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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045443
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】ヒーターチップユニット
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
B23K20/00 340
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151044
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】598131650
【氏名又は名称】株式会社アポロ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100098073
【弁理士】
【氏名又は名称】津久井 照保
(72)【発明者】
【氏名】須賀 伸一郎
【テーマコード(参考)】
4E167
【Fターム(参考)】
4E167BB04
4E167DA04
(57)【要約】
【課題】温度センサーの導線を不用意に引っ掛けてしまう不都合が生じ難いヒーターチップユニットを提供する。
【解決手段】端子用導線を端子部材に熱圧着するための板状のヒーターチップ2に熱電対3を取り付けたヒーターチップユニット1であって、ヒーターチップ2は、端子用導線に当接するコテ先部13をコテ本体11に備えたコテ部6と、コテ本体11の左右端部から上方へ互いに離間した状態で延設され、電源からの電流をコテ本体11に流してコテ部6を昇温させる一対の接続腕部7と、を備え、接続腕部7同士の隙間を上端部分が開放した導線収納空部30とし、この導線収納空部30内に熱電対3の導線3bを収納した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子用導線を端子部材に熱圧着するための板状のヒーターチップに温度センサーを取り付けたヒーターチップユニットであって、
前記ヒーターチップは、
前記端子用導線に当接するコテ先部をコテ本体に備えたコテ部と、
前記コテ本体の左右端部から上方へ互いに離間した状態で延設され、電源からの電流をコテ本体に流してコテ部を昇温させる一対の接続腕部と、
を備え、
前記接続腕部同士の隙間を上端部分が開放した導線収納空部とし、この導線収納空部内に温度センサーの導線を収納したことを特徴とするヒーターチップユニット。
【請求項2】
前記導線収納空部には、収納されている導線を止める導線止め部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のヒーターチップユニット。
【請求項3】
前記導線止め部は、導線収納空部内に注入されて硬化した樹脂であることを特徴とする請求項2に記載のヒーターチップユニット。
【請求項4】
前記導線収納空部に連通する止め凹部を備え、導線止め部である樹脂が導線収納空部および止め凹部に注入されて硬化していることを特徴とする請求項3に記載のヒーターチップユニット。
【請求項5】
前記導線止め部は、接続腕部に一体成形され、導線収納空部側へ突出した突起であることを特徴とする請求項2に記載のヒーターチップユニット。
【請求項6】
前記コテ部のうち導線収納空部の下端部が臨む箇所に、温度センサーの測温部が止着される測温止着部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のヒーターチップユニット。
【請求項7】
前記ヒーターチップは、少なくとも前記コテ部と測温止着部の表面に耐酸化性被膜層が形成されていることを特徴とする請求項6に記載のヒーターチップユニット。
【請求項8】
前記測温止着部に止着された測温部の表面に耐酸化性被膜層が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のヒーターチップユニット。
【請求項9】
前記耐酸化性被膜層がニッケル被膜であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のヒーターチップユニット。
【請求項10】
前記温度センサーは熱電対であり、前記温度センサーの導線は熱電対の素線を含んで構成されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載のヒーターチップユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子用導線を端子部材に熱圧着するためのヒーターチップユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
端子用導線を端子部材に熱圧着する作業、例えば、チップインダクター等の電子部品の製造においてリード線をコアの端子部に熱圧着する作業においては、熱圧着用のヒーターチップユニットが用いられる。具体的には、コテ部が昇温するヒーターチップに温度センサーとして熱電対を取り付けてヒーターチップユニットを構成し、このヒーターチップユニットを熱圧着装置のツールホルダーへ取り付ける。そして、熱圧着装置を作動し、端子部材に載せた端子用導線をヒーターチップのコテ部により加圧しながら急加熱して、端子用導線を端子部材へ熱圧着する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5457107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献に記載のヒーターチップ(ヒーターチップユニット)においては、熱電対の素線(温度センサーの導線)を保護チューブ内に通して保護し、さらにはヒーターチップに開設されたホルダー穴へ保護チューブごと挿通して保持している。しかし、熱電対の素線および保護チューブがヒーターチップの表面から引き出された状態になっているため、ヒーターチップユニットを熱圧着装置へ装着する等の取り扱い時に、素線が邪魔になったり、素線を不用意に引っ掛けて熱電対がヒーターチップから脱落したりしてしまう虞がある。
【0005】
また、熱圧着装置を稼働してヒーターチップユニットを作業エリアへ進入させたり熱圧着作業を実行したりする場合においても、素線を他のツール(ワークをクランプするための治具等)に不用意に引っ掛けて熱電対がヒーターチップから脱落したりしてしまう虞がある。このため、狭小の作業エリアへのヒーターチップユニットの進入動作に支障を来す虞がある。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、温度センサーの導線を不用意に引っ掛けてしまう不都合が生じ難いヒーターチップユニットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、端子用導線を端子部材に熱圧着するための板状のヒーターチップに温度センサーを取り付けたヒーターチップユニットであって、
前記ヒーターチップは、
前記端子用導線に当接するコテ先部をコテ本体に備えたコテ部と、
前記コテ本体の左右端部から上方へ互いに離間した状態で延設され、電源からの電流をコテ本体に流してコテ部を昇温させる一対の接続腕部と、
を備え、
前記接続腕部同士の隙間を上端部分が開放した導線収納空部とし、この導線収納空部内に温度センサーの導線を収納したことを特徴とするヒーターチップユニットである。
【0008】
請求項2に記載のものは、前記導線収納空部には、収納されている導線を止める導線止め部を備えたことを特徴とする請求項1に記載のヒーターチップユニットである。
【0009】
請求項3に記載のものは、前記導線止め部は、導線収納空部内に注入されて硬化した樹脂であることを特徴とする請求項2に記載のヒーターチップユニットである。
【0010】
請求項4に記載のものは、前記導線収納空部に連通する止め凹部を備え、導線止め部である樹脂が導線収納空部および止め凹部に注入されて硬化していることを特徴とする請求項3に記載のヒーターチップユニットである。
【0011】
請求項5に記載のものは、前記導線止め部は、接続腕部に一体成形され、導線収納空部側へ突出した突起であることを特徴とする請求項2に記載のヒーターチップユニットである。
【0012】
請求項6に記載のものは、前記コテ部のうち導線収納空部の下端部が臨む箇所に、温度センサーの測温部が止着される測温止着部を備えたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のヒーターチップユニットである。
【0013】
請求項7に記載のものは、前記ヒーターチップは、少なくとも前記コテ部と測温止着部の表面に耐酸化性被膜層が形成されていることを特徴とする請求項6に記載のヒーターチップユニットである。
【0014】
請求項8に記載のものは、前記測温止着部に止着された測温部の表面に耐酸化性被膜層が形成されていることを特徴とする請求項7に記載のヒーターチップユニットである。
【0015】
請求項9に記載のものは、前記耐酸化性被膜層がニッケル被膜であることを特徴とする請求項7または請求項8に記載のヒーターチップユニットである。
【0016】
請求項10に記載のものは、前記温度センサーは熱電対であり、前記温度センサーの導線は熱電対の素線を含んで構成されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれかに記載のヒーターチップユニットである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、以下のような優れた効果を奏する。
請求項1に記載の発明によれば、前記接続腕部同士の隙間を上端部分が開放した導線収納空部とし、この導線収納空部内に温度センサーの導線を収納したので、温度センサーの導線がヒーターチップの板厚の範囲からはみ出すことを避けることができる。したがって、熱圧着装置への装着作業等のヒーターチップユニットの取り扱い時や、ヒーターチップユニットの作業エリアへの進入時に、導線を不用意に引っ掛けてしまう不都合、ひいてはヒーターチップから温度センサーが脱落してしまう不都合が生じ難い。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、前記導線収納空部には、収納されている導線を止める導線止め部を備えたので、収納されている導線が導線収納空部から外れてしまう不都合を阻止することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、前記導線止め部は、導線収納空部内に注入されて硬化した樹脂であるので、接続腕部と導線との隙間に樹脂を導線止め部として入れ易くなり、導線を十分に止めることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、前記導線収納空部に連通する止め凹部を備え、導線止め部である樹脂が導線収納空部および止め凹部に注入されて硬化しているので、導線止め部が導線収納空部から脱落し難くなり、導線止め部とともに導線が導線収納空部から外れる不都合を抑えることができる。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、前記導線止め部は、接続腕部に一体成形され、導線収納空部側へ突出した突起であるので、導線の外れを阻止する機能を簡単な構成で実現することができる。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、前記コテ部のうち導線収納空部の下端部が臨む箇所に、温度センサーの測温部が止着される測温止着部を備えたので、測温部を先頭にして温度センサーを導線収納空部へ開放上端から挿し入れれば、測温部を測温止着部へ簡単に当接することができる。したがって、温度センサーの測温部を測温止着部へ止着する準備をスムーズに行うことができる。
【0023】
請求項7から請求項9に記載の発明によれば、昇温と冷却が繰り返し行われてもヒーターチップの表面の酸化を抑制することができ、耐久性を向上させることができる。
【0024】
請求項10に記載の発明によれば、前記温度センサーは熱電対であり、前記温度センサーの導線は熱電対の素線を含んで構成されているので、ヒーターチップユニットの温度センサーを簡単な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】ヒーターチップユニットの斜視図である。
図2】ヒーターチップの説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は側面図である。
図3】ヒーターチップの測温止着部の説明図であり、(a)は正面図、(b)は断面図である。
図4】ヒーターチップに熱電対を取り付ける手順の説明図であり、(a)は熱電対をヒーターチップ内に挿入する前の状態、(b)は熱電対をヒーターチップ内に挿入した後の状態、(c)は導線収納空部および止め凹部に導線止め部として樹脂を注入した状態である。
図4-1】接続腕部に一体成形された突起を導線止め部として備えたヒーターチップの説明図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は正面図、(d)は導線止め部を隠れ線で描画した側面図である。
図5】2つのコテ部を備えたヒーターチップの斜視図である。
図6】2つのコテ部を備えたヒーターチップの説明図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
ヒーターチップユニット1は、図1および図2に示すように、端子用導線Aを端子部材Bに熱圧着する(図2(d)参照)ための板状のヒーターチップ2と、温度センサーとしてヒーターチップ2に取り付けられた熱電対3とを備えて構成されている。ヒーターチップ2は、導電性材料(タングステン,モリブデン、超硬材等)の板材をワイヤー放電加工により加工して成形されたチップであり、図2に示すように、このヒーターチップ2の下部(ワーク(端子用導線Aや端子部材B)側に位置する先端部)となるコテ部6と、上部(基部)となる左右一対の接続腕部7とを備えて構成されている。そして、接続腕部7を介してコテ部6へ通電したときに電気抵抗によってコテ部6を発熱可能とし、コテ部6の温度を熱電対3によって測定可能としている。
【0027】
コテ部6は、接続腕部7の下部同士を接続する横長なコテ本体11を備え、このコテ本体11の横幅(一対の接続腕部7が並ぶ横方向に沿った寸法)をヒーターチップ2の下部へ向かうにつれて次第に狭くなる状態に設定している。また、僅かに下方に突出したコテ本体11の底部には箱状のコテ先部13を下方へ向けて突設し、このコテ先部13の底面(先端面)をコテ先面13aとして端子用導線Aへ当接可能としている。さらに、コテ本体11のコテ先部13と反対側に位置する上部(接続腕部7側)には略矩形状のコテ凹部15を形成し、このコテ凹部15内に熱電対3の測温接点(測温部)3aを止着している。なお、測温接点3aが止着される構成については、後で詳細に説明する。
【0028】
接続腕部7は、コテ本体11の左右端部から上方へ延設された縦長な構成部分であり、接続腕部7同士を互いに離間した状態で備えられている。また、接続腕部7の上部(延設端部)には、熱圧着装置のチップホルダー(図示せず)へ装着するための装着穴17をヒーターチップ2の板厚方向へ貫通し、この装着穴17に通した装着ボルト(図示せず)をチップホルダーへ螺合することにより、コテ先部13を下に向けた姿勢でヒーターチップユニット1をチップホルダーへ装着するように構成されている。
【0029】
なお、チップホルダーに装着されたヒーターチップユニット1においては、一方の接続腕部7が熱圧着装置のヒーター用電源(図示せず)の一端へ電気的に接続され、他方の接続腕部7がヒーター用電源の他端へ電気的に接続される。そして、電源(ヒーター用電源)からヒーターチップ2へ電流を流すと、電流が接続腕部7を介してコテ本体11内に流れ、コテ本体11内の電気抵抗によってコテ本体11が発熱し、この熱によってコテ先部13が昇温するように構成されている。また、コテ本体11内の電流が一方の接続腕部7側から他方の接続腕部7側へ向かって流れるが、電流が流れる経路のうち、コテ凹部15の隅部分に位置するくびれ箇所の断面積が他の箇所の断面積よりも狭くなっているため、このくびれ箇所で電流密度が最も高くなってこの部分を中心にして電気抵抗によるジュール熱を生じ易い。
【0030】
さらに、ヒーターチップ2は、図1および図2(d)に示すように、このヒーターチップ2の表裏両面において接続腕部7の下部からコテ本体11に亘る範囲に、左右方向(一方の接続腕部7から他方の接続腕部7へ向かう方向)に沿って溝20を本発明におけるえぐり部としてそれぞれ延在させ、この表裏の溝20の延在によって薄肉部21を形成して、コテ先部13が薄肉部21の下方に突設されるように構成されている。言い換えると、薄肉部21がコテ先部13から外れた位置(詳しくは、コテ先部13よりも接続腕部7側)に形成されるように構成されている。
【0031】
また、図2(d)に示すように、表裏の溝20の深さ寸法(ヒーターチップ2の板厚方向の寸法)を同じに設定して、接続腕部7、コテ本体11(薄肉部21)、コテ先部13の各厚さ方向の中央が同一平面上に位置するように構成されており、コテ先部13の板厚を接続腕部7の板厚と同じに設定している。さらに、溝20の底部となる薄肉部21の表面をコテ本体11の側面(表裏面)とし、コテ本体11の板厚(薄肉部21の板厚)が接続腕部7の板厚よりも薄く、且つ、コテ本体11の断面積(言い換えると、電流が流れる流路としての断面積)が接続腕部7の断面積よりも小さく設定されるように構成されている。そして、コテ本体11の側面の厚さt1を接続腕部7の厚さ(詳しくは、薄肉部21を除いた接続腕部7の厚さ(接続腕部7のうち薄肉部21から外れた箇所の厚さ))t2よりも薄く形成している(図1および図2(d)参照)。
【0032】
次に、ヒーターチップ2に取り付けられている熱電対3、および、熱電対3を取り付けるためのヒーターチップ2上の構成について説明する。
熱電対3は、図1および図3に示すように、2種の素線25の先端同士を溶接して球体状の測温接点(測温部)3aを構成し、電気絶縁性を有する素線被覆材26で各素線25をそれぞれ被覆し、さらには外側被覆材27の被覆により1本に束ねて導線3bを構成している。言い換えると、素線25を含んで導線3bを構成している。さらに、測温接点3aの直径および導線3bの線径をそれぞれヒーターチップ2の板厚よりも小さく設定している。
【0033】
また、ヒーターチップ2においては、導線3bの収納箇所を接続腕部7同士の隙間に備え、測温接点3aの止着箇所をコテ部6に備えている。具体的に説明すると、図1および図2(a),(b)に示すように、接続腕部7の長手方向に沿って延在する接続腕部7同士の隙間を、上端部分が開放した導線収納空部30として導線3bの線径よりもひと回り大きな広さ(太さ、幅)に設定し、この導線収納空部30内に導線3b(詳しくは、導線3bのうち測温接点3a寄りに位置する部分)をヒーターチップ2の表裏各面から導線3bが外方へ突出しない状態で収納している。そして、導線収納空部30の上端部分の開放口30aから導線3bを延出し、導線収納空部30の下端を拡開してコテ凹部15へ連通している(図1参照)。
【0034】
さらに、各接続腕部7には、導線収納空部30に臨む側面の一部を切り欠いて止め凹部31を導線収納空部30に連通する状態でそれぞれ形成し、各止め凹部31および導線収納空部30の一部(止め凹部31の間に位置する部分)には、紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂等の樹脂を注入した後に硬化(固化)して導線止め部32を備え、この導線止め部32により導線3bが導線収納空部30からずれてヒーターチップ2から突出することを阻止している。
【0035】
また、コテ部6に形成されたコテ凹部15のうち導線収納空部30の端部(下端部)に臨む箇所には、熱電対3の測温接点3aが止着される測温止着部35を上方の接続腕部7側へ突出した状態で備えている。測温止着部35は、図3に示すように、コテ本体11を挟んでコテ先部13とは反対側に突設された突起部であり、コテ先部13よりもひと回り小さく形成されている。また、導線収納空部30側を向いた部分(この測温止着部35の上部)には、測温接点3aが接触する一対の止着接触面35aを備えて導線収納空部30の端部へ対向させ、止着接触面35a同士の離間距離がコテ部6側から上方の導線収納空部30側へ向かうにつれて次第に拡開する状態に設定している。そして、各止着接触面35aをそれぞれ平面で構成することによりV字状の凹み36を測温止着部35の上部(導線収納空部30側となる上部)に形成し、この凹み36内に測温接点3aを受けて止着接触面35aへ接触させ、この状態で溶接する等して測温接点3aをコテ部6(測温止着部35)へ止着している。
【0036】
次に、ヒーターチップユニット1の作製手順、特に、ヒーターチップ2への熱電対3の取り付け手順について説明する。
まず、図4(a)に示すように、予め別個に作製したヒーターチップ2と熱電対3とを、導線収納空部30の開放口30aと測温接点3aとが対向する状態で配置し、ヒーターチップ2および熱電対3の姿勢を設定して、測温止着部35、導線収納空部30、測温接点3a、導線3bをこの順番で同一直線上に並べる。ヒーターチップ2と熱電対3との姿勢を設定したならば、測温接点3aを先頭にして熱電対3をヒーターチップ2の導線収納空部30の開放口30aへ挿入する。すると、接続腕部7の側面がガイドとなって熱電対3をコテ部6側へ誘導する。
【0037】
さらに、熱電対3を深く挿入すると、図4(b)に示すように、測温接点3aが導線収納空部30を通過した後にコテ凹部15内へ進入する。ここで、図3(a)に示すように、コテ部6においては、導線収納空部30の下端部(コテ部6側の開放端部)が臨む箇所に測温止着部35を備え、V字状の止着接触面35aを導線収納空部30の端部へ対向させているので、コテ凹部15内に進入した測温接点3aが測温止着部35に到達して止着接触面35aに接触(当接)する。このようにして、測温接点3aを止着接触面35a(測温止着部35)へ簡単且つ確実に当接することができる。したがって、測温接点3aを測温止着部35へ止着する準備をスムーズに行うことができる。
【0038】
そして、導線3bを測温止着部35側へ押圧して測温止着部35の止着接触面35aへの接触を維持し、この状態で測温止着部35と止着接触面35aをレーザー溶接により止着(溶接)する。詳しくは、止着接触面35aにレーザーを照射して加熱し、この熱により測温接点3aを溶かして止着(溶接)する。このとき、図3(a)に示すように、測温止着部35において止着接触面35a同士の離間距離がコテ部6側から上方へ向かうにつれて次第に拡開する状態に設定しているので、測温接点3aを測温止着部35へ十分に接触させることができる。したがって、測温接点3aのヒーターチップ2への良好な止着、ひいては良好な測温が可能なヒーターチップユニット1を構成することができる。さらに、止着接触面35aを平面で構成し、測温接点3aを球状体で構成しているので、測温接点3aが止着接触面35aへ点接触し易い。また、測温接点3aを止着接触面35aに押し付けることで、応力が集中し易くなって測温接点3aが止着接触面35aから浮き難い。これにより測温接点3aをヒーターチップ2へ一層良好に止着すること、ひいては、ヒーターチップ2の測温を一層良好に行うことができる。
【0039】
測温止着部35に測温接点3aを止着したならば、図4(c)に示すように、導線収納空部30の一部(止め凹部31の間に位置する部分)および各止め凹部31に紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂等の樹脂を硬化前の状態(流動状態)で注入して充填し、その後に紫外線照射や加熱等の樹脂硬化処理を施して樹脂を硬化して導線止め部32とする。
【0040】
このようにして熱電対3をヒーターチップ2に取り付けて構成されたヒーターチップユニット1においては、熱電対3の導線3bを導線収納空部30に収納したので、熱電対3の導線3bがヒーターチップ2の板厚の範囲からはみ出すことを避けることができる。したがって、熱圧着装置への装着作業等のヒーターチップユニット1の取り扱い時や、ヒーターチップユニット1の作業エリアへの進入時に、導線3bを不用意に引っ掛けてしまう不都合、ひいてはヒーターチップ2から熱電対3が脱落してしまう不都合が生じ難い。また、搬送(出荷)や保存の際に複数のヒーターチップユニット1をまとめようとする場合には、ヒーターチップユニット1を支障なく安定して重ねることができ、搬送作業や保存作業を滞りなく行うことができる。
【0041】
さらに、導線収納空部30には導線止め部32を備えたので、収納されている導線3bが導線収納空部30から外れてしまう不都合を阻止することができる。また、導線収納空部30内に注入されて硬化した樹脂を導線止め部32としたので、接続腕部7と導線3bとの隙間に樹脂を導線止め部32として入れ易くなり、導線3bを十分に止めることができる。そして、導線収納空部30に連通する止め凹部31を備え、導線止め部32である樹脂が導線収納空部30および止め凹部31に注入されて硬化しているので、導線止め部32が導線収納空部30から脱落し難くなり、導線止め部32とともに導線3bが導線収納空部30から外れる不都合を抑えることができる。
【0042】
そして、ヒーターチップユニット1を用いて端子部材Bに端子用導線Aを熱圧着する作業としては、まず、熱圧着装置のチップホルダーにヒーターチップユニット1をコテ先部13が下側となる姿勢で装着し、熱電対3の導線3bを熱圧着装置の熱電対接続端子(図示せず)へ接続する。その後、チップホルダーの下方に設けられた作業エリア(いずれも図示せず)に端子部材Bと端子用導線Aとをセットし、端子部材Bの上面に端子用導線Aを重ねる。端子部材Bと端子用導線Aとをセットしたならば、チップホルダーとともにヒーターチップユニット1を下降させてコテ先部13を端子用導線Aへ押圧し、さらにはヒーターチップ2への通電によりコテ本体11を発熱させて、端子部材Bに端子用導線Aを熱圧着する。また、熱電対3によりコテ部6の温度を測定し、熱圧着装置の制御部(図示せず)がこの測定値に基づいてヒーターチップ2への通電制御、さらにはコテ先部13の温度制御を行う。
【0043】
ここで、発熱するヒーターチップ2においては、コテ本体11の板厚を接続腕部7の板厚よりも薄く設定し、コテ本体11の断面積を接続腕部7の断面積よりも小さく設定したので、ヒーターチップ2の板厚を厚くしたとしても、コテ本体11での電流密度が低下して発熱が不十分となってしまう不都合を抑えることができる。したがって、ヒーターチップ2の板厚の増減に拘らず良好な発熱効率を実現し易い。また、コテ本体11の体積の増加、ひいては熱容量の増加を避けることができ、コテ本体11やコテ先部13の冷却を迅速に行い易い。さらに、接続腕部7の下部からコテ本体11に亘る範囲に溝20を延在させて薄肉部21を形成し、溝20の底部となる薄肉部21の表面をコテ本体11の側面としたので、コテ本体11の板厚が接続腕部7の板厚よりも薄いヒーターチップ2の構造を簡単に実現することができる。
【0044】
また、薄肉部21の下方にコテ先部13を突設したので、熱圧着作業によって異物(端子用導線Aの絶縁被膜等)がコテ先部13に付着した場合には、コテ先部13の先端を研磨する等して異物を除去し易い。さらに、コテ先部13の先端の研磨代を十分に確保することができ、ヒーターチップユニットの交換サイクル(使用寿命)の長期化を図ることができる。そして、薄肉部21をコテ先部13よりも接続腕部7側に形成して、コテ本体11の側面の厚さを薄肉部21を除いた接続腕部7の厚さよりも薄く形成したので、コテ本体11での電流密度の低下を抑制しながらも、コテ先部13の先端面における板厚方向の寸法を十分に確保することができる。これにより、ヒーターチップ2が熱圧着可能なワーク(熱圧着対象)の大きさの許容範囲を広げることができる。また、薄肉部21をコテ先部13から外れた位置に形成し、コテ先部13の板厚を接続腕部7の板厚と同じに設定したので、コテ先部13の板厚を接続腕部7の板厚に対して増減させる必要がなく、ヒーターチップ2を製造し易い。
【0045】
さらに、接続腕部7、コテ本体11、コテ先部13の各厚さ方向の中央が同一平面上に位置するので、熱圧着作業時にヒーターチップ2内で曲げモーメントが発生し難くなり、ヒーターチップ2に余計な負荷が掛かる不都合、ひいてはヒーターチップ2が損傷し易くなる不都合を抑えることができる。そして、ヒーターチップ2のコテ部6に温度センサーとして熱電対3を取り付けたので、コテ部6の温度の情報を取得してヒーターチップ2の発熱の制御に活用することができる。また、温度センサーを簡単な構成で実現することができる。
【0046】
ところで、上記実施形態では、ヒーターチップ2の表裏両面に溝20をそれぞれ延在させて薄肉部21を形成することによりコテ本体11を構成したが、本発明はこれに限定されない。要は、コテ本体11の板厚が接続腕部7の板厚よりも薄く、且つ、コテ本体11の断面積を接続腕部7の断面積よりも小さく設定すれば、どのような態様のコテ本体11をヒーターチップ2に備えてもよい。例えば、ヒーターチップ2の表面または裏面のいずれかに溝を延在させて薄肉部21を形成してコテ本体11を構成してもよい。しかしながら、コテ本体11がヒーターチップ2の表裏いずれかに偏って位置することになり、これにより、熱圧着作業時にはヒーターチップ2内に曲げモーメントが発生してしまうので、接続腕部7、コテ本体11、コテ先部13の各厚さ方向の中央が同一平面上に位置する構成、すなわち、上記実施形態の構成を採用することが好適である。なお、コテ本体11は、電気抵抗値が最も高い部分(発熱部となる部分)を含んだ構成であればよい。このため、溝等により薄肉化を図る領域は、接続腕部7内に及んでもよいし、必ずしもコテ本体11の全域ではなくてもよい。
【0047】
また、コテ先部13の板厚と接続腕部7の板厚とを同じ寸法に設定したが、本発明はこれに限定されない。例えば、コテ先部13の板厚を削って接続腕部7の板厚よりも薄く設定すれば、コテ先部13の板厚寸法の自由度を増すことができ、熱圧着処理を施すワーク(端子部材B,端子用導線A)の大きさに対応したヒーターチップ2を設計し易い。さらに、図3に示すように、測温止着部35をコテ先部13よりもひと回り小さく構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、コテ先部13の体積と測温止着部35の体積とを揃えて、コテ先部13の熱容量と測温止着部35の熱容量との差が極端に異なることを避けるように設定すれば、測温止着部35での温度変化とコテ先部13での温度変化とを同期させようとすることができ、測温止着部35の測温に基づいてコテ先部13の温度管理を実行し易い。
【0048】
さらに、測温止着部35の止着接触面35aを平面で構成したが、本発明はこれに限定されない。要は、止着接触面35a同士の離間距離がコテ部6側から上方へ向かうにつれて次第に拡開する状態に設定されれば、止着接触面35aを曲面で構成してもよい。そして、止着接触面35aに測温接点(測温部)3aを十分に接触することができれば、この測温接点3aを球状体に形成することには限定されず、どのような形状に形成してもよい。また、熱電対3の測温接点3aと測温止着部35とを溶接して止着しているが、本発明はこれに限定されない。要は、コテ部6の測温が可能であれば、測温接点3aと測温止着部35との止着態様は問わない。例えば、熱伝導が良好な止着剤(接着剤)を用いて測温接点3aと測温止着部35とを止着してもよい。
【0049】
そして、上記実施形態のヒーターチップ2においては、導線収納空部30を接続腕部7の長手方向に沿って直線状に延在させて備えているが、本発明はこれに限定されない。要は、熱電対3の導線3bを収納可能な構成であれば、どのような態様の導線収納空部30を適用してもよい。例えば、屈曲線状や湾曲線状に延在する導線収納空部30を適用してもよい。また、紫外線硬化樹脂や熱硬化樹脂等の樹脂を本発明における導線止め部32として例示したが、本発明はこれに限定されない。要は、導線収納空部30内に収納された導線3bを止めて導線収納空部30からの脱落を阻止することができれば、導線止め部32の態様は問わない。例えば、導線収納空部30に嵌合可能なキャップを導線止め部として採用してもよいし、あるいは、接続腕部7に一体成形され、導線収納空部30側へ突出した突起を導線止め部として採用してもよい。
【0050】
突起で構成された導線止め部の一例について説明すると、図4-1に示す変形例のヒーターチップ2″は、基本的には上記実施形態(第1実施形態)と同じであるが、樹脂が充填される止め凹部31を形成せず、その代わりに矩形突起状の導線止め部37を備えている点で異なる。具体的には、一方の接続腕部7のうち導線収納空部30に臨む側面からは、複数(本変形例では2つ)の導線止め部37を導線収納空部30の長手方向に沿って互いに離間した状態で、他方の接続腕部7に向けて突設している。また、他方の接続腕部7のうち導線収納空部30に臨む側面からは、複数(本変形例では2つ)の導線止め部37を導線収納空部30の長手方向に沿って互いに離間した状態であり、且つ一方の接続腕部7上の導線止め部37とは導線収納空部30を挟んで対向することを避けた状態で、一方の接続腕部7に向けて突設している。また、図4-1(d)に示すように、一方の接続腕部7上の各導線止め部37をヒーターチップ2″の表面寄りに配置し、他方の接続腕部7上の各導線止め部37をヒーターチップ2″の裏面寄りに配置して、各導線止め部37が導線収納空部30の長手方向に沿って互い違いに位置するように構成されている。
【0051】
さらに、図4-1(b)に示すように、各導線止め部37のうち導線3bの外周面が係合し得る導線係合部37aを曲面に設定して、導線3bと導線止め部37とが面接触し易いように構成されている。なお、導線止め部37は、ヒーターチップ2″の素材となる板材のワイヤーカット(ワイヤー放電加工)の際に、導線収納空部30内に矩形状の突起を成形しておき、その後、導線収納空部30の外方から突起に放電加工(形彫放電加工)の電極を近づけて導線係合部37aを成形して、ヒーターチップ2″に設けられる。なお、導線係合部37aの成形方法は、放電加工に限らず、例えばレーザー加工等でもよい。
【0052】
このようにして、接続腕部7に一体成形される導線止め部37を採用すれば、導線3bの外れを阻止する機能を簡単な構成で実現することができる。また、樹脂の充填作業を行うことや、樹脂が硬化するまでの待ち時間を要することがなく、ヒーターチップユニットの製造作業の効率を向上させることができる。
【0053】
また、導線収納空部30に連通する止め凹部31を導線収納空部30の側面の浅い切り欠きにより構成したが、本発明はこれに限定されない。要は、導線止め部32である樹脂が導線収納空部30から止め凹部31に亘って注入されて硬化可能であれば、止め凹部31の構成はどのような態様を採用してもよい。例えば、接続腕部7の表裏両面に溝状の止め凹部をそれぞれ形成し、この止め凹部の端部を導線収納空部30へ連通して樹脂(導線止め部32)が導線収納空部30から止め凹部に亘って注入されるように構成してもよい。
【0054】
さらに、上記実施形態では、熱電対3を本発明の温度センサーとして例示し、熱電対3の測温接点3aを本発明の測温部として例示したが、これに限定されない。要は、コテ部6の測温が可能であり、導線3bの端部に測温部を備えて構成された温度センサーであれば、どのような態様の温度センサーを採用してヒーターチップ2に取り付けてもよい。
【0055】
ところで、上記実施形態では、溝20を本発明におけるえぐり部として例示したが、本発明はこれに限定されない。要は、一方の接続腕部から他方の接続腕部へ向かう方向に沿ってえぐり部を延在させることにより薄肉部がヒーターチップに形成されれば、えぐり部をどのような態様に設定してもよい。例えば、図5および図6に示す第2実施形態のヒーターチップ2′おいては、基本的には上記実施形態(第1実施形態)と同じであるが、ヒーターチップ2′の表裏両面だけではなく、ヒーターチップ2′の板厚方向の中間部分にもえぐり部を形成してヒーターチップ2′の下半部分を二股に分岐させ、これにより2脚のコテ本体を有している点で異なる。
【0056】
具体的に説明すると、ヒーターチップ2′は、このヒーターチップ2′の下部に位置するコテ部6′のうち板厚方向の中間部分に、左右方向(一方の接続腕部7から他方の接続腕部7へ向かう方向)に沿って延在するコテ空間部40をえぐり部として形成し、このコテ空間部40を下方へ開放している。そして、コテ空間部40を挟んでヒーターチップ2′の表裏両側にコテ本体11とコテ先部13とをそれぞれ備えている。言い換えると、ヒーターチップ2′のコテ部6′には、互いに離間した2つのコテ本体11、および互いに離間した2つのコテ先部13を備えている。さらに、各コテ本体11においては、外側の面に溝20を形成し、内側の面にも溝20′を形成し、また、測温止着部35が突設されたコテ凹部15をそれぞれ備え、各測温止着部35に熱電対3の測温接点(測温部)3aを止着可能とし、各コテ先部13においては、このコテ先部13の板厚を接続腕部7の板厚よりも薄く設定されている。
【0057】
このようなコテ部6′を備えたヒーターチップ2′を構成すれば、2つのコテ先部13によって同時に2箇所の熱圧着処理を行うことができ、熱圧着作業の効率の向上を図ることができる。また、コテ空間部40の板厚方向の寸法の設定によって、2つのコテ先部13の離間距離(ピッチ)や各コテ先部13のコテ先面13aの大きさをワークに応じて調整することができる。
【0058】
また、前記した実施形態においては、ヒーターチップの表面に耐酸化性被膜層を形成して耐酸化性を高めてもよい。
【0059】
以下、耐酸化性被膜層について説明する。
ヒーターチップにおいては、熱圧着の度に昇温、冷却を繰り返すので、表面が酸化し易く、特に、コテ部6(発熱部)近傍、および熱電対3を溶着した部分においては酸化が顕著である。このため、発熱部近傍の酸化部分が剥離して強度が低下してしまい加圧時に破損する不都合が生じたり、また、熱電対の溶着部分が腐食することで強度が低下して、遂には熱電対が離脱して使用できないなどの不都合が発生する。
【0060】
そこで、本実施形態においては、ヒーターチップの表面に耐酸化性被膜層を形成して耐酸化性を高めた。以下、製造工程を含めて具体的に説明する。
まず、素材(母材)となる金属板について、具体的には、従来一般的に用いられていたタングステン(硬度HV430程度)、タングステン合金(硬度HV200~400程度)よりも耐研磨性に優れたいわゆる超硬材(硬度HV900~2400)(正式名;超硬質合金、硬質の金属炭化物の粉末を焼結した合金)を使用することが望ましく、この超硬材の板材をワイヤーカットにより所定形状に切り出す。次に、この切り出し片にメッキ前処理を施し、その後に溶解槽に浸漬して通電することで前記切り出し片の表面にニッケルによる耐酸化性被膜層を形成、即ち、ニッケルメッキを施す。その後、溶解槽から引き揚げて洗浄等の後処理を施す。
そして、前記した実施形態と同様に、測温止着部35に熱電対3の測温接点3aをレーザー溶接する。この溶接において、測温止着部35の表面(止着接触面35a)にニッケル層の被膜が形成されているので濡れ性が高められ、これにより溶接の確実性、溶接強度が向上する。また、溶接時の濡れ性が高められるとレーザーの出力を従来よりも抑制することができるとともに母材へのダメージを抑制することができ、品質向上とエネルギー消費の節約を図ることができる。
熱電対3の溶接が終了したならば、更にメッキ前処理を施し、熱電対3を装着したヒーターチップユニット1を電解液に浸漬し、熱電対3の測温接点3aを含めた全体の表面にニッケルメッキを施す。
【0061】
この様にして作製したヒーターチップユニット1を使用すると、耐酸化性が向上するので、コテ部6や熱電対3の取付部分の酸化に起因する剥離や強度低下を抑制することができ、これにより耐久性を向上させることができる。特に、母材に超硬材を使用してニッケルメッキを施すと、濡れ性が向上して溶接性も向上させることができ、耐久性を確実に向上させることができる。なお、熱電対は主成分がニッケルなので、ニッケルメッキが親和性が良い。また、耐酸化性被膜は、ニッケルメッキに限らず、例えば、金メッキなどでもよい。
【0062】
そして、前記した実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、上記した説明に限らず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
1 ヒーターチップユニット
2,2′,2″ ヒーターチップ
3 熱電対
3a 測温接点
3b 導線
6,6′ コテ部
7 接続腕部
11 コテ本体
13 コテ先部
13a コテ先面
15 コテ凹部
17 装着穴
20,20′ 溝
21 薄肉部
25 素線
26 素線被覆材
27 外側被覆材
30 導線収納空部
30a 開放口
31 止め凹部
32 導線止め部
35 測温止着部
35a 止着接触面
36 凹み
37 導線止め部
37a 導線係合部
40 コテ空間部
図1
図2
図3
図4
図4-1】
図5
図6