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特開2022-45508運動状況把握支援装置、並びに運動状況把握支援プログラム。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045508
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】運動状況把握支援装置、並びに運動状況把握支援プログラム。
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20220314BHJP
   G16H 20/30 20180101ALI20220314BHJP
【FI】
A61H1/02 R
G16H20/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151133
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】517115857
【氏名又は名称】高橋 智子
(71)【出願人】
【識別番号】520348750
【氏名又は名称】木下 修 グレゴリオ
(71)【出願人】
【識別番号】311007132
【氏名又は名称】原田 忠則
(74)【代理人】
【識別番号】100102680
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 忠則
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智和
(72)【発明者】
【氏名】木下 修 グレゴリオ
(72)【発明者】
【氏名】原田 忠則
【テーマコード(参考)】
4C046
5L099
【Fターム(参考)】
4C046AA22
4C046AA33
4C046AA47
4C046AA48
4C046BB08
4C046CC01
4C046EE04
4C046EE23
4C046EE25
4C046EE32
5L099AA21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】歩行リハビリをする障碍者等の歩行状況を、遠隔地に居る理学療法士等が直感的に認識できるようにする装置を提供する。
【解決手段】歩行情報記録装置110は、障碍者等の携行測定端末116によって測定された歩行訓練時の加速度データと位置データとを時系列歩行情報111として記録する。表示制御部107は、歩行情報記録装置の記録を参照し、特定の時間幅に限り横軸時間軸の加速度変位グラフを加速度変位表示部103に表示させる。また、歩行訓練全体に渡る歩行軌跡を歩行軌跡表示部104で表示させるとともに、表示される加速度変位グラフの時間幅に居た区間を同歩行軌跡上に強調表示させる。更に加速度変位グラフの始点を表示開始時刻操作指定部105で指定された時刻にする。理学療法士は表示開始時刻を連続的に変化させれば、訓練環境とそのデータとを一体的に直感できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ひとが歩行する際に略体幹について測定された少なくとも2方向についての時系列加速度情報と、該歩行を行った時系列位置情報と、をひとつの情報単位とする時系列歩行情報を記録する歩行情報記録装置からひとつの時系列歩行情報を特定して取り出す特定時系列歩行情報取得部と、
所定時間幅の加速度の変位を表示する加速度変位表示部と、
歩行軌跡を表示するとともに、歩行軌跡の一部を弁別視認可能に表示する歩行軌跡表示部と、
該特定時系列歩行情報取得部で取り出した時系列歩行情報のうち、操作者から時系列加速度情報表示開始時刻の指定を受ける表示開始時刻操作指定部と、
該表示開始時刻指定部での指定に基づく開始時刻からの加速度変位を該加速度変位表示部に表示させるとともに、該加速度変位表示部が表示する時間幅に対応する時系列位置を該歩行軌跡表示部に強調視認可能に表示するように制御する表示制御部と、
を具備することを特徴とする運動状況把握支援装置。
【請求項2】
更に、操作者から前記加速度変位表示部が加速度の変位を表示する時間幅の指定を受ける表示時間幅操作指定部、
を具備し、
前記加速度変位表示部は該表示時間幅操作指定部が受けた指定時間幅での加速度変位を表示するようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の運動状況把握支援装置。
【請求項3】
更に、前記歩行軌跡表示部は歩行軌跡に地図を重畳して表示させることを特徴とする、請求項1に記載の運動状況把握支援装置。
【請求項4】
前記表示開始時刻指定部は、指定値を連続的に変えられることを特徴とする請求項1に記載の運動状況把握支援装置。
【請求項5】
コンピュータに請求項1の運動状況把握支援装置として機能させる運動状況把握支援プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば遠隔地にて運動機能の維持・向上を望む者等がする歩行活動の状況を理学療法士等に対して的確かつ迅速に把握させる運動状況把握支援装置等に関する。
【0002】
詳しくは、障碍者は勿論、運動機能の維持・向上を望む者が歩行・走行を主とする運動訓練時に計測した加速度情報と位置情報とを記録する歩行情報記録装置から情報を取得して、これら加速度情報と位置情報とを併せて表示する装置等であって、加速度変位表示をした時間幅の間に居た位置が、位置情報に基づいて生成された軌跡のうち、どの区間にあたるのかを一瞥できるようにしたものに係る。
【背景技術】
【0003】
(1. 背景となる社会的現象)
我が国において介護を要する人口は年々増加し、この17年間で要介護認定者数は2.9倍、年間平均で約14万人も増加している。これに伴いリハビリ施術に要する人数も増加している。既に、全産業の有効求人倍率が2.3倍であるのに対し介護分野における有効求人倍率は実に3.5倍にも達しており、介護分野での大幅な労働人口不足が大きな社会問題となっている。今後、更なる高齢者や障碍者の増加に伴い、この問題の深刻化が予想される。
【0004】
この問題に対し、確かに国は2000年度より介護保険制度を施行、介護分野の従事者に対する賃金補助などを行っている。しかし、介護分野の生産性効率向上を見据えたIT活用や、要介護者を減少させる具体的かつ有効な施策が見られない。
【0005】
即ち、要介護障碍者・高齢者数の急増にも拘らず、我が国の若年者人口の減少など諸般の事情を鑑みれば、今後介護・支援労働人口が然程の伸びを示すことは望めない。よって、別の視点からの介護体制の拡充が求められていると認められる。
【0006】
近時はこれに加え、新型コロナウイルス感染リスク回避のため、リハビリテーションを必要とする要介護障碍者・高齢者は、訪問リハビリ・介護施設リハビリいずれの場面でも、リハビリサービスを受けることが難しくなっている。
【0007】
また、外出自粛のため、高齢者等の運動不足に起因する障碍の発生が多々認められるようになってきている。加えて、マスコミにより高齢化社会への不安が煽られるなか、現在の運動機能の維持・向上に関心を寄せる若者も多くみられるようになってきている。
【0008】
他方、発明者等は、次のような点に気づいている。即ち、施設における運動訓練で、被術者は自尊心を重視するあまり、普段の実力以上の運動を見せる傾向にある。しかし、一旦施設から離れれば虚栄を張る必要がなく、実力通りかそれ未満の活動しかしなくなってしまう。暫く運動訓練から離れていた高齢者・障碍者が実は寝たきりになっていたということが散見されるのは、このような心的現象による当然の結果と解するのが相当である。
【0009】
(2. 背景技術を探る視点)
以上のような背景から発明者等は、施設に居ない被術者には測定器を携帯してもらい、ネットワークを介して測定結果を取得して、ここから被術者の現状を把握するシステムを検討することとした。
【0010】
ところで、歩行状況を把握するにあたっては、その者の体幹の加速度を把握するのが有効であることが知られている。もっとも、トレーニングに最適化された施設とは異なり、屋外環境であると障碍物が有るなど、歩行環境に影響を与える事情が存在し、測定される加速度等にも大きく影響することになる。よって、リモート環境における運動訓練を理学療法士等が正しく把握するためには、単に体幹加速度ばかりでなく、現実に歩行している場所がどのようなところなのかを把握する必要がある。そして、場所の概要を把握したうえで、その位置ではどの程度の速さで歩いているのかを掴む必要がある。
【0011】
言い換えれば、理学療法士が知りたいことは、被術者の加速度情報と、場所情報、更に大まかな歩速状況とであって、これらを同時に把握する必要があるということになる。
【0012】
(3. システムに対する技術的要請の概要)
上記(1. 背景となる社会的現象)並びに(2. 背景技術を探る視点)のような事情から、被術者等が施設以外の私的生活環境(以下、「リモート環境」ということにする。)における運動訓練を実現するには、以下のようなシナリオを実現するシステムの支援が求められる。即ち、
(1) 被術者等は施設以外の私的生活において、携帯可能な測定装置を持ち歩き、通常の生活をするなかで理学療法士などが提示する訓練課題に応えて歩行訓練を行う。ここで、測定装置からは体幹の加速度情報と、環境の概要を示す場所情報乃至位置情報を得られるものとする。
(2) 被術者等が歩行することにより得られた情報を別の場所で理学療法士が閲覧できる。
(3) 理学療法士は、閲覧した測定結果の特徴から運動機能の現状を把握して、新たな適切な運動課題を提案する。この際、その測定がどのような環境で行われたのかについての概要を知ることができる。
(4) また、理学療法士は1回の歩行運動訓練の中での体調変化を把握するため、開始から終了までの運動訓練環境を一瞥できることが望ましい。
【0013】
(4. 背景となる技術)
上記シナリオに類する技術的要請に着目すると、いくつかの有用な提案がある。
【0014】
たとえば特許文献1「車両挙動再現方法およびシステム」には、適用される産業分野は異なるものの、GPS測位情報と、加速度を含む車両挙動情報とをシステムで取り込み、加速度の状況によってその環境を図示する技術が開示されている。
【0015】
また、特許文献2「通信システム、管理装置、端末、方法、プログラム、およびデータ構造」にも、位置情報と加速度情報とを合わせ、環境を把握しつつ運動状況を把握できる技術が開示されている。
【0016】
特許文献3「酸素ボンベ用カード、呼吸疾患患者のためのリハビリテーション支援システム」には、疾患のために体力低下した患者が長期に亘って身体の運動などを行って体力を向上させようとするリハビリテーションを支援することを前提として、リモート環境においてリハビリテーション状況を把握すべきとする問題意識が開示されている。加えて、これを把握するべき療法士等が電子カルテの一部として診療にも活用できるように、センターの画像生成部で、歩行経路に地図情報を重畳して提示する技術が開示されている。
【0017】
特許文献4「運動解析プログラム」には、運動者に装着された3次元加速度センサーによって測定された、運動者が所定距離走行した時の3次元の加速度データを解析する運動解析プログラムが開示されている。そして、走行マップを併せて表示できるように工夫がされている。具体的にこの技術では、読み出した3次元の加速度データに基づいて、設定した測定開始時点からの左右両足のうちの一方の足の着地時、一方の足の離地時、他方の足の着地時、及び他方の足の離地時を認識する着地離地認識をしたうえで、その一歩一歩から歩速を得るものとしている。
【0018】
他に非特許文献1には、スマートフォンを利用して加速度情報を取得して、これをリサージュによって表示する技術が開示されている。
【0019】
なお、参考ではあるが、非特許文献2には、運動機能の検査として基準とされているTUG(Time Up and Go Test)について、その結果は歩行速度と高い相関がある旨の報告がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2008-204304号公報
【特許文献2】特開2008-276353号公報
【特許文献3】特開2007-125425号公報
【特許文献4】特開2015-071000号公報
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】佐藤健斗、「スマートフォン内蔵センサーを利用した簡易な動作評価」、日本義肢装具学会誌、Vol.35、No.1、2019、p.7~10、インターネット(URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspo/35/1/35_7/_pdf)
【非特許文献2】村田伸、外6名、「虚弱高齢者におけるTimed Up and Go Test,歩行速度,下肢機能との関連」、理学療法科学、Vol.25、No.4、2010、p.513~516、インターネット(URL: https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/25/4/25_4_513/_pdf/-char/ja)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
(1. 特許文献1に開示された発明に基づく課題)
特許文献1に開示に技術によれば、確かに加速度の測定値とその加速度が得られた環境とを一瞥して把握することができる。よって、この技術をそのままリハビリテーションに適用することができないわけではない。しかし、特異な加速度を検出したときにその環境がどのようなところであったかを把握できたとしても、それが一回の歩行リハビリのなかにあって、どのようなシナリオで生じたのかを一瞥で把握できるわけではない。即ち、特異な加速度を検出したとしても、その環境に至る前後の状況が異なれば、歩行訓練においてそこでの環境は異なる意味を持つ。たとえば、加速度の変化が僅少であり、歩行停止と認められる状態が続く場合、ここまで早歩きで来たから疲れて休んでいるのか、単に通常歩行に疲れて休んでいるのか、信号待ちをしているのか、踏み切り待ちをしているのか等、一瞥して把握できるわけではない点に課題がある。
【0023】
(2. 特許文献2に開示された発明に基づく課題)
特許文献2に開示された技術によっても、加速度の測定値とその加速度が得られた環境とを一瞥して把握することができる。よって、この技術もそのままリハビリテーションに適用することができないわけではない。しかし、一の区分領域から別の区分領域に移るなどしたときに、その連続性を加味しているわけではない。この点は屋外のように連続して環境が変化するような場面での前後も一瞥して把握できるようにする際には更なる工夫が必要になる。
【0024】
(3. 特許文献3に開示された発明に基づく課題)
特許文献3に開示された技術によってはリモート環境における被術者等の追跡には極めて有用ではあるものの、加速度情報は酸素ボンベカートから得るのであって、これを積分して位置情報を取得するためのものなので、歩行姿勢等の状況が把握できるわけではない。また、そのため、歩行中にどのように姿勢が崩れていくものなのかを把握することもできるわけではない。屋外のように連続して環境が変化するような場面で姿勢も含めて一瞥してリハビリテーション状況を把握する際には更なる工夫が必要になる。
【0025】
(4. 特許文献4に開示された発明に基づく課題)
特許文献4に開示された技術によれば、どのような場所を歩行したのかについて把握でき、かつそのときの加速度を把握できるので、これをリモート環境で把握しようとすると、場所に応じた運動状況を把握することができるようになる。
【0026】
しかし、ひとの歩行に標準といえるようなものはなく、特に障碍者の歩行では鉛直方向の加速度変位が不明瞭であるのに加え、用いる杖の影響から、水平方向の加速度データを加味したとしても一歩をパターンから判別することは難しい。よって歩速を得るには更なる工夫が必要となる。
【0027】
(5. 非特許文献1に係る開示された技術に基づく課題)
非特許文献1に開示された技術によれば、手軽に被術者の姿勢を含めた3次元で加速度を取得でき、これを所定時間内にXYZいずれかを選んでリサージュ図形にしてその体幹変動を把握することができる。ここでスマートフォンを用いていることから、加速度データに加え、位置データを取得し、これをサーバなどに送信することについては想到しうる。しかし、取得した位置データをどのように理学療法士等に見せれば「リモート環境」におけるリハビリテーション状況を把握しやすくなるのかということにまで想到させる視点がなく、更なる工夫が必要になる。
【0028】
(6. 非特許文献2に係る開示された技術に基づく課題)
非特許文献2によれば、歩行速度を把握することによりリハビリテーションの効果測定に意義があることが実証されている。しかし、5m歩行を中心に検討がされており、リモート環境における長時間継続する歩行については不明なままとなっている。これは、また、前述(1. 背景となる社会的現象)で示した通り、自尊心の影響で無理にでも出したチャンピョンデータとでもいうべきものとなっている可能性もあり、リモート環境での更なる研究が待たれる。この研究のための支援装置も登場が期待される。
【課題を解決するための手段】
【0029】
(1. 課題を解決するための手段の概要)
本発明は、上記課題の低減を図るものであり、その目的とするところは、被術者等が加速度測定情報・測位情報を取得できる携行可能な測定器から得られた時系列歩行情報に基づいて、加速度を中心とした歩行状況を一瞥でき、並びにその歩行状況がどの環境で得られたものなのか、歩行足跡を一瞥できる運動状況把握支援装置を提供することにある。
【0030】
(2. 本願において用いる文言の定義)
課題を解決するための手段に言及するに先立ち、説明の便宜上、本願(明細書、特許請求の範囲、図面)において用いる文言の定義を示す。
【0031】
「障碍者等」とは、一時的・慢性的を問わず、また、事故・加齢等の原因を問わず、特に歩行に関する運動機能が低下した者のことをいう。
【0032】
「被術者等」とは、リハビリテーションを受ける者のことをいい、通常は障碍者等と一致する。もっとも、運動不足などにより運動機能の低下を懸念する者などが自分の意思でリハビリテーション同等のトレーニングを受けることがあり、このような者も被術者に含まれるものとする。
【0033】
「時系列加速度情報」とは、特定の方向で測定される加速度値であって、時間をおいて複数回測定された情報集合をいう。
【0034】
「時系列位置情報」とは、場所を表す情報であって、時間をおいて複数回測定された情報集合をいう。
【0035】
「時系列歩行情報」とは、少なくとも上記時系列加速度情報と時系列位置情報とを含む情報集合をいう。
【0036】
「弁別視認可能」とは、表示を見る者が、全体にされた表示のうち、一定の範囲乃至幅をもつ一部を弁別して視認できることをいう。
【0037】
(3. 課題を解決するための手段の説明)
次に、課題を解決するための手段について説明する。いずれの発明も、被術者等が携行した測定装置から得られた時系列歩行情報を、理学療法士等がグラフィカルに一瞥すればその概要を把握できるようになっている。
【0038】
(3.1. 請求項1に記載の発明について)
請求項1に記載の発明は、特定時系列歩行情報取得部と、加速度変位表示部と、歩行軌跡表示部と、表示開始時刻操作指定部と、表示制御部とを具備する運動状況把握支援装置に係る。
【0039】
ここで、特定時系列歩行情報取得部は、歩行情報記録装置からひとつの時系列歩行情報を特定して取り出す。歩行情報記録装置には、少なくともひとつの時系列歩行情報が記録されている。また、ここに記録されている時系列歩行情報を構成する時系列加速度情報は、ひとが歩行する際に略体幹について測定された少なくとも2方向についての加速度情報が含まれている。「2方向」については、必ずしも直交する必要はなく、同一ではない方向であれば構わない。下肢の運動機能に障碍がある場合には、歩行の際に鉛直方向よりも他の方向の加速度成分が強く表れることがあり、「少なくとも2方向」としたことは、このような非鉛直方向成分の加速度を取り出し、歩行検出をし易くする点に意義がある。
【0040】
加速度変位表示部は、所定時間幅内の加速度の変位を表示する。すなわち加速度変位表示部は、有限の時間幅で、加速度の座標軸をもった、グラフを表示できるようになっている。そして、所定時間幅としているので、一回の歩行訓練で取得できた全時系列加速度情報がこの時間幅より長い場合には、そのうちの一部を表示するように作用する。
【0041】
歩行軌跡表示部は、特定時系列歩行情報が含む時系列位置情報を歩行軌跡として表示するようになっている。即ち、一回の歩行訓練で取得できた時系列位置情報の全体が2次元の面上にプロットされて表示することができるようになっている。ここで歩行軌跡表示部は、一回の歩行訓練で歩行した位置の全軌跡が一瞥可能に表示するように作用する。
【0042】
表示開始時刻操作指定部は、上記加速度変位表示部で表示をする時系列加速度情報は、一回の歩行訓練で取得できた全時系列加速度情報のうち、どの時点からとするかについて、操作者からの指定を受けることができるようになっている。
【0043】
表示制御部は、上記表示開始時刻指定部で指定された開始時刻からの加速度変位を上記加速度変位表示部に表示させるようになっている。また、歩行軌跡が表示される上記歩行軌跡表示部に、上記加速度変位表示部が表示する幅の各時刻にどの位置に居たのかを視認可能にさせられるようになっている。
【0044】
(3.2. 請求項2に記載の発明について)
請求項2に記載の発明は、更に表示時間幅操作指定部を具備する運動状況把握支援装置に係る。
【0045】
表示時間幅操作指定部は、操作者から前記加速度変位表示部が加速度の変位を表示する時間幅の指定を受けることができるようになっている。そして、前記加速度変位表示部は該表示時間幅操作指定部が受けた指定時間幅の加速度変位を表示することができるようになっている。
【0046】
即ち、表示時間幅操作指定部と上記加速度変位表示部とは連携し、特定時系列歩行情報取得部で得る全時系列歩行情報のうちから切り出す時間区間を特定し、この時間区間が加速度変位表示部のフルスケールとなるように作用する。
【0047】
(3.3. 請求項3に記載の発明について)
請求項3に記載の発明は、歩行軌跡表示部において歩行軌跡に対応する地図を表示するようにした、請求項1に記載の運動状況把握支援装置に係る。
【0048】
即ち、歩行軌跡表示部は、歩行軌跡と、加速度変位表示部で表示されている期間に居た位置のプロットと、地図とが重畳して表示されるようになっている。地図を重畳表示することで、これを閲覧する理学療法士等が被術者等の訓練するリモート環境に不案内であっても、その環境がどのようになっているのかを即時に把握させることができるように作用する。
【0049】
(3.4. 請求項4に記載の発明について)
請求項4に記載の発明は、前記表示開始時刻指定部は、指定値を連続的に変えられるようにした、請求項1に記載の運動状況把握支援装置に係る。
【0050】
表示開始時刻指定部での指定値は、これに基づいて前記加速度変位表示部での表示開始時が定まることころ、これを連続的に変えられるようにしたことは、指定値を変化させたときに加速度変位表示部での表示、並びに歩行軌跡表示部での弁別視認可能な区間が、その着目していたところの近傍にしか表示が移らないように作用する。
【0051】
(3.5. 請求項5に記載の発明について)
請求項5に記載の発明は、コンピュータに記憶させることにより、そのコンピュータを請求項1に記載の運動状況把握支援装置とすることができるようにするプログラムに係る。
【発明の効果】
【0052】
(1. 請求項1に記載の発明の効果)
請求項1に係る発明は、加速度変位表示部に表示されている時間幅の間に、居た場所が歩行軌跡表示部で表示される歩行軌跡上に明示される。このため、立ち戻るなどしない限り、加速度変位表示部に表示されているフルスケールの時間の間に移動した足跡/距離が一瞥できるようになる。加速度変位表示部でフルスケールの時間幅が固定されているのであれば、その足跡は速度を意味することになるので、どの場所においてどの程度の運動機能が発揮されたのかを把握することができるようになる。
【0053】
この際、加速度変位表示部に表示される時間幅を表示開始時刻操作指定部への指定によって変更できるので、順次指定時刻を移しながらその時間幅中での移動範囲を見れば、1回のリハビリテーションのなかで、いつ頃に良いパフォーマンスを出していたのかを容易に把握できるようになる。
【0054】
(2. 請求項2に記載の発明の効果)
請求項2に係る発明は、加速度変位表示部に表示されている時間幅を変更できるようになっている。このため、比較的障碍の程度が軽く歩行の速い者の訓練でも、比較的障碍の程度が深刻で歩行が遅い者の訓練でも、柔軟に対応して状況を把握できるようになる。
【0055】
即ち、時間幅を大きくとれば一回の歩行訓練中の平均速度の推移についてみることができる。これに対し時間幅を小さくとれば、歩行軌跡表示部上で明示された足跡/距離も短くなるが、歩行速度のバラツキ・ムラを把握しやすくできる。
【0056】
バラツキも、運動能力を表すひとつの情報とみることができるので、理学療法士等は更に細やかなトレーニング指導をすることができるようになる。
【0057】
(3. 請求項3に記載の発明の効果)
請求項3に記載の発明は、歩行軌跡表示部上に更に地図情報を重畳する。これにより、リモート環境で被術者が立ち止まったとしても、それが体調に起因するのか、信号待ち・踏み切り待ちなど他の事象が影響したのかなど、施術者による状態推測を容易にする効果がある。
【0058】
(4. 請求項4に記載の発明の効果)
請求項4に記載の発明によれば、表示開始時刻操作指定部での操作をしたときに、加速度変位表示部での加速度変位、並びに歩行軌跡表示部上で弁別視認可能に区分されたところが連続的にしか移動しない。このため、着目していた点を見逃すことがなく、一回の歩行訓練全体に渡った状況把握を的確にすることができる。また、歩行軌跡表示部上で弁別視認可能になっている区間の長さも連続的に変化して見えるので、的確に速度のムラを把握することができるようになり、細かい運動能力の変動を把握することができるようになる。
【0059】
(5. 請求項5に記載の発明の効果)
請求項5に記載の発明によれば、汎用のコンピュータでも、請求項1に記載の運動状況把握支援装置を実装できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は、本実施の形態に係る全体システム構成図である。
図2図2は、本実施の形態において被術者の加速度等測定等に供する携行測定端末構成図である。
図3図3は、本実施の形態に係る支援装置の表示レイアウト例図である。
図4図4は、特定時系列歩行情報、時系列加速度情報、時系列位置情報、加速度変位表示部が表示する時間幅内時系列加速度情報、並びに時間幅内時系列位置情報の関係図である。
図5図5は、本実施の形態においてグラフ表示時間幅を長く指定したときの表示例図である。
図6図6は、本実施の形態においてグラフ表示時間幅を短く指定したときの表示例図である。
図7図7は、本実施の形態において表示開示時刻を変化させたときの歩行軌跡表示例図である。
図8図8は、本実施の形態において地図を重畳表示させた表示例図である。
図9図9は、本実施の形態において姿勢表示を行う変形例に係る表示例図である。
図10図10は、本実施の形態において被術者が携行する測定器起動時のシナリオ図である。
図11図11は、被術者が携行する携行測定端末から歩行情報記録装置に送信する際のデータ構造例図である。
図12図12は、被術者が携行測定端末の使用をする際のシナリオ例図である。
図13図13は、本実施の形態にかかる歩行軌跡表示部において一部を弁別視認可能とする表示例図である。
図14図14は、本実施の形態にかかる歩行軌跡表示部において弁別視認可能とした軌跡の視認性を向上させる表示例図である。
図15図15は、本実施の形態において姿勢表示をさせる変形例に係る構成図である。
図16図16は、本実施の形態に係る変形例において時間軸をもつ加速度変位表示とリサージュによる加速度変位表示とを混在させた場合における表示例図である。
図17図17は、本実施の形態に係る変形例において加速度変位表示におけるリサージュ表示例図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本願実施の形態については、以下の目次に従って説明する。
―――――― 目次 ――――――
(1. 図面の表記)
(2. 本実施の形態にかかる装置と連携する外部装置)
(2.1. 歩行情報記録装置)
(2.2. 被術者が携行する測定器)
(2.1. 被術者が携行する携行測定端末の構成)
(2.2. 被術者が携行する携行測定端末の動作シナリオ)
(3. 本実施の形態について)
(3.1. 本実施の形態の構成について)
(3.2. 本実施の形態の動作について)
(3.3. 小結)
(4. 本実施の形態の変形例について)
(4.1. 加速度表示開始時刻の設定と現実の加速度表示開始時刻について)
(4.2. 歩行軌跡表示面に地図を重畳表示させる変形例)
(4.2.1. 構成について)
(4.2.2. 動作について)
(4.2.3. 小結)
(4.3. 姿勢表示機能を持った変形例)
(4.3.1. 構成について)
(4.3.2. 動作について)
(4.4. 歩行軌跡表示における強調表示について)
(4.5. 加速度変位表示にリサージュ図形を描画させる場合について)
(5. 特許請求の範囲と実施の形態との関係)
【0062】
―――――― 本文 ――――――
(1. 図面の表記について)
以下、同時に複数の図面を参照しながら説明することがあるので、図面中の符号は下2桁を 除く先頭の数値が図面番号を表す表記を採っている。たとえば、「単一の加速度データ(462)」ならば図4を、「単一の加速度データ(1162)」ならば図11を主として参照している。
【0063】
(2. 本実施の形態にかかる装置と連携する外部装置)
本実施の形態に係る支援装置では、被術者が携行する携行測定端末から得られた各種情報が、歩行情報記録装置内に取り込まれることを前提として各種支援を行うようになっている。ここでは実施の形態の説明に先立ち、歩行情報記録装置、並びに被術者の情報を収集する際に用いる携行測定端末について説明する。
【0064】
(2.1. 歩行情報記録装置)
歩行情報記録装置について、図1を用いて説明する。
【0065】
歩行情報記録装置(110)は、主として時系列歩行情報(111)を記録するようになっている。時系列歩行情報(111)は一回の歩行訓練が行われたときに収集された加速度に係る情報である時系列加速度情報(112)、その歩行訓練が行われたときに収集された位置の情報である時系列位置情報(113)が少なくとも含まれている情報集合体である。更に、現実に運用する際の管理のため、その情報集合体に関する補助的な事項である被術者固有情報(114)を組み合わせることが望ましい。
【0066】
この被術者固有情報(114)には、誰がその歩行訓練を計画したのかを示す担当理学療法士IDや、そのときに補助した者が居たときにはその補助者のID、この時系列の情報が収集された場所が屋外か施設かを弁別でき、かつ施設ならばその施設を特定できる測定場所ID、加速度情報の基本サンプリング時間間隔、などが含まれていることが望ましい。また、後日データ構造に変更があった場合を考慮して、これらに加えて、データーバーションも含まれていることが望ましい。
【0067】
これらのデータの管理手法に特別な制限はないが、被術者固有情報(114)をデーターベースで、また他の情報部分をファイルとして記録しておけば装置資源の効率的な管理をすることができるようになる。勿論、ここで管理するデーターベースには、更にデータ採取時刻を記録し、後に一の被術者を特定すると過去に取得したすべてのデータをソーティング/参照できるようにするのが望ましい。
【0068】
歩行情報記録装置(110)は、図示しない認証機構を持ち、記録している時系列歩行情報への参照権限の有無を判断し、権限のない者からのアクセスには時系列歩行情報の取得を認めないようになっている。
【0069】
また、歩行情報記録装置(110)は、理学療法士等が使用するPersonal Computer(以下、単に「PC」という。)が、後述する本実施の形態に係る運動状況把握支援装置として機能させるプログラムを記録しておき、必要に応じてこれをPCに対してダウンロードできるようになっていることが望ましい。これにより、所謂クライアント・サーバモデルが構築されるとともに、理学療法士等は手持ちのPCのブラウザプログラムから歩行情報記録装置(110)にアクセスすると、自分が担当する被術者の歩行訓練状況の把握ができるようになる。
【0070】
(2.2. 被術者が携行する測定器)
次に、被術者が携行する携行測定端末について説明する。
【0071】
(2.2.1. 被術者が携行する携行測定端末の構成)
被術者が携行する携行測定端末については、様々なハードウエアを用いた実装法がありうるが、ここでは入手が容易で、既に広く用いられているANDROID(登録商標)スマートフォンにアプリケーションを実装することによって、これを携行測定端末にする実装例を説明する。
【0072】
ここで、ANDROID(登録商標)スマートフォンを携行測定端末に選んだのは、このようなスマートフォンには通常、既に3次元の加速度測定デバイス、位置測定デバイス、時計、カメラ、並びにネットワークアクセスデバイス等をコンパクトに一体化していて、インストールしたアプリケーション・プログラムの手順に従ってこれらを有機的に連携して稼働させることが簡単にできるからである。
【0073】
携行測定端末にインストールするアプリケーション(以下、「歩行性状測定アプリ」という。)は、これをインストールしたスマートフォンが、少なくとも2方向の加速度を測定するしうる加速度測定部群と、測位部と、時計部と、通信経路を介して加速度測定部群等から取得した値を歩行情報記録装置に対して送信するネットワーク接続部とを連携させる。そして少なくとも被術者が歩行を開始してから終了するまでの間、その加速度の変位と位置とを時系列に計測できるようになる。以下、図2を用いてこれを詳述する。
【0074】
[加速度センサー(217)]
スマートフォンには通常、3方向の加速度を測定できるデバイスが備わっている。スマートフォンの画面を縦長になるように自分に向けて持ったとき、加速度センサー(217-1)が水平横方向、加速度センサー(217-2)が縦方向、加速度センサー(217-3)が奥行前後方向の加速度をそれぞれ計測できるようになっている。本実施の形態では少なくとも2軸分のデータがあれば足りるところではあるが、各種挙動を把握するためには、3軸全ての情報を取得することが望ましい。
【0075】
加速度のサンプリング周期について、いわゆるハイエンド機の場合には、概ね2.5ミリ秒程度の周期でのサンプリングが可能であるが、通常は20ミリ秒程度のサンプリング期間で取得できれば実用に耐える。
【0076】
[測位部(218)]
測位部(218)は、自機がどこにあるのかを測る機能部であって、ANDROID(登録商標)の場合、無線アクセスポイントや、GNSS(Global Navigation Satellite System)などいくつかの手掛かりから可能な限り高精度な測定となるように現在位置を測位できるようになっている。そして、緯度/経度/高度を倍精度浮動小数点で、並びにその測位精度を浮動小数点で、取得することができるようになっている。
【0077】
[表示部/操作部(219)]
表示部/操作部(219)は、操作者と電気系とのインターフェースとして用いられるデバイスであって、スマートフォンではタッチパネルがこれにあたる。
【0078】
[カメラ(235)]
カメラ(235)は、携行測定端末(216)の外部環境にある画像を読み取るデバイスであるが、QRコード(登録商標)などによって画像コードに変換された平面識別コード(240)を読み取ることができるようになっている。
【0079】
[時計部(図示せず)]
時計部は、通常ミリ秒単位で現時刻を把握しており、必要に応じて参照されればその時の時刻を返すようになっている。
[中央制御部(220)]
中央制御部(220)は、図示しないプログラムメモリーを読み出し、プログラムに従って処理を行う。ここではプログラムメモリーに歩行性状測定アプリが記録されているので、後述する動作手順に従って、上記加速度測定部群等を制御して、その結果を蓄積するようになっている。また、図示しない記憶デバイスを管理し、各測定部で読み込んだ情報を一時的に記録し、または読出すように制御する。また、上記カメラ(235)で読み取った平面識別コード(240)を文字列に変換するなどの処理も行うことができるようになっている。
【0080】
・[中央制御部における時系列歩行情報の記録技法]
記憶デバイスに対し一時的な記録をする場合、加速度情報と位置情報とは一の情報がもつ物理的意味が異なるので、異なる周期で取得しても構わない。この点について図4を用いて説明する。
【0081】
携行測定端末(216)は加速度センサー(217)と測位部(218)とから周期的に測定値を得る。加速度センサー(217)から得られた単一の加速度データ(462)は、計測時乃至取得時に時計部が示す時刻とともに、記憶されることになる。時刻情報があるために加速度値は時系列に把握できるようになり、時系列加速度情報(412)として把握できるようになる。
【0082】
同様に、測位部(218)から得られた位置情報(463)も、計測時乃至取得時に時計部が示す時刻とともに、記憶されることになる。時刻情報があるために位置情報も時系列に把握できるようになり、時系列位置情報(413)として把握できるようになる。
【0083】
こうして蓄積された時系列加速度情報(412)と時系列位置情報(413)とは、一体化した時系列歩行情報(411)として把握することができる。
【0084】
時系列加速度情報(412)と時系列位置情報(413)との一体管理をするには様々な技法が採りうる。もっとも、後にこれらを分離して把握できるようにする必要がある。この要請に応えるには、たとえば、単一の加速度データ(462)をひとつのオブジェクトとし、時系列加速度情報はこれらのオブジェクトのリストとして時系列加速度情報(412)を記録し、かつ同様に単一の位置情報(463)をひとつのオブジェクトとし、時系列位置情報はこれらのオブジェクトのリストとして時系列位置情報(413)を記録し、両リストを更にひとつのオブジェクトとして時系列歩行情報(411)を把握するという技法がある。
【0085】
しかし、オブジェクト生成はコストが高いこと、後に取得したすべての情報は歩行情報記録装置(110)に送信することになること、並びに、この後にスマートフォン上では記録した情報を特に分析する必要がないこと、などから簡単にデータを発生順に充填して記録する方法を採ることができる。これは、言い換えれば、時系列加速度情報(412)、時系列位置情報(413)、並びに時系列歩行情報(411)をオブジェクトとしてではなく、シリアライズしたデータ列として把握する技法である。この具体例について図11を用いて説明する。
【0086】
前述したとおり、加速度情報と位置情報とはサンプリング周期が異なる。よって、これらをサンプリング順にシリアライズすることにすれば最もメモリー利用効率が高いといえる。そこで、本携行測定端末では、データヘッダ(1161)に補助的な情報を記録し、これに続いて単一の加速度データ(1162)と単一の位置情報(1163)をサンプリング順に並べた情報集合として記録する。加速度情報と位置情報とは情報量(バイト数)が異なるが、それぞれの情報の先頭に識別子を付し、これによってその後に続くバイトが加速度情報なのか位置情報なのかを弁別することができるようにすればよい。加速度情報や位置情報の構造に設計変更するなど、拡張性維持対策として、どの世代の設計に基づくデータなのかを判断することができるように、データヘッダ(1161)先頭にバージョン指定情報を設ければよい。
【0087】
データヘッダ(1161)には、どの理学療法士等の指示によりこの歩行訓練を行ったのかを把握できるように、付き添い者乃至理学療法士の識別子を設けることが望ましい。これは後に当該識別子をもつ理学療法士がここで測定された情報にアクセスする手掛かりにもなるので、個人情報保護などの観点でセキュリティ上のアクセス許可情報となりうる。
【0088】
その他、各情報ブロックに含まれる内容については図中に表した通りであり、詳述を省く。
【0089】
[ネットワーク接続部]
ネットワーク接続部(241)は、中央制御部(220)の制御に従って、携行測定端末(216)と外部環境との間でネットワーク(215)を通じて情報交換をすることができるようになっている。
【0090】
(2.2.2. 被術者が携行する携行測定端末の動作シナリオ)
次に、被術者が本携行測定端末を用いて歩行訓練を行うシナリオについて、図10を用いて説明する。
【0091】
[測定開始(1051)]
被術者は、歩行性状測定アプリがインストールされているスマートフォンで、まず歩行性状測定アプリを立ち上げる。ここから測定のための一連の処理が始まることになるが、現実の測定は未だ行われていない。
【0092】
[基礎情報特定処理(1052)]
次に被術者は、歩行性状測定アプリの使用認証の手続きを行う。これはこれから測定をするのが被術者自身であることをスマートフォンその他に確証させるためのものである。
【0093】
具体的には、自分を特定する識別子や、リハビリテーションを管理する理学療法士の識別子、運動状況把握支援装置のネットワーク上のドメイン名、歩行を行う施設・地域などがID管理されているのであればそのなど識別子、などをここで入力するようにすればよい。
【0094】
もっとも、この操作には時間がかかるので、予めこれらをまとめた情報を内容とする平面識別コード(240)を用意して、これをカメラ(235)から読み取らせるような設定操作をするのが簡便である。この場合、自分を特定する識別子、理学療法士の識別子、ネットワーク上のドメイン名、歩行を行う地域IDなど、を文字列で表し、これらをカンマ文字で接続する所謂CSV形式にまとめてひとつの平面識別コード(240)とすればよい。これにより、ひとつの平面識別コードを読み込ませることで全ての基礎情報特定処理が完了することができるようになる。
【0095】
このためには、被術者がカードなどに印刷された平面識別コード(240)を持ち、歩行訓練を始める都度これを読み込ませるようにすればよい。
【0096】
[直立姿勢の測定開始(1053)]
次に、歩行性状測定アプリは、任意ではあるが、被術者に直立姿勢の測定を始めることを促す。
【0097】
スマートフォンは、できるだけ体幹に合わせて装着するのがよいので、直立したときにはスマートフォンも直立するように胸部上部付近に固定させるような装具を用いるのが望ましい。
【0098】
尤も、手軽さなどの観点から胸ポケットなどに入れて利用したい場合もある。このときには、必ずしもスマートフォンは体幹に一致する姿勢で固定されるわけではないので、後にこれを較正する必要が生じることもある。このような事情を考慮すると、直立姿勢の計測は較正が求められる場面で直立姿勢を採った体幹と、スマートフォンとの偏差を測定するのが望ましい。
【0099】
具体的には、直立姿勢の測定が始まると、体幹が安定するまで若干の時間をとったあとに、そのときの加速度を取得する。加速度センサーは重力によって、鉛直方向に9.8m/s/sの加速度を検出するので、直立静止状態で検出された各軸の加速度から、基準となる固定位置がどの程度の傾いているのかを検出できるのである。
【0100】
[前傾姿勢の測定開始(1054)]
次に歩行性状測定アプリは、任意ではあるが、被術者に前傾姿勢の測定を始めることを促す。
【0101】
スマートフォンは、パネル面を体幹側に装着するのか、体幹反対側に装着するのか、体躯前面に装着するのか背面に装着するのかで加速度値のもつ意味が異なる。このため、前傾姿勢をとってもらうことによって、パネル面が体躯前面(進行方向)に向いているのかどうかを判断することができる。使用するセンサーなどは前述の直立姿勢の測定と同じなので、説明を省略する。
【0102】
なお、予めどのように装着するのかを決めておけるのであれば、前傾姿勢の測定は不要であり、これを省略することもできる。
【0103】
ところで、ひとり暮らしの被術者などは体に固定したあとにスマートフォンに対して直立姿勢や前傾姿勢の測定開始指示をすることは無理がある。その場合には、図示しない音声発生機能を用いて指示するようにすればよい。
【0104】
このシナリオを図12に挙げる。図中、括弧で記述したところは音声発生によって被術者に行為を促すことを意味する。シナリオは図を見れば明らかであるが、姿勢を変えなければならない場面などで、説明や「5,4,3,2,1,0」などのカウントダウンを発声している。これは、被術者が姿勢を整える時間的余裕を確保するとともに、被術者に次の動作についての予測を与えるためである。これにより被術者に安心感を与えるとともに、測定開始までのシナリオを円滑に進めることができるようになる。
【0105】
[歩行測定開始(1055)]
以上までで、歩行測定をするための準備が整ったので、ここから歩行測定を始めることができる。
【0106】
測定が始まると、歩行性状測定アプリは一定間隔で加速度センサー(217)から値を読み込み、また同じく一定間隔で測位部(218)から値を読み込み、中央制御部(220)の機能によって、これらを図示しない内部記憶に記録していく。
【0107】
なお、ここで、加速度センサー(217)から読み込む時間的間隔と測位部(218)から値を読み込む時間的間隔とは、必ずしも一致している必要はない。また、この際、ひとつひとつの情報には図示しない時計部が刻んだその時刻も併せて記録しておく。
【0108】
[歩行測定終了(1056)]
被術者は歩行が終わったところで、スマートフォンを体幹から外してその手にし、歩行性状測定アプリ終了の指示をする。これにて歩行測定が完了する。
【0109】
[歩行情報記録装置への送信(1057)]
測定が終わったら、被術者は表示部/操作部(219)に操作を行い、測定中に記録された加速度センサー(217)等からのデータを歩行情報記録装置に送る。この際、ネットワーク接続部(241)を介し、予め基礎情報特定処理(1052)で読み込ませていた歩行情報記録装置のドメイン名などにデータが送られるように中央制御部(220)が制御する。
【0110】
ここで歩行情報記録装置のドメイン名を基礎情報特定処理(1052)で特定できるようにしたのは、理学療法士が利用する歩行情報記録装置がひとつとは限らないためである。仮にこれらを、負荷分散技術等を用いて構成するのであれば、情報の宛先を唯一のドメインにすることができるので、ドメイン名を特定することは省略できる。
【0111】
(3. 本実施の形態について)
次に、本実施の形態について説明する。歩行情報記録装置(110)を別筐体にしたうえでこれをサーバとし、本実施の形態に係る運動状況把握支援装置(101)(以下、単に「本装置」という。)は、クライアントモデルとして機能するようになっている。
【0112】
(3.1. 本実施の形態の構成について)
次に本実施の形態の構成について、図1を中心に説明する。
上述の通り、本装置と歩行情報記録装置(110)とはクライアント・サーバモデルで動作することを前提とする。
【0113】
このため、ネットワーク(115)に前述の携行測定端末を接続するとともに、本装置、歩行情報記録装置(110)いずれをも同ネットワーク(115)に接続して相互に通信をしながらリハビリテーション状況把握を支援させるようになる。
【0114】
本装置はPersonal Computer上に構成することができる。この場合、歩行情報記録装置(110)から特定のスクリプト言語で書かれたスクリプトをダウンロードし、これをブラウザソフトで解釈させるようにすればよい。
【0115】
[特定時系列歩行情報取得部(102)]
特定時系列歩行情報取得部(102)は、本装置で閲覧したい被術者のリハビリテーション記録乃至時系列歩行情報を歩行情報記録装置(110)から取得する。このため、歩行情報記録装置(110)はログイン認証可能に構成するとともに、時系列歩行情報取得に先立ち、予め本装置から歩行情報記録装置(110)にログインを行い情報の閲覧読み出しの許可を採るようにすることが求められる。
【0116】
認証を経た後、特定時系列歩行情報取得部(102)が歩行情報記録装置(110)からダウンロードした歩行情報は、特定時系列歩行情報取得部(102)が有するバッファメモリ内に蓄積し、表示制御部からの要求があったときに逐次これを読み出すようになっている。もちろん、1回分のリハビリテーション歩行情報を一度にダウンロードするようにしても、必要なときに逐次必要な部分だけをダウンロードするようにしても構わない。
【0117】
[表示制御部(107)]
表示制御部(107)は、特定時系列歩行情報取得部(102)で受けた時系列歩行情報を参照するとともに、表示時間幅操作指定部(106)で指定された時間幅、並びに表示開始時刻操作指定部(105)で指定された開始時刻を参照する。
【0118】
時系列歩行情報が1回の歩行訓練のデータとして纏められた情報集合体である以上、ここには数分~数時間程度の時系列加速度情報と同程度の時系列位置情報が含まれている。そして1回の歩行訓練では数千歩を超える体幹の動きに係る情報が含まれていることから、特に時系列加速度情報については、時系列の変位をPC上で一瞥できるように波形表示しようとするには分解能の点で無理がある。このため、この時系列加速度情報のうち一部を取り出してこの部分に限って表示させる必要がある。
【0119】
この事情を考慮して、表示制御部(107)は、特定時系列歩行情報取得部(102)で受けた時系列歩行情報のうち、表示開始時刻操作指定部(105)で指定された開始時刻から、かつ表示時間幅操作指定部(106)で指定された時間幅のものに限定し、これを加速度変位表示部(103)に送るようになっている。
【0120】
一方、表示制御部(107)は、歩行軌跡表示部(104)に対しては、全時系列位置情報を送るとともに、このうち表示開始時刻操作指定部(105)で指定された開始時刻から、表示時間幅操作指定部(106)で指定された時間が経過するまでの間を弁別視認可能とすべき旨の指示を送るようになっている。
【0121】
[加速度変位表示部(103)]
加速度変位表示部(103)は、表示制御部(107)から指示を受け、指示された時系列加速度情報に基づいて、図示しない表示デバイス上に加速度の変位を表示するようになっている。この表示では、指定された時刻から指定された時間幅がフルスケールになるようになっている。
【0122】
表示の仕方は、様々なものが考えらえるが、通常は横軸を時間軸に、縦軸を加速度とするグラフ状にするのが望ましい。そして、表示面はひとつだけではなく、複数を用意して、それぞれに、X軸・Y軸・Z軸の加速度を描画してもよい。勿論、縦軸を時間軸・横軸に加速度とするような描画法を採ってもよい。
【0123】
また、横軸を時間軸とするものばかりでなく、指定時刻から指定時間幅内でのX軸の加速度とY軸の加速度をそれぞれの軸にもったリサージュ図形などを描画してもよい。勿論、3軸の加速度情報があることから、XYのリサージュ、YZのリサージュ、XZのリサージュが作成できるので、これらいずれをも描画してもよい。
【0124】
勿論、加速度変位表示部(103)では、上記時間軸をもったグラフとリサージュ図形とを混在させて表示させてもよい。混在させるときには、同時に表示させるようにしても、図16に示すように波形表示タブ(1681)とリサージュ表示タブ(1682)をUIとして用いてこれらを切替るようにしても、構わない。
【0125】
[歩行軌跡表示部(104)]
歩行軌跡表示部(104)は、表示制御部(107)から指示を受け、指示された時系列位置情報に基づいて、図示しない表示デバイス上に歩行軌跡を表示するようになっている。この際、少なくとも一回の歩行訓練における歩行足跡の略全体を一瞥できる縮尺で、表示できることが必須である。勿論、必要に応じてこれの一部を拡大して表示させることができても構わないが、ここでは併せて表示される加速度変位表示が全体の軌跡のうちどのあたりで測定されたものなのかが一瞥できることに大きな意義がある。
【0126】
歩行軌跡表示部(104)はまた、表示制御部(107)から受けた開始時刻・時間幅に基づいて、これに対応する軌跡上の位置で強調する表示をするようになっている。即ち、一回の歩行訓練における歩行足跡の略全体を一瞥できる縮尺で表示されたときに、前記加速度変位表示部(103)で表示されている時間幅での位置がどこに当たるのかが判別できるように表示するように作用する。強調する表示例については動作説明の項で触れる。
【0127】
[表示開始時刻操作指定部(105)]
表示開始時刻操作指定部(105)は、本装置のユーザーインターフェース(以下、単に「UI」と記す。)を介して操作する者からの操作を受け、時系列歩行情報のうち加速度変位表示部で表示しようとする最初の時刻を指定することができるようになっている。
【0128】
ここで表示開始時刻というのは、時系列歩行情報の開示点を示すものであればよく、絶対時間である必要はなく、その時系列歩行情報の取得開始時刻を0とする相対時刻としてよい。相対時刻で指定ようにすれば、何時採った時系列歩行情報であっても、表示開始時刻を0から指定することができる。
【0129】
[表示時間幅操作指定部(106)]
表示時間幅操作指定部(106)は、本装置のUIを介して操作する者からの操作を受け、時系列歩行情報のうち加速度変位表示部で表示するフルスケールでの時間幅を指定することができるようになっている。
【0130】
この点について、再び図4を用いて説明する。1回の歩行訓練で得た時系列歩行情報(411)のうち、加速度にかかる情報は表示時間幅操作指定部で指定された表示時間幅(434)で区切られ、ここに含まれる加速度情報が加速度変位表示部(103)においてフルスケールで表示されるような指示となるわけである。よって、この表示時間幅(434)は表示開始時刻(431)と表示終端時刻(432)との差分時間ということになる。
【0131】
ここでの時間幅の指定についても時間幅が確定できるものであればよく、終端時刻を指定できるようにしたものであって構わない。
【0132】
(3.2. 本実施の形態の動作について)
次に、本装置の動作について説明する。通常、本装置の操作は理学療法士等が行うので、これを前提として説明するが、他の権限者が行うことを排除するものではない。また、ここでは既に前記(2.2.2. 被術者が携行する携行測定端末の動作シナリオ)に示したような手順で被術者が一回の歩行訓練を行い、その際に測定した時系列歩行情報(111)が歩行情報記録装置(110)にいくつか記録されているものとする。
【0133】
[時系列歩行情報の特定]
まず理学療法士は認証手順を経て本装置の利用を始める。そして、自分が担当する被術者を特定して、歩行情報記録装置(110)に記録されている情報の存在を把握する。次に自分が見たい時系列歩行情報を特定する。これにより特定時系列歩行情報取得部(102)は、歩行情報記録装置(110)から特定した時系列歩行情報を取得することができるようになる。
【0134】
データを取得できると、本装置は表示制御部(107)によって、加速度変位表示部(103)並びに歩行軌跡表示部(104)に最初の情報提示となる表示を指示する。これにより本装置は、たとえば図3に示すようなレイアウトの画面を表示することになる。
【0135】
・[基本レイアウト]
ここで、本装置が理学療法士に提示する基本レイアウトを説明する。このレイアウトでは、加速度変位、歩行軌跡が同時に併せて提示されるようになっている。また、加速度変位を表示するにあたり、取得した時系列歩行情報のうちどの部分を切り取って表示させるかを指定するために、表示範囲指定操作部(321)も表示されている。
【0136】
なお、最初の表示では未だ加速度変位表示のための表示開始時刻指定・表示時間幅指定がされていないので、適切な値を初期値としておけばよい。この初期値は使い勝手によって適宜決めればよいが、表示開始時刻として0、表示時間幅として10秒程度とするのが適切である。もっとも、時系列加速度情報のうち初期はまだ歩きだしていないとも考えられるので、情報取得開始後一定の時間経過時、たとえば全体の5%程度経過した時を表示開始時刻の初期値にしても構わない。
【0137】
基本レイアウト中、加速度変位を提示するレイアウトとして、具体的にX軸加速度変位表示面(324)、Y軸加速度変位表示面(325)、Z軸加速度変位表示面(326)を備えている。この例では横軸を時間軸に、縦軸を加速度にして表示させているが、他の表示態様としても構わないことは前述の通りである。
【0138】
また、基本レイアウト中、歩行軌跡を提示する手段として、歩行軌跡表示面(327)を備えている。初期状態では特定時系列歩行情報取得部(102)が取得した時系列歩行情報のうち時系列位置情報の全ての位置が歩行軌跡(328)として表示される。歩行軌跡(328)の表現の仕方は、時系列位置情報に含まれる全ての位置を単に点で表したものであっても、これら全プロットを時系列に線分でつなげたものであっても構わない。
【0139】
歩行軌跡(328)の上には、弁別視認される部位が表われている。これは加速度変位表示がされている時間に居た軌跡中の区間である。即ち、歩行軌跡を表示する時点で既に歩行軌跡表示部(104)は表示制御部(107)より弁別視認可能とすべき区間の指定を受けているので、この区間が表示される。この区間は、加速度変位表示開始時刻に相当する表示開始位置(330)と、その後加速度変位表示時間幅を経過した際の表示終端位置(329)とに挟まれた位置であり、理学療法士にはその区間を一瞥して認識されるようになる。
【0140】
基本レイアウト中、表示範囲指定操作部(321)には、表示開始時刻指定スライダー(322)と、表示時間幅指定スライダー(323)とを含んでいる。
【0141】
表示開始時刻指定のUIにスライダーを選択したのは、開始時刻の指定を連続的に変化させられるようにすることで、歩行軌跡表示面(327)に表示される弁別視認される部位も連続的に移動するようになるからである。理学療法士等がスライダーを移動させるだけで、1回の歩行訓練での位置移動を感覚的に認識できるようになるからである。
【0142】
また、表示時間幅指定のUIにスライダーを選択したのは、連続的に時間幅を指定できるようにすることで、加速度表示面での波形の分解能に対応してより認識できやすいものにできるようになるからである。また、理学療法士が加速度表示面に現在表示されている波形の一部に着目しているとき、表示時間幅を非連続的にしか変えられないとすると、着目している部分を見失うおそれも生じ、使い勝手に悪い影響を与えるからである。
【0143】
上記のとおり、これら表示開始時刻指定、表示時間幅指定のUIに選択したスライダーは連続的に変化させることができる点に意味がある。したがって、他のUI表現を採ったとしても構わない。例えば、スピンボタンなどもその実装候補となりうる。
【0144】
[加速度表示時間幅の調整]
加速度表示時間幅設定の意義について、更に図5乃至図6を用いて説明する。前述の通り、表示時間幅指定スライダーつまみ(523)の指定操作によって加速度表示面に表現される時間幅が決まる。図5に示すように、時間幅が長いとその間に表れるデータ数は多い。この場合、表示面の分解能が限られていることから、一歩一歩の加速度変位は把握しにくくなるものの、歩行しているかどうかも含め、歩行状況の時間的変位が一瞥できるようになる。尤もこのとき、歩行軌跡上に、この時間幅に対応する区間が強調されて表示され、この時間幅でどの程度進行したかが明確になる。この長さは歩速と同義であり、非特許文献2に見られるように、歩速とTUGTとの間に強い相関があることから、強調した長さは重要な意義を持つ。
【0145】
これに対し、図6に示すように、時間幅が短いとその間に含まれるデータ数は少ないので、一歩一歩の加速度変位は把握しやすくなる一方、全期間にわたる歩行性状の時間的変化が把握できなくなるという傾向がある。当然、歩行軌跡上で強調される部分は短くなる一方、細かい歩速の変動も受けやすくなり、その長さの変動は歩速の変更として鋭く反映されることになる。言い換えれば、一回の歩行訓練のなかでどのような歩速変動があったかが明確になるのである。
【0146】
ここで、強調表現について、図13を用いて簡単に触れる。
【0147】
例えば図13(a)は軌跡を実線にし、太線で強調を表現している。色彩をつけられるのであれば、軌跡を青線、強調するところを赤線で表現する等としてもよい。図13(b)は軌跡を点線にし、実線で強調を表現している。これとは逆に図13(c)では軌跡を実線にし、点線で強調を表現している。図13(d)では軌跡を実線にし、強調する部分の先端・後尾をそれぞれピンアイコンで表現している。勿論これらは例示であって、いずれにしても表示時間幅に対応する区間が背景に埋もれることなく弁別視認可能となっていれば、それで足りる。
【0148】
表示幅をもって区間を表示する意義は他にもある。即位にGNSSを用いたとしても、精度は高々数m程度に過ぎない。よって、速度を表現する際、ひとつひとつの位置データに着目すると、誤差の影響でバラツキが大きくなってしまう。この点、複数の測位点が時間幅をもってまとまっていると、例外的な誤差ある測位がいくつかあっても、全体として概ね平均的な長さで表現がされる。このように測位の誤差の影響を見えにくくするのにも寄与することになる。
【0149】
[加速度表示開始時刻の調整]
加速度表示開始時刻の意義について、図7を用いて説明する。なお、ここでの説明は表示時間幅の設定を途中で変えないことを前提とする。
【0150】
加速度表示開始時刻は、表示開始時刻指定スライダー(722)によって本装置に指示をすることができるところ、一方で表示時間幅指定スライダーとは別個独立に指示できる。よって、現実に理学療法士がする操作は、表示時間幅指定スライダーを必要と思われる時間幅に固定したままに、表示開始時刻指定スライダー(722)を動かして、その時間幅で移動した区間を歩行軌跡表示面で確認することになる。
【0151】
今、図7のように表示開始時刻指定スライダーを、歩行訓練の早期位置(736)->中盤時期(737)-> 後期位置(738)と、順に動かす場合を想定する。
【0152】
歩行軌跡表示面には歩行軌跡とともに、指定された表示開始時刻から固定された時間幅に対応する移動区間が強調表示されることになるところ、表示開始時刻指定スライダーを動かすことにより、図7(a)->図7(b)->図7(c)の順に移動していくように見える。
【0153】
強調表示された区間の長さが固定された時間幅での移動距離である以上、これはその時間幅内の平均移動速度を視覚化したことを意味することになる。そして、図7に示した歩行例では、(b)の区間で強調された長さが短くなっている。すなわち、この区間で平均移動速度が低下したことがわかるようになるのである。
【0154】
この点、表示開始時刻指定にスライダーを用い、連続的な指定をさせられることが、更に感覚的に把握しやすいものにさせている。即ち、表示開始時刻指定スライダーは連続的に動かせるので、これを略等速で動かしたとき、強調されている軌跡区間の先頭部分の移動が遅くなり、かつ後尾部分の移動が速まって見えるのであればその区間は短くなっているのであるから、平均速度が低下していることを一瞥して認識させられているのである。そして、そのときの加速度変位表示面を見て、波形がないところが含まれていれば、それは静止していたことが分かり、波形が連続して存在するのであれば、それはゆっくり歩いたということが分かるわけである。
【0155】
これとは逆に、略等速でスライダーを移動させたとき、強調されている軌跡区間の先頭部分の移動が速まり、かつ後尾部分の移動が遅くなっているのであればその区間は長くなっているのであるから、平均速度が上昇していることを一瞥して認識させられているのである。
【0156】
もっとも、短い時間で平均速度の低下・上昇を繰り返すような歩行訓練の場合には、このような判別がつきにくくなるが、そのときには表示時間幅を短めに設定して、その変化が長さに表れる「感度」ともいうべき性状を高めればよい。
【0157】
[操作指定部の指定変更の際の動作]
表示開始時刻指定スライダー(322)若しくは表示時間幅指定スライダー(323)が操作されたときには、加速度変位表示乃至歩行軌跡表示を再描画する必要がある。よって、これらと情報接続する表示開始時刻操作指定部(105)若しくは表示時間幅操作指定部(106)はこのとき、表示制御部(107)にイベント信号を発信し、表示制御部(107)に再計算を促す。表示制御部(107)はこの再計算の要求に基づき、新たに指定された表示開始時刻・表示時間幅によって、加速度変位表示部(103)、歩行軌跡表示部(104)にその描画を指示する。
【0158】
(3.3. 小結)
本装置を、以上のように構成し動作させることにより、屋外のように連続して環境が変化するような場面での全体に渡り、一瞥してその歩行状況を把握できるようにできる。更に、リハビリテーションに重要な意味をもつ歩速の把握も簡単に把握できるようになる。
【0159】
(4. 本実施の形態の変形例について)
次に本装置について、いくつかの変形例について説明する。
【0160】
(4.1. 加速度表示開始時刻の設定と現実の加速度表示開始時刻について)
加速度変位表示部での表示開始時刻は、表示開始時刻操作指定部で指定された時刻そのものを用いず、表示開始時刻操作指定部で指定された時刻に表示時間幅操作指定部で指定された時間幅の半分を引いた時刻としてもよい。この場合、指定した時刻の加速度は加速度変位表示面の中央に表示されることになり、指定した時刻前後の加速度変位を視認することができるようになる。
【0161】
同様に、表示開始時刻操作指定部で指定された時刻に表示時間幅操作指定部で指定された時間幅を引いた時刻としてもよい。この場合、指定した時刻の加速度は加速度変位表示面の終端に表示されることになるものの、歩行軌跡表示部で強調表示されている区間について、その先頭位置が指定した表示開始時刻に一致する。これは人的感覚にあったものにできるという利点がある。
【0162】
いずれにしても、表示開始時刻操作指定部で指定された時刻を加速度変位表示部での表示開始時刻の先頭に完全一致させる必要はなく、加速度変位表示部での表示開始時刻を唯一に定められればよいわけである。
【0163】
(4.2. 歩行軌跡表示面に地図を重畳表示させる変形例)
本装置における歩行軌跡表示面に、歩行軌跡のみならず、地図を重畳表示するように実装することができる。
【0164】
(4.2.1. 構成について)
この実装について、図1を用いて説明する。この実装をするために、本装置中に追加的に図示しない地図データ取得部を備える。
【0165】
地図データ取得部は、表示制御部(107)の指示を受け、本装置外部に設けられた地図データーベースに対し、求めた範囲のデータを取得するようになっている。
【0166】
歩行軌跡表示部(104)は、表示制御部(107)の指示を受け、前記地図データ取得部で取得した地図情報を歩行軌跡に重畳して表示することができるようになっている。
【0167】
勿論、このときも、指定した表示時間幅に相当する区間を強調表示すべきなのは当然である。
【0168】
(4.2.2. 動作について)
本変形例においては、指定された表示時間幅に相当する時間の歩行区間を歩行軌跡表示部(104)で強調表示する際、表示制御部(107)は、表示する歩行区間の全位置情報について、特定時系列歩行情報取得部(102)を参照して把握することができる。
【0169】
そこで、表示制御部(107)は、表示する歩行区間の全位置情報を包含する、最北緯度、最南緯度、最東経度、最西経度を取り出し、(最北緯度、最西経度)-(最南緯度、最東経度)を対頂点とする長方形の領域を確定する。そして、この領域の地図の取出を地図データ取得部に要求する。
【0170】
地図データ取得部はこの要求に応え、本装置外部に設けられた地図データーベースに対し、この範囲のデータ取得を求める。そして、この応答結果となった地図情報を表示制御部(107)に返す。
【0171】
表示制御部(107)は得られた地図情報を歩行軌跡表示部に送り、これを重畳表示するように求める。
【0172】
この結果、図8に示すように、歩行軌跡は地図上にプロットされるので、理学療法士は被術者がどのような場所で歩行訓練に使用したのかを把握することができるようになる。
【0173】
(4.2.3. 小結)
このように、歩行軌跡表示面で地図重畳表示をするように実装すると、理学療法士は特異な加速度を検出した場合や、加速度の変化が僅少となり歩行停止と認められる状態が続く場合に、それが信号の変わり目で慌てて速度を速めたのか、信号待ちをしているのか、踏み切り待ちをしたのか等を、一瞥して把握できる。また、表示する地図に地形図を選んだ場合には、理学療法士は歩行訓練経路の高低が変化するような場面でも的確な歩行訓練状況を把握することができるようになる。
【0174】
(4.3. 姿勢表示機能を持った変形例)
本装置では、更に姿勢表示ができるように変形することができる。このような表示をすることで、1回の歩行訓練全体に渡り、正しい歩行姿勢が維持できたか、次第に前傾になっていったかなどを判断することができるようになる。
【0175】
(4.3.1. 構成について)
この変形例について、図15を用いて説明する。この実装をするために、本装置中に追加的に図示しない姿勢表示部(1575)、フィルター定数操作指定部(1576)を備える。また、表示制御部(1507)に姿勢表示部に対する指示を行うような修正を加える。
【0176】
姿勢表示部(1575)は、表示制御部(1507)から一定時間幅の時系列加速度情報とフィルター処理のために必要な値を取得するとともに、これらの情報に基づいてXYZ各加速度値についてフィルター処理を施した上、得られたベクトル値を姿勢と見做して姿勢を図形的に表示するようになっている。ここで最も簡単なフィルターとして、フィルター定数を時間幅とし、その時間幅に含まれる各加速度情報の平均値を計算するようなものを採りうる。
【0177】
この点を詳述するに、携行測定端末から得られる時系列加速度は、歩行によって生じる速度の変化が得られるところであるが、これには重力の影響が重畳している。よって、携行測定端末を静止させているときにはこの重力成分が時系列加速度に表れる。一方歩行中には、歩行によって生じる速度変化が加速度の瞬時値に表れるが、歩行である以上、個体が加速し続けることはなく、一定時間幅では個体は加速・原則を繰り返すにとどまる。このため、一定時間幅で平均値をとれば、そこには概ね重力成分のみが残ることになる。重力成分は鉛直方向を向いていることから、この値は姿勢を表すものと擬制できる。勿論、フィルターとして適切な時間を長さに採るFIRフィルターとしてもよい。
【0178】
フィルター定数操作指定部(1576)は、姿勢表示をするにあたり、表示制御部(1507)から得られた時系列加速度情報に対し、フィルター処理をするために必要な定数について、UIを介した操作によって指定を受けるようになっている。
【0179】
表示制御部(1507)は、加速度変位表示部、歩行軌跡表示部に必要な情報を送ることに加え、フィルター定数操作指定部(1576)において指定されたフィルター定数値、並びに表示開始時刻操作指定部(1505)において指定された表示開始時刻に基づいて、特定時系列歩行情報取得部(1502)から姿勢を表示させるために必要な時間幅の時系列加速度情報を取得する。そして、この情報を姿勢表示部(1575)に送るようになっている。
【0180】
(4.3.2. 動作について)
次に本変形例の動作について図9図15を用いて説明する。本変形例では、フィルターとして一定時間幅で時系列加速度の平均値を計算し、これを姿勢情報とするものとして説明する。姿勢を一定時間幅の時系列加速度平均値とするならば、指定すべきフィルター定数は時間幅に他ならない。このため、レイアウトにも、姿勢表示面(945)と姿勢表示移動平均幅指定スライダー(946)とを加える。
【0181】
本装置で、一の歩行訓練に係る時系列歩行情報が定まると、主として表示制御部(1507)の作用により、図9のようなUI画面が現れる。このとき、表示制御部(1507)は、表示開始時刻指定スライダー(922)での操作を介して表示開始時刻操作指定部(1505)から表示開始時刻を、また、姿勢表示移動平均幅指定スライダー(946)での操作を介してフィルター定数操作指定部(1576)からフィルター定数としての平均演算対象時間幅を取得する。そしてこれらの値とともに、指定された表示開始時刻から平均計算対象時間幅に相当する時間の時系列加速度情報を姿勢表示部(1575)に送る。
【0182】
姿勢表示部(1575)は、表示制御部から時系列加速度情報を受け取ると、これに対するフィルター演算を行う。フィルター演算として平均をとることにしたので、時系列加速度情報のX/Y/Z各要素について平均値を算出する。この平均値をベクトルとする方向が姿勢なのでこれを見やすいように表示する。表示の仕方には様々なものがありうるが、図9の例では、鳥観図・正面図・側面図を選択できるように表示している。勿論、上面図や、任意の方向からみた射影図などを加えてもよい。また、携行測定端末となるスマートフォンは体幹に備えていたので、これに相当するように体幹を三角柱で表現してある。更に、漫画キャラクター等のアイコンで表現すると操作者には馴染みやすいと思われるので、これで表示しても構わない。
【0183】
姿勢表示移動平均幅指定スライダー(946)若しくは表示開始時刻指定スライダー(922)が操作されたときには、姿勢表示を再描画する必要があるので、これらと情報接続する表示開始時刻操作指定部(1505)若しくはフィルター定数操作指定部(1576)から表示制御部(1507)にイベント発生情報を発信し、表示制御部(1507)に再計算を促す。表示制御部(1507)はこの再計算の要求に基づき、新たに指定された表示開始時刻・フィルター定数によって、姿勢表示部(1575)にその描画を指示する。
【0184】
(4.4. 歩行軌跡表示における強調表示について)
前記実施の形態において、全歩行軌跡が歩行軌跡表示面に表示される縮尺で表示されることにしていたが、長距離の歩行訓練の場合には、これにかかる時間も長くなる。このため、表示時間幅を短い時間に設定すると、歩行軌跡上の強調表示区間も相対的に短く表現されてしまい、歩速の変化を直感することが難しくなってしまう。
【0185】
このような場面では、図14に示すように主歩行軌跡表示面(1472)の他に従歩行軌跡表示面(1471)をスーパーインポーズ描画乃至別個表示して、主歩行軌跡表示面(1472)には全歩行軌跡のなかでの加速度変位表示開始時刻に対応して強調される歩行位置(1474)が視認できるように、また従歩行軌跡表示面(1471)では強調される歩行位置(1473)を一定の倍率で拡大するとともにこれを中央付近で視認できるように表示すればよい。これにより、歩行速度の視認性向上に資するようになる。従歩行軌跡表示面(1471)をスーパーインポーズする場合には、主歩行軌跡表示面(1472)上に表示された歩行軌跡が隠れないように、従歩行軌跡表示面(1471)の表示位置を自由に移動できるようにするのが望ましい。
【0186】
この際、指定された加速度表示時間幅での歩速の変化が分かるように、同じ加速度表示時間幅が指定されている限り、全時系列歩行情報のなかで拡大する倍率は変えないようにする。このためには、指定された加速度表示時間幅での歩行軌跡が従歩行軌跡表示面(1471)内に収まるように、加速度表示時間幅が指定されたときには全時系列歩行情報に渡り、指定された時間幅に対応する軌跡が占める座標を計算し、これに基づいて拡大率を確定すればよい。
【0187】
この変形例の実装は、単に歩行軌跡表示部(104)において上記態様で表示できるように変更すれば足りる。
【0188】
(4.5. 加速度変位表示にリサージュ図形を描画させる場合について)
本装置では、加速度変位表示部において、主として時間軸を含んだ波形をそのまま表現するものを説明したが、既述の通りこれをリサージュ図形とする変形をすることができる。この点、時系列歩行情報としてXYZ3軸の加速度を得ていたとすると、リサージュ図形はXY,YZ,XZの3パターンをとることができる。もちろん、描画に先立ち座標変換を経ても構わない。
【0189】
リサージュ図形で表示するときには時間軸がないのでどのように扱うかを検討すべきところ、時間軸がある場合と同様に、表示時間幅操作指定部(106)で指定した時間幅の加速度情報をその対象に限って表示すればよい。
【0190】
また、リサージュ図形を描画させる場合、プロット点を構成する2元要素のうち一の要素の位相をずらせることができるようにするとともに、そのずらし量をスライダーインターフェースによって連続的に変更できるようにすると、個々人固有の歩行特徴が顕現するので、これを実装してもよい。
【0191】
ところで、リサージュ図は通常、単に同時刻の乃至所定時間差をもった時刻のプロットと次の時刻におけるプロットとの間を直線若しくは曲線で結んで表現される。しかし、サンプリングされた加速度は当然に離散的であり、線の集合図では把握が困難となる場合がある。このような場合には、プロットの分布を通常のリサージュに代えて提示するとよい。
【0192】
このような背景から、最適と思われる具体的レイアウト例について図17を用いて説明する。図17は時間軸をもつ加速度変位表示とリサージュ表示とを選択タブ(1783)によって選択可能としたものである。そして、リサージュ表示を選択した場合にはリサージュ図(1786)等を表示することになるが、表示選択UI(1783)の選択により標準リサージュボタン(1784)を選択したときには通常のリサージュ図(1786)を、また分布図ボタン(1785)を選択したときにはプロット分布図(1787)を表示するようになっている。
【0193】
プロット分布図を表示する場合、通常のリサージュ図形より分解能を下げた方が見やすくなる。このため、リサージュプロットをした表示面にFIRなどによる平面フィルター処理を施したものを表示するのが望ましい。
【0194】
(5. 特許請求の範囲と実施の形態との関係)
「運動状況把握支援装置」は、本実施の形態においては特に障碍者等が遠隔地で歩行訓練を行う場面で利用することが最適であるので、歩行訓練状況把握支援装置として実装している。変形例においても同様である。
「加速度変位表示部」は、加速度変位表示部(103)並びにUIであるX軸加速度変位表示面(324)、Y軸加速度変位表示面(325)、Z軸加速度変位表示面(326)、若しくはリサージュ図形表示面等として実装している。
「歩行軌跡表示部」は歩行軌跡表示部(104)等として実装している。
「表示開始時刻操作指定部」は、表示開始時刻操作指定部(105)並びにUIである表示開始時刻指定スライダー(322)等として実装している。
「表示制御部」は、表示制御部(107)等として実装している。
「表示時間幅操作指定部」は、表示時間幅操作指定部(106)並びにUIである表示時間幅指定スライダー(323)等として実装している。
【0195】
これらは、実施の形態に記載した態様に拘束されるものではないことを付言する。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本装置は、遠隔地において運動状況を把握することができ、医師・理学療法士等による障碍者等のリハビリテーションの際は勿論、健康維持のためのジム・トレーニングの代替としても適用できる。また、より高機能性をもつ靴の設計、歩行パターンに変調を生じさせない背負いバッグの設計や、理学療法士の教育など、多くの産業で活用できる。
【符号の説明】
【0197】
図面中の符号は先頭の数値が図面番号を表す。なお、異なる図面においても下位2桁が同一のものは概ね同意義のものとなるように配番した。
【0198】
101 運動状況把握支援装置
102 特定時系列歩行情報取得部
103 加速度変位表示部
104 歩行軌跡表示部
105 表示開始時刻操作指定部
106 表示時間幅操作指定部
107 表示制御部
110 歩行情報記録装置
111 時系列歩行情報
112 時系列加速度情報
113 時系列位置情報
114 被術者固有情報
115 ネットワーク
215 ネットワーク
216 携行測定端末
217 加速度センサー
217-1 加速度センサー
217-2 加速度センサー
217-3 加速度センサー
218 測位部
219 表示部/操作部
220 中央制御部
235 カメラ
240 平面識別コード
241 ネットワーク接続部
321 表示範囲指定操作部
322 表示開始時刻指定スライダー
323 表示時間幅指定スライダー
324 X軸加速度変位表示面
325 Y軸加速度変位表示面
326 Z軸加速度変位表示面
327 歩行軌跡表示面
328 歩行軌跡
329 表示終端位置
330 表示開始位置
411 時系列歩行情報
412 時系列加速度情報
413 時系列位置情報
431 表示開始時刻
432 表示終端時刻
434 表示時間幅
462 加速度データ
463 位置情報
722 表示開始時刻指定スライダー
738 後期位置
922 表示開始時刻指定スライダー
945 姿勢表示面
946 姿勢表示移動平均幅指定スライダー
1051 測定開始
1052 基礎情報特定処理
1053 測定開始
1054 測定開始
1055 歩行測定開始
1056 歩行測定終了
1057 送信
1161 データヘッダ
1162 加速度データ
1163 位置情報
1471 従歩行軌跡表示面
1472 主歩行軌跡表示面
1502 特定時系列歩行情報取得部
1505 表示開始時刻操作指定部
1507 表示制御部
1575 姿勢表示部
1576 フィルター定数操作指定部
1681 波形表示タブ
1682 リサージュ表示タブ
1783 選択タブ
1783 表示選択UI
1784 標準リサージュボタン
1785 分布図ボタン
1786 リサージュ図
1787 プロット分布図

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17