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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022045586
(43)【公開日】2022-03-22
(54)【発明の名称】消泡剤
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/04 20060101AFI20220314BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220314BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220314BHJP
   C09D 7/60 20180101ALI20220314BHJP
【FI】
B01D19/04 A
C09D201/00
C09D7/65
C09D7/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020151256
(22)【出願日】2020-09-09
(71)【出願人】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】亀井 伸朗
(72)【発明者】
【氏名】澤田 裕
【テーマコード(参考)】
4D011
4J038
【Fターム(参考)】
4D011CA01
4D011CA03
4D011CA04
4D011CB03
4D011CB04
4D011CB07
4D011CB08
4D011CC04
4D011CC06
4D011CC07
4J038CG051
4J038DL032
4J038JA59
4J038KA09
4J038MA07
4J038MA09
4J038NA01
4J038PB05
4J038PB06
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】塗膜の仕上がり外観に優れた消泡剤を提供することである。
【解決手段】重量平均分子量が20万~100万であるシリコーン(A)と、ジオールの分岐カルボン酸エステル(B1)又はジカルボン酸の分岐アルキルエステル(B2)とを含有することを特徴とする消泡剤を用いる。ジオールの分岐カルボン酸エステル(B1)又はジカルボン酸の分岐アルキルエステル(B2)は2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール2-メチルプロパン酸モノエステル(b11)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール2-メチルプロパン酸ジエステル(b12)及びヘキサンジカルボン酸ジイソブチル(b21)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が20万~100万であるシリコーン(A)と、ジオールの分岐カルボン酸エステル(B1)又はジカルボン酸の分岐アルキルエステル(B2)とを含有することを特徴とする消泡剤。
【請求項2】
ジオールの分岐カルボン酸エステル(B1)又はジカルボン酸の分岐アルキルエステル(B2)が2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール2-メチルプロパン酸モノエステル(b11)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール2-メチルプロパン酸ジエステル(b12)及びヘキサンジカルボン酸ジイソブチル(b21)からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の消泡剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された消泡剤、フィラー及びバインダーを含有してなることを特徴とする非水系コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消泡剤に関する。さらに詳しくは非水系コーティング組成物用として好適な消泡剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非水系コーティング組成物用消泡剤として、下記一般式(1)
【化1】
[式中、Rfはフルオロアルキル基、R1は炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基であり、これらは同一でも異なっていてもよく、R2は炭素数1~6の炭化水素基、OH基またはアルコキシ基である。mは1~20000の整数を、nは1~1000の整数を示す。]で表される化合物と下記一般式(2)
【化2】
[式中、R3は炭素数1~4のアルキル基であり、R4は炭素数12~24の炭化水素基である。]で表されるアクリル酸アルキルエステル単量体の単独あるいはその2種以上を重合(共重合)して得られる平均分子量10000~200000の重合体とからなる非水系樹脂分散型塗料用消泡剤が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-301306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の消泡剤は、塗膜の仕上がり外観(クレーターの発生等)に劣るという問題がある。
本発明の目的は、塗膜の仕上がり外観に優れた消泡剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の消泡剤の特徴は、重量平均分子量が20万~100万であるシリコーン(A)と、ジオールの分岐カルボン酸エステル(B1)又はジカルボン酸の分岐アルキルエステル(B2)とを含有する点を要旨とする。
【0006】
本発明の非水系コーティング組成物の特徴は、上記の消泡剤を含有してなる点を要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の消泡剤は、塗膜の仕上がり外観に優れる。
【0008】
本発明の非水系コーティング組成物は、上記の消泡剤を含有するので、塗膜の仕上がり外観に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
重量平均分子量(Mw)が20万~100万(好ましくは30万~80万、さらに好ましくは35万~75万)であるシリコーン(A)としては、ポリジメチルシロキサン(a1)、α,ω-ジヒドロキシ-ポリジメチルシロキサン(a2)及びα-アミノプロピルポリジメチルシロキサン(a3)が含まれる。
【0010】
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、分子量既知のポリスチレンを標準物質として測定される。
【0011】
シリコーン(A)は市場から容易に入手でき、ポリジメチルシロキサン(a1)としては、KF-9008、KF-9011、KF-9013、KF-9014、KF-9028、KF-9030、MK-15H、X-21-5495、KF-9028、KF-9030、X-21-5613、X-21-5666、X-21-5847及びX-21-5849(以上、信越化学工業株式会社);SH200-1,000,000cs、BY16-140、BY11-003、BY11-007、BY11-014、BY11-026、BY11-040、BY22-019、BY22-020、BY22-034、BY22-055、BY22-060及びBY25-320(以上、東レ・ダウコーニング株式会社)等が挙げられる。
【0012】
α、ω-ジヒドロキシ-ポリジメチルシロキサン(a2)としては、X-21-5613、X-21-5666(以上、信越化学工業株式会社);1501Fluid、1503Fluid及びCB-1556Fluid(以上、東レ・ダウコーニング株式会社)等が挙げられる。
【0013】
α-アミノプロピルポリジメチルシロキサン(a3)としては、KF-8017、KF-8018及びKF-8020(信越化学工業株式会社)等が挙げられる。
【0014】
シリコーン(A)のうち、ポリジメチルシロキサン(a1)、α、ω-ジヒドロキシ-ジメチルシロキサン(a2)及びこれらの混合物が好ましく、さらに好ましくはポリジメチルシロキサン(a1)である。
【0015】
ジオールの分岐カルボン酸エステル(B1)としては、炭素数2~8のジオールと炭素数3~30の分岐カルボン酸とモノエステル又はジエステルが含まれ、エタンジオールイソプロパン酸エステル、プロパンジオールイソブタン酸エステル、ブタンジオール2,2-ジメチルプロピオン酸エステル、ペンタンジオールイソペンタン酸エステル、ペンタンジオールイソブタン酸エステル、ヘキサンジオール2,2-ジメチルプロピオン酸エステル、エタンジオールイソヘキサン酸エステル、プロパンジオールイソヘキサン酸エステル、ブタンジオール2-エチルヘキサン酸エステル、ペンタンジオールイソトリデカン酸エステル、ヘキサンジオールイソテトラデカン酸エステル、プロパンジオールイソオクタデカン酸エステル、ブタンジオール2-エチルヘキサン酸エステル、ペンタンジオール2-プロピルヘプタン酸エステル、ヘキサンジオール2-ブチルオクタン酸エステル、プロパンジオール2-ヘキシルデカン酸エステル、ブタンジオール2-オクチルドデカン酸エステル、ペンタンジオール2-デシルテトラデカン酸エステル、ヘキサンジオール2-ドデシルヘキサン酸エステル、エタンジオール3,5,5-トリメチルヘキサン酸エステル、プロパンジオール3,7,1,1-トリメチルドデカン酸エステル、エタンジオールイソトリアコンタン酸エステル及び2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール2-メチルプロパン酸エステル等が挙げられる。
【0016】
ジカルボン酸の分岐アルキルエステル(B2)としては、炭素数4~8のジカルボン酸と炭素数3~30の分岐アルカノールとのモノエステル又はジエステルが含まれ、エタンジカルボン酸イソプロピル、プロパンジカルボン酸イソブチル、ブタンジカルボン酸t-ブチル、ペンタンジカルボン酸イソペンチル、ヘキサンジカルボン酸イソブチル、ヘキサンジカルボン酸ネオペンチル、エタンジカルボン酸イソヘキシル、プロパンジカルボン酸2-エチルヘキシル、ブタンジカルボン酸イソトリデシル、ペンタンジカルボン酸イソテトラデシル、ヘキサンジカルボン酸イソオクタデシル、エタンジカルボン酸イソトリアコンシル、プロパンジカルボン酸2-エチルヘキシル、ブタンジカルボン酸2-プロピルヘプチル、ペンタンジカルボン酸2-ブチルオクチル、ヘキサンジカルボン酸2-ヘキシルデシル、エタンジカルボン酸2-オクチルドデシル、プロパンジカルボン酸2-デシルテトラデシル、ブタンジカルボン酸2-ドデシルヘキシル、ペンタンジカルボン酸2-ドデシルヘキサデシル、ヘキサンジカルボン酸3,5,5-トリメチルヘキシル及びエタンジカルボン酸3,7,11-トリメチルドデシル等が挙げられる。
【0017】
ジオールの分岐カルボン酸エステル(B1)又はジカルボン酸の分岐アルキルエステル(B2)としては、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール2-メチルプロパン酸モノエステル(b11)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール2-メチルプロパン酸ジエステル(b12)、ヘキサンジカルボン酸ジイソブチル(b21)又はこれらの混合物を含むことが好ましい。
【0018】
シリコーン(A)の含有量(重量%)は、シリコーン(A)とジオールの分岐カルボン酸エステル(B1)又はジカルボン酸の分岐アルキルエステル(B2)との合計重量に基づいて、0.1~99が好ましく、さらに好ましくは1~50、特に好ましくは2~10である。また、ジオールの分岐カルボン酸エステル(B1)又はジカルボン酸の分岐アルキルエステル(B2)の含有量(重量%)は、シリコーン(A)とジオールの分岐カルボン酸エステル(B1)又はジカルボン酸の分岐アルキルエステル(B2)との合計重量に基づいて、1~99.9が好ましく、さらに好ましくは50~99、特に好ましくは90~98である。この範囲であると、消泡性及び塗膜外観がさらに良好となる。
【0019】
本発明の消泡剤には、本発明の効果を損なわない限り、シリコーン(A)、ジオールの分岐カルボン酸エステル(B1)及びジカルボン酸の分岐アルキルエステル(B2)以外の消泡成分(C)を含有してもよい。
【0020】
消泡成分(C)としては、フッ素変性シリコーン(C1)、液状ポリマー(C2)、油溶性ポリマー(C3)、シリコーン(C4)及び疎水性シリカ(C5)が含まれる。
【0021】
フッ素変性シリコーン(C1)としては、式(1)で表されるオルガノシロキサン単位(α)を含むシリコーンが含まれる。
【0022】
【化3】
【0023】
Rfはフルオロアルキル基、Rは炭素数1~6のアルキル基、Siはケイ素原子、Oは酸素原子を表す。
【0024】
フルオロアルキル基(Rf)としては、炭素数1~8のフルオロアルキル基等が使用でき、1,1,1-トリフルオロメチル、3,3,3-トリフルオロプロピル、4,4,4,3,3-ペンタフルオロ-1-ブチル、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロ-1-ヘキシル及び8,8,8,7,7,6,6,5,5,4,4,3,3-トリデカフルオロ-1-オクチル等が挙げられる。これらのうち、消泡性能の観点から、6,6,6,5,5,4,4,3,3-ノナフルオロ-1-ヘキシルが好ましい。
【0025】
炭素数1~6のアルキル基(R)としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、及び2-エチルヘキシル等が挙げられる。これらのうち、消泡性能の観点から、メチルが好ましい。
【0026】
フッ素変性シリコーン(C1)は、オルガノシロキサン単位(α)以外の他のオルガノシロキサン単位(β)を含有してもよい。
他のオルガノシロキサン単位(β)としては、ジメチルシロキサン単位、メチルハイドロジェンシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位及びジフェニルシロキサン単位が含まれる。これらのうち、消泡性能の観点から、ジメチルシロキサン単位が好ましい。
【0027】
フッ素変性シリコーン(C1)がオルガノシロキサン単位(α)及び他のオルガノシロキサン単位(β)から構成される場合、式(1)で表されるオルガノシロキサン単位(α)の含有量(モル%)は、フッ素変性シリコーン(C1)を構成する全てのオルガノシロキサン単位のモル数に基づいて、10~80が好ましく、さらに好ましくは20~78、特に好ましくは30~75である。またこの場合、他のオルガノシロキサン単位(β)の含有量(モル%)は、フッ素変成シリコーン(C1)を構成する全てのオルガノシロキサン単位のモル数に基づいて、20~90が好ましく、さらに好ましくは22~80、特に好ましくは25~70である。これらの範囲であると、消泡性能及び塗膜の仕上がり外観がさらに良好となる。
【0028】
フッ素変成シリコーン(C1)は、公知の方法(たとえば、特開昭59-130894号公報)等により製造でき、また、市場からも容易に入手できる。市場から入手できる商品としては、FL100、FA-600、FA-630、X-22-821、X-22-822(信越化学工業株式会社);FS-1265(東レ・ダウコーニング株式会社)等が挙げられる。
【0029】
液状ポリマー(C2)の液状とは、JIS K7117-1:1999に準拠したブルックフィールド形回転式粘度計で測定した粘度{そのものの粘度(ニートの粘度)}が1,000Pa・s(25℃)以下であることを意味する。
【0030】
液状ポリマー(C2)の粘度(JIS K7117-1:1999、25℃、Pa・s、ニートの粘度)としては、0.3~100が好ましく、さらに好ましくは0.6~95、特に好ましくは0.7~90である。
【0031】
液状ポリマー(C2)としては、液状であれば特に限定されないが、ポリαオレフィン(C21)、ポリジエン(C22)及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0032】
ポリαオレフィン(C21)としては、αオレフィンから構成され、液状の(共)重合体であれば、特に限定されない。
【0033】
αオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテン等が使用できる。これらのうち、エチレン、プロピレン及び1-ブテンが好ましく、さらに好ましくはエチレン及びプロピレンである。
【0034】
ポリαオレフィン(C21)のうち、塗膜の仕上がり外観の観点から、エチレン-αオレフィン共重合体及びポリプロピレンが好ましく、さらに好ましくはエチレン-プロピレン共重合体である。
【0035】
ポリαオレフィン(C21)は市場から容易に入手でき、ルーカント(登録商標)シリーズ{HC-40(830mPa・s)、HC-100(2.6Pa・s)、HC-600(27Pa・s)、HC-1100(50Pa・s)、HC-2000(95Pa・s)}等(三井化学株式会社)が挙げられる。なお、括弧内の数値はそれぞれJIS K7117-1:1999に準拠したブルックフィールド形回転式粘度計を用いて、25℃で測定した粘度である。
【0036】
ポリジエン(C22)としては、液状のポリジエンであれば制限ないが、ポリブタジエン及びブタジエン共重合体が好ましく、特に好ましくはポリブタジエンである。
【0037】
ブタジエン共重合体の共重合単量体としては、アクリロニトリル及びスチレン等が挙げられる。
【0038】
ポリジエン(C22)としては市場から容易に入手でき、POLYVEST(登録商標)110(ポリブタジエン、650mPa・s)、POLYVEST130(ポリブタジエン、2.4Pa・s)等(エボニックジャパン株式会社)が挙げられる。なお、括弧内の数値はそれぞれJIS K7117-1:1999に準拠したブルックフィールド形回転式粘度計を用いて、25℃で測定した粘度である。
【0039】
液状ポリマー(C2)としては、ポリαオレフィン(C21)、ポリジエン(C22)及びこれらの混合物以外に、ポリアルキレンオキサイド化合物(C23)を用いてもよい。
【0040】
ポリアルキレンオキサイド化合物(C23)としては、液状のポリアルキレンオキサイド化合物であれば制限なく、活性水素化合物とアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイド等)との反応体等が挙げられる。
【0041】
これらの液状ポリマー(C2)のうち、ポリαオレフィン(C21)及びポリジエン(C22)が好ましく、さらに好ましくはポリαオレフィン(C21)である。
【0042】
なお、液状ポリマー(C2)には、油溶性ポリマー(C3)及びシリコーン(C4)を含まない。
【0043】
油溶性ポリマー(C3)としては、25℃で液状である基油(D)に均一に溶解する(以上の性質を油溶性という)ポリマーを用いることができ、ポリビニルアルコールアルキルエーテル、(水添)石油樹脂、液状ゴム(天然液状ゴム及び合成液状ゴム)及び熱可塑性エラストマー(ポリジエン、ポリジエンブロックとポリオレフィンブロックとを含むブロックコポリマー及びポリジエンブロックとポリスチレンブロックとを含むブロックコポリマー等)等が挙げられる。以上の他に、油溶性ポリマーとして、公知の粘度指数向上剤(たとえば、高分子薬剤入門、三洋化成工業株式会社1992年11月第1版発行、692-709頁)、公知の流動点降下剤(たとえば、高分子薬剤入門、三洋化成株式会社1992年11月第1版発行、364-375頁)等も使用できる。
【0044】
25℃で液状である基油(D)としては、鉱油、油脂及びモノアルコール脂肪酸エステルが含まれる。なお、基油(D)には、ジカルボン酸の分岐アルキルエステル(B2)を含まない。
【0045】
鉱油としては、減圧蒸留、油剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、硫酸洗浄、白土精製及び水素化精製等を適宜組み合わせて精製したものを用いることができ、商品名として、コスモピュアスピンG、コスモピュアスピンE、コスモSP-10、コスモSP-32及びコスモSC22(以上、コスモ石油ルブリカンツ株式会社、「コスモ」及び「ピュアスピン」はコスモエネルギーホールディングス株式会社の登録商標である。)、MCオイル P-22、S-10S(以上、出光興産株式会社)、並びにスタノール40(エクソンモービルコーポレーション)等が挙げられる。
【0046】
油脂としては、炭素数6~22の脂肪酸又はこの混合物とグリセリンとのエステルのうち、25℃で液状のものが含まれ、植物油(なたね油、大豆油、パーム油、ヤシ油、オリーブ油等)、中鎖脂肪酸グリセライド(商品名として、たとえば、パナセート875;日油株式会社、「パナセート」は同社の登録商標である。)及び魚油等が挙げられる。
【0047】
モノアルコール脂肪酸エステルとしては、炭素数6~22の脂肪酸又はこの混合物と炭素数1~22のモノアルコールとのエステルのうち、25℃で液状であるものが含まれ、オレイン酸メチル、オレイン酸ブチル及びイソステアリン酸メチル等が挙げられる。
【0048】
これらの基油(D)のうち、消泡性の観点から、鉱油及び油脂が好ましく、さらに好ましくは鉱油である。なお、油溶性ポリマー(C3)には、シリコーン(A)及びシリコーン(C4)を含まない。
【0049】
油溶性ポリマー(C3)及び基油(D)の溶液は、市場から容易に入手でき、商品名として、たとえば、サンエリス934(ポリ(メタ)アクリレート系ポリマー、いずれも三洋化成工業株式会社、「サンエリス」は同社の登録商標である。)、アクルーブ136、702、812、944(ポリ(メタ)アクリレート系ポリマー、三洋化成工業株式会社、「アクルーブ」は同社の登録商標である)、アルコンM-135、P-125(石油樹脂、いずれも荒川化学工業株式会社、「アルコン」は同社の登録商標である)、クラプレンLIR30、LIR310、L-SBR(液状ゴム、いずれも株式会社クラレ、「クラプレン」は同社の登録商標である)、セプトン4033(水添ポリジエンブロックとポリスチレンブロックとからなるブロックコポリマー、株式会社クラレ、「セプトン」は同社の登録商標である)等が挙げられる。
基油(D)は、油溶性ポリマー(C3)と共に、本発明の消泡剤に含有させてもよい。
【0050】
シリコーン(C4)としては、重量平均分子量(Mw)が20万~100万であるシリコーン(A)及び沸点が250℃以下のシリコーンを除くシリコーンが使用でき、ポリジメチルシロキサン、α,ω-ジヒドロキシ-ポリジメチルシロキサン及びα-アミノプロピルポリジメチルシロキサンが含まれる。
【0051】
疎水性シリカ(C5)としては、本発明の消泡剤中に微分散できれば大きさ、種類等に制限はないが、疎水性シリカのBET法による比表面積は少なくとも50m/gであることが好ましい。
【0052】
BET法による比表面積は、JIS Z8830:2013「ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法」に準拠し、乾燥した状態の疎水性シリカを気体吸着法(キャリアガス法)の一点法で測定する。キャリアガスとしては窒素-ヘリウムの混合ガスを用いる。そして脱着ピークの値から比表面積を算出することができる。
【0053】
疎水性シリカ(C5)としては、市場から容易に入手でき、たとえば、商品名として、Nipsil SS-10、SS-40、SS-50及びSS-100(東ソー・シリカ株式会社、「Nipsil」は同社の登録商標である。)、AEROSIL R972、RX200及びRY200(日本アエロジル株式会社、「AEROSIL」はエボニック デグサ ゲーエムベーハーの登録商標である。)、TS-530、TS-610、TS-720(キャボットカーボン社)、AEROSIL R202,R805及びR812(デグサジャパン株式会社)、REOLOSIL MT-10、DM-10及びDM-20S(株式会社トクヤマ、「REOLOSIL」は同社の登録商標である。)、並びにSYLOPHOBIC100、702、505及び603(富士シリシア化学株式会社、「SYLOPHOBIC」は同社の登録商標である。)等が挙げられる。
【0054】
消泡成分(C)のうち、フッ素変性シリコーン(C1)、液状ポリマー(C2)及び油溶性ポリマー(C3)が好ましい。
【0055】
フッ素変性シリコーン(C1)、液状ポリマー(C2)、油溶性ポリマー(C3)及び/又はシリコーン(C4)を含有する場合、その含有量(重量%)は、シリコーン(A)の重量に基づいて、1~150が好ましく、さらに好ましくは5~120、特に好ましくは10~100である。この範囲にあると、消泡性が更に良好となる。
【0056】
疎水性シリカ(C5)を含有する場合、疎水性シリカ(C5)の含有量(重量部)は、シリコーン(A)の重量に基づいて、0.5~50が好ましく、さらに好ましくは1~30である。この範囲であると、消泡性能がさらに良好となる。
【0057】
本発明の消泡剤には、さらに溶剤(E)を含有してもよい。
溶剤(E)としては、シリコーン(A)及びジオールの分岐カルボン酸エステル(B1)又はジカルボン酸の分岐アルキルエステル(B2)、並びに必要により消泡成分(C)及び/又は基油(D)を均一に溶解できれば特に制限ないが、炭素数3~9のケトン(E1)、炭素数5~12の炭化水素(E2)及び炭素数3~6の酢酸エステル(E3)等が挙げられる。
【0058】
炭素数3~9のケトン(E1)としては、ジメチルケトン(アセトン)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)及びシクロヘキサノン等が挙げられる。
【0059】
炭素数5~12の炭化水素(E2)としては、直鎖飽和炭化水素(n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン及びn-ドデカン等)、分岐飽和炭化水素(sec-ペンタン、tert-ペンタン及びイソドデカン等)、直鎖不飽和炭化水素(1-ペンテン、1-ヘキセン及び1-ドデセン等)及び分岐不飽和炭化水素(イソペンテン、3-メチル-1-ブテン、2,2-ジメチルー1ープロペン及びイソドデセン等)等が挙げられる。
【0060】
炭素数3~6の酢酸エステル(E3)としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル及び酢酸ブチル等が挙げられる。
【0061】
溶剤(E)を含有する場合、溶剤(E)の含有量(重量部)は、消泡剤のハンドリング性や消泡剤の使用量等によって適宜調整するころができる。
【0062】
本発明の消泡剤は、シリコーン(A)及びジオールの分岐カルボン酸エステル(B1)又はジカルボン酸の分岐アルキルエステル(B2)並びに、必要により、消泡成分(C)及び/又は溶剤(E)を均一混合して調製できる。
【0063】
溶剤(E)を含有させる場合、これらの揮発性を考慮して、できるだけ低い温度(10~50℃が好ましく、さらに好ましくは20~40℃)で均一混合することが好ましい。
【0064】
本発明の消泡剤は、非水系発泡液に対してより効果的であるが、水系発泡液にも効果がある。特に非水系コーティング用消泡剤として効果的である。非水系コーティングのうち、産業製品や建造物の塗装に用いられる非水系塗料、床用コーティング材及び屋上用防水塗料等に効果的である。なお、水系発泡液とは水を含む発泡液を意味し、非水系発泡液(非水系コーティング等)とは水を含まない発泡液(コーティング等)を意味する。
【0065】
本発明の非水系コーティング組成物は、上記の消泡剤、フィラー及びバインダーを含有してなるが、上記の消泡剤以外の成分(フィラー及びバインダー)は公知のものが使用できる。
【0066】
フィラーとして、無機微粒子(雲母、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化鉄、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等)及び有機微粒子(アクリルビーズ、シリコンビーズ及びポリエチレンワックス等)等が使用できる。
【0067】
バインダーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル及びこれらの混合物等が使用できる。
【0068】
非水系コーティング組成物中の消泡剤の含有量(重量%)は、上記の消泡剤、フィラー及びバインダーの重量に基づいて、0.05~1が好ましく、さらに好ましくは0.1~0.5である。
【0069】
フィラーの含有量(重量%)は、上記の消泡剤、フィラー及びバインダーの重量に基づいて、4~80が好ましく、さらに好ましくは9.5~70である。
【0070】
バインダーの含有量(重量%)は、上記の消泡剤、フィラー及びバインダーの重量に基づいて、19~95が好ましく、さらに好ましくは29.5~90である。
【0071】
本発明の非水系コーティング組成物には、一般的な非水系コーティング組成物に配合できる添加剤を本発明の効果に影響しない範囲内で含有できる。このような添加剤としては、硬化剤、増粘剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、レベリング剤、顔料分散剤、皮張り防止剤、ドライヤー、艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、低汚染化剤及び触媒等が挙げられる。
【0072】
本発明の非水系コーティング組成物は、従来公知の方法で製造することが可能である。即ち、上記の消泡剤、フィラー、バインダー及び必要により添加剤を均一に混合することにより得られる。
【実施例0073】
以下、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を意味する。
重量平均分子量は以下の装置及び条件で測定した。
測定装置 ;東ソー株式会社、HLC-8220
カラム ;東ソー株式会社、ガードカラムHXL-H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ3000、TSKgel SuperHZ2000及びTSKgel SuperHZ2000を直列に繋いだもの
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社、SC-8010
カラム温度 40℃
溶 媒 ;テトラヒドロフラン
流 速 ;1.0ml/分
標準物質 ;ポリスチレン
サンプル ;1%テトラヒドロフラン溶液
【0074】
<実施例1>
シリコーン(a1;東レ・ダウコーニング株式会社、BY16-140、重量平均分子量50万)2部、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール2-メチルプロパン酸ジエステル(b12)98部を40℃で均一に混合し、本発明の消泡剤(1)を得た。
【0075】
<実施例2~5>
シリコーン(a1)2部、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール2-メチルプロパン酸ジエステル(b12)98部を表1に記載した組成及び配合量(部)に変更したこと以外、実施例1と同様にして、消泡剤(2)~(5)を得た。
【0076】
【表1】
【0077】
<シリコーン(A)>
(a1):東レ・ダウコーニング株式会社、BY16-140、重量平均分子量50万
(a2):信越化学工業株式会社、KF9008、重量平均分子量72万
KF9008はデカメチルシクロペンタシロキサン(沸点207℃)を80%含有する。表1において、重量平均分子量72万シリコーンの量を(a1)の欄に記載し、デカメチルシクロペンタシロキサンの量を「デカメチルシクロペンタシロキサン」の欄に記載した。
(a3):東レ・ダウコーニング株式会社、SH200-1,000,000cs、重量平均分子量:23万
【0078】
<ジオールの分岐カルボン酸エステル(B1)又はジカルボン酸の分岐アルキルエステル(B2)>
(b11):2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール2-メチルプロパン酸モノエステル、
(b12):2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール2-メチルプロパン酸ジエステル
(b21)ヘキサンジカルボン酸ジイソブチル(b21)
【0079】
<消泡成分(C)>
(c11):フッ素変性シリコーン、信越化学工業株式会社、FA-630
(c211):ポリαオレフィン、三井化学株式会社、ルーカントHC-2000(95Pa・s、エチレン-αオレフィンのコオリゴマー)
(c31):油溶性ポリマー、三洋化成工業株式会社、アクルーブ944(ポリ(メタ)アクリレート系ポリマー)、アクルーブ944は鉱物油を60%含有する。表1において、油溶性ポリマーの量を(c31)の欄記載し、鉱物油の量を基油(D)の欄に記載した。
【0080】
<溶剤(E)>
(e1):メチルイソブチルケトン
【0081】
<比較例>
特許文献1(特開2002-301306号公報)の実施例7に準拠して「消泡剤-A」及び「消泡剤-D」を50:50で混合して比較用の消泡剤(H1)を調製した。
【0082】
<性能評価>
1.評価用の非水系コーティング組成物の調製
評価試料として、本発明の消泡剤(1)~(5)及び比較用の消泡剤(H1)を用いて、つぎの配合組成で均一混合して、評価用の非水系コーティング組成物(1)~(5)及び(H1)を調製した{各番号は実施例、比較例で得た消泡剤の番号に対応する。}。また、評価試料を使用しないこと以外、同様にして、非水系コーティング組成物(ブランク)を調製した。
【0083】
アクリデイックA-837(※1) 147部
タイペークR-930(※2) 228部
ミネラルスピリット 80部
エフカRM1920(※3) 2部
アクリデイックA-848(※1) 508部
ミネラルスピリット 30部
評価試料(消泡剤) 5部
【0084】
※1 ポリオール樹脂、DIC株式会社、「アクリディック」はDIC株式会社の登録商標である。
※2 二酸化チタン、石原産業株式会社、「タイペーク」は石原産業株式会社の登録商標である。
※3 増粘剤、BASFジャパン株式会社、「efka」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標である。
【0085】
2.消泡性能の評価
非水系コーティング組成物(1)~(5)、(H1)及び(ブランク)の各1000部をミネラルスピリットで希釈してストーマー粘度計で70KU(25℃)になるように調整した後、25℃に温調し、25℃でブリキ板に中毛ウールローラー(大塚刷毛製造株式会社)にて、塗布量50g(30cm×30cmあたり)となるよう塗装し、塗装開始から発生した泡が消失するまでの時間を計測し、以下の基準により消泡性能を判定した。この結果を表2に示した。
【0086】
○:15秒未満で泡が消失した
×:泡が消失するのに30秒以上かかった
【0087】
3.仕上がり外観の評価
非水系コーティング組成物(1)~(5)、(H1)及び(ブランク)の各1000部をミネラルスピリットで希釈してストーマー粘度計で40KU(25℃)になるように調整した後、25℃に温調し、ウェット膜厚0.026mmで10cm×10cmとなるよう塗装し、25℃、24時間乾燥後の塗膜のクレーターの個数を数え、同じ操作を3回行い3回の合計から、以下の基準により仕上がり外観を判定した。この結果を表2に示した。
【0088】
○:クレーターが1個以下
×:クレーターが3個以上
【0089】
【表2】
【0090】
本発明の消泡剤は、表2に示すとおり、比較用の消泡剤と比べ、塗膜の仕上がり外観に優れていた。