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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045374
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】乗合車両管理システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20220314BHJP
   G06Q 50/30 20120101ALI20220314BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150948
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners 特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡部 英文
(72)【発明者】
【氏名】中村 徳裕
【テーマコード(参考)】
5H181
5L049
【Fターム(参考)】
5H181AA14
5H181AA24
5H181BB04
5H181BB05
5H181FF05
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181MA05
5H181MA08
5H181MA10
5H181MA14
5L049CC42
(57)【要約】
【課題】乗合車両の稼働率を調整できるようにする技術の提供。
【解決手段】乗合車両を予約済の予約済利用者による利用予定時刻を複数の前記乗合車両について取得する予約情報取得部と、前記乗合車両を新規に利用する新規利用者による利用予定時刻を取得する新規利用情報取得部と、複数の前記乗合車両の稼働率を取得する稼働率取得部と、利用予定時刻と実際の利用時刻とのずれの許容範囲を取得する許容範囲取得部と、複数の前記乗合車両における前記予約済利用者の利用予定時刻と、前記新規利用者の利用予定時刻とに基づいて、前記新規利用者における利用予定時刻と、前記新規利用者による前記利用時刻の推定値である利用推定時刻とのずれが前記許容範囲以内である前記乗合車両を特定する乗合車両特定部と、を備え、前記許容範囲取得部は、前記稼働率に基づいて前記許容範囲を変化させる、乗合車両管理システムが構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗合車両を予約済の予約済利用者による利用予定時刻を複数の前記乗合車両について取得する予約情報取得部と、
前記乗合車両を新規に利用する新規利用者による利用予定時刻を取得する新規利用情報取得部と、
複数の前記乗合車両の稼働率を取得する稼働率取得部と、
利用予定時刻と実際の利用時刻とのずれの許容範囲を取得する許容範囲取得部と、
複数の前記乗合車両における前記予約済利用者の利用予定時刻と、前記新規利用者の利用予定時刻とに基づいて、前記新規利用者における利用予定時刻と、前記新規利用者による前記利用時刻の推定値である利用推定時刻とのずれが前記許容範囲以内である前記乗合車両を特定する乗合車両特定部と、
を備え、
前記許容範囲取得部は、前記稼働率に基づいて前記許容範囲を変化させる、
乗合車両管理システム。
【請求項2】
前記稼働率が目標値より小さい場合、直前の前記許容範囲より小さい範囲が新たな前記許容範囲となり、
前記稼働率が目標値より大きい場合、直前の前記許容範囲より大きい範囲を新たな前記許容範囲となる、
請求項1に記載の乗合車両管理システム。
【請求項3】
前記稼働率と前記許容範囲との対応関係を示す対応情報が予め規定されており、
前記許容範囲は、前記対応情報が示す前記稼働率に対応する前記許容範囲である、
請求項1または請求項2に記載の乗合車両管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗合車両管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗合車両を利用する利用者の利用予定時刻と実際の利用時刻とのずれを許容する技術が知られている。特許文献1には、乗車時刻および降車時刻の希望時刻からのずれの上限を制約とし、ずれが上限に収まるようにスケジューリングを行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3959245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、利用者の利用予定時刻と実際の利用時刻とのずれを許容する許容範囲が広いと乗合車両の稼働率が下がり、許容範囲が狭いと利用できる利用者が減るという問題があった。
本発明は、上記課題にかんがみてなされたもので、乗合車両の稼働率を調整できるようにする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態にかかる乗合車両管理システムは、乗合車両を予約済の予約済利用者による利用予定時刻を複数の乗合車両について取得する予約情報取得部と、乗合車両を新規に利用する新規利用者による利用予定時刻を取得する新規利用情報取得部と、複数の乗合車両の稼働率を取得する稼働率取得部と、利用予定時刻と実際の利用時刻とのずれの許容範囲を取得する許容範囲取得部と、複数の乗合車両における予約済利用者の利用予定時刻と、新規利用者の利用予定時刻とに基づいて、新規利用者における利用予定時刻と、新規利用者による利用時刻の推定値である利用推定時刻とのずれが許容範囲以内である乗合車両を特定する乗合車両特定部と、を備え、許容範囲取得部は、稼働率に基づいて許容範囲を変化させる。
【0006】
すなわち、この乗合車両管理システムでは、乗合車両の稼働率に基づいて許容範囲を変化させ、新規利用者における利用予定時刻と利用推定時刻とのずれが変化後の許容範囲以内である乗合車両を特定する。従って、特定された乗合車両を新規利用者に配車すれば、実際の利用時刻が利用予定時刻からずれたとしても許容範囲以内に収まるように乗合車両を配車することができる。
【0007】
複数の乗合車両によってサービスが提供されている状態において、許容範囲が大きくなれば、一台の乗合車両を利用可能な利用者が増加し、この結果、乗合車両の稼働率が小さくなる。一方、許容範囲が小さくなれば、一台の乗合車両を利用可能な利用者が減少し、この結果、乗合車両の稼働率が大きくなる。従って、許容範囲を変化させることにより、乗合車両の稼働率を調整することが可能になる。そして、稼働率に基づいて許容範囲が変化することにより、稼働率に基づいて稼働率をフィードバック制御することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】乗合車両管理システムの構成を示すブロック図。
図2図2Aは予約情報を説明する図、図2Bは稼働率と許容範囲との関係を例示する図。
図3図3Aおよび図3Bは、新規利用者に対して配車可能であるか否かの判定を例示した図。
図4】配車処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)全体の構成:
(2)携帯端末の構成:
(3)案内システムの構成:
(4)乗合車両管理システムの構成:
(5)配車処理:
(6)他の実施形態:
【0010】
(1)全体の構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる乗合車両管理システム10と協働するシステムの構成例を示す図である。本実施形態においては、複数の乗合車両の配車管理を行う拠点に乗合車両管理システム10が設置される。複数の乗合車両のそれぞれには案内システム100が搭載されている。図1には、複数の乗合車両の中の1台が、案内システム100とともに示されている。携帯端末300は、利用者が乗合車両を予約する等のために用いられる端末である。乗合車両管理システム10は、案内システム100、携帯端末300と無線通信可能である。
【0011】
乗合車両管理システム10は、複数の乗合車両の配車管理を行うサーバである。乗合車両は、予約された利用者の出発地まで利用者を迎えに行き、当該利用者の目的地まで連れて行くサービスを提供する車両である。本実施形態において、乗合車両は、複数組の利用者、すなわち、出発地および目的地の少なくとも一方が異なる利用者の組を同時に搭乗させることが可能である。利用者が1組のみで出発地から目的地まで移動できた場合、乗合車両は通常のタクシーと同様であるが、異なる利用者の組が同時に搭乗する場合、乗合が行われた状態となる。
【0012】
利用者は、携帯端末300を利用して乗合車両管理システム10にアクセスし、自身の予定を入力する。乗合車両管理システム10においては、当該利用者の送迎を行う乗合車両を特定し、当該乗合車両の予定に加える。この場合、予定が乗合車両の運転者に通知され、運転者が利用者を迎えに行くことで乗合車両が利用者に配車される。
【0013】
(2)携帯端末の構成:
次に、携帯端末300の構成を説明する。携帯端末300は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部320と、タッチパネルディスプレイ310と、通信部330と図示しない記録媒体を備えている。制御部320は、ROMや記録媒体に記録された様々なプログラムを実行することができる。本実施形態にかかる携帯端末300は、各種のプログラムにより各種の機能を実行可能な多機能端末である。携帯端末300は、各種の態様で実現可能であるが、本実施形態において、携帯端末300は、通話機能を含む各種の機能を実現可能なスマートフォンである。
【0014】
タッチパネルディスプレイ310は、図示しないインタフェースを介して制御部320と接続されており、制御部320とタッチパネルディスプレイ310とで各種の信号を授受する。制御部320の制御により、タッチパネルディスプレイ310は、携帯端末300の利用者による各種の入力を受け付け、利用者に対して各種の情報を出力する。通信部330は、他の装置と無線通信を行うための回路を含んでいる。本実施形態において、制御部320は、通信部330を介して、無線通信によって乗合車両管理システム10と様々な情報を授受することができる。
【0015】
本実施形態において、制御部320は、乗合車両の予約アプリケーションプログラムやブラウザプログラム等を実行することによって、通信部330を介して乗合車両管理システム10にアクセスする。利用者は、これらのプログラムによって実現されるユーザーインターフェースを利用して、タッチパネルディスプレイ310を操作することによって利用予定時刻(乗車希望時刻および降車希望時刻)と出発地と目的地とを入力し、乗合車両を予約する。ここで、乗車希望時刻は出発地でのピックアップを希望する時間であり、降車希望時刻は目的地における配車車両からの降車を希望する時間である。以後、これらの利用予定時刻(乗車希望時刻および降車希望時刻)と出発地と目的地とを予約情報と呼ぶ。
【0016】
(3)案内システムの構成:
次に、乗合車両に搭載されている案内システム100の構成を説明する。案内システム100は、CPU,RAM,ROM等を備える制御部120、記録媒体130、通信部140、GNSS受信部141、車速センサ142、ジャイロセンサ143を備えている。制御部120は、記録媒体130やROMに記憶された図示しないナビゲーションプログラムを実行することができる。
【0017】
記録媒体130には、予め地図情報130aが記録されている。地図情報130aは、車両の位置や案内対象の施設の特定に利用される情報であり、車両が走行する道路上に設定されたノードの位置等を示すノードデータ、ノード間の道路の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間点データ、ノード同士の連結を示すリンクデータ、道路やその周辺に存在する施設の位置等を示すデータ等を含んでいる。
【0018】
通信部140は、他の装置と通信を行う回路を備えている。制御部120は、ナビゲーションプログラムの処理によって乗合車両管理システム10と通信を行うことが可能である。GNSS受信部141は、Global Navigation Satellite Systemの信号を受信する装置であり、航法衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出するための信号を出力する。制御部120は、この信号を取得して車両の現在位置を取得する。車速センサ142は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部120は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ143は、車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、車両の向きに対応した信号を出力する。制御部120は、この信号を取得して車両の進行方向を取得する。車速センサ142およびジャイロセンサ143等は、車両の走行軌跡を特定するために利用され、本実施形態においては、車両の出発位置と走行軌跡とに基づいて現在位置が特定され、当該出発位置と走行軌跡とに基づいて特定された車両の現在位置がGNSS受信部141の出力信号に基づいて補正される。
【0019】
ユーザI/F部144は、利用者の指示を入力し、また利用者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネル式のディスプレイやスピーカ等を備えている。すなわち、ユーザI/F部144は画像や音の出力部およびユーザによる指示の入力部を備えている。
【0020】
制御部120は、図示しないナビゲーションプログラムを実行することにより、車両情報送信部121a、案内実行部121bとして機能する。制御部120は、車両情報送信部121aとして機能することにより、乗合車両の情報を示す車両情報130bを取得する。すなわち、制御部120は、GNSS受信部141,車速センサ142,ジャイロセンサ143の出力信号に基づいて乗合車両の現在地を特定し、車両情報130bとして記録媒体130に記録させる。
【0021】
また、乗合車両の運転者は、ユーザI/F部144等を介して、車両の状態を入力することが可能である。制御部120は、車両情報送信部121aとして機能することにより、当該車両の状態を示す情報を車両情報130bに追加する。車両の状態は、車両の稼働率を特定するために利用される。車両の状態は種々の態様で定義されて良く、本実施形態においては、乗合車両が空車である状態、配車中である状態(利用者が乗っていない状態で出発地に向かっている状態)、利用者が乗車中である状態、運転者が休憩中である状態のいずれかである。制御部120は、車両情報送信部121aの機能により、通信部140を介して、車両情報130bを定期的に乗合車両管理システム10に対して送信する。乗合車両管理システム10は、複数の乗合車両から送信される車両情報に基づいて、各乗合車両の運行管理を行う。
【0022】
運行管理の結果、乗合車両管理システム10によって各乗合車両の予約情報および経路情報が特定される。予約情報は、案内システム100を備える乗合車両に割り当てられた予約情報であり、上述のように、利用予定時刻(乗車希望時刻および降車希望時刻)と出発地と目的地とを含む。経路情報は、予約情報が示す利用予定時刻に従って出発地から目的地まで移動するための経路を示す情報である。
【0023】
乗合車両管理システム10は、各乗合車両に対して、各乗合車両の予約情報および経路情報を送信する。制御部120は、案内実行部121bの機能により、通信部140を介して予約情報および経路情報を取得する。制御部120は、案内実行部121bの機能により、経路情報および地図情報130aに基づいて、ユーザI/F部144の出力部を利用して運転者に対して経路案内を行う。経路案内は、例えば、経路を含む地図を表示するなどの態様で実施される。また、制御部120は、案内実行部121bの機能により、利用者の出発地を地図上に表示する。むろん、この際、予約情報に含まれる利用予定時刻や利用者の属性(性別や衣服の特徴等)が表示されても良い。
【0024】
(4)乗合車両管理システムの構成:
次に、乗合車両管理システム10の構成を詳細に説明する。本実施形態にかかる乗合車両管理システム10は、複数の乗合車両の運行管理を行うサーバである。本実施形態において乗合車両管理システム10は、各乗合車両に対して、各乗合車両を利用する利用者の予約情報を対応付け、各乗合車両の予約情報を各乗合車両に配信することによって運行管理を行う。乗合車両管理システム10を構成するサーバは、一台で構成されても良いし、複数台で構成されるサーバであっても良い。乗合車両管理システム10は、制御部20、記録媒体30、通信部40を備えている。本実施形態において制御部20は、CPU,RAM,ROM等を備えるコンピュータである。制御部20は、記録媒体30やROMに記憶された車両管理プログラム21を実行することができる。
【0025】
通信部40は、他の装置と通信を行う回路を備えている。制御部20は、車両管理プログラム21の処理によって、通信部40を介して、乗合車両を利用する利用者の携帯端末300等や、乗合車両で利用される案内システム100等と無線通信することができる。
【0026】
記録媒体30には、予約情報30aが記録される。予約情報30aは、上述のように、利用予定時刻(乗車希望時刻および降車希望時刻)と出発地と目的地とを含む情報である。但し、乗合車両管理システム10においては、複数の乗合車両に関する情報を含むため、各乗合車両についての予約情報30aが記録媒体30に記録される。このため、本実施形態においては、乗合車両に対して車両を一意に識別するための車両IDが付されており、予約情報30aにおいては、車両IDに対応付けて各乗合車両の情報が記録される。
【0027】
図2Aにおいては、ある乗合車両Caの予約情報30aの例が模式的に示されている。図2Aにおいては、横方向に時間軸が設定してあり、予約済利用者Ua1および予約済利用者Ua2の予定が示されている。すなわち、予約済利用者Ua1は、乗車希望時刻Tsa1に出発地Sa1でピックアップされることを希望しており、降車希望時刻Tga1に目的地Ga1に到着することを希望している。予約済利用者Ua2は、乗車希望時刻Tsa2に出発地Sa2でピックアップされることを希望しており、降車希望時刻Tga2に目的地Ga2に到着することを希望している。
【0028】
この例において、乗車希望時刻Tsa2は降車希望時刻Tga1よりも早いので、予約済利用者Ua1が目的地Ga1に到着する前に予約済利用者Ua2がピックアップされる。このため、乗車希望時刻Tsa2から降車希望時刻Tga1の間には、予約済利用者Ua1と予約済利用者Ua2が乗り合った状態となることが予定されている。
【0029】
また、記録媒体30には、車両情報30bが記録される。車両情報30bは、案内システム100から送信される情報であり、車両情報130bと同様の内容である。すなわち、乗合車両の現在地を示す情報と、乗合車両の状態が、空車、配車中、乗車中、運転者休憩中のいずれであるのかを示す情報とが乗合車両管理システム10において収集される。但し、乗合車両管理システム10において記録される車両情報30bには、複数の乗合車両から送信された情報が含まれる。従って、車両情報30bにおいては、車両IDに対応付けて情報が記録され、乗合車両毎の車両情報30bが区別される。
【0030】
なお、車両情報30bは、種々の条件で取得されて良く、例えば、既定のトリガ(一定期間毎のトリガ、乗合車両が一定距離走行することで生じるトリガ、乗合車両が交差点を通過することで生じるトリガ等)に応じて乗合車両から収集されても良いし、車両情報30bに変化があった乗合車両から収集されても良い。
【0031】
対応情報30cは、稼働率と許容範囲との対応関係を示す情報である。稼働率は、複数の乗合車両の中の、稼働中(配車中または乗車中)である乗合車両の比率である。許容範囲は、利用予定時刻と実際の利用時刻とのずれが許容される範囲である。図2Aにおいては、許容範囲Rtが矢印によって示されている。当該許容範囲は、配車される乗合車両が特定される際に参照される。例えば、予約済利用者Ua1の目的地Ga1への到着希望時刻は降車希望時刻Tga1であるが、目的地Ga1への到着推定時刻がその前後にそれぞれRt/2ずつずれた時刻の範囲内であれば、顧客要求は満たされるとみなされる。従って、予約済利用者Ua2の予約を許可したことによって、予約済利用者Ua1の目的地Ga1への到着推定時刻が遅れたとしても、そのずれが許容範囲内であれば、乗合車両Caが予約済利用者Ua2に配車される。
【0032】
本実施形態において、以上のような許容範囲は、稼働率に基づいて変化し、変化後の許容範囲を決めるために、稼働率と許容範囲とが予め対応づけられ、対応情報30cとして予め規定されている。図2Bは、対応情報30cの例を示す図である。図2Bに示されるように、本実施形態において、対応情報30cは、稼働率に対して許容範囲が対応づけられて規定されている。また図2Bに示す例においては、稼働率の目標値が80%である。
【0033】
すなわち、乗合車両においては、許容範囲が大きくなれば、一台の乗合車両を利用可能な利用者が増加し、この結果、乗合車両の稼働率が小さくなる。一方、許容範囲が小さくなれば、一台の乗合車両を利用可能な利用者が減少し、この結果、乗合車両の稼働率が大きくなる。そこで、稼働率が80%より大きい場合には、許容範囲が0より大きくなるように対応情報30cが設定されている。そして、稼働率が目標値である80%より大きくなるほど(稼働率が目標値より大きく、かつ、乖離が大きいほど)、段階的に許容範囲が大きくなるように設定してある。
【0034】
すなわち、稼働率が目標値である80%より大きくなるほど許容範囲が大きくなり、乗合が可能になる可能性を増加させ、稼働率を低下させるように構成されている。さらに、稼働率が80%より小さい場合、許容範囲は0分になる。従って、この場合、乗合を行える可能性は小さくなり、配車できる乗合車両が減るため、稼働率は上昇する。むろん、図2Bに示す対応情報30cは一例であり、稼働率や許容範囲の値は異なっていても良いし、稼働率と許容範囲との少なくとも一方が連続的に変化してもよい。
【0035】
さらに、記録媒体30には、地図情報30dが記録されている。地図情報30dは、配車される乗合車両の特定や、経路探索等に利用される。地図情報30dの構成は、地図情報130aと共通である。
【0036】
制御部20は、車両管理プログラム21が実行されると、予約情報取得部21a、新規利用情報取得部21b、稼働率取得部21c、許容範囲取得部21d、乗合車両特定部21eとして機能する。予約情報取得部21aは、乗合車両を予約済の予約済利用者による利用予定時刻を複数の乗合車両について取得する機能である。すなわち、制御部20は、予約情報取得部21aの機能により記録媒体30の予約情報30aを参照することにより、既に予約済の各予約済利用者の利用予定時刻を取得する。
【0037】
新規利用情報取得部21bは、乗合車両を新規に利用する新規利用者による利用予定時刻を取得する機能である。すなわち、制御部20は、新規利用情報取得部21bの機能により、通信部40を介して携帯端末300と通信し、新規に予約しようとしている新規利用者が入力した予定情報を取得する。新規利用者が入力した予定情報は、新規利用者がピックアップを希望する利用予定時刻、目的地への到着を希望する降車希望時刻、出発地および目的地を含む。
【0038】
稼働率取得部21cは、複数の乗合車両の稼働率を取得する機能である。すなわち、制御部20は、車両情報30bを参照し、状態が配車中である乗合車両の台数と、状態が乗車中である乗合車両の台数とを取得する。そして、両者の和を、乗合車両の全台数で除することにより、現在の乗合車両の稼働率を取得する。
【0039】
許容範囲取得部21dは、利用予定時刻と実際の利用時刻とのずれの許容範囲を取得する機能である。すなわち、制御部20は、許容範囲取得部21dの機能により、対応情報30cを参照し、稼働率取得部21cによって取得された稼働率に対応する許容範囲を取得する。この結果、稼働率が目標値より大きく、両者の乖離が大きいほど大きい値となるように許容範囲が取得される。すなわち、稼働率に基づいて許容範囲が変化する。
【0040】
乗合車両特定部21eは、複数の乗合車両における予約済利用者の利用予定時刻と、新規利用者の利用予定時刻とに基づいて、新規利用者における利用予定時刻と、新規利用者による利用時刻の推定値である利用推定時刻とのずれが許容範囲以内である乗合車両を特定する機能である。本実施形態において、制御部20は、乗合車両特定部21eの機能により、各乗合車両で新規利用者を送迎した場合に、新規利用者および予約済利用者の利用予定時刻と、新規利用者および予約済利用者による利用時刻の推定値である利用推定時刻とのずれが許容範囲以内となる乗合車両を特定する。
【0041】
具体的には、制御部20は、新規利用者および予約済利用者の乗車希望時刻および降車希望時刻を時系列で並べ、早い予定から順に出発地または目的地に移動した場合に各地点に乗合車両が到達する推定到着時刻を新規利用者および予約済利用者のそれぞれにおける利用推定時刻として取得する。このために、制御部20は、地図情報30dを参照し、新規利用者および予約済利用者の出発地および目的地に対して、利用予定時刻が早い順に到達する経路を探索し、乗合車両の新規経路と仮定する。
【0042】
そして、制御部20は、各経路に従って乗合車両が移動した場合の所要期間を取得する。所要時間は、例えば、地図情報30dが示すノード間距離を平均車速で除することによって算出した区間所要期間を累積するなどして取得可能である。むろん、平均車速は、種々の要素に基づいて決められて良く、統計的な車速であってもよいし、渋滞度に応じて増減した車速等であっても良い。各経路の所要時間が取得されると、制御部20は、最初の地点の利用予定時刻に経路の所要時間を加えることで各地点への推定到着時刻(利用推定時刻)を取得する。
【0043】
図3Aは、図2Aと同じ乗合車両Caによって新規利用者Unにサービスを提供する場合の利用推定時刻を取得する手法を説明する図である。図3Aに示す例においては、新規利用者Unが出発地Snで乗車希望時刻Tnにピックアップされることを希望し、目的地Gnに降車希望時刻Tgに到着することを希望していることが想定されている。さらに、この例においては、図3Aに示すように、乗合車両Caが到達すべき地点は、早い順にSa1,Sn,Sa2,Ga1,Gn,Ga2である。
【0044】
従って、この場合、制御部20は、現在地以後、Sa1,Sn,Sa2,Ga1,Gn,Ga2の順に移動する経路を探索する。この結果、現在地Ca0から出発地Sa1への経路、出発地Sa1から出発地Snへの経路、出発地Snから出発地Sa2への経路、出発地Sa2から目的地Ga1への経路、目的地Ga1から目的地Gnへの経路、目的地Gnから目的地Ga2への経路が新規経路として仮定される。
【0045】
さらに、制御部20は、地図情報30dに基づいて、経路毎の所要期間を取得して、利用推定時刻を取得する。図3Aにおいては、現在時刻に、地点Ca0,Sa1間の所要期間を加え、出発地Sa1への推定到着時刻Tsa1'(利用推定時刻)として取得する。また、制御部20は、出発地Sa1への推定到着時刻Tsa1'に、地点Sa1,Sn間の所要期間を加え、出発地Snへの推定到着時刻Tn'(利用推定時刻)として取得する。同様の処理を繰り返すことによって制御部20は、出発地Sa2への推定到着時刻Tsa2'、目的地Ga1への推定到着時刻Tga1'、目的地Gnへの推定到着時刻Tg'、目的地Ga2への推定到着時刻Tga2'を取得する。図3Aの下部の矢印は新規経路に沿って移動した場合の各地点への到着時刻の推移を模式的に示している。
【0046】
図3Aに示す例において各時刻の前後に渡る許容範囲Rtの中に推定到着時刻の全てが含まれれば、乗合車両Caを新規利用者Unのために配車しても、新規利用者Un、予約済利用者Ua1,Ua2の利用予定時刻と利用推定時刻とのずれが許容範囲以内になる。このため、制御部20は、各地点における乗車希望時刻や降車希望時刻と、推定到着時刻とを比較する。図3Aに示す例であれば、例えば、目的地Ga1への推定到着時刻Tga1'が目的地Ga1における降車希望時刻Tga1の前後に渡る許容範囲Rtに含まれない。従って、制御部20は、新規利用者Unに配車可能な乗合車両として乗合車両Caを特定しない。
【0047】
制御部20は、運行中の乗合車両のそれぞれについて、以上のような処理を行って新規利用者Unに配車可能であるか否か判定する。図3Bは、乗合車両Cbについての判定例を示している。図3Bに示す例においても図3Aと同一の新規利用者Unについて配車が可能であるか判定される。乗合車両Cbにおいては、予約済利用者Ub1,Ub2が予約済である。
【0048】
予約済利用者Ub1は、出発地Sb1において乗車希望時刻Tsb1にピックアップされることを希望し、目的地Gb1へ降車希望時刻Tgb1に到着することを希望していることが想定されている。予約済利用者Ub2は、出発地Sb2において乗車希望時刻Tsb2にピックアップされることを希望し、目的地Gb2へ降車希望時刻Tgb2に到着することを希望していることが想定されている。さらに、この例においては、図3Bに示すように、乗合車両Cbが到達すべき地点は、早い順にSb1,Sn,Gb1,Sb2,Gn,Gb2である。
【0049】
従って、この場合、制御部20は、Sb1,Sn,Gb1,Sb2,Gn,Gb2の順に移動する経路を探索する。この結果、現在地Cb0から出発地Sb1への経路、出発地Sb1から出発地Snへの経路、出発地Snから目的地Gb1への経路、目的地Gb1から出発地Sb2への経路、出発地Sb2から目的地Gnへの経路、目的地Gnから目的地Gb2への経路が新規経路として仮定される。
【0050】
さらに、制御部20は、地図情報30dに基づいて、経路毎の所要期間を取得して、利用推定時刻を取得する。図3Bにおいては、現在時刻に、地点Cb0,Sb1間の所要期間を加え、出発地Sb1への推定到着時刻Tsb1''(利用推定時刻)として取得する。また、制御部20は、出発地Sb1への推定到着時刻Tsb1'に、地点Sb1,Sn間の所要期間を加え、出発地Snへの推定到着時刻Tn''(利用推定時刻)として取得する。同様の処理を繰り返すことによって制御部20は、出発地Sa2への推定到着時刻Tsa2'、目的地Ga1への推定到着時刻Tga1'、目的地Gnへの推定到着時刻Tg'、目的地Ga2への推定到着時刻Tga2'を取得する。同様の処理を繰り返すことによって制御部20は、目的地Gb1への推定到着時刻Tgb1''、出発地Sb2への推定到着時刻Tsb2''、目的地Gnへの推定到着時刻Tg''、目的地Gb2への推定到着時刻Tgb2''を取得する。図3Bの下部の矢印は新規経路に沿って移動した場合の各地点への到着時刻の推移を模式的に示している。
【0051】
そして、制御部20は、各地点における乗車希望時刻や降車希望時刻と、推定到着時刻とを比較する。図3Bに示す例において、制御部20は、全ての地点で利用予定時刻から許容範囲Rt以内に利用推定時刻が含まれると判定する。従って、制御部20は、新規利用者Unに配車可能な乗合車両として乗合車両Cbを特定する。
【0052】
複数の乗合車両のそれぞれに対して制御部20が判定を行うと、新規利用者に配車可能な乗合車両が特定される。配車可能な乗合車両が一台である場合、制御部20は、当該乗合車両の予約情報30aに新規利用者の情報を追加する。また、当該乗合車両の判定の際に特定された新規経路を示す情報を、当該乗合車両の経路を示す経路情報とみなす。そして、制御部20は、乗合車両特定部21eの機能により、新規利用者の携帯端末300に予約が完了したことを示す情報を返信する。携帯端末300においては、タッチパネルディスプレイ310に予約が完了したことを表示する。
【0053】
さらに、制御部20は、乗合車両特定部21eの機能により、予約情報30aを更新した乗合車両に対して、新たな予約情報および経路情報を送信する。送信先の乗合車両の案内システム100において制御部120は、案内実行部121bの機能により、通信部140を介して予約情報および経路情報を取得する。制御部120は、案内実行部121bの機能により、経路情報および地図情報130aに基づいて、ユーザI/F部144の出力部を利用して運転者に対して経路案内を行う。
【0054】
配車可能な乗合車両が複数台である場合、制御部20は、複数台の乗合車両から一台を選択し、予約情報30aの更新、経路情報の更新を行い、これらの情報を当該乗合車両に対して送信する。複数台の乗合車両の中から一台を選択するための手法は、種々の手法であって良く、例えば、予約情報30aの修正前後での所要期間や距離の差が最小である乗合車両や、新規経路による所要期間や距離が最小である乗合車両等が選択される構成等を採用可能である。また、稼働率や乗車人数が最少である乗合車両が選択される構成等が採用されてもよい。
【0055】
配車可能な乗合車両が一台も存在しない場合、制御部20は、乗合車両特定部21eの機能により、予約が不可能であることを示す情報を新規利用者の携帯端末300に返信する。携帯端末300においては、タッチパネルディスプレイ310に予約が不可能であることを表示する。
【0056】
複数の乗合車両を配車するサービスが提供されている場合に、乗合車両の稼働率が上昇していくと、既存の予約済利用者へのサービスをこなしながら新規利用者へのサービスも提供できる乗合車両の数は少なくなっていく。従って、過度に稼働率が上昇すると、新規利用者に対してサービスを提供できない可能性が増える。一方、過度の稼働率が低下すると、乗合車両の利用効率が下がり、売上に対する固定費の割合が増えてしまう。
【0057】
そこで、本実施形態においては許容範囲を調整することで稼働率を調整するように構成されている。すなわち、図3Aに示す例のように許容範囲Rtである場合に、新規利用者Unに対して乗合車両Caを配車できないとしても、より広い許容範囲Rt'であれば配車可能になる。そこで、本実施形態においては、稼働率が目標値である80%より大きくなるほど、段階的に許容範囲が大きくなるように設定してある。許容範囲が大きくなれば、配車可能な乗合車両の数が増加する可能性が高まるため、稼働率を下げることができる。一方、稼働率が目標値より80%より小さくなると、許容範囲は0になるように設定してある。許容範囲が0のように小さい値だと、配車可能な乗合車両の数が減少する可能性が高まるため、稼働率を上げることができる。
【0058】
(5)配車処理:
次に、制御部20が実行する配車処理を、図4を参照しながら説明する。配車処理は、新規利用者が携帯端末300を操作して予約情報を送信し、制御部20が予約情報を取得した場合に実行される。配車処理が開始されると、制御部20は、稼働率取得部21cの機能により、車両情報を取得する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、車両情報30bを参照し、各乗合車両の現在地、現在の状態(空車、配車中、乗車中、休憩中)を特定する。
【0059】
次に、制御部20は、稼働率取得部21cの機能により、稼働率を取得する(ステップS105)。すなわち、制御部20は、ステップS100で取得した情報を参照し、(配車中の乗合車両の台数+乗車中の乗合車両の台数)/(乗合車両の全台数)によって稼働率を取得する。
【0060】
次に、制御部20は、許容範囲取得部21dの機能により、許容範囲を取得する(ステップS110)。すなわち、制御部20は、対応情報30cを参照し、ステップS105で取得された稼働率に対応した許容範囲を取得する。
【0061】
次に、制御部20は、乗合車両特定部21eの機能により、乗合車両を特定する(ステップS115)。具体的には、制御部20は、記録媒体30に記録された予約情報30aを参照し、各乗合車両に対応づけられた予約済利用者の予約情報を取得する。また、制御部20は、携帯端末300から送信された新規利用者の予約情報を取得する。さらに、制御部20は、新規利用者の予約を各乗合車両の予約に追加した場合における各乗合車両の新規経路を探索する。さらに、制御部20は、新規経路に従って各地点間を走行した場合に各地点に到着する推定時刻を利用推定時刻をとして取得する。そして、制御部20は、予約情報が示す利用予定時刻(乗車希望時刻および降車希望時刻)と利用推定時刻とのずれがステップS110で取得された許容範囲以内である乗合車両を特定する。
【0062】
次に、制御部20は、乗合車両特定部21eの機能により、配車処理を行う(ステップS120)。すなわち、制御部20は、ステップS115で特定された乗合車両から、新規利用者に配車する乗合車両を一台選択し、当該乗合車両の予約情報30aに新規利用者の予約情報を追加する。そして、制御部20は、当該乗合車両の予約情報30aと当該乗合車両の新規経路を示す経路情報を、当該乗合車両の案内システム100に対して送信する。なお、新規経路を示す経路情報は、記録媒体30に記録されていても良い。以上の処理によれば、稼働率に応じて許容範囲を調整しながら乗合車両の運行管理を行うことができる。
【0063】
(6)他の実施形態:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、乗合車両管理システムは複数のサーバコンピュータによって構成されていてもよい。また、案内システムは、車両に備え付けられた装置であってもよいし、可搬型の装置(例えば運転者の携帯端末等)であってもよい。さらに、上述の実施形態の一部の構成が省略されてもよいし、処理の順序が変動または省略されてもよい。
【0064】
乗合車両管理システムを構成する予約情報取得部21a、新規利用情報取得部21b、稼働率取得部21c、許容範囲取得部21d、乗合車両特定部21eの少なくとも一部が複数の装置に分かれて存在していても良い。むろん、上述の実施形態の一部の構成が省略されてもよいし、処理の順序が変動または省略されてもよい。
【0065】
予約情報取得部は、乗合車両を予約済の予約済利用者による利用予定時刻を複数の乗合車両について取得することができればよい。すなわち、利用者による予約は複数の乗合車両のそれぞれに対応づけられて記憶されており、少なくとも予約済利用者による利用予定時刻が定義される。
【0066】
乗合車両は、面識のない複数組の利用者が同乗し得る状態で各組の利用者を目的地まで連れて行く車両であれば良い。上述の実施形態において、乗合車両の運転者は、乗合車両のサービスを提供する会社の従業員や契約者等であるが、運転者は他の者であってもよい。例えば、利用者自身であっても良い。また、乗合車両は、予約していない利用者を走行中にピックアップしても良いし、乗車中に利用者が指示した任意の場所で利用者を降ろしても良い。
【0067】
予約済利用者は、乗合車両を予約済の利用者であり、現在以後の利用者として登録済みの利用者が予約済利用者である。利用予定時刻は、利用者が乗合車両を利用する時刻を特定できるように定義されていれば良く、上述のように乗車希望時刻および降車希望時刻によって定義される以外にも、種々の定義が可能である。例えば、乗車希望時刻と降車希望時刻との少なくとも一方が利用予定時刻として定義されても良い。すなわち、利用者によって乗車希望時刻が指定されるが、降車希望時刻は指定されないような態様であっても良い。また、利用予定時刻が時間帯で定義されても良いし、特定の時刻で定義されても良い。後者であれば、特定の時刻の前後の許容範囲以内であれば利用予定時刻に含まれるとみなされる。
【0068】
予約内容を示す予約情報としては、利用予定時刻以外にも種々の情報が含まれていて良く、上述の実施形態における出発地、目的地以外にも、種々の情報が含まれ得る。例えば、利用者の属性(一組の利用者の人数、高齢者、評判等)や、乗合の可否、支払い方法等が含まれていても良い。
【0069】
新規利用情報取得部は、乗合車両を新規に利用する新規利用者による利用予定時刻を取得することができればよい。すなわち、予約済ではなく、乗合車両が割り当てられていない新規利用者の利用予定として、少なくとも利用予定時刻が取得される。新規利用者から収集される新規利用情報は,少なくとも利用予定時刻を含み、他の情報としては予約済利用者と同一の種類の情報であってもよいし、異なっていてもよい。新規利用情報の取得法は、上述の実施形態に限定されず、FAXやEメールを利用して取得されても良いし、電話を介して、または乗合車両に乗車した利用者から口頭で聞き取られることによって取得されても良い。
【0070】
稼働率取得部は、複数の乗合車両の稼働率を取得することができればよい。すなわち、複数の乗合車両の利用効率に対応する指標が取得されれば良い。上述の実施形態において、稼働率は、現在の稼働率、すなわち、(利用者が乗車している乗合車両の台数)/(乗合車両の全台数)であったが、稼働率は他の態様であっても良い。例えば、新規利用者の利用予定時刻における稼働率、すなわち、(新規利用者の利用予定時刻において予約が存在する乗合車両の台数)/(乗合車両の全台数)であっても良い。また、特定の期間(例えば、現在を含む時間帯)における稼働率であっても良い。
【0071】
許容範囲取得部は、利用予定時刻と実際の利用時刻とのずれの許容範囲を取得することができればよい。すなわち、乗合車両によって利用者を送迎する際に、利用予定時刻通りに利用者の出発地や目的地に乗合車両を到着させることができないとしても、許容範囲があれば当該許容範囲以内に乗合車両を到着させることができる可能性が高まる。このため、許容範囲は、時刻通りにサービスを提供する場合と比較して、サービス提供の可能性を高めるように設定されていれば良い。従って、許容範囲は、予約済利用者と新規利用者のそれぞれについて適用され得る。許容範囲は、予約済利用者と新規利用者とで異なっていても良いし、同一であっても良い。また、稼働率に基づいて変化する許容範囲は、予約済利用者と新規利用者との双方の許容範囲であっても良いし、一方であっても良い。
【0072】
また、許容範囲は、稼働率に基づいて変化すれば良い。例えば、稼働率を上げたい場合に許容範囲を小さくし、稼働率を下げたい場合に許容範囲を大きくする構成を採用可能である。稼働率に応じて許容範囲を変化させる態様は、上述の実施形態のような態様に限定されない。例えば、稼働率が小さいほど許容範囲を小さくする構成や、稼働率が大きいほど許容範囲を大きくする構成が採用されてもよい。
【0073】
また、稼働率が目標値より小さい場合、直前の許容範囲より小さい範囲が新たな許容範囲となり、稼働率が目標値より大きい場合、直前の許容範囲より大きい範囲を新たな許容範囲となる構成であっても良い。この構成によれば、稼働率が目標値に近づくように許容範囲を調整することができる。この構成は、例えば、図1に示す構成において、対応情報30cに基づいて許容範囲を決定するのではなく、制御部20が乗合車両の稼働率と目標値とを比較し、稼働率が目標値より小さい場合に許容範囲を現在の値より小さし、稼働率が目標値より大きい場合に許容範囲を現在の値より大きくする構成等によって実現可能である。さらに、許容範囲に上限や下限が存在しても良く、例えば、許容範囲の下限が0であってもよい。この場合、乗合が禁止されても良い。
【0074】
乗合車両特定部は、複数の乗合車両における予約済利用者の利用予定時刻と、新規利用者の利用予定時刻とに基づいて、新規利用者における利用予定時刻と利用推定時刻とのずれが許容範囲以内である乗合車両を特定することができればよい。すなわち、新規利用者に対してサービスを提供した場合に、利用予定時刻と利用推定時刻とのずれが許容範囲以内となるようにサービスを提供可能な乗合車両を特定することができればよい。サービスを提供可能な乗合車両を特定することができれば、その乗合車両を新規利用者に配車するように予約を特定することで、複数の乗合車両を運用しながら新規利用者にサービスを提供可能なスケジュールを特定することができる。
【0075】
利用推定時刻は、乗合車両がその車両の予約済利用者の予約に従って出発地から目的地へ移動しながら、その過程で、新規利用者を出発地でピックアップし、目的地で降ろす場合に、新規利用者が当該乗合車両を利用する時刻として推定される時刻である。利用推定時刻を特定するための態様は、上述の実施形態のような態様に限定されない。例えば、新規利用者の送迎に利用される経路は、直線距離等に基づいて特定されても良いし、所要時間が統計的に特定されても良く、他にも種々の態様であって良い。
【0076】
稼働率と許容範囲との対応関係を示す対応情報は、上述の態様に限定されず、種々の態様であって良い。例えば、稼働率と目標値との差分に対して許容範囲が対応づけられていても良い。むろん、数値の大小関係が定義される構成に限定されず、関数等によって対応情報が定義されていても良い。
【0077】
さらに、本発明のように、稼働率に応じて許容範囲を変化させる手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0078】
10…乗合車両管理システム、20…制御部、21…車両管理プログラム、21a…予約情報取得部、21b…新規利用情報取得部、21c…稼働率取得部、21d…許容範囲取得部、21e…乗合車両特定部、30…記録媒体、30a…予約情報、30b…車両情報、30c…対応情報、30d…地図情報、40…通信部、100…案内システム、120…制御部、121a…車両情報送信部、121b…案内実行部、130…記録媒体、130a…地図情報、130b…車両情報、140…通信部、141…GNSS受信部、142…車速センサ、143…ジャイロセンサ、144…ユーザI/F部、300…携帯端末、310…タッチパネルディスプレイ、320…制御部、330…通信部
図1
図2
図3
図4