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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045486
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】直線駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 25/24 20060101AFI20220314BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
F16H25/24 G
F16H25/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151100
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】樋口 崇
【テーマコード(参考)】
3J062
【Fターム(参考)】
3J062AB24
3J062BA01
3J062CD02
3J062CD22
3J062CD57
(57)【要約】
【課題】送りねじ軸に係合するナット部材と、スライダとを備える直線駆動装置において、スライダに対するナット部材の回動が防止されていても、スライダをナット部材に容易に組み込むことが可能な直線駆動装置を提供する。
【解決手段】この直線駆動装置では、ナット部材15の回動防止突起15aの先端側部分のZ方向の両側面は、Y2方向側に向かうにしたがってZ方向の内側に向かって傾斜する傾斜面15n、15pとなっており、スライダ16の回動防止溝16bに回動防止突起15aが嵌っていない状態では、ナット配置凹部16aの規制壁面16c、16dによって規制されるナット部材15の回動範囲の全域において、傾斜面15nのY2方向端15tは、回動防止溝16bのY1方向端のZ1方向端16tよりもZ2方向側に配置され、傾斜面15pのY2方向端15uは、回動防止溝16bのY1方向端のZ2方向端16uよりもZ1方向側に配置されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送りねじ軸を有するモータと、前記送りねじ軸に係合するとともに前記送りねじ軸が回転すると前記送りねじ軸の軸方向に直線的に移動するナット部材と、前記ナット部材と一緒に前記送りねじ軸の軸方向に直線的に移動するスライダとを備え、
前記スライダには、前記ナット部材が配置されるナット配置凹部が形成され、
前記ナット部材は、前記送りねじ軸を回動の中心とした前記スライダに対する前記ナット部材の回動を防止するための回動防止突起を備え、
前記送りねじ軸の軸方向に直交する所定の方向を第1方向とし、前記送りねじ軸の軸方向と第1方向とに直交する方向を第2方向とし、第1方向の一方側を第3方向側とし、第1方向の他方側を第4方向側とし、第2方向の一方側を第5方向側とし、第2方向の他方側を第6方向側とすると、
前記回動防止突起は、第3方向側に突出し、
前記回動防止突起の先端側部分の第5方向側の側面は、第3方向側に向かうにしたがって第6方向側に向かって傾斜する第1傾斜面となっており、
前記回動防止突起の先端側部分の第6方向側の側面は、第3方向側に向かうにしたがって第5方向側に向かって傾斜する第2傾斜面となっており、
前記ナット配置凹部には、第3方向側に窪むとともに前記回動防止突起が嵌る回動防止溝が形成され、
前記ナット配置凹部の第4方向端は、前記ナット配置凹部に前記ナット部材を入れるための開口部となっており、
前記ナット配置凹部の第2方向の少なくとも一端には、前記回動防止溝に前記回動防止突起が嵌っていない状態の前記ナット部材の、前記送りねじ軸を回動の中心とした前記スライダに対する回動範囲を規制するための規制壁面が形成され、
前記送りねじ軸の軸方向から見たときに、前記回動防止溝に前記回動防止突起が嵌っていない状態では、前記規制壁面によって規制される前記ナット部材の回動範囲の全域において、前記第1傾斜面の第3方向端は、前記回動防止溝の第4方向端の第5方向端よりも第6方向側に配置され、かつ、前記第2傾斜面の第3方向端は、前記回動防止溝の第4方向端の第6方向端よりも第5方向側に配置されていることを特徴とする直線駆動装置。
【請求項2】
前記規制壁面は、前記ナット配置凹部の第2方向の両端に形成され、
前記ナット部材は、前記規制壁面に接触して前記ナット部材の回動範囲を規制する回動規制突起を備え、
前記回動規制突起は、前記ナット部材の第3方向側部分に形成されていることを特徴とする請求項1記載の直線駆動装置。
【請求項3】
前記回動防止突起は、前記送りねじ軸の軸方向における前記ナット部材の一部に形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の直線駆動装置。
【請求項4】
前記回動防止溝は、前記送りねじ軸の軸方向における前記ナット配置凹部の一部に形成されていることを特徴とする請求項3記載の直線駆動装置。
【請求項5】
前記ナット部材は、樹脂成形品であり、
前記ナット部材には、前記送りねじ軸の軸方向において前記回動防止突起が形成される範囲の中に配置されるゲート痕が形成されていることを特徴とする請求項3または4記載の直線駆動装置。
【請求項6】
前記ナット部材は、前記規制壁面に接触して前記ナット部材の回動範囲を規制する回動規制突起を備え、
前記回動規制突起は、前記送りねじ軸の軸方向における前記ナット部材の一部に形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の直線駆動装置。
【請求項7】
前記ナット部材は、円筒状に形成されるとともに前記送りねじ軸に係合するめねじが内周面に形成される円筒部を備え、
第2方向における前記回動防止突起の厚さと、前記送りねじ軸の軸方向における前記回動規制突起の厚さと、前記円筒部の径方向の厚さとが略等しくなっていることを特徴とする請求項6記載の直線駆動装置。
【請求項8】
前記送りねじ軸の軸方向における前記ナット部材の一方の端面には、前記送りねじ軸の軸心を曲率中心とする円環状の凸部が形成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の直線駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送りねじ軸を回転させてスライダを直線的に移動させる直線駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外周面に螺旋溝が形成された出力軸を有するモータ本体と、出力軸に沿って直線的に移動する可動体とを備える直線駆動装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の直線駆動装置では、可動体は、出力軸に係合するナット部材(従動部材)と、ナット部材と一緒に移動するスライダとを備えている。モータ本体には、フレームが固定されている。フレームには、スライダを案内するガイド用の第1固定軸と、スライダの供回りを防止するための第2固定軸とが固定されている。
【0003】
特許文献1に記載の直線駆動装置では、スライダの内部にナット部材が配置されている。スライダは、ナット部材が配置される空間を画定する第1板部、第2板部、第4板部、第5板部および隔壁を備えている。第4板部によって形成される壁面、第5板部によって形成される壁面、および、隔壁によって形成される壁面は、出力軸の軸方向と平行になっている。第4板部によって形成される壁面および第5板部によって形成される壁面は、互いに平行になっており、隔壁によって形成される壁面は、第4板部によって形成される壁面および第5板部によって形成される壁面に直交している。
【0004】
特許文献1に記載の直線駆動装置では、出力軸を回動の中心としたスライダに対するナット部材の回動を防止するための凹部が隔壁に形成されている。ナット部材には、スライダの凹部に嵌る凸部が形成されており、スライダに形成される凹部と、この凹部に嵌るナット部材の凸部とによって、スライダに対するナット部材の回動が防止されている。また、特許文献1に記載の直線駆動装置では、出力軸の軸ぶれ等に起因するナット部材の動作不良を防止するために、第4板部によって形成される壁面とナット部材との間、第5板部によって形成される壁面とナット部材との間、および、隔壁によって形成される壁面とナット部材との間に隙間が形成されている。
【0005】
特許文献1に記載の直線駆動装置においてスライダをナット部材に組み込む際には、たとえば、出力軸に取り付けられたナット部材に対して、スライダを横方向に移動させることで、スライダの内部の空間にナット部材を配置している。このときには、スライダの凹部にナット部材の凸部が嵌るように、スライダを横方向に移動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-210940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の直線駆動装置においてスライダをナット部材に組み込む際には、スライダの凹部にナット部材の凸部が嵌る前であっても、第4板部によって形成される壁面、および、第5板部によって形成される壁面によって、スライダの内部空間においてスライダに対するナット部材の回動範囲はある程度規制されている。しかしながら、スライダの凹部にナット部材の凸部が嵌るまでは、スライダに対してナット部材が回動可能となっているため、スライダの内部空間にナット部材を配置する際に、隔壁によって形成される壁面に凸部の先端が接触して、凹部に凸部が嵌りにくくなるおそれがある。すなわち、特許文献1に記載の直線駆動装置では、スライダをナット部材に組み込む際の作業が煩雑になるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、送りねじ軸に係合するナット部材と、ナット部材と一緒に直線的に移動するスライダとを備える直線駆動装置において、スライダに対するナット部材の回動が防止されていても、スライダをナット部材に容易に組み込むことが可能な直線駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の直線駆動装置は、送りねじ軸を有するモータと、送りねじ軸に係合するとともに送りねじ軸が回転すると送りねじ軸の軸方向に直線的に移動するナット部材と、ナット部材と一緒に送りねじ軸の軸方向に直線的に移動するスライダとを備え、スライダには、ナット部材が配置されるナット配置凹部が形成され、ナット部材は、送りねじ軸を回動の中心としたスライダに対するナット部材の回動を防止するための回動防止突起を備え、送りねじ軸の軸方向に直交する所定の方向を第1方向とし、送りねじ軸の軸方向と第1方向とに直交する方向を第2方向とし、第1方向の一方側を第3方向側とし、第1方向の他方側を第4方向側とし、第2方向の一方側を第5方向側とし、第2方向の他方側を第6方向側とすると、回動防止突起は、第3方向側に突出し、回動防止突起の先端側部分の第5方向側の側面は、第3方向側に向かうにしたがって第6方向側に向かって傾斜する第1傾斜面となっており、回動防止突起の先端側部分の第6方向側の側面は、第3方向側に向かうにしたがって第5方向側に向かって傾斜する第2傾斜面となっており、ナット配置凹部には、第3方向側に窪むとともに回動防止突起が嵌る回動防止溝が形成され、ナット配置凹部の第4方向端は、ナット配置凹部にナット部材を入れるための開口部となっており、ナット配置凹部の第2方向の少なくとも一端には、回動防止溝に回動防止突起が嵌っていない状態のナット部材の、送りねじ軸を回動の中心としたスライダに対する回動範囲を規制するための規制壁面が形成され、送りねじ軸の軸方向から見たときに、回動防止溝に回動防止突起が嵌っていない状態では、規制壁面によって規制されるナット部材の回動範囲の全域において、第1傾斜面の第3方向端は、回動防止溝の第4方向端の第5方向端よりも第6方向側に配置され、かつ、第2傾斜面の第3方向端は、回動防止溝の第4方向端の第6方向端よりも第5方向側に配置されていることを特徴とする。
【0010】
本発明の直線駆動装置では、ナット部材に形成される回動防止突起の先端側部分の第5方向側の側面は、第3方向側に向かうにしたがって第6方向側に向かって傾斜する第1傾斜面となっており、回動防止突起の先端側部分の第6方向側の側面は、第3方向側に向かうにしたがって第5方向側に向かって傾斜する第2傾斜面となっている。また、本発明では、送りねじ軸の軸方向から見たときに、スライダに形成される回動防止溝に回動防止突起が嵌っていない状態では、ナット配置凹部の規制壁面によって規制されるナット部材の回動範囲の全域において、第1傾斜面の第3方向端は、回動防止溝の第4方向端の第5方向端よりも第6方向側に配置され、かつ、第2傾斜面の第3方向端は、回動防止溝の第4方向端の第6方向端よりも第5方向側に配置されている。
【0011】
そのため、本発明では、ナット部材に対してスライダを第4方向側に相対的に移動させてスライダをナット部材に組み込む際に、ナット部材がスライダに対して回動していても、ナット部材の第1傾斜面を回動防止溝の第4方向端の第5方向端に接触させることが可能になるとともに、ナット部材の第2傾斜面を回動防止溝の第4方向端の第6方向端に接触させることが可能になる。したがって、本発明では、ナット部材に対してスライダを第4方向側に相対的に移動させてスライダをナット部材に組み込む際に、ナット部材がスライダに対して回動していても、回動防止突起の先端部を回動防止溝の中に円滑に案内することが可能になる。その結果、本発明では、回動防止突起と回動防止溝とによって、スライダに対するナット部材の回動が防止されていても、スライダをナット部材に容易に組み込むことが可能になる。
【0012】
本発明において、規制壁面は、ナット配置凹部の第2方向の両端に形成され、ナット部材は、規制壁面に接触してナット部材の回動範囲を規制する回動規制突起を備え、回動規制突起は、ナット部材の第3方向側部分に形成されていることが好ましい。このように構成すると、第1方向における規制壁面の幅が狭くなっていても、ナット部材に対してスライダを第4方向側に相対的に移動させてスライダをナット部材に組み込む際に、規制壁面と回動規制突起とによって、スライダに対するナット部材の回動範囲を規制することが可能になる。したがって、スライダをナット部材に容易に組み込むことが可能であっても、スライダの形状の自由度を高めることが可能になる。
【0013】
本発明において、回動防止突起は、送りねじ軸の軸方向におけるナット部材の一部に形成されていることが好ましい。ナット部材の強度を確保するためには、送りねじ軸の軸方向におけるナット部材の長さをある程度長くする必要があるが、このように構成すると、送りねじ軸の軸方向におけるナット部材の長さが比較的長くなっていても、送りねじ軸の軸方向における回動防止突起の長さを短くすることが可能になる。したがって、たとえば、ナット部材が樹脂成形によって形成された樹脂成形品であっても、送りねじ軸の軸方向におけるナット部材の全域に回動防止突起が形成されている場合と比較して、回動防止突起を精度良く形成することが可能になる。
【0014】
本発明において、回動防止溝は、送りねじ軸の軸方向におけるナット配置凹部の一部に形成されていることが好ましい。このように構成すると、たとえば、スライダが樹脂成形によって形成された樹脂成形品であっても、送りねじ軸の軸方向におけるナット配置凹部の全域に回動防止溝が形成されている場合と比較して、回動防止溝を精度良く形成することが可能になる。
【0015】
本発明において、ナット部材は、樹脂成形品であり、ナット部材には、送りねじ軸の軸方向において回動防止突起が形成される範囲の中に配置されるゲート痕が形成されていることが好ましい。このように構成すると、送りねじ軸の軸方向において回動防止突起が形成される範囲からずれた位置にゲート痕が形成されている場合と比較して、回動防止突起を精度良く形成することが可能になる。
【0016】
本発明において、ナット部材は、規制壁面に接触してナット部材の回動範囲を規制する回動規制突起を備え、回動規制突起は、送りねじ軸の軸方向におけるナット部材の一部に形成されていることが好ましい。このように構成すると、ナット部材の強度を確保するために送りねじ軸の軸方向におけるナット部材の長さが比較的長くなっていても、送りねじ軸の軸方向における回動規制突起の厚みを薄くして、ナット部材の肉厚のばらつきを抑制することが可能になる。したがって、たとえば、ナット部材が樹脂成形によって形成された樹脂成形品であっても、また、ナット部材に回動規制突起が形成されていても、ナット部材のヒケを抑制することが可能になる。
【0017】
本発明において、ナット部材は、円筒状に形成されるとともに送りねじ軸に係合するめねじが内周面に形成される円筒部を備え、第2方向における回動防止突起の厚さと、送りねじ軸の軸方向における回動規制突起の厚さと、円筒部の径方向の厚さとが略等しくなっていることが好ましい。このように構成すると、たとえば、ナット部材が樹脂成形によって形成された樹脂成形品であっても、また、ナット部材に回動規制突起が形成されていても、ナット部材のヒケを効果的に抑制することが可能になる。
【0018】
本発明において、たとえば、送りねじ軸の軸方向におけるナット部材の一方の端面には、送りねじ軸の軸心を曲率中心とする円環状の凸部が形成されている。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明では、送りねじ軸に係合するナット部材と、ナット部材と一緒に直線的に移動するスライダとを備える直線駆動装置において、スライダに対するナット部材の回動が防止されていても、スライダをナット部材に容易に組み込むことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態にかかる直線駆動装置の側面図である。
図2図1のE-E断面の構成を説明するための断面図である。
図3図1に示すナット部材の斜視図である。
図4図3に示すナット部材の平面図である。
図5図3に示すナット部材の背面図である。
図6図1に示すスライダの斜視図である。
図7】(A)は、図2に示す回動防止突起と回動防止溝との配置関係を説明するための図であり、(B)は、(A)のF部の拡大図である。
図8】(A)は、図2に示す回動防止突起と回動防止溝との配置関係を説明するための図であり、(B)は、(A)のG部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
(直線駆動装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる直線駆動装置1の側面図である。図2は、図1のE-E断面の構成を説明するための断面図である。
【0023】
本形態の直線駆動装置1は、モータ2と、モータ2の動力で直線的に移動する可動体3とを備えている。モータ2は、ステッピングモータである。モータ2は、回転軸5および駆動用磁石(図示省略)を有するロータ6と、駆動用磁石の外周側に配置されるステータ7とを備えている。回転軸5の出力側部分は、ステータ7よりも出力側へ突出している。回転軸5の、ステータ7よりも突出している部分は、外周面に送りねじが形成された送りねじ軸(リードスクリュー)5aとなっている。
【0024】
以下の説明では、回転軸5の軸方向(すなわち、送りねじ軸5aの軸方向)である図1等のX方向を前後方向とし、前後方向の一方側である図1等のX1方向側を「前」側とし、前後方向の他方側である図1等のX2方向側を「後ろ」側とする。また、以下では、説明の便宜上、前後方向に直交する図1等のY方向を左右方向とし、前後方向と左右方向とに直交する図1等のZ方向を上下方向とする。また、左右方向の一方側である図2等のY1方向側を「右」側とし、左右方向の他方側である図2等のY2方向側を「左」側とし、上下方向の一方側である図1等のZ1方向側を「上」側とし、上下方向の他方側である図1等のZ2方向側を「下」側とする。
【0025】
本形態の左右方向(Y方向)は、前後方向(すなわち、送りねじ軸5aの軸方向)に直交する所定の方向である第1方向となっており、上下方向は、送りねじ軸5aの軸方向と第1方向とに直交する第2方向となっている。また、左側(Y2方向側)は、第1方向の一方側である第3方向側となっており、右側(Y1方向側)は、第1方向の他方側である第4方向側となっている。さらに、上側(Z1方向側)は、第2方向の一方側である第5方向側となっており、下側(Z2方向側)は、第2方向の他方側である第6方向側となっている。
【0026】
モータ2は、上述のように、回転軸5および駆動用磁石を有するロータ6と、駆動用磁石の外周側に配置されるステータ7とを備えている。駆動用磁石は、回転軸5の後端側部分に固定されている。ステータ7は、駆動用磁石の外周面に対向配置される極歯および駆動用コイル等を備えている。また、モータ2は、ステータ7に固定されるフレーム8と、回転軸5の出力側の端部(前端部)を支持する軸受9と、回転軸5の反出力側の端部(後端部)を支持する軸受10とを備えている。なお、図2では、フレーム8等の図示を省略している。
【0027】
フレーム8は、角溝状に形成されており、底面部8aと、底面部8aの前端から直角に立ち上がる側面部8bと、底面部8aの後端から直角に立ち上がる側面部8cとから構成されている。フレーム8は、ステータ7の前端面に固定されている。具体的には、側面部8cがステータ7の前端面に固定されている。側面部8cには、回転軸5が挿通される貫通孔が形成されている。軸受9は、側面部8bに固定されている。軸受10は、ステータ7の後端部に固定されている。
【0028】
フレーム8には、可動体3を前後方向に案内する2本のガイド軸11が固定されている。ガイド軸11の前端部は、側面部8bに固定され、ガイド軸11の後端部は、側面部8cに固定されている。2本のガイド軸11は、送りねじ軸5aを回動の中心としたフレーム8に対する可動体3の回動を防止する機能も果たしている。具体的には、2本のガイド軸11は、可動体3の一部を構成する後述のスライダ16の、送りねじ軸5aを回動の中心としたフレーム8に対する回動を防止する機能を果たしている。
【0029】
可動体3は、送りねじ軸5aに係合するとともに送りねじ軸5aが回転すると送りねじ軸5aに沿って前後方向に直線的に移動するナット部材15と、ナット部材15と一緒に前後方向に直線的に移動するスライダ16とを備えている。本形態の可動体3は、ナット部材15とスライダ16とによって構成されている。以下、ナット部材15およびスライダ16の具体的な構成について説明する。
【0030】
(ナット部材およびスライダの構成)
図3は、図1に示すナット部材15の斜視図である。図4は、図3に示すナット部材15の平面図である。図5は、図3に示すナット部材15の背面図である。図6は、図1に示すスライダ16の斜視図である。図7(A)は、図2に示す回動防止突起15aと回動防止溝16bとの配置関係を説明するための図であり、図7(B)は、図7(A)のF部の拡大図である。図8(A)は、図2に示す回動防止突起15aと回動防止溝16bとの配置関係を説明するための図であり、図8(B)は、図8(A)のG部の拡大図である。
【0031】
ナット部材15およびスライダ16は、樹脂成形によって形成された樹脂成形品である。スライダ16の外形は、略直方体状となっている。スライダ16には、ナット部材15が配置されるナット配置凹部16aが形成されている。ナット部材15は、送りねじ軸5aを回動の中心としたスライダ16に対するナット部材15の回動を防止するための回動防止突起15aを備えている。ナット配置凹部16aには、回動防止突起15aが嵌る回動防止溝16bが形成されている。また、ナット配置凹部16aには、回動防止溝16bに回動防止突起15aが嵌っていない状態のナット部材15の、送りねじ軸5aを回動の中心としたスライダ16に対する回動範囲を規制するための規制壁面16c、16dが形成されている。
【0032】
ナット部材15は、回動防止突起15aに加えて、円筒状に形成される円筒部15bと、規制壁面16c、16dに接触してナット部材15の回動範囲を規制する回動規制突起15cとを備えている。また、ナット部材15は、上述のように、樹脂成形品であり、ナット部材15には、ゲート痕15dが形成されている。
【0033】
円筒部15bは、前後方向を軸方向とする厚肉の円筒状に形成されている。円筒部15bの内周面には、送りねじ軸5aに係合するめねじが形成されている。本形態の円筒部15bは、円筒部15bの前側の約半分の部分をなす小径部15eと、円筒部15bの残りの部分(後ろ側の約半分の部分)をなす大径部15fとから構成されている。大径部15fの外径は、小径部15eの外径よりもわずかに大きくなっている。本形態では、ナット部材15の製作時に、前後方向に分割される2個の金型が使用されており、2個の金型の分割面(パーティングライン)に、大径部15fと小径部15eとの境界15g(図4参照)が形成されている。
【0034】
円筒部15bの後端面(具体的には、大径部15fの後端面)には、凸部15hが形成されている。凸部15hは、送りねじ軸5aの軸心を曲率中心とする円環状に形成されている。凸部15hは、大径部15fの後端面から後ろ側に向かってわずかに突出している。凸部15hの後面は、前後方向に直交する平面となっている。
【0035】
回動防止突起15aは、左側に突出している。具体的には、回動防止突起15aは、大径部15fの左端から左側に向かって突出しており、回動防止突起15aの右端は、大径部15fの左端に繋がっている。すなわち、回動防止突起15aは、円筒部15bの左端から左側に向かって突出しており、回動防止突起15aの右端は、円筒部15bの左端に繋がっている。また、回動防止突起15aは、上下方向における大径部15fの中心に繋がっている。
【0036】
回動防止突起15aの前端面および後端面は、前後方向に直交する平面となっている。本形態では、前後方向において、回動防止突起15aの前端面と大径部15fの前端とが同じ位置に配置され、回動防止突起15aの後端面と大径部15fの後端とが同じ位置に配置されている。すなわち、回動防止突起15aは、前後方向におけるナット部材15の一部に形成されている。
【0037】
回動防止突起15aの基端側部分(右端側部分)の上側面は、上下方向に直交する平面状の直交面15jとなっている。回動防止突起15aの基端側部分の下側面は、上下方向に直交する平面状の直交面15kとなっている。回動防止突起15aの先端側部分(左端側部分)の上側面は、左側に向かうにしたがって下側に向かって傾斜する傾斜面15nとなっている。回動防止突起15aの先端側部分の下側面は、左側に向かうにしたがって上側に向かって傾斜する傾斜面15pとなっている。すなわち、回動防止突起15aの先端側部分は、先細り形状となっている。本形態の傾斜面15nは、第1傾斜面であり、傾斜面15pは、第2傾斜面である。
【0038】
傾斜面15n、15pは平面である。また、傾斜面15nの傾斜角度と傾斜面15pの傾斜角度とは等しくなっている。傾斜面15nの右端15rと傾斜面15pの右端15sとの上下方向の距離は、直交面15jと直交面15kの上下方向の距離よりも長くなっている。傾斜面15nの左端15tと傾斜面15pの左端15uとの上下方向の距離は、直交面15jと直交面15kの上下方向の距離よりも短くなっている。
【0039】
回動防止突起15aの左右方向の中心部の上側面は、上側に膨らむ凸曲面15vとなっている。凸曲面15vには、直交面15jと傾斜面15nとが繋がっている。回動防止突起15aの左右方向の中心部の下側面は、下側に膨らむ凸曲面15wとなっている。凸曲面15wには、直交面15kと傾斜面15pとが繋がっている。回動防止突起15aの先端面(左端面)は、左右方向に直交する平面となっている。回動防止突起15aの先端面と傾斜面15n、15pとの境界部分は、凸曲面に形成されている。
【0040】
回動規制突起15cは、ナット部材15の左側部分に形成されている。具体的には、回動規制突起15cは、円筒部15bの左上端部分と左下端部分との2箇所に形成されている。回動規制突起15cは、前後方向から見たときの形状が三角形状となる平板状に形成されている。回動規制突起15cの厚さ方向は、前後方向と一致している。回動規制突起15cの前面および後面は、前後方向に直交する平面となっている。回動規制突起15cは、大径部15fに繋がっている。回動規制突起15cの厚さは、大径部15fの前後方向の長さよりも薄くなっている。
【0041】
回動規制突起15cの前面は、前後方向において大径部15fの前端と同じ位置に配置されており、回動規制突起15cは、前後方向におけるナット部材15の中間位置に形成されている。すなわち、回動規制突起15cは、前後方向におけるナット部材15の一部に形成されている。本形態では、上下方向における回動防止突起15aの厚さと、前後方向における回動規制突起15cの厚さと、円筒部15bの径方向の厚さ(肉厚)とが略等しくなっている。
【0042】
円筒部15bの左上端部分に形成される回動規制突起15cの上面、および、円筒部15bの左下端部分に形成される回動規制突起15cの下面は、上下方向に直交する平面となっている。回動規制突起15cの左面は、左右方向に直交する平面となっている。円筒部15bの左上端部分に形成される回動規制突起15cの上面は、上下方向において大径部15fの上端と同じ位置に配置されている。円筒部15bの左下端部分に形成される回動規制突起15cの下面は、上下方向において大径部15fの下端と同じ位置に配置されている。
【0043】
回動規制突起15cの左端面は、左右方向において大径部15fの左端と同じ位置に配置されている。円筒部15bの左上端部分に形成される回動規制突起15cの左下端部、および、円筒部15bの左下端部分に形成される回動規制突起15cの左上端部には、ナット部材15のひけを防止するための肉抜き用の凹部15xが形成されている。そのため、回動規制突起15cと回動防止突起15aとは繋がっていない。
【0044】
ゲート痕15dは、円筒部15bから右側に突出している。具体的には、ゲート痕15dは、大径部15fの右端から右側に突出しており、上下方向における大径部15fの中心に繋がっている。ゲート痕15dは、たとえば、前後方向から見たときの形状が長方形状となる平板状に形成されている。ゲート痕15dの厚さ方向は、前後方向と一致している。ゲート痕15dの前面および後面は、前後方向に直交する平面となっている。ゲート痕15dの厚さは、回動規制突起15cの厚さよりも薄くなっている。ゲート痕15dの前面は、前後方向において大径部15fの前端と同じ位置に配置されている。すなわち、ゲート痕15dは、前後方向におけるナット部材15の中心位置に形成されている。
【0045】
回動防止突起15aは、上述のように、大径部15fから左側に向かって突出している。また、上述のように、前後方向において、回動防止突起15aの前端面と大径部15fの前端とが同じ位置に配置され、回動防止突起15aの後端面と大径部15fの後端とが同じ位置に配置されている。すなわち、ゲート痕15dは、前後方向において回動防止突起15aが形成される範囲の中に配置されている。
【0046】
上述のように、スライダ16の外形は、略直方体状となっている。スライダ16の側面は、前後方向または左右方向に直交する平面となっている。スライダ16には、2本のガイド軸11が挿通されるガイド穴16eが形成されている。また、上述のように、スライダ16には、ナット配置凹部16aが形成されている。ナット配置凹部16aは、スライダ16の右側面から左側に向かって窪むように形成されている。ナット配置凹部16aの右端は、ナット配置凹部16aにナット部材15を入れるための開口部16fとなっている。
【0047】
ナット配置凹部16aには、上述のように、規制壁面16c、16dが形成されている。規制壁面16c、16dは、上下方向に直交する長方形状の平面である。規制壁面16cは、ナット配置凹部16aの上面を構成している。規制壁面16dは、ナット配置凹部16aの下面を構成している。すなわち、ナット配置凹部16aの上下方向の両端には、規制壁面16c、16dが形成されている。規制壁面16c、16dの左端は、左右方向に直交する平面である左壁面16gに繋がっている。規制壁面16c、16dの前端および左壁面16gの前端は、前後方向に直交する平面である前壁面16hに繋がり、規制壁面16c、16dの後端および左壁面16gの後端は、前後方向に直交する平面である後壁面16j(図6参照)に繋がっている。
【0048】
規制壁面16cの左右方向の幅は、規制壁面16dの左右方向の幅よりも広くなっている。規制壁面16cの右端は、スライダ16の右側面に形成されている。規制壁面16dの右端は、スライダ16の右側面よりも左側に配置されている。規制壁面16cと規制壁面16dとの上下方向の距離は、円筒部15bの左上端部分に形成される回動規制突起15cの上面と円筒部15bの左下端部分に形成される回動規制突起15cの下面との上下方向の距離よりも長くなっている。
【0049】
前壁面16hと後壁面16jとの前後方向の距離は、ナット部材15の前後方向の長さよりも長くなっている。前壁面16hが形成されるスライダ16の前面部、および、後壁面16jが形成されるスライダ16の後面部には、送りねじ軸5aが配置される配置穴16kと、スライダ16をナット部材15に組み込む際に送りねじ軸5aを通過させるための切欠き16nとが形成されている。配置穴16kおよび切欠き16nは、スライダ16の前面部およびスライダ16の後面部を前後方向で貫通している。配置穴16kは、左右方向の略中心位置に形成されている。切欠き16nは、配置穴16kとスライダ16の右側面とを繋ぐ直線状に形成されている。
【0050】
また、ナット配置凹部16aには、上述のように、回動防止溝16bが形成されている。回動防止溝16bは、左側に向かって窪んでいる。具体的には、回動防止溝16bは、左壁面16gから左側に向かって窪んでいる。回動防止溝16bは、前後方向を長手方向とする角溝状に形成されており、回動防止溝16bの上面および下面は、上下方向に直交する平面となっている。回動防止溝16bの上面と回動防止溝16bの下面との上下方向の距離は、回動防止突起15aの凸曲面15vの上端と凸曲面15wの下端との上下方向の距離とほぼ等しくなっている。すなわち、回動防止溝16bの上面と回動防止溝16bの下面との上下方向の距離は、回動防止突起15aの、上下方向の幅が最も広い部分の上下方向の幅とほぼ等しくなっている。
【0051】
回動防止溝16bの右端部は、凸曲面16p、16rとなっている(図7図8参照)。回動防止溝16bの上面は、凸曲面16pを介して左壁面16gに滑らかに繋がり、回動防止溝16bの下面は、凸曲面16rを介して左壁面16gに滑らかに繋がっている。本形態では、凸曲面16pの上端16tが回動防止溝16bの右端の上端となっており、凸曲面16rの下端16uが回動防止溝16bの右端の下端となっている。回動防止溝16bの前後方向の幅は、ナット配置凹部16aの前後方向の幅よりも狭くなっている。すなわち、回動防止溝16bは、前後方向におけるナット配置凹部16aの一部に形成されている。回動防止溝16bは、ナット配置凹部16aの後ろ側部分に形成されている。回動防止溝16bの後端は、後壁面16jに形成されている。
【0052】
回動防止溝16bの前側には、前後方向を長手方向とする角溝状の隣接溝16sが形成されている(図6参照)。隣接溝16sは、左壁面16gから左側に向かって窪んでいる。隣接溝16sの後端は、回動防止溝16bの前端に繋がっている。隣接溝16sの前端は、前壁面16hに形成されている。隣接溝16sの上下方向の幅は、回動防止溝16bの上下方向の幅よりも広くなっている。上下方向における隣接溝16sの中心は、上下方向における回動防止溝16bの中心と上下方向において一致している。
【0053】
ナット部材15にスライダ16が組み込まれた状態では、図2に示すように、回動防止溝16bに回動防止突起15aが嵌っている。この状態では、送りねじ軸5aの軸ぶれ等に起因するナット部材15の動作不良を防止するために、円筒部15bの左端と左壁面16gとの間、回動規制突起15cの左端面と左壁面16gとの間、円筒部15bの左上端部分に形成される回動規制突起15cと規制壁面16cとの間、および、円筒部15bの左下端部分に形成される回動規制突起15cと規制壁面16dとの間に隙間が形成されている。
【0054】
なお、本形態の直線駆動装置1が所定の上位装置に組み込まれると、スライダ16は、前側に向かって付勢される。上述のように、円筒部15bの後端面には凸部15hが形成されており、凸部15hによって、ナット部材15の後端面には、段差が形成されている。本形態では、ナット部材15の後端面に形成される段差を用いて、ナット部材15の後端側に形成されるバリと後壁面16jとの干渉等が防止されている。
【0055】
直線駆動装置1を組み立てる際には、送りねじ軸5aに取り付けられたナット部材15に対して、スライダ16を右方向に相対的に移動させることで、ナット配置凹部16aにナット部材15を配置して、ナット部材15にスライダ16を組み込む。このときには、回動防止溝16bに回動防止突起15aが嵌るように、スライダ16を右方向に相対的に移動させる。
【0056】
回動防止溝16bに回動防止突起15aが嵌まる前の状態では、2個の回動規制突起15cと規制壁面16c、16dとによって、送りねじ軸5aを回動の中心としたスライダ16に対するナット部材15の回動範囲が規制される。具体的には、ナット部材15の上側に形成される回動規制突起15cと規制壁面16cとによって、図7図8の反時計回りの方向(以下、この方向を「反時計方向」とする。)のナット部材15の回動範囲が規制され(図7参照)、ナット部材15の下側に形成される回動規制突起15cと規制壁面16dとによって、図7図8の時計回りの方向(以下、この方向を「時計方向」とする。)のナット部材15の回動範囲が規制される(図8参照)。
【0057】
本形態では、回動防止溝16bに回動防止突起15aが嵌っていない状態であって、上側に形成される回動規制突起15cが規制壁面16cに接触している状態では、図7に示すように、傾斜面15nの左端15tは、凸曲面16pの上端16tよりも下側に配置されている。すなわち、この状態では、傾斜面15nの左端15tは、回動防止溝16bの右端の上端よりも下側に配置されている。
【0058】
また、回動防止溝16bに回動防止突起15aが嵌っていない状態であって、下側に形成される回動規制突起15cが規制壁面16dに接触している状態では、図8に示すように、傾斜面15pの左端15uは、凸曲面16rの下端16uよりも上側に配置されている。すなわち、この状態では、傾斜面15pの左端15uは、回動防止溝16bの右端の下端よりも上側に配置されている。
【0059】
また、回動防止溝16bに回動防止突起15aが嵌っていない状態であって、上側に形成される回動規制突起15cが規制壁面16cに接触している状態でも、傾斜面15pの左端15uは、凸曲面16rの下端16uよりも上側に配置され、回動防止溝16bに回動防止突起15aが嵌っていない状態であって、下側に形成される回動規制突起15cが規制壁面16dに接触している状態でも、傾斜面15nの左端15tは、凸曲面16pの上端16tよりも下側に配置されている。
【0060】
すなわち、本形態では、前後方向から見たときに、回動防止溝16bに回動防止突起15aが嵌っていない状態では、規制壁面16c、16dによって規制されるナット部材15の回動範囲の全域において、傾斜面15nの左端15tは、回動防止溝16bの右端の上端である凸曲面16pの上端16tよりも下側に配置され、傾斜面15pの左端15uは、回動防止溝16bの右端の下端である凸曲面16rの下端16uよりも上側に配置されている。なお、本形態では、ナット部材15にスライダ16を組み込んだ後に、スライダ16のガイド穴16eにガイド軸11を通して、ガイド軸11をフレーム8に固定する。
【0061】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ナット部材15の回動防止突起15aの先端側部分の上側面は、左側に向かうにしたがって下側に向かって傾斜する傾斜面15nとなっており、回動防止突起15aの先端側部分の下側面は、左側に向かうにしたがって上側に向かって傾斜する傾斜面15pとなっている。また、本形態では、回動防止溝16bに回動防止突起15aが嵌っていない状態では、規制壁面16c、16dによって規制されるナット部材15の回動範囲の全域において、傾斜面15nの左端15tは、回動防止溝16bの右端の上端である凸曲面16pの上端16tよりも下側に配置され、傾斜面15pの左端15uは、回動防止溝16bの右端の下端である凸曲面16rの下端16uよりも上側に配置されている。
【0062】
そのため、本形態では、ナット部材15に対してスライダ16を右側に相対的に移動させてスライダ16をナット部材15に組み込む際に、ナット部材15がスライダ16に対して反時計方向に回動していても、傾斜面15nを凸曲面16pに接触させることが可能になるとともに、ナット部材15がスライダ16に対して時計方向に回動していても、傾斜面15pを凸曲面16rに接触させることが可能になる。
【0063】
したがって、本形態では、ナット部材15に対してスライダ16を右側に相対的に移動させてスライダ16をナット部材15に組み込む際に、ナット部材15がスライダ16に対して回動していても、回動防止突起15aの先端部を回動防止溝16bの中に円滑に案内することが可能になる。その結果、本形態では、回動防止突起15aと回動防止溝16bとによって、スライダ16に対するナット部材15の回動が防止されていても、スライダ16をナット部材15に容易に組み込むことが可能になる。
【0064】
本形態では、回動規制突起15cは、ナット部材15の左側部分に形成されている。そのため、本形態では、規制壁面16dの左右方向の幅が狭くなっていても、ナット部材15に対してスライダ16を右側に相対的に移動させてスライダ16をナット部材15に組み込む際に、円筒部15bの左下端部分に形成される回動規制突起15cと規制壁面16dとによって、スライダ16に対するナット部材15の回動範囲を規制することが可能になる。したがって、本形態では、スライダ16をナット部材15に容易に組み込むことが可能であっても、スライダ16の形状の自由度を高めることが可能になる。
【0065】
本形態において、ナット部材15の強度を確保するためには、ナット部材15の前後方向の長さをある程度長くする必要があるが、本形態では、回動防止突起15aは、前後方向におけるナット部材15の一部に形成されている。そのため、本形態では、ナット部材15の前後方向の長さが比較的長くなっていても、回動防止突起15aの前後方向の長さを短くすることが可能になる。したがって、本形態では、ナット部材15が樹脂成形品であっても、前後方向におけるナット部材15の全域に回動防止突起15aが形成されている場合と比較して、回動防止突起15aを精度良く形成することが可能になる。
【0066】
また、本形態では、前後方向において回動防止突起15aが形成される範囲の中にゲート痕15dが配置されているため、前後方向において回動防止突起15aが形成される範囲からずれた位置にゲート痕15dが形成されている場合と比較して、回動防止突起15aを精度良く形成することが可能になる。
【0067】
本形態では、回動防止溝16bは、前後方向におけるナット配置凹部16aの一部に形成されている。そのため、本形態では、スライダ16が樹脂成形品であっても、前後方向におけるナット配置凹部16aの全域に回動防止溝16bが形成されている場合と比較して、回動防止溝16bを精度良く形成することが可能になる。
【0068】
本形態では、回動規制突起15cは、前後方向におけるナット部材15の一部に形成されている。そのため、本形態では、ナット部材15の前後方向の長さが比較的長くなっていても、前後方向における回動規制突起15cの厚みを薄くして、ナット部材15の肉厚のばらつきを抑制することが可能になる。したがって、本形態では、ナット部材15が樹脂成形品であっても、また、ナット部材15に回動規制突起15cが形成されていても、ナット部材15のヒケを抑制することが可能になる。
【0069】
特に本形態では、上下方向における回動防止突起15aの厚さと、前後方向における回動規制突起15cの厚さと、円筒部15bの径方向の厚さ(肉厚)とが略等しくなっているため、ナット部材15が樹脂成形品であっても、また、ナット部材15に回動規制突起15cが形成されていても、ナット部材15のヒケを効果的に抑制することが可能になる。
【0070】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0071】
上述した形態において、円筒部15bの左端から左側に突出する回動防止突起15aに代えて、円筒部15bの後端面から左側に突出する回動防止突起15aが形成されていても良い。この場合には、回動防止突起15aは、円筒部15bの後端面よりも後ろ側に形成されている。また、円筒部15bの左端から左側に突出する回動防止突起15aに代えて、円筒部15bの前端面から左側に突出する回動防止突起15aが形成されていても良いし、円筒部15bの後端面と前端面との2箇所から左側に突出する回動防止突起15aが形成されていても良い。また、上述した形態において、回動防止突起15aは、前後方向におけるナット部材15の全域に形成されていても良い。この場合には、ナット配置凹部16aに隣接溝16sが形成されずに、前後方向におけるナット配置凹部16aの全域に回動防止溝16bが形成される。
【0072】
上述した形態において、スライダ16に対するナット部材15の回動範囲を規制することができるのであれば、回動規制突起15cは、ナット部材15の右側部分に形成されていても良いし、左右方向におけるナット部材15の中心部分に形成されていても良い。また、上述した形態において、回動規制突起15cは、ナット部材15の前端側または後端側に形成されていても良い。さらに、上述した形態において、回動規制突起15cは、前後方向におけるナット部材15の全域に形成されていても良い。また、上述した形態において、ナット部材15の一部分を規制壁面16c、16dに接触させることで、スライダ16に対するナット部材15の回動範囲を規制することができるのであれば、ナット部材15に回動規制突起15cが形成されていなくても良い。
【0073】
上述した形態において、ナット配置凹部16aの上面または下面の一方のみが、スライダ16に対するナット部材15の回動範囲を規制するための規制壁面となっていても良い。すなわち、ナット配置凹部16aの上下方向の一端のみに規制壁面が形成されていても良い。この場合には、たとえば、ナット配置凹部16aの上面のみが規制壁面となっており、円筒部15bの左上端部分と右上端部分との2箇所に回動規制突起15cが形成されている。
【0074】
上述した形態において、回動防止溝16bの右端部に凸曲面16p、16rが形成されていなくても良い。この場合には、回動防止溝16bの上面の右端が回動防止溝16bの右端の上端となっており、回動防止溝16bの下面の右端が回動防止溝16bの右端の下端となっている。また、この場合には、回動防止溝16bに回動防止突起15aが嵌っていない状態では、規制壁面16c、16dによって規制されるナット部材15の回動範囲の全域において、傾斜面15nの左端15tは、回動防止溝16bの上面の右端よりも下側に配置され、傾斜面15pの左端15uは、回動防止溝16bの下面の右端よりも上側に配置されている。
【0075】
上述した形態において、送りねじ軸5aに取り付けられたナット部材15に対して、スライダ16を下側に相対的に移動させることで、ナット部材15にスライダ16が組み込まれるように、ナット部材15およびスライダ16が構成されていても良い。この場合には、回動防止突起15aは、上側に突出している。また、ナット配置凹部16aにおいて、回動防止溝16bが上側に向かって窪み、ナット配置凹部16aの下端が開口部16fとなっている。また、規制壁面16c、16dは、ナット配置凹部16aの左右方向の側面を構成している。この場合には、上下方向が第1方向となり、左右方向が第2方向ととなり、上側が第3方向側となり、下側が第4方向側となる。
【0076】
上述した形態では、傾斜面15n、15pは平面であるが、傾斜面15n、15pは曲率半径の大きい凸曲面であっても良い。また、上述した形態では、ガイド軸11によって、スライダ16のフレーム8に対する回動が防止されているが、スライダ16の一部がフレーム8に接触することによって、スライダ16のフレーム8に対する回動が防止されていても良い。さらに、上述した形態において、前後方向において回動防止突起15aが形成される範囲からずれた位置にゲート痕15dが形成されていても良い。また、上述した形態では、回転軸5の一部が送りねじ軸5aとなっているが、回転軸5と別体で形成された送りねじ軸5aが回転軸5に固定されていても良い。また、上述した形態において、モータ2は、ステッピングモータ以外のモータであっても良い。
【符号の説明】
【0077】
1 直線駆動装置
2 モータ
5a 送りねじ軸
15 ナット部材
15a 回動防止突起
15b 円筒部
15c 回動規制突起
15d ゲート痕
15h 凸部
15n 傾斜面(第1傾斜面)
15p 傾斜面(第2傾斜面)
15t 左端(第1傾斜面の第3方向端)
15u 左端(第2傾斜面の第3方向端)
16 スライダ
16a ナット配置凹部
16b 回動防止溝
16c、16d 規制壁面
16f 開口部
16t 上端(回動防止溝の第4方向端の第5方向端)
16u 下端(回動防止溝の第4方向端の第6方向端)
X 送りねじ軸の軸方向
Y 第1方向
Y1 第4方向
Y2 第3方向
Z 第2方向
Z1 第5方向
Z2 第6方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8