(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045523
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】欠陥検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
G01N21/892 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151155
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】591114641
【氏名又は名称】株式会社ヒューテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】特許業務法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】十河 俊一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 巧
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA32
2G051AA37
2G051AA41
2G051AA42
2G051AB01
2G051AB06
2G051BA20
2G051BB01
2G051BB11
2G051CA03
2G051CB01
2G051CB02
(57)【要約】
【課題】欠陥検査装置の大型化を抑制しながら、屈折性欠点の検査がより確実となる欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】欠陥検査装置10は、光源と、受光装置12と、検査光30を第1反射検査光30bと透過非検査光31とに分割するビームスプリッタ14と、第1反射検査光30bを反射し第2反射検査光30cとする再帰反射素子保有部材15と、を備えている。そしてビームスプリッタ14は、第2反射検査光30cを、透過検査光30dと反射非検査光32とにさらに分割する。この構成により、再帰反射素子保有部材15は、入射した検査光を入射した方向へ反射するため、被検査対象の幅方向の端部周辺の光量が少なくなることを抑制でき、屈折性欠点を確実に検出することができる。また、ラインセンサの幅方向の長さを短くでき、これにより欠陥検査装置10の大型化を抑制できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の被検査対象の欠陥を検査する装置であって、
前記被検査対象に対する検査光を放出する光源と、
該光源からの前記検査光を、前記被検査対象を経由して受光する受光装置と、を備え、
前記光源から前記被検査対象に至る検査光を、第1反射検査光と透過非検査光とに分割するビームスプリッタと、
前記第1反射検査光を反射し第2反射検査光とする再帰反射素子保有部材と、をさらに備え、
前記ビームスプリッタは、前記第2反射検査光を、透過検査光と反射非検査光とにさらに分割し、
前記受光装置が受光する検査光が、前記被検査対象を経由した前記透過検査光である、
ことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記被検査対象の一方の面側に、前記受光装置が設置され、
その他方の面側に、前記光源と、前記ビームスプリッタと、前記再帰反射素子保有部材と、が設置され、
前記受光装置は、前記被検査対象で透過した検査光を受光する、
ことを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記被検査対象の一方の面側に、前記受光装置と、前記光源と、前記ビームスプリッタと、前記再帰反射素子保有部材と、が設置され、
前記受光装置は、前記被検査対象で反射した検査光を受光する、
ことを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記光源が点光源である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記再帰反射素子保有部材が、
再帰反射が可能なシート状部材を含んでいる、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記再帰反射素子保有部材は、
前記第1反射検査光に対して非垂直に配置され、
前記第2反射検査光のうち、前記再帰反射素子保有部材により正反射された正反射光のピークが前記受光装置で受光されていない、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検査装置に関する。さらに詳しくは、再帰反射素子保有部材を用いてシート状の被検査対象の欠陥を光学的に検査する欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透明フィルムなどシート状の被検査対象において、その表面の欠陥の検査には、光学的手法を用いた検査が行われている。かかる検査では、LED等の光源から発せられる光を被検査対象の表面に照射する。すると、被検査対象の表面が平坦面であれば、正常な表面では正反射のみが生じる一方、欠陥が存在する表面では、乱反射により散乱光が発生する。したがって、撮影手段によって被検査対象を撮影すれば、撮影された散乱光の強度に基づいて、傷等の欠陥の有無を判断することができる。なお、被検査対象が透明である場合には、反射光だけでなく、透過光を用いて欠陥の検査を行うことも可能である。
【0003】
特許文献1では、点光源を用いた場合の反射光、または透過光による光学的手法を用いた検査装置が開示されている。本文献で開示されている欠陥検査装置では、点光源から被検査対象である樹脂フィルムの表面に検査光を照射するとともに、この樹脂フィルムを一定速度で動作させる。さらにこの欠陥検査装置には、樹脂フィルムで反射した反射光、または透過した透過光を投影するスクリーンと、このスクリーンに投影された陰映像を取り込むラインセンサカメラが設けられている。
【0004】
また
図9には、特許文献1のスクリーンに替えてラインセンサ52を配置した従来の欠陥検査装置50の概略構成図を示す。
図9(A)は欠陥検査装置50の正面図、
図9(B)はその側面図である。この従来の欠陥検査装置50では、点光源53から被検査対象である樹脂フィルム56の表面に検査光57が照射され、その透過光を、ラインセンサ52が受光することで樹脂フィルム56の欠陥を検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
欠陥検査装置で検査する欠陥には、異物などのように光を遮る欠陥と、光を曲げる欠陥がある。この光を曲げる欠陥は屈折性欠点と呼ばれている。特許文献1に示す欠陥検査装置では、点光源であるためシート状の被検査対象の幅方向の端に近い部分は光量が少なくなり、そのため屈折性欠点、特に被検査対象の幅方向への屈折成分の検出が難しいという問題がある。
【0007】
この解決策としては、
図9に示す欠陥検査装置50を挙げることができる。しかし
図9に示すように、
図9の構成はラインセンサ52の軸方向の長さが、被検査対象の樹脂フィルム56の幅方向よりも大きくなり、欠陥検査装置50が大型化するという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、欠陥検査装置の大型化を抑制しながら、屈折性欠点の検査がより確実となる欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明の欠陥検査装置は、シート状の被検査対象の欠陥を検査する装置であって、前記被検査対象に対する検査光を放出する光源と、該光源からの前記検査光を、前記被検査対象を経由して受光する受光装置と、を備え、前記光源から前記被検査対象に至る検査光を、第1反射検査光と透過非検査光とに分割するビームスプリッタと、前記第1反射検査光を反射し第2反射検査光とする再帰反射素子保有部材と、をさらに備え、前記ビームスプリッタは、前記第2反射検査光を、透過検査光と反射非検査光とにさらに分割し、前記受光装置が受光する検査光が、前記被検査対象を経由した前記透過検査光であることを特徴とする。
第2発明の欠陥検査装置は、第1発明において、前記被検査対象の一方の面側に、前記受光装置が設置され、その他方の面側に、前記光源と、前記ビームスプリッタと、前記再帰反射素子保有部材と、が設置され、前記受光装置は、前記被検査対象で透過した検査光を受光することを特徴とする。
第3発明の欠陥検査装置は、第1発明において、前記被検査対象の一方の面側に、前記受光装置と、前記光源と、前記ビームスプリッタと、前記再帰反射素子保有部材と、が設置され、前記受光装置は、前記被検査対象で反射した検査光を受光することを特徴とする。
第4発明の欠陥検査装置は、第1発明から第3発明のいずれかにおいて、前記光源が点光源であることを特徴とする。
第5発明の欠陥検査装置は、第1発明から第4発明のいずれかにおいて、前記再帰反射素子保有部材が、再帰反射が可能なシート状部材を含んでいることを特徴とする。
第6発明の欠陥検査装置は、第1発明から第5発明のいずれかにおいて、前記再帰反射素子保有部材は、前記第1反射検査光に対して非垂直に配置され、前記第2反射検査光のうち、前記再帰反射素子保有部材により正反射された正反射光のピークが前記受光装置で受光されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、光源から被検査対象に至る検査光をビームスプリッタが第1反射検査光と透過非検査光とに分割し、第1反射検査光を再帰反射素子保有部材が反射する。再帰反射素子保有部材は、入射した検査光を入射した方向へ反射する、すなわち凹レンズと同等の働きをするため、ラインセンサの幅方向の長さを短くでき、これにより欠陥検査装置の大型化を抑制できる。また、この構成の欠陥検査装置では、被検査対象の幅方向の端部周辺の光量が少なくなることがなく、屈折性欠点を確実に検出することができる。
第2発明によれば、被検査対象の一方の面側に受光装置が設置され、他方の面側に光源、ビームスプリッタ、再帰反射素子保有部材が設置されているので、受光装置は被検査対象を透過した検査光を受光することとなり、透明な被検査対象の欠陥を検査することができる。
第3発明によれば、被検査対象の一方の面側に受光装置、光源、ビームスプリッタ、再帰反射素子保有部材が設置されているので、受光装置は被検査対象で反射した検査光を受光することとなり、検査光を透過する被検査対象だけでなく、検査光を透過しない被検査対象についても欠陥を検査することができる。
第4発明によれば、光源が点光源であることにより、屈折性欠点がより確実に検出できる。
第5発明によれば、再帰反射素子保有部材が、再帰反射可能なシート状部材を含んでいるので、再帰反射素子保有部材の製造コストを抑制できる。
第6発明によれば、再帰反射素子保有部材により正反射された正反射光のピークが受光装置で受光されていないことにより、受光装置で受光される光の大部分が透過検査光で占められ、検査精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る欠陥検査装置の概略構成の斜視図である。
【
図3】
図1の欠陥検査装置の受光装置の説明図である。
【
図4】
図1の欠陥検査装置の受光方法の説明図である。(A)は
図1の欠陥検査装置の説明図であり、(B)は従来の欠陥検査装置の説明図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る欠陥検査装置の概略構成の側面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る欠陥検査装置の概略構成の斜視図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る欠陥検査装置の概略構成の側面図である。
【
図9】(A)従来の欠陥検査装置の正面図である。(B)従来の欠陥検査装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための欠陥検査装置を例示するものであって、本発明は欠陥検査装置を以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0013】
<第1実施形態>
図1に本発明の第1実施形態に係る欠陥検査装置10の概略構成の斜視図を、
図2にその側面図を示す。
図1および
図2ともに、欠陥検査装置10の主要構成要素のみを記載し、他の部分は省略している。
【0014】
本実施形態に係る欠陥検査装置10は、被検査対象に対する検査光30を放出する点光源13と、この点光源13からの検査光30を、被検査対象を経由して受光する受光装置12とが備えられている。また
図2に示すように、本実施形態に係る欠陥検査装置10は、点光源13から被検査対象に至る検査光30を、第1反射検査光30bと透過非検査光31とに分割するビームスプリッタ14と、第1反射検査光30bを反射し第2反射検査光30cとする再帰反射素子保有部材15とが、さらに備えられている。そしてビームスプリッタ14は、第2反射検査光30cを透過検査光30dと反射非検査光32とにさらに分割し、受光装置12が受光する検査光30が、被検査対象を経由した透過検査光30dとなる。
【0015】
なお本明細書において、「検査光30」は、光源から放出する光のうち、受光装置12で受光されるものを言い、「放出検査光30a」、「第1反射検査光30b」、「第2反射検査光30c」、「透過検査光30d」を含む概念である。
【0016】
本実施形態に係る欠陥検査装置10では、被検査対象を透過した検査光30を受光装置12が受光する。この場合、
図1に示すように被検査対象の一方の面側、すなわち被検査対象の上側に受光装置12が設置され、被検査対象の他方の面側、すなわち被検査対象の下側に点光源13とビームスプリッタ14と再帰反射素子保有部材15とが設置されている。
【0017】
本実施形態に係る欠陥検査装置10では、検査光30は、シート状の被検査対象から、垂直に出射して受光装置12に入射する。加えて、本実施形態に係る欠陥検査装置10では、点光源13は、シート状の被検査対象に対して平行に検査光30を照射し、ビームスプリッタ14と再帰反射素子保有部材15を経由することで、検査光30をシート状の被検査対象に対し垂直に入射させている。なお本明細書では、「平行」、「垂直」の記載は、厳密に平行および垂直である必要はなく、「実質的平行」および「実質的垂直」に該当する。また、本実施形態では、
図2に示すように「垂直」、「平行」と記載したが、
図2の構成は例示であり、特にこの構成に限定されることはない
【0018】
(被検査対象)
本発明に係る欠陥検査装置10は、光学的手法により樹脂フィルム16などシート状の被検査対象の欠陥を検査する装置である。被検査対象には、表面を平坦面とすることができる樹脂フィルム16をはじめ、シート状の被検査対象が広く含まれる。本実施形態に係る欠陥検査装置10は、透明な樹脂フィルム16のように、光が透過可能であり、張力を付加することで表面を平坦面とすることができるものが被検査対象に含まれるが、他にも、表面が平坦面であり、光を反射可能である金属、または厚みのある押し出し成形樹脂品、ガラスなども被検査対象に含むこともできる。なお、請求項における「被検査対象を経由して」との表現は、「被検査対象を透過して」、または「被検査対象で反射して」の表現の上位概念として使用している。
【0019】
被検査対象である樹脂フィルム16等は、欠陥検査装置10の前後に設けられている2つのロール(不図示)などにより
図2の紙面上右から左へ順次送られ、連続して樹脂フィルム16の欠陥の有無が検査される。
【0020】
(制御器11)
欠陥検査装置10は、受光装置12および点光源13と電気的に接続し、これらの制御を行う制御器11を有する。
【0021】
(点光源13)
点光源13は、LEDであるが、蛍光灯またはハロゲン光源であっても問題ない。本実施形態ではLEDであり、この場合、発する検査光の周波数が安定し、より微細な欠陥の検査が可能となる。また、LEDでは、光源の大きさを大きくすることなく維持しながら光量を大きくできる。
図1で点光源13から放出するように描かれている線は、点光源13から発せられる検査光のうち、受光装置12で受光される検査光を描いたものであり、実際に点光源13から発せられる検査光はこれらの線の外側にも放出されている。
【0022】
LEDは、指向特性が低く、半値角が90度以上であるものが好ましい。指向性が低い場合とは、照射光量の角度均一性が高いことを意味し、受光装置12での照度ムラが少なくなるからである。また、点光源13の形状は、球状体が好ましいが特にこれに限定されない。なお点光源13の大きさは、後述するように検査可能な欠陥の大きさによって決定されるが、点光源13が球状体である場合、直径で最大で50mm、最小で0.5mmであり、3mm程度の大きさが好適である。最大値の50mmは、検査される欠陥の大きさから算出されたものであり、0.5mm以下の場合は、光量が不足するからである。
【0023】
点光源13から放出され、ビームスプリッタ14に到達するまでの検査光30は、放出検査光30aである。この放出検査光30aは、ビームスプリッタ14により、第1反射検査光30bと、検査に使用することができない透過非検査光31とに分割される。そしてこの第1反射検査光30bは、再帰反射素子保有部材15により再帰反射され第2反射検査光30cとなる。さらにこの第2反射検査光30cは、ビームスプリッタ14により、透過検査光30dと、検査に使用することができない反射非検査光32とに分割される。この透過検査光30dが、被検査対象を透過して、受光装置12に受光される。
【0024】
光源が点光源13であることにより、屈折性欠点がより確実に検出される。
【0025】
(受光装置12)
図3に示すように、受光装置12は、撮像部21と、レンズ22とを備えている。受光装置12は、透過検査光30dを受光するものであり、例えば、ラインセンサ等のように複数の受光素子21sを有している。レンズ22は、透過検査光30dを集光して、撮像部21の受光素子21sに集光した光を入射する。
【0026】
なお、撮像部21がラインセンサ等のように複数の受光素子21sが並んで配設されているものの場合には、受光装置12は、複数の受光素子21sが並ぶ方向と被検査対象の幅方向とが平行となるように配設される。また、受光装置12の撮像部21は、受光素子21sを複数有するものであれば問題ないが、単体であっても同様の機能を有し、被検査対象の表面で反射した光を検出できる受光素子を有する機器であれば、とくに限定されない。
【0027】
(ビームスプリッタ14)
本実施形態に係る欠陥検査装置10は、ビームスプリッタ14を備えている。このビームスプリッタ14は、点光源13から放出された検査光30(放出検査光30a)を第1反射検査光30bと透過非検査光31とに分割する。ビームスプリッタ14は、このように光束を2つに分割する装置である。本実施形態のビームスプリッタ14は、反射光と透過光の強さがほぼ1:1となるハーフミラーである。ただし、ビームスプリッタ14はハーフミラーに限定されない。ビームスプリッタ14の構成は、プリズム型、平面型、ウェッジ基板型などがあるが、特に限定されない。
【0028】
(再帰反射素子保有部材15)
再帰反射素子保有部材15は、再帰反射素子を保有する部材である。再帰反射素子は、再帰反射が可能な素子であり、三角プリズム型、対面ミラー型、2面コーナー型などの構造がある。この再帰反射素子を保有する部材としては、再帰反射が可能なシート状部材である再帰反射シート、二鏡面反射ミラー、二面リフレクタアレイなどが該当する。本実施形態では、再帰反射素子保有部材15は、再帰反射シートが貼り付けられた平板状の部材である。
【0029】
再帰反射素子保有部材15が、再帰反射可能なシート状部材を含んでいるので、再帰反射素子保有部材15の製造コストを抑制できる。
【0030】
図4を用いて再帰反射素子保有部材15を用いた場合の作用を説明する。
図4(A)は本実施形態に係る欠陥検査装置10の検査光の状態を示した説明図であり、
図4(B)は従来の欠陥検査装置の検査光の状態を示した説明図である。
図4(A)では、
図2の点光源13を図の下に配置するととも、受光装置12を図の上に配置している。そして、点光源13を放出した検査光30の通過軌跡に沿って、下から上に検査光30がどのように幅方向で変化するかを示している。ここで、各検査光30a~30dの線は、樹脂フィルム16の幅方向のすべてを検査する際に用いられる検査光30の端部を模式的に示している。
【0031】
図4(A)に示すように、点光源13から放出された放出検査光30aは、所定角度で広がりながらビームスプリッタ14を通過する。ビームスプリッタ14では、放出検査光30aは第1反射検査光30bと透過非検査光31とに分割される。この際、第1反射検査光30bは、放出検査光30aと同じ角度で広がりながら再帰反射素子保有部材15に到達する。ここで、再帰反射素子保有部材15では、第1反射検査光30bが再帰反射し、第2反射検査光30cとなる。再帰反射が行われるため、第2反射検査光30cは、所定の角度で、幅方向に狭まる。そして再度ビームスプリッタ14により第2反射検査光30cは、透過検査光30dと反射非検査光32とに分割される。この際透過検査光30dは、第2反射検査光30cと同じ角度で狭まりながら、被検査対象である樹脂フィルム16を透過して受光装置12に到達する。
【0032】
図4(B)の従来の欠陥検査装置では、点光源53から放出された検査光57は、図示していないスクリーンを通す必要があり、
図4(B)の左右において中央部付近の光量が大きく、左右端部付近の光量が小さくなる。これに対し、
図4(A)に示す本実施形態に係る欠陥検査装置10では、再帰反射により樹脂フィルム16に向かう第2反射検査光30cは幅方向に狭まりながら受光装置12に向かうため、再帰反射素子保有部材15で再帰反射した第2反射検査光30cを無駄なく使用することができ、
図4(A)の左右において左右端部付近の光量が小さくなるのを抑制できる。
【0033】
光源から被検査対象に至る検査光30をビームスプリッタ14が第1反射検査光30bと透過非検査光31とに分割し、第1反射検査光30bを再帰反射素子保有部材15が反射する。再帰反射素子保有部材15は、入射した検査光30を入射した方向へ反射する、すなわち凹レンズと同等の働きをするため、ラインセンサの幅方向の長さを短くでき、これにより欠陥検査装置10の大型化を抑制できる。
【0034】
また、この構成の欠陥検査装置10では、被検査対象の幅方向の端部周辺の光量が少なくなることがなく、屈折性欠点を確実に検出することができる。
【0035】
被検査対象の一方の面側に受光装置12が設置され、他方の面側に光源、ビームスプリッタ14、再帰反射素子保有部材15が設置され、受光装置12は被検査対象を透過した検査光30を受光することにより、透明な被検査対象の欠陥を検査することができる。
【0036】
<第2実施形態>
図5に本発明の第2実施形態に係る欠陥検査装置10の概略構成の側面図を示す。第1実施形態と第2実施形態との相違点は、構成要素のうち再帰反射素子保有部材15の姿勢のみであるので、他の説明は省略する。
【0037】
第1実施形態の側面図である
図2では、再帰反射素子保有部材15の
図2における上側表面は、側面視で第1反射検査光30bに対して垂直になっている。これに対し本実施形態では、再帰反射素子保有部材15の
図5における上側表面は、側面視で第1反射検査光30bに対して角度λを持つように、すなわち非垂直になるように配置されている。
【0038】
再帰反射素子保有部材15の種類によっては、この再帰反射素子保有部材15で正反射された正反射光の光量が大きくなる場合がある。
図5に示すように再帰反射素子保有部材15を配置することにより、再帰反射素子保有部材15により正反射した正反射光が、受光装置12に受光されることが抑制される。本実施形態では、正反射光のピークが、受光装置12で受光されないように、角度λは決定されている。角度λは、再帰反射素子保有部材15により決定されるが、例えば85~87度、93~95度にすることができる。
【0039】
再帰反射素子保有部材15により正反射された正反射光のピークが受光装置12で受光されていないことにより、受光装置12で受光される光の大部分が透過検査光30dで占められ、検査精度が向上する。
【0040】
なお、本実施形態では、側面視で所定の角度を持つように再帰反射素子保有部材15が配置されているが、これに限定されない。例えば正面視で所定の角度を持つように再帰反射素子保有部材15が配置されている場合もある。
【0041】
<第3実施形態>
図6に本発明の第3実施形態に係る欠陥検査装置10の概略構成の斜視図を、
図7にその側面図を示す。
図6および
図7ともに、欠陥検査装置10の主要構成要素のみを記載し、他の部分は省略している。また第1実施形態と第3実施形態との相違点は、構成要素の配置であり、各構成要素は、第1実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0042】
本実施形態に係る欠陥検査装置10では、被検査対象で反射した検査光30を受光装置12が受光する。この場合、
図6に示すように被検査対象の一方の面側、すなわち被検査対象の上側に、受光装置12と点光源13とビームスプリッタ14と再帰反射素子保有部材15とが設置されている。
【0043】
本実施形態に係る欠陥検査装置10では、検査光30は、シート状の被検査対象から、
図7にあるように側面視で所定の角度θをもって出射して受光装置12に入射する。加えて、本実施形態に係る欠陥検査装置10では、点光源13から照射された放出検査光30a(検査光30)は、ビームスプリッタ14と再帰反射素子保有部材15を経由することで、第2反射検査光30c(検査光30)をシート状の被検査対象に対し、所定の角度θとして入射させている。
【0044】
被検査対象の一方の面側に受光装置12、光源、ビームスプリッタ14、再帰反射素子保有部材15が設置されているので、受光装置12は被検査対象で反射した検査光30を受光することとなり、検査光30を透過する被検査対象だけでなく、検査光30を透過しない被検査対象についても欠陥を検査することができる。なお、検査光30を透過する被検査対象において、被検査対象で反射した検査光を受光する場合、例えば被検査対象の表面にあるコーティングの異常などの欠陥を検出することが可能となる。
【0045】
なお、本実施形態においては、被検査対象に対して透過検査光30dが被検査対象に角度θで入射し、角度θで出射する正反射について説明したが、これに限定されない。例えば、被検査対象で乱反射される検査光30を利用して欠陥を検査する場合も本発明に含まれる。
【0046】
<第4実施形態>
図8に本発明の第4実施形態に係る欠陥検査装置10の概略構成の側面図を示す。第3実施形態と第4実施形態との相違点は、構成要素のうち再帰反射素子保有部材15の姿勢のみであるので、他の説明は省略する。
【0047】
第3実施形態の側面図である
図7では、再帰反射素子保有部材15の
図7における斜め下側を向いた表面は、側面視で第1反射検査光30bに対して垂直になっている。これに対し本実施形態では、再帰反射素子保有部材15の
図8における斜め下側を向いた表面は、側面視で第1反射検査光30bに対して角度λを持つように、すなわち非垂直になるように配置されている。
【0048】
このように再帰反射素子保有部材15を配置するのは、再帰反射素子保有部材15により正反射した正反射光が、できるだけ受光装置12に受光されるのを防止するためである。本実施形態では、正反射光のピークが、受光装置12で受光されないように、角度λは決定されている。
【0049】
再帰反射素子保有部材15により正反射された正反射光のピークが受光装置12で受光されていないことにより、受光装置12で受光される光の大部分が透過検査光30dで占められ、検査精度が向上する。
【0050】
なお、本実施形態では、側面視で所定の角度を持つように再帰反射素子保有部材15が配置されているが、これに限定されない。例えば正面視で所定の角度を持つように再帰反射素子保有部材15が配置されている場合もある。
【0051】
<他の実施形態>
上記の実施形態に係る欠陥検査装置10では、点光源13を光源として説明したが、特にこれに限定されない。例えば光源には線光源も含まれる。
【0052】
<再帰反射素子保有部材15が使用されている欠陥検査装置>
本発明に係る欠陥検査装置10は、再帰反射素子保有部材15とビームスプリッタ14とを組み合わせて構成されているが、ビームスプリッタ14を用いずに欠陥検査装置を構成することも可能である。例えば、第1実施形態の構成から、ビームスプリッタ14の位置および姿勢で再帰反射素子保有部材15を配置し、点光源13から出射された検査光30を再帰反射させ、被検査対象を透過させて受光装置12に受光させる構成の欠陥検査装置が該当する。この場合、再帰反射素子保有部材15は、二鏡面反射ミラーまたは二面リフレクタアレイが用いられることが好ましい。
【符号の説明】
【0053】
10 欠陥検査装置
12 受光装置
13 点光源
14 ビームスプリッタ
15 再帰反射素子保有部材
30 検査光
30b 第1反射検査光
30c 第2反射検査光
30d 透過検査光
31 透過非検査光
32 反射非検査光
【手続補正書】
【提出日】2022-01-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の被検査対象の欠陥を検査する装置であって、
前記被検査対象に対する検査光を放出する光源と、
該光源からの前記検査光を、前記被検査対象を経由して受光する受光装置と、を備え、
前記光源から前記被検査対象に至る検査光を、第1反射検査光と透過非検査光とに分割するビームスプリッタと、
前記第1反射検査光を反射し第2反射検査光とする再帰反射素子保有部材と、をさらに備え、
前記ビームスプリッタは、前記第2反射検査光を、透過検査光と反射非検査光とにさらに分割し、
前記受光装置が受光する検査光が、前記被検査対象を経由した前記透過検査光であり、
前記再帰反射素子保有部材が、
前記第1反射検査光に対して非垂直に配置されることにより、
前記第2反射検査光のうち、前記再帰反射素子保有部材により正反射された正反射光のピークを前記受光装置が受光しない、
ことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記被検査対象の一方の面側に、前記受光装置が設置され、
その他方の面側に、前記光源と、前記ビームスプリッタと、前記再帰反射素子保有部材と、が設置され、
前記受光装置は、前記被検査対象で透過した検査光を受光する、
ことを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記被検査対象の一方の面側に、前記受光装置と、前記光源と、前記ビームスプリッタと、前記再帰反射素子保有部材と、が設置され、
前記再帰反射素子保有部材に対し垂直であり、かつ前記光源および前記受光装置を含む側方基準面において、
前記光源から放出され前記ビームスプリッタに到るまでの検査光の通過軌跡と、前記透過検査光の通過軌跡とが交差するよう、前記受光装置と前記光源とが配置され、
前記受光装置は、前記被検査対象で反射した検査光を受光する、
ことを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記光源が点光源であり、
前記点光源が球状体であり、前記球状体の直径が0.5mm以上3mm以下である、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記再帰反射素子保有部材が、
再帰反射が可能なシート状部材を含んでいる、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の欠陥検査装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
第1発明の欠陥検査装置は、シート状の被検査対象の欠陥を検査する装置であって、前記被検査対象に対する検査光を放出する光源と、該光源からの前記検査光を、前記被検査対象を経由して受光する受光装置と、を備え、前記光源から前記被検査対象に至る検査光を、第1反射検査光と透過非検査光とに分割するビームスプリッタと、前記第1反射検査光を反射し第2反射検査光とする再帰反射素子保有部材と、をさらに備え、前記ビームスプリッタは、前記第2反射検査光を、透過検査光と反射非検査光とにさらに分割し、前記受光装置が受光する検査光が、前記被検査対象を経由した前記透過検査光であり、前記再帰反射素子保有部材が、前記第1反射検査光に対して非垂直に配置されることにより、前記第2反射検査光のうち、前記再帰反射素子保有部材により正反射された正反射光のピークを前記受光装置が受光しないことを特徴とする。
第2発明の欠陥検査装置は、第1発明において、前記被検査対象の一方の面側に、前記受光装置が設置され、その他方の面側に、前記光源と、前記ビームスプリッタと、前記再帰反射素子保有部材と、が設置され、前記受光装置は、前記被検査対象で透過した検査光を受光することを特徴とする。
第3発明の欠陥検査装置は、第1発明において、前記被検査対象の一方の面側に、前記受光装置と、前記光源と、前記ビームスプリッタと、前記再帰反射素子保有部材と、が設置され、前記再帰反射素子保有部材に対し垂直であり、かつ前記光源および前記受光装置を含む側方基準面において、前記光源から放出され前記ビームスプリッタに到るまでの検査光の通過軌跡と、前記透過検査光の通過軌跡とが交差するよう、前記受光装置と前記光源とが配置され、前記受光装置は、前記被検査対象で反射した検査光を受光することを特徴とする。
第4発明の欠陥検査装置は、第1発明から第3発明のいずれかにおいて、前記光源が点光源であり、前記点光源が球状体であり、前記球状体の直径が0.5mm以上3mm以下であることを特徴とする。
第5発明の欠陥検査装置は、第1発明から第4発明のいずれかにおいて、前記再帰反射素子保有部材が、再帰反射が可能なシート状部材を含んでいることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
第1発明によれば、光源から被検査対象に至る検査光をビームスプリッタが第1反射検査光と透過非検査光とに分割し、第1反射検査光を再帰反射素子保有部材が反射する。再帰反射素子保有部材は、入射した検査光を入射した方向へ反射する、すなわち凹レンズと同等の働きをするため、ラインセンサの幅方向の長さを短くでき、これにより欠陥検査装置の大型化を抑制できる。また、この構成の欠陥検査装置では、被検査対象の幅方向の端部周辺の光量が少なくなることがなく、屈折性欠点を確実に検出することができる。
また、再帰反射素子保有部材により正反射された正反射光のピークが受光装置で受光されていないことにより、受光装置で受光される光の大部分が透過検査光で占められ、検査精度が向上する。
第2発明によれば、被検査対象の一方の面側に受光装置が設置され、他方の面側に光源、ビームスプリッタ、再帰反射素子保有部材が設置されているので、受光装置は被検査対象を透過した検査光を受光することとなり、透明な被検査対象の欠陥を検査することができる。
第3発明によれば、被検査対象の一方の面側に受光装置、光源、ビームスプリッタ、再帰反射素子保有部材が設置されているので、受光装置は被検査対象で反射した検査光を受光することとなり、検査光を透過する被検査対象だけでなく、検査光を透過しない被検査対象についても欠陥を検査することができる。
第4発明によれば、光源が点光源であることにより、屈折性欠点がより確実に検出できる。
第5発明によれば、再帰反射素子保有部材が、再帰反射可能なシート状部材を含んでいるので、再帰反射素子保有部材の製造コストを抑制できる。