打撃アクチュエータによって分散される状態を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明の第1の実施の形態に係るワーク姿勢制御装置、第2の実施の形態に係るワーク供給システム及び第3の実施の形態に係るワーク姿勢制御方法について図1図12を参照しながら説明する。
本願発明の実施の形態では、画像解析部、ワーク姿勢制御部あるいはピッキングロボット制御部等、「部」という語を含んだ構成要素を採用しているが、この「部」とは、手段あるいは機能を意味し、具体的な構成要素としては、特定の動作を実行するための「素子」や「電子回路」、あるいは「構成物のユニット」又は「それらが集合した装置」であり、これらを概念化して「部」として示すものである。
図1は第1の実施の形態に係るワーク姿勢制御装置の概念図であり、図2は第2の実施の形態に係るワーク供給システムの概念図である。
図1において、ワーク姿勢制御装置1は台座4の上に立設される4本の振動アクチュエータ3a-3d(第1のアクチュエータ)と、その振動アクチュエータ3a-3dに支持され、ワーク(図示せず)の供給を受ける可撓性を有する矩形プレート2と、この矩形プレート2の下方に4本の支持脚10によって支えられる支持材5上に配されるx軸リニアアクチュエータ6、y軸リニアアクチュエータ7a、駆動力を付加するアクチュエータを備えていないy軸リニアガイド7b、そしてz軸リニアアクチュエータ8、さらに、これらのリニアアクチュエータによって移動可能とする打撃アクチュエータ9(第2のアクチュエータ)を備えている。
振動アクチュエータ3a-3dは上下振動を矩形プレート2に対して下面から独立に印加することが可能であり、打撃アクチュエータ9も矩形プレート2下を移動し、矩形プレート2に対して下面から打撃を印加することが可能である。また、その振動や打撃における強さ(加速度)や振幅は所望に設定され、さらに、後述するワーク姿勢制御部22によって制御することも可能である。
そして、矩形プレート2の上方にはこの矩形プレート2全体をカバー可能としてワークを撮影し認識するためのカメラ11が設置されている。本実施の形態では、打撃アクチュエータ9はx軸リニアアクチュエータ6上のz軸リニアアクチュエータ8に設置され、そのx軸リニアアクチュエータ6がy軸リニアアクチュエータ7aとy軸リニアガイド7b上に設置されていることからx-y-z空間中を移動可能とするが、打撃アクチュエータ9がx-y-z空間中を移動可能であればこのような構造に限定するものではない。
なお、本実施の形態ではz軸リニアアクチュエータ8を採用して打撃アクチュエータ9自体の上下動を可能としているが、打撃アクチュエータ9の打撃のストロークが長く設定可能な場合にはz軸リニアアクチュエータ8は必ずしも必要ではないので省略可能である。
【0030】
また、図2において、図1に示されるワーク姿勢制御装置1を含んで構成されるワーク供給システム19は、ワーク姿勢制御装置1の上流側にワーク搬送装置12、下流側にワーク受取装置13を備え、ワーク搬送装置12によってワーク姿勢制御装置1に搬送されるワーク17を、ピッキングロボット14のハンド15の先端に備えられているエンドエフェクタ16によってピッキングし、ワーク受取装置13へ渡す。ワーク受取装置13とは、ワーク17をさらに搬送するための搬送装置である場合やワーク17を収容するための番重等の容器の場合もあり、特に限定するものではない。なお、ピッキングロボット14によるピッキングでは、ワーク17が表面(おもてめん)を上に向けているもののみをピッキングする場合と側面も含めて表裏構わずピッキングする場合がある。
【0031】
次に、図3はワーク姿勢制御装置及びワーク供給システムのシステム構成図である。図3において、既に図1を参照しながら説明したワーク姿勢制御装置1を挟んでワーク搬送装置12とワーク受取装置13が構成され、矢印でワーク流れ18の方向を示している。また、本実施の形態では、ワーク搬送装置12としてワーク搬送コンベア24が採用され、ワーク受取装置13としてワーク受取部25が採用されている。
また、ワーク姿勢制御装置1の作動を制御すべくワーク姿勢制御装置1は解析・制御装置20を備えており、カメラ11,振動アクチュエータ3a-3d,x軸リニアアクチュエータ6,y軸リニアアクチュエータ7a,z軸リニアアクチュエータ8,打撃アクチュエータ9及びピッキングロボット14は解析・制御装置20に接続されている。
解析・制御装置20は、カメラ11で撮影された画像をカメラ11から受信し、この画像を解析する画像解析部21、画像解析部21による画像の解析結果に基づいてワーク姿勢制御装置1の振動アクチュエータ3a-3d,打撃アクチュエータ9,x軸リニアアクチュエータ6,y軸リニアアクチュエータ7a及びz軸リニアアクチュエータ8に対して指令信号を発信するワーク姿勢制御部22、そして、画像解析部21による画像の解析結果に基づいてピッキングロボット14に対して指令信号を発信するピッキングロボット制御部23を備えている。
【0032】
次に、図4を参照しながら、ワーク姿勢制御装置1を用いてワーク17に対して実行される一連の姿勢制御について説明する。図4は、第1の実施の形態に係るワーク姿勢制御装置1を用いたワーク17に対する一連の姿勢制御を説明する動作フロー図であると同時に、第3の実施の形態に係るワーク姿勢制御方法を説明するための図でもある。したがって、この図を参照しながらワーク姿勢制御装置1におけるワーク17の姿勢制御の流れを説明することはワーク姿勢制御方法の実施の形態について説明することと同義である。なお、図4に記載されている符号は、図1-3で付した構成要素の符号と同一であり、その符号の構成要素によって実行されることを意味している。
図4において、カメラ撮影の工程で、カメラ11は矩形プレート2上に搬送されたワークを認識可能に撮影し、撮影された画像は、カメラ11に内蔵される撮像データバッファメモリに一時的に保存される。
次に、ワークラベリングの工程では、解析・制御装置20の画像解析部21が、カメラ11の撮像データバッファメモリ(図示せず)に保存されたワーク17の撮影画像を解析し、ワーク17によって形成された塊(ワーク1個の場合を含む)を画像の中から探し出し、塊の面積の測定と面積の大きな順に番号付けを行う。ワーク17の形状や表裏あるいは場合によっては側面それぞれの色は予め画像解析部21のメモリに入力保存されていることから、形状又は色からワーク17の塊を探索するワークラベリングの工程の実行が可能である。
具体的には表1に示すようなデータが取得される。
【0033】
【表1】
【0034】
表1は、矩形プレート2上面に20個のワーク17が存在している例を示している。面積が大きい順にラベリングされているので、No.1が最も面積が大きく4と測定されている。本実施の形態ではワークの面積で規格化している。No.2が2.7と整数でないのはワーク17が重なっているためである。No.1とNo.3はそれぞれ4個と2個のワーク17が接触していることを示している。なお、ワークラベリングの工程による解析では、その後の工程でワーク数の不足のみが判断されることからワークの表裏等は無視して面積を測定してよい。
次に、ワーク総面積が設定値以上であるか否かの判断を行う工程では、画像解析部21がワークラベリング工程で得られたワークの塊毎の面積の和を演算し、予め設定されて画像解析部21のメモリに保存されているワーク総面積の設定値との比較を行う。比較によって、ワーク総面積が設定値よりも小さい場合には、画像解析部21は矩形プレート2上にワーク数が不足していると判断し、ワーク搬送装置12に対して撮影エリア、すなわちワーク姿勢制御装置1の矩形プレート2上にワークを供給するように指令信号を発信し、その後、最初のカメラ撮影の工程に戻る。
一方、ワーク総面積が設定値以上の場合には、画像解析部21はワークパターンマッチングを行う工程へと進む。
画像解析部21によるワークパターンマッチングの工程では、解析・制御装置20の画像解析部21が、カメラ11の撮像データバッファメモリ(図示せず)に保存されたワーク17の撮影画像を解析し、ワークラベリング工程で得られたワークの塊毎の面積が1ワークのもの、すなわち、予め保存されているワーク17の形状と一致する形状のみを抽出する。また、その際の解析では、画像解析部21は、ピッキングロボット14が表面のワーク17のみピッキングする場合には表裏あるいは側面も認識される。
その後、抽出したワーク17の数をピッキングロボット14によってピッキング可能なワーク数として認識し、そのワーク数が予め設定されて画像解析部21のメモリに保存されている設定値よりも小さい場合には、画像解析部21はどこかでワークが密集していると判断し、予め矩形プレート2上面を区画して設定されるエリア毎にワーク密集率を演算する。
なお、表面のワーク17のみをピッキングする場合は、表面のワーク17のみをピッキング可能なワーク数として認識するので、ワーク数自体は設定値を超えても表面のワーク17数が少ないとワーク17が密集していると判断することになる。但し、ワーク密集率の計算は表面のワーク17のみをピッキングする場合でも表裏無関係に演算される。また、表面のワーク17のみをピッキングする場合には、画像解析部21はワーク密集率に加えてエリア毎にワーク裏返率を演算する。
【0035】
ここで、図5及び図6を参照しながら矩形プレート2上面に設定されるエリアについて説明を加える。図5及び図6はワーク姿勢制御装置1の矩形プレート2上に設定されるエリアの区分概念図である。
図5はエリアを3行3列にエリア2a-2iとして矩形状に9分割した例を示している。図中振動アクチュエータ3a-3dが固定設置されている箇所を破線で示している。また、正面視して上方がワーク供給システム19における上流側でワーク搬送装置12からワーク17の搬送を受ける側であり、図中の符号26aを上流側辺としている。同様に下方がワーク供給システム19における下流側でワーク受取装置13へワーク17を渡す側であり、図中の符号26cを下流側辺としている。さらに符号26bを上流側から見て左側辺とし、符号26dを上流側から見て右側辺としている。すなわち、上流側辺26aを含む辺部エリアとしてエリア2a-2cが該当し、左側辺26bを含む辺部エリアとしてエリア2c,2f,2iが該当し、下流側辺26cを含む辺部エリアとしてエリア2g,2h,2iが該当し、右側辺26dを含む辺部エリアとしてエリア2a,2d,2gが該当し、中央エリアとしてエリア2eが該当する。
図6はエリアをそれぞれ上流側辺26a,左側辺26b,下流側辺26c及び右側辺26dを含むそれぞれ台形状に4分割された辺部エリアをエリア2j,2k,2m,2nとし、台形状の辺部エリアの上辺で囲まれた矩形状の中央エリアをエリア2pとしている。同様に振動アクチュエータ3a-3dが固定設置されている箇所を破線で示している。エリアの分割は図5図6で示されるエリアの区分けに限定するものではなく、上流側辺26a,左側辺26b,下流側辺26c及び右側辺26dをそれぞれ含む辺部エリアといずれの側辺も含まず中央に位置する中央エリアに区画される場合にはどのようなエリア区分としてもよい。
図4に戻って、画像解析部21によるワーク密集率は、図5図6に示されるエリア毎に演算されるものであり、各エリアに存在しているワーク17の総面積を各エリアの面積で除した数値(%)を意味している。具体的には表2及び表3に示されるとおりである。
なお、ワーク裏返率は各エリアに存在している裏面(場合によっては側面も含めて)を上に向けているワーク17の総面積をすべてのワーク17の総面積で除した数値(%)、あるいは裏面(場合によっては側面も含めて)を上に向けているワーク17の個数をワーク17の総数で除した数値(%)でもよい。
【0036】
【表2】
【0037】
表2,3において、Cupは上流側辺26aを含む辺部エリア(図5ではエリア2a-2c,図6ではエリア2j)におけるワーク密集率(%)、Cdownは下流側辺26cを含む辺部エリア(図5ではエリア2g-2i,図6ではエリア2m)におけるワーク密集率(%)、Cr-sideは右側辺26dを含む辺部エリア(図5ではエリア2a,2d,2g,図6ではエリア2n)におけるワーク密集率(%)、Cl-sideは左側辺26bを含む辺部エリア(図5ではエリア2c,2f,2i,図6ではエリア2k)におけるワーク密集率(%)、Ccenterは中央エリア(図5ではエリア2e,図6ではエリア2p)におけるワーク密集率(%)、Caroundは辺部エリア全体(図5ではエリア2eを除くすべてのエリア,図6ではエリア2pを除くすべてのエリア)におけるワーク密集率(%)、Cotherはかっこ内に示されるエリア以外のエリアで最もワーク密集率が高いエリアを示している。さらに、Cconst(up,down,sides)は個々の辺部エリアにおけるワーク密集率のしきい値(第1のしきい値)を示しており、Cconst(around)は辺部エリア全体におけるワーク密集率のしきい値(第2のしきい値)を示している。
なお、Cother(around)は中央エリアのみではなく、その他個々にそれぞれの辺部エリアを含んで最大のワーク密集率を得るエリアを意味している。
【0038】
【表3】
【0039】
そして、画像解析部21は演算されたワーク密集率をワーク姿勢制御部22に送信する。
画像解析部21からワーク密集率を受信したワーク姿勢制御部22は、その密集率の演算結果とワーク密集率に対するしきい値との比較によって4つのケースに場合分けして(条件分岐)、振動アクチュエータ3a-3d及び打撃アクチュエータ9の動作を制御する。
まず、4つのケースについて説明する。4つのうち最初のケース1(Case1)は、ワーク17が上流側又は下流側、ケース2(Case2)は、右側又は左側に密集している場合である。
ワーク姿勢制御部22は、各辺部エリアのワーク密集率の数値の中で予め定めた第1のしきい値を超え、かつ最も高かった辺部エリアの数値が、Cup又はCdownの場合(第1条件)をケース1、Cr-side又はCl-sideの場合(第1条件)をケース2と判断し、ケース1及びケース2に該当しなかった場合に、CaroundがCcenterよりも高く、かつ予め定めた第2のしきい値を超えた場合(第2条件)をケース3(Case3)、ケース1-3に当てはまらない場合ケース4(Case4)と判断する。なお、ケース1及びケース2における第1のしきい値はケース3の第2のしきい値よりも高いことが望ましい。前者のしきい値が後者のしきい値以下であると、辺部エリア全体におけるワーク密集率の平均値はワーク密集率が最大となる辺部エリアのワーク密集率よりも常に低いのでケース3に至る可能性が皆無となるためである。
【0040】
このようにケース1からケース4に場合分けをして実行されるワーク姿勢制御部22による制御について、図7図12を参照しながら説明する。
まず、図7図9を参照しながらケース1の場合のワーク姿勢制御部22による振動アクチュエータ3a-3d及び打撃アクチュエータ9の制御について説明する。図7(a)-(c)は時間の経過に沿っており、上流側に密集したワーク17がワーク姿勢制御装置1の振動アクチュエータ3a-3d及び打撃アクチュエータ9によって分散される状態を説明するための概念図である。
図7(a)において、矩形プレート2上のワーク17は上流側辺26a側に密集しているため、これらのワーク17をピッキングロボット14が効率的かつ高精度にピッキングできるようになるべく中央エリアに移動させ、その後それぞれのワーク17が孤立する、すなわち他のワーク17と重ならないようにあるいは接触しないように分散させることが望ましい。この状態におけるワーク密集率の例が表2に示されるものである。表2ではCupが28と最も高く、しかも第1のしきい値が15で、このしきい値も超えていることから第1条件を満足するものである。
したがって、図7(b)に示されるように、ワーク姿勢制御部22は上流側辺26a部の両端に配置された2つの振動アクチュエータ3a,3dを起動し、上下振動を印加する第1制御を実行してワーク17を中央エリアに近い位置に移動させるようにする。そして、図7(c)に示されるように、ワーク姿勢制御部22は打撃アクチュエータ9を中央エリアに移動させて、打撃を印加するように制御してワーク17を分散させる。
なお、この最後の打撃アクチュエータ9による中央エリアにおける打撃はワーク17自体の孤立し易さ等の特性を考慮して常に実行するようにしてもよいし、ワーク17の特性によってはオプションとして省略してもよい。このことはケース1-3に共通である。
さらに、もし、表面のワーク17のみをピッキングする場合に、表2のCupのワーク裏返率が50%を超えているような場合には、画像解析部21からワーク裏返率を受信したワーク姿勢制御部22は、図7(b)で説明した振動アクチュエータ3a,3dの上下振動あるいは図7(c)で説明した打撃アクチュエータ9の打撃の強度を強める、あるいは振幅(ストローク)を大きくすることでワーク17の反転を促し、ワーク裏返率を低下させるように制御してもよい。振動アクチュエータ3a-3dや打撃アクチュエータ9の強度や振幅は表面のワーク17のみをピッキングする場合や表裏無関係にピッキングする場合に応じて、また、ワーク17そのものの特性にも応じて、適宜設定することで対応する。
なお、振動アクチュエータ3a-3dの上下振動又は打撃アクチュエータ9の打撃における強度や振幅(ストローク)の大きさの設定値はワーク密集率やワーク裏返率によって変化させるように制御してもよい。また、ワーク裏返率の設定値はワーク17の特性等を考慮して決定されるものであり50%に限定するものではない。
【0041】
ここで、図8(a),(b)を参照しながら、打撃アクチュエータ9による打撃と振動アクチュエータ3a-3dによる上下振動の印加について説明を加える。図8(c)については別途後述する。
図8(a)は密集したワーク17がワーク姿勢制御装置1の打撃アクチュエータ9の打撃によって分散される状態を説明するための概念図であり、(b)は密集したワーク17が振動アクチュエータ3a-3dによる上下振動の印加によって移動しながら分散される状態を説明するための概念図である。これらの図に示される構成要素で既に説明した構成要素については同一の符号を付しその説明を省略する。図8(a)において、打撃アクチュエータ9はx軸リニアアクチュエータ6、y軸リニアアクチュエータ7a、y軸リニアガイド7b及びz軸リニアアクチュエータ8によって矩形プレート2の下方で形成されるx-y-z空間中を自由に移動可能である。したがって、区画されたエリアのいずれにも打撃を加えて局所的にワーク17を分散又は反転させることができる。
また、図8(b)において、例えば振動アクチュエータ3a,3bを駆動した場合が示されているが、この振動アクチュエータ3a,3bを駆動させて上下振動を矩形プレート2に印加した場合、矩形プレート2の可撓性と相俟って、矩形プレート2上で振動する傾斜面が形成され、密集しているワーク17は重力を受けて傾斜する下方側、すなわち上下振動していない振動アクチュエータ3c,3d側へ向かって移動しながら分散又は反転される。
【0042】
ここで、図8(b)の上下振動について図9を参照しながらさらに詳細に説明を加える。図9はワーク姿勢制御装置の振動アクチュエータによって印加される上下振動によるその振動アクチュエータが配置されている側の矩形プレート上面の高さの変化(実線)と上下振動することなく矩形プレートに固定されている振動アクチュエータ3a-3dが配置されている側の矩形プレート上面の高さ(破線)の関係を示す概念図である。縦軸は振幅あるいは高さを示しており、νは振動アクチュエータ3a-3dによる振動の振幅を表している。なお、振幅の変位をサイン曲線で表現しているが、サイン曲線に限定するものではなく、それ以外の振幅変位でもよい。
図9において、実線で示される振幅νをもって変動している振動側の矩形プレート2上面の高さは振動によって矩形プレート2が周期的に撓むことで変動している。そして、その中心、すなわち振幅が0の位置よりも、破線で示される上下振動せずに固定されている側の矩形プレート2上面の高さが低い位置にあることが示されている。したがって、振動側の矩形プレート2上面の高さの平均値は固定側の矩形プレート2上面の高さよりも高い位置にあり、振動アクチュエータ3a-3dを用いて矩形プレート2を傾斜させることなく上下振動の印加のみで平均的には振動側の矩形プレート2上面から固定側の矩形プレート2上面へ下降する傾斜面が形成されることになり、ワーク17は移動しながら分散又は反転されることになる。
なお、図7(a)-(c)では上流側に密集したワーク17のみが記載されているが、下流側に密集したワーク17を移動・分散又は反転させる場合は、振動アクチュエータ3a,3dに代えて下流側辺26c部の両端に配置された振動アクチュエータ3b,3cを起動させて上下振動を印加する第1制御を実行してワーク17を中央エリアに近い位置に移動させるようにする。そして、図7(c)に示されるように、ワーク姿勢制御部22は打撃アクチュエータ9を中央エリアに移動させて、打撃を印加するように制御してワーク17を分散又は反転させることで対応する。なお、中央エリアに近い位置に移動させる際にも反転可能な上下振動を付加してもよい。その他のケース2,3でも同様である。
【0043】
次に、図10を参照しながら、ケース2の場合のワーク姿勢制御部22による振動アクチュエータ3a-3d及び打撃アクチュエータ9の制御について説明する。図10(a)-(c)は時間の経過に沿っており、上流側を基準に右側に密集したワークがワーク姿勢制御装置1の振動アクチュエータ3a-3d及び打撃アクチュエータ9によって分散される状態を説明するための概念図である。
図10(a)において、矩形プレート2上のワーク17は右側辺26d側に密集しているため、これらのワーク17をピッキングロボット14が効率的かつ高精度にピッキングできるようになるべく中央エリアに移動させ、その後それぞれのワーク17が孤立する、すなわち他のワーク17と接触しないように分散又は反転させることが望ましい。
したがって、図10(b)に示されるように、ワーク姿勢制御部22は右側辺26dの両端に配置された2つの振動アクチュエータ3c,3dを起動し、上下振動を印加する第1制御を実行してワーク17を中央エリアに近い位置に移動させるようにする。そして、図10(c)に示されるように、ワーク姿勢制御部22は打撃アクチュエータ9を中央エリアに移動させて、打撃を印加するように制御してワーク17を分散又は反転させる。
なお、図10(a)-(c)では右側に密集したワーク17のみが記載されているが、左側に密集したワーク17を移動・分散又は反転させる場合は、振動アクチュエータ3c,3dに代えて左側辺26b部の両端に配置された振動アクチュエータ3a,3bを起動させて上下振動を印加する第1制御を実行してワーク17を中央エリアに近い位置に移動させるようにする。そして、図10(c)に示されるように、ワーク姿勢制御部22は打撃アクチュエータ9を中央エリアに移動させて、打撃を印加するように制御してワーク17を分散又は反転させることで対応する。
【0044】
次に、図11を参照しながら、ケース3の場合のワーク姿勢制御部22による振動アクチュエータ3a-3d及び打撃アクチュエータ9の制御について説明する。図11(a)-(d)は時間の経過に沿っており、辺部に分散したワークがワーク姿勢制御装置1の振動アクチュエータ3a-3d及び打撃アクチュエータ9によって分散される状態を説明するための概念図である。
図11(a)において、矩形プレート2上のワーク17は中央エリアを除く辺部エリアに分散しているため、これらのワーク17をピッキングロボット14が効率的かつ高精度にピッキングできるようになるべく中央エリアに移動させ、その後それぞれのワーク17が孤立する、すなわち他のワーク17と接触しないように分散又は反転させることが望ましい。この状態におけるワーク密集率の例が表3に示されるものである。表3ではいずれの辺部エリアのワーク密集率が第1のしきい値を超えておらず、そして、Caroundの値が11でCcenterの値の6よりも高く、しかも、第2のしきい値である10を超えていることから、第2条件を満足するものである。
しかしながら当初から分散していることから、ケース1やケース2のように密集している側の振動アクチュエータ3a-3dを起動することができない。そこで、図11(b)に示されるように、ワーク姿勢制御部22は、一方の対角に存在する一対2隅の矩形プレート2下面に配置される振動アクチュエータ3b,3dを起動させて、上下振動を印加することでワーク17をまず他方の対角を結ぶ線上に移動させる。次に、図11(c)に示されるように、他方の対角の一対2隅の矩形プレート2下面に配置される振動アクチュエータ3a,3cを起動させて上下振動を印加する第2制御を実行することでワーク17を中央エリアに近い位置に移動させる。そして、図11(d)に示されるように、ワーク姿勢制御部22は打撃アクチュエータ9を中央エリアに移動させて、打撃を印加するように制御してワーク17を分散又は反転させる。
【0045】
最後に、図4に戻りつつ図12を参照しながら、ケース1-3に当てはまらないケース4の場合のワーク姿勢制御部22による振動アクチュエータ3a-3d及び打撃アクチュエータ9の制御について説明する。ケース4で想定されるのは中央エリアと辺部エリアのすべてで密集エリアが点在している場合である。図12(a)-(c)は時間の経過に沿っており、点在する密集ワーク17がワーク姿勢制御装置1の打撃アクチュエータ9によって分散又は反転される状態を説明するための概念図である。
図12(a)において、矩形プレート2上のワーク17は中央エリアと辺部エリアのいずれかに密集し点在していると想定される。
そこで、図4に示されるとおり、画像解析部21は密集しているワーク17の面積を解析する。そして、その面積に関する情報はワーク姿勢制御部22へ送信される。面積に関する情報を受信したワーク姿勢制御部22は、図4に局所打撃と示されるように、それぞれの密集ワーク17の面積が所望に設定されるしきい値(第3のしきい値)よりも小さいという第3条件を満たす場合には打撃アクチュエータ9に対し、その密集ワーク17の位置に移動し、打撃を印加する第3制御を実行するように指令信号を発信する。図12(b)はワーク姿勢制御部22から指令信号を受信した打撃アクチュエータ9の打撃によって点在する密集ワーク17のうち1つが分散された状態を示している。その他のすべての第3条件を満たす密集ワーク17の打撃アクチュエータ9による分散が終了した状態を示すのが図12(c)である。
【0046】
一方、画像解析部21によって解析された密集ワーク17の面積が第3のしきい値以上であった場合は、第4条件を満たすとしてワーク姿勢制御部22は図4に全体振動と示されるように、すべての振動アクチュエータ3a-3dに対し、起動し上下振動を印加する第4制御を実行するように指令信号を発信する。このようにすべての振動アクチュエータ3a-3dを上下振動させる状態を示すのが図8(c)である。図8(c)はある程度大きな密集ワークが振動アクチュエータ全体による上下振動の印加によって分散される状態を説明するための概念図である。第4条件を満たす場合は、図12(a)に示されるような小さな密集ワーク17の点在ではなく、ある程度大きな密集ワーク17が形成されていると考えられるため、図8(c)に示されるように、矩形プレート2全体を上下振動させて全体を分散させる方が効率的と考えられるためである。
なお、ケース4においても、ケース1-3と同様にエリア毎のワーク裏返率に応じて、分散のみならず反転を意図して、振動アクチュエータ3a-3dの上下振動や打撃アクチュエータ9の打撃の強度を高めたり振幅(ストローク)を大きくする等の変更を、ワーク姿勢制御部22によって制御するようにしてもよい。
図4において、以上説明したケース1-4に場合分けされた振動アクチュエータ3a-3dと打撃アクチュエータ9の制御を実行した後は、いずれも最初のカメラ11による撮影工程に戻り、それ以降のワークラベリングの工程からワーク総面積が設定値以上であることを確認する工程、ワークパターンマッチングの工程を経て、ピッキングロボット14によってピッキング可能なワーク数が設定値以上であることを確認する工程へ進む。その後、ピッキング可能なワーク数が設定値よりも少ない場合には、再びワーク密集率の計算を行う工程へ進むことになる。表面が上を向いている場合のみをピッキングする場合は、ワーク密集率に加えて再度ワーク裏返率の演算すること以外は同様である。
【0047】
次に、図4でピッキング可能なワーク数が設定値以上であることを確認する工程で設定値以上であった場合は、画像解析部21はピッキングロボット14のピッキングロボット制御部23に対して、ピッキング可能なワーク17の位置及び姿勢に関する情報(データ)を出力し、その情報を受信したピッキングロボット制御部23はピッキングロボット14に対してピッキングするように指令信号を出力する。
その後は、ワーク姿勢制御装置1に対する停止信号の確認をワーク姿勢制御部22が行い、確認された場合には停止して動作を終了し、停止信号が確認できない場合には再びカメラ11を用いて撮影する工程へ進むことになる。
以上説明した第1の実施の形態に係るワーク姿勢制御装置1、第2の実施の形態に係るワーク供給システム19及び第3の実施の形態に係るワーク姿勢制御方法では、ワークラベリングを行うことでワーク17の総面積を測定し、不足の場合には矩形プレート2へワーク17の追加供給を促すことができるので、ピッキングに際して孤立するワーク17の数を確保できる。
しかしながら、それと同時に重なりや接触によってピッキングできないワーク17も増加すると考えられるので、その後の画像解析部21によるワークパターンマッチングによってピッキング可能なワーク17を解析し、不足する場合には矩形プレート2上に設定される辺部エリアと中央エリア毎にワーク密集率を演算してワーク姿勢制御部22へ送信する。ワーク姿勢制御部22はそのワーク密集率によってエリア毎のワーク17の分布を判断し、あらゆるケースにおいて振動アクチュエータ3a-3dと打撃アクチュエータ9を用いて、ピッキングが容易な中央エリアに近い場所で密集したワーク17を分散又は反転させることができる。したがって、ピッキングロボット14によるピッキングを効率的かつ高精度で実行することが可能である。
ピッキングロボット14によるピッキングが効率的であることから、上流側のワーク搬送装置12からのワーク17の供給や下流側のワーク受取装置13による詰め作業や搬送も効率的に行うことが可能となる。
【0048】
また、矩形プレート2を可撓性のある材料で構成することで、振動アクチュエータ3a-3dの上下振動によって振動する矩形プレート2を撓ませ、矩形プレート2上面の振幅の中心を、振動しない振動アクチュエータ3a-3d側の矩形プレート2上面よりも上側に位置するように、上下振動の印加のみで平均的な傾斜が形成されるようにワーク姿勢制御部22が制御することで、振動以外の要素を用いて傾斜を構成する必要がないため振動アクチュエータ3a-3dの構造の簡素化を行いながら無駄な動作を省略し短時間で効果的なワーク17の分散又は反転を行うことが可能である。
【0049】
次に、第1の実施の形態に係るワーク姿勢制御装置1と第3の実施の形態に係るワーク姿勢制御方法の変形例について説明する。
変形例では、画像解析部21がワークパターンマッチングによってピッキング可能なワーク17を解析し、不足する場合に矩形プレート2上に設定される4つの辺部エリアと中央エリア毎にワーク密集率を演算した後に、そのワーク密集率に関する情報を受信したワーク姿勢制御部22が、4つの辺部エリアあるいは中央エリアにおけるワーク密集率が所望に設定されるしきい値(第4のしきい値)を超えるという第5条件を満足する場合に、第4のしきい値を超えたワーク密集率を出した辺部エリア又は中央エリアの下方に打撃アクチュエータ9を移動させ打撃を印加する第5制御を実行するものである。
本変形例においても、表面が上を向いているワーク17のみをピッキングする場合に、エリア毎のワーク裏返率に応じて打撃アクチュエータ9の打撃の強度やストロークの大きさを変更して、ワーク17を分散のみならず反転させるように、ワーク姿勢制御部22を用いて制御してもよい。
この第5制御では、ワーク姿勢制御部22による条件分岐を行うことなく、第5条件を満足する場合に、その辺部エリアあるいは中央エリアを個別に打撃アクチュエータ9によって打撃を加えてワーク17を分散又は反転することが可能であるので、ピッキングロボット14が矩形プレート2上の広い範囲をカバーすることが可能である等の場合には、より効率的な分散又は反転とピッキングが可能と考えられる。
すなわち、本変形例は、予め第5条件の設定をしておき、第5条件を満足する場合には、ワーク姿勢制御部22による条件分岐とケース1-4に場合分けされた振動アクチュエータ3a-3dと打撃アクチュエータ9の制御を実行することなく、第5制御を実行するワーク姿勢制御装置、そのワーク姿勢制御装置を含むシステムあるいは第5制御を実行する工程を含むワーク姿勢制御方法として独立にでも成立するものである。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明の請求項1-請求項9に記載された発明は、様々な産業分野における組立、加工、生産のために必要なワーク(部品)を供給するためのワーク姿勢制御装置、ワーク供給システム及びワーク姿勢制御方法として広く利用が可能である。
【符号の説明】
【0051】
1…ワーク姿勢制御装置 2…矩形プレート 2a-2k,2m,2n,2p…エリア 3a-3d…振動アクチュエータ 4…台座 5…支持材 6…x軸リニアアクチュエータ 7a…y軸リニアアクチュエータ 7b…y軸リニアガイド 8…z軸リニアアクチュエータ 9…打撃アクチュエータ 10…支持脚 11…カメラ 12…ワーク搬送装置 13…ワーク受取装置 14…ピッキングロボット 15…ハンド 16…エンドエフェクタ 17…ワーク 18…ワーク流れ 19…ワーク供給システム 20…解析・制御装置 21…画像解析部 22…ワーク姿勢制御部 23…ピッキングロボット制御部 24…ワーク搬送コンベア 25…ワーク受取部 26a…上流側辺 26b…左側辺 26c…下流側辺 26d…右側辺
図1
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図12