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特開2022-45382樽単位酒の保存状態データ管理及び所有証明管理システム
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  • 特開-樽単位酒の保存状態データ管理及び所有証明管理システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045382
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】樽単位酒の保存状態データ管理及び所有証明管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20220314BHJP
   G06Q 10/08 20120101ALI20220314BHJP
   G06Q 30/06 20120101ALI20220314BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q10/08
G06Q30/06
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020150959
(22)【出願日】2020-09-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-02-17
(71)【出願人】
【識別番号】519095256
【氏名又は名称】株式会社レシカ
(71)【出願人】
【識別番号】501035457
【氏名又は名称】株式会社ジャパンインポートシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100139033
【弁理士】
【氏名又は名称】日高 賢治
(72)【発明者】
【氏名】戴有造
(72)【発明者】
【氏名】田中克彦
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA16
5L049BB21
5L049CC11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】信頼可能で安全性を確保可能な樽単位酒の保存状態データ管理及び所有証明管理システムを提供する。
【解決手段】所有証明管理システムは、原酒を充填する樽と、当該樽に設置されるGPSセンサー及びIoTセンサーと、サーバとを含む。管理方法は、個々の前記樽に特有の樽番号を発行するとともに、蒸留所名、銘柄、原酒充填日を含む基本データを前記サーバーに記録し、前記樽番号と紐付けた前記GPSセンサーが発信する位置情報及び前記樽番号と紐付けた前記IoTセンサーが発信する前記原酒充填日からの時間経過、所定時間毎の温度及び湿度を含む個々の前記樽の保存状態データを収拾して前記サーバーに記録するとともに、前記基本データ、前記位置情報、前記保存状態データを前記樽番号と紐付けてパブリックなブロックチェーン上に記録するとともに、前記樽番号と紐付けた証明書トークンをパブリックなブロックチェーン上に記録する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックチェーンを用いた樽単位酒の保存状態データ管理システムであって、
原酒を充填する樽と、当該樽に設置されるGPSセンサー及びIoTセンサーと、システムを管理するサーバー及び処理プログラムを含み、
前記処理プログラムは、
個々の前記樽に特有の樽番号と紐付けた蒸留所名、銘柄、原酒充填日を含む基本データを前記サーバーに記録し、
前記樽番号と紐付けた前記GPSセンサーが発信する位置情報、及び、
前記樽番号と紐付けた前記IoTセンサーが発信する前記原酒充填日からの時間経過、所定時間毎の温度及び湿度を含む個々の前記樽の保存状態データを収拾して前記サーバーに記録するとともに、
前記基本データ、前記位置情報、及び前記保存状態データを前記樽番号と紐付けてハッシュ化してパブリックなブロックチェーン上に記録する、
ことを特徴とする樽単位酒の保存状態データ管理システム。
【請求項2】
前記樽番号はシリアル番号であり、原酒が前記樽に充填される前に、メーカーが独自の規格で発行した完全ランダムな番号、又は前記処理プログラムによって自動的に作成される完全ランダムな番号である、
ことを特徴とする請求項1に記載の樽単位酒の保存状態データ管理システム。
【請求項3】
前記基本データには、個々の前記樽の画像を更に含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の樽単位酒の保存状態データ管理システム。
【請求項4】
ブロックチェーンを用いた樽単位酒の保存状態データ管理及び所有証明システムであって、
原酒を充填する樽と、当該樽に設置されるGPSセンサー及びIoTセンサーと、システムを管理するサーバー及び処理プログラムを含み、
前記処理プログラムは、
個々の前記樽に特有の樽番号と紐付けた蒸留所名、銘柄、原酒充填日を含む基本データを前記サーバーに記録し、
前記樽番号と紐付けた前記GPSセンサーが発信する位置情報、及び、
前記樽番号と紐付けた前記IoTセンサーが発信する前記原酒充填日からの時間経過、所定時間毎の温度及び湿度を含む個々の前記樽の保存状態データを収拾して前記サーバーに記録するとともに、
前記基本データ、前記位置情報、前記保存状態データを前記樽番号と紐付けてハッシュ化してパブリックなブロックチェーン上に記録するとともに、
前記樽番号と紐付けた証明書トークンを前記ブロックチェーン上に記録する、
ことを特徴とする樽単位酒の保存状態データ管理及び所有証明システム。
【請求項5】
前記証明書トークンは、ノンファンジブルトークン(NFT)である、
ことを特徴とする請求項4に記載の樽単位酒の保存状態データ管理及び所有証明システム。
【請求項6】
前記樽番号はシリアル番号であり、原酒が前記樽に充填される前に、メーカーが独自の規格で発行した完全ランダムな番号、又は前記処理プログラムによって自動的に作成される完全ランダムな番号である
ことを特徴とする請求項4又は5に記載の樽単位酒の保存状態データ管理及び所有証明システム。
【請求項7】
前記基本データには、個々の前記樽の画像を更に含む、
ことを特徴とする請求項4ないし6のいずれか1項に記載の樽単位酒の保存状態データ管理及び所有証明システム。
【請求項8】
前記証明書トークンは、プライバシーを保護したまま利用が可能な秘密鍵と公開鍵の暗号方式で保護されているブロックチェーン上のアカウントで管理されている、
ことを特徴とする請求項4ないし7のいずれか1項に記載の樽単位酒の保存状態データ管理及び所有証明システム。
【請求項9】
前記処理プログラムは、前記樽の売買契約時において、購入者の登録情報をハッシュ化して前記ブロックチェーン上に記録する、
ことを特徴とする請求項4ないし8のいずれか1項に記載の樽単位酒の保存状態データ管理及び所有証明システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樽単位で取引されるウイスキー等の酒樽の保存状態データの管理及び所有証明の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ウイスキーを始めとする樽で熟成保存される酒は、酒造メーカーの蒸留所で原酒を樽詰めし、熟成させ、所定期間経過後にブレンドして瓶詰めし、その後に市場に流通するのが一般的である。一方、一部のメーカー(蒸留所)では、樽詰めされた状態の酒をコレクターや愛飲家に対して直接的に樽単位で販売する、或いはコレクターや愛飲家と蒸留所とを仲介する仲介業者に対して樽単位で販売するビジネスが世界的な広がりを見せている(非特許文献1、非特許文献2参照)。
【0003】
例えばスコットランド等では、熟成中の樽そのものは物理的に移動させず、当該樽の所有権のみを移転させる取引も行われており、樽を熟成保管する蒸留所や倉庫が、紙媒体の契約書上で権利の移転を行っている。
【0004】
現状では蒸留所における樽の管理は帳簿形式を用いた紙ファイルや社内管理システム上で管理されるものが主である。また、上記仲介業者においては、樽を保管する保管庫においてのみ、帳簿を管理、編集、閲覧できるため、コレクターや愛飲家と言った最終ユーザーは、管理情報の真実性を確かめることができず、手作業による帳簿への記入や編集による人的ミスの有無、悪意ある仲介業者等によるデータの改竄の有無を確実に把握する手段が無い。
【0005】
すなわち、蒸留所での管理帳簿に記載ミスがあっても、コレクター・愛飲家・仲介業者はこれを知ることができず、また蒸留所で正確に管理されたデータを仲介業者に渡しても、当該仲介業者の管理過程でミスが発生したり、或いは悪意ある仲介業者等によるデータ改竄も起こりうる。特に、ウイスキー等では蒸留所名、銘柄、保存状態と熟成年数がその価値に大きく影響を与えることから、不正確な情報やデータ改竄は、エンドユーザーであるコレクターや愛飲家にとって大きな経済損失を生じさせることになる。
【0006】
現状の紙媒体による移転契約において起こりうる最も悪質なケースとしては、仲介業者が偽の樽所有をユーザーに持ちかけて(偽契約書)、販売する詐欺行為である。現状の紙媒体に頼る仕組みでは、こうした悪質な偽造・詐欺行為を排除することができない。さらに、紙媒体での管理では所有の証明のリアルタイム性が失われ、仮に本物の紙の証明証を持っていたとしても過去の保有を証明のみであり、現時点での保有証明が不可能であり詐欺行為の助長に繋がる。
【0007】
そのため、現在の仕組みでは酒樽の売買を行う際、信頼できる相手との取引に限定されており、信頼関係のある相手との売買か、或いは信頼性が高い大手オークション会社を介しての限定的な売買モデルに限られている。
【0008】
2018年1月に香港で開催されたサザビーズオークションでは、サントリースピリッツ株式会社の「山崎50年」ウイスキー1樽が、約3250万円で落札されるなど、樽単位での売買ビジネスは年々高まりを見せており、信頼性・安全性が確保され、流動性が高く、幅広い商品を取り扱う酒樽取引市場やマーケットプレイスの開拓が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「ウイスキーの樽買い!まさに「オトナ買い」をたのしもう」 (たのしいお酒.JP) https://tanoshiiosake.jp/3766
【非特許文献2】「究極の大人買い!ウイスキーを『樽ごと購入』するのは可能?」(あした話せる嗜好品メディア、ルークス) https://loohcs.jp/articles/2829
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のとおり、従来の管理方法及び売買方法では、最終ユーザーは蒸留所や仲介業者が手作業により作成した情報を信用して行うしかなく、その真実性を証明する手段がないことから、全ては「信頼関係」に依拠して行われている。
【0011】
さらに、手作業による紙帳簿を用いた管理方法では長期的な保管管理が難しく、情報入力ミスや改竄だけでなく、紛失や盗難などのリスクも存在する。また社内で構築した電子的システムであっても、同様である。
【0012】
本発明は、熟成中の酒樽に係る所有権の移転、酒樽の管理状況に関する各種データを、ブロックチェーン技術とGPS、IoTを活用することにより、酒樽において味や香りに影響を与える温度や湿度などの各種データを管理することで酒樽自身に付加価値を与え、グローバルな取引環境における真実性・信憑性を確実に保証し、酒樽取引市場の健全な発展やマーケットプレイスの活性化を図ることを目的とする。
【課題を解決する為の手段】
【0013】
上記の目的を達成するため、本願の第一の発明は、ブロックチェーンを用いた樽単位酒の保存状態データ管理システムであって、原酒を充填する樽と、当該樽に設置されるGPSセンサー及びIoTセンサーと、システムを管理するサーバー及び処理プログラムを含み、前記処理プログラムは、個々の前記樽に特有の樽番号と紐付けた蒸留所名、銘柄、原酒充填日を含む基本データを前記サーバーに記録し、前記樽番号と紐付けた前記GPSセンサーが発信する位置情報、及び、前記樽番号と紐付けた前記IoTセンサーが発信する前記原酒充填日からの時間経過、所定時間毎の温度及び湿度を含む個々の前記樽の保存状態データを収拾して前記サーバーに記録するとともに、前記基本データ、前記位置情報、及び前記保存状態データを前記樽番号と紐付けてハッシュ化してパブリックなブロックチェーン上に記録する、ことを特徴とする。
【0014】
さらに、上記の目的を達成するため、本願の第二の発明は、ブロックチェーンを用いた樽単位酒の保存状態データ管理及び所有証明システムであって、原酒を充填する樽と、当該樽に設置されるGPSセンサー及びIoTセンサーと、システムを管理するサーバー及び処理プログラムを含み、前記処理プログラムは、 個々の前記樽に特有の樽番号と紐付けた蒸留所名、銘柄、原酒充填日を含む基本データを前記サーバーに記録し、前記樽番号と紐付けた前記GPSセンサーが発信する位置情報、及び、前記樽番号と紐付けた前記IoTセンサーが発信する前記原酒充填日からの時間経過、所定時間毎の温度及び湿度を含む個々の前記樽の保存状態データを収拾して前記サーバーに記録するとともに、前記基本データ、前記位置情報、前記保存状態データを前記樽番号と紐付けてハッシュ化してパブリックなブロックチェーン上に記録するとともに、前記樽番号と紐付けた証明書トークンを前記ブロックチェーン上に記録する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本願の第一の発明に係るシステムによれば、原酒が充填保存されているウイスキー等の樽の保存状態を、ブロックチェーン技術、GPS、IoTセンサーを用いて把握することにより、偽造やミスの無い真正な情報(例えばどのメーカーの、どの蒸留所で、何の銘柄で、いつどのような樽に充填されたのか等の情報や例えば温度、湿度、熟成年数等の管理データ)をリアルタイムで把握することができ、仲介業者及びエンドユーザーは、安心して原酒が充填されている酒樽を、瞬時に正確に評価することができる。
【0016】
本システムを利用することで、酒樽の品質に関わる味や香り、風味などを決定する熟成状況に影響する温度や湿度などのデータを取得し、真の情報として酒樽と紐づけることで、適切な熟成状況での商品であるという付加価値の証明と創出が可能である。
【0017】
本システムを利用することで情報・データの改竄や記録ミスが無くなることにより、メーカー及び仲介業者は、仲介業者同士、またエンドユーザーに対して、従来のような特別の関係がなくても信頼・信用を与えることが出来る。
【0018】
さらに、GPS、IoTセンサーの活用によって、蒸留所における樽の管理が自動化され、人的作業負担を軽減することが出来る。
【0019】
また本願の第二の発明に係るシステムによれば、上記第一の発明が有する特徴に加え、仲介業者やエンドユーザーは、リアルタイムでの真正な所有者情報(アカウントのオーナシップ)を証明書トークンの形で得ることができ、樽を所有或いは保管している企業が破産や倒産した場合であっても、ブロックチェーン上のデータを参照して所有権を証明することができるため、容易かつ持続的な取引が可能となる。
【0020】
さらに、本発明に係るシステムは、インターネット環境を通じて全世界のメーカー、仲介業者、エンドユーザーを結びつけることができ、例えば樽は蒸留所にそのまま保管しておきながら所有者の名義のみを国籍を問わずして確実に移転変更することができるため、結果として、世界規模での酒樽取引市場の健全な発展、マーケットプレイスの活性化を図ることができる。
【0021】
またさらに、本発明に係るシステムを利用した場合、酒樽の取引は必ずブロックチェーンのシステム内で行われる構造となるため、ブロックチェーン外での売買を完全に防ぐことができる。また証明書の移転が伴う二次流通以降の取引も全てブロックチェーンを用いたシステム内で行われ、本発明ではブロックチェーン上のトークンを用いて樽の保有証明を行うため、例えばメーカーから一次仲介業者、二次仲介業者などへの取引が行われるたびに一定の金額を分配することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の全体モデルの概要を示す図
図2】トークン発行のシステム構成図(30樽のトークンを発行する場合)
図3】トークンを用いた酒樽単位での所有権の売買と樽現物の引き取りを示す図
図4】センサーデータ記録のシステム図
図5】従来技術と本発明導入後の比較を示す図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下説明する実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を当該実施の形態のみに限定するものではなく、本発明はその要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0024】
図1~5に基づいて、本発明をウイスキー樽の売買ビジネスに応用した詳細な実施形態について説明する。
図1は本発明の全体の流れを模式的に示した図であり、酒樽への原酒の充填、樽と紐づいた証明書トークン(NFT=ノンファンジブルトークン、代替不可能トークン)の発行、環境データの記録方法、保有情報の参照、証明書の移動などを説明するものである。
【0025】
まず、ウイスキーメーカーは、通常どおりの手順に従って原酒を製造し、当該原酒を樽に充填し(1)、貯蔵庫に運んで所定期間、熟成させる。その際、本発明に係るシステム(処理プログラム)は、樽ごとに固有な完全ランダムなシリアル番号である樽番号を発行し(2)、システムを通してブロックチェーン上に樽番号に紐付くNFTを発行する(3、4)。なお樽番号は、メーカーの独自規格に基づく完全ランダムなシリアル番号として、メーカー自身が定めるものであっても良い。
【0026】
さらに、本システムを利用する者によって撮影された当該樽の画像(樽番号が物理的に表示された画像であることが望ましい)を証明写真としてシステムにアップし(5)、その画像のハッシュ値は、システムを通してブロックチェーン上に記録される(6)。これにより樽番号を正確に記録し、証明書トークンに記録されている樽番号と実際の樽番号の不一致や修正、改ざんを防止する。
【0027】
また、樽にはシステムと連動するGPSセンサー、IoTセンサーが取付られており、位置情報、樽の重量、温度、湿度などの情報を所定時間ごとに取得し、データベースに記録する(7、8)。GPSセンサー、IoTセンサーから得られたデータは、個々のデータ、或いはデータ全体のハッシュ値としてブロックチェーン上に記録し(9)、これによって蒸留所の名称・場所、樽を熟成させていた期間の状態データについて不正や改ざんを防ぐことができるようになっている。
【0028】
証明書として扱われる証明書トークンは、樽の売買が行われるごとに、本システムによってメーカーから仲介業者(販売代理店)、仲介業者から消費者へと移動していく(10、11)。消費者Eから更に樽を購入したい消費者Fは、消費者Eが真の樽所有者であるか否かをブロックチェーン層から確認ができ、安心して購入することができる(12、13、14、15)。さらに該当の樽に関して、蒸留所の位置情報、重量、温度、湿度の状態データをいつでも確認することができるため(16)、原酒の樽詰めから熟成期間中の管理状態に関しても、真実な情報として把握することができる。
【0029】
図2は証明書トークンの発行と、当該証明書トークンが移転していく際の様子を模式的に示したシステム図である。図2の例は、原酒を樽詰め保管する蒸留所が、証明書を発行したい30個の樽に適用する場合について説明するものである。
【0030】
蒸留所は、それぞれの樽番号、原酒充填日、銘柄、内容量、アルコール度数、メーカー名を含む基本情報を本システムの管理会社へ伝えるようにしているが(1)、蒸留所が直接、システムに上記各情報を入力するようにしても良い。システムは、当該情報を基にしてブロックチェーン上に証明書トークンを発行する。当該証明書トークンはNFT(ノンファンジブルトークン、代替不可能トークン)であり、それぞれのトークンが1つずつ個別に異なるデータを保持しており識別が可能である。本システムで発行されるNFTは、それぞれの樽番号と紐づいており、この証明書トークン自体が樽の所有権を証明することが可能となる。
【0031】
証明書トークンの所有者は任意のタイミングで権利を行使して証明書トークンと樽を引き換えることができる(ただし銘柄によっては最低熟成期間が存在する)。管理会社は、ブロックチェーン上に個々の樽ごとにそれぞれ異なった証明書トークンを発行する(2)。
【0032】
図2では、30個の樽全てを仲介業者がメーカーから購入する例として説明しており、システムによって発行された30樽の証明書トークンは管理会社から仲介業者へ送付され(3)、これによって30個の樽全ての所有権が、メーカーから仲介業者に移転される。
【0033】
その後、仲介業者は個人ユーザー(或いは二次仲介業者等)に対して各樽を販売するが、この売買契約の成立によって、販売した各個人(或いは二次仲介業者等)に対して、販売した樽の証明書トークンが移転していく(4)。なおこの証明書トークンの移動と保有に関しては、システムのアプリケーションサーバーとブロックチェーンの両方によって管理され、第三者はこの取引履歴と保有状況について、常に確認することができる構造となっている(5)。
【0034】
図3は樽の所有権を証明する証明書トークンの売買時の流れと樽現物と引き換える際のシステム図である。樽は原酒が充填された後、蒸留所(或いは他の倉庫)にて保管されるが、所有権の移転が行われても基本的に樽は移動せず(1)、ブロックチェーン上の証明書トークンの所有権だけが移転し(2)、樽に充填されている原酒は蒸留所(又は他の倉庫)にて熟成され続け、実際にトークンを樽と引き換える時のみ保管されている樽を発送、または樽内の原酒を瓶詰めして引き換える(3)。
【0035】
上記の証明書トークンを用いた樽単位での所有権の売買の取引履歴は、アプリケーションサーバーとブロックチェーンの両方で記録されており、アプリケーションサーバーが記録を改竄しようとしても、改ざんを行った場合は当該の記録のハッシュ値とブロックチェーン上のハッシュ値が異なるため改ざんの検出が容易である。
【0036】
さらに、その取引履歴や保有状況を第三者がブロックチェーン上で常に確認可能なため、証明書トークンを取引する際に取引相手が本当に樽を保有しているかどうかの事実も確認できる。証明書トークンが最終消費者(消費者C)に渡り、証明書トークンの権利を行使して引き換えようとした際も、樽の管理会社は消費者Cが証明書トークンを保有しているかどうかを検証可能なため、特別な書類の記入や作成、提出などの行為が必要なく簡易的かつ迅速に確認できる。
【0037】
図3の投資家A、投資家B、消費者Cなどのブロックチェーンのアカウントには、スマートコントラクトで個人認証のドキュメントのハッシュ値を記録する。このハッシュ値の活用により、個人情報をオープンにせずに個人のプライバシーを守りながら、証明が必要な時は個人データを提出することでブロックチェーン上に記録されているハッシュ値と照合して個人所有の証明が可能である。
【0038】
図3において、取引時において、取引相手が証明書トークンを保有しているか否かの真偽を確かめるために、プライバシーを保護したまま利用が可能な秘密鍵と公開鍵の暗号方式を活用する。投資家Aは秘密鍵と公開鍵を保有しており、投資家Bは公開鍵を、証明書トークンを保有しているアカウントのブロックチェーン上から取得する。投資家Bは投資家Aが本当に証明書トークンを保有しているかどうか確認するため、Aが秘密鍵で暗号化した指定したメッセージを公開鍵で復号化し、Aが樽の証明書の保有者であることを証明する。またこの際暗号化した内容を正しく復号化して原文と照合できれば良いため暗号化する内容は何でも良い。
【0039】
図3の樽単位での売買契約時において、販売者の登録情報が真実か否かを検証する方法として、ハッシュ値を参照する方法を用いることができる。これは買い手である投資家Bが投資家Aに対して個人あるいは法人の登録情報を要求した際、投資家Aが偽りの情報を提出していないかどうかを検証することができる技術である。具体的には投資家Aのシステムに登録している情報のハッシュ値と、投資家Aが投資家Bに提出した情報のハッシュ値を比較することで、完全に一致すれば偽りはなく、異なれば偽りや不備があることを容易に検証可能となる。
【0040】
図4はGPS、IoTセンサーから取得したデータを記録する際のシステム図である。蒸留所(又は倉庫)で保管されている個々の樽ごとにGPS、IoTセンサーが設置されており、所定時間(例えば、月、週、日、時間)ごとに、GPS、IoTセンサーから発信されるデータを、システムで自動的にアプリケーションデータベースに記録する(1)と同時に、ハッシュ値をブロックチェーン上に記録する(2)。
【0041】
ユーザーの持つアプリケーションに対して、アプリケーションDBとアプリケーションサーバーのハッシュ値と、ブロックチェーン上に記録されたハッシュ値を照合することができる(3)。このハッシュ化した数値であるハッシュ値は、ハッシュ化する前の元データを修正、追加、改竄などを行うと変化する特性があるため、アプリケーションDBとアプリケーションサーバーに記録されたハッシュ値と、ブロックチェーン上のハッシュ値を照合することで記録された情報の改竄、消去などの不正行為を検出可能であり、第三者は情報の真実性を検証可能となる(4)
【0042】
図5は、樽の販売に関する既存のモデルと、本発明で可能になるモデルとを比較した図である。従来モデルでは、樽の管理情報記録をメーカーが手作業で行っており、樽単位での酒の購入を希望する者は、信頼できるメーカー、信頼おける仲介業者から購入するしかなかったが、本発明によれば、ブロックチェーンを活用したシステムを活用することにより、知らない相手同士であったとしても全てが真実の情報に基づくことから、安心した取引を、しかも迅速に行うことが可能となる。
【0043】
本発明ではブロックチェーンを活用して樽の所有者情報を一部公開しているため、取引を行う相手が本当にその樽を所有しているかどうか、その樽はどこの蒸留所で、いつ原酒が充填され、どんな環境で何年経過し、どのような経路で今の所有者の元にあるのかなどを誰でも確認することができる。

図1
図2
図3
図4
図5