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特開2022-45548マスク用フィルター及びマスク用フィルターを取り付けたマスク
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  • 特開-マスク用フィルター及びマスク用フィルターを取り付けたマスク 図1
  • 特開-マスク用フィルター及びマスク用フィルターを取り付けたマスク 図2
  • 特開-マスク用フィルター及びマスク用フィルターを取り付けたマスク 図3
  • 特開-マスク用フィルター及びマスク用フィルターを取り付けたマスク 図4
  • 特開-マスク用フィルター及びマスク用フィルターを取り付けたマスク 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045548
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】マスク用フィルター及びマスク用フィルターを取り付けたマスク
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220314BHJP
   A62B 18/08 20060101ALI20220314BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/08 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151202
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】320009598
【氏名又は名称】西尾 公
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】西尾 公
(72)【発明者】
【氏名】江口 輝男
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA01
2E185CA03
2E185CB18
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】網捕捉方式と面捕捉方式を組み合わせることにより、3密状態においてもソーシャルディスタンスを保つ機能を有するマスクフィルターを提供する。
【解決手段】医療用マスクの顔に接する側の面に配置して使用するマスク用フィルターであって、人工気管ユニットと、前記人工気管ユニットの顔に接する側の面の外周に設けるクッションと、からなり、前記人工気管ユニットは、前記医療用マスク側の面を前面とし、前記クッションを設ける面を後面としたときに、前面に形成する吸気口と、後面に形成する排気口と、前記人工気管ユニットの内部において前記給気口および前記排気口に連通して通気する人工気管と、を有し、前記人工気管は、前記人工気管ユニットの内部につづら折り状に形成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用マスクの顔に接する側の面に配置して使用するマスク用フィルターであって、
人工気管ユニットと、前記人工気管ユニットの顔に接する側の面の外周に設けるクッションと、からなり、
前記人工気管ユニットは、前記医療用マスク側の面を前面とし、前記クッションを設ける面を後面としたときに、前面に形成する吸気口と、後面に形成する排気口と、前記人工気管ユニットの内部において前記給気口および前記排気口に連通して通気する人工気管と、を有し、
前記人工気管は、前記人工気管ユニットの内部につづら折り状に形成することを特徴とする、
マスク用フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載のマスク用フィルターにおいて、
前記人工気管ユニットは、内部に前記人工気管となる空間を有する矩形の中空体であり、一側面の長手方向の一方の端部付近と、他側面の長手方向の他方の端部付近とにそれぞれ連通孔を有する矩形人工気管を複数組み合わせてなり、
前記矩形人工気管を並列し、隣接する前記矩形人工気管どうしを、前記連通孔を合わせて連結して人工気管層を形成し、
前記人工気管層を前後方向に複数層連結して前記人工気管ユニットを形成することを特徴とする、
マスク用フィルター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマスク用フィルターにおいて、
前記人工気管の長さは少なくとも2mであることを特徴とする、
マスク用フィルター。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のマスク用フィルターにおいて、
前記人工気管の前面に、保水性を有する材質を積層してなる水分供給層を設けることを特徴とする、
マスク用フィルター。
【請求項5】
請求項4に記載のマスク用フィルターにおいて、
前記水分供給層の前面にスペーサを設け、前記水分供給層と前記医療用マスクとの間に吸気空間となるマスク離隔層を形成することを特徴とする、
マスク用フィルター。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のマスク用フィルターを取り付けたマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマスク用フィルター及びマスク用フィルターを取り付けたマスクに関し、特に、既存のマスク(医療用マスク)の網補足に加えて、動物の気管のようにウイルス等を面で補足する機能を付加するマスク用フィルター及びマスク用フィルターを取り付けたマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、世界的に新型コロナウイルスが蔓延し、感染者数が2331万人、死亡者数が80万人(2020年8月25日現在)に至り、第二次世界大戦以来の人類の存亡の危機並びに世界経済の景気後退が重大な問題として懸念されている。
新型コロナウイルスの感染拡大の予防策としては、感染症学から判断して感染の仕方が人から人へ水平経路であることから、これを避ける方法としての、密閉・密集・密接の3密の回避と、外出時のマスク(医療用マスク)の常用が有効であると提唱されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、医療専門家の間では、従来のマスクの感染予防効果について疑問視する声もある。その理由としては、以下の2点が挙げられる。
(1)マスクの機能は呼吸口である鼻や口の前に網を置き、網目より大きい粒子の物を捕捉する「網捕捉方式」のものであるが、呼吸の必要性からその網目は0.01mm程度が一般的である。一方、新型コロナウイルスの大きさは0.1μmであり、一般的なマスクの網目を通過してしまう。また、仮により小さな網目のマスクにより新型コロナウイルスを補足できても、肝心な呼吸ができなくなるため、健常者のバリアー機能は発揮できない。
(2)保菌者のウイルスを吸着した水分子(唾液等)が、網目より大きい飛沫であれば、飛沫感染防止策として何割かの効果が期待できるが、網目より小さい物はマスクの網目を通過してしまいエアロゾル感染として残る。
※水蒸気の大きさφ10~100μm
【0004】
このように、従来のマスクでは、経済活動のためには不可欠であるがソーシャルディスタンスが保てない電車やバス等の交通機関や駅等の利用時の、マスク装着者の感染防止の役割を果たせない結果となる。
【0005】
本発明は、上述の問題を解決するために、従来のマスクの「網捕捉方式」に人や動物の気道のように内面にてウイルス・細菌等を付着させて捕捉する「面捕捉方式」を組み合わせることにより、3密状態においてもソーシャルディスタンスを保つ機能を有するマスクフィルター及びマスク用フィルターを取り付けたマスクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1発明は、医療用マスクの顔に接する側の面に配置して使用するマスク用フィルターであって、人工気管ユニットと、前記人工気管ユニットの顔に接する側の面の外周に設けるクッションと、からなり、前記人工気管ユニットは、前記医療用マスク側の面を前面とし、前記クッションを設ける面を後面としたときに、前面に形成する吸気口と、後面に形成する排気口と、前記人工気管ユニットの内部において前記給気口および前記排気口に連通して通気する人工気管と、を有し、前記人工気管は、前記人工気管ユニットの内部につづら折り状に形成することを特徴とする。
本願の第2発明は、第1発明のマスク用フィルターにおいて、前記人工気管ユニットは、内部に前記人工気管となる空間を有する矩形の中空体であり、一側面の長手方向の一方の端部付近と、他側面の長手方向の他方の端部付近とにそれぞれ連通孔を有する矩形人工気管を複数組み合わせてなり、前記矩形人工気管を並列し、隣接する前記矩形人工気管どうしを、前記連通孔を合わせて連結して人工気管層を形成し、前記人工気管層を前後方向に複数層連結して前記人工気管ユニットを形成することを特徴とする。
本願の第3発明は、第1発明又は第2発明のマスク用フィルターにおいて、前記人工気管の長さは少なくとも2mであることを特徴とする。
本願の第4発明は、第1発明乃至第3発明のいずれかのマスク用フィルターにおいて、前記人工気管の前面に、保水性を有する材質を積層してなる水分供給層を設けることを特徴とする。
本願の第5発明は、第4発明のマスク用フィルターにおいて、前記水分供給層の前面にスペーサを設け、前記水分供給層と前記医療用マスクとの間に吸気空間となるマスク離隔層を形成することを特徴とする。
本願の第6発明は、第1発明乃至第5発明のいずれかのマスク用フィルターを取り付けたマスクである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は以上の構成により、次の効果のうち少なくとも一つを備える。
<1>人工気管ユニット内に人工気管を設けることで、マスク本体の網捕捉方式と人工気管ユニットによる面捕捉方式を組み合わせ、電車やバス等の交通機関や駅の利用時など、3密状態においてもソーシャルディスタンスを保ち、マスク装着者の感染防止機能を発揮する。
<2>矩形管を用いてつづら折り状に人工気管を形成することで、既存のマスクの表面布部の面積に対して長さを確保することができる。
<3>水分供給層により水分を供給するため、人工気管内面のウイルス付着力が高くなる。
<4>マスクの表面布部と水分供給層の間にマスク離隔層を設けることで、表面布部のほぼ全面から空気が取り込まれるため、使用時の息苦しさを軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のマスクの説明図
図2】本発明のマスクフィルターの分解斜視図
図3】人工気管ユニットの分解斜視図
図4】水分供給層の分解斜視図
図5】空気の流れの説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本発明のマスクフィルター及びマスク用フィルターを取り付けたマスクおよびその施工方法について詳細に説明する。
【実施例0010】
<1>マスク全体の構成
本発明のマスクフィルター1は、表面布部61と耳掛部62からなる既存のマスク(医療用マスク)本体6の、表面布部61の顔に接する側の面に取り付けて使用するものである(図1)。
【0011】
<2>マスクフィルターの構成
マスクフィルター1は、人工気管ユニット2、人工気管ユニット2の前面に設ける水分供給層3、水分供給層3の前面に設けるマスク離隔層4、及び人工気管ユニット2の後面に設けるクッション5、からなる(図2)。
【0012】
<3>人工気管ユニット
人工気管ユニット2は、熱可塑性プラスチックからなる内部中空の矩形管23を並列して連結し、前面に給気口21、後面に排気口22を設けて、その内部を所定の長さの空気の流路である人工気管としたものである(図3)。
矩形管23は、短辺側の一方の面と他方の面に、左右対称に連通孔231を形成し、隣り合う矩形管23の連通孔231を合わせて接着剤等により連結し、つづら折り状に所定の長さを有する人工気管とする。つづら折り状に人工気管を形成することで、既存のマスク6の表面布部61の面積に対して長さを確保することができる。
人工気管の長さは所謂ソーシャルディスタンスとして提唱されている2m以上とすることが好ましく、既存のマスク本体6への収まりを考慮して、矩形管23は表面布部61の面と平行な方向に連続する層を複数層前後に重合する。本実施例においては、前層と後層の2層とし、前層の人工気管の後端に設ける後層連結孔24と、後層の人工気管の前端に設ける前層連結孔25を合わせて2層を重合する。断面矩形の矩形管23を組み合わせるため、収まりを考慮しながらの配置が容易となる。
人工気管の断面積となる、矩形管23の内空の断面積や連通孔231、給気口21、排気口22、後層連結孔24、前層連結孔25の各面積は、人間の呼吸抵抗と同等となる50mm2以上の大きさとすることが好ましい。本実施例の矩形管23の断面は、長辺1.7cm、短辺0.3cmとする。
【0013】
<4>水分供給層
水分供給層3は、吸水性/保水性の高い連続気泡フォームからなる前面吸水体33と後面吸水体34と、その間に外周を囲って設けるスペーサ35と、からなり(図4)、人工気管ユニット2の前面に設ける。
水分供給層3は、前面吸水体33の上部に給気口31を設け、後面吸水体34の下部に排気口32を設る。
前面吸水体33と後面吸水体34に水を吸収させておくことで、給気口31から内部に取り込まれた空気の流れによって水分が蒸発して空気に含まれ、排気口32から人工気管ユニット2に供給される。
水分供給層3により供給される水分量は、使用時の温度や湿度、内部をながれる空気の量によって決定されるため、水分供給層3の厚さはそのときの状況に応じて適宜決定する。
【0014】
<5>マスク離隔層
マスク離隔層4は、水分供給層3の前面に設ける(図1図5)。
マスク離隔層4は、スペーサ41を水分供給層3とマスク本体6の表面布部61との間に配置して形成する。これにより、表面布部61のほぼ全面からの空気が吸気空間となるマスク離隔層4を経由して水分供給層31の給気口31に取り込まれる。
既存の不織布・布等の網捕捉方式のマスクの網目0.01mm程度であり、使用時の息苦しさは呼吸面の面積で決まる。本発明のマスクフィルター1はマスク離隔層4を設けることで、表面布部61のほぼ全面から空気が取り込まれるため、使用時の息苦しさを軽減できる。
【0015】
<6>空気の流れ(図5
空気は、網捕捉方式のマスク本体6の表面布部61のほぼ全面から、マスク離隔層4を経由して水分供給層3の給気口31に取り込まれる。
そして、水分供給層3によって水分を供給された空気は、排気口32から給気口21を経由して人工気管ユニット2に取り込まれる。
【0016】
人工気管ユニット2は、その内部の人工気管がソーシャルディスタンスとして提唱されている2m以上の長さを有し、人や動物の気道のように人工気管を通過する間に内面にウイルス等を付着させて捕捉する。マスク本体6の網捕捉方式と人工気管ユニット2による面捕捉方式を組み合わせることにより、電車やバス等の交通機関や駅の利用時など、3密状態においてもソーシャルディスタンスを保ち、マスク装着者の感染防止機能を発揮する。
人工気管ユニット2に供給される空気は、水分供給層3を経由して水分を多く含み、人工気管内面でのウイルス付着力が高い状態である。
人工気管ユニット2を通過してウイルス等が除去された空気は、排気口22を経由して鼻腔や口に送られる。
人工気管ユニット2の後面には、スポンジからなるクッション5を設け、クッション5が顔の形に合わせて変形することで、横から空気が直接鼻腔に入ることを防止する。
【0017】
<7>機能比較
本実施例のマスクフィルター1を用いた既存のマスクと、使用しないマスクとの機能を比較すると以下の通りとなる。
【符号の説明】
【0018】
1 マスクフィルター
2 人工気管ユニット、21 給気口、22 排気口、23 矩形管、231 連通孔、24 後層連通孔、25 前層連通孔
3 水分供給層、31 給気口、32 排気口、33 前面吸水体、34 後面吸水体、35 スペーサ
4 マスク離隔層、41 スペーサ
5 クッション
6 マスク本体、61 表面布部、62 耳掛部
図1
図2
図3
図4
図5