(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045536
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】被締付部材の緊解用ソケット、及び被締付部材の緊解機
(51)【国際特許分類】
E01B 29/28 20060101AFI20220314BHJP
【FI】
E01B29/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151178
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】591075641
【氏名又は名称】東鉄工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390034706
【氏名又は名称】ヨコタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】麻生 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】松山 明夫
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 貴志
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 健太郎
【テーマコード(参考)】
2D057
【Fターム(参考)】
2D057BA29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】被締付部材の近傍に締付作業の障害となり得る他部材が設置される作業環境下においても、高い作業効率で被締付部材を締付けできる被締付部材の緊解用ソケット、及び被締付部材の緊解機を提供する。
【解決手段】緊解用ソケット30は、締付工具、及び支持手段を具備する被締付部材の緊解機に使用される。支持手段は、締付工具の回転軸心を移動可能に、締付工具を支持する。緊解用ソケットは、軸状のソケット本体と、可動体と、凹状の誘導部と、第1付勢手段とを具備する。可動体は、締付開始時の初期位置と後退位置との間で移動可能にソケット本体に支持される。誘導部は、可動体のフランジ部の下面に、回転軸心に対し偏心形成され、被嵌合部B1と摺接し、嵌合部が被嵌合部B1と嵌合する嵌合位置に締付工具を誘導する。第1付勢手段は、可動体を下方に付勢する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも被締付部材(B)を締付ける際に回転力を付与する締付工具(20)、及び前記締付工具(20)の回転軸心を移動可能に、前記締付工具(20)を支持する支持手段を具備する被締付部材の緊解機に使用される被締付部材の緊解用ソケットであって、
前記締付工具(20)の前記回転軸心に沿って延びる軸状のソケット本体(31)と、
前記ソケット本体(31)における軸方向の一端に形成され、前記締付工具(20)と連結される連結部(32)と、
前記ソケット本体(31)における前記軸方向の他端に形成され、前記被締付部材(B)の被嵌合部(B1)と嵌合する嵌合部(33)と、
前記ソケット本体(31)が挿通可能である筒状部(34a)、及び前記筒状部(34a)の一端に形成され、前記被締付部材(B)の前記被嵌合部(B1)と対向するフランジ部(34b)を有し、前記軸方向に沿って、締付開始時の初期位置(P1)と、前記初期位置(P1)より前記ソケット本体(31)に対し所定長さだけ締付方向(X1)において後退した後退位置(P2)との間で移動可能に、前記ソケット本体(31)に支持される可動体(34)と、
前記フランジ部(34b)における前記被嵌合部(B1)との対向面に、前記回転軸心に対し偏心形成され、前記回転軸心方向からの平面視において前記嵌合部(33)を内包しており、前記被嵌合部(B1)と摺接し、前記嵌合部(33)が前記被嵌合部(B1)と嵌合する嵌合位置に前記締付工具(20)を誘導する凹状の誘導部(35)と、
前記可動体(34)を前記初期位置(P1)に向かって付勢する第1付勢手段(36)
とを具備する、被締付部材の緊解用ソケット。
【請求項2】
前記ソケット本体(31)は、前記連結部(32)が一端に形成される第1軸体(31a)と、前記嵌合部(33)が一端に形成され、前記軸方向に沿って所定範囲で移動可能に、前記第1軸体(31a)に支持される第2軸体(31b)とを有しており、
前記第2軸体(31b)を前記第1軸体(31a)に対し前記締付方向に付勢する第2付勢手段(37)を更に具備する、請求項1に記載の被締付部材の緊解用ソケット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の被締付部材の緊解用ソケットと、
被締付部材(B)を締付ける締付位置に移動する台車(10)と、
少なくとも被締付部材(B)を締付ける際に、前記緊解用ソケットに回転力を付与する締付工具(20)と、
前記台車(10)に取付けられ、前記締付工具(20)を前記回転軸心に沿って駆動する駆動手段(50)と、
前記締付工具(20)の回転軸心を移動可能に、前記締付工具(20)を前記台車(10)に支持する支持手段(60)
とを具備する被締付部材の緊解機。
【請求項4】
前記台車(10)は、鉄道レール(R)に沿って移動するための車輪部(12)を有している、請求項3に記載の被締付部材の緊解機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被締付部材の緊解用ソケット、及び被締付部材の緊解機、特に、鉄道レールを鉄道軌道において固定する、ボルト、ナットなどの被締付部材を締付ける締付作業、及び被締付部材を緩める緩解作業に使用される被締付部材の緊解用ソケット、及び被締付部材の緊解機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道レールを枕木や軌道スラブなどの軌道構造体に固定する、ボルト、ナットなどの締付作業、及び緩解作業に使用される被締付部材の緊解用ソケットとして、特許文献1には、軸状のソケット本体を具備する被締付部材の緊解用ソケットが記載されている。ソケットは、電動機などの駆動源を有する締付工具に取付けられ、回転される。
【0003】
被締付部材の緊解機は、レールに沿って移動する台車を有している。締付工具は、水平方向に所定範囲で移動自在に、台車に支持される。また、締付工具は、締付作業、及び緩解作業を行う際に、駆動機構によって、上下に駆動される。
【0004】
ソケットは、締付工具と連結される連結部を上端に有し、下端に、被締付部材としてのボルトの頭部と嵌合する嵌合部を有する。嵌合部の周囲には、フランジ部が形成され、フランジ部の下面には、凹状の誘導部が形成される。
【0005】
鉄道レールを固定するためのボルトは、軌道構造体上の各締付位置に仮締めされており、緊解機は、レールに沿って移動し、各締付位置において、ソケットを回転しながら締付工具を下降し、各締付位置においてボルトを締付ける。
【0006】
しかしながら、各締付位置において仮締めされているボルトの位置には、レールと直交する方向においては、基準位置に対し、±10ミリメートル程度のずれがある。従って、ソケットを回転しながら締付工具を下降したとき、ソケットにおける嵌合部の軸心とボルトの軸心とが合致しないことがある。
【0007】
特許文献1に記載の被締付部材の緊解用ソケットによれば、嵌合部の軸心とボルトの軸心とが合致しないとき、フランジ部下面の誘導部がボルトの頭と摺接し、嵌合部の軸心とボルトの軸心とが合致するように締付工具が水平方向に移動し、嵌合部とボルトの頭部とが嵌合される。従って、実際のボルトの位置が基準位置からずれていても、嵌合部とボルトの頭部とを自動的に嵌合でき、高い作業効率で被締付部材を締付けできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年、レールの転倒を防止する転倒防止装置を鉄道軌道に設置することが、特に新幹線において計画されている。転倒防止装置は、一対のレール支持具を含む。一対のレール支持具は、レールを枕木などの軌道構造体に固定するためのボルトによって、レールを間に挟むように、軌道構造体に固定される。そして、各レール支持具の上面には、凹部が設けられており、ボルト挿通孔は、凹部の底部に開口している。
【0010】
ボルト挿通孔が、凹部の底部に開口していることによって、ボルトが締付けられるとき、ボルトの頭は凹部の中に入り込んでいく。従って、特許文献1に記載の被締付部材の緊解用ソケットを使用し、ボルトを締付けようとすると、締付途中に、フランジ部が、レール支持具の上面に当接し、ボルトの締付を完了できなくなることが考えられる。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、被締付部材の近傍に締付作業の障害となる他部材が設置される作業環境下においても、高い作業効率で被締付部材を締付けできる被締付部材の緊解用ソケット、及び被締付部材の緊解機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願に開示する被締付部材の緊解用ソケットは、締付工具(20)、及び支持手段(60)を具備する被締付部材の緊解機に使用される。前記締付工具(20)は、少なくとも被締付部材(B)を締付ける際に回転力を付与する。前記支持手段(60)は、前記締付工具(20)の回転軸心を移動可能に、前記締付工具(20)を支持する。そして、被締付部材の緊解用ソケットは、軸状のソケット本体(31)と、連結部(32)と、嵌合部(33)と、可動体(34)と、凹状の誘導部(35)と、第1付勢手段(36)とを具備する。前記ソケット本体(31)は、前記締付工具(20)の前記回転軸心に沿って延びる部材である。前記連結部(32)は、前記ソケット本体(31)における軸方向の一端に形成され、前記締付工具(20)と連結される。前記嵌合部(33)は、前記ソケット本体(31)における前記軸方向の他端に形成され、前記被締付部材(B)の被嵌合部(B1)と嵌合する。前記可動体(34)は、筒状部(34a)、及びフランジ部(34b)を有し、前記軸方向に沿って、締付開始時の初期位置(P1)と後退位置(P2)との間で移動可能に、前記ソケット本体(31)に支持される。前記筒状部(34a)は、前記ソケット本体(31)が挿通可能である。前記フランジ部(34b)は、前記筒状部(34a)の一端に形成され、前記被締付部材(B)の前記被嵌合部(B1)と対向する。前記後退位置(P2)は、前記初期位置(P1)より前記ソケット本体(31)に対し所定長さだけ締付方向(X1)において後退した位置である。締付方向(X1)とは、被締付部材(B)が締付けられるときに、被締付部材(B)の被嵌合部(B1)が移動する方向である。前記誘導部(35)は、前記フランジ部(34b)における前記被嵌合部(B1)との対向面に、前記回転軸心に対し偏心形成され、前記回転軸心方向からの平面視において前記嵌合部(33)を内包しており、前記被嵌合部(B1)と摺接し、前記嵌合部(33)が前記被嵌合部(B1)と嵌合する嵌合位置に前記締付工具(20)を誘導する。前記第1付勢手段(36)は、前記可動体(34)を前記初期位置(P1)に向かって付勢する。
【0013】
本願に開示する被締付部材の緊解用ソケットにおいては、前記ソケット本体(31)は、第1軸体(31a)と、第2軸体(31b)とを有する。前記第1軸体(31a)は、前記連結部(32)が一端に形成される。前記第2軸体(31b)は、前記嵌合部(33)が一端に形成され、前記軸方向に沿って所定範囲で移動可能に、前記第1軸体(31a)に支持される。そして、本願に開示する被締付部材の緊解用ソケットは、第2付勢手段(37)を更に具備する。前記第2付勢手段(37)は、前記第2軸体(31b)を前記第1軸体(31a)に対し前記締付方向に付勢する。
【0014】
本願に開示する被締付部材の緊解機は、上記した被締付部材の緊解用ソケットと、台車(10)と、締付工具(20)と、駆動手段(50)と、支持手段(60)とを具備する。前記台車(10)は、被締付部材(B)を締付ける締付位置に移動する。「締付位置」とは、被締付部材(B)の締付作業が行われる位置であり、仮締めされている被締付部材(B)の軸心と締付工具(20)の回転軸心とが、例えば±10ミリメートル程度の誤差の範囲で合致する位置である。前記締付工具(20)は、少なくとも被締付部材(B)を締付ける際に、前記緊解用ソケットに回転力を付与する。前記駆動手段(50)は、前記台車(10)に取付けられ、前記締付工具(20)を前記回転軸心に沿って駆動する。前記支持手段(60)は、前記締付工具(20)の回転軸心を移動可能に、前記締付工具(20)を前記台車(10)に支持する。
【0015】
本願に開示する被締付部材の緊解機において、前記台車(10)は、鉄道レール(R)に沿って移動するための車輪部(12)を有している。
【発明の効果】
【0016】
本発明の被締付部材の緊解用ソケット、及び被締付部材の緊解機によれば、被締付部材の近傍に締付作業の障害となる他部材が設置される作業環境下においても、高い作業効率で被締付部材を締付けできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る被締付部材の緊解機を示す正面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る被締付部材の緊解用ソケットを示す一部断面図であって、誘導部が被締付部材の被嵌合部に当接している一部断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る被締付部材の緊解用ソケットを示す一部断面図であって、嵌合部と被締付部材とが嵌合している一部断面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る被締付部材の緊解用ソケットを示す一部断面図であって、締付作業完了時の一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る被締付部材の緊解用ソケット、及び被締付部材の緊解機を図面に基づいて詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するのに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1~
図2に示すように、本発明の実施形態に係る被締付部材の緊解機は、鉄道レールRを枕木や軌道スラブなどの軌道構造体1に固定するボルト、ナット等の被締付部材Bの締付作業、及び緩解作業を行うものであり、台車10と、締付工具20と、ソケット30と、駆動手段50と、支持手段60とを具備する。
【0020】
台車10は、車輪部12を有しており、被締付部材Bを締付ける締付位置に、鉄道レールRに沿って移動可能である。締付位置は、被締付部材Bの締付作業が行われる位置であり、仮締めされている被締付部材Bの軸心と締付工具20の回転軸心とが、例えば±10ミリメートル程度の誤差の範囲で合致する位置である。また、台車10は、位置ずれ防止機構13を有している。位置ずれ防止機構13は、鉄道レールRに対する車輪部12の横ずれを防止する。
【0021】
締付工具20は、図示しない電動機などの駆動源を有しており、少なくとも被締付部材Bの締付作業を行う際に、ソケット30に回転力を付与する。締付工具20は、例えば衝撃式締付工具、又はナットランナである。なお、実施形態においては、締付工具20は、被締付部材Bの緩解作業を行う際にも、ソケット30に回転力を付与する。しかしながら、以下の実施形態においては、本発明の理解を容易とするという観点から被締付部材Bの締付作業を中心に本発明を説明する。
【0022】
図3~
図5に示すように、駆動手段50は、台車10に搭載される後述のユニット部14に取付けられ、締付工具20の回転軸心に沿って締付工具20を駆動する。実施形態においては、締付工具20の回転軸心は、上下に延びており、駆動手段50は、締付工具20を上下に駆動する。具体的には、駆動手段50は、被締付部材Bの締付作業を行う際に、締付工具20を下方に駆動し、締付作業が完了すると、台車10の移動の障害とならない所定位置まで、締付工具20を上方に駆動する。
【0023】
支持手段60は、締付工具20の回転軸心を移動可能に、締付工具20を台車10に支持する。実施形態においては、支持手段60は、締付工具20を水平方向に所定範囲で平行移動可能に、台車10に支持する。また、実施形態においては、支持手段60が駆動手段50によって上下に駆動されることによって、締付工具20が上下に駆動される。
【0024】
図3、
図4に示すように、鉄道軌道には、鉄道レールRの転倒を防止する転倒防止装置が設置されることがある。転倒防止装置は、鉄道レールRを間に挟むようにして設置される一対の転倒防止具2、3を含む。一対の転倒防止具2、3は、被締付部材Bによって、鉄道レールRとともに軌道構造体1に固定される。
【0025】
図3に示すように、一対の転倒防止具2、3は、上面に、凹部2a、3aを有している。凹部2a、3aの底部には、被締付部材Bが挿通される挿通孔が開口している。そして、締付作業が完了した状態においては、被締付部材Bの被嵌合部B1は、凹部2a、3aの中に嵌り込んだ状態となっている。被嵌合部B1は、例えばボルトの頭部である。
【0026】
次に、
図6~
図10を参照して、本発明の実施形態に係る被締付部材の緊解用ソケットを説明する。なお、台車10、駆動手段50、及び支持手段60の更なる詳細については、
図1~
図5を参照して、後述する。
【0027】
図6に示すように、ソケット30は、ソケット本体31と、連結部32と、嵌合部33と、可動体34と、誘導部35と、第1付勢手段としての第1スプリング36と、第2付勢手段としての第2スプリング37とを具備する。
【0028】
ソケット本体31は、締付工具20の回転軸心に沿って延びる軸状の部材である。連結部32は、ソケット本体31の上端に設けられており、締付工具20と連結され、締付工具20から付与される回転力をソケット本体31に伝達する。連結部32は、具体的には、締付工具20の出力軸と嵌合する凹部などを含む。嵌合部33は、ソケット本体31の下端に設けられており、被締付部材Bを締付可能に、被締付部材Bの被嵌合部B1と嵌合する。
【0029】
また、
図6に示すように、ソケット本体31は、第1軸体31aと、第2軸体31bとを有している。第2軸体31bは、締付工具20の回転軸心に沿って所定範囲で移動可能に、第1軸体31aに支持される。
【0030】
第1軸体31aは、連結部32が上端に形成され、下端に抜け止め31dが形成される。また、第1軸体31aは、外周面に段差39を有しており、段差39の上側が大径部に形成され、段差39の下側が小径部に形成される。また、段差39には、円筒状のスカート部40が下方向に突設され、スカート部40の内側には、小径部との間に円環状の空隙が形成され、当該空隙には、第2軸体31bの上端38が進入可能である。
【0031】
図6に示すように、第2軸体31bは、中空円筒状であり、下端に嵌合部33が形成される。第2軸体31bの中空部には、上端38の開口を介し、第1軸体31aの小径部が挿入される。第1軸体31aの小径部の外周面には、ガイド溝31eが形成されており、第2軸体31bは、ガイド溝31eによって、所定範囲で移動可能且つ相対回転不可能に、第1軸体31aに支持される。
【0032】
また、第2軸体31bの下端において、嵌合部33の周囲には、
図6、
図7に示すように、嵌合部33と同軸心に、平面視円形のテーパ部31cが形成されている。テーパ部31cが嵌合部33の周囲に形成されることによって、被嵌合部B1と嵌合部33とが円滑に嵌合される。
【0033】
可動体34は、中空の筒状部34a、及びフランジ部34bを有し、
図6、
図10に示すように、締付開始時の初期位置P1と後退位置P2との間で移動可能に、ソケット本体31の第2軸体31bに支持される。後退位置P2は、初期位置P1より所定長さだけ、第2軸体31bに対し締付方向X1において後退した位置である。締付方向X1とは、被締付部材Bが締付けられるときに、被締付部材Bの被嵌合部B1が移動する方向である。なお、
図6、
図10においては、可動体34における上端34cの位置によって、初期位置P1、後退位置P2を示している。「所定長さ」は、一対の転倒防止具2、3の上面に設けられた凹部2a、3aの深さを基準に決められるものであり、実施形態においては、2~3センチメートルであるが、凹部2a、3aの深さに応じて、「所定長さ」は適宜に設定できる。
【0034】
また、筒状部34aは、
図4、
図6に示すように、一対の長孔34dを有している。一対の長孔34dは、ソケット本体31の軸方向に沿って延びている。一対の長孔34dは、ピン34eの両端部と係合し、可動体34が第2軸体31bに対し回転することを阻止するとともに、可動体34が第2軸体31bに対し移動する最大の移動範囲を規定している。
【0035】
ピン34eは、第2軸体31bの中空部周壁に設けられた一対のピン孔に挿入され、第2軸体31bの中心軸と直交するように設置される。ピン34eの両端部は、第2軸体31bの外周面から所定長さだけ外側に突出し、一対の長孔34dと係合している。可動体34が初期位置P1に位置するとき、ピン34eの両端部は、一対の長孔34dの各上端に近接し、可動体34が後退位置P2に位置するとき、ピン34eの両端部は、一対の長孔34dの各下端に近接する。
【0036】
図6に示すように、フランジ部34bは、筒状部34aの下端に形成され、被締付部材Bの被嵌合部B1と対向する。
【0037】
図6、
図7に示すように、誘導部35は、フランジ部34bにおける被嵌合部B1との対向面に、回転軸心S1に対し偏心形成され、被嵌合部B1と摺接し、嵌合部33が被嵌合部B1と嵌合する嵌合位置に、締付工具20を誘導する。フランジ部34bにおける被嵌合部B1との対向面は、実施形態においては、フランジ部34bの下面である。「嵌合位置」とは、嵌合部33が被嵌合部B1と嵌合するときの締付工具20の位置であり、例えば締付工具20の回転軸心S1が、被締付部材Bの軸心S2と合致するときの締付工具20の位置である。
【0038】
図7に示すように、誘導部35は、嵌合部33よりも大径の円形状を有し、回転軸心方向からの平面視、実施形態においては下方からの平面視において嵌合部33を内包している。後述するように、締付工具20の回転軸心S1が、被締付部材Bの軸心S2と合致していないとき、誘導部35が被嵌合部B1と摺接することによって、締付工具20が嵌合位置に誘導される。従って、誘導部35は、フランジ部34bの下面において、可能な限り大きな径で偏心形成されることが好ましい。
【0039】
図6、
図7に示すように、誘導部35の底部は、フランジ部34bの下面と平行な平坦面となっており、誘導部35は、外縁円周に沿って、フランジ部34bの下面との間に垂直な段差を有している。また、誘導部35の底部には、回転軸心S1と同軸心に、円形開口35aが形成されている。円形開口35aは、第2軸体31bの下端外径と略等しい内径を有し、第2軸体31bの下端が通過可能である。
図6に示すように、第2軸体31bの下端は、可動体34が初期位置P1に位置するとき、誘導部35の底部と略面一となる。また、誘導部35は、円形開口35aに外縁円周が外接又は近接するように、回転軸心S1に対し偏心形成されている。
【0040】
第1付勢手段としての第1スプリング36は、実施形態においては、第2軸体31bに対し可動体34を初期位置P1に向かって付勢する。第1スプリング36は、圧縮された状態で、上端が、スプリングストッパ34fに当接し、下端が、筒状部34aの外周面に形成された段差に当接している。
【0041】
第2付勢手段としての第2スプリング37は、第1スプリング36よりも大きな付勢力によって、第1軸体31aに対し第2軸体31bを締付方向X1に付勢する。実施形態においては、第2スプリング37は、圧縮された状態で、上端が、第1軸体31aの段差39に当接し、下端が、第2軸体31bの外周面に形成された段差に当接している。
【0042】
次に、
図6~
図10を参照して、締付工具20によって被締付部材Bが締付けられるときのソケット30の動作を説明する。
【0043】
図6、
図7に示すように、誘導部35に被嵌合部B1が当接した状態でソケット30が回転すると、被嵌合部B1が、誘導部35における外縁円周の段差と当接する。被嵌合部B1が誘導部35の段差と当接した状態で、ソケット30が更に回転すると、被嵌合部B1からフランジ部34bに力が加わり、締付工具20が支持手段60によって平行移動され、
図8、
図9に示すように、嵌合部33と被嵌合部B1とが嵌合する。
【0044】
嵌合部33と被嵌合部B1とが嵌合すると、被締付部材Bの締付けが開始される。被締付部材Bの締付けが開始されてから締付けが完了するまでの途中の段階で、フランジ部34bは、各転倒防止具2、3の上面と当接する。フランジ部34bが各転倒防止具2、3の上面と当接すると、
図10に示すように、可動体34は、第1スプリング36の付勢力に抗して、第2軸体31bに対し上方に移動し、第2軸体31bの下端だけが、転倒防止具2の凹部2aの内部に進入し、被締付部材Bが締付けられる。締付作業の完了時には、可動体34は、退避位置P2まで移動している。
【0045】
被締付部材Bの締付けが完了すると、ソケット30の回転が停止され、駆動手段50によって、締付工具20が上方に駆動され、第1スプリング36の付勢力によって、可動体34が初期位置P1に移動され、第1軸体31aと第2軸体31bとの位置関係は、
図6に示す、締付開始時の位置関係に復帰する。
【0046】
以上、
図6~
図10を参照して説明したように、実施形態のソケット30によれば、支持手段60によって、回転軸心を移動可能に、締付工具20が台車10に支持され、誘導部35によって、被嵌合部B1と嵌合部33とが嵌合する嵌合位置に締付工具20が誘導される。従って、被締付部材Bが軌道構造体1に仮締めされている実際の締付位置が基準位置から、想定される誤差の範囲でずれていても、被嵌合部B1と嵌合部33とを自動的に嵌合することができ、高い作業効率で被締付部材Bを締付けできる。
【0047】
また、誘導部35がフランジ部34bの下面に形成され、フランジ部34bを有する可動体34が、初期位置P1と退避位置P2との間で移動可能にソケット本体31に支持され、第1スプリング36によって初期位置P1に向かって付勢される。従って、誘導部35によって被嵌合部B1と嵌合部33とが嵌合された後、被締付部材Bが締付けられるときに、フランジ部34bが転倒防止具2、3の上面と当接しても、
図10に示すように、可動体34は、退避位置P2まで移動可能であり、転倒防止具2、3が締付作業の障害とならず、締付作業を完了できる。
【0048】
以上のとおり、実施形態に係る被締付部材の緊解用ソケット、及び被締付部材の緊解機によれば、被締付部材Bの近傍に締付作業の障害となる他部材が設置される作業環境下においても、高い作業効率で被締付部材を締付けできる。
【0049】
また、
図6~
図10を参照して説明したように、実施形態のソケット30によれば、第2付勢手段としての第2スプリング37が、第1軸体31aに対し第2軸体31bを締付方向X1に付勢している。従って、締付工具20の回転軸心S1と、被締付部材Bの軸心S2とが合致せずに、第2軸体31bの下端が被嵌合部B1に当接しても、締付工具20の締付方向X1への移動を停止せずに締付作業を完了することができ、更に高い作業効率で被締付部材Bを締付けできる。また、第2軸体31bの下端が被嵌合部B1に当接したときに、締付工具20、駆動手段50、及び支持手段60に加わる衝撃を緩衝でき、緊解機の耐久性を向上できる。
【0050】
詳述すると、締付工具20の回転軸心S1と、被締付部材Bの軸心S2とが合致せず、第2軸体31bの下端が被嵌合部B1に当接すると、第1軸体31aだけが下降を継続し、第2軸体31bの下降は停止する。第2軸体31bの下降が停止されると、誘導部35によって、締付工具20の回転軸心S1と被締付部材Bの軸心S2とが合致されるまでの間、第2スプリング37に付勢力が蓄積される。
【0051】
誘導部35によって、締付工具20の回転軸心S1と被締付部材Bの軸心S2とが合致されると、第2スプリング37に蓄積された付勢力が解放され、第2軸体31bは瞬間的に下方に移動し、被嵌合部B1と嵌合部33とが嵌合する。被嵌合部B1と嵌合部33とが嵌合すると、被締付部材Bの締付けが開始され、締付けが完了すると、締付工具20が所定のトルクを検出し、ソケット30の回転を停止する。また、駆動手段50は、締付工具20の駆動方向を反転し、締付工具20を上方に駆動する。
【0052】
以上のとおり、第2スプリング37が、第2軸体31bを締付方向X1に付勢していることによって、駆動手段50が締付作業の際に締付工具20を下方に駆動するとき、締付作業が完了するまでの間、締付工具20の移動を停止することなく締付作業を完了できる。従って、締付工具20を一定の速度で締付方向X1に移動する簡易な制御で締付作業を完了できるとともに、更に高い作業効率で被締付部材Bを締付けできる。
【0053】
次に、
図1~
図5を参照して、被締付部材の緊解機における台車10、駆動手段50、及び支持手段60を更に詳細に説明する。
【0054】
図1に示すように、台車10は、基台11を有する。基台11の下側には、一対の車輪部12と位置ずれ防止機構13とが設置され、基台11の上側には、一対のユニット部14と、操作部15と、制御部16と、電源部17とが設置される。一対のユニット部14は、締付工具20、駆動手段50及び支持手段60を各々含み、各鉄道レールRの上方に設置される。操作部15は、台車10を移動する際に作業者によって把持される。制御部16は、締付工具20及び駆動手段50を制御する。電源部17は、締付工具20、駆動手段50、及び制御部16に電力を供給する。
【0055】
また、ユニット部14は、
図1~
図5に示すように、下方が開口した略八角形状の筒状体14a、上方支持板14b及び下方支持板14cを有する。上方支持板14bと下方支持板14cとの間には、丸棒状の一対のガイド部14dが上下方向に設置されている。一対のガイド部14dは、支持手段60の上下動を案内する。
【0056】
駆動手段50は、
図2~
図5に示すように、制御部16及び電源部17に接続されており、支持手段60を上下に駆動することによって、締付工具20を上下に駆動する。
【0057】
支持手段60は、
図5に示すように、駆動手段50に連結されるベース部61と、第1可動テーブル62と、第2可動テーブル63とを有する。第1可動テーブル62は、所定方向、例えば台車10の進行方向Yに沿って前後に移動可能に、ベース部61に支持される。第2可動テーブル63は、上記の所定方向とは異なる方向、例えば進行方向Yに対し垂直な横方向Xに沿って左右に移動可能に、第1可動テーブル62に支持される。締付工具20は、第1可動テーブル62と第2可動テーブル63とを介しベース部61に支持され、前後左右に移動可能である。
【0058】
以下、実施形態の支持手段60をより詳細に説明するが、支持手段60の具体的な構造は、以下のものに限られず、締付工具20を前後左右に移動可能に支持できればよい。
【0059】
ベース部61は、
図2及び
図5に示すように、進行方向Yに沿って延びる略矩形状に形成されており、前後両端部がガイド部14dに摺動可能に連結されるとともに、中央部が駆動手段50に連結されている。また、
図2~
図5に示すように、ベース部61における下方の左右両端部には、前後方向支持手段を介し第1可動テーブル62が支持される。前後方向支持手段は、ベース部61の前後方向(Y方向)に沿って設けられる第1レール64と、第1レール64に摺動可能とされる第1ブロック65とを有する。
【0060】
第1可動テーブル62は、
図2及び
図5に示すように、締付工具20が配設されるスペースを確保するよう、略L字状に形成される。具体的には、第1可動テーブル62は、ベース部61の下方にて、前後方向支持手段の第1ブロック65に連結される基端部66と、当該基端部66の一端から直交するよう延設される延設部67とからなる。
【0061】
また、
図4及び
図5に示すように、第1可動テーブル62の延設部67における下方には、左右方向支持手段を介して第2可動テーブル63が設置されている。左右方向支持手段は、例えば、延設部67の左右方向(X方向)に沿って設けられる第2レール68と、第2レール68に摺動可能とされる第2ブロック69とから構成されるが、第1可動テーブル62に対して第2可動テーブル63が左右方向(X方向)に直動可能となるものであれば、これに限られるものではない。
【0062】
第2可動テーブル63は、
図2及び
図5に示すように、略中央部に締付工具20が配設されるスペースを有して略四角状に形成される。具体的には、第2可動テーブル63は、第1可動テーブル62における延設部67の下方にて、一端部が左右方向支持手段の第2ブロック69に連結されるとともに、他端部が延設部67と同方向に突出して設けられる後述のテーブル支持部70に連結される。
【0063】
このようにして構成される支持手段60は、同図に示すように、ベース部61を介して対称となるように設置される。また、前方側に配設される第1可動テーブル62の延設部67と、後方側にて第1可動テーブル62の下方に設置されるテーブル支持部70との間に位置する第2可動テーブル63に締付工具20を配設することができるので、省スペース化を図ることができる。
【0064】
また、これらの支持手段60は、締付工具20が前後方向支持手段、左右方向支持手段によって移動した際に、移動後の締付工具20の軸心を移動前の原点位置へと復帰させる原点復帰手段を備える。
【0065】
原点復帰手段は、締付工具20が前後方向(Y方向)へ移動した際に、移動後の締付工具20の軸心を移動前の位置へと復帰させる前後方向原点復帰手段71と、締付工具20が左右方向(X方向)へ移動した際に、移動後の締付工具20の軸心を移動前の位置へと復帰させる左右方向原点復帰手段72とから構成される。
【0066】
前後方向原点復帰手段71は、ベース部61に対する第1可動テーブル62の移動に伴って、その移動分に相当する付勢力が蓄積されるとともに、第1可動テーブル62の移動後において、当該付勢力が作用することで第1可動テーブル62を移動前の位置へと復帰させるものである。
【0067】
具体的には、
図2、
図3、
図5及び
図8に示すように、ベース部61と第1可動テーブル62とがベース部61に対して摺動可能な連結部73によって連結され、当該連結部73の前後方向(Y方向)に設けられる前方端部74と後方端部75との間に連結部73を挿通する連結軸76が設けられている。また、前方端部74、後方端部75と連結部73との間には、連結軸76に沿って前後復帰用付勢手段77となるバネ等の弾性部材が夫々設けられており、連結部73の移動に応じて、当該バネが押圧されて収縮することで付勢力を蓄積できる構成としている。これにより、第1可動テーブル62における前後方向の移動後において、当該付勢力が作用してバネが伸長し連結部73を押圧することで、連結部73とともに第1可動テーブル62が協動し、移動前の位置へと復帰することができる。
【0068】
左右方向原点復帰手段72は、第1可動テーブル62に対する第2可動テーブル63の移動に伴って、その移動分に相当する付勢力が蓄積されるとともに、第2可動テーブル63の移動後において、当該付勢力が作用することで第2可動テーブル63を移動前の位置へと復帰させるものである。
【0069】
具体的には、同図に示すように、テーブル支持部70が連結される側の第2可動テーブル63における前方又は後方の側面部には、当該側面部を上下側面から抱持するようにしてピッチ調整部78が摺動可能に設置されている。また、当該ピッチ調整部78には、外側方向に進退可能となるよう把持部79が設けられており、第2可動テーブル63の側面部に形成される凹部80に把持部79を係合させることで、ピッチ調整部78を第2可動テーブル63に固着している。
【0070】
また、第1可動テーブル62の基端部66には、ピッチ調整部78の上端面側に向けて屈曲して形成されるアーム部81が設けられている。そして、当該アーム部81とピッチ調整部78とを左右復帰用付勢手段82となるバネ等の弾性部材で連結し、ピッチ調整部78が固着される第2可動テーブル63の移動に応じて、当該バネが伸長することで付勢力を蓄積できる構成としている。これにより、第2可動テーブル63における左右方向の移動後において、当該付勢力が作用してバネが収縮することで、ピッチ調整部78とともに第2可動テーブル63が協動し、移動前の位置へと復帰することができる。
【0071】
また、ピッチ調整部78は、
図5に示すように、テーブル支持部70に設けられる切欠部83内に設置されている。当該切欠部83は、第2可動テーブル63の移動に伴ってピッチ調整部78が移動することで切欠部83の両端部に当接し、これにより第2可動テーブル63の移動を規制するために設けられる。また、第2可動テーブル63の側面部には、複数個の凹部80が形成されており、凹部80に対する把持部79の係合位置を変更することでピッチ調整部78の設置位置を変更することができるよう構成している。これにより、左右方向(X方向)において、ベース部61に対する第2可動テーブル63の位置を予め調整することができる。
【0072】
本実施例においては、同図に示すように、前後方向原点復帰手段71及び左右方向原点復帰手段72は、ユニット部14内における一方の締付工具20に設置されるものであったが、これに限られるものではなく、各締付工具20に対して夫々設置することができるのは勿論である。また、締付工具20に対して、前後方向原点復帰手段71と左右方向原点復帰手段72のいずれか一方のみを設置することもできる。
【0073】
このようにしてユニット部14の支持手段60と原点復帰手段が構成されており、
図3及び
図4に示すようにして、締付工具20の係合部(図示しない)を下方側に配設した状態で、締付工具20が第2可動テーブル63の貫通孔(図示しない)に挿通されて設置されるとともに、当該係合部にソケット30が連結される。
【0074】
このようにして構成される被締付部材の緊解機は、鉄道レールRを固定する所定位置における被締付部材Bの締め付け作業又は緩解作業の情報を入力するための作業情報入力装置(図示しない)を制御部16に備えてなる。そして、制御部16は、夫々の締付工具20、駆動手段50への駆動制御情報を出力するとともに、操作パネル(図示しない)等からの作業情報を入力できるよう構成されている。
【0075】
以上、図面(
図1~
図10)を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記(1)~(4))。
【0076】
(1)上記実施形態においては、台車10は、作業員に押されて、所定の締付位置まで移動するものであったが、台車10に、車輪部12の駆動装置と、締付位置を検出する検出装置とを設置し、締付位置まで台車10を自走させる構成とすることもできる。
【0077】
(2)上記実施形態においては、第2スプリング37によって、第1軸体と第2軸体との間で付勢力が蓄積されるが、締付工具20の下降動作を制御部16によって制御することで、第2スプリング37を省略した構成とすることもできる。例えば、ソケット30が被嵌合部B1に当接するまで締付工具20を下降し、ソケット30が被嵌合部B1に当接すると、締付工具20の下降を停止するよう制御するとともに、誘導部35によって、締付工具20が嵌合位置に誘導されると、締付工具20を再度下降するよう制御する。以上のように、締付工具20を段階的に下降し、被締付部材Bの締付作業を行うこともできる。
【0078】
(3)上記実施形態においては、誘導部35は、円形状であったが、これに限られるものではなく、誘導部35を楕円形状としたり、多角形状としたり、複数の形状を組み合わせた形状とすることもできる。また、誘導部35の外縁円周の曲率半径を部分的に小さくすることもできる。例えば、円形開口35aの曲率半径と等しくなるように、誘導部35の外縁円周を部分的に小さくすれば、当該部分を円形開口35aの外縁に沿うように形成でき、締付工具20をより確実に嵌合位置に誘導できる。
【0079】
(4)上記実施形態においては、被締付部材の緊解機は、鉄道レールRに沿って移動する台車10を有していたが、これに限られず、被締付部材の緊解機が、例えば自動車工場において、製造ラインに沿って移動する台車を有していれば、製造中の自動車にタイヤをボルト締めでき、本発明は、各種用途に適用できる。
【0080】
(5)上記実施形態においては、ソケット30は、転倒防止具2、3が設置される鉄道軌道において使用されているが、ソケット30は、転倒防止具2、3が設置されない鉄道軌道においても使用でき、そのような鉄道軌道で使用した場合にも、被締付部材Bの位置が基準位置からずれているとき、被嵌合部B1と嵌合部33とを自動的に嵌合でき、高い作業効率で被締付部材Bを締付けできる。
【符号の説明】
【0081】
B…被締付部材
B1…被嵌合部
P1…初期位置
P2…後退位置
X1…締付方向
10…台車
20…締付工具
30…ソケット
31…ソケット本体
31a…第1軸体
31b…第2軸体
32…連結部
33…嵌合部
34…可動体
34a…筒状部
34b…フランジ部
35…誘導部
36…第1スプリング
37…第2スプリング
50…駆動手段
60…支持手段